説明

発泡体成形用押出成形機の原料投入用ホッパー

【課題】押出発泡成形における経済性の向上のために回収される廃棄材料を、押出発泡成形のバージン原料に混入して再利用するに際して、押出成形機へのバージン材料と再生砕片の均一な混合と安定した供給を行い、再生砕片を使用する押出発泡成形を安定化させる。
【解決手段】押出成形して発泡体を製造するための原料と粉砕状の再生材料を受け入れ収容する、押出成形機上の原料投入用ホッパーであって、上部には撹拌装置を有する受け入れ部を有し、ホッパー本体部は円錐体と逆円錐体が上下に合体した形状(そろばん珠形状)をなし、その上下部の円錐状側面の傾斜角が水平面に対して30°〜60°であり、下部には押出混練部への原料投入部を備える、発泡体成形用押出成形機の原料投入用ホッパー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体成形用押出成形機の原料投入用ホッパーに関し、詳しくは、押出成形して発泡体を製造するための原料と粉砕状の再生(回収)材料を受け入れ収容する、押出成形機上の原料投入用ホッパーであって、ポリオレフィン系発泡体を製造するに際し、ポリオレフィン系樹脂原料ペレットと再生粉砕材料を、押出成形機の混練部に、均一かつ一定の混合状態にて、効率よく定量的に安定供給するための原料投入用ホッパーに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂発泡成形体は、従来から車両用シート材料や建材及び断熱材や梱包材料などに汎用され、ポリスチレンやポリウレタンの発泡樹脂材料が主に使用されてきたが、近年ではポリオレフィン系樹脂発泡材料が、その優れた物性や良好な成形性及び経済性や環境問題適応性などの観点から重用されるようになっている。
ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、最近においては、包装材料や生活用品などの用途に広く利用されているが、特に、各種の容器やトレーなどを製造するための成型材料として活用されている。
【0003】
熱可塑性樹脂発泡成形体として代表的なポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造する方法としては、主に、押出発泡成形により発泡樹脂シートを成形する方法が使用されている。これは、ポリオレフィン系樹脂と発泡剤の溶融混合物を成形ダイスから常圧下に押出した際に、溶融混合物中の発泡剤の膨張を利用して発泡する成形方法であり、具体的には、ポリオレフィン系樹脂を押出成形機内で発泡剤と溶融混練し、この発泡性の溶融混練物を押出成形機の先端のダイスより押出して発泡性溶融混練物を発泡させる押出発泡法がよく知られている。
【0004】
そして、押出発泡成形においては、発泡シートを成形する際に、シートの両端部の、いわゆる耳部分がトリム部として切断除去され廃棄されることになる。また、更に、かかる発泡シートを熱圧成形や真空成形により容器などに二次成形する際には、成形品を発泡シートから打ち抜いた後に、いわゆるスケルトン屑(打ち抜き屑)がシート端部に発生し廃棄される。
このような廃棄材料は、集積すると、新規の原料使用量に対してかなりの量になり、かかるロス材料を如何に原料として再利用することができるかということが、生産コストを低減する上で大きな課題となる。
一般的に現在までは、かかるロス材料を再利用する手段として、廃棄材料を粉砕し、押出成形機にて可塑化溶融混錬してペレット化し、再利用する方法が一般的であったが、この方法では、再ペレット化する際の熱履歴のための樹脂劣化による物性の低下、及び再ペレット化によるコストの上昇などが生じて、あまり好ましい対処法ではなかった。
【0005】
したがって、このような廃棄材料は、押出成形における経済性の向上のために回収され、押出発泡成形の新規原料(いわゆるバージン原料)のペレットに混入され再利用されることになる。
