説明

発電システム

【課題】パワーコンディショナの起動時に燃料電池の急激な電流変動を生じない発電システムを提供する。
【解決手段】燃料電池1とパワーコンディショナ3とからなる発電システムにおいて、パワーコンディショナ3の起動時に、コンバータ部10を停止させた状態でインバータ部11を逆動作させて商用電源系統2からDCリンク部12への充電を開始する。その後、DCリンク部12の電圧が目標電圧に対して一定レベルまで充電されるのを待って、コンバータ部10を動作させてDCリンク部12の電圧が目標電圧になるように制御するとともに、燃料電池1の発電部5からパワーコンディショナ3への入力電流が徐々に増加するように上記インバータ部11を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は発電システムに関し、より詳細には、燃料電池を用いた発電システムにおいて、パワーコンディショナ起動時における燃料電池の突入電流を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を用いた発電システムは、燃料電池を動作させるための周辺機器としてブロワやポンプなどのいわゆる補機を備えている。これらの補機は、燃料電池が発電しているとき(定常運転中)は燃料電池側から電力供給を受け、燃料電池が発電していないとき(起動停止中または燃料電池が起動開始から定常運転に至るまでの起動準備中)は商用電源系統側から電力供給を受けるのが望ましい。
【0003】
そのため、従来の発電システムでは、この補機の電源をパワーコンディショナのDCリンク部(つまり、燃料電池の発電部から出力される直流電圧を所定電圧に変換するコンバータ部と、コンバータ部で昇圧された直流電圧を所定電圧の交流電圧に変換して商用電源系統に出力するインバータ部の中間に設けられたDCリンクコンデンサ)から採るように構成したものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、このように構成された発電システムにおいては、パワーコンディショナの起動時には、上記コンバータ部の電圧出力を用いてDCリンク部を目標電圧まで上昇させるように構成したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−42548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようにパワーコンディショナの起動時に、コンバータ部の出力を用いてDCリンク部を充電する構成では、以下のような問題があり、その改善が望まれていた。
【0007】
すなわち、この種の発電システムに用いられる燃料電池においては、一般的に、パワーコンディショナが引っ張る分だけ電流を出力するように構成されていることから、パワーコンディショナの起動時に、コンバータ部の出力を用いてDCリンク部を充電するように構成したのでは、DCリンク部の電圧が低い状態でコンバータ部による充電が開始されると、燃料電池から多大な電流(突入電流)がパワーコンディショナ(コンバータ部)に流れるおそれがある。
【0008】
燃料電池の発電部(スタック)は、このような突入電流によって劣化することから、この種の燃料電池においては突入電流の許容値が定められており、この許容値を超えて電流が流れるとスタックの劣化を招くおそれがある。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、パワーコンディショナの起動時に燃料電池の急激な電流変動を生じない発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る発電システムは、燃料電池と、パワーコンディショナとを備えた発電システムにおいて、上記パワーコンディショナは、上記燃料電池から出力される直流電圧を所定電圧に変換するコンバータ部と、上記コンバータ部から出力される直流電圧を交流電圧に変換して商用電源系統に供給する正動作と上記商用電源系統から供給される交流電圧を直流電圧に変換してDCリンク部に出力する逆動作とが可能なインバータ部とを有し、上記パワーコンディショナの起動時に、上記コンバータ部を停止させた状態で上記インバータ部の逆動作によって商用電源系統からDCリンク部への充電を開始し、その後、上記コンバータ部を動作させてDCリンク部の電圧が目標電圧になるように制御するとともに、上記燃料電池の発電部からパワーコンディショナへの入力電流が徐々に増加するように上記インバータ部を制御することを特徴とする。
