説明

発泡弾性体およびその製造方法ならびに電子写真機器用導電性ロール

【課題】低硬度で外周面が平滑性に優れ、電子写真機器用導電性ロールに用いたときに、ロール表面を低硬度にでき、かつ、外周面に各種機能を有する塗工層を塗工可能な発泡弾性体を提供すること。
【解決手段】チューブ状に成形され、外周面にスキン層12を備え、かつ、内周面に開口した発泡セル14aを備えた発泡弾性体10とする。発泡弾性体10は、未架橋未発泡のチューブ体に軸芯を挿入した状態で、加圧下で加熱処理して外周面を架橋した後、軸芯を除去し、常圧下で加熱処理して得られる。スキン層12の厚みは、10〜100μmの範囲内にあると良い。発泡弾性体10は、電子写真機器用導電性ロール20の基層10に用いられ、その外周面には、表層24や中間層26などの機能層を塗工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用導電性ロールの基層に好適に用いられる発泡弾性体およびその製造方法ならびに電子写真機器用導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器が広く使用されるようになってきている。電子写真機器の内部には、通常、感光ドラムが組み込まれており、その周囲には、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールが配設されている。
【0003】
この種の電子写真機器では、接触帯電方式および接触現像方式が主流になってきている。例えば接触帯電方式では、帯電ロールのロール表面を感光ドラム表面に直接接触させて感光ドラム表面を帯電させている。また、例えば接触現像方式では、層形成ブレードを用いて、現像ロールの表面にトナー層を形成し、このロール表面を、感光ドラム表面に直接接触させ、または、非接触状態にして、感光ドラム表面の潜像にトナーを付着させている。
【0004】
この場合、帯電ロールは感光ドラムや、転写されなかった残留トナーに対して、現像ロールは感光ドラムやトナーに対してストレスを与えやすく、ロール表面の硬度が高いと画像が悪化しやすくなる。したがって、導電性ロールは低硬度であることが求められる。そして、このような要求を満たすために、ロールの基層をスポンジ状にした(発泡させた)導電性ロールが良く知られている。
【0005】
導電性ロールには、上記低硬度以外にも、種々の機能が要求される。例えば、耐久性を確保するために表面保護機能が要求される。また、例えば帯電ロールには、帯電性などが要求される。また、例えば現像ロールには、トナー帯電性やトナー離型性、残留電荷減衰性などが要求される。このように複数の機能を要求される導電性ロールにおいては、ロールの基層上に、要求に応じた機能を有する層を形成することが良く行なわれる。この際、ロールの硬度に与える影響を小さくするため、塗工により薄く形成することが好ましい。そして、このような塗工層を形成するためには、塗工する面が平滑であることが必要である。
【0006】
ロールの基層をスポンジ状にした導電性ロールにおいては、例えば、非発泡のゴムチューブを基層の上に被せて(基層の上に非スポンジ層を積層して)表面を平滑にする方法が知られている。
【0007】
また、ロールの基層周面にスキン層を設ける技術も知られている。このような技術としては、例えば、ロールの基層外周面と接触する金型内面にガス抜き穴を設けた金型を用いてロールの基層を成形することによりロールの基層外周面にスキン層を設ける技術が知られている。
【0008】
また、特許文献1には、ロールの芯金にガス抜き穴を設けて、この芯金に通したロールの基層を金型内で発泡成形することによりロールの基層外周面にスキン層を設ける技術が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、シリコーンゴムをチューブ状に押出成形した加硫・発泡前のチューブ成形体を50〜70℃で24時間低温熟成した後、チューブ成形体を加熱して加硫・発泡させることによりロールの基層内周面にスキン層を設ける技術が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開平07−71442号公報
【特許文献2】特開2003−156960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記する従来の各種方法で得られたロール基層では、ロールの低硬度化と、塗工面の表面平滑性とをともに十分に満足させるものがなかった。例えば、スポンジ状基層の上に非発泡のゴムチューブを被せたものでは、ゴムチューブを被せることにより硬度が高くなってしまうという問題があった。
【0012】
また、金型内面にガス抜き穴を設けた金型を用いて成形されたロール基層では、ガス抜き穴に起因する突起がロール表面に生じて、表面平滑性が悪くなる。一方で、金型に形成するガス抜き穴が小さい場合や少ない場合には、ガス抜きが十分に行なわれないため、スキン層にも気泡が発生し、表面平滑性が悪くなるという問題があった。
【0013】
さらに、ガス抜き穴を設けた芯金に通した状態でロールの基層を金型内で発泡成形した場合には、ロール基層は芯金に圧接された状態で発泡されるため、内周面にもスキン層が形成され、これによる硬度の上昇が生じてしまう。そして、硬度上昇を回避するために、芯金に形成するガス抜き穴を小さくするか、または、少なくすると、ガス抜きが十分に行なわれなくなる。その結果、外周面のスキン層にも気泡が発生し、表面平滑性が悪くなるという問題があった。
