説明

発熱体ユニット及び加熱装置

【課題】本発明は、小型で効率が高く、高い指向性と均一な加熱及び立ち上りの早い発熱体ユニット、及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】発熱体ユニットにおける発熱体2の端部に係止用貫通孔3e設けるとともに、発熱体2の端部を挟持する保持具3を構成する第1の保持部材3aと第2の保持部材3aにそれぞれ形成された貫通孔3ac,3bcに固定部材5係合せしめて発熱体2の端部を保持することにより、熱ストレスにおいても安定したストレス吸収と熱拡散ができる安定した発熱体ユニット及びその発熱体ユニットにて加熱装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源として使用される発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置に関し、特に、炭素系物質を成分としフィルムシート状に形成された発熱体を有する発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺形状の熱源として使用される従来の発熱体ユニットは、円筒状のガラス管内部に発熱体としてコイル状のタングステン線、若しくは棒状又は板状の炭素系焼結体が封入されて構成されている。このような発熱体ユニットが用いられている加熱装置としては、例えば複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置、及び電気暖房機器、調理機器、乾燥機等の電気機器等の熱源を必要とする各種機器が含まれる。
【0003】
上記のように各種機器において熱源として発熱体ユニットが広く用いられている。このため、発熱体ユニットに対しては、当該発熱体ユニットが用いられる機器の機能、形状、構成等の仕様に対応できるように各種の要求がある。例えば、熱源として高い温度になること、指定された温度を維持できること、温度調整範囲が広いこと、入力電力に対して高い効率で加熱エネルギーに変換できること、被加熱対象物を均一に加熱できること、指定された方向のみを加熱する指向性を有すること、電源投入時の突入電流が少ないこと、設定温度までの立ち上り時間か短いこと、及び発熱体ユニットの小型化が可能であり着脱が容易な構造であること等の要求がある。
【0004】
上記のような要求を満たすことを目的として、各種の発熱体ユニットが提案されている。例えば、高温度に加熱できる従来の発熱体ユニットとしては、炭素繊維に樹脂を含浸させ固着して形成されたテープ状の発熱体が、ガラス管の内部に封入されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−193130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように構成された従来の発熱体ユニットにおいては、発熱体(抵抗体)は複数の炭素繊維を長手方向に揃えて樹脂によりテープ状に固着して形成されている。このように形成された従来の発熱体において、炭素繊維が繋がった状態では炭素繊維と平行な方向(炭素繊維方向)の熱伝導性は優れているが滑りやすいものであり、略板状の発熱体を金属板などで挟着または外形の切り込みにて固定していた。しかしながら、挟着では熱サイクルにより抜け接触抵抗が増え高温度になり熱破断を起こす場合もあった。また外形切り込み加工を行った場合には炭素繊維が部分的に切断されるため、外形部分での炭素繊維のバラケが発生し固定が安定しないとともに熱サイクルにより炭素繊維の切断が進行しやすいため抜け接触抵抗が増えて高温度になり熱破断を起こすこともあり、信頼性の点で問題があった。結果的には炭素繊維の切断部分が起点となって略板状の発熱体に亀裂が生じて寿命が短くなるだけでなく、負抵抗の発熱体炭素発熱体においては温度が上がることで抵抗値が下がり定電圧での使用の際、電流が増え高入力となり最悪の場合にはガラス管を破損するなど危険な状態に至る問題があった。
【0006】
本発明は、前述の従来の発熱体ユニットにおける課題を解決するものであり、確実に発熱体を固定し、熱ストレスにおいても安定したストレス吸収と熱拡散ができ、安定した発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決し、本発明の目的を達成するために、本発明の第1の観点の発熱体ユニットは、発熱部を有した発熱体と、その発熱体の端部に取付けられた保持具と、その保持具に電気的に接続されて前記発熱体に外部からの電力を供給するリード線とをガラス管内に配置された構成からなる発熱体ユニットであって、前記保持具は互いに対向するように配置された第1及び第2の保持部材を有し、かつその第1及び第2の保持部材にはそれぞれ貫通孔が形成されるとともにそれらの貫通孔の軸線が同軸上に位置して互いに対向するようになっており、前記発熱体の端部は前記第1及び第2の保持部材の中間に位置し、かつ前記同軸上に位置する係止用貫通孔を形成しており、前記第1及び第2の保持部材の各貫通孔と前記係止用貫通孔には係合する係合部材を有した固定部材を配設しており、その固定部材には前記発熱体の端部が配置されていない前記第1保持部材側に位置した前記係合部材の一端側には前記第1の保持部材の位置を規制する第1の位置規制部材を設けるとともに、前記発熱体の端部が配置されていない前記第2の保持部材側に位置した前記係合部材の他端側には前記第2の保持部材の位置を規制する第2の位置規制部材を設けることにより、発熱体の端部が前記第1及び第2の保持部材によって挟持されるように構成されている。このように構成された発熱体ユニットは、前記第1及び第2の保持具部材間に挿入された前記発熱体の端部は、固定部材の第1の位置規制部材と第2の位置規制部材との位置規制により前記第1及び第2の保持部材によって挟持される、あるいは、前記第1及び第2の保持部材の各貫通孔と前記発熱体の端部の係止用貫通孔に係合した前記係止部材により係止されるので、前記発熱体の表面が滑りやすい等の炭素系物質を主成分としたシート状の発熱体においてもより安定した保持強度が得られる。
【0008】
本発明の第2の観点の発熱体ユニットは、第1の観点の前記第1及び第2の保持部材の各貫通孔と前記係止用貫通孔とを係合せしめるように前記第1の保持部材に接合した前記リード線の遊端が延設されることにより前記固定部材の係合部材を形成せしめ、かつ、前記第2の保持部材の貫通孔より貫通させて外側に突出せしめた前記係合部材の遊端部を塑性変形させて第2の位置規制部材を設けることにより、前記発熱体の端部が前記第1及び第2の保持部材によって挟持されるように構成されている。このように構成された発熱体ユニットは、表面が滑りやすい等の炭素系物質を主成分としたシート状の前記発熱体において、前記第1及び第2の保持部材間に挿入された前記発熱体の端部は前記固定部材に設けられた前記係合部材の遊端部を塑性変形させて形成された前記第2の位置規制部材と前記第1の位置規制部材との位置規制により挟持されることで安定した保持強度が得られる。
【0009】
本発明の第3の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第2の観点の前記第1の位置規制部材と前記第2の位置規制部材との距離を縮めることにより、前記発熱体の端部が前記第1及び第2の保持部材によって挟持された際、前記発熱体が圧着状態となるように
構成されている。このように構成された発熱体ユニットは、炭素系物質を主成分としたシート状の前記発熱体の端部において、前記第1及び第2の保持部材間に挿入された前記発熱体端部は前記固定部材による圧着により前記第1及び第2の保持部材に密着した状態で挟持されることとなるので安定した固定強度が得られる。
【0010】
本発明の第4の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第3の観点の前記第1及び第2の保持部材の貫通孔と発熱体の貫通孔において、前記第2の保持部材の貫通孔は前記固定部材の外径より大きく、かつ前記第1の保持部材の貫通孔及び前記発熱体の貫通孔よりも小さく構成されている。このように構成された発熱体ユニットは、炭素系物質を主成分としたシート状の発熱体の端部において、前記第1及び第2の保持部材間に挿入された前記発熱体端部は前記固定部材の挿入時において挿入作業の容易性と圧着時の固着性の向上を図ることができるので均一な固定強度とすることとなり安定した挟持性が得られる。
【0011】
本発明の第5の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第4の観点の前記発熱体の端部を挟持する前記第1及び第2の保持部の発熱体挿入口側縁部は、前記発熱体の欠損を防止する欠損防止部として、外側に向けて開放する曲面もしくは傾斜面、あるいはバリ無し部が設けられように構成されている。このように構成された発熱体ユニットは、前記欠損防止部である前記発熱体挿入口側縁部に略対向して位置する前記発熱体の被発熱体挿入口部における破損が発生し難くなり、しいては、長期使用時における熱ストレスにも耐える安定的な接合(接触)を得ることが出来ることとなる。
【0012】
本発明の第6の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第5の観点の前記発熱体が可撓性、柔軟性、及び弾力性を有する材料で構成されている。このように構成された発熱体ユニットは、弾力性があることで前記第1及び第2の保持部材による前記発熱体の端部への挟持力をより高めることができ前記発熱体の取付けが容易となる。また、可撓性、柔軟性により前記発熱体の形状を変えることが可能となり機器の設計自由度が向上する。
