説明

発泡成形用金型及び発泡成形方法

【課題】キャビティの内方へ突出する凸部が設けられていても、脱型後のフィルム復帰時にフィルムをスムーズにキャビティの内面に沿って配置することが可能な発泡成形用金型と、この発泡成形用金型を用いた発泡成形方法とを提供する。
【解決手段】金型10は、上型12及び下型11を有している。金型10は、少なくとも下型11のキャビティ13の内面に沿って配設されたフィルム20と、該フィルム20とキャビティ13の内面との間への流体の供給及び該流体の排出のための給排手段とを備えている。キャビティ13内には、該キャビティ13の内方へ突出する凸部30が設けられている。凸部30は、フィルム20と共にキャビティ13の内面に対し接近及び離反移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム等の発泡成形品を製造するための発泡成形用金型(以下、金型と略すことがある。)に係り、特にキャビティ内面に沿ってフィルムが配置されており、脱型時に該フィルムとキャビティ内面との間に流体を供給することにより、該フィルムをキャビティ内面から浮き上がらせて成形品をキャビティ内から押し出すように構成された発泡成形用金型に関する。また、本発明は、この発泡成形用金型を用いた発泡成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームを成形する場合、上型及び下型よりなる金型の該下型内にウレタン原液を注入し、型締めして発泡させ、硬化後に型開きして脱型を行う。
【0003】
この脱型を効率良く行う方法として、特開平9−234748号公報、特開2004−130629号公報には、下型のキャビティ内面に沿ってフィルムを配置しておき、型開き後の脱型に際しては、フィルムとキャビティ内面との間に空気を供給してフィルムをキャビティ内面から離反させ、このフィルムによって成形品を押し上げて取り出すようにした方法が記載されている。
【0004】
この方法にあっては、脱型後には、フィルムとキャビティ内面との間から空気を排出させ、フィルムを再びキャビティの内面に沿わせてから次の成形サイクルに移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−234748号公報
【特許文献2】特開2004−130629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2の方法にあっては、下型のキャビティ内面に、該キャビティの内方へ突出する凸部が設けられていると、脱型後にフィルムを再びキャビティ内面に沿って配置する際に、フィルムがこの凸部に引っ掛かり、フィルムをスムーズにキャビティ内面に沿って配置しにくくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点を解決し、キャビティの内方へ突出する凸部が設けられていても、脱型後のフィルム復帰時にフィルムをスムーズにキャビティの内面に沿って配置することが可能な発泡成形用金型と、この発泡成形用金型を用いた発泡成形方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)の発泡成形用金型は、少なくとも上型及び下型を有する発泡成形用金型であって、少なくとも該下型のキャビティの内面に沿って配設されたフィルムと、該フィルムと該キャビティの内面との間への流体の供給及び該流体の排出のための給排手段とを備えた発泡成形用金型において、該キャビティ内に突出する凸部が設けられており、該凸部は、該フィルムと共に該キャビティの内面に対し接近及び離反移動可能であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発泡成形用金型は、請求項1において、前記凸部は、前記下型及び前記フィルムと別体に構成され、該フィルムに取り付けられたものであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の発泡成形用金型は、請求項1において、前記凸部は、前記フィルムと一体に構成されたものであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の発泡成形用金型は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記凸部は、前記キャビティ内を複数の成形空間に仕切る壁状のものであり、該金型を型締めした状態において