白血病を治療するための組成物および方法
本発明は、一般的には白血病の有効な治療に関し、具体的には、メニンのMLLおよびMLL融合腫瘍性タンパク質との相互作用を阻害する組成物および方法、さらに、このような組成物をスクリーニングによって得るシステムおよび方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、米国特許仮出願第61/240,102号(出願日2009年9月4日)に基づいて優先権を主張し、該特許仮出願の開示内容は全て参照によってここに引用されるものとする。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、一般的には白血病の治療に関し、具体的には、メニンとMLLおよびMLL融合腫瘍性タンパク質との相互作用を阻害する組成物、並びに方法、さらに、このような組成物をスクリーニングによって得るシステムおよび方法を提供する。
【0003】
〔背景技術〕
プロト癌遺伝子であるMixed Lineage Leukemia(MLL)に影響を与える染色体転座は、高悪性度のヒトの急性白血病において、子供においても成人においても発生する(Sorensen et al., J Clin Invest., 1994.93(1): p. 429-37., Cox, et al., Am J Clin PathoI., 2004. 122(2): p. 298-306.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。この染色体転座は、急性骨髄芽球性白血病(“AML”: acute myeloblastic leukemia)および急性リンパ性白血病(“ALL”: acute lymphoblastic leukemia)に罹患している乳児において特によく見られ、全ての乳児の急性白血病の症例の80%を占める。MLLと60個の相手遺伝子のうちの1つとの融合により、HOX遺伝子を上方制御するキメラ癌遺伝子が形成され、その結果、血液細胞の分化がブロックされて、最終的に急性白血病となる(Eguchi et al. Int J Hematol., 2003. 78(5): p. 390-401.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。MLL転座を有する白血病患者は予後が非常に悪く(5年間の生存率は35%)、新規な治療方針が、これらの白血病を治療するために緊急に必要とされていることは明白である(Slany. Hematol OncoI., 2005. 23(1): p. 1-9.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。メニンは、MLLに関連する白血病においてクリティカルな補助因子である。メニンは、Multiple Endocrine Neoplasia(MEN)遺伝子によってコード化される腫瘍抑制因子タンパク質である。メニンは、遍在的に発現する核タンパク質であり、転写因子、クロマチン修飾タンパク質、ならびに、DNAプロセッシングおよび修復タンパク質のコホートとの相互作用に関与する(Agarwal et al. Horm Metab Res., 2005. 37(6): p. 369-74.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。メニンの生物学的機能は依然不明なままであり、状況によって変わる。メニンは、内分泌器官においては腫瘍抑制因子として機能する(Marx. Nat Rev Cancer., 2005. 5(5): p. 367-75.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)が、骨髄系細胞においては発癌性の役割を有する(Yokoyama et al., Cell., 2005.123(2): p. 207-18.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。メニンが発癌性のMLL融合タンパク質と会合すると、HOX遺伝子の発現が構成的に上方制御され、造血細胞の増殖分化が損なわれ、白血病の発生を引き起こす。発癌性のMLL−AF9融合タンパク質が形質転換された骨髄系細胞は、効率的に増殖するためにメニンを必要とする(Chen et al., Proc Natl Acad Sci USA., 2006.103(4): p. 1018-23.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。メニンは、MLL−ENL、MLL−GAS7、および、MLL−AF6を含む、他のMLL転座によって誘発される癌化を維持するためにも必要である(Yokoyama et al., Cell., 2005.123(2): p. 207-18.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。これは、メニンが、MLLに関連する白血病において一般的な発癌性補助因子として機能することを実証し、かつ、メニンとMLL融合物との相互作用が、分子治療にとって貴重な標的であることを暗示している。MLL融合腫瘍性タンパク質の白血病誘発活性は、メニンとの会合に依存する。したがって、この相互作用を選択的に標的とすることによって、MLLに関連する白血病の新規な薬を開発するための魅力的な治療方法を提供できる可能性がある。