【0013】
本発明の第7の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第6の観点の前記発熱体を圧接するように前記発熱体の端部と第1及び第2の保持部材の間の少なくとも一方に弾性を有する導電性部材が配設されるように構成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、前記弾性を有する導電性部材によって前記発熱体あるいは前記第1及び第2の保持部材の熱サイクルによる厚み方向の熱膨張を吸収することができ前記発熱体の破損が防止できるとともに、導電性部材を中間に介する前記発熱体と第1及び第2の保持部材の間の少なくとも一方の表面に凹凸形状があっても前記弾性を有する導電性部材の弾性変形により安定的に接しすることとなり電気的接触抵抗を少なくすることができるので、長期期間の使用時によって生じる熱ストレスにも耐える安定的な熱源となる。
【0014】
本発明の第8の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第6の観点の前記第1の位置規制部材と前記第2の位置規制部材との間に形成される空間内において、前記第1の位置規制部材、前記第2の位置規制部材、及び前記空間内に位置する各部材の何れかの間で形成される間隙に前記弾性を有する部材が配設されるように構成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、前記弾性を有する部材の弾性変形によって前記発熱体あるいは第1及び第2の保持部材の熱サイクルによる厚み方向の熱膨張を吸収することができ前記発熱体の破損が防止できるとともに、前記弾性を有する部材に対向する各部材の表面に凹凸形状があっても前記弾性を有する部材の弾性変形により安定的に接することとなり電気的接触抵抗を少なくすることができるので、長期期間の使用時によって生じる熱ストレスにも耐える安定的な熱源となる。
【0015】
本発明の第9の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第8の観点の前記リード線にガラス管内内壁と前記発熱体との距離を規制する位置規制部が設けられるように構成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、位置規制部により前記ガラス管のスラスト方向に対し垂直な断面方向の規制が可能となるため、ガラス管長手方向の発熱体の傾き度合いが少なくとも安定することとなり所望の方向に発熱(輻射)を行うことができ、かつ前記ガラス管内壁面と前記発熱体との接触することがなくなるので、前記ガラス管は熱による損傷がなくなる。
【0016】
本発明の第10の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第9の観点の前記リード線に前記発熱体の伸縮を吸収するスプリング部が設けられるように構成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、通電/否通電の繰り返しによって生じる熱サイクル時の前記発熱体の前記ガラス管のスラスト方向への熱膨張がスプリング部の伸縮により吸収できるので、前記発熱体は破損が起こりにくい長寿命な安定した熱源となる。
【0017】
本発明の第11の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第10の観点の前記ガラス管の開口部を封止し、不活性ガスが充填されるように構成されている。このように構成された発熱体ユニットにおいては、前記発熱体の酸化を防止して前記発熱体の長寿命化を図ることができる。
【0018】
本発明の第12の観点の発熱体ユニットは、第1の観点乃至第11の観点の前記発熱体は、厚みが300μm以下のフィルムシート状に構成されている。このような構成された発熱体ユニットにおいては、発熱体の板幅、板厚、形状を使用目的の応じての設計が容易となるとともに、前記発熱体のシート面すなわち板面からの発熱による指向性の高い熱源を構築することが可能となる。
【0019】
本発明の第13の観点の加熱装置は、前記の第1の観点乃至第12の観点の前記発熱体ユニットを有し、その発熱体ユニットの発熱体に対向する位置に反射手段が設けられた構成となっている。このように構成された加熱装置は、反射板方向に放射された前記発熱体の発熱は反射板により前方に位置する前記発熱体側の空間に反射されて採暖者等の被加熱体に導かれるため、被加熱体にとっては効率の高い熱源を提供できる加熱装置となる。
【0020】
本発明の第14の観点の加熱装置は、前記の第1の観点乃至第12の観点の発熱体ユニットを有し、その発熱体ユニットを内部空間に位置せしめることにより前記発熱体ユニットの外側筒面周囲を取り囲むように筒体が配設された構成となっている。このように構成された加熱装置は、トナー定着機構を有する複写機等の電子機器、及び調理機器等に適用することができる。
【0021】
本発明の第15の観点の加熱装置は、前記の第13の観点乃至第14の観点の加熱装置において、発熱体ユニットの電気的制御を行う制御回路を有し、前記制御回路がオンオフ制御、通電率制御、位相制御、及びゼロクロス制御のそれぞれの回路が単独、若しくは少なくとも二つを組み合わせて構成されている。このように構成された加熱装置は、精度高く所望の温度分布を有する熱源を構築することが可能となる

【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、発熱体の材質が炭素系を成分とするシート状で構成されたことにより、より高効率なヒータとすることができるが、シート状発熱体の板面方向に滑りやすく挟持のみでは確実に保持することができないものとなる。しかしながら、本発明はこの問題を解決するものであり、発熱体の端部において、第1及び第2の保持部材間に位置するよう挿入された発熱体端部の係止用貫通孔は第1及び第2の保持部材の貫通孔とともに固定部材の係合部材が挿入されて係合し、かつ、前記係合部材の両端側の位置に第1及び第2の位置規制部材がそれぞれ設けられることにより、前記発熱体の端部は前記第1及び第2の保持部材によって挟持される、あるいは、前記係止部材により係止されるので、安定した固定強度が得られ、熱サイクルに強く長寿命の発熱体ユニット、及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る発熱体ユニット及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置の好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(実施の形態1)
本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットについて図1乃至図5を用いて説明する。図1は実施の形態1の発熱体ユニットの構造を示す平面図である。図1においては、当該発熱体ユニットが長尺形状であるため、その中間部分を破断して省略し、両端部分近傍を示している。図2は実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体の正面図である。
【0025】
図3は実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体の端部に設けられた第1の例である発熱体取付装置を拡大して示した平面図、図4は図3の正面図、図5は図4の断正面図である。
【0026】
実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、透明な石英ガラスで形成されたガラス管1の内部に細長い略平板状の発熱体2(抵抗体)が配置されており、この発熱体2の長手方向はガラス管1の長手方向と同方向になるように配置されている。また、ガラス管1の両端部分は平板状に溶着されており、アルゴンガス、窒素ガス又はアルゴンガスと窒素ガスの混合ガス等の不活性ガスとともに発熱体2をガラス管1の内部に封入している。ガラス管1の内部に封入されている不活性ガスであるアルゴンガス、窒素ガス又はアルゴンガスと窒素ガスの混合ガスは、高温度で使用した際、炭素系物質である発熱体2の酸化を防止するためである。
【0027】
図1に示すように、実施の形態1の発熱体ユニットは、熱輻射体としての細長い略平板状の発熱体2と、この発熱体2の両端部をそれぞれ挟持(挟着を含む)する保持具3とを有しており、一方の保持具3(図1においては左側の保持具3)には第1の内部リード線部材11aが取り付けられており、他方の保持具3(図1においては右側の保持具3)には第2の内部リード線部材11bが取り付けられている。第1の内部リード線部材11a及び第2の内部リード線部材11bのそれぞれは、ガラス管1の両端部分の溶着部分に埋設されたモリブデン箔8を介して、ガラス管1の両端から導出する外部リード線9と電気的に接続されている。
【0028】
第1の内部リード線部材11aは、モリブデン箔8に一端が接続された内部リード線7と、その内部リード線7の他端側(発熱体2側)に位置する遊端部を接合部12(図3に示す)にて保持具3と接合(例えば、溶接)し、その接合部12に位置する前記先端部を延設して形成された固定部材5と、その固定部材5の遊端部を保持具3(図1においては左側の保持具3)の貫通孔に挿入して係合せしめるようにさらにL字状に屈曲して延設することにより形成された係合部材5bと、螺旋状にガラス管1の内壁面に沿って伸縮可能に形成された弾性を有するスプリング部6とは、一本の線材により構成されている。
