説明

白色硬化性樹脂組成物

【課題】打ち抜き加工や穴あけ加工等により硬化膜に生じるクラックを防止、抑制できる白色硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)希釈剤、(D)酸化チタン、(E)エポキシ系熱硬化性化合物、及び(F)アスペクト比が5以上の無機化合物を含有することを特徴とする白色硬化性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板のソルダーレジスト等の各種レジスト及び反射シートの反射皮膜などに適した耐クラック性を有する白色硬化性樹脂組成物、及びこれを硬化させた硬化物を被覆したプリント配線板、反射シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、硬化性樹脂組成物は、例えば、プリント配線板のソルダーレジスト膜として使用される場合がある。プリント配線板は発光ダイオード素子(LED)等の実装用基板として使用されることがあり、この場合、実装面に形成されるソルダーレジスト膜には、光源からの光の反射率を向上させる機能が求められている。そして、硬化性樹脂組成物の硬化膜の反射率を高めるために、酸化チタン等の無機白色顔料を配合することが知られている。
【0003】
しかし、硬化性樹脂組成物の硬化膜の反射率を高めるために、酸化チタン等の無機白色顔料を大量に配合すると、硬化膜の耐クラック性が十分ではなくなるという問題があった。従って、プリント配線板の打ち抜き加工や穴あけ加工にあたって、ソルダーレジスト膜にクラックや剥離が生じてしまう。
【0004】
そこで、硬化膜に大きな機械特性を付与するために、特許文献1に、硬化性樹脂100質量部に対して、無機フィラー10〜1200質量部と、弾性率(MPa)1〜2000かつ平均粒径0.01〜10μmの有機フィラー1〜100質量部とを、無機フィラーと有機フィラーとの含有重量比1〜41含有した硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1の硬化性樹脂組成物でも、鉛筆硬度や密着性の低下を抑制できるものの、硬化膜の耐クラック性は十分ではなく、依然として打ち抜き加工や穴あけ加工にあたって硬化膜にクラックや剥離が生じてしまうという問題があった。
【0006】
また、反射シートを太陽電池のバックシートとして使用する場合、反射シートを太陽電池に取り付けたり、太陽電池の形状に加工する必要がある。従って、反射シートの反射皮膜にも打ち抜き加工や穴あけ加工に耐えるだけの耐クラック性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−102623
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、打ち抜き加工や穴あけ加工等により硬化膜に生じるクラックを防止、抑制できる白色硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)希釈剤、(D)酸化チタン、(E)エポキシ系熱硬化性化合物、及び(F)アスペクト比が5以上の無機化合物を含有することを特徴とする白色硬化性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の態様は、前記(F)アスペクト比が5以上の無機化合物を、前記(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、5〜80質量部含有することを特徴とする白色硬化性樹脂組成物である。
【0011】
本発明の態様は、前記(F)アスペクト比が5以上の無機化合物が、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムからなる群から選択された少なくとも一種のウィスカー状化合物であることを特徴とする白色硬化性樹脂組成物である。
【0012】
さらに、下記一般式(I)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、メチル基、水素原子またはt‐ブチル基を示す。)で表される(G)フェノール系化合物を含有することを特徴とする白色硬化性樹脂組成物である。
【0015】
本発明の態様は、さらに、(H)ウレタンアクリレートを、前記(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、10〜30質量部含有することを特徴とする白色硬化性樹脂組成物である。
【0016】
本発明の態様は、上記白色硬化性樹脂組成物の硬化膜を有するプリント配線板である。
【0017】
本発明の態様は、上記白色硬化性樹脂組成物で形成された反射皮膜を有する反射シートである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、白色硬化性樹脂組成物にアスペクト比が5以上の無機化合物を配合することにより、打ち抜きクラック耐性に優れた硬化物を形成できるので、打ち抜き加工や穴あけ加工等によるクラックの発生を防止、抑制できる。本発明の態様によれば、アスペクト比が5以上の無機化合物を、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、5〜80質量部含有することにより、打ち抜きクラック耐性に加えて耐カッピング性にも優れた硬化物を形成できる。本発明の態様によれば、さらに、一般式(i)のフェノール系化合物を含有することにより、加熱後における反射率の低下を抑制できる。本発明の態様によれば、ウレタンアクリレートを、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、10〜30質量部含有することにより、硬化物の可撓性が向上して耐カッピング性がさらに向上する。
【0019】
本発明の態様によれば、打ち抜きクラック耐性や耐カッピング性に優れた硬化膜を有するプリント配線板を得ることができる。また、本発明の態様によれば、打ち抜きクラック耐性や耐カッピング性に優れた反射皮膜を有する反射シートを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の白色硬化性樹脂組成物について説明する。本発明の白色硬化性樹脂組成物は、(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)希釈剤、(D)酸化チタン、(E)エポキシ系熱硬化性化合物、及び(F)アスペクト比が5以上の無機化合物を含有するものであって、上記各成分は、以下の通りである。