【0014】
また、加硫・発泡前のチューブ成形体を低温熟成した後、加硫・発泡させたロール基層では、内外周面にスキン層が形成されるため、硬度の上昇が生じてしまう。そして、熟成が足りない場合には、外周面のスキン層にも気泡が発生し、表面平滑性が悪くなるという問題があった。
【0015】
このように、従来の各種方法で得られたロール基層では、基層硬度の上昇や基層の表面凹凸が出力画像に影響して画像不具合が生じていた。そのため、ロール基層について、さらなる改良が必要であった。
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、低硬度で外周面が平滑性に優れ、電子写真機器用導電性ロールに用いたときに、ロール表面を低硬度にでき、かつ、外周面に各種機能を有する塗工層を塗工可能な発泡弾性体を提供することにある。また、このような発泡弾性体を得るのに好適な製造方法を提供することにある。さらに、この発泡弾性体を用いて、低硬度で表面性に優れ、出力画像の高画質化が可能な電子写真機器用導電性ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため本発明に係る発泡弾性体は、電子写真機器用導電性ロールに用いられるチューブ状の発泡弾性体であって、外周面にスキン層を備え、かつ、内周面に開口した発泡セルを備えていることを要旨とする。
【0018】
このとき、前記スキン層の厚みは、10〜100μmの範囲内にあることが望ましい。
【0019】
また、前記発泡弾性体の発泡セルは、径方向内側に向かって徐々にセル径が大きくなっていることが望ましい。
【0020】
一方、本発明に係る電子写真機器用導電性ロールは、上記発泡弾性体と、前記発泡弾性体に挿入された軸体とを備えたことを要旨とする。
【0021】
ここで、上記電子写真機器用導電性ロールは、上記軸体の外径の30%〜85%の範囲内にある内径を有するチューブ状の発泡弾性体内に上記軸体が挿入されていることが好ましい。
【0022】
また、上記発泡弾性体は、イオン導電性ゴム材料より形成されていることが好ましい。
【0023】
また、上記軸体は中実体であると良い。
【0024】
そして、本発明に係る発泡弾性体の製造方法は、電子写真機器用導電性ロールに用いられる発泡弾性体の製造方法であって、未架橋未発泡のチューブ体を成形する工程と、前記チューブ体の外周面を未発泡で架橋してスキン層を形成する工程と、前記スキン層を形成した後の未架橋部分を発泡架橋する工程とを有することを要旨とする。
【0025】
このとき、前記スキン層を形成する工程において、前記チューブ体に軸芯を挿入した状態で前記チューブ体を加熱することが望ましい。
【0026】
また、前記スキン層を形成する工程において、加圧下で前記チューブ体を加熱することが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る発泡弾性体によれば、外周面にスキン層を備え、かつ、内周面に開口した発泡セルを備えているため、外周面が表面平滑性に優れるとともに、弾力性に富み、低硬度である。したがって、これを導電性ロールに用いれば、低硬度で表面性に優れ、出力画像の高画質化が可能な電子写真機器用導電性ロールを得ることができる。
【0028】
このとき、スキン層の厚みが10〜100μmの範囲内にあると、外周面のスキン層の形成による硬度の上昇を抑えつつ、外周面の表面平滑性を高める効果に優れる。したがって、低硬度化と表面平滑性とのバランスに優れる。
【0029】
また、上記発泡弾性体において、径方向内側に向かって徐々にセル径が大きくなっているものは、上記効果を奏する。
【0030】
一方、本発明に係る電子写真機器用導電性ロールによれば、上記発泡弾性体を用いており、上記発泡弾性体は開口した発泡セルを内周面に備えているため、低硬度にすることができる。そして、上記発泡弾性体の外周面に各種機能を有する塗工層を塗工したときにも表面性に優れるため、出力画像の高画質化が可能となる。
【0031】
ここで、上記軸体の外径の30%〜85%の範囲内にある内径を有するチューブ状の発泡弾性体内に上記軸体が挿入されている場合には、ロール周方向に上記発泡弾性体が伸ばされた状態、つまり、上記発泡弾性体のロール周方向に張力が発生した状態になる。そのため、耐ヘタリ性を向上させることができる。また、円筒精度が向上する等、ロール形状を良好にすることができる。
【0032】
また、上記発泡弾性体がイオン導電性ゴム材料より形成されている場合には、電気抵抗分布を均一化することができる。
【0033】
また、軸体が中実体であると、基層を架橋発泡させるときに軸体からガス抜きされないため、発泡弾性体の内周面にスキン層は形成されず、内周面に開口した発泡セルを備えたものとなる。これにより、低硬度化を図ることができる。
【0034】
そして、本発明に係る発泡弾性体の製造方法によれば、未架橋未発泡のチューブ体の外周面に未発泡でスキン層を形成した後、未架橋部分を発泡架橋するため、外周面にスキン層を備えるとともに、内周面に開口した発泡セルを備えた発泡弾性体を得ることができる。これにより、低硬度で外周面の表面平滑性に優れた発泡弾性体を得ることができる。
【0035】
そして、スキン層を形成する工程において、チューブ体に軸芯を挿入した状態でチューブ体を加熱すると、軸芯によりその内周面には熱が伝わりにくくなる。これにより、チューブ体の外周面のみが加熱架橋されて、外周面のみにスキン層が形成される。