【0029】
又、第2の内部リード線部材11bは、モリブデン箔8に一端が接続された内部リード線7と、その内部リード線7の他端側(発熱体2側)に位置する遊端部を接合部12(図3に示す)にて保持具3と接合(例えば、溶接)し、その接合部12に位置する前記先端部を延設して形成された固定部材5と、その固定部材5の遊端部を保持具3(図1においては左側の保持具3)の貫通孔に挿入して係合せしめるようにさらにL字状に屈曲して延設することにより形成された係合部材5bと、ガラス管内内壁と前記発熱体との距離を規制する位置規制部4とが、一本の線材により構成されている。
【0030】
尚、実施の形態1における第1の内部リード線部材11a及び第2の内部リード線部材11bは、モリブデン線により形成された例で説明するが、タングステン、ニッケル、ステンレス等を材料とした弾性を有する金属線(端部断面形状として丸棒形状、あるいは平板形状等の多角形状)を用いて形成してもよい。
【0031】
実施の形態1においては、モリブデン箔8を介して電気的接続された第1の内部リード線部材11aと外部リード線9からなる第1の電力供給ラインと、モリブデン箔8を介して電気的接続された第2の内部リード線部材11bと外部リード線9からなる第2の電力供給ラインとは、発熱体ユニットの外方から間接的あるいは直接的に発熱体2に電力供給するリード線として発熱体2の両端部側にそれぞれ配設されている。さらに、保持具3と第1の電力供給ラインにより第1の電力供給部10aが構成され、かつ保持具3と第2の電力供給ラインにより第2の電力供給部10bが構成されている。
【0032】
第1の内部リード線部材11aにおけるスプリング部6は、発熱体2に対して張力を与えるものであり、発熱体2が常に所望の位置に配置されるよう構成されている。即ち、発熱体2はがガラス管1の略中心軸上に配置され、ガラス管1の内壁面に接触しないよう配置されている。また、内部リード線7にスプリング部6を設けることにより、発熱体2における膨張収縮による変化を吸収することが可能となる。
【0033】
尚、発熱体2における膨張収縮による変化に対して発熱体2にスリット、孔等を形成し、予め発熱体2の長手方向に張力を与えた状態で取り付けられた場合には、発熱体2に形成されたスリット、孔等により発熱体2の膨張収縮を吸収できる為、発熱体2の両端にある第1の内部リード線部材11a若しくは第2の内部リード線11bのスプリング6を設ける必要はない。さらには、ガラス管1外形、長さ等発熱体ユニットの構成及び仕様により、発熱体2が膨張あるいは収縮により変化した際において、ガラス管1に接触する恐れが無い場合には、スプリング6及び保持部材4ともに無くても良い。又、発熱体2の位置は略軸中心である必要はなく、加熱方法(輻射方向、分布、温度)に応じて都合のよい位置になるようにスプリング6及び保持部4の形状を変更して発熱体2の位置を変更すればよい。
【0034】
尚、実施の形態1の発熱体ユニットにおいては、発熱体2の両端に配設された第1及び第2の内部リード線部材11a,11bはそれぞれ異なる構造とした例を用いて説明したが、発熱体ユニットとして品質的や寿命に問題が無ければ、発熱体2への発熱体2の両端に配設する内部リード線部材11a,11bの構成は、第1の内部リード線部材11aと同様の構成部材をそれぞれ配設してもよい。しかしながら、発熱体2のいずれか一端にスプリング部6を有する第1の内部リード線部材11aが配置された構成によって発熱体2の位置規制及び膨張収縮による変化の吸収を可能とした前記例に比べ、発熱体2の両側にスプリング部6を有した第1の内部リード線部材11aが配設されると、通常はさらなる効果が期待できる。
【0035】
又、第1及び第2の内部リード線部材11a,11bにおいて、スプリング部6を一方あるいは両方に配設させるかを選択する場合、発熱体ユニットの構成及び仕様、あるいは、その発熱体ユニットが用いられる加熱装置の仕様等に応じて適宜変更することにより、発熱体2の位置規制及び膨張収縮による変化の吸収に効果が前記加熱装置の品質効果として適するように選択すればよい。さらに、スプリング部6に位置規制部4の役割を持たせてもよい。
【0036】
又、第2の内部リード線部材11bにおいて内部リード線7と固定部材5と位置規制部4が一本の線材により構成された例で説明したが、位置規制部4については必ずしも一本の線材で構成する必要はなく、内部リード線7又は固定部材5に別の線材をリング状に巻回或いは板状の部材を取り付けるなど、ガラス管内壁と発熱体2との距離を規制できる構成であれば如何なる構成であっても同様の効果を奏することが可能である。
【0037】
又、加熱装置において発熱体ユニットの長手方向が鉛直方向(すなわち重力方向)あるいは、第1及び第2の内部リード線部材11a,11bの垂直方向の位置関係において上下位置関係(すなわち、発熱体ユニットの長手方向が鉛直方向において傾斜するように配置された状態)が生じるように組み込まれた場合には、スプリング部6が発熱体2より上側に配置されると上昇する発熱体2の温度でスプリング部6が加熱され弾性限度を超え熱膨張を吸収できなくなるおそれがあるため、スプリング部6を発熱体2の下側に配置した方が好ましい。
【0038】
次に実施の形態1において用いた略平板状の発熱体2(抵抗体)について説明する。発熱体2は、フィルムシートを切断して形成したものであり、幅広部2aと幅挟部2bとが交互に長手方向に連続して配置されている。図1に示したように、実施の形態1の発熱体ユニットにおいて用いた発熱体2は、いわゆるフィッシュボーン(魚骨)形状を有している。
【0039】
実施の形態1における発熱体2は、板厚(t)は100μmであり、幅広部2aの板幅(W1)は6mmであり、幅挟部2bの板幅(W2)は約2mmであり、長さ(L)は250mm(図1参照)である。尚、発熱体2の長さ、板厚、各板幅については、入力電圧及び発熱温度等により決定されており、当該発熱体ユニットが用いられる熱源としての仕様に応じて適宜変更が可能である。
【0040】
実施の形態1における発熱体2は、通電により電流が流れて発熱する通電発熱部分2c(幅挟部2b、及び各幅広部2aにおいて互いに隣接する幅挟部2bに接続される板幅(W2)と同等の部分)、及び通電発熱部分2cからの熱伝導により発熱する伝導発熱部分2dと(各幅広部2aにおいて、通電発熱部分2cすなわち前記板幅(W2)と同等の部分を除いた部分)とを有した構成である。このように構成された発熱体2は、本来材料的には発熱体2の発熱する同一表面上においてあらゆる方向に同等の熱伝導、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導を有している。
【0041】
ここで、前記二次元的等方向性の熱伝導とは、発熱体の同一表面上において、どの場所においてもあらゆる方向の熱伝導が同等となる特性を有するものを言う。したがって、本発明に関係しない二次元的等方向性を有しない発熱体とは、例えば通電発熱部分となる炭素繊維が同じ方向に並設して形成された抵抗体における炭素繊維方向の1方向(X軸方向)と前記X軸方向に直行するY方向等における同一面方向での熱伝導の違い、又は炭素繊維をクロスに編んで形成された抵抗体における炭素繊維方向の2方向(X軸方向とY軸方向)と炭素繊維が存在しない部分における同一面方向での熱伝導の違いが異なるもの等を言う。
【0042】
しかしながら、実施の形態1における発熱体2の形状においては、発熱体2の熱伝導率が200W/m・kに満たない場合、即ち熱伝導量の不足により二次元的等方向性の熱伝導性が悪くなる場合には、通電発熱部分2cから伝熱発熱部分2dへ伝導する熱が少なくなる傾向があり、その場合においては、通電発熱部分2cと伝熱発熱部分2dの温度差が大きくなり、発熱体において温度ムラが生じることとなるため、二次元的等方向性の熱伝導性が悪くなる。
【0043】
そのため、本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットにおいて用いた発熱体2は、炭素系物質を主成分として形成され、二次元的等方向性の熱伝導性を有しており、熱伝導率が200W/m・k以上を有するフィルムシート状の材料で形成されている。したがって、発熱体2は、通電発熱部分2cと伝熱発熱部分2dとにおいて、発熱と熱伝導により温度ムラのない熱源となる。
【0044】
本発明の発熱体2の材料であるフィルムシート素材は、高分子フィルムを高温度、例えば2400℃以上の雰囲気中にて熱処理し、焼成してグラファイト化した耐熱性を有する高配向性のグラファイトフィルムシートであり、面方向の熱伝導率が600から950W/m・kの特性を有するものである。そして、前述のように製造されたフィルムシート素材は、一般的にはトムソン型等の抜き型や、レーザー加工等により所望の形状に加工される。尚、天然の黒鉛を主成分とした粉末を成型し、焼成して圧延加工によりフィルムシート状とした本発明の発熱体2の材料と異なるものであれば、一般的には熱伝導率が200から400W/m・kであるが、本発明の実施の形態1において用いた発熱体2は、前述のように面方向の熱伝導率が600から950W/m・kという優れた二次元的等方向性の熱伝導を有するものである。
【0045】