、該凸部の上端と前記上型との間には、該成形空間同士を連通する連通空間が存在しており、各成形空間で成形された発泡成形体同士が該連通空間を介して連結されるように構成されており、該凸部には、該凸部の上端から凹陥する溝部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の発泡成形用金型は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記凸部は、前記キャビティ内を縦断するように延在しており、該凸部の延在方向の両端側はそれぞれ該キャビティの側面に対峙しており、該凸部は、下端の少なくとも一部が前記フィルムに結合されており、その延在方向の両端側は、該フィルムに対し非結合とされていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明(請求項6)の発泡成形方法は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発泡成形用金型を用いた発泡成形方法であって、前記キャビティに発泡成形材料を供給して成形品を発泡成形し、該成形品を脱型するに際しては、型開き後、前記給排手段によって前記フィルムと該キャビティの内面との間に流体を供給することにより、該フィルムを該キャビティの内面から離反させ、該フィルムにより該成形品を該キャビティ内から押し出し、該成形品を脱型した後、該給排手段によって該フィルムと該キャビティの内面との間から流体を排出させることにより、該フィルムを該キャビティの内面に接近させ、該フィルムを該キャビティの内面に沿わせることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発泡成形用金型にあっては、キャビティの内方に突出する凸部は、該キャビティの内面を覆うフィルムと共に、該キャビティの内面に対し接近及び離反移動可能となっている。即ち、この金型から成形品を脱型するに際し、フィルムとキャビティの内面との間に給排手段により流体を供給し、フィルムをキャビティの内面から離反させたときには、凸部はこのフィルムと共にキャビティの内面から離反する。また、金型から成形品を脱型した後、フィルムとキャビティの内面との間から給排手段により流体を排出させてフィルムを元の位置に復帰させるときには、凸部はこのフィルムと共にキャビティの内面に接近する。これにより、フィルムの復帰時に、該フィルムは、凸部に引っ掛かることなく、スムーズにキャビティの内面に沿って再配置される。
【0015】
この凸部は、請求項2の通り、下型及びフィルムと別体に構成され、該フィルムに取り付けられたものであってもよく、請求項3の通り、該フィルムと一体に構成されたものであってもよい。凸部をフィルムと別体に構成して該フィルムに取り付けることにより、比較的フィルムと一体に成形しにくい形状の凸部であっても、フィルムに設けることができる。凸部をフィルムと一体に構成した場合には、フィルムに容易に凸部を設けることができる。
【0016】
請求項4の態様にあっては、凸部は、キャビティ内を複数の成形空間に仕切る壁状のものであり、各成形空間で成形された発泡成形体同士は、この凸部の上端と上型との間の連通空間を介して連結される。この凸部には、該凸部の上端から凹陥する溝部が設けられている。そのため、各成形空間の発泡成形体は、凸部の上端と上型との間の連通空間を介して各々の上端部同士が連結されるだけでなく、この溝を介して該上端部よりも下側の部分同士も連結されるため、各成形空間の発泡成形体同士の連結強度がより高いものとなる。
【0017】
請求項5の態様にあっては、凸部は、キャビティ内を縦断するように延在しており、その延在方向の両端側は、それぞれ該キャビティの側面に対峙したものとなっているが、この凸部は、下端のみがフィルムに結合され、その延在方向の両端側はフィルムに対し非結合とされている。そのため、脱型時には、フィルムは比較的容易にキャビティの外側へ膨らみ出すように反転してキャビティの内面から離反することができる。
【0018】
かかる本発明の発泡成形用金型を用いた本発明の発泡成形方法にあっては、金型から成形品を脱型した後、フィルムをスムーズにキャビティの内面に沿って再配置することができるので、迅速に次の成形サイクルに移行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係る発泡成形用金型の縦断面図である。
【図2】成形品脱型時及び脱型後のフィルム復帰時を示す、図1の金型の縦断面図である。