しかし、押出発泡成形シートの廃棄材料(回収屑)は、再生原料として再利用するために破砕して砕片にすると、再生砕片は発泡成形時の発泡ガスにより発泡されているので、バージン原料より密度(比重)がかなり小さく軽いために、計量後のホッパーへの空送輸送の際に分級(混在していた材料の分離)する欠点を呈し、また、砕片を押出成形機の原料投入ホッパーにバージン原料と共に投入すると、ホッパー内で重力により成形原料が降下する再に、砕片がバージン材料の上に浮き上がる傾向が強く、更には砕片がブリッジ化して、バージン材料と分級することになり、バージン材料が専ら押出成形機の混練部に投入されることになってしまう。その結果、バージン材料と再生砕片の均一な安定した供給ができなくなる不都合が生じることとなる。
【0006】
また、押出発泡成形において重要なことであるが、押出成形機による発泡シートを成形するには、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂に発泡剤や各種の添加剤を、押出成形機に供給して溶融混錬した後、ダイスなどから押出し、発泡用シートに成形されるが、その際に、溶融樹脂をダイスから押出すときの安定性が、製品の肉厚や発泡倍率及びシート密度の安定性などに影響を与える。
このために、発泡製品の押出安定性は原料の性状に左右される場合が多く、安定した均一な発泡シートを得るためには、原料と発泡剤及び添加物を押出成形機の投入供給部に均一に安定供給することは極めて重要となっている。
ところが、上記したように、押出発泡シート成形における再生砕片の再利用に際しては、バージン材料と再生砕片の均一な安定した供給ができなくなる不都合が生じるので、その結果、安定した押出成形が不能となり、所望の製品の肉厚や均一な発泡倍率及びシート密度の安定性などが得られなくなる問題を派生している。
【0007】
なお、従来の技術を概観しても、二段の押出成形機の中間に押出量を測定するセンサーを設け、原料供給の不安定さを押出成形機の押出量を制御することにより解決する方法が提案されているが(特許文献1)、この方法は、上記の不都合や問題に直接に係わるものではない。
また、原料仕込み工程においてヘンシェルミキサーなどに代表される混合機に、ペレット状の熱可塑性樹脂の主原料と、粉体状の原料などを定量投入し均一にブレンドする方式において、均一ブレンドされた原料が混合機から中間タンクを経由して押出成形機の供給部へ投入され、この投入経路においても均一ブレンドされた原料内の添加物が均一分散された状態を確保できるように撹拌機などが内装された設備構造で対応している例も提示されている(特許文献2)。
しかし、この例でも、ブレンドされた原料には、粉体状物とペレット状物とが混在しているため、混合機から押出成形機の供給部までの仕込み工程通過時に、均一ブレンドされた原料の一部で分級が発生するのは避けられず、押出成形機へ供給される時、定量的に安定供給できない状態になるケースが発生するという欠点を内在しており、やはり上記の不都合や問題の解決にはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−170920号公報(要約を参照)
【特許文献2】特開2000−108120号公報(要約を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
背景技術において、前述したように、従前の押出発泡成形においては、発泡シートを成形する際に、シートの両端部の、いわゆる耳部分がトリム部として切断除去され廃棄されることになり、また、更に、かかる発泡シートを熱圧成形や真空成形により容器などに二次成形する際には、成形品を発泡シートから打ち抜いた後に、いわゆるスケルトン屑がシート端部に発生し廃棄され、このような廃棄材料は、集積すると、新規の原料使用量に対してかなりの量になり、かかるロス材料を如何に原料として再利用することができるかということが、生産コストを低減する上で大きな課題となっている。
そのために、このような廃棄材料は、押出成形における経済性の向上のために回収され、押出発泡成形の新規原料(いわゆるバージン原料)のペレットに混入され再利用されることになるが、従前では、押出成形機へのバージン材料と再生砕片の均一な安定した供給ができなくなる不都合が生じており、その結果、安定した押出成形が不能となり、所望の製品の肉厚や均一な発泡倍率及びシート密度の安定性などが得られなくなる問題を派生している。
【0010】
