説明

発泡樹脂パネル及びその成形方法

【課題】発泡樹脂パネルの剛性低下、見栄えの悪化、及び発泡樹脂パネルを他の樹脂パネルに溶着する場合における接合不良の発生を防止する。
【解決手段】成形型29のキャビティ37内に射出充填した熱可塑性樹脂Rの型成形面近傍にスキン層11が生成され始めた時点でキャビティ37の容積を拡大させ、熱可塑性樹脂Rを発泡させることにより樹脂密度が高くて堅いソリッド層からなるスキン層11が全面に形成されるとともに、多数の空隙を有しスキン層11に比べて樹脂密度が低い発泡層13が内部に一体に形成されてなり、キャビティ37容積拡大方向に対して略垂直に広がる平坦なパネル本体7と、パネル本体7の外周端末部からパネル裏面側に略垂直に一体に突設された側壁部9とを備えた第1発泡樹脂パネル3において、パネル本体7裏面における側壁部9近傍のスキン層11に、スキン層11の一部で構成された突条部15を側壁部9に沿って略垂直に突設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦なパネル本体と、該パネル本体の外周端末部からパネル裏面側に略垂直に一体に突設された側壁部とを備えた発泡樹脂パネル及びその成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、平坦なパネル本体と、該パネル本体の外周端末部からパネル裏面側に略垂直に一体に突設された側壁部とを備えた発泡樹脂パネルをコアバック法(Moving Cavity法)により射出成形する技術が開示されている。これらの発泡樹脂パネルの表面全体には、樹脂密度が高くて堅いソリッド層からなるスキン層が形成されるとともに、スキン層の内部には、多数の空隙を有し上記スキン層に比べて樹脂密度が低い発泡層が一体に形成されている。これらの発泡樹脂パネルは一般に、パネル本体の表面及び側壁部の外側面を成形する第1型と、パネル本体の裏面及び側壁部の内側面を成形する第2型とを備えた成形型のキャビティ内に熱可塑性樹脂を射出充填し、型成形面近傍にスキン層が生成され始めた時点で第2型を第1型から離間させてキャビティの容積を拡大させ、上記熱可塑性樹脂を発泡させることにより成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−192549号公報
【特許文献2】特許第4106320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1及び特許文献2では、第2型を第1型から離間させると、第2型のパネル本体外周端末部に対応する成形面に形成されたスキン層が第2型の成形面から離れ、成形されたパネル本体の側壁部近傍に窪みが生じる場合がある。このような現象は、第2型が第1型から離間するストローク分だけ側壁部の内側面の長さが離間前よりも短くなってスキン層が撓むことに起因する。なお、スキン層の撓み量は、図5(a)中Lで示す長さと図5(b)中L’で示す長さとの差に相当する。
【0005】
図4は、後述する実施形態の図1に相当し、図5は後述する実施形態の図2に相当する。
【0006】
図4及び図5中、aは、発泡樹脂パネルであり、該発泡樹脂パネルaは、略平坦に広がるパネル本体bと、該パネル本体bの外周端末部からパネル裏面側に略垂直に一体に突設された側壁部cとを備え、側壁部c近傍には窪みdが当該側壁部cに沿うように形成されている。また、発泡樹脂パネルaの表面全体には、樹脂密度が高くて堅いソリッド層からなるスキン層eが形成されるとともに、スキン層eの内部には、多数の空隙を有し上記スキン層eに比べて樹脂密度が低い発泡層fが一体に形成されている。
【0007】
また、図5中、gは成形型であり、該成形型gは、パネル本体bの表面及び側壁部cの外側面を成形する成形面を有する第1型h、パネル本体bの裏面、側壁部cの内側面を成形する成形面を有する第2型i、及び側壁部cの突出端面を成形する成形面を有する第3型mを備えている。成形型gは、キャビティjを形成し、このキャビティjに熱可塑性樹脂kが射出充填される。
【0008】
このように、パネル本体bの側壁部c近傍に窪みdが生じると、窪んだ箇所が薄くなる分だけ発泡樹脂パネルaの剛性が低下する。また、窪んだ箇所が外部に露出して見栄えを悪化させるおそれがある。さらに、成形した発泡樹脂パネルaの裏面側から他の樹脂パネルを当該他の樹脂パネルに突設したリブにより溶着する場合、窪んだ箇所が上記リブ先端の溶着箇所に対応していると、接合不良を生じさせるおそれがある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、発泡樹脂パネルの剛性低下、見栄えの悪化、及び発泡樹脂パネルを他の樹脂パネルに溶着する場合における接合不良の発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、パネル本体裏面における側壁部近傍のスキン層に突条部を設けたことを特徴とする。