【0011】
この請求項1に係る発電システムでは、パワーコンディショナの起動時に、コンバータ部を停止させた状態のままで、インバータ部を逆動作させて商用電源系統からDCリンク部の充電を開始させる。そして、その後、DCリンク部の電圧が目標電圧に対して一定レベル以上になるのを待って、上記コンバータ部を動作させてDCリンク部の電圧が目標電圧になるように制御する。このように、請求項1に係る発電システムでは、コンバータ部の動作に先立ってインバータ部の逆動作によりDCリンク部をある程度まで充電しておくので、コンバータ部の動作開始によって燃料電池から多大な電流が流れるのを防止することができる。
【0012】
そして、コンバータ部が動作を開始すると、その時点から、燃料電池の発電部からパワーコンディショナへの入力電流が徐々に増加するようにインバータ部を制御する。つまり、動作を開始したコンバータ部はDCリンク部の電圧が目標電圧になるように制御されているので、インバータ部に対してはDCリンク部に供給するエネルギを徐々に減らすような制御を行う。これにより、インバータ部からのエネルギ供給の減少に応じてコンバータ部からDCリンク部に供給されるエネルギが増加し、燃料電池からパワーコンディショナへの入力電流が徐々に増加することになる。したがって、最終的にインバータ部を正動作に移行させても逆動作から正動作に移行する過程で燃料電池からパワーコンディショナに流れる電流が急激に変動することがなく、燃料電池に突入電流が流れるのを防止することができる。
【0013】
そして、本発明に係る発電システムは、請求項1に記載の発電システムにおいて、前記発電部からパワーコンディショナへの入力電流を徐々に増加させる制御として、前記インバータ部は、インバータ部からDCリンク部に供給する電流を徐々に低下させる制御を行うことを特徴とする。
【0014】
この請求項2に係る発電システムでは、インバータ部は、燃料電池の発電部からパワーコンディショナに流れる入力電流を監視しながら(電流フィードバック制御を行いながら)、インバータ部からDCリンク部に供給する電流を徐々に減らしてゆく制御を行う。このときコンバータ部はDCリンク部の電圧を目標電圧に維持するように制御されているので、インバータ部からDCリンク部に供給するエネルギの減少に応じてコンバータ部からDCリンク部に供給される電流が徐々に増加する。
【0015】
本発明の請求項3に係る発電システムは、請求項1に記載の発電システムにおいて、上記発電部からパワーコンディショナへの入力電流を徐々に増加させる制御として、上記インバータ部が、インバータ部からDCリンク部に供給する電圧を徐々に低下させる制御を行うことを特徴とする。
【0016】
この請求項3に係る発電システムでは、インバータ部がDCリンク部に供給する電圧の目標値を徐々に低下させるので、インバータ部からDCリンク部へのエネルギの供給は緩やかに低下する。このときコンバータ部はDCリンク部の電圧を所定の目標電圧に維持するように制御されているので、インバータ部からDCリンク部へのエネルギ供給が減少すると、その減少分を補うようにコンバータ部からDCリンク部に供給する電流が徐々に増加する。
【0017】
本発明の請求項4に係る発電システムは、請求項1から3のいずれかに記載の発電システムにおいて、上記インバータ部が逆動作によってDCリンク部への充電を行い、かつ、上記コンバータ部が動作している場合において、上記インバータ部を停止させるときは、少なくとも上記コンバータ部よりも先にインバータ部を停止させないことを特徴とする。
【0018】
すなわち、この請求項4に係る発電システムでは、インバータ部が逆動作を行っており、かつ、コンバータ部も動作している状態において、インバータ部を停止させねばならない異常(たとえば、商用電源の周波数、電圧等の異常や逆潮流など)が検出されると、インバータ部を停止させる必要があるが、その際に、コンバータ部よりも先にインバータ部を停止させると、それまでにインバータ部からDCリンク部に供給していた電流をコンバータ部から流そうとして発電部に急激な電流変動が生じるおそれがあるので、インバータ部を停止させるときには、コンバータ部よりも先にインバータ部を停止させないように制御して、燃料電池に突入電流が流れるのを防止している。
【0019】
本発明の請求項5に係る発電システムは、請求項1から4のいずれかに記載の発電システムにおいて、上記商用電源系統からDCリンク部に電力供給を行うACブリッジ回路部を備え、上記インバータ部の逆動作によるDCリンク部の充電に先立って、上記ACブリッジ回路部によるDCリンク部の充電を行うことを特徴とする。