尚、発熱体2の材料であるフィルムシート素材としては、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリピメリットイミド(ピメリットイミド)、ポリフェニレンイソフタルアミド(フェニレンイソフタルアミド)、ポリフェニレンベンゾイミタゾール(フェニレンベンゾイミタゾール)、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレンのうちから選ばれた少なくとも一種類の高分子フィルムを、不活性ガス中において2400℃以上で処理し、グラファイト化の過程で発生するガス処理雰囲気の圧力を調整することにより制御してフィルムシート状のフィルムシート素材が製造されたものである。更に、必要に応じて、前記のように製造されたグラファイトシートを圧延処理することにより、さらに良質のフィルムシート状のグラファイトシートを得ることができるものである。このように製造されたグラファイトシートを本発明の発熱体ユニットにおける発熱体2のフィルムシート素材として用いる。
【0046】
以下、実施の形態1における発熱体ユニットの具体的な構成について図3、4、5を用いて説明する。
【0047】
発熱体取付装置は発熱体2の両端に設けられた保持具3は、互いの板面(以下、挟持面という)が空間を介して対向するように配置された第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bを有し、発熱体2の端部の各板面が前記各挟持面とそれぞれ対向するように発熱体2の端部を前記空間すなわち第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとの中間に位置せしめるとともに、第1の保持部材3aの略中央部に形成された貫通孔3ac、第2の保持部材3bの略中央部に形成された貫通孔3bc、前記中間に位置する発熱体2の端部に形成された係止用貫通孔2eは互いの軸線が略同軸上に位置して互いに対向するよう形成されている。第1の保持部材3aには内部リード線7の他端側(発熱体2側)に位置する遊端部が接合部12(図3に示す)にて接合(例えば、溶接)され、その接合部12に位置する内部リード線7の遊端部をさらに延設して固定部材5が形成されている。この構成においては保持具3と固定部材5とは、接合部12と貫通孔3acの場所において2点止め状態となるので互いの位置関係おける回転、ねじれを防止することができる。
【0048】
固定部材5の遊端部はさらにL字状に屈曲して延設されることにより係合部材5bが形成されている。この係合部材5bは第1の保持部材貫通孔3ac側から貫通孔3ac、係止用貫通孔2e、貫通孔3bcの順に挿入されて貫通孔3ac、係止用貫通孔2e、貫通孔3bcにそれぞれ係合される。その結果、発熱体2の端部は係合部材5bと係止用貫通孔2eとの係合によって係合部材5bに係止されることとなる。
【0049】
さらに、貫通孔3bcより発熱体2の端部が配置されていない第2の保持部材3bの板面側に位置する外方空間へ突出した係合部材5bの遊端は、貫通孔3bcの形状より大きな形状に塑性変形され第2の位置規制部材5aが形成される。この第2の位置規制部材5aと第1の位置規制部材としての役割を果たす接合部12に接合されている固定部材5との位置規制により第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとは加圧状態となるので、発熱体2の端部は第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとにより圧着された状態で挟持され、かつ係合部材5bによって係止されて保持されることとなる。尚、発熱体の伸縮に対する相対的な関係で係止用貫通孔2eの耐破れ強度が十分であれば、発熱体の端部は第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとによる挟持は圧着されない状態で係合部材5bによってのみ係止される状態で保持されてもよい。
【0050】
前述した第2の位置規制部材5aを形成するための係合部材5bの遊端部の塑性変形の方法については、プレス加工、回転カシメ加工等の機械的な方法と、熱、電流、プラズマなどの溶着方法等を採用することが出来る。又、別の方法としては、ナットによる螺子方法、止め輪(例えば、C形止め輪やE型止め輪等)による係止方法も採用することが出来る。
【0051】
又、炭素系物質を主成分としたフィルムシート状の発熱体2の端部において、第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとの間に挿入された発熱体2の端部は貫通孔3ac、3bcを中心に挟持(挟着を含む)されているので、発熱体2の軸方向への張力が生じて発熱体2の端部に外力が加わっても貫通孔3ac,3bc近傍に与えられる外力が分散され、発熱体2の端部を挟持する第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとによる保持強度が増すこととなり、第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bからの発熱体2の端部の離脱移動が難くなる。そのため、前記発熱体2の軸方向への張力が生じた時でも係合部材5bによって係止用貫通孔2eへ加える外力が阻止されることとなり、係止用貫通孔2eを破損することがなくなる。
【0052】
さらに、保持具3は、発熱体2が柔らかく保形強度のない材料や炭素繊維で形成された場合においても金属材料で形状を形成し固定することができる。又、第1及び第2の保持部材3a,3bの各貫通孔は第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bの略中央部に配置した場合で説明したが、挟持(挟着)できる位置であれば第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bの略中央部でなくとも同様の効果が得られる。又、各貫通孔3ac,3bcは発熱体2の端部の大きさに応じて複数個設けてもよいことは言うまでもない。
【0053】
又、貫通孔3bcを係合部材5bの外径より大きく他の貫通孔3acより小さくすることで係合部材5bの挿入がし易くなる。又、貫通孔3bcより貫通孔3acを大きくすることにより、固定部材5をL字状に曲げて延設して形成せしめた係合部材5bの曲げ根元に生じたR部分の少なくとも一部を貫通孔3bc内に位置せしめることにより、第1の保持部材3aと固定部材5との組合せにおいてぶつかり合うと言う不都合を吸収した挟持状態を得ることができる。
【0054】
さらに、実施例の形態1においては、保持具3は第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとを一体化した構成例で説明したが、第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとを2つに分割あるいはそれ以上の複数個に分割して発熱体を挟持(挟着)する構成でも同様の効果を得ることができる。
【0055】
又、第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bの発熱体2側に位置する発熱体挿入口側縁部(すなわち、発熱体2の端部を発熱体2の長手方向に沿って挿入する側縁部)の側縁側には、発熱体2の欠損を防止する欠損防止部として、発熱体挿入口側ほど外側に向けて開放するように形成された(すなわち、発熱体挿入口側ほど発熱体2からの距離を有するように形成された)傾斜面形状となる第1の傾斜3aaと第2の傾斜3baがそれぞれ形成されることにより、発熱体2が第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bにより挟持(挟着)された第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bの発熱体挿入口側縁部に略対向して位置する発熱体2の被発熱体挿入口部においては、前記傾斜面によって損傷することがなくなる。さらに、第1の傾斜3aaと第2の傾斜3baは振動や熱サイクル、ストレスに対しても発熱体2の被発熱体挿入口部は強度を保つことができるようになる。
【0056】
又、実施例の形態1においては、欠損防止部として発熱体挿入口側縁部に傾斜面の形状である第1の傾斜3aaと第2の傾斜3bを形成したが、R形状の曲面、あるいは、第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bの発熱体挿入口側縁部を形成している外形状辺や孔形状辺に位置することとなるプレス加工やダイキャスト加工等の成型加工時に発生するバリは、その方向を発熱体2より離れていく方向に向ける、あるいはヤスリ等で削除することによってバリ無し部を形成することにより同様の効果を得ることができる。
【0057】
又、第1の保持部材3aには、発熱体の長手方向に対向して位置し、かつ発熱体2を中央に介して互いに対向する両側縁の位置にL字状に屈曲して形成された側壁3cがそれぞれ立設されている。この側壁3cは、第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bの何れかに発熱体2、第1の内部リード線部材11a、第2の内部リード線部材11bの何れかを取り付ける作業を行う際、位置決めとして利用でききるとともに、第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bにおける発熱体2の長手方向の強度を高めるので、振動や熱サイクル、ストレスに対しても強度を保つことができるので、第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bによる発熱体2の端部の挟持における接触度合いや保持等の状態を良好な状態で維持できる。尚、この挟持における状態をさらに良好にするためには、発熱体2の端部の各板面にそれぞれ対向して位置する第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bの各挟持面に、凹凸部分を形成し、その凹凸部が発熱体2の端部の表面に圧接されるように発熱体2が挟持されるようにすることにより、挟持力(保持力)を高めることが出来る。