【0011】
具体的には、本発明は、成形型のキャビティ内に射出充填した熱可塑性樹脂の型成形面近傍にスキン層が生成され始めた時点でキャビティ容積を拡大させ、上記熱可塑性樹脂を発泡させることにより樹脂密度が高くて堅いソリッド層からなるスキン層が全面に形成されるとともに、多数の空隙を有し上記スキン層に比べて樹脂密度が低い発泡層が内部に一体に形成されてなり、キャビティ容積拡大方向に対して略垂直に広がる平坦なパネル本体と、該パネル本体の外周端末部からパネル裏面側に略垂直に一体に突設された側壁部とを備えた発泡樹脂パネルを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記パネル本体裏面における側壁部近傍のスキン層には、該スキン層の一部で構成された突条部が上記側壁部に沿って略垂直に突設されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発泡樹脂パネルにおいて、上記パネル本体裏面と側壁部内側面との境には、凹状湾曲面が形成され、上記突条部は、上記凹状湾曲面のパネル本体側の端部に沿って突設されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発泡樹脂パネルの成形方法であって、上記パネル本体の表面及び上記側壁部の外側面を成形する成形面を有する第1型と、上記パネル本体の裏面、及び上記側壁部の内側面を成形する成形面を有し、該成形面に上記突条部に対応する凹条部が形成された第2型と、上記側壁部の突出端面を成形する成形面を有する第3型とからなる成形型を型閉じした状態で、溶融状態の熱可塑性樹脂を成形型のキャビティ内に射出充填し、上記成形型の成形面近傍の熱可塑性樹脂が型温により固化し始めた後、上記第1型と第3型とを固定したまま、上記第2型を上記第1型との間隔がパネル本体の厚さとなるように第1型から型開き方向に離間させてキャビティ容積を拡大させ、上記熱可塑性樹脂を発泡させることにより上記パネル本体及び側壁部を成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、側壁部近傍のスキン層に、スキン層の一部で構成された突条部が略垂直に突設されるので、成形の際、側壁部近傍のスキン層が第2型に形成された突条部に対応する凹条部に食い付き、その食い付き抵抗によりコアバック動作に追従して側壁部近傍のスキン層が撓むことなく移動し、パネル本体における窪みの形成が防止される。この結果、発泡樹脂パネルの剛性低下、見栄えの悪化、及び発泡樹脂パネルを他の樹脂パネルに溶着する場合における接合不良の発生が防止される。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、突条部と側壁部との間を凹状湾曲面で構成しているので、平坦面で構成した場合に比べて、突条部と側壁部との間に若干窪みが形成されても目立ちにくく、見栄えが悪化しにくい。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1と同様の効果が得られるとともに、キャビティ容積を拡大させる際、第1型と第3型とを固定しているので、側壁部の突出端面を容易に所望の形状にすることができる。したがって、発泡樹脂パネルの裏面側から他の樹脂パネルを接着して2重構造のパネルを製造する場合に、突出端面の形状が接着を妨げたり、パネルの合計の厚さがばらつくことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る発泡樹脂パネルの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る発泡樹脂パネルの成形工程図を示し、図2(a)は、成形型のキャビティ内に熱可塑性樹脂を射出充填した状態を示す成形工程図であり、図2(b)は、図2(a)における成形型の第2型を第1型から離間させた状態を示す成形工程図である。
【図3】本発明の実施形態に係る発泡樹脂パネルを備えたトランクボードの断面図である。
【図4】本願に相当する従来の型構造により従来の発泡樹脂パネルを成形した場合の図1相当図である。