【0004】
〔発明の概要〕
いくつかの実施形態では、本発明は、1つ以上のMLL融合タンパク質とメニンとの結合、および/または、MLL野生型とメニンとの結合を阻害する、白血病を治療するための組成物を提供する。また、いくつかの実施形態では、上記組成物はチエノピリミジン・クラスの化合物を含有する。一部の実施形態では、上記チエノピリミジン・クラスの化合物は、次の一般式で表わされる化合物または該化合物の薬学的に許容可能な塩である。
【0005】
【化1】
【0006】
ただし、式中で、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は、独立的に、H、置換されていても置換されていなくてもよいアルキル(例えばメチル、エチル等)、置換されていても置換されていなくてもよいアルコキシ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、At)、ケトン、環状炭素、芳香族環、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式非芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、チエノピリミジン環系に付加される、あるいは縮合される炭素環式芳香族環もしくは炭素環式非芳香族環(上記チエノピリミジン環系は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは、水素結合受容体で置換されていない、あるいは、置換されている)、または、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する炭素環式芳香族環もしくは複素環式芳香族環(該環員原子は、別の芳香族環、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体に縮合している)を含有し、ZはS、O、NH、または、CH−CHであり、Wは存在または非存在であって、かつ、NH、NH−(CH2)n(n=0〜10)、(CH2)n(n=0〜10)、O、または、O−(CH2)n(n=0〜10)であり、XおよびYはそれぞれ独立的にNまたはCであり;mは0〜3である(m=0のとき、R7は存在しない)。一部の実施形態では、本発明は、メニンのMLLおよび/またはMLL融合タンパク質との相互作用を阻害し、白血病を治療または予防するために使用可能な化合物を生成することができる任意の置換基を包含する。
【0007】
一部の実施形態では、上記チエノピリミジン・クラスの化合物は、次の一般式で表わされる化合物または該化合物の薬学的に許容可能な塩である。
【0008】
【化2】
【0009】
一部の実施形態では、上記チエノピリミジン・クラスの化合物は、次式で表わされる構造を有する。
【0010】
【化3】
【0011】
一部の実施形態では、上記チエノピリミジン・クラスの化合物は、化合物1〜31および60〜83から選択される。
【0012】
一部の実施形態では、上記組成物は、組成物1〜31および60〜83の任意の構造的類似体を含有する。
【0013】
一部の実施形態では、上記組成物は、ベンゾジアゼピン・クラスの化合物を含有する。一部の実施形態では、上記ベンゾジアゼピン・クラスの化合物は、次の一般式で表わされる化合物または該化合物の薬学的に許容可能な塩である。
【0014】
【化4】
【0015】
ただし、式中で、R1、R2、R3、および、R4は、独立的に、H、置換されていても置換されていなくてもよいアルキル、アセチル、アルコキシ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、At)、ケトン、環状炭素、芳香族環、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式非芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、ベンゾジアゼピン環系に縮合された、あるいは付加された炭素環式芳香族環もしくは炭素環式非芳香族環(上記チエノピリミジン環系は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは、水素結合受容体で置換されていない、あるいは、置換されている)、または、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する炭素環式芳香族環または複素環式芳香族環(該環員原子は、別の芳香族環、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体に縮合している)を含有する。一部の実施形態では、本発明は、メニンのMLLおよび/またはMLL融合タンパク質との相互作用を阻害し、白血病を治療または予防するために使用可能な化合物を生成することができる任意の置換基を包含する。