【0036】
また、スキン層を形成する工程において、加圧下でチューブ体を加熱すると、スキン層を形成する工程において発泡剤の分解が抑えられ、発泡セルを含有しないスキン層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に、本発明の実施形態に係る発泡弾性体について、図を参照しつつ、詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る発泡弾性体を表す周方向断面図である。発泡弾性体10は、例えば、電子写真機器用導電性ロール(以下、導電性ロールということがある。)の基層や抵抗調整層などに好適に用いることができる。より好ましくは基層である。
【0038】
図1に示すように、発泡弾性体10は、チューブ状であり、複数の発泡セル14を備えている。発泡弾性体10は、1つの導電性組成物より形成される一体物であるが、その外周面10aにはスキン層12を備え、その内周面10bには開口した発泡セル14aを備えている。すなわち、発泡弾性体10の外周面10aは、スキン層12により表面が平滑にされている。一方、内周面10bに開口した発泡セル14aを備えることにより、発泡弾性体10は、導電性ロールに用いたときに、弾力性に富み、ロール表面を低硬度にすることができる。なお、スキン層12は、図1において点線より外側の部分として示しているが、その内部とのはっきりした境界が見えるわけではなく(層状に見えるものではなく)、発泡セル14が見られない部分として認識することができる。
【0039】
スキン層12の厚みは、低硬度化と外周面の表面平滑性とのバランスの観点から、10〜100μmの範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、スキン層12の厚みは30〜90μmの範囲内にあると良い。スキン層12の厚みが10μm未満では、外周面の表面平滑性を高める効果が低下しやすい。一方、スキン層12の厚みが100μmを超えると、スキン層の形成による硬度の上昇が大きくなりやすい。
【0040】
スキン層12を有する発泡弾性体10の外周面における表面粗さ(Rz)は、0〜18μmの範囲内にあることが好ましい。表面粗さ(Rz)が18μmを超えると、良好な画像を得るための表面平滑性を満足させにくい。また、発泡弾性体10のMD−1硬度は、低硬度化の観点から、20〜34度の範囲内にあることが好ましい。また、発泡弾性体10中の発泡セル14は、図1に示すように、径方向内側に向かって徐々にセル径が大きくなっていることが好ましい。
【0041】
発泡弾性体10中におけるスキン層12の厚みや発泡セル14の分布状態は、発泡弾性体10の断面を観察することにより調べることができる。例えば顕微鏡を用いて、発泡弾性体10の断面を観察することができる。
【0042】
発泡弾性体10は、導電性組成物により形成されている。導電性組成物は架橋されていても良いし、架橋されていなくても良い。導電性組成物を構成する主な材料としては、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、ヒドリンゴム(CO、ECO等)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)等を例示することができる。より好ましくは、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム、ヒドリンゴムである。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0043】
上記導電性組成物中には、発泡剤や導電剤(カーボンブラックなどの電子導電剤や四級アンモニウム塩などのイオン導電剤)が含有されていると良い。また、その他にも、必要に応じて、充填剤、増量剤、補強剤、加工助剤、硬化剤、加硫促進剤、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料、シリコーンオイル、助剤、界面活性剤などの各種添加剤が適宜添加される。
【0044】
なお、発泡弾性体10を、例えば、電子写真機器用導電性ロールに用いる場合、発泡弾性体10は、イオン導電性ゴム材料より形成されていると良い。電子導電性ゴム材料より形成されている場合に比べ、電気抵抗分布を均一化する上で有利だからである。
【0045】
発泡剤は、有機発泡剤でも良いし、無機発泡剤(重炭酸ナトリウムなど)でも良い。より好ましくは、熱分解により容易に発泡させることができる点や分解物がマトリックスゴムとの相溶性に優れるなどの観点から、有機発泡剤である。有機発泡剤としては、具体的には、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4、4’−オキシビス(ベンゼンスルホニル)ヒドラジド(OBSH)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用しても良い。
【0046】
次に、本発明に係る発泡弾性体の製造方法(以下、本製造方法ということがある。)について説明する。本製造方法は、チューブ体を成形する工程と、スキン層を形成する工程と、発泡架橋する工程とを有する。
【0047】
チューブ体を成形する工程では、まず、主材料と発泡剤と導電剤とその他の必要な添加剤とを混合して得られた上記導電性組成物をチューブ状に成形する。このとき、導電性組成物を架橋・発泡させないようにする。