【0021】
(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂
1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂には、例えば、分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にアクリル酸又はメタクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させてエポキシ(メタ)アクリレートを得て、生成した水酸基に多塩基酸又はその無水物を反応させて得られる多塩基酸変性エポキシ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0022】
前記多官能性エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であればいずれでも使用可能であり、エポキシ当量の制限は特にないが、例えば、1000以下、好ましくは100〜500のものを用いる。多官能性エポキシ樹脂には、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、о−クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂にBr、Cl等のハロゲン原子を導入したものも使用可能である。これらのうちでも塗膜のフレキシブル性の点から、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0023】
上記したエポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させる。エポキシ基とカルボキシル基の反応によりエポキシ基が開裂し水酸基とエステル結合が生成する。使用するラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、特に限定されず、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸などを挙げることができ、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方(以下、(メタ)アクリル酸ということがある。)が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。(メタ)アクリル酸を反応させたものがエポキシ(メタ)アクリレートである。
【0024】
エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法は、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂とアクリル酸を適当な希釈剤中で加熱することにより反応できる。希釈剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、などのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。また触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフェートなどのリン化合物類等を挙げることができる。また、加熱温度は、適宜設定可能であるが、その下限値は、反応速度が遅くなるのを防止する点から80が好ましい。反応速度の上限値は、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の熱重合を防止する点から140℃が好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の反応において、エポキシ樹脂が有するエポキシ基1当量あたりラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を0.7〜1.2当量反応させるのが好ましい。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としてアクリル酸又はメタクリル酸の少なくとも一方を用いる場合には、エポキシ樹脂が有するエポキシ基1当量あたりラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を0.8〜1.0当量反応させるのが特に好ましい。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が0.7当量未満であると、後の工程の合成反応時にゲル化したり、樹脂の安定性が低下する。また、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が1.2当量超であると、未反応のカルボン酸が多く残存することで、硬化物の諸特性(例えば耐水性等)が低下する。
【0026】
上記エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物である不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に、多塩基酸又はその無水物を反応させる。多塩基酸又は多塩基酸無水物は、前記エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応で生成した水酸基に反応し、樹脂に遊離のカルボキシル基を持たせるものである。使用する多塩基酸又はその無水物としては、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。多塩基酸には、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられ、多塩基酸無水物としてはこれらの無水物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0027】
エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物が有する水酸基1モルに対して、多塩基酸又は多塩基酸無水物の使用量の下限値は、希アルカリ現像性の低下を防止する点から0.3モルであり、露光時に感度を高める点から0.4モルが好ましく、特に好ましくは0.6モルである。また、多塩基酸又は多塩基酸無水物の使用量の上限値は、硬化塗膜の諸特性(例えば耐水性等)の低下を防止する点から1.0モルが好ましい。
【0028】
多塩基酸は、上記不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に添加され、脱水縮合反応され、反応時生成した水は反応系から連続的に取り出すことが好ましいが、その反応は加熱状態で行うのが好ましく、その反応温度は、70〜130℃であることが好ましい。反応温度が130℃を超えると、エポキシ樹脂に結合されたものや、未反応モノマーのラジカル重合性不飽和基が熱重合を起こし易くなり合成が困難になることがあり、また70℃以下では反応速度が遅くなり、実際の製造上好ましくないことがある。
【0029】
上記多塩基酸または多塩基酸無水物と不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂との反応生成物である多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の酸価は、60〜300mgKOH/gが好ましい。反応させる多塩基酸の量により、反応生成物の酸価は調整できる。
【0030】
本発明においては、上記多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂も1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂として使用できるが、上記多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の有するカルボキシル基に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つグリシジル化合物を反応させることにより、ラジカル重合性不飽和基を更に導入し、さらに感光性を向上させた1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂としてもよい。
【0031】
この感光性を向上させた1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂は、最後のグリシジル化合物の反応によってラジカル重合性不飽和基が、その前駆体の感光性樹脂の高分子の骨格の側鎖に結合するため、光重合反応性が高く、優れた感光特性を持つことができる。1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つ化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、グリシジル基は1分子中に複数有していてもよい。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
上記グリシジル化合物は、上記多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の溶液に添加して反応させるが、その樹脂に導入したカルボキシル基1モルに対して、例えば、0.05〜0.5モルの割合で反応させる。1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂を含む白色硬化性樹脂組成物の感光性、熱管理幅及び電気絶縁性等の電気特性等の点から、0.1〜0.5モルの割合で反応させるのが好ましい。反応温度は80〜120℃が好ましい。このようにして得られるグリシジル化合物付加多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の酸価は、45〜250mgKOH/gが好ましい。
【0033】
(B)光重合開始剤
光重合開始剤は、一般的に使用される光重合開始剤であれば特に限定されず、例えば、オキシム系開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインーnーブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2, 2− ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2− ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4− (2−ヒドロキシエトキシ) フェニル−2−(ヒドロキシ−2− プロピル) ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4, 4′ージエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2− ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、 2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。光重合開始剤の配合量は、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1〜30質量部であり、好ましくは5〜20質量部である。
【0034】
(C)希釈剤
希釈剤は、例えば、反応性希釈剤である光重合性モノマーであり、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂の光硬化を十分にして、耐酸性、耐熱性、耐アルカリ性などを有する硬化物を得るために使用する。光重合性モノマーとしては、例えば、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の反応性希釈剤が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
上記した反応性希釈剤の配合量は、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、2.0〜40質量部であり、10〜25質量部が好ましい。
【0036】
(D)酸化チタン
