説明

発泡成形型に使用されるコアベント及び発泡成形方法

【課題】 内面に多数の凹凸を形成した発泡成形型を使用する場合において、発泡成形体の表面に生じるコアベントに起因した模様を目立ちにくくすることによって、発泡成形体の美観の更なる向上を図る。
【解決手段】 内面に多数の凹凸が形成された発泡成形型への装着状態において成形空間に面する一端面5に、多数の蒸気孔4が開口しているコアベント1であって、前記一端面5には、蒸気孔4の開口4aよりも前方に突出した凸部又は蒸気孔4の開口4aよりも後方に凹んだ凹部7が多数形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形型に使用されるコアベント及び発泡成形方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二つの発泡成形型(コア型とキャビティ型)の間の成形空間(キャビティ)に発泡性の熱可塑性樹脂粒子を充填し、加熱媒体としての蒸気を成形空間に入れて前記粒子を加熱膨張させる発泡成形方法が知られている。そして、該方法においては、成形型にコアベントを多数装着し、そのコアベントの蒸気孔から成形空間に蒸気を流入させている(例えば下記特許文献1)。また、発泡成形型の内面に多数の凹凸を形成し、該凹凸模様を発泡成形体の表面に転写することも行われている。
【特許文献1】特開2005−51979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように発泡成形体の表面に凹凸模様を転写すると発泡粒子による亀甲模様が目立ちにくくなるという利点があるが、発泡成形体の表面に、多数のコアベントに起因した多数の円形模様も同時に形成されることとなり、このコアベントの模様が目立つようになるという問題がある。
【0004】
それゆえに本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされ、内面に多数の凹凸を形成した発泡成形型を使用する場合において、発泡成形体の表面に生じるコアベントに起因した模様を目立ちにくくすることによって、発泡成形体の美観の更なる向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、本発明に係る発泡成形型に使用されるコアベントは、内面に多数の凹凸が形成された発泡成形型への装着状態において成形空間に面する一端面に、多数の蒸気孔が開口しているコアベントであって、前記一端面には、蒸気孔の開口よりも前方に突出した凸部又は蒸気孔の開口よりも後方に凹んだ凹部が多数形成されていることを特徴とする。
【0006】
該構成のコアベントを内面に多数の凹凸が形成された発泡成形型に装着して発泡成形を行うのであるが、該装着状態において成形空間に面するコアベントの一端面には多数の蒸気孔が開口しており、このコアベントの蒸気孔を介して成形空間に蒸気が流入されることとなる。そして、そのコアベントの一端面には蒸気孔の開口よりも前方に突出した凸部又は蒸気孔の開口よりも後方に凹んだ凹部が多数形成されていて、発泡成形型の内面と同様にコアベントの一端面も平坦面ではなく凹凸面となっている。従って、得られた発泡成形体の表面におけるコアベントに対応した部分には、他の部分同様に凹凸模様が形成されることとなる。
【0007】
特に、一端面に蒸気孔の開口よりも後方に凹んだ凹部が多数形成されることにより、一端面における凸部と凹部のうちの凸部に蒸気孔の開口が位置していることが好ましい。即ち、蒸気孔の開口が凹部側ではなく凸部側にあって凹部よりも開口が前方に位置すると、蒸気孔の開口から出る離型エアーが発泡成形体の凹形状に沿って流れることになり、発泡成形体が発泡成形型から浮きやすくなって離型性に優れる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、コアベントの一端面に蒸気孔の開口よりも前方に突出した凸部又は蒸気孔の開口よりも後方に凹んだ凹部が多数形成されているので、発泡成形体の表面全体に凹凸模様が形成されることとなり、コアベントの一端面の輪郭に起因した模様が目立ちにくくなって発泡成形体の美観を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るコアベントの一実施形態について図面を参酌しつつ説明する。
図1乃至図3に本実施形態におけるコアベントを示しているが、該コアベント1は、全体として円筒状であって、その一端側には所定厚の円盤状の壁面部2を有し、その他端側は開口している。即ち、コアベント1の他端側にはコアベント1の軸線Tと同軸状の丸形の大孔3がザグリ状に形成されていて、該大孔3の深さがコアベント1の軸線方向の全長の半分以上であることから、前記円盤状の壁面部2の厚さはコアベント1の軸線方向の全長の半分以下となっている。そして、壁面部2には、それを貫通するように軸線方向に沿った丸形の蒸気孔4が多数形成されていて、該蒸気孔4はその他端側において大孔3と連通している。従って、蒸気は大孔3から各蒸気孔4へ流入して、コアベント1の一端面5における蒸気孔4の開口4aから出ていくこととなる。蒸気孔4の数は任意であるが、例えば、5〜30個(より好ましくは6〜24個)である。
【0010】
このように、コアベント1の一端面5には蒸気孔4の開口4aが多数形成されているのであるが、この一端面5は平坦面ではなく凹凸面となっている。即ち、コアベント1の一端面5には直交する二方向に伸びる突条6がそれぞれ所定間隔毎に複数形成され、各突条6は直線状であって且つ円形の一端面5の端から端まで形成されている。従って、二方向の突条6が一端面5に格子状に形成されることで、二方向の突条6によって区画された正方形の領域は凹部7となっている。各突条6の高さは一定であるので、全ての凹部7の深さも一定であり、凹部7の底面はフラットとされている。なお、突条6は断面三角形状であって、頂角は鋭角である。なお、突条6間のピッチは例えば1〜4.5mm(より好ましくは1.5〜4mm)であり、突条6の高さは例えば0.3〜2mm(より好ましくは0.8〜1.2mm)である。
【0011】