【図3】成形品脱型時及び脱型後のフィルム復帰時を示す、図1の金型の縦断面図である。
【図4】実施の形態に係る発泡成形用金型の縦断面図である。
【図5】実施の形態に係る発泡成形用金型の縦断面図である。
【図6】図5のVIA付近及びVIB付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明の一例であり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0021】
[第1の実施の形態]
第1図(a),(b)は、それぞれ、第1の実施の形態に係る発泡成形用金型の縦断面図である。第2図(a)及び第3図(a)は、それぞれ、この金型における成形品の脱型時の縦断面図であり、第2図(b)及び第3図(b)は、それぞれ、脱型後のフィルム復帰時の縦断面図である。なお、第1図(a)は、この金型のキャビティ内に設けられた凸部としての仕切部の延在方向と直交方向の断面(第1図(b)のA−A線に沿う断面)を示し、第1図(b)は、この仕切部の延在方向と平行方向の断面(第1図(a)のB−B線に沿う断面)を示している。第2図(a),(b)は、それぞれ、第1図(a)と同様部分の断面を示し、第3図(a),(b)は、それぞれ、第1図(b)と同様部分の断面を示している。
【0022】
この金型10は、下型11と上型12とからなり、下型11に、凹所よりなるキャビティ13が設けられている。なお、金型10の構成はこれに限定されるものではなく、金型10は、さらに中子等を備えていてもよい。キャビティ13は、上型12側ほど開口面積が大きくなるテーパ形状(抜きテーパが付いた形状)となっている。
【0023】
この実施の形態では、金型10は、ポリウレタンフォームよりなる成形品40(第2図(a))を発泡成形するためのものである。この実施の形態では、成形品40は、物性ないし特性が異なる2部分のポリウレタンフォーム成形部(以下、成形部と略すことがある。)41,42が該キャビティ13内で一体成形されてなるものである。
【0024】
第1の成形部41と第2の成形部42とは、互いに配合が異なる第1のウレタン原液と第2のウレタン原液とをキャビティ13内にそれぞれ注入して発泡させることにより一体成形される。第1のウレタン原液が発泡してなるポリウレタンフォームにより第1の成形部41が成形され、第2のウレタン原液が発泡してなるポリウレタンフォームにより第2の成形部42が成形される。
【0025】
この実施の形態では、キャビティ13の内面に沿って、成形品40の脱型を容易化するためのフィルム20が配設されている。このフィルム20は、予め真空成形法等により該キャビティ13の内面と相似ないし略同一形状に成形されている。このフィルム20の周縁部は、下型11の上端面に重ね合わされてパッキン及び押さえ部材(図示略)等により該上端面に保持されている。このフィルム20は、ポリウレタンフォームからの剥離性が良好で且つ比較的柔軟に変形可能な材料、例えばポリプロピレン等により構成されていることが好ましい。なお、フィルム20の配置及び構成はこれに限定されない。
【0026】
下型11には、フィルム20とキャビティ13の内面との間に連通する連通口14が設けられている。この実施の形態では、キャビティ13の底面に複数個の連通口14が設けられているが、連通口14の個数及び配置はこれに限定されない。下型11には、この連通口14を介してフィルム20とキャビティ13の内面との間に気体(好ましくは空気)を供給したり、これらの間から気体を排出するための気体給排手段(図示略)が設けられている。
【0027】
この気体給排手段によってフィルム20とキャビティ13の内面との間に気体が供給されることにより、第2図(a)及び第3図(a)の通り、フィルム20がキャビティ13の内面から浮き上がって成形品40をキャビティ13内から押し出す。その後、気体給排手段によってフィルム20とキャビティ13の内面との間から気体が排出されることにより、第2図(b)及び第3図(b)の通り、フィルム20がキャビティ13の内面に接近し、再びキャビティ13の内面に沿って配置される(フィルム20が元の位置に戻る)。
【0028】
なお、給排手段により給排される気体は空気に限定されない。また、給排手段により給排される流体は気体に限定されない。給排手段により水や油等の液体が給排されてもよい。
【0029】