酸化チタンは、硬化物を白色化するためのものであり、例えば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタンを挙げることができる。アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタンいずれも使用できるが、アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型酸化チタンと比較して白色度は高いものの、光触媒活性を有するので、白色硬化性樹脂組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。ルチル型酸化チタンは、光触媒活性をほとんど有さないので硬化物の変色を防止できる。
【0037】
ルチル型酸化チタンの粒子の平均粒径は特に限定されないが、例えば、0.01〜1μmである。また、ルチル型酸化チタン粒子の表面処理剤も特に限定されない。ルチル型酸化チタンには、例えば、富士チタン工業(株)製「TR−600」、「TR−700」、「TR−750」、「TR−840」、石原産業(株)製「R−550」、「R−580」、「R−630」、「R−820」、「CR−50」、「CR−60」、「CR−90」、「CR−93」、チタン工業(株)製「KR−270」、「KR−310」、「KR−380」、テイカ(株)製「JR−1000 」、「JR−805」, 「JR−806」等を使用することができる。ルチル型酸化チタンの配合量は、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して30〜800質量部であり、好ましくは50〜500質量部である。
【0038】
(E)エポキシ系熱硬化性化合物
エポキシ系熱硬化性化合物はエポキシ基を有する化合物であり、白色硬化性樹脂組成物において、硬化物の架橋密度を上げるとともに、エネルギー線(例えば、UV)照射や熱履歴による変色及び反射率の低下を抑制できる硬化物を得るためのものであり、例えば、エポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、ビスフェノールA型変性柔軟性エポキシ樹脂、核水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0039】
エポキシ系熱硬化性化合物の配合量は、十分な硬化性と反射率を得る点から、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1〜75質量部であり、硬化性と打ち抜きクラック耐性・耐カッピング性とのバランスの点から10〜50質量部が好ましい。
【0040】
(F)アスペクト比が5以上の無機化合物
アスペクト比が5以上の無機化合物を含有することにより、硬化物に剛性と強度を与えて、打ち抜きクラック耐性が向上する。アスペクト比が5以上の無機化合物としては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、炭化ケイ素ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ガラス繊維等を挙げることができる。アスペクト比が5以上であれば打ち抜きクラック耐性が向上するが、打ち抜きクラック耐性を確実に向上させる点からアスペクト比10以上が好ましく、打ち抜きクラック耐性をより向上させるのに加えて、硬化物に弾性を付与する点からアスペクト比15以上が特に好ましい。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0041】
アスペクト比が5以上の無機化合物の配合量は、特に限定されない。例えば、アスペクト比が5以上の無機化合物の配合量の下限値は、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、硬化物の打ち抜きクラック耐性を確実に得る点から4質量部であり、硬化物の打ち抜きクラック耐性に加えて耐カッピング性をも得る点から5質量部が好ましく、打ち抜きクラック耐性と耐カッピング性をバランスよく向上させる点から10質量部が特に好ましい。また、アスペクト比が5以上の無機化合物の配合量の上限値は、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、硬化物の打ち抜きクラック耐性の低下を防止する点から100質量部であり、硬化物の打ち抜きクラック耐性に加えて耐カッピング性の低下をも防止する点から80質量部が好ましく、打ち抜きクラック耐性の低下と耐カッピング性の低下を確実に防止する点から60質量部が特に好ましい。
【0042】
(G)フェノール系化合物
本発明の白色硬化性樹脂組成物では、上記(A)〜(F)成分に加えて、さらにフェノール系化合物を配合してもよい。フェノール系化合物を含有することにより、硬化物について加熱後における反射率の低下を抑制する。フェノール系化合物は、例えば、下記一般式(I)
【0043】
【化1】

【0044】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、メチル基、水素原子またはt‐ブチル基を示す。)で表されるものが挙げられる。
【0045】
一般式(I)に示すフェノール系化合物の配合量は、適宜選択可能である。例えば、前記フェノール系化合物の配合量の下限値は、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、加熱後の反射率の低下を抑制する点から0.1質量部が好ましく、加熱後の反射率の低下を確実に抑制する点から1質量部が特に好ましい。また、フェノール系化合物の配合量の上限値は、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、硬化物が褐色に変色するのを防止する点から10質量部が好ましく、フェノール性水酸基の増加により、露光工程における光ラジカル重合反応が阻害されて、感度が低下するのを防止する点から5質量部が特に好ましい。
【0046】
(H)ウレタンアクリレート