【0020】
この請求項5に係る発電システムでは、インバータ部の逆動作によるDCリンク部の充電に先立って(具体的には、燃料電池が発電運転を開始する前の起動停止中及び起動準備中に)、インバータ部を動作させることなく電力消費の少ないACブリッジ回路部を用いてDCリンク部の充電を行うので、燃料電池の起動準備中における電力消費を少なくすることができる。
【0021】
本発明の請求項6に係る発電システムは、請求項1から5のいずれかに記載の発電システムにおいて、上記燃料電池が固体酸化物形燃料電池で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、パワーコンディショナの起動時に、コンバータ部を停止させた状態でインバータ部を逆動作させてDCリンク部の充電を開始し、その後にコンバータ部を動作させてコンバータ部によるDCリンク部の充電を開始するので、コンバータ部の動作開始によって燃料電池に突入電流が流れるのが防止される。
【0023】
また、コンバータ部の動作を開始させると、その時点から、燃料電池の発電部からパワーコンディショナへの入力電流が徐々に増加するようにインバータ部を制御するので、インバータ部を逆動作から正動作に移行させる過程においても燃料電池に突入電流が流れるのが防止される。
【0024】
また、インバータ部が逆動作でDCリンク部の充電を行っており、かつ、コンバータ部も動作している状態で、インバータ部を停止させるときは、少なくともコンバータ部よりも先にインバータ部を停止させないようにしているので、インバータ部の停止によってコンバータ部に多大な電流が流れるのが防がれ、燃料電池に突入電流が流れるのが防止される。
【0025】
また、インバータ部の逆動作によるDCリンク部の充電に先立って、ACブリッジ回路部によりDCリンク部の充電を行うことにより、燃料電池の起動停止中及び起動準備中の消費電力が少ない発電システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る発電システムの概略構成の一例を示す回路図である。
【図2】同発電システムのパワーコンディショナ起動時におけるDCリンク部の充電動作を示す説明図であって、図2(a)はその充電動作を模式的に示した模式図であり、図2(b)は同充電動作におけるDCリンク電圧の変化を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る発電システムの概略構成を示している。この発電システムは、図1に示すように、燃料電池1と、この燃料電池1を商用電源系統2に連系させるためのパワーコンディショナ3と、補機電源部4とを主要部として備えている。
【0028】
燃料電池1は、天然ガスなどの水素を含む燃料ガスと、空気などの酸素を含む酸化剤ガスとを供給し、水素と酸素を化学反応させて発電する発電装置であって、発電された電力は直流電圧として出力される。燃料電池1は、使用する電解質や運転温度(スタックの温度)などの相違により数種類に分類されるが、本実施形態では、燃料電池1として電解質にイオン伝導性セラミックスを用いた固体酸化物形燃料電池(SOFC)が用いられる。なお、燃料電池1の構造自体は公知であるのでここではその詳細な説明は省略し、以下においては本発明の要点を説明する。
【0029】
図1において、5は燃料電池1の発電部(スタック)を示している。SOFCは運転温度が数百度(たとえば、800〜1000℃程度)と高温であることから、この燃料電池1は、起動開始から発電開始に至るまでの起動準備に1時間以上を必要とするが、発電運転(定常運転)が開始されると、この発電部5からは、たとえば100〜160Vの直流電圧が出力される。
【0030】
補機6は、燃料電池1を動作させるための周辺機器であり、燃料電池1が起動準備中にあるときや発電運転中に動作するブロワやポンプなどの電気負荷(図示せず)で構成されている。本実施形態では、これら補機6を構成する電気負荷は、直流電圧(たとえば、DC24V)で駆動されるモータなどで構成されている。なお、補機6を構成するブロワやポンプは、燃料電池1の起動中及び起動準備中にオン/オフを繰り返すことから、これら電気負荷の動作中における動作電流の変動は極めて激しい。
【0031】