【0058】
又、実施の形態1の発熱体ユニットにおいて、その両端すなわちガラス管1の両端より導出している外部リード線9に電力を供給すると、発熱体2に電流が流れ、発熱体2の抵抗により熱が発生する。このとき、発熱体2は炭素系物質を主成分とした材料で形成されているため発熱体2からは赤外線が放射される。この発熱体2は、その幅形状や厚み等の外形形状を変えることにより放熱状態を変更することが可能である。例えば、同一のフィルムシート素材により形成された発熱体ユニットであっても、その厚みを薄くし、幅を広くすることにより、抵抗値の変更を伴わずに輻射面積を広くしてその輻射エネルギーを高めることが可能となる。
【0059】
実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2(図2参照)の寸法は、前述のように板厚tは100μmであり、幅広部2aの板幅W1 は6mmであり、幅挟部2bの板幅W2は約2mmであり、長さLは250mm(図1参照)ある。幅挟部2bの板幅W2が連続する帯状の部分は、発熱体2において電流が流れて発熱する通電発熱部分2c(一部斜線で示す)である。また、通電発熱部分2cより外側に突出する突出部分は、通電発熱部分2cからの熱が伝導される伝熱発熱部分2dであり通電発熱部2cから伝導された熱を放熱する効果がある。
【0060】
長手方向に延設された帯状の発熱体2は、板幅W1もしくは板幅W2に対する板厚tの比が5/1以上であるのが望ましい。板幅寸法を板厚寸法より5倍以上大きくすることにより、板幅面(板幅W1及び板幅W2により構成される面)から放出する熱量は板厚面(板厚tにより構成される面)から放出する熱量より大幅に多くなり、発熱体2が指向性の高い熱源として使用することが可能となる。
【0061】
炭素系物質を主成分とし、かつ二次元的等方向性の熱伝導を有するフィルムシート状の材料で構成した実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2は、発熱効率が高く、温度が高くなるほど抵抗値が大きくなる正特性(PTC)であるため、加熱を開始してから定格温度に達するまでの時間は極めて短い。したがって、点灯時に発生する突入電流は平衡後の温度にもよるが、突入電流は平衡時の2倍ほどであり、タングステン線で形成された発熱体の場合のような10倍までの突入電流は発生しない。このため、実施の形態1の発熱体ユニットにおける発熱体2は、フリッカーが発生しにくい特性を有している。また、この発熱体2の寿命は使用温度にもよるが、約10000時間である。これは、タングステン線で形成された発熱体の寿命の約2倍である。
【0062】
前述のフィルムシート素材から特に選ばれた少なくとも一種類の高分子フィルムを不活性ガス中において2400℃以上で処理し、グラファイト化の過程で発生するガス処理雰囲気の圧力を制御することにより、二次元的等方向性を有する熱伝導性を持ち、温度特性においては温度が上昇するとともに抵抗値が上昇する正特性(PTC)を有する発熱体2を製造することができる。このように製造された発熱体2は、発熱温度の安定を確保し、入力電圧が定電圧の場合において、熱変動に対して安定的な自己入力制御を行うことが可能な信頼性が高く安定的な熱源となる。
【0063】
以上の実施の形態1における説明では発熱体2を透明石英ガラス管内に挿入し、そのガラス管内にガスを封入して高温度での使用する場合について説明したが、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体を挿入するものとしてはガラス管1以外の容器でもよく、ガラス管1及びそれ以外の容器にガスを封入しない形態にも発熱体2の材料の使用条件が合えば利用可能である。
【0064】
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2の発熱体ユニットについて図6を用いて説明する。図6は、実施の形態2の発熱体ユニットにおける発熱体の両端部を取付ける際に用いられる第2の例である発熱体取付装置を拡大して示した一部切欠正面図である。発熱体2の両端部に配設される固定部材5と、第1及び第2の内部リード線以外の構成は実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0065】
図6は実施の形態2の発熱対ユニットにおける一例であり、実施の形態1の発熱対ユニットと同様に、互いの挟持面が空間を介して対向するように配置された第1の保持部材3a、第2の保持部材3bを有した保持具3が配設され、発熱体2の両端部は第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとの中間に位置する空間に配設されている。固定部材50は係合部材50bと第1の位置規制部材50dを有し、かつ第1の内部リード線110aとは独立して構成されている。第1の位置規制部材50dの外径は部係合部材50b及び第1の保持部材3aの貫通孔3acの外径よりも大きく形成されることにより、第1の保持部材3aの貫通孔3acを貫通できないようになっている。その結果、固定部材50は第1の保持部材3aから第2の保持部材3b方向への移動が阻止され、第1の保持部材3aに係止されることとなる。尚、第2の内部リード線110b(図示しない)はスプリング部6あるいは位置規制部4の少なくともどちらか一方を設けること以外に第1の内部リード線110aと大きな差異がないので、第1の内部リード線110aのみ説明し第2の内部リード線110bの説明は省略する。
【0066】
係合部材50bは第1の保持部材3aの貫通孔3ac、発熱体2の係止用貫通孔2e、第2の保持部材3bの貫通孔3bcの順に挿入されて、貫通孔3ac、係止用貫通孔2e、貫通孔3bcにそれぞれ係合される。その結果、発熱体2の端部は係合部材5bと係止用貫通孔2eとの係合によって係合部材5bに係止されることとなる。さらに、貫通孔3bcより発熱体2の端部が配置されていない第2の保持部材3bの板面側である外方空間へ突出した係合部材50bの遊端は、貫通孔3bcの形状より大きな形状に塑性変形され第2の位置規制部材50aが形成される。この第2の位置規制部材50aと第1の位置規制部材50dとの位置規制により、発熱体2の端部は第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとにより圧着された状態で挟持(挟着を含む)され、かつ係合部材5bによって係止されて保持されることとなる。尚、発熱体の伸縮に対する相対的な関係で係止用貫通孔2eの耐破れ強度が十分であれば、発熱体の端部は第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとによる挟持は圧着されない状態で係合部材5bによってのみ係止される状態で保持されてもよい。
【0067】
第1の内部リード線110aは、モリブデン箔8に一端が接続された内部リード線71を、発熱体2の端部が配置されていない第1の保持部材3aの板面上に設けられた2箇所の接合部12においてそれぞれ接合(例えば、溶接)している。この2点接合により発熱体2への回転、ねじれを防止することができることとなる。さらに、この内部リード線71の接合される遊端部を平たくすることで溶接等の接合作業、及びその作業時の内部リード線71と第1の保持部材3aとの位置決めが容易となる。又、内部リード線71には螺旋状にガラス管1の内壁面に沿って伸縮可能に形成された弾性を有するスプリング部6が実施の形態1の発熱体ユニットに示した第1の内部リード線部材11aと同様に形成されている。すなわち、第1の内部リード線110aは、実施の形態1の発熱体ユニットに示した第1の内部リード線部材11aから固定部材5を分離した状態で形成されたものである。
【0068】
したがって、実施の形態1の発熱体ユニットと同様に、炭素系物質を主成分としたフィルムシート状の発熱体2の端部において、第1及び第2の保持部材3a、3bの間に挿入された発熱体2の端部は貫通孔3ac、3bcを中心に圧着された状態で挟持されているので、発熱体2の軸方向への張力が生じて発熱体2の端部に外力が加わっても貫通孔3ac、3bc近傍に与えられる外力が分散され、発熱体2の端部を挟持する第1及び第2の保持部材3a、3bの保持強度が増すこととなり、第1及び第2の保持部材3a、3Bからの発熱体2の端部の離脱移動が難くなる。そのため、前記発熱体2の軸方向への張力が生じた時でも係合部材5bによって係止用貫通孔2eへ加える外力が阻止されることとなり、係止用貫通孔2eを破損することがなくなる。
【0069】
さらに、保持具3は、発熱体2が柔らかく保形強度のない材料や炭素繊維で形成された場合においても金属材料で形状を形成し固定することができる。又、第1の保持部材3aの貫通孔3acと第2の保持部材3bの貫通孔3bcは第1の保持部材3aと第2の保持部材3bの略中央部に配置した場合で説明したが、挟持できる位置であれば第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bの略中央部でなくとも同様の効果が得られる。又、各貫通孔3ac、3bcは発熱体2の端部の大きさに応じて複数個設けてもよいることは言うまでもない。