本発明は、かかる技術状況を鑑みて、このような不都合と問題を解決すべく、押出発泡成形における経済性の向上のために回収される廃棄材料を、押出発泡成形のバージン原料のペレットに混入して再利用するに際して、押出成形機へのバージン材料と再生砕片の均一な混合と安定した供給を行い、その結果として、再生砕片を使用する押出発泡成形を安定化させ、かかる押出発泡成形において、所望の製品の肉厚や均一な発泡倍率及びシート密度の安定性などを得ることを可能ならしめることを、発明が解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、かかる発明の課題の解決を目指して、押出発泡成形におけるバージン材料と廃棄材料の再生砕片の粒状状態や混合割合及びそれらの混合方法や空送条件或はホッパーにおける撹拌やホッパーの形状、更には、ホッパー内の流下状況や押出成形機への投入手法などについて、多観点から考察勘案し、実験的な参酌吟味を踏まえて、押出成形機へのバージン材料と再生砕片の均一な安定した供給手法を探査した結果として、ホッパー本体の立体形状が重要な要件であることを認識して、基本的には、特定の立体的な形状を設定することにより、本発明が課題とする前記の不都合と問題を解決し得ることを知見して、本発明を開発するに至った。
【0012】
しかして、本発明は、基本的な要件として、押出成形機上の原料投入用ホッパーにおいて、上部には撹拌装置を有する受け入れ部を有し、ホッパー本体部は円錐体と逆円錐体が上下に合体した形状(そろばん珠形状)をなすものであり、更に、その上半部の円錐状側面の傾斜角が水平面に対して30°〜60°であり、下半部の逆円錐状側面の傾斜角が水平面に対して30°〜60°であると規定される。かかるホッパーは、本発明の代表的な実施例としての図4に、例示されている。
【0013】
そして、本発明における上記の基本発明に対する、実施態様として、再生砕片としての、粉砕状の再生材料の見かけ比重と形状及び厚みと大きさが特定され、計量部や輸送手段及び撹拌具が、具体的には後述されるように、付設されている。
【0014】
かくして、本発明においては、上記の格別で新規な構成により、押出発泡成形における経済性の向上のために回収される廃棄材料を、押出発泡成形のバージン原料のペレットに混入して再利用するに際して、押出成形機へのバージン材料と再生砕片の均一な混合と安定した供給を行い、その結果として、再生砕片を使用する押出発泡成形を安定化させ、かかる押出発泡成形において、所望の製品の肉厚や均一な発泡倍率及びシート密度の安定性などを得ることを可能ならしめる、作用効果を呈し、そして、本発明における構成の各要
件(発明の特定事項)の設定の合理性と有意性及びそれらによる発明の効果などは、後述
する本発明の各実施例のデータにより、更には各実施例と各比較例の対照により実証されている。
【0015】
以上においては、発明の課題を解決する手段を、本発明が創作される経緯及び本発明の基本的な構成と特徴に沿って概述したので、ここでその発明の全体を明確にするために、発明全体を俯瞰すると、本発明は、次の発明単位群から構成されるものであって、[1]の発明を基本的な発明とし、それ以下の発明は、基本的な発明を具体化ないしは実施態様化するものである。(なお、発明群全体をまとめて「本発明」という。)
【0016】
[1]押出成形して発泡体を製造するための原料と粉砕状の再生材料を受け入れ収容する、押出成形機上の原料投入用ホッパーであって、上部には撹拌装置を有する受け入れ部を有し、ホッパー本体部は円錐体と逆円錐体が上下に合体した形状(そろばん珠形状)をなし、その上半部の円錐状側面の傾斜角が水平面に対して30°〜60°であり、下半部の逆円錐状側面の傾斜角が水平面に対して30°〜60°であり、下部には押出混練部への原料投入部を備えることを特徴とする、発泡体成形用押出成形機の原料投入用ホッパー。
[2]発泡体を製造するためのペレット状の原料と共に、粉砕状の再生材料の見かけ比重が0.9g/cm以下であり、粉砕状の再生材料の主たる形状がシート状物を破砕した平板状であり、且つ厚みが0.3mm以上10mm未満、平面の形状が縦と横共に5mm以上3cm未満である、再生材料を混合状態にて受け入れ収容することを特徴とする、[1]における発泡体成形用押出成形機の原料投入用ホッパー。
[3]ペレット状の原料と再生材料が計量部にて計量され、空気輸送又は真空吸引輸送にてホッパーの受け入れ部に輸送され、撹拌部での撹拌がスクリュウ型混合機により行われることを特徴とする、[1]又は[2]における発泡体成形用押出成形機の原料投入用ホッパー。