この実施の形態では、キャビティ13内に、該キャビティ13の底面から上型12に向かって立ち上がる立壁状の仕切部30が設置されている。この実施の形態では、該仕切部30が、キャビティ13の内方へ突出する凸部を構成している。この仕切部30は、第1図(a),(b)の通り、キャビティ13内を縦断するように延在しており、その延在方向(キャビティ縦断方向)の両端側は、それぞれ該キャビティ13の側面に対峙している。この仕切部30により、キャビティ13内は、第1の成形部41を成形するための第1の成形空間Sと、第2の成形部42を成形するための第2の成形空間Sとに仕切られている。第1図(a)の通り、仕切部30は、上端側ほど厚さ(仕切部30の起立方向及び延在方向と直交方向の厚さ。以下、同様。)が小さくなるテーパ形状(抜きテーパが付いた形状)となっている。第1図(a),(b)の通り、下型11と上型12とを型締めした状態においては、仕切部30の上端と上型12との間に、第1の成形空間Sと第2の成形空間Sとを連通する連通空間Sが存在する。
【0030】
仕切部30は、フィルム20と共にキャビティ13の底面に対し接近及び離反移動可能となっている。
【0031】
この実施の形態では、仕切部30は、下型11及びフィルム20と別体に成形され、該フィルム20に取り付けられたものとなっている。この実施の形態では、仕切部30は、フィルム20と別々に成形された後、フィルム20のうちキャビティ13の底面を覆う部分の上側に起立姿勢にて配置され、その下端の少なくとも一部が接着や溶着等の結合手段により該フィルム20に結合されている。
【0032】
この実施の形態では、第3図(a)の通り、仕切部30の延在方向の両端側は、フィルム20に対し非結合とされている。これは、第2図(a)及び第3図(a)の通り、フィルム20がキャビティ13の内面から浮き上がるときに、フィルム20が該キャビティ13の外側へ膨らみ出すように反転するのを容易化するためである。
【0033】
フィルム20がキャビティ13の内面を覆った状態にあるときには、第1図(b)の通り、仕切部30の延在方向の両端側は、キャビティ13の側面を覆ったフィルム20に実質的に当接している。なお、「実質的に当接」とは、仕切部30の両端側がフィルム20に隙間なく接触しているか、又は、接触していなくても、両者の間の隙間は、発泡成形時にウレタン原液が通り抜けられない程度の大きさであることをいう。
【0034】
仕切部30の構成材料に特に制限はないが、フィルム20への結合の容易さ、重量、及びポリウレタンフォームからの剥離性などの観点から、フィルム20と同様の材料(特にポリプロピレン)により構成されていることが好ましい。なお、仕切部30の構成やフィルム20への設置方法はこれに限定されない。
【0035】
このように構成された金型10を用いた成形品40の成形手順は、以下の通りである。まず、第1図(a),(b)、第2図(b)及び第3図(b)の通り、フィルム20をキャビティ13の内面に密着させた状態とする。このとき、キャビティ13内は、仕切部30により、第1の成形空間Sと第2の成形空間Sとに仕切られている。次に、上型12を開けて第1の成形空間Sに第1のウレタン原液を注入すると共に、第2の成形空間Sに第2のウレタン原液を注入し、その後、下型11と上型12とを型締めして各ウレタン原液を加熱・発泡させる。
【0036】
このとき、第1のウレタン原液が発泡してなるポリウレタンフォームと、第2のウレタン原液が発泡してなるポリウレタンフォームとは、それぞれ、仕切部30に沿って上方へ膨張し、第1の成形空間S及び第2の成形空間Sを充填していく。そして、仕切部30の上端と上型12との間の連通空間Sに達すると、これらのフォームは該連通空間Sに入り込んで互いに接触する。これにより、第1のウレタン原液が発泡してなるポリウレタンフォームによって第1の成形部41が構成されると共に、第2のウレタン原液が発泡してなるポリウレタンフォームによって成形品40の第2の成形部42が構成され、且つこれらの成形部41,42が連通空間Sを介して一体化した成形品40が成形される。
【0037】
ポリウレタンフォームが硬化した後、型開きして成形品40を下型11から脱型する。この場合、気体給排手段によりフィルム20とキャビティ13の内面との間に気体を供給し、第2図(a)及び第3図(a)の通り、フィルム20をキャビティ13の内面から浮き上がらせて成形品40をキャビティ13内から押し出す。この際、フィルム20と共に仕切部30もキャビティ13の底面から離反する。
【0038】