FC制御部7は、マイコンを制御中枢として備えた制御装置であって、発電部5の出力電圧や出力電流、補機5の状態などを監視する各種センサ類(図示せず)から得られる情報と、後述するPC制御部15との通信によって得られる情報とに基づいて燃料電池1の各部(補機6を含む)の動作を制御する。
【0032】
商用電源系統2は、商用電源8(たとえば、AC200V)から供給される交流電力を図示しない家庭内の電気負荷に供給するための電源ラインや分電盤など(図示せず)を備えており、本実施形態では、パワーコンディショナ3を介して接続される燃料電池1と系統連系されている。
【0033】
パワーコンディショナ3は、燃料電池1を商用電源系統2に連系させるための装置であって、図1に示すように、コンバータ部10と、インバータ部11と、DCリンク部12と、ACブリッジ回路部13と、スイッチ回路部14と、PC制御部15とを主要部として備えている。
【0034】
上記コンバータ部10は、燃料電池1から出力される直流電圧を所定の直流電圧(たとえば、DC375〜405V)に変換するDC/DCコンバータで構成される。すなわち、燃料電池1の発電部5から出力される直流電力は、後述するインバータ部11でAC200Vの生成ができるように、このコンバータ部10で昇圧されて、DCリンク部12を介してインバータ部11に供給される。なお、このコンバータ部10には絶縁型のDC/DCコンバータが用いられ、燃料電池1と商用電源系統2とはこのコンバータ部10によって縁切りされている。
【0035】
インバータ部11は、DCリンク部12を介してコンバータ部10と接続される系統連系用のインバータであって、上記コンバータ部10から出力される直流電圧を所定の交流電圧(たとえば、AC200V)に変換して商用電源系統2に供給する正動作と、商用電源系統2から供給される交流電圧を所定の直流電圧に変換してDCリンク部12に出力する逆動作とが可能なDC/ACインバータで構成されている。
【0036】
そして、このインバータ部11の商用電源系統側にはスイッチ回路部14が設けられており、インバータ部11はこのスイッチ回路部14の接点A側に接続され、スイッチ回路部14を介して商用電源系統2との連系ができるように構成されている(詳細は後述する)。また、このインバータ部11のコンバータ部側(つまり、インバータのDCリンク)には、大容量のDCリンクコンデンサ12aがコンバータ部10と並列に接続されており、これによりDCリンク部12が形成されている。
【0037】
ACブリッジ回路部13は、商用電源系統2(商用電源8)から供給される交流電圧を所定の直流電圧(たとえば、DC280V)に変換してDCリンク部12に供給するための整流回路であって、図1に示すように、その入力側がスイッチ回路部14の接点B側に接続されるとともに、その出力側が上記DCリンク部12に接続されている。なお、このACブリッジ回路13には平滑回路が備えられていてもよい。
【0038】
スイッチ回路部14は、商用電源系統2とパワーコンディショナ3の接続部に介装され、インバータ部11またはACブリッジ回路部13のいずれを商用電源系統2に接続するかを選択する切り替えスイッチで構成される。このスイッチ回路部14の接点は後述するPC制御部15によって制御可能な構成とされ、スイッチ接点をA側に接続することで商用電源系統2とインバータ部11とが接続される。また、スイッチ接点をB側に接続することで商用電源系統2とACブリッジ回路部13とが接続される。
【0039】
本実施形態では、このスイッチ回路部14は、燃料電池1の発電システムと商用電源系統2とを連系させる系統連系スイッチとしても機能するものとされ、系統連系させないときはスイッチ接点を接点B側に接続するように構成されている。そして、このスイッチ回路部14の接点を構成するリレーは、リレー駆動回路(図示せず)に非通電のときに接点をB側に接続する構成とされ、リレー回路に通電することにより接点がA側に接続される構成とされている。
【0040】
なお、本実施形態では、このスイッチ回路部14を系統連系スイッチとして用いることとしているが、系統連系スイッチはこのスイッチ回路部14とは別に設けることも可能である。つまり、このスイッチ回路部14と直列に別途系統連系を解列可能なスイッチ回路(系統連系リレー)を設けることも可能である。
【0041】
PC制御部15は、マイコンを制御中枢として備えた制御装置であって、燃料電池1(発電部5)からの入力電圧、入力電流、スタック温度などを監視する各種センサ類(図示せず)から得られる情報、燃料電池1のFC制御部7から得られる情報、さらには、図示しない発電システムのリモコン(操作部)から得られる情報などに基づいてパワーコンディショナ3の各部の動作を制御するとともに、発電システム全体の制御も行うように構成されている。