【図5】本願に相当する従来の型構造により従来の発泡樹脂パネルを成形する場合の図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0020】
(実施形態1)
図3は、トランクボード1を示す。このトランクボード1は、図示しない自動車の後部荷室に取り付けられ、このトランクボード1の下方には、スペアタイヤ等を収納する図示しない凹状収納部が形成される。
【0021】
上記トランクボード1は、本発明の実施形態に係る第1発泡樹脂パネル3と、第2発泡樹脂パネル5とを備え、これら両者を圧接させた状態で振動させることにより溶着一体化して構成されている。
【0022】
上記第1発泡樹脂パネル3は、図1にも示すように、略矩形状の平坦なパネル本体7と、該パネル本体7の外周端末部からパネル裏面側にパネル本体7の全周に亘って略垂直に一体に突設された側壁部9とを備えている。上記側壁部9の突出端面は平坦に形成されている。上記パネル本体7裏面と側壁部9内側面との境には、パネル本体7の全周に亘って凹状湾曲面17が形成されている。また、第1発泡樹脂パネル3の全面には、樹脂密度が高くて堅いソリッド層からなるスキン層11が形成されるとともに、第1発泡樹脂パネル3の内部には、多数の空隙を有し上記スキン層11に比べて樹脂密度が低い発泡層13が上記スキン層11と一体に形成されている。さらに、上記パネル本体7裏面における側壁部9近傍のスキン層11には、該スキン層11の一部で構成された突条部15が、上記凹状湾曲面17のパネル本体7側の端部及び上記側壁部9に沿って略垂直に突設されている。
【0023】
上記第2発泡樹脂パネル5は、略矩形状の平坦なパネル本体19と、該パネル本体19の外周端末部からパネル裏面側にパネル本体19の全周に亘って略垂直に一体に突設された側壁部21とを備えている。上記側壁部21の突出端面は平坦に形成されている。第2発泡樹脂パネル5の全面にも、樹脂密度が高くて堅いソリッド層からなるスキン層23が形成されるとともに、該第2発泡樹脂パネル5の内部にも、多数の空隙を有し上記スキン層23に比べて樹脂密度が低い発泡層25が上記スキン層23と一体に形成されている。また、上記パネル本体19裏面における上記第1発泡樹脂パネル3の突条部15に対向する箇所より若干内側には、ソリッドからなる溶着リブ27が、振動方向に延びるように略垂直に一体に突設されている。この溶着リブ27の先端略半分は、側壁部21の突出端面よりも上記第1発泡樹脂パネル3側に突出している。
【0024】
上記第1発泡樹脂パネル3及び第2発泡樹脂パネル5が、裏面同士を互いに向かい合わせて振動溶着して一体化されてトランクボード1が構成されている。
【0025】
このように構成されたトランクボード1では、第1発泡樹脂パネル3の側壁部9の突出端面と第2発泡樹脂パネル5の側壁部21の突出端面とは、見栄えを確保するとともに振動溶着時に接触してバリが生じないようにするため互いに接近して間に隙間S1が形成されている。また、第1発泡樹脂パネル3の側壁部9の外側面と、第2発泡樹脂パネル5の側壁部21の外側面とは面一になっている。
【0026】
また、第2発泡樹脂パネル5の溶着リブ27先端部は、上記第1発泡樹脂パネル3のパネル本体7裏面における突条部15よりも若干内側の部分に溶着一体化されている。
【0027】
次に、上記のように構成されたトランクボード1の製造方法について説明する。まず、第1発泡樹脂パネル3、及び第2発泡樹脂パネル5をそれぞれ成形する。第1発泡樹脂パネル3は、次のようにして成形される。
【0028】
成形に際し、成形型29と、熱可塑性樹脂R(例えばポリプロピレン)とを用意する。成形型29は、パネル本体7の表面及び上記側壁部9の外側面を成形する成形面31aを有する第1型31と、上記パネル本体7の裏面、及び上記側壁部9の内側面を成形する成形面33aを有し、該成形面33aには、上記突条部15に対応する凹条部33bが形成された第1可動型としての第2型33と、上記側壁部9の突出端面を成形する平坦な成形面35aを有する第2可動型としての第3型35とを備え、上記第2型33と第3型35とは第1型31に対し進退可能に配置され、さらに第2型33は第3型35内に進退可能に配設されている。また、上記熱可塑性樹脂Rとして、例えば、化学反応によりガスを発生させる化学的発泡材や、Mucell(ミューセル)Processのように二酸化炭素ガス及び窒素ガス等の不活性ガス(物理的発泡材)等が超臨界状態で混入された熱可塑性樹脂であり、ガラス繊維等の繊維が混入されていてもよいが、必ずしもこれらを混入していなくてもよい。
【0029】