成形品40を取り去った後、気体給排手段によりフィルム20とキャビティ13の内面との間から気体を排出し、第2図(b)及び第3図(b)の通りフィルム20をキャビティ13の内面に降下させる。この際、フィルム20と共に仕切部30もキャビティ13の底面に降下する。これにより、フィルム20がキャビティ13の内面を覆い、且つキャビティ13内が仕切部30によって成形空間Sと第2の成形空間Sとに仕切られた成形前の状態に復帰する。その後、次の成形サイクルに移行する。
【0039】
この金型10にあっては、上記の通り、成形品40の脱型時には仕切部30がフィルム20と共にキャビティ13の底面から浮き上がり、フィルム20が元の位置に復帰するときには、仕切部30がフィルム20と共にキャビティ13の底面に降下する。これにより、フィルム20の復帰時に、該フィルム20は、仕切部30に引っ掛かることなく、スムーズにキャビティ13の内面に沿って再配置されるようになる。
【0040】
この金型10にあっては、仕切部30がフィルム20に設けられているので、例えば成形品40の設計変更等により、仕切部30の配置や形状を変更する場合でも、金型10自体を加工したり交換したりすることなく、それまで装着されていたフィルム20に代えて、仕切部30の配置や形状を変更した別のフィルム20を金型10に装着すれば済むので、成形品40の設計変更等にかかる金型コストを低減させることができる。
【0041】
[第2及び第3の実施の形態]
第4図(a)は第2の実施の形態に係る発泡成形用金型の縦断面図であり、第4図(b)は第3の実施の形態に係る発泡成形用金型の縦断面図である。なお、第4図(a),(b)は、それぞれ、第1図(a)と同様部分の断面を示している。
【0042】
第4図(a)の金型10Aにおいては、フィルム20に仕切部30Aが一体に設けられている。この実施の形態では、フィルム20をキャビティ13の内面に沿う形状に成形する際に、このフィルム20の一部をキャビティ13の内方へ膨出させるように成形することにより、仕切部30Aを形成している。このようにすることにより、フィルム20に容易に仕切部30Aを設けることができる。なお、フィルム20に仕切部30Aを一体に形成する方法はこれに限定されない。
【0043】
この金型10Aのその他の構成は、第1の実施の形態と同様であり、第4図(a)において第1〜3図と同一符号は同一部分を示している。
【0044】
上記金型10Aにおいては、仕切部30Aは、内部が空洞となった中空状であり、この空洞部が下方に開放したものとなっているが、第4図(b)の金型10Bにおける仕切部30Bのように、この空洞部に充填材31を充填して中実化してもよい。このようにすることにより、仕切部30Bの変形、即ち、脱型時にフィルム20とキャビティ13の内面との間に供給された気体の圧力により仕切部30Bが膨張したり、脱型後にフィルム20とキャビティ13の内面との間から気体が排気されたときの負圧により仕切部30Bが萎んだりすることが防止される。
【0045】
この金型10Bのその他の構成は、金型10Aと同様である。
【0046】
なお、上記の各実施の形態では、成形品40は、第1の成形部41と第2の成形部42とが一体成形されたものであるが、例えば、第1の成形部41と第2の成形部42とが成形後に分割されてそれぞれ独立した成形品とされる場合には、金型10Aのように仕切部30Aを中空のままとし、脱型時にフィルム20とキャビティ13の内面との間に供給された気体の圧力により、第1の成形部41と第2の成形部42との間で仕切部30Aを膨張させ、この仕切部30Aの膨張力により第1の成形部41と第2の成形部42との連結部を割断させるようにしてもよい。これにより、成形品40を脱型した後に第1の成形部41と第2の成形部42とを割断する作業が不要となり、成形品製造工程の簡略化を図ることができる。
【0047】
[第4の実施の形態]
第5図(a),(b)は、それぞれ、第4の実施の形態に係る発泡成形用金型の縦断面図である。第6図(a)及び第6図(b)は、それぞれ、この金型における仕切部付近(第5図(a)のVIA付近及び第5図(b)のVIB付近)の拡大図である。なお、第5図(a)は、第1図(b)と同様部分の断面を示し、第5図(b)は、第1図(a)と同様部分の断面を示している。第6図(a),(b)においては、成形品40の図示は省略されている。
【0048】