【0048】
成形方法は、押出成形および型成形のいずれであっても良い。生産性に優れるなどの観点から、好ましくは押出成形である。押出成形するには、一般的な押出機などを用いることができる。押出成形により上記導電性組成物をチューブ状に成形する方法としては、例えば、上記導電性組成物を、棒状あるいは筒状の軸芯と同時押出する方法を示すことができる。軸芯の材料としては、金属であっても良いし、樹脂であっても良い。具体的には、軸芯の材料としては、例えば、鉄、アルミニウム、銅などを示すことができる。その外周面にはめっきが施されていても良い。
【0049】
次いで、スキン層を形成する工程では、上記チューブ体の外周面のみを架橋する。このとき、例えば、チューブ体に軸芯を挿入した状態でチューブ体を加熱すると、軸芯によりその内周面には熱が伝わりにくくなる。これにより、チューブ体の外周面のみが加熱架橋されて、外周面のみにスキン層が形成される。
【0050】
また、スキン層を形成する工程では、導電性組成物を発泡させないようにすることが必要である。そのため、例えば、加圧下で上記チューブ体の外周面を架橋させることが好ましい。そして、スキン層の形成後には、常圧に戻すことで、発泡と架橋とを同時に最適な条件で行なうことができる。
【0051】
スキン層を形成する工程において、圧力としては、0.5〜30MPaの範囲内にあることが好ましい。圧力が0.5MPa未満では、発泡剤の発泡を抑える効果が低下しやすい。一方、圧力が30MPaを超えると、内部の発泡状態を制御しにくい。スキン層の厚みは、10〜100μmの範囲内にあることが好ましい。この観点から、加熱温度としては、120〜250℃の範囲内であることが好ましい。また、加熱時間としては、5〜3000秒の範囲内であることが好ましい。
【0052】
次いで、発泡架橋する工程では、チューブ体にスキン層が形成された後、さらに加熱する。このとき、導電性組成物の架橋速度が速い温度および発泡剤の分解温度以上の温度に加熱すると良い。また、架橋発泡を十分に進行させるためには、常圧下にすることが好ましい。これにより、スキン層以外の未架橋部分を架橋発泡することができる。架橋発泡を十分に進行させるなどの観点から、加熱温度としては、150〜300℃の範囲内であることが好ましい。また、加熱時間としては、5〜3000秒の範囲内であることが好ましい。
【0053】
スキン層を形成する工程においては、チューブ体は、外周面から内周面に向かって徐々に架橋される。すなわち、内周面から外周面に向かって、架橋が徐々に進行しており、架橋密度が高くなっている。そして、外周面のスキン層では、架橋がほぼ終わっている状態にあるため、発泡架橋する工程において、発泡剤が分解しても発泡セルが形成されない。一方で、スキン層の内側では、架橋の途中段階にあるか、または全く架橋していない状態にあるため、発泡架橋する工程において、発泡剤が分解すると発泡セルが形成される。そして、架橋状態に応じたセル径を有する発泡セルが形成される。したがって、本製造方法によれば、発泡弾性体の径方向内側に向かって徐々にセル径が大きくなる構成にすることができる。
【0054】
次に、本発明に係る電子写真機器用導電性ロールについて、図を参照して詳細に説明する。図2(a)、(b)は、それぞれ一実施形態に係る導電性ロールを表す周方向断面図である。導電性ロール20は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器に組み込まれる帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールに好適に用いられる導電性ロールであり、電子写真機器の内部に組み込まれる感光ドラムの周囲に配設される。
【0055】
図2(a)に示す導電性ロール20は、軸体となる導電性シャフト22と、導電性シャフト22の外周に形成され、上記発泡弾性体よりなる基層10と、基層10の外周に塗工され、1層よりなる塗工層24とを備えた構成をしている。導電性シャフト22を基層10に挿通することで、導電性シャフト22の外周に基層10が形成される。
【0056】
ここで、導電性シャフト22の外径は、導電性シャフト22を挿入する前のチューブ状の基層10の内径よりもやや大径に形成されていると良い。換言すれば、導電性シャフト22を挿入する前のチューブ状の基層10の内径は、導電性シャフト22の外径よりもやや小径に形成されていると良い。
【0057】
具体的には、導電性シャフト22を挿入する前のチューブ状の基層10の内径は、好ましくは、導電性シャフト22の外径の30〜85%の範囲内、より好ましくは、35〜83%の範囲内、さらに好ましくは、40〜80%の範囲内にあると良い。この範囲内にあれば、導電性シャフト22が挿入(圧入)されたときに、ロール周方向にチューブ状の基層10が伸ばされた状態、つまり、チューブ状の基層10のロール周方向に張力が発生した状態になる。そのため、耐ヘタリ性を向上させることができる。また、円筒精度が向上する等、ロール形状を良好にすることもできる。
【0058】
この際、導電性シャフト22を挿入する前のチューブ状の基層10の内径が導電性シャフト22の外径の30%未満になると、導電性シャフト22の挿入性(圧入性)が悪くなるとともに、基層10が裂け易くなる傾向が見られる。一方、導電性シャフト22を挿入する前のチューブ状の基層10の内径が導電性シャフト22の外径の85%を越えると、かえって耐ヘタリ性が悪くなる傾向が見られる。そのため、こららの点に留意すると良い。