[4][1]〜[3]のいずれかにおける発泡体成形用押出成形機の原料投入用ホッパーを装備した押出成形機を使用して、発泡体がポリオレフィン系樹脂発泡体であり、発泡性ガス又は発泡性ガス発生剤及び添加剤が押出成形機に供給され、発泡成形が単層シート又は多層シートになされることを特徴とする、押出発泡シートの成形方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、押出発泡成形における経済性の向上のために回収される廃棄材料を、押出発泡成形のバージン原料のペレットに混入して再利用するに際して、押出成形機へのバージン材料と再生砕片の均一な混合と安定した供給を行い、その結果として、再生砕片を使用する押出発泡成形を安定化させ、かかる押出発泡成形において、所望の製品の肉厚や均一な発泡倍率及びシート密度の安定性などを得ることを可能ならしめる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における原料供給システムの概略模式図である。
【図2】従来のホッパー内での原料の流下状況を示す摸式図である。
【図3】本発明のホッパー内での原料の流下状況を示す摸式図である。
【図4】本発明のホッパーの実施例を示す摸式図である。
【図5】従来のホッパーを示す摸式図である。
【図6】従来のホッパー本体に本発明の受け入れ部と撹拌スクリューを付設した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明については、課題を解決するための手段として、本発明の基本的な構成と特徴に沿って前述したが、以下においては、前述した本発明群の発明の実施の形態を図面と共に具体的に詳しく説明する。
【0020】
1.本発明における原料供給システムの概略
本発明における、廃棄物を再生砕片として再使用する、押出発泡成形機においいての原料供給システムは、図1に、概略摸式図として例示されている。
バージン原料のペレットである、顆粒状の原料1と廃棄物を再生砕片として再使用する、粉砕状原料2を原料の計量部3において、所定の割合に計量し、計量部混合機にて撹拌混合し、空気輸送4にて、又は真空吸引輸送にて、受け入れ部5まで輸送官を経て輸送され、撹拌部6にて撹拌混合される。
そして、混合原料は、ホッパー7に収容され、所定の供給指令に応じて、押出成形機8の混練部に投入される。
【0021】
2.本発明の原料投入用ホッパー
本発明における原料投入用ホッパーは、押出成形して発泡体を製造するための原料と粉砕状の再生材料を受け入れ収容する、押出成形機上の原料投入用ホッパーであって、図4に実施例における断面摸式図として例示されている。
1が受け入れ部の受け入れ口であり、2が撹拌部におけるスクリュウー混合機である。
3がホッパー本体であり、円錐体と逆円錐体が上下に合体した形状(そろばん珠形状)をなし、その上半部の円錐状側面の傾斜角が水平面に対して30°〜60°であり、下半部の逆円錐状側面の傾斜角が水平面に対して30°〜60°であり、図内では44.0°と55.6°として例示されている。
そして、図内に各寸法がcm単位にて例示され、下部には押出混練部への原料投入部を備えている。
【0022】
3.原料投入用ホッパーの作用機構
受け入れ部5で撹拌された原料は、押出成形機8にスクリューの食い込み動作によって供給されるまで、随時ホッパー7にて貯蔵されることになる。押出量と計量部にて計量され輸送される原料樹脂の量のバランスにも拠るが、通常の生産時にはホッパー7には原料レベル計が設置されており、ホッパー7に原料が十分貯蔵され、ある一定のレベル以下になったことをレベル計が検知した際に、計量機へ電気的指令が行き、計量空送が開始されるプロセスを踏む。したがって、ホッパー7には通常生産工程においては、原料の枯渇を防ぐためにほぼ原料が充満している状態となる。その際、嵩密度の異なる原料がホッパー7内に共存している場合に問題になるのが、嵩密度の違いによるホッパ内での原料の分離である。
【0023】