本発明の白色硬化性樹脂組成物では、上記(A)〜(F)成分に加えて、さらにウレタンアクリレートを配合してもよい。ウレタンアクリレートは、硬化物の耐カッピング性をさらに向上させるために使用される。ウレタンアクリレートは、ウレタン樹脂にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸であるアクリル酸を反応させて得られる化合物であれば、特に限定されない。ウレタン樹脂は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物と1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール化合物を反応させて得られるものである。
【0047】
1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネアート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トリメチルヘキサメチルジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘキサメチルアミンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート、1,3−ジフェニルプロパンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメチルジイソシアネートなどのジイソシアネートが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0048】
1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール化合物には、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールなどのC2−C22アルカンジオールや、2−ブテン−1,4−ジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオールなどのアルケンジオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール;グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ペンタン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノール等の脂肪族トリオール;テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトール等の水酸基を4つ以上有するポリオールなどが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0049】
ウレタンアクリレートとして市販されているものには、例えば、日本合成化学(株)製の「紫光UV−1400B」、「紫光UV−1700B」、「紫光UV−6300B」、「紫光UV−7510B」、「紫光UV−7600B」、「紫光UV−7605B」、「紫光UV−7610B」、「紫光UV−7620EA」、「紫光UV−7630B」及び「紫光UV−7640B」、根上工業(株)製の「アートレジンUN−9000H」、「アートレジンUN−3320HA」、「アートレジンUN−3320HC」、「アートレジンUN−3320HS」及び「アートレジンUN−901T」、新中村化学工業(株)製の「NKオリゴU−4HA」、「NKオリゴU−6HA」、「NKオリゴU−6LPA」、「NKオリゴU−15HA」、「NKオリゴUA−32P」、「NKオリゴU−324A」及び「NKオリゴU−6H」、ダイセル・サイテック(株)製の「EBECRYL1204」、「EBECRYL1205」、「EBECRYL215」、「EBECRYL230」、「EBECRYL244」、「EBECRYL245」、「EBECRYL264」、「EBECRYL265」、「EBECRYL1280」、「EBECRYL285」、「EBECRYL8200」、「EBECRYL8405」、「EBECRYL8411」、「EBECRYL8804」、「EBECRYL9270」、「KRM7735」、「KRM8296」、「EBECRYL1290」、「EBECRYL1290K」、「EBECRYL5129」、「EBECRYL210」、「EBECRYL220」、「EBECRYL284」、「EBECRYL8210」、「EBECRYL8402」及び「EBECRYL9260」、日本化薬(株)製の「UX−2201」、「UX−2301」、「UX−3204」、「UX−3301」、「UX−4101」、「UX−0937」、「UX−5000」、「UX−5001」、「UX−5002」、荒川化学工業(株)製の「ビームセット575」、東亞合成(株)製の「M−313」及び「M−315」などが挙げられる。
【0050】
ウレタンアクリレートの骨格は特に限定されないが、アクリル官能基数が多いものは硬化収縮が著しいので、1分子中のアクリル官能基数は2〜4が好ましい。また、ウレタンアクリレートの重量平均分子量は、露光の際にアートワークフィルムの基板への付着を防止して目的とする硬化塗膜を得る点から、その下限値は1500が好ましく、耐カッピング性のより優れた硬化物とする点から、その上限値は3000が好ましい。従って、例えば、4官能で重量平均分子量2700であるダイセル・サイテック(株)製の「EBECRYL8405」、2官能で重量平均分子量1500であるダイセル・サイテック(株)製の「EBECRYL215」が好ましい。ウレタンアクリレートの配合量は、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、耐カッピング性の向上の点から10〜30質量部であり、好ましくは15〜25質量部である。
【0051】
本発明の白色硬化性樹脂組成物には、上記した各成分の他に、必要に応じて、種々の添加成分、例えば、消泡剤、有機溶剤、各種添加剤、体質顔料などを含有させることができる。
【0052】
消泡剤には、公知のものを使用でき、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等を挙げることができる。また、有機溶剤は、白色硬化性樹脂組成物の粘度や乾燥性を調節するために使用するものである。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、などのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。有機溶媒を用いる場合の配合量は、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、40〜500重量部が好ましい。