【0070】
尚、前述した第2の位置規制部材5aを形成するための係合部材5bの遊端部の塑性変形の方法については、実施の形態1の発熱体ユニットと同様な方法を採用できるが、前記塑性変形に代わって、第2の位置規制部材5aと係合部材5bから独立させ別部品とすることも考えられる。例えば、第2の位置規制部材5aより貫通孔3acに向けて突出する突起を設け、その突起の側壁にオネジを形成し、第2の位置規制部材5a側に位置する係合部材5bの端面にメネジを形成することにより、第2の位置規制部材を係合部材5bに螺止してもよい。
【0071】
又、係合部材5bを中空とした筒形状(バーリング形状)とし、係合部材5bの遊端部をハトメカシメ等で固定してもよい。たとえば、第1及び第2の位置規制部材5d、5aとして、係合部材5bを中空とした筒形状(バーリング形状)とし、かつその遊端部をハトメカシメ等で固定する構成としてもよい。すなわち、固定部材50の形状は図中に示されている形状に限られた物でなく、かつ第1及び第2の位置規制部材5d,5aが各貫通孔3ac,3bcから抜け落ちない形状を形成できればよいことは言うまでもない
実施の形態1の発熱体ユニットと同様に、保持具3の第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bを一体での構成例で説明したが複数に分割して発熱体を挟持(挟着)する構成でも同様の効果を得ることができる。又、固定部材50と内部リード線110aとを分離する構成としたことで、柔らかい発熱体を第1の保持部材3a及び第2の保持部材3bにより挟持するよう組み立てる際、取り扱いが簡単になり発熱体の破損を防ぐことができるとともに、ガラス管1の片側開口より両リード線を一緒に出すことも可能となる構成ができる。
【0072】
次に発熱体2の両端部における保持具3と発熱体2の挟持力を向上させる発熱体取付装置として図7,図8を用いて説明する。図7は、実施の形態2の発熱体ユニットにおける発熱体の両端部を取付ける際に用いられる第3の例である発熱体取付装置を拡大して示した一部切欠正面図であり、図8は、実施の形態2の発熱体ユニットにおける発熱体の両端部を取付ける際に用いられる第4の例である発熱体取付装置を拡大して示した一部切欠正面図である。
【0073】
図7において、発熱体2の端部を、保持具3の第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとの中間に位置する空間に配置せしめ、発熱体2と第1の保持部材3a、あるいは発熱体2と第2の保持部材3bに形成されている隙間空間の少なくともどちらか一方にスペイサー13を入れて第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとにより挟み、さらに、固定部材50を挿入した後に第2の位置規制部材5aを塑性変形させて第2の保持部材3bに係止し、発熱体2の端部を持具3の第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとにより挟持する。
【0074】
又、他の発熱体取付装置として図8に示す。発熱体2の端部を、保持具3の第1の保持部材3aと第2の保持部材3bの中間に位置する空間に配置せしめ、第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとにより挟み、固定部材50の係合部材5bが貫通孔3ac、係止用貫通孔2e、貫通孔3bcの順に挿入される際、挿入側の第1の保持部材3aと固定部材50の第1の位置規制部材50dとの間に形成された隙間空間に係合部材5bに貫通されたスペイサー14を配置する。第2の保持部材3bの貫通孔3bcより外方に突出した係合部材5bの遊端は塑性変形されることにより第2の位置規制部材50aが形成され、第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとによりすることとなる。
【0075】
尚、スペイサー13とスペイサー14は、弾性を有する導電性部材か高温度においても弾性を有する金属、焼結金属、セラミックス、又はカーボン含む形成材料等の何れかで構成するとよい。さらに、このスペイサー13、スペイサー14は、発熱体2第1の位置規制部材50dと第2の位置規制部材50aとの間、すなわち係合部材5bによる電気接続部間に配置されているので、スペイサー13、スペイサー14の容量(面積、体積)により放熱をコントロールすることができ、発熱体2と電気接続部との温度勾配を設けることができるので電気接続部の温度を設計することで長寿命かを図ることが可能となる。
【0076】
説明した上記の発熱体ユニットの構成により、発熱体2に常に外力(圧力)が加わりながら、熱のサイクルにも耐え、かつ振動/衝撃などに強いとともに、発熱体2の端部を挟持する保持具3の第1の保持部材3aと第2の保持部材3bの接触抵抗を改善することができたことにより、発熱体ユニットをより安定的に長寿命化を図る構成とすることができる。
【0077】
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3の加熱装置について図9を参照しつつ説明する。実施の形態3の加熱装置は、前述の実施の形態1乃至実施の形態2の発熱体ユニットを熱輻射源として用いたものである。図9は本発明の発熱体ユニットを熱輻射源として用い、反射板を設けた加熱装置の構成を示す図であり、前記発熱体ユニットの発熱体2の長手方向に直交する方向に切断した断平面図を示している。
【0078】
図9は実施の形態3の加熱装置の一例であり、図に示す加熱装置は前述の実施の形態1の発熱体ユニット(図1参照)を熱輻射源として用いたものである。加熱装置は、発熱体ユニットにおける発熱体2の平面部分に対向する位置に反射板15が設けられている。反射板15は、発熱体2の長手方向に直交する断面形状が放物線形状を有し、発熱体2は反射板15の放物線における略焦点の位置に配置されている。この加熱装置においては、発熱体ユニットと反射手段である反射板15とにより熱輻射源が構成されている。
【0079】
実施の形態3の加熱装置には、図9に示した熱輻射源である発熱体ユニットの他に、発熱体ユニットへの電力を供給する電源部、電力を制御する制御部、装置外観を形成する筐体等の加熱装置において一般的に用いられている構成要素が含まれる。以下に説明する加熱装置に関しては、本発明の加熱装置の特徴である熱輻射源である発熱体ユニットと反射手段について詳細に説明する。
【0080】
実施の形態3の加熱装置において、発熱体ユニットに用いられている発熱体2は、炭素系物質を主成分とし、面方向の熱伝導性が実施の形態1にて説明した発熱体1と同じである、いわゆる二次元的等方向性の熱伝導を有するフィルムシート状の材料により帯状に形成されている。このため、発熱体2の平面部分すなわち板幅面から放射される熱量は板厚面(図1,2に示す板厚tを構成する面)から放射される熱量に比べて飛躍的に大きい値を示す。即ち、発熱体2は板幅に対し直交する構成を有する熱放射体である。したがって、発熱体2の対向する一対の板幅面において、発熱体2の前方に位置する被加熱対象物が位置しない側の板幅面、すなわち背面に対向する位置に反射板15の反射面が対向するように設けることにより、発熱体2の背面(反射板15に向かって位置する側の板幅面)から放射された熱線が反射板15により反射され、反射板15の前方にある被加熱対象物を効率高く加熱することが可能となる。
【0081】
図9に示した加熱装置においては、発熱体ユニットにおける発熱体2の板幅面に対向する背面側の位置に反射板15を配設し、その反射板15及び発熱体2の長手方向に直交する断面形状が放物線形状で形成されており、前記断面形状を示す断平面上において、熱輻射源である発熱体2における発熱中心が反射板15の焦点の位置に配置されている。このように発熱体2における発熱中心が反射板15の焦点の位置にあるため、加熱装置は発熱体2の背面からの輻射熱が反射板19により反射されて平行な熱線となり効率の高い熱輻射が可能となる。
【0082】
尚、反射板19の反射面形状は熱反射が平行となる放物面を有する曲面形状で説明したが、本発明における反射板としてはこのような構成に限定されるものではなく、反射板15の前記長手方向に直交する断面形状は、少なくとも発熱体の背面からの輻射熱を反射板15及び発熱体2の前方に位置する被加熱対象物を加熱することが可能となる断面形状でよい。前記断面形状が各種の形状、例えば円弧状、発熱体からの輻射熱を広げる拡散反射可能な曲面形状、拡散反射可能な多段の折り曲げ面(例えば、鋸歯状等の多角形状)を集合した形状等も構成することができる。又、反射板15の中央部分に断面方向形状で凸部等を設けることで、円弧面、拡散反射可能な曲面形状、拡散反射可能な多段の折り曲げ面を集合した形状なども構成することができる。
【0083】
尚、発熱体ユニットは、反射板15の側面端部より被加熱対象物側すなわち前方に出っ張らないよう、反射板15により囲まれている空間内側に配設した。このように発熱体ユニットを反射板15の空間内側に配設することにより、反射板15による反射(凸部からの拡散輻射や凹部面からの乱輻射を含む)を効率高く行うことができる。又、反射板15の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、各種ステンレス等を用いることができ、反射面には反射効率の高い反射材料のコーティングや表面処理を行うことにより、反射板15の反射率を高める処理を行った方がよいことは言うまでもない。