従前の一般的なホッパーを図2に例示するが、一般的なホッパーでは底面が逆円錐状、若しくは円柱状となり、その上に円柱状の形状をなしている。この場合、逆円錐状の中心から原料が消費されると、図示のごとく原料の移動は水平方向から傾斜を持った角度で原料が移動するが、その際、他の原料の上を滑り落ちるような状態で移動するため、嵩密度の高い原料(バージン原料のペレット)が優先的にホッパー中心部へ移動することとなり、結果として、ホッパー内で嵩密度の異なる原料(再生砕片)が分離するという現象が生じる。
その結果、押出成形機からの原料組成は変化することとなり、製品品質の安定性が保てなくなる。
【0024】
本発明における形状を有するホッパーの図3においては、ホッパーの形状がそろばん珠形状をなし、その上半部の円錐状側面の傾斜角が水平面に対して30°〜60°、好ましくは40°〜50°であり、下半部の逆円錐状側面の傾斜角が水平面に対して30°〜60°好ましくは40°〜50°であることが必要である。下半部の傾斜は均一に下方にある押出成形機の原料投入部へ原料が流れていくために必要であり、角度がこの値より小さいと下部に嵩密度の大きなペレットなどの原料が堆積し、その結果、供給安定性が不安定になり、この角度より大きいと堆積された原料は、ホッパ中心部へ向かって壁面の原料も中心へ流れ、嵩密度による原料の分離が低減される。角度が大き過ぎると均一な供給が行えない。
【0025】
逆に上半部の傾斜は、図3のように堆積した原料が下半部に流れていく際の原料の均一混合性を維持するために必要である。
即ち、図2に示す概念図のように、円柱状の形状の場合、供給部から消費されてた原料を補うために落下していく原料は中心に向かって滑っていくこととなり、その際に嵩密度の違いにより嵩密度の大きい原料が優先的に滑り、結果として分級を引き起こす。逆に図3に示すように、上半部が傾斜を有している場合は、供給部から消費された原料を補うために落下していく原料は、大略下部に向かって滑っていくこととなり、下部に滑る場合は嵩密度の影響を受けにくく、自由落下のごとく下部に原料は移動していく。ここで、上記に示す角度より大きな傾斜を有する場合は大略円柱状と同じ挙動を示すようになりその効果を発揮できず、上記の角度よりも小さい場合は、やはり逆三角錐状に近似することとなり、同様の効果を発揮できにくくなる。
かくして、本発明のごとき原料投入用ホッパーを用いることにより、嵩密度の大きく異なる発泡シートの粉砕状回収原料を用いた際でもホッパー内での原料の分級は大幅に低減でき、安定した押出性を発揮することができ、その結果、優れた生産性を維持しつつ厚みが均一で製品性能が良好な発泡シートを生産することが可能となる。
【0026】
4.供給される原料
本発明におけるペレット状の原料とはポリプロピレンやポリエチレンなどの熱可塑性樹脂組成物からなる新規な原料ペレット(バージン原料)を指すが、バージン原料である場合以外に、成型品を再度押出成形機などで可塑化混錬し、再ペレット化したものも含まれてよい。
粉砕状回収原料とは、発泡シートなどに代表される押出成形品の回収品、発泡シートの熱成型後のスケルトン、発泡シート生産時に発生する規格外品や耳部などを、粉砕機などで微細に破砕した形状のものを意味し、一般的に平板状の形状を有する。
【0027】
本発明の原料投入用ホッパに供給される場合には、粉砕状の回収原料の見かけ比重が0.9g/cm以下である。
平均的に熱可塑性樹脂の発泡体の比重は0.9g/cm以下であり、其れより大きい発泡体は、本発明の意図する効果をもたらすところではない。
粉砕状の回収原料の主たる形状がシート状物を破砕した平板状であり、且つ厚みが0.3mm以上10mm未満、平面の形状が縦と横共に5mm以上3cm未満であることが好ましい。縦横の形状が上記の範囲を超える場合、押出成形機への供給口において平板上の粉砕品がブリッジを起こし、供給安定性を損なってしまう。また、上記の範囲を下回るということは、粉砕工程において微細に粉砕してしまうことを意味し、微細な粉砕は非常にエネルギーロスが大きく、非効率となる。ここで、主たる形状と記載した意味は、粉砕品には粉砕の工程において必ずサイズのばらつきが生じることは不可避であり、粉体の状態のもの、上記の大きさを越すものも発生することがあるが、一般的に上記サイズの粉砕品が90重量%以上を占めることを意図するものである。
【0028】