【0053】
各種添加剤には、例えば、シラン系、チタネート系、アルミナ系等のカップリング剤といった分散剤、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)並びにポリアミン等の潜在性硬化剤、アセチルアセナートZn及びアセチルアセナートCr等のアセチルアセトンの金属塩、エナミン、オクチル酸錫、第4級スルホニウム塩、トリフェニルホスフィン、イミダゾール、イミダゾリウム塩並びにトリエタノールアミンボレート等の熱硬化促進剤を挙げることができる。
【0054】
体質顔料は、白色硬化性樹脂組成物の硬化物の物理的強度を上げるためのものであり、例えば、シリカ、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ等を挙げることができる。
【0055】
上記した本発明の白色硬化性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されないが、例えば、上記成分(A)〜(F)および必要に応じてその他の成分を所定割合で配合後、室温にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌手段により混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
【0056】
次に、上記した本発明の白色硬化性樹脂組成物の塗工方法について説明する。まず、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するプリント配線板上に、本発明の白色硬化性樹脂組成物を塗工して、ソルダーレジスト膜を形成する方法を例にとって説明する。銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するプリント配線板上に、上記のように製造した白色硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷法、スプレーコート法等の方法を用いて所望の厚さに塗布し、白色硬化性樹脂組成物中の有機溶剤を揮散させるために60〜80℃程度の温度で15〜60分間程度加熱する予備乾燥を行い、白色硬化性樹脂組成物から有機溶剤を揮発させて塗膜の表面をタックフリーの状態にする。その後、塗布した白色硬化性樹脂組成物上に、前記回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、その上から活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射させる。そして、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。現像方法には、スプレー法、シャワー法等が用いられ、使用される希アルカリ水溶液としては0.5〜5%の炭酸ナトリウム水溶液が一般的であるが、他のアルカリも使用可能である。次いで、130〜170℃の熱風循環式の乾燥機等で20〜80分間ポストキュアを行うことにより、プリント配線板上に目的とするソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【0057】
このようにして得られたソルダーレジスト膜にて被覆されたプリント配線板に、噴流はんだ付け方法、リフローはんだ付け方法等により電子部品がはんだ付けされることで、電子回路ユニットが形成される。また、上記した塗工方法の例では、プリント配線板に、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて形成されたソルダーレジスト膜を被覆したが、フレキシブル配線板上に本発明の硬化性樹脂組成物を塗工することにより、フレキシブル配線板に、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて形成されたソルダーレジスト膜を被覆してもよい。
【0058】
次に、上記した本発明の白色硬化性樹脂組成物をシート状ベースフィルムの表面に塗工して、反射シートを製造する方法を例にして説明する。本発明の白色硬化性樹脂組成物を熱硬化させて反射皮膜を形成する場合には、例えば、シート状ベースフィルム表面を酸で処理して洗浄後、洗浄した表面に、白色硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷法、スプレーコート法等の方法を用いて所望の厚さ、例えば5〜100μmの厚さに塗布する。次に、熱風炉または遠赤外線炉等で予備乾燥を行い、白色硬化性樹脂組成物から有機溶剤を揮発させて塗膜の表面をタックフリーの状態にする。予備乾燥では、60〜80℃程度の温度で15〜60分間程度加熱する。次いで、例えば130〜170℃の熱風炉または遠赤外線炉等の乾燥機等で10〜80分間加熱することによりポストキュアを行って、ベースフィルム表面の塗膜を熱硬化させ、反射皮膜を有する反射シートを製造する。
【0059】
また、本発明の白色硬化性樹脂組成物を光硬化させて反射皮膜を形成する場合には、例えばシート状ベースフィルム表面を酸で処理して洗浄後、洗浄した表面に、白色硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷法、スプレーコート法等の方法を用いて所望の厚さ、例えば5〜100μmの厚さに塗布する。次に、白色硬化性樹脂組成物中の有機溶剤を揮散させるために60〜80℃程度の温度で15〜60分間程度加熱する予備乾燥を行う。その後、塗布した白色硬化性樹脂組成物上に活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射して光硬化させる。このとき、反射シートに反射皮膜の所定パターンを形成する場合には、透光性にした所定パターン部を有するネガフィルムを、塗布した硬化性樹脂組成物上に密着させ、その上から活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射し、前記所定パターンに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより所定パターンを有する反射皮膜を現像する。現像方法には、スプレー法、シャワー法等が用いられ、使用される希アルカリ水溶液としては0.5〜5%の炭酸ナトリウム水溶液が一般的であるが、他のアルカリも使用可能である。その次に、130〜170℃の熱風循環式の乾燥機等で20〜80分間ポストキュアを行うことにより、シート状ベースフィルム上に目的とする反射皮膜を形成した反射シートを製造する。