【0042】
具体的には、このPC制御部15は、上記コンバータ部10、インバータ部11の動作または動作停止の制御や、スイッチ回路部14のスイッチ接点の切替制御などを行うほか、燃料電池1のFC制御部7に対して各種指令(たとえば、燃料電池1の起動開始や起動停止の指令など)を行うように構成されている。なお、このPC制御部15は、後述する補機6と同様に、燃料電池1が発電を行っていないときでも動作できるように、その駆動電源は上記DCリンク部12から供給されるように構成されている。
【0043】
補機電源部4は、燃料電池1の補機6に供給する直流電圧(たとえば、DC24V)を生成する電源装置であって、本実施形態では、この補機電源部4として絶縁型のDC/DCコンバータが用いられている。具体的には、補機電源部4は、その入力側が上記DCリンク部12に接続され、DCリンク部12から直流電力の供給を受けるように構成されており、その出力側が補機6に接続されている。また、この補機電源部4は、上述したように絶縁型のDC/DCコンバータを用いているので、この補機電源部4によって補機6(燃料電池1)と商用電源系統2とが縁切りされている。
【0044】
なお、本実施形態では、上記DCリンクコンデンサ12aとして540μFのコンデンサが用いられている。また、補機電源部4の入力側のコンデンサ(図示せず)には150μFのコンデンサが用いられている。さらに、上記DCリンク部12とPC制御部15との間に介在するPC制御部用の電源(図示せず)の入力側コンデンサには15μFのコンデンサが用いられる。
【0045】
しかして、このように構成された発電システムの動作について、図2に基づいて説明する。なお、図2はDCリンク部12の充電動作を示す説明図である。
【0046】
この発電システムでは、燃料電池1が発電運転(定常運転)を行っていない状態、換言すれば、燃料電池1が起動停止中(または起動準備中)である場合には、PC制御部15は、コンバータ部10の動作を停止させ、スイッチ回路部14の接点をB側に接続させている。
【0047】
この状態では、DCリンク部12はACブリッジ回路部13を介して商用電源8から供給される電力によって充電され、補機電源部4にはDCリンク部12からの電力が供給されている。本実施形態では上記商用電源8としてAC200Vを用いているので、このときにDCリンク部12はDC280V(=200√2V)に充電される(この状態を図2(b)では「ACブリッジ供給」として示している)。なお、このときには燃料電池1は発電を行っておらず、また、コンバータ部10も停止しているので、燃料電池1側からDCリンク部12に電力は供給されない。
【0048】
このように燃料電池1が起動停止状態にあるときに、図示しないパワーコンディショナ3のリモコンにおいて燃料電池1の起動を指示する操作がなされるなどして、燃料電池1に対する起動指令が与えられると、PC制御部15は当該起動指令をFC制御部7に与える。これにより、燃料電池1が起動を開始して所定の起動準備を行う。
【0049】
この起動準備は、燃料電池1を発電運転できる定常状態に移行させるための前処理であって、ここではその詳細は省略するが、たとえば、燃料ガスや酸化剤ガスの供給、スタックを所定の運転温度まで上昇させるなどの処理が行われる。なお、燃料電池1に対する起動指令は、上述したようにリモコン操作によって与えられるほか、たとえば、PC制御部15が学習制御機能(過去の動作実績に基づいて燃料電池1を起動させるタイミングを自動的に設定する機能)を備えている場合には、当該学習制御機能に基づいて燃料電池1の起動指令がPC制御部15から自動的に発せられる。
【0050】
そして、燃料電池1の起動準備が完了すると、PC制御部15は、次に、パワーコンディショナ3を起動し、以下の処理を開始する。
【0051】
すなわち、燃料電池1の起動準備が完了すると、PC制御部15は、はじめに、スイッチ回路部14の接点をA側に接続し、インバータ部11の逆動作を開始させる。ここで、燃料電池1の起動準備が完了したかの判断は、発電部5の出力電圧とスタック温度(運転温度)とに基づいてFC制御部7が行い、その結果がPC制御部15に送信される。
【0052】