そして、二方向の突条6が交叉する交叉部8に前記蒸気孔4の開口4aが形成されている。従って、凹部7は蒸気孔4の開口4aより後方に位置し、換言すれば、開口4aは凸部側にある。なお、図3に示すように、大孔3に対応した円形の領域の中に存在する全ての交叉部8にそれぞれ蒸気孔4の開口4aが位置しており、その領域外に位置する交叉部8には蒸気孔4の開口4aは存在しない。また、蒸気孔4の開口4aの直径は突条6の幅よりも小さい。
【0012】
なお、コアベント1は一般的には真鍮、アルミニウム、アルミ合金、スレンレス等の金属から形成されるが、樹脂を使用することも可能である。また、発泡樹脂の付着を抑制するために被覆コート品とすることが好ましい。更に、コアベント1の直径は一般的には数mmから十数mm(例えば6〜10mm)のものが使用され、蒸気孔4は例えば直径0.5〜1.5mm(より好ましくは0.8〜1.2mm)のものが使用される。
【0013】
以上のように構成されたコアベント1は、その一端面5が成形空間11(キャビティ)に面するようにして発泡成形金型12(発泡成形型)に多数装着されるが、具体的には、図4のように、発泡成形金型12に形成された貫通孔13に圧入により装着される。そして、チャンバ14からコアベント1の大孔3と各蒸気孔4とを通過して蒸気が成形空間11へと入れられる。なお、図4では、発泡成形金型12の厚さとコアベント1の軸線方向全長とが略等しく、従って、コアベント1の一端面5は発泡成形金型12の内面12aと略面一である。なお、金型材料としては例えばアルミニウムやステンレスが使用される。
【0014】
かかる発泡成形金型12の内面12aには、発泡成形体の表面の亀甲模様を目立ちにくくするため、あるいは、使用状態において近接する他の部材に発泡成形体が擦れた際における擦れ音の抑制のため、多数の凹凸が形成されている。その凹凸の形成手法としては種々のものが採用可能であって、例えば、木型(原型)から砂型を作成し、その砂型から発泡成形金型12を鋳造する手法の場合、木型に合成樹脂性のメッシュシートを取り付けてその凹凸模様を順次転写させることによって、発泡成形金型12の内面12aに凹凸模様を形成することができる。なお、メッシュシートを使用する以外に、金網やパンチングメタルを使用することもできる。そして、図4には、発泡成形金型12の凹凸の高さ(深さ)とコアベント1の突条6の高さとを等しくした場合を示している。
【0015】
以上のような発泡成形金型12を使用して例えばポリスチレン系樹脂、スチレン改質ポリエチレン系樹脂、スチレン改質ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等からなる発泡成形体(例えば自動車用内装部材)を成形により形成すると、その発泡成形体の表面には発泡成形金型12の内面12aの凹凸模様が転写されると共にコアベント1の一端面5における凹凸模様も転写される。従って、発泡成形体の表面全体に凹凸模様が形成されるので、その表面において亀甲模様が目立ちにくくなると同時にコアベント1の一端面5の輪郭である円形の模様も目立ちにくくなり、外観上極めて良好な発泡成形体を得ることができる。このコアベント1は多数使用するものであるので、発泡成形体の表面にもコアベント1の模様が多数存在しやすいのであるが、そのコアベント1の模様が目立ちにくくなることで全体として良好な外観が得られるのである。
【0016】
また、突条6に蒸気孔4の開口4aを設けているので、発泡成形金型12の凸形状即ち発泡成形体の凹形状に沿って離型エアーが流れて、発泡成形体の発泡成形金型12からの離型性が向上する。特に、交叉部8に開口4aを設けているので、離型エアーが四方に流れて、より一層離型性に優れる。
【0017】
なお、蒸気孔4の開口4aを交叉部8に設ける以外に、例えば、交叉部8以外の突条6の部分に設けたり、凹部7の底面に設けたりしてもよい。凹部7の底面に蒸気孔4の開口4aを設けた場合には、突条6は蒸気孔4の開口4aから前方に突出することとなる。
【0018】
また、丸形の蒸気孔4を形成した場合について説明したが、スリット状の蒸気孔4としてもよい。
【0019】
更に、二方向の突条6を直交させたが鋭角に交叉させてもよく、また、一方向のみに突条6を設けてもよい。
【0020】
また、突条6を直線状ではなく波形状としたり、あるいは、突条6に代えて丸形や角形等の凸部を多数突設したり、逆に、丸形や角形等の凹部7を凹設したりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るコアベントを示す斜視図。
【図2】同コアベントの一部破断線を含む側面図。
【図3】同コアベントの正面図。
【図4】同コアベントを発泡成形型に装着した状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0022】
1…コアベント、2…壁面部、3…大孔、4…蒸気孔、4a…開口、5…一端面、6…突条、7…凹部、8…交叉部、11…成形空間、12…発泡成形金型(発泡成形型)、13…貫通孔、14…チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に多数の凹凸が形成された発泡成形型への装着状態において成形空間に面する一端面に、多数の蒸気孔が開口しているコアベントであって、
前記一端面には、蒸気孔の開口よりも前方に突出した凸部又は蒸気孔の開口よりも後方に凹んだ凹部が多数形成されていることを特徴とする発泡成形型に使用されるコアベント。
【請求項2】
前記一端面に蒸気孔の開口よりも後方に凹んだ凹部が多数形成されることにより、一端面における凸部と凹部のうちの凸部に蒸気孔の開口が位置している請求項1記載のコアベント。
【請求項3】
内面に多数の凹凸が形成され且つ請求項1又は2記載のコアベントが装着された発泡成形型を使用することを特徴とする発泡成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−83194(P2009−83194A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253672(P2007−253672)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】