【0060】
上記シート状ベースフィルムの材料は、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルフロライド(PVF)、フッ化エチレン・プロピレンコポリマー(FEP)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、アラミド、ポリアミド・イミド、エポキシ、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリマー(LCP)等を挙げることができる。
【0061】
反射シートを太陽電池バックシートとして使用する場合には、例えば、ベースフィルムとして、厚さ40μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる。また、硬化後の膜厚が例えば20〜23μmとなるように、ポリエチレンテレフタレートフィルム表面に白色硬化性樹脂組成物を塗工する。さらに、白色硬化性樹脂組成物の塗工部位は、太陽電池モジュール裏面に対向したベースフィルム表面領域の全面または略全面について行なうのが好ましい。
【0062】
次に、本発明の白色硬化性樹脂組成物にて形成した反射皮膜を有する反射シートの使用方法例について説明する。本発明の反射シートは、太陽電池モジュールの裏面側、すなわち日射を受ける表面とは反対側の表面上に配置することで太陽電池バックシートとして使用できる。本発明の反射シートを太陽電池バックシートとして使用すると、太陽電池モジュールの発電素子に受光されずに太陽電池モジュール内を透過した太陽光が、反射シートにより反射されて太陽電池モジュールの裏面側から再度太陽電池モジュール内部に戻されるので、太陽電池モジュールの発電効率が向上する。なお、太陽電池モジュール裏面への反射シートの設置方法には、例えば、接着剤や接着用テープを用いて太陽電池モジュール裏面に直接貼り合わせる方法が挙げられる。
【実施例】
【0063】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0064】
実施例1〜15、比較例1
下記表1に示す各成分を下記表1に示す割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1〜15及び比較例1にて使用する、白色硬化性樹脂組成物を調製した。下記表1中の配合の数字は質量部を示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1中の各成分についての詳細は以下の通りである。
(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂
・FLX−2089:日本化薬(株)製、ウレタン変性エポキシアクリレート構造のカルボキシル基含有樹脂。
・サイクロマーP(ACA)Z−300:ダイセル化学工業(株)製、アクリル共重合構造の樹脂を使用したカルボキシル基含有樹脂。
(B)光重合開始剤
・イルガキュア819:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド。
・DAROCURE TPO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド。
・KAYACURE DETX:日本化薬(株)製、2,4‐ジエチルチオキサンテン‐9‐オン。
(C)希釈剤
・SR454:サートマー社製、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート。
・DPHA:日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。
(D)酸化チタン
・R−680:石原産業(株)製、ルチル型酸化チタン
(E)エポキシ系熱硬化性化合物
・YX−4000:ジャパンエポキシレジン(株)製のビキシレノール型エポキシ樹脂。
・EP850:大日本インキ化学工業(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂。
(F)アスペクト比が5以上の無機化合物
・ティスモD:大塚化学(株)製、チタン酸カリウム繊維。
・モスハイジ:宇部マテリアルズ(株)製、硫酸マグネシウムウィスカー。
(G)フェノール系化合物
・スミライザーGA−80:住友化学(株)製、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン。
(H)ウレタンアクリレート
・EBECRYL8405:ダイセル・サイテック(株)製、4官能、重量平均分子量2700。
【0067】
その他、KS−66は信越化学工業(株)製のシリコーン系消泡剤であり、添加剤であるR−974は日本アエロジル(株)製のチキソ性付与剤、DICY−7はジャパンエポキシレジン(株)製の潜在性硬化剤、イルガノックス1010はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の酸化防止剤、メラミンは潜在性硬化剤である。また、EDGACは、三洋化成(株)製のジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートである。
【0068】
試験片作成工程
銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するプリント配線板(FR‐4基材、板厚1.6mm、銅箔厚み50μm)の表面をバフ研磨処理した後、スクリーン印刷法にて、白色硬化性樹脂組成物を塗布後、BOX炉にて70℃で20分(炉内:25分)の予備乾燥を行った。予備乾燥後、塗膜上に露光装置(オーク社製HMW−680GW)にて紫外線(300〜450nm)を400mJ/cm2(約40秒)露光した後、BOX炉にて150℃で60分(炉内:70分)のポストキュアを行ってプリント配線板上に硬化塗膜を形成した。硬化塗膜の厚みは、20〜23μmであった。