このように、スイッチ回路部14の接点をA側に接続することで、DCリンク部12はインバータ部11の出力電力によって充電されるようになる(図2(a),(b)における符号(1)参照)。つまり、商用電源系統2から供給される交流電力がインバータ部11で直流に変換され、DCリンク部12を充電する。この状態では、補機電源部4には、インバータ部11の逆動作により生成された直流電力がDCリンク部12を介して与えられる。なお、このインバータ部11の逆動作を開始させた時点では、PC制御部15はコンバータ部10の停止状態を維持させている。
【0053】
ところで、このようにコンバータ部10を動作させる前にインバータ部11を用いてDCリンク部12を充電すると、DCリンク部12の電圧(DCリンク電圧)は目標電圧(たとえば、DC390V)Voに向けて上昇し始めるが(図2(b)の符号(1)参照)、本実施形態に示す発電システムでは、DCリンク電圧が予め設定された所定のしきい値Xを超えて目標電圧Voに近づくと、PC制御部15が、その時点(しきい値XまでDCリンク電圧が上昇した時点)でコンバータ部10の動作を開始させる。
【0054】
このとき、コンバータ部10については、DCリンク電圧が上記目標電圧Voとなるように目標値を設定して制御する。一方、インバータ部11については、発電部5からパワーコンディショナ3への入力電流が徐々に増加するように制御する。ここで、このインバータ部11の制御方法としては、発電部5からパワーコンディショナ3に流れる入力電流を監視しながら電流フィードバック制御を行ってインバータ部11からDCリンク部12に供給する電流を徐々に低下させるやり方と、インバータ部11からDCリンク部12に供給する電圧の目標値を徐々に低下させるやり方の二通りの制御方法があり、いずれの方法を採用してもよい。
【0055】
いずれの制御方法を採用した場合でも、インバータ部11からDCリンク部12に供給される電流または電圧が低下すると、コンバータ部10はDCリンク電圧を目標電圧Voに維持しようと動作するので、この動作に伴ってコンバータ部10からDCリンク部12に供給される電流が徐々に増加することとなる(図2(a),(b)の符号(2)参照)。
【0056】
このように、本実施形態では、コンバータ部10はその動作開始から徐々に出力電流が増加するように構成されるので、コンバータ部10に電流を供給する燃料電池1の発電部5の出力電流も緩やかに上昇することとなり、燃料電池1の発電部5に急激な突入電流が流れるのが防止される。
【0057】
ここで、コンバータ部10の動作を開始させるタイミングを決める上記しきい値Xは、DCリンク電圧の目標電圧Voに基づいて設定される。DCリンク部12は大容量のDCリンクコンデンサ12aによって構成されているので、インバータ部11の逆動作時における目標電圧VoはこのDCリンクコンデンサ12aをフルに充電できる値に設定される。そして、上記しきい値Xはこの目標電圧Voにできるだけ近い値(たとえば、目標電圧Voの95%程度)に設定される。
【0058】
これは、上記しきい値Xと目標電圧Voとの差が大きい(しきい値Xが目標電圧Voに対して低すぎる)と、コンバータ部10が動作を開始したときにコンバータ部10の出力によって充電しなければならないエネルギ量が増加するので、そのために燃料電池1に流れる電流も大きくなってしまうからである。したがって、このしきい値Xは、コンバータ部10を動作させた時に燃料電池1に流れる電流(突入電流)の変動率の許容値(本実施形態では、この許容値が1A/秒と仮定する)を超えないように設定される。つまり、このしきい値Xと上記許容値との間には相関関係があり、この許容値が大きい燃料電池を用いる場合には上記しきい値と目標電圧との差を大きく設定することができる。
【0059】
ちなみに、本実施形態では、上記許容値が1A/秒であり、DCリンク電圧の目標電圧がDC390Vであるので、このしきい値Xは390Vの95%であるDC370Vに設定されている。これは出願人が実験して得た経験値であり、しきい値Xを目標電圧の95%未満に設定した場合には、燃料電池1の突入電流が上記許容値(1A/秒)を超えてしまう可能性が高い。なお、このしきい値Xは目標電圧に対して95%以上であれば目標電圧により近い値を用いることも可能である。
【0060】
そして、この制御、つまり、インバータ部11の逆動作出力を徐々に下げながらコンバータ部10の出力を増加させる制御を継続することにより、最終的にはインバータ部11が正動作(コンバータ部10から出力される直流電圧を交流電圧(AC200V)に変換して商用電源系統2に供給する動作)を行うようになり、商用電源系統2側に電流が出力され、燃料電池1で発電された電力が家庭に供給されるようになる(図2(a),(b)の符号(3)参照)。