【0059】
なお、基層10は基本的に上記した発泡弾性体よりなるものであるため、ここではこれ以上の説明を省略する。
【0060】
導電性シャフト22は、鉄、アルミニウム、銅等の金属製の中実体よりなる芯金、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体、またはこれらにめっきが施されたものなどが挙げられる。導電性シャフト22は、内周面と外周面とを貫通するガス抜き穴が形成されていない中実のものが好ましい。必要に応じて、導電性シャフト12の外周面に、接着剤やプライマーなどを塗布して、接着層を形成しても良い。接着剤やプライマーなどには、必要に応じて導電化を行なっても良い。
【0061】
塗工層24は、基層10の外周に塗工されており、導電性ロール20の表層を形成している。塗工層24には、例えば、耐久性を確保するために表面保護機能が要求される。また、例えば導電性ロール20が帯電ロールである場合には、帯電性などが要求される。また、例えば導電性ロール20が現像ロールである場合には、トナー帯電性やトナー離型性、残留電荷減衰性などが要求される。したがって、塗工層24を形成するには、要求される機能に応じた組成物を調製すると良い。
【0062】
塗工層24を形成する組成物の主材料としては、例えば、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ナイロン樹脂などの樹脂、ニトリルゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴムなどのゴム、これら樹脂やゴムをシリコーン、フッ素などで変性した変性物などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。より好ましくは、荷電性、耐ヘタリ性、耐久性、防汚性などの観点から、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂である。
【0063】
塗工層24中には、導電剤(カーボンブラックなどの電子系導電剤、第4級アンモニウム塩などのイオン系導電剤)、離型剤、硬化剤などの添加剤が1種または2種以上含有されていても良い。導電剤の配合量は、適宜調整すれば良い。
【0064】
本発明に係る電子写真機器用導電性ロール20は、図2(b)に示すように、基層10の外周に、2層よりなる塗工層24、26を備えた構成であっても良い。また、3層以上よりなる塗工層を備えた構成であっても良い。導電性ロールには、導電性ロールの種類により、あるいは電子写真機器の要求される性能などにより、種々の機能が要求される。そのため、要求される機能に応じて、適宜塗工層を1層または2層以上塗工形成すれば良い。
【0065】
図2(b)に示す導電性ロール20は、表層となる塗工層24の内側に中間層となる塗工層26を備えた構成をしている。中間層は、例えば、抵抗調整層として機能し得る。塗工層26には、中間層としての要求される機能に応じた組成物を調製すると良い。
【0066】
塗工層26を形成する組成物の主材料としては、例えば、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などのヒドリンゴムや、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム、ウレタン系エラストマー、フッ素ゴム、天然ゴム(NR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。より好ましくは、電気抵抗制御性、耐ヘタリ性などの観点から、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ヒドリンゴム、ウレタン系エラストマーである。
【0067】
塗工層26には、導電剤(カーボンブラックなどの電子系導電剤、第4級アンモニウム塩などのイオン系導電剤)を適宜添加することができる。さらに、必要に応じて、架橋剤、架橋促進剤、軟化剤(オイル)等を適宜添加しても良い。導電剤の配合量は、適宜調整すれば良い。
【0068】
上記塗工層24,26は、塗工により形成するため、薄く形成することができる。そのため、硬度の上昇を抑えつつ、各種機能を有する層を形成することができるなどの利点を有する。塗工ではなく、例えばチューブ体などで積層形成する構成であると、厚くなりすぎて、低硬度化を妨げる要因となりやすい。このような観点から、塗工層の厚みは、0.1〜50μmの範囲内にあることが好ましい。より好ましくは、0.5〜20μmの範囲内である。
【0069】
塗工方法は、特に制限されるものではなく、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法などの一般的な方法を適用することができる。塗工後、乾燥、加熱架橋処理すれば、塗工層を形成することができる。塗工層を形成する材料は、塗工するために液状であると良い。このとき、水系あるいは有機系の溶剤を適宜用いると良い。
【0070】
導電性ロール20の表面硬度(MD−1硬度)は、25〜55度の範囲内にあることが好ましい。表面硬度が25度未満では、ロール表面が柔軟になりすぎる。そのため、例えば現像ロールにおいては、トナーが食い込みやすく、フィルミングの原因になりやすい。一方、表面硬度が55度を超えると、ロール表面と接触する相手部材やトナーのストレスの原因となりやすく、耐久時の画像が悪化しやすい。