【0069】
評価
(1)反射率
上記のように作成した試験片について、分光光度計U‐3410((株)日立製作所製:φ60mm積分球)を用いて、450nmにおける反射率を測定した。「初期」とはポストキュア後、「照射後」とは50J/cm2のUV照射(2分間)処理後、「加熱後」とは170℃で100時間の加熱処理後を意味する。
(2)はんだ耐熱性
上記のように作成した試験片の硬化塗膜を、JIS C−6481の試験方法に従って、260℃のはんだ槽に30秒間浸せき後、セロハンテープによるピーリング試験を1サイクルとし、これを1〜3回繰り返した後の塗膜状態を目視により観察した。観察結果については、3サイクル繰り返し後も塗膜に変化が認められないものを「◎」、3サイクル繰り返し後の塗膜にほんの僅か変化が認められるものを「○」、2サイクル繰り返し後の塗膜に変化が認められるものを「△」、1サイクル後の塗膜に剥離が認められるものを「×」と評価した。
(3)打ち抜きクラック耐性
銅箔上に上記試験片作成工程と同様の方法で全面に塗工した試験片(5cm×5cm)を評価基板とし、JIS K‐5600‐5‐3に準拠してデュポン衝撃装置を用い、質量500g(打ち抜き部:半径6mm)のおもりを高さ50cmから試験片上に落下させ、打ち抜き部分周辺の塗膜の割れ及び剥れを目視により観察した。観察結果については、塗膜の剥がれがないものを「○」、若干塗膜の剥がれが認められるものを「△」、塗膜の剥がれがあるものを「×」と評価した。
(4)耐カッピング性
ボンデ鋼板(10cm×10cm、厚さ0.8mm)の表面をキシレンにて洗浄して、油分を完全に除去したものを用い、上記試験片作成工程の塗膜形成方法と同様の方法で塗膜を形成したものを評価基板とし、JIS K‐5600‐5‐2に準拠してカッピング試験器を用い、試験片の硬化塗膜が形成されていない裏面側から鋼球を押し出して試験片を変形させた際に、硬化塗膜の割れ及び剥れが生じるまでの押し出し距離(mm)を測定した。
【0070】
評価結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
上記表2に示すように、アスペクト比が5以上の無機化合物を含有する実施例1〜15では、打ち抜きクラック耐性を有していた。また、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、アスペクト比が5以上の無機化合物を5〜80質量部含有した実施例1〜10、13、14では、打ち抜きクラック耐性がさらに向上し、加えて、耐カッピング性も有していた。さらに、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、アスペクト比が5以上の無機化合物を30〜35質量部含有した実施例1、2、5〜10、13では、打ち抜きクラック耐性、耐カッピング性ともに、さらに向上した。
【0073】
さらにフェノール系化合物を含有した実施例7〜10では、加熱後における反射率の低下を抑えることができた。また、さらにウレタンアクリレートを含有した実施例6〜8では、耐カッピング性がより向上した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の白色硬化性樹脂組成物は、打ち抜き加工や穴あけ加工にあたりクラックの発生を防止、抑制できるので、例えば、プリント配線板やフレキシブル配線板の分野及び太陽電池バックシート用反射シートの分野で利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、
(B)光重合開始剤、
(C)希釈剤、
(D)酸化チタン、
(E)エポキシ系熱硬化性化合物、
及び(F)アスペクト比が5以上の無機化合物を含有することを特徴とする白色硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(F)アスペクト比が5以上の無機化合物を、前記(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、5〜80質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の白色硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(F)アスペクト比が5以上の無機化合物が、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムからなる群から選択された少なくとも一種のウィスカー状化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の白色硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、下記一般式(I)
【化1】


(式中、R、Rは、それぞれ独立に、メチル基、水素原子またはt‐ブチル基を示す。)で表される(G)フェノール系化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の白色硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、(H)ウレタンアクリレートを、前記(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、10〜30質量部含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の白色硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の白色硬化性樹脂組成物の硬化膜を有するプリント配線板。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の白色硬化性樹脂組成物で形成された反射皮膜を有する反射シート。

【公開番号】特開2012−41430(P2012−41430A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183332(P2010−183332)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】