まず、図2(a)に示すように、上記成形型29を型閉じした状態で、溶融状態の熱可塑性樹脂Rを成形型29のキャビティ37内に射出機から射出充填する。しかる後、成形型29の成形面近傍の熱可塑性樹脂R’は型温により早期に固化し始める。このとき、第2型33の凹条部33bに充填された熱可塑性樹脂R’も固化し始めている。この時点で、第1型31と第3型35とを固定したまま、第2型33を第1型31との間隔がパネル本体7の厚さとなるように第1型31から型開き方向(キャビティ容積拡大方向)Xに後退させて離間させることによりキャビティ37の容積を例えば3〜6倍に拡大する。すると、キャビティ37の容積拡大により、それまで上記第1型31と第2型33の間で圧縮(膨張が規制)されている熱可塑性樹脂Rが、第2型33に引っ張られるとともに、熱可塑性樹脂R中の化学反応によって発生したガスや不活性ガス等により発泡膨張する。熱可塑性樹脂R中にガラス繊維等の繊維が混入されている場合には、この際、上記圧縮が軽減されて繊維が弾性的に復元し、この弾性復元力(スプリングバック現象)によっても熱可塑性樹脂Rが膨張する。またこのとき、第2型33が第1型31から離間するストローク分だけ側壁部9の内側面の長さが離間前よりも短くなって第2型33のパネル本体7外周端末部に対応する成形面33aに形成されたスキン層11に第2型33から離れようとする力が作用するが、第2型33に凹条部33bが形成されているので、この凹条部33bにスキン層11が食い付き、その食い付き抵抗により第2型33の離間動作に追従してスキン層11が撓むことなく移動する。その結果、図2(b)に示すように、キャビティ容積拡大方向Xに対して略垂直に広がる窪みのない平坦なパネル本体7と、該パネル本体7の外周端末部からパネル裏面側に略垂直に一体に突出する側壁部9とからなる第1発泡樹脂パネル3が成形される。この第1発泡樹脂パネル3の全面には、スキン層11が形成されるとともに、第1発泡樹脂パネル3の内部には、発泡層13が形成されている。また、第2型33の凹条部33bに充填された熱可塑性樹脂Rは、第2型33の型温により早期に冷却されており、上記発泡層13を形成するために該第2型33を後退させても上記突条部15には発泡層が生成されず、上記スキン層11の一部を構成する。
【0030】
そして、第3型35と一緒に第2型33を第1型31よりさらに後退させ、第1発泡樹脂パネル3を第1型31より脱型し、さらに図示しない第3型35に内挿されたエジェクタピンで第1発泡樹脂パネル3を突き出し、第2型33及び第3型35より脱型する。
【0031】
第2発泡樹脂パネル5も第1発泡樹脂パネル3と同様に成形される。なお、第2発泡樹脂パネル5の成形に用いられる第2型33には、溶着リブ27に対応する凹条部が形成されているが、突条部15に対応する凹条部33bは形成されていない。溶着リブ27に対応する凹条部に充填された熱可塑性樹脂Rは、第2型33の型温により早期に冷却されており、上記発泡層25を形成するために該第2型33を後退させても上記溶着リブ27には発泡層が生成されず、ソリッド層が形成される。
【0032】
そして、上記のように構成された第1発泡樹脂パネル3と第2発泡樹脂パネル5とを振動溶着する。まず、第1発泡樹脂パネル3を裏面が下を向くように上側の振動溶着治具にセットする。一方、第2発泡樹脂パネル5を溶着リブ27が上を向くように下側の振動溶着治具にセットする。また、上記第1発泡樹脂パネル3及び第2発泡樹脂パネル5の側壁部9,21を対向位置させ、この状態から、上側の振動溶着治具を上方から下側の振動溶着治具に押し付けて第2発泡樹脂パネル5の溶着リブ27突出端面を第1発泡樹脂パネル3のパネル本体7裏面に圧接させながら、上側の振動溶着治具を溶着リブ27の長手方向に往復振動させる。このとき、溶着リブ27の突出端面は、第1発泡樹脂パネル3のパネル本体7裏面の側壁部9近傍に圧接されるが、第1発泡樹脂パネル3のパネル本体7裏面の側壁部9近傍には窪みが形成されていないので、窪みによる接合不良は発生しない。
【0033】
これにより、第2発泡樹脂パネル5の溶着リブ27の先端部が、第1発泡樹脂パネル3のパネル本体7裏面のスキン層11との圧接振動により該スキン層11を溶融させてスキン層11と溶着一体化される。
【0034】
したがって、本実施形態によれば、第1発泡樹脂パネル3の成形時におけるスキン層11の撓みが防止されるので、パネル本体7に窪みが形成されにくく、第1発泡樹脂パネル3の剛性低下、及び見栄えの悪化が防止される。
【0035】
また、第1発泡樹脂パネル3の突条部15と側壁部9との間を凹状湾曲面17で構成しているので、平坦面で構成した場合に比べて、突条部15と側壁部9との間に若干窪みが形成されても目立ちにくく、見栄えが悪化しにくい。