【0071】
導電性ロール20の体積抵抗は、1×10〜1×10Ωの範囲内にあることが好ましい。体積抵抗が1×10Ω未満では、導電剤の体積比率が増大し、十分な耐圧が得られにくい。一方、体積抵抗が1×10Ωを超えると、導電剤の体積比率が低減し、抵抗のムラが生じやすい。
【0072】
導電性ロール20を得るには、上記発泡弾性体の製造方法により作製した発泡弾性体よりなるチューブ状の基層10に導電性シャフト22を挿通し、この基層10の外周に塗工層24を塗工すれば良い。塗工層26を形成する場合には、塗工層26を形成した後、この塗工層26の外周に塗工層24を塗工すれば良い。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0074】
[原材料]
・EPDM (エスプレン505/住友化学社製)
・NBR (ニポールDN3335/日本ゼオン社製)
・ヒドリンゴム (エピクロマーCG102/ダイソー社製)
・カーボンブラック (ケッチェンブラックEC/ケッチェンブラック・インターナショナル社製)
・四級アンモニウム塩 (テトラメチルアンモニウムパークロレート)
・酸化亜鉛 (酸化亜鉛2種/堺化学工業株式会社製)
・ステアリン酸 (ルナックS30/花王株式会社製)
・プロセスオイル (ダイアナプロセスPW380/出光興産株式会社製)
・ADCA(発泡剤) (アゾジカルボンアミド/永和化成工業(株)製)
・OBSH(発泡剤) (4,4−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド/永和化成工業(株)製)
・硫黄 (軽井沢精錬社製)
・加硫促進剤1 (ジベンゾチアゾールジスルフィド)
・加硫促進剤2 (テトラメチルチオラムモノサルファイド)
・ナイロン (トレジンEF30T/長瀬ケムロック社製)
【0075】
<基層組成物の調製>
表1に示す各配合例1〜9の導電性組成物を調製した。
【0076】
【表1】

【0077】
<表層塗工液の調製>
ナイロン100質量部とカーボンブラック8質量部とをメタノール400質量部に加え、混合撹拌して表層塗工液を調製した。
【0078】
1.実験1
(実施例1)
配合例1の導電性組成物を、押出成形機で軸芯(φ6mm、SUS304)とともに同時押出して、軸芯の外周面に未架橋未発泡チューブ体を被覆してなる複合体を形成した。得られた複合体を加圧オーブンに投入し、3MPaの加圧下、200℃で15分間加熱処理を行ない、発泡を抑制した状態でゴム表面を架橋させた。その後、複合体から軸芯を除去してチューブ体とし、得られたチューブ体を、常圧下、200℃で30分間加熱処理を行ない、架橋発泡させた。これにより、外周面にスキン層を備え、内周面に開口した発泡セルを備えた発泡チューブ体を得た。
【0079】
得られた発泡チューブ体(厚み1.5mm)に導電性シャフト(φ6mm、長さ270mm)を挿入してロール体を作製した。得られたロール体の発泡チューブ体外周面に、表層塗工液を塗工し、100℃で30分間乾燥処理を行なって、厚み15μmの表層を形成した。以上のようにして、実施例1に係る導電性ロールを作製した。
【0080】
(実施例2〜4)
配合例1の導電性組成物に代えて、配合例2〜4の各導電性組成物を用いた点以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4に係る各導電性ロールを作製した。
【0081】
(比較例1)
配合例5および6の導電性組成物を、積層押出成形機で導電性シャフト(φ6mm、SUS304)とともに同時押出して、導電性シャフトの外周に2層のゴム層を積層してなる複合体を形成した。得られた複合体を筒状金型(φ9.0mm、SUS304)に挿入後、160℃で30分間加熱処理を行ない、ゴム層の内層を架橋発泡させた。これにより、ロール体を作製した(内層厚み1mm、外層厚み0.5mm)。次いで、実施例1と同様にして、厚み15μmの表層を形成した。以上のようにして、比較例1に係る導電性ロールを作製した。
【0082】
(比較例2)
配合例4の導電性組成物を、押出成形機で導電性シャフト(φ6mm、SUS304)とともに同時押出して、導電性シャフトの外周面に未架橋未発泡チューブ体を被覆してなる複合体を形成した。得られた複合体を筒状金型(φ9.0mm、SUS304)に挿入後、160℃で30分間加熱処理を行ない、チューブ体を架橋発泡させた。これにより、ロール体を作製した(ゴム層厚み1.5mm)。次いで、実施例1と同様にして、厚み15μmの表層を形成した。以上のようにして、比較例2に係る導電性ロールを作製した。
【0083】
(比較例3)
比較例2において、筒状金型(φ9.0mm、SUS304)に代えて、φ9.0mmの通気性金属筒状金型を用いて複合体を加熱処理した点以外は、比較例2と同様にして、比較例3に係る導電性ロールを作製した。
【0084】
(比較例4)
比較例2において、導電性シャフト(φ6mm、SUS304)に代えて、φ6mmの通気性金属シャフトとともに同時押出した点以外は、比較例2と同様にして、比較例4に係る導電性ロールを作製した。すなわち、比較例4に係る導電性ロールは、導電性シャフトが通気性金属で形成されている。
【0085】
(比較例5)
比較例2において、複合体を60℃乾熱環境下で24時間熟成させた後、複合体を160℃で30分間加熱処理した点以外は、比較例2と同様にして、比較例5に係る導電性ロールを作製した。
【0086】