原料は、先ず計量部3にて、各配合比率に応じて計量され、必要に応じて計量部の下部にて混合されて空送輸送系4に供給され、圧縮空気により受け入れ部5へと輸送される。この際、原料の形状や嵩密度が異なれば、特にバージン原料の顆粒状原料と平板状の発泡粉砕品を空送輸送する際、圧搾空気による空気圧による浮動性が全く異なるために、受け入れ部5に到達した際には、嵩密度の低い平板状の発泡粉砕品が先ず受け入れ部5に到達し、その後、嵩密度の大きい顆粒状原料が到達し、受け入れ部5にて完全に分級してしまうことは明らかである。
【0029】
そこで、ホッパー7への供給の前に受け入れ部での撹拌が必要となる。ここで撹拌は、空送輸送中に嵩密度の異なる原料が分離した状態で受け入れ部5に届いたものを再度均一に撹拌するために必要であり、設置されていない場合、ホッパーに分離した状態で貯蔵されることとなり、押出成形機への供給も不安定な供給となり、その結果、製品シートは安定せず、発泡倍率や偏肉の異なる成型品となってしまう。受け入れ部5の形状は任意でかまわないが、大きさは、通常の計量装置はバッチ式で行われるために、1バッチ分の全原料を収納できる程度の大きさの受け入れ部5の大きさを選定することが好ましい。受け入れ部5にて撹拌された原料は自由落下にて直下のホッパー7に投入される。
【実施例】
【0030】
以下において、本発明のホッパへの原料供給方法及び装置の望ましい実施例について、及びそれの対照の比較例を、図面を参照して説明する。
【0031】
図4は、本発明の一実施例に係る押出成形機への原料供給装置を示している。1が受け入れ部の受け入れ口であって、各配合量比に混合された原料を一時的に貯蔵する一次ホッパーであり、空送工程が完了次第、撹拌機へと原料が供給され、2が撹拌部におけるスクリュウー混合機である。3がホッパー本体であり、円錐体と逆円錐体が上下に合体した形状(そろばん珠形状)をなし、その上半部の円錐状側面の傾斜角が水平面に対して30°〜60°であり、下半部の逆円錐状側面の傾斜角が水平面に対して30°〜60°であり、図内では44.0°と55.6°として例示されている。撹拌機にて所定の時間の撹拌が完了した後、原料はホッパー本体3に供給される。
そして、図内に各寸法がcm単位にて例示され、下部には押出成形機の混練部への原料投入部を備えている。
ホッパー本体3の下端に押出成形機が設置され、スクリューの輸送動作に従い原料は可塑化混錬へと進む。
【0032】
[実施例1]
実施例1においては、図4において、下記の配合にて混合した原料100kgを1回10kgづつ、15mの空送系(図1における空送輸送部分)にて一次ホッパ1に輸送し、1バッチ分を輸送し終わった時点で撹拌機2に供給し、撹拌後に主ホッパー3に原料を供給し、100kgを貯蔵し終わった後、主ホッパー3の下部にて供給される原料を2Lづつ75回連続して秤り取り、その重量を測定した。
【0033】
(原料組成)
ポリプロピレンペレット(日本ポリプロ社製 ニューフォーマーFB5100) 80重量%、及び発泡シート粉砕材料(比重;0.45g/cm 主たる粉砕の形態;5mm角・厚み1mm)20重量%で実施した。結果を表1に示す。
【0034】
[比較例1]
図5は、本発明の比較例に係る押出成形機への円筒状の原料供給装置を示している。実施例1と同様に、主ホッパの下部にて供給される、実施例1と同配合の原料を2Lづつ、75回分連続して秤り取り、その重量を測定した。結果を表1に示す。ホッパー内に残存した原料は、発泡シート粉砕成分が多かった。
[比較例2]
図6のホッパーを使用するが、図6のホッパーは実施例1において、一次ホッパー1と撹拌機2を取り除いた系であり、それ以外は実施例1と同様に評価を実施した。結果を表1に示す。
[比較例3]
比較例1において、実施例1の一次ホッパー1と撹拌機2を設置した以外、同様の方法で評価を実施した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
押出機は、スクリューフィード部分により、ホッパーに貯蔵されている原料ペレットや粉砕品などがホッパーからスクリューに供給され、その量が供給量である。スクリュー溝の剪断によって前方へ掻き出される作用により押出機に原料が供給される。その後、可塑化と混錬の工程を得て、最終的に出口で溶融樹脂が押し出される。その値が押出量である。