【0084】
(実施の形態4)
以下、本発明に係る実施の形態4の加熱装置について図10を参照しつつ説明する。 図10は、実施の形態の加熱装置として複写機を例に挙げて、その熱輻射源となる発熱体ユニット等の近傍を示した図であり、かつ発熱ユニットの長手方向に直交する方向で切断した断正面図である。
【0085】
図10は実施の形態4の加熱装置の一例である複写機であり、前述の実施の形態1の発熱体ユニット(図1参照)を熱輻射源として用いたものである。実施の形態4の複写機において、発熱体ユニットは、その長手方向に直交する断面が平面に形成された発熱体2を有し、筒体18により取り囲まれて構成されている。なお、実施の形態4の加熱装置である複写機には、図10に示した発熱体ユニット等の他に、電力を供給する電源部、複写機構、複写機構を制御する制御部、紙を供給する供給部、紙を排出する排出部、装置外観を形成する筐体等の一般的に複写機に用いられている構成要素が含まれる。
【0086】
実施の形態4の加熱装置は複写機のすくなくとも一部であり、発熱体ユニットの長手方向を中心として空間を介して位置する、すなわち発熱体ユニットの外側筒側周囲を取り囲む筒体18(以下、トナー定着ローラ)である。トナー定着ローラ18と加圧ローラ19は互いのスラスト軸方向を並行に位置せしめて互いに外側筒面が接して回転するよう構成されている。トナー定着ローラ18と加圧ローラ19との間には、給紙部より供給され、その供給途中において感光体から転写された字や図形等の含む画像データである所望形状の画像が具体的に形成されたトナー20を担持した紙21が挿入されると、挿入されたトナー20が未定着である紙21は加熱とともに加圧されてトナー20が紙21に定着される。
【0087】
本発明の複写機においては、トナー定着ローラ18と加圧ローラ19との間に通されて、紙上のトナー20を効率よく定着させるために、発熱体2の板幅面側はトナー定着ローラ18と加圧ローラ19と対向面(トナー定着領域)を含む領域を向くよう配置されている。さらに、発熱体2の板幅面側が向く方向は、トナー定着領域より上流側、すなわちトナー定着ローラ18のトナー定着領域より前記給紙部側の領域方向に向くよう配設されている。このように発熱体2を配設することにより、トナー定着ローラ18におけるトナー定着領域より上流側の部分も含めて加熱して、その部分の蓄熱量を上げ、発熱体2から放射された熱量を効果的にトナー定着に用いることが可能となる。
【0088】
本発明の複写機において、発熱体ユニットを取り囲むように配設されるトナー定着ローラである筒体18は、発熱体ユニットから放射された熱を所望方向へ熱輻射するものであり、発熱体2の板幅面の幅方向の中心に対向する領域が熱輻射中心となる。又、筒体18は、一体物で構成した例で説明したが、複数の部材を組み合わせて構成してもよい。又、本発明の複写機においては、指向性を有する発熱体ユニットを効果的に配設して効率の高い熱輻射源とすることもが可能となる。
【0089】
次に、本発明の複写機における温度制御方法について図11を参照しつつ説明する。図11は、実施の形態4の加熱装置における温度制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【0090】
本発明の複写機に設けられている電源22から供給された電力は制御部23において、ユーザからの指令に従い制御され、発熱体ユニットに通電される。通電された発熱体ユニットの発熱体2は、高温度に発熱してトナー定着ローラ18の外側筒面表面温度を所定の温度(トナー定着温度)まで上昇させる。トナー定着ローラ18にはセンサ部24が設けられており、トナー定着ローラ18の温度検知を行っている。センサ部24はトナー定着ローラ18の検知温度を制御部23にフィードバックしており、制御部23は発熱体ユニットへの電力を制御して、トナー定着ローラ18の温度調節を行っている。
【0091】
又、本発明の複写機においては、発熱体ユニットの通電制御を行う場合、その制御条件として検知温度を加味することが可能である。また、温度制御としては、例えばサーモスタット等の温度検知手段を用いたオンオフ制御、正確な温度を感知する温度感知センサを用いた入力電源の位相制御、さらに通電率制御、ゼロクロス制御等を単独で若しくはそれらを組み合わせて行うことにより、高精度な温度管理が可能な複写機が実現できる。したがって、前記のように構成された複写機によれば、発熱体の配設位置による指向性制御と、検知温度による通電制御とにより、輻射特性に優れた加熱と高精度な温度管理が可能となる。
【0092】
尚、複写機においては、実施の形態1の発熱体ユニット(図1参照)を熱輻射源として用いた例で説明したが、熱輻射源としては発熱体の形状を設計することで必要な出力を得られ効果を奏するものである。
【0093】
又、実施の形態4の加熱装置として複写機について説明したが、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置においてもトナー定着のための熱輻射源として本発明の発熱体ユニットを用いることができ、同様の効果を奏する。なお、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置において、トナー定着に用いた機構の場合、熱輻射源として用いられる発熱体ユニットはローラと呼ばれる筒体により取り囲まれて用いられる。
【0094】
尚、本発明の加熱装置としては、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置の他に、暖房用ストーブ等の電気暖房機器、調理加熱等の調理機器、食品等の乾燥機、及び短時間で高温度に加熱する必要のある装置を含むものである。
【0095】
本発明の一実施例である複写機において、発熱体ユニットを取り囲む筒体であるトナー定着ローラ18の構成は、内側が金属材料により形成され、外側がシリコン樹脂によりコーティングされており、トナー定着ローラ18の両サイドには回転駆動用のギヤ等が設けられている。又、の吸収性を高めるために、ローラの内側にはセラミックスや遠赤塗料等を設けてもよい。さらに、放熱・吸熱と強度の観点からアルミニウムと鉄等の複数の金属部材により筒体を構成して、さらに高い加熱効率を図ることも可能である。
【0096】
さらに、実施の形態4の加熱装置の他の例として、本発明の発熱体ユニットを熱源として調理機器に用いた場合、発熱体ユニットは筒状体により取り囲まれて配設される。筒状体は一体的若しくは複数の部材で構成された筒状の耐熱管である。調理機器の熱源として、発熱体が石英ガラス管で取り囲まれている発熱ユニットをそのまま用いた場合、調理で使用される塩、しょう油等の調味料等に含まれるアルカリ金属イオン等で石英ガラス管が失透を起こして破損することとなり、熱源としての発熱体ユニットが短寿命となってしまう。このため、発熱体ユニットを耐熱管である筒状体により取り囲むよう構成することにより、発熱体ユニットの長寿命化を図ることができる。前記筒状体としては、優れた光透過性を有する結晶化ガラスや遠赤放射量の高いセラミックス等を使用することにより使用用途を広げることができる。尚、発熱体ユニットと被加熱対象物との位置関係は、発熱体における加熱中心を被加熱対象物側に向けることにより、被加熱対象物を効率高く加熱することができるのは言うまでもない。
【0097】
以上のように、本発明の発熱体ユニットにおいて、発熱体の材質が炭素系を成分とするシート状で構成されたことにより、より高効率なヒータとすることができるが、より滑りやすく挟持のみでは固定することが出来難くなる。そのため、板幅面沿い方向の滑り防止の対策として、発熱体の端部において、第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとの間に挿入された発熱体2の端部は、貫通孔3ac,3bcを中心として固定部材によって加圧状態で固定されることにより第1の保持部材3aと第2の保持部材3bとにより挟持されるので、安定した保持強度が得られ、熱サイクルに強く長寿命の発熱体ユニット、及びその発熱体ユニットを用いた加熱装置を提供することができる。
【0098】
さらに、ガラス管内に配置された発熱体の位置はその使用用途に合わせた形態に合わせて保持部を設計することにより変更できるので、被加熱部に対し高い効率で熱輻射が行われるよう構成することができる。又、本発明の発熱体ユニットにおいて、保持具すなわち保持部材にて放熱を図ることで内部リード線部を短くし発熱体全長を短くすることができるので、本発明の発熱体ユニットを使用する装置をコンパクトにすることができる。
【0099】
又、本発明の発熱体ユニットにおいては、筒状の耐熱管(図1に示すガラス管1)の両端部分を封止して耐熱管内にガスを充填することにより、耐熱管内の発熱体が酸化することなく発熱体の焼成温度以下で使用することができるため、発熱体の設計余裕度を広げることが可能となっている。さらに、本発明において用いた発熱体は可撓性、柔軟性、及び弾力性を有し、高温度に対して保形性が高いため、発熱体を所望の形状に形成することが可能であり、耐熱管材料の選定や、発熱体の保持方法における自由度を高めることができる。
【0100】