上記の各実施の形態のように、キャビティ内の第1の成形空間と第2の成形空間とにそれぞれ配合の異なるウレタン原液を注入して発泡させ、これにより物性ないし特性が異なるポリウレタンフォームよりなる第1の成形部と第2の成形部とを一体成形する場合、該第1の成形空間と第2の成形空間との間の仕切部の高さが高すぎると、この仕切部の上端と上型との間の連通空間の高さが低くなり、この連通空間を介して第1の成形部と第2の成形部とを連結した部分のポリウレタンフォームの厚みが小さくなるので、第1の成形部と第2の成形部との連結強度が低下するおそれがある。しかしながら、仕切部の高さが低すぎると、第1の成形部を構成するポリウレタンフォームと第2の成形部を構成するポリウレタンフォームとが比較的粘度の低い段階で連通空間に浸入して接触するようになるため、これらのポリウレタンフォーム同士が過度に混じり合い、第1の成形部と第2の成形部との境界が不明瞭となるおそれがある。
【0049】
第4の実施の形態に係る金型10Cにおいては、仕切部30Cに、その上端から下端側に向かって切り込まれた(凹陥した)形状の溝部32が設けられている。この実施の形態では、複数個の溝部32が仕切部30Cの延在方向(キャビティ縦断方向)に間隔をあけて配設されている。各溝部32は、第5図(a)及び第6図(a)の通り、下端側ほど幅(仕切部30Cの延在方向における幅。以下、同様。)が狭くなっている。
【0050】
この金型10Cの各部の好ましい諸元値は、次の通りである。
【0051】
仕切部30の下端(キャビティ13の底面に沿うフィルム20の上面)から該仕切部30Cの最上端までの高さHは、この仕切部30の下端から上型12までの高さHの70〜80%特に70%以上であることが好ましい。仕切部30の下端から各溝部32の底面までの高さHは、高さHの50〜70%特に60%以上であることが好ましい。各溝部32の上端側の幅Wは8〜10mm特に9〜10mmであることが好ましく、各溝部32の下端側の幅Wは3〜5mm特に4〜5mmであることが好ましい。隣り合う溝部32,32同士の中心間距離(各溝部32の幅方向の中間位置同士の間隔)Wは15〜25mm特に15〜20mmであることが好ましい。仕切部30Cの最上端における厚さtは2〜3mm特に2mmであることが好ましい。仕切部30Cの成形空間S側及び成形空間S側の各面の垂直方向に対する傾斜角(テーパ角)θは3〜5°特に5°程度であることが好ましい。溝部32の各側面と仕切部30Cの上端面とが交わる凸角部は、それぞれ、該溝部32の各側面と仕切部30Cの上端面とが緩やかに連なるように湾曲した(Rのついた)形状となっていることが好ましい。また、溝部32の各側面と該溝部32の底面とが交わる隅角部も、それぞれ、該溝部32の各側面と該溝部32の底面とが緩やかに連なるように湾曲した(Rのついた)形状となっていることが好ましい。これらの角部の曲率半径(R)は5〜15mm特に10〜15mmであることが好ましい。
【0052】
この金型10Cのその他の構成は、第1の実施の形態に係る金型10と同様であり、第5,6図において第1〜3図と同一符号は同一部分を示している。
【0053】
この金型10Cにあっては、仕切部30Cの両側の第1の成形空間Sと第2の成形空間Sとは、該仕切部30Cの上端と上型12との間の連通空間Sを介してだけでなく、各溝部32を介しても互いに連通している。そのため、成形品40の成形時には、連通空間Sにだけでなく、各溝部32にも、第1の成形空間S側及び第2の成形空間S側の双方のポリウレタンフォームが入り込んで互いに接触する。その結果、この溝部32に入り込んだポリウレタンフォームにより、連通空間Sよりも低い位置においても、成形部41,42同士が連結されるようになる。従って、この金型10Cにより成形された成形品40は、成形部41,42の連結強度がより高いものとなる。
【0054】
この金型10Cにあっては、仕切部30Cは、各溝部32においてのみ高さが低くなっており、残りの部分は十分に高さが高い。また、各溝部32は、下端側ほど幅が狭くなっている。そのため、成形部41を構成するポリウレタンフォームと、成形部42を構成するポリウレタンフォームとが各溝部32を介して粘度の低い段階で過度に混じり合うことが防止ないし抑制される。これにより、成形品40は、成形部41,42同士の境界が十分に明瞭なものとなる。
【0055】
[その他の構成]
上記の各実施の形態は、いずれも本発明の一例を示すものであり、本発明は上記の各実施の形態に限定されない。
【0056】
例えば、上記の各実施の形態では、金型は、物性ないし特性が異なる2部分のポリウレタンフォーム成形部を一体成形するように構成されたものであるが、本発明は、1種類のポリウレタンフォームのみで成形品の全体を成形するように構成された金型や、物性ないし特性が異なる3部分以上のポリウレタンフォーム成形部を一体成形するように構成された金型にも適用可能である。