【0036】
また、第1発泡樹脂パネル3の成形時にキャビティ37の容積を拡大させる際、第1型31と平坦な成形面35aを有する第3型35とを固定しているので、側壁部9の突出端面を容易に平坦にすることができる。したがって、第1発泡樹脂パネル3の側壁部9の突出端面の形状が接着を妨げたり、トランクボード1の合計の厚さがばらつくことを防止できる。
【0037】
なお、本実施形態では、上記パネル本体7の裏面、及び上記側壁部9の内側面を成形する成形面33aを有する第2型33と、上記側壁部9の突出端面を成形する平坦な成形面35aを有する第3型35とを用いたが、特許文献2に開示されているように、成形面33aと成形面35aの両方を備えた1個の成形型を用いてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、側壁部9の突出端面を成形する成形面35aを平坦にしたが、必ずしも平坦にしなくてもよい。例えば、特許文献2に開示されているように、成形面35aに傾斜を設けてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、第1発泡樹脂パネル3がトランクボード1を構成する場合を示したが、エンジンカバー、パッケージトレイやグローブボックスのリッド等の他の自動車用樹脂成形品、さらには自動車以外の樹脂成形品にも適用することができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えば、平坦なパネル本体と、該パネル本体の外周端末部からパネル裏面側に略垂直に一体に突設された側壁部とを備えた発泡樹脂パネル及びその成形方法として有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 トランクボード
3 第1発泡樹脂パネル
7 パネル本体
9 側壁部
11 スキン層
13 発泡層
17 凹状湾曲面
19 パネル本体
29 成形型
31 第1型
31a 成形面
33 第2型
33a 成形面
33b 凹条部
35 第3型
35a 成形面
37 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型のキャビティ内に射出充填した熱可塑性樹脂の型成形面近傍にスキン層が生成され始めた時点でキャビティ容積を拡大させ、上記熱可塑性樹脂を発泡させることにより樹脂密度が高くて堅いソリッド層からなるスキン層が全面に形成されるとともに、多数の空隙を有し上記スキン層に比べて樹脂密度が低い発泡層が内部に一体に形成されてなり、
キャビティ容積拡大方向に対して略垂直に広がる平坦なパネル本体と、該パネル本体の外周端末部からパネル裏面側に略垂直に一体に突設された側壁部とを備えた発泡樹脂パネルであって、
上記パネル本体裏面における側壁部近傍のスキン層には、該スキン層の一部で構成された突条部が上記側壁部に沿って略垂直に突設されていることを特徴とする発泡樹脂パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡樹脂パネルにおいて、
上記パネル本体裏面と側壁部内側面との境には、凹状湾曲面が形成され、上記突条部は、上記凹状湾曲面のパネル本体側の端部に沿って突設されていることを特徴とする発泡樹脂パネル。
【請求項3】
請求項1に記載の発泡樹脂パネルの成形方法であって、
上記パネル本体の表面及び上記側壁部の外側面を成形する成形面を有する第1型と、上記パネル本体の裏面、及び上記側壁部の内側面を成形する成形面を有し、該成形面に上記突条部に対応する凹条部が形成された第2型と、上記側壁部の突出端面を成形する成形面を有する第3型とからなる成形型を型閉じした状態で、溶融状態の熱可塑性樹脂を成形型のキャビティ内に射出充填し、
上記成形型の成形面近傍の熱可塑性樹脂が型温により固化し始めた後、上記第1型と第3型とを固定したまま、上記第2型を上記第1型との間隔がパネル本体の厚さとなるように第1型から型開き方向に離間させてキャビティ容積を拡大させ、上記熱可塑性樹脂を発泡させることにより上記パネル本体及び側壁部を成形することを特徴とする発泡樹脂パネルの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−131555(P2011−131555A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295480(P2009−295480)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】