又、前述の実施の形態3において説明したように、図9に示した加熱装置においては、本発明の発熱体ユニットにおける発熱体の背面側の位置に反射板を配設し、その反射板の長手方向に直交する断面形状が放物線形状であり、熱輻射源である発熱体における発熱中心が反射板の焦点の位置に配置され、かつ、発熱体における発熱中心が反射板の焦点の位置にあるため、本発明の加熱装置は発熱体からの輻射熱が反射板により反射されて効率の高い熱輻射が可能となる。
【0101】
又、前述の実施の形態4の一例として説明した本発明の発熱体ユニットを、例えば複写機等の電子機器の熱源とした場合、発熱体ユニットを覆う筒体がトナー定着ローラとして用いて、このトナー定着ローラにおける紙が接する部分を効率高く加熱することが可能な構成となる。
【0102】
また、本発明の加熱装置において、発熱体の少なくとも一部を耐熱管で覆った構成とすることにより、発熱体温度を高くすることが可能となり、加熱分布を変更することができる加熱装置を提供することが可能となる。
【0103】
又、前述の実施の形態4の他の例として説明した本発明の発熱体ユニットを設け、かつその発熱体ユニットを覆う筒体を配設した構成とすることも可能である。このように構成することにより、被加熱対象物等から発する異物、例えば肉汁、調味料等が筒体に遮られて直接発熱体ユニットに接することが防止される。これにより、発熱体ユニットの表面劣化による破損、断線を防止することが可能となり、長寿命の加熱装置を提供することができる。
【0104】
又、本発明の発熱体ユニット及び加熱装置においては、炭素系物質を主成分として二次元的等方向性の熱伝導を有し、可撓性、柔軟性、及び弾力性を有しており、さらに熱伝導性が200W/m・K以上であり、厚みが300μm以下であるフィルムシート状の発熱体を用いており、この発熱体は放射率が、80%以上の高い特性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明に係る発熱体ユニットは、小型で効率が高いため汎用性の高い熱源となるので、
高い熱源を有する必要がある機器の熱源として有効である。
【0106】
本発明に係る加熱装置は、小型で効率が高いため汎用性の高い熱源となる発熱体ユニットを用いることにより効率の高い加熱が可能となるので、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子装置の他に、暖房用ストーブ等の電気暖房機器、調理加熱等の調理機器、食品等の乾燥機、及び短時間で高温度に加熱する必要のある装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットの構成を示す平面図
【図2】本発明に係る実施の形態1の発熱体ユニットの構成を示す正面図
【図3】本発明に係る実施の形態1における第1の例の取付装置を示す平面図
【図4】本発明に係る実施の形態1における第1の例の取付装置を示す正面図
【図5】本発明に係る実施の形態1における第1の例の取付装置を示す断正面図
【図6】本発明に係る実施の形態2における第2の例の取付装置を示す一部切欠正面図
【図7】本発明に係る実施の形態2における第3の例の取付装置を示す一部切欠正面図
【図8】本発明に係る実施の形態2における第4の例の取付装置を示す一部切欠正面図
【図9】本発明に係る実施の形態3の加熱装置における熱輻射源の構成を示す断平面図
【図10】本発明に係る実施の形態4の加熱装置における熱源要部を示す断正面図
【図11】本発明に係る実施の形態4の加熱装置における温度制御装置のブロック図
【符号の説明】
【0108】
1 ガラス管
2 発熱体
3 保持具
3a 第1の保持部材
3b 第2の保持部材
4 保持部
5 固定部材
6 スプリング部
7 内部リード線
8 モリブデン箔
9 外部リード線
10a 第1の電力供給部
10b 第2の電力供給部
11a 第1の内部リード線部材
11b 第2の内部リード線部材
12 接合部
13 スペイサー
14 スペイサー
15 反射板
18 筒体
19 加圧ローラ






【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部を有した発熱体と、その発熱体の端部に取付けられた保持具と、その保持具に電気的に接続されて前記発熱体に外部からの電力を供給するリード線とをガラス管内に配置された構成からなる発熱体ユニットであって、前記保持具は互いに対向するように配置された第1及び第2の保持部材を有し、かつその第1及び第2の保持部材にはそれぞれ貫通孔が形成されるとともにそれらの貫通孔の軸線が同軸上に位置して互いに対向するようになっており、前記発熱体の端部は前記第1及び第2の保持部材の中間に位置し、かつ前記同軸上に位置する係止用貫通孔を形成しており、前記第1及び第2の保持部材の各貫通孔と前記係止用貫通孔には係合する係合部材を有した固定部材を配設しており、その固定部材には前記発熱体の端部が配置されていない前記第1保持部材側に位置した前記係合部材の一端側には前記第1の保持部材の位置を規制する第1の位置規制部材を設けるとともに、前記発熱体の端部が配置されていない前記第2の保持部材側に位置した前記係合部材の他端側には前記第2の保持部材の位置を規制する第2の位置規制部材を設けることにより、発熱体の端部が前記第1及び第2の保持部材によって挟持されることを特徴とする発熱体ユニット。
【請求項2】
前記第1及び第2の保持部材の各貫通孔と前記係止用貫通孔とを係合せしめるように前記第1の保持部材に接合した前記リード線の遊端が延設されることにより前記固定部材の係合部材を形成せしめ、かつ、前記第2の保持部材の貫通孔より貫通させて外側に突出せしめた前記係合部材の遊端部を塑性変形させて第2の位置規制部材を設けることにより、前記発熱体の端部が前記第1及び第2の保持部材によって挟持されることを特徴とする請求項1に記載の発熱体ユニット。
【請求項3】
前記第1の位置規制部材と前記第2の位置規制部材との距離を縮めることにより、前記発熱体の端部を前記第1及び第2の保持部材によって挟持された際、前記発熱体が圧着状態となることを特徴とする請求項1又は2に記載の発熱体ユニット。
【請求項4】
前記第1及び第2の保持部材の貫通孔と発熱体の貫通孔において、前記第2の保持部材の貫通孔は前記固定部材の外径より大きく、かつ前記第1の保持部材の貫通孔及び前記発熱体の貫通孔よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項5】
前記発熱体の端部を挟持する前記第1及び第2の保持部の発熱体挿入口側縁部は、前記発熱体の欠損を防止する欠損防止部として、外側に向けて開放する曲面もしくは傾斜面、あるいはバリ無し部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項6】
前記発熱体が可撓性、柔軟性、及び弾力性を有する材料からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項7】
前記発熱体を圧接するように前記発熱体と第1及び第2の保持部材の間の少なくとも一方に弾性を有する導電性部材が配設されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項8】
前記第1の位置規制部材と前記第2の位置規制部材との間に形成される空間内において、前記第1の位置規制部材、前記第2の位置規制部材、及び前記空間内に位置する各部材の何れかの間で形成される間隙に弾性を有する部材が配設されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項9】
前記リード線にガラス管内内壁と前記発熱体との距離を規制する位置規制部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項10】
前記リード線に前記発熱体の伸縮を吸収するスプリング部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項11】
前記ガラス管の開口部を封止し、不活性ガスが充填されたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項12】
前記発熱体は、厚みが300μm以下のフィルムシート状である請求項1乃至10のいずれか一項に記載の発熱体ユニット。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発熱体ユニットを有し、その発熱体ユニットの発熱体側筒面に対向する位置に反射手段が設けられていることを特徴とする加熱装置。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発熱体ユニットを有し、その発熱体ユニットを内部空間に位置せしめることにより前記発熱体ユニットの外側筒面周囲を取り囲むように筒体が配設されたことを特徴とする加熱装置。
【請求項15】
発熱体ユニットの電気的制御を行う制御回路を有し、前記制御回路はオンオフ制御、通電率制御、位相制御、及びゼロクロス制御のそれぞれの回路が単独、若しくは少なくとも二つを組み合わせて構成されることを特徴とする請求項12乃至13に記載の加熱装置。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−123572(P2009−123572A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297581(P2007−297581)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】