<各導電性ロールの評価>
実施例1〜4および比較例1〜5に係る各導電性ロールについて、以下の評価方法に基づいて、表面性評価および硬度評価を行なった。また、MD−1硬度を測定した。その結果を表2に示す。また、併せて生産工程の比較を表2に示す。
【0087】
(表面性評価)
各導電性ロールを、帯電ロールとして市販のカラーレーザープリンター(HP製、Color Laser Jet 3800dn)にセットし、15℃×10%RH環境下で25%ハーフトーン画像出しを行なった。出力画像上に斑点状の黒点不具合が発生しなかったものを「○」、出力画像上に斑点状の黒点不具合が発生したが軽微なものを「△」、出力画像上に斑点状の黒点不具合が顕著に発生したものを「×」とした。
【0088】
(硬度評価)
各導電性ロールを、帯電ロールとして市販のカラーレーザープリンター(HP製、Color Laser Jet 3800dn)にセットし、15℃×10%RH環境下、5%濃度でカートリッジの寿命まで耐久出力した。耐久後に感光ドラム表面および導電性ロール表面にトナー融着がなかったものを「○」、耐久後に感光ドラム表面および導電性ロール表面にトナー融着があったが出力画像に変化がないものを「△」、耐久後に感光ドラム表面および導電性ロール表面にトナー融着があり、出力画像に露呈するものを「×」とした。
【0089】
(MD−1硬度)
各導電性ロールの表面硬度を、MD−1硬度計(高分子計器(株)製、「マイクロゴム硬度計MD−1型」)により測定(N=3)した。
【0090】
【表2】

【0091】
比較例1では、発泡ゴム層の上に非発泡ゴム層を積層している。そのため、ロール表面の硬度が高くなり、耐久後の画像不具合が生じている。また、比較例1では、ゴム層を積層する工程が発生するため、工程が煩雑になり、製造コストの上昇を招く。さらに、金型を用いているため、製造コストの上昇を招く。
【0092】
比較例2では、基層が単なる発泡ゴムで形成されている。そのため、基層の外周面に開口した発泡セルが形成され、表面凹凸が大きくなっている。これにより、表面性に劣り、画像不具合が発生している。また、金型を用いているため、製造コストの上昇を招く。
【0093】
比較例3では、通気性金属よりなる特殊な金型を用いて、金型よりガス抜きをしながら基層を発泡させている。これにより得られた基層を備えた導電性ロールは、画像特性が悪く、表面性に劣っている。また、特殊な金型を要するため、製造コストの上昇を招く。
【0094】
比較例4では、通気性金属よりなる特殊なシャフトを用いて、ガス抜きをしながら基層を発泡させている。これにより得られた基層を備えた導電性ロールは、画像特性が悪く、表面性に劣っている。また、特殊なシャフトを要するため、製造コストの上昇を招く。また、金型を用いているため、製造コストの上昇を招く。
【0095】
比較例5では、架橋発泡する前のゴム層を24時間低温熟成させた後、基層を発泡させている。これにより得られた基層を備えた導電性ロールは、ロール表面の硬度が高く、耐久後の画像不具合が生じている。また、熟成工程が必要になり、生産性に劣っている。
【0096】
これに対し、実施例1〜5に係る各導電性ロールの基層は、外周面にスキン層を備え、内周面に開口した発泡セルを備えており、低硬度で外周面が平滑性に優れている。外周面が平滑性に優れているため、外周面に各種機能を有する塗工層を塗工可能になっている。そして、これを基層に用いた各導電性ロールは、画像特性および耐久後の画像特性に優れている。したがって、実施例1〜5に係る各導電性ロールが、低硬度で表面性に優れることが確認できた。また、製造コストの上昇につながる要因もなく、生産性にも優れる。
【0097】
2.実験2
(実施例5〜11)
配合例7〜9の各導電性組成物を、押出成形機で径の異なる軸芯(φ2〜6mm、SUS304)とともに同時押出して、各軸芯の外周面に各未架橋未発泡チューブ体を被覆してなる各複合体を形成した。得られた各複合体を加圧オーブンに投入し、1MPaの加圧下、150℃で15分間加熱処理を行ない、発泡を抑制した状態でゴム表面を架橋させた。その後、各複合体から各軸芯を除去して各チューブ体とし、得られた各チューブ体を、常圧下、150℃で30分間加熱処理を行ない、架橋発泡させた。これにより、外周面にスキン層を備え、内周面に開口した発泡セルを備えた各発泡チューブ体(実施例5〜11)を得た。
【0098】
得られた各発泡チューブ体(厚み1.5mm)に導電性シャフト(φ6mm、長さ270mm)を挿入して各ロール体を作製した。得られた各ロール体の発泡チューブ体外周面に、表層塗工液を塗工し、120℃で30分間乾燥処理を行なって、厚み15μmの表層を形成した。以上のようにして、実施例5〜11に係る導電性ロールを作製した。
【0099】
なお、同様にして、内径φ1.5mmの発泡チューブ体を作製し、チューブ内に外径φ6mmの導電性シャフトを挿入しようと試みたが、挿入が困難であった。
【0100】
<各導電性ロールの評価>
実施例5〜11に係る各導電性ロールについて、以下の電気抵抗分布、画像周ムラ、耐ヘタリ性の評価を行なった。なお、参考データとして、MD−1硬度およびAsker−C硬度を測定した。その結果を表3に示す。
【0101】
(電気抵抗分布の測定)