【0061】
このように、本発明に係る発電システムでは、補機6に電力を供給する補機電源部4がDCリンク部12を介して電力供給を受けるように構成されているので、補機用の電源部を単一の電源部で構成することができる。しかも、この補機電源部4は、燃料電池1と直接接続されないので、補機6の動作電流が急激に変動しても燃料電池1の電流が急激に変動することがなく、燃料電池1のスタックの劣化を防ぐことができる。
【0062】
また、燃料電池1の起動停止中及び起動準備中におけるDCリンク部12の充電は、コンバータ部10とインバータ部11の双方をともに停止させた状態で、インバータ部11より電力消費の少ないACブリッジ回路部13によって行われるので、燃料電池1の起動準備中における電力消費を少なく抑えることができる。しかも、このときにACブリッジ回路部13を選択するスイッチ回路部14として、リレー駆動回路の非通電時にACブリッジ回路部13側を選択するリレーを用いることで、ACブリッジ回路部13の選択に伴うスイッチ回路部14での電力消費も抑制でき、より省電力効果の高い発電システムを提供できる。
【0063】
さらに、パワーコンディショナ3の起動時に、コンバータ部10を停止させた状態のままで、コンバータ部10の動作に先立ってインバータ部11の逆動作によってDCリンク部12をある程度(しきい値Xを超えるレベル)まで充電しておくので、コンバータ部10の動作開始によって燃料電池1から多大な電流が流れるのを防止でき、燃料電池1に突入電流が流れるのを防ぐことができる。
【0064】
しかも、コンバータ部1が動作を開始すると、その時点から、発電部5からパワーコンディショナ3への入力電流が徐々に増加するようにインバータ部11が制御されるので、インバータ部を逆動作から正動作に移行させる過程で燃料電池1からパワーコンディショナ3に流れる電流が急激に変動することがなく、この点でも燃料電池1に突入電流が流れるのが防止される。
【0065】
ところで、このようにパワーコンディショナ3の起動時におけるDCリンク部12の充電を、インバータ部11の逆動作により開始し、その後にコンバータ部10を動作させてインバータ部11による充電の比率を徐々に減らしつつコンバータ部10の比率を上げるように構成すると、インバータ部11の逆動作中にコンバータ部10が動作している状態が生じるが、この状態にあるときに、PC制御部15が、インバータ部11を停止させねばならない異常を検出する場合がある。たとえば、商用電源8の周波数や電圧等が異常値を示した場合や逆潮流が検出された場合などは、インバータ部11を停止させる必要がある。
【0066】
このような場合、本実施形態では、PC制御部15がインバータ部11を停止させる処理を行うが、その際、PC制御部15は、少なくともコンバータ部10よりも先にインバータ部11を停止させないようにして、インバータ部11を停止させる。つまり、この場合、PC制御部15は、まず、コンバータ部10を停止させた後にインバータ部11を停止させてスイッチ回路部14の接点を接点B側に接続するか、あるいは、コンバータ部10、インバータ部11の停止とスイッチ回路部14の接点B側への接続を同時に行うかのいずれかの方法でインバータ部11を停止させる。
【0067】
このように、本実施形態の発電システムでは、インバータ部11が逆動作によってDCリンク部12への充電を行っており、かつ、コンバータ部10が動作している場合に、インバータ部11を停止させるときは、少なくともコンバータ部10よりも先にインバータ部11を停止させないようにしているので、インバータ部11が先に停止されることによってコンバータ部10から多大な電流が流れるといったおそれがなく、燃料電池1に突入電流が流れるのが防止される。
【0068】
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0069】
たとえば、上述した実施形態では、燃料電池1として固体酸化物形燃料電池(SOFC)を用いた場合を示したが、燃料電池1には他の形式の燃料電池、たとえば、固体高分子形燃料電池(PEFC)などを用いることも可能である。
【0070】
また、上述した実施形態では、発電システム単体の構成について説明したが、この発電システムは、燃料電池1で発生する排熱を排熱回収手段(たとえば、熱交換器)で回収して温水生成用の熱源として利用するなど、コージェネレーションシステムの構成要素としても適用可能である。
【0071】