【0057】
上記の各実施の形態では、キャビティ内方へ突出する凸部は、該キャビティ内を複数の成形空間に仕切る仕切部であるが、本発明の金型における凸部は、これに限定されない。例えば、本発明の金型における凸部は、成形品に溝や穴(貫通穴及び非貫通穴のいずれも含む。)などの種々の凹形状部を形成するためのものであってもよい。
【0058】
上記の各実施の形態では、凸部はキャビティの底面から突出するものであるが、凸部の配置はこれに限定されない。例えば、凸部は、キャビティの側面等から突出するものであってもよい。この場合、該凸部により成形品の側面がアンダーカット形状となっても、脱型時には凸部が成形品と共にフィルムによってキャビティ外に押し出されるので、成形品が凸部に引っ掛かることなく、スムーズに脱型される。
【0059】
本発明は、ポリウレタン以外の発泡樹脂材料からなる発泡成形品を製造するための発泡成形用金型にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10,10A〜10C 金型
11 下型
12 上型
13 キャビティ
14 連通口
20 フィルム
30,30A〜30C 凸部としての仕切部
31 充填材
32 溝部
40 成形品
41 第1の成形部
42 第2の成形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上型及び下型を有する発泡成形用金型であって、
少なくとも該下型のキャビティの内面に沿って配設されたフィルムと、
該フィルムと該キャビティの内面との間への流体の供給及び該流体の排出のための給排手段と
を備えた発泡成形用金型において、
該キャビティ内に突出する凸部が設けられており、
該凸部は、該フィルムと共に該キャビティの内面に対し接近及び離反移動可能であることを特徴とする発泡成形用金型。
【請求項2】
請求項1において、前記凸部は、前記下型及び前記フィルムと別体に構成され、該フィルムに取り付けられたものであることを特徴とする発泡成形用金型。
【請求項3】
請求項1において、前記凸部は、前記フィルムと一体に構成されたものであることを特徴とする発泡成形用金型。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記凸部は、前記キャビティ内を複数の成形空間に仕切る壁状のものであり、
該金型を型締めした状態において、該凸部の上端と前記上型との間には、該成形空間同士を連通する連通空間が存在しており、各成形空間で成形された発泡成形体同士が該連通空間を介して連結されるように構成されており、
該凸部には、該凸部の上端から凹陥する溝部が設けられていることを特徴とする発泡成形用金型。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記凸部は、前記キャビティ内を縦断するように延在しており、該凸部の延在方向の両端側はそれぞれ該キャビティの側面に対峙しており、
該凸部は、下端の少なくとも一部が前記フィルムに結合されており、その延在方向の両端側は、該フィルムに対し非結合とされていることを特徴とする発泡成形用金型。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発泡成形用金型を用いた発泡成形方法であって、
前記キャビティに発泡成形材料を供給して成形品を発泡成形し、
該成形品を脱型するに際しては、型開き後、前記給排手段によって前記フィルムと該キャビティの内面との間に流体を供給することにより、該フィルムを該キャビティの内面から離反させ、該フィルムにより該成形品を該キャビティ内から押し出し、
該成形品を脱型した後、該給排手段によって該フィルムと該キャビティの内面との間から流体を排出させることにより、該フィルムを該キャビティの内面に接近させ、該フィルムを該キャビティの内面に沿わせることを特徴とする発泡成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−196957(P2012−196957A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−10229(P2012−10229)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】