厚み5mmの円盤状回転電極の周面を、導電性ロールの表面に軸方向を合わせて荷重35gで押し当てた。この状態で導電性ロールを60rpmの回転数にて回転させ、導電性シャフトに−200Vの直流電圧を印加した。その後、回転電極を導電性ロールの軸方向に5mm/秒の速度で移動させ、ロール表面を螺旋状に全面接触させた。その間、導電性ロールを通じて流れた電流を記録し、その最大値:αと、最小値:βとから、下式(1)を用いて電気抵抗分布を桁数として算出した。
電気抵抗分布=Log10(α/β)・・・(1)
【0102】
(画像周ムラ)
導電性ロールを、帯電ロールとして、帯電ロールとして市販のカラーレーザープリンター(HP製、Color Laser Jet 3800dn)のカートリッジにセットし、黒ベタおよび25%ハーフトーン画像出しを行なった。得られた画像いずれにおいてもロールピッチで画像濃度ムラがないものを「優」、ロールピッチで軽微な画像濃度ムラがあるものを「良」、ロールピッチで明確な画像濃度ムラがあるものを「劣」とした。
【0103】
(耐ヘタリ性)
導電性ロールを、帯電ロールとして、帯電ロールとして市販のカラーレーザープリンター(HP製、Color Laser Jet 3800dn)のカートリッジにセットし、その状態で40℃×95%RH環境下に1週間放置し、その後、25%ハーフトーン画像出しを行った。得られた画像において、ロールピッチで画像スジがないものを「優」、ロールピッチで軽微な画像スジがあるものを「良」、ロールピッチで明確な画像スジがあるものを「劣」とした。
【0104】
【表3】

【0105】
表3を相対比較すると、以下のことが分かる。実施例6に比べ、実施例7〜11は、耐ヘタリ性が向上されていることが分かる。これは、導電性シャフトの外径の30%〜85%の範囲内にある内径を有する発泡チューブ体内に導電性シャフトを挿入することにより(実施例7〜11)、ロール周方向に発泡チューブ体が伸ばされた状態、つまり、発泡チューブ体のロール周方向に張力が発生した状態になり、反発性が高まったためである。また、これら実施例7〜11は、いずれも円筒度が高く、ロール形状も良好であった。
【0106】
また、実施例5に比べ、実施例7〜11は、画像周ムラが発生し難かった。これは、実施例7〜11では、発泡チューブ体をイオン導電性ゴム材料により形成したため、電気抵抗分布を均一化することができたためである。
【0107】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】一実施形態に係る発泡弾性体を表す周方向断面図である。
【図2】一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールを表す周方向断面図である。
【符号の説明】
【0109】
10 発泡弾性体(基層)
12 スキン層
14 発泡セル
14a 開口した発泡セル
20 電子写真機器用導電性ロール
22 導電性シャフト
24 表層
26 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真機器用導電性ロールに用いられるチューブ状の発泡弾性体であって、
外周面にスキン層を備え、かつ、内周面に開口した発泡セルを備えていることを特徴とする発泡弾性体。
【請求項2】
前記スキン層の厚みは、10〜100μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の発泡弾性体。
【請求項3】
前記発泡弾性体の発泡セルは、径方向内側に向かって徐々にセル径が大きくなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡弾性体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の発泡弾性体と、
前記発泡弾性体に挿入された軸体とを備えたことを特徴とする電子写真機器用導電性ロール。
【請求項5】
前記軸体の外径の30%〜85%の範囲内にある内径を有するチューブ状の発泡弾性体内に前記軸体が挿入されていることを特徴とする請求項4に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項6】
前記発泡弾性体は、イオン導電性ゴム材料より形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項7】
前記軸体は中実体であることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項8】
電子写真機器用導電性ロールに用いられる発泡弾性体の製造方法であって、
未架橋未発泡のチューブ体を成形する工程と、
前記チューブ体の外周面を未発泡で架橋してスキン層を形成する工程と、
前記スキン層を形成した後の未架橋部分を発泡架橋する工程とを有することを特徴とする発泡弾性体の製造方法。
【請求項9】
前記スキン層を形成する工程において、前記チューブ体に軸芯を挿入した状態で前記チューブ体を加熱することを特徴とする請求項8に記載の発泡弾性体の製造方法。
【請求項10】
前記スキン層を形成する工程において、加圧下で前記チューブ体を加熱することを特徴とする請求項8または9に記載の発泡弾性体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−237532(P2009−237532A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292914(P2008−292914)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】