なお、上述した実施形態では、インバータ部11の逆動作によるDCリンク部12を充電するのに先立って、ACブリッジ回路部13によってDCリンク部12の充電を行う場合を示したが、ACブリッジ回路部13を設けることなく他の方法(たとえばDCリンク部12の充電に二次電池を用いるなど)によって、燃料電池1の起動停止中または起動準備中の充電を行うように構成することもできる。
【0072】
また、上述した実施形態では、PC制御部15が燃料電池1のスタック温度の監視を行い、また、PC制御部15からFC制御部7に対して各種指令を行うように構成した場合を示したが、PC制御部15とFC制御部7とが受け持つ制御(両者の役割分担)は適宜変更可能である。すなわち、たとえば、スタックに関する監視はすべてFC制御部7で行うように構成したり、あるいは、燃料電池1の起動/停止指令や動作目標値などをFC制御部7が設定してPC制御部15に送信するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1 燃料電池
2 商用電源系統
3 パワーコンディショナ
4 補機電源部
5 発電部(スタック)
6 補機
7 FC制御部
8 商用電源
10 コンバータ部
11 インバータ部
12 DCリンク部
13 ACブリッジ回路部
14 スイッチ回路部
15 PC制御部
Vo DCリンク部の目標電圧
X しきい値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、パワーコンディショナとを備えた発電システムにおいて、
前記パワーコンディショナは、前記燃料電池から出力される直流電圧を所定電圧に変換するコンバータ部と、前記コンバータ部から出力される直流電圧を交流電圧に変換して商用電源系統に供給する正動作と前記商用電源系統から供給される交流電圧を直流電圧に変換してDCリンク部に出力する逆動作とが可能なインバータ部とを有し、
前記パワーコンディショナの起動時に、前記コンバータ部を停止させた状態で前記インバータ部の逆動作によって商用電源系統からDCリンク部への充電を開始し、その後、前記コンバータ部を動作させてDCリンク部の電圧が目標電圧になるように制御するとともに、前記燃料電池の発電部からパワーコンディショナへの入力電流が徐々に増加するように前記インバータ部を制御する
ことを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記発電部からパワーコンディショナへの入力電流を徐々に増加させる制御として、前記インバータ部は、インバータ部からDCリンク部に供給する電流を徐々に低下させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記発電部からパワーコンディショナへの入力電流を徐々に増加させる制御として、前記インバータ部が、インバータ部からDCリンク部に供給する電圧を徐々に低下させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項4】
前記インバータ部が逆動作によってDCリンク部への充電を行い、かつ、前記コンバータ部が動作している場合において、前記インバータ部を停止させるときは、少なくとも前記コンバータ部よりも先にインバータ部を停止させないことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の発電システム。
【請求項5】
前記商用電源系統からDCリンク部に電力供給を行うACブリッジ回路部を備え、前記インバータ部の逆動作によるDCリンク部の充電に先立って、前記ACブリッジ回路部によるDCリンク部の充電を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の発電システム。
【請求項6】
前記燃料電池が固体酸化物形燃料電池で構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−50191(P2011−50191A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197004(P2009−197004)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【出願人】(503116659)ノーリツエレクトロニクステクノロジー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】