即ち、供給量と押出量は同じ値であり、供給量が変動すると、押出量も変動する。一方、原料形状による剪断摩擦力の違いを無視すると、同じ温度(温度により掻き出される摩擦力が変わる)、同じスクリュー回転数の場合、原料はスクリューフィード部分の形状で決定される供給容積にしたがって、スクリューのフィード以降の部分へと供給される。
よって、ホッパーからスクリューフィード部分への一定容積の原料の重量変化は押出量に影響を及ぼす。
本実施例においては2リットルの容量においての原料重量変化を測定したものであり、その最大値と最小値の差は、スクリューフィード部分への原料供給変動、更には押出量へどれほど誤差を生じるかの目安となり、標準偏差はそのばらつき具合を表す。押出誤差は4%以下が好ましく、更には3%以下が好ましい。また、標準偏差は10以下が好ましい。
表1は、安定的な押出量を達成するための、実施例1におけるホッパーの役割(安定的にスクリューに原料を供給する)を示したものである。
【0037】
実施例1及び比較例1〜3において、ホッパーに貯蔵した100kgを、容積2Lづつ75回で抜き出し、表1に、その1回当たりの最大値と最小値の重量が表示されている。
押出誤差の計算は、例えば、表1の実施例1では、{26÷(1094+1068)/2}×100=2.4(%)となり、比較例1〜3では、4.4,4.7,4.1(%)となる。
【0038】
[実施例と比較例の結果の考察]
以上の実施例のデータに見られるように、本発明の実施例においては、本発明の構成の要件(請求項1に記載)を満たしているので、押出成形機へのバージン材料と再生砕片の均一な混合と安定した供給を行い、その結果として、再生砕片を使用する押出発泡成形を安定化させ、かかる押出発泡成形において、所望の製品の肉厚や均一な発泡倍率及びシート密度の安定性などを得ることを可能ならしめている。
各比較例は、本発明の構成の要件を満たすホッパーを使用していないので、押出誤差は4%を超え、標準偏差も10を超えており、実施例1のような安定した均一な原料供給は得られていない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形して発泡体を製造するための原料と粉砕状の再生材料を受け入れ収容する、押出成形機上の原料投入用ホッパーであって、上部には撹拌装置を有する受け入れ部を有し、ホッパー本体部は円錐体と逆円錐体が上下に合体した形状(そろばん珠形状)をなし、その上半部の円錐状側面の傾斜角が水平面に対して30°〜60°であり、下半部の逆円錐状側面の傾斜角が水平面に対して30°〜60°であり、下部には押出混練部への原料投入部を備えることを特徴とする、発泡体成形用押出成形機の原料投入用ホッパー。
【請求項2】
発泡体を製造するためのペレット状の原料と共に、粉砕状の再生材料の見かけ比重が0.9g/cm以下であり、粉砕状の再生材料の主たる形状がシート状物を破砕した平板状であり、且つ厚みが0.3mm以上10mm未満、平面の形状が縦と横共に5mm以上3cm未満である、再生材料を混合状態にて受け入れ収容することを特徴とする、請求項1に記載された発泡体成形用押出成形機の原料投入用ホッパー。
【請求項3】
ペレット状の原料と再生材料が計量部にて計量され、空気輸送又は真空吸引輸送にてホッパーの受け入れ部に輸送され、撹拌部での撹拌がスクリュウ型混合機により行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載された発泡体成形用押出成形機の原料投入用ホッパー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された発泡体成形用押出成形機の原料投入用ホッパーを装備した押出成形機を使用して、発泡体がポリオレフィン系樹脂発泡体であり、発泡性ガス又は発泡性ガス発生剤及び添加剤が押出成形機に供給され、発泡成形が単層シート又は多層シートになされることを特徴とする、押出発泡シートの成形方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−280112(P2010−280112A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134686(P2009−134686)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】