【0016】
一部の実施形態では、上記ベンゾジアゼピン・クラスの化合物は、次式で表わされる構造を有する。
【0017】
【化5】
【0018】
一部の実施形態では、上記ベンゾジアゼピン・クラスの化合物は、化合物32〜41および84〜86から選択される。
【0019】
一部の実施形態では、上記組成物は、化合物42〜59またはその誘導体の構造を有する。
【0020】
一部の実施形態では、上記組成物は、組成物35〜41および84〜86の任意の構造的類似体を含有する。
【0021】
上記組成物は、上記いずれかの化合物同士の組み合わせ、または、上記いずれかの化合物と注目している他の化合物との組み合わせを含有する。さらに上記化合物の立体異性体、塩、および、誘導体についても考えられる。
【0022】
一部の実施形態では、本発明は、白血病を治療するための組成物(例えば、1つ以上のMLL融合タンパク質のメニンとの結合、または、MLL野生型のメニンとの結合を阻害する組成物)を、白血病を患う被験体に投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、上記白血病は、AMLまたはALLを包含する。一部の実施形態では、上記組成物は、チエノピリミジン・クラスの化合物を含有する。一部の実施形態では、上記組成物は、ベンゾジアゼピン・クラスの化合物を含有する。一部の実施形態では、上記組成物は、化合物42〜59およびその類似体を含有する。
【0023】
一部の実施形態では、本発明は、MLLとメニンとの相互作用を阻害する化合物を探すために1つ以上の化合物に対してアッセイを実施することを含む、白血病の治療において有効な化合物をスクリーニングする方法を提供する。一部の実施形態では、上記スクリーニングはインビトロで実施される。一部の実施形態では、上記スクリーニングは、インビボで実施される。一部の実施形態では、上記アッセイは、蛍光偏光アッセイを含む。一部の実施形態では、上記アッセイは、時間分解蛍光共鳴エネルギー移動アッセイを含む。一部の実施形態では、上記アッセイは、核磁気共鳴アッセイを含む。一部の実施形態では、上記アッセイは、細胞アッセイおよびマウス研究を含む。
【0024】
一部の実施形態では、本発明は、(a)(i)MLLとメニンとを含有するサンプル、および、(ii)MLLとメニンとの相互作用を阻害するように構成された組成物を準備し、(b)上記組成物を上記サンプルに投与し、(c)MLLおよび/またはメニンを上記組成物と接触させ、(d)MLLとメニンとの相互作用、および、MLL融合タンパク質とメニンとの相互作用を阻害することを含む、MLLとメニンとの相互作用を阻害する方法を提供する。一部の実施形態では、上記サンプルは、白血病を患う被験体から得られる細胞を含有する。一部の実施形態では、上記被験体は、ヒトまたはヒト患者である。一部の実施形態では、上記細胞は、白血病を患う被験体内に存在する。一部の実施形態では、上記組成物は、チエノピリミジン・クラスの化合物を含有する。一部の実施形態では、上記組成物は、ベンゾジアゼピン・クラスの化合物を含有する。一部の実施形態では、上記組成物は、化合物42〜59およびその類似体を含有する。
【0025】
一部の実施形態では、本発明は、化合物1〜86の任意の構造的類似体を含有する。
【0026】
〔図面の簡単な説明〕
ここに提供する記載は添付の図面を参照しながら読めばより良好に理解できる。ただし、これらの図面は例として含めるのであって、限定を加えるものではない。
【0027】
図1Aは、化合物1(CCG21397、チエノピリミジン・クラス)のメニンとの結合を、80μMの化合物1および2.5μMのメニンの場合について測定したSTD(saturation transfer difference、飽和移動差)実験によって示している。参照1Dスペクトル(黒色)は、芳香族性および脂肪族性を有する別々の領域を示している。STDスペクトル(赤色)は、化合物1がメニンに結合することを示している。競合(competition)STDスペクトル(青色)は、25μMのMLLペプチドの存在下ではSTD効果が減少することを示し、これによって、化合物1がメニンと特異的に結合することが確認できる。スペクトル上に示したリガンドからのHシグナルおよびCH3シグナルを、構造上に符号をつけて示す。図1Bは、化合物33(CCG23668、ベンゾジアゼピン・クラス)のメニンとの結合を、100μMの化合物33および2.5μMのメニンの場合について測定したSTD実験によって示している。参照1Dスペクトル(黒色)は、該化合物の脂肪族性を有する領域の場合である。STDスペクトル(赤色)からは、メニンに結合することが確認できる。競合STDスペクトル(青色)は、25μMのMLLペプチドの存在下ではSTD効果が減少することを示し、これによって、化合物33がメニンと特異的に結合することが確認できる。リガンドのメチル基からのシグナルを、M1、M2、および、M1’、M2’として示す(2組のピークは、互いに異なる立体異性体から得られたピークである)。不純物(アステリスクをつけて示す)に対応するピークの強度は、MLLを加えても影響されない。
【0028】
図2Aは、チエノピリミジン化合物(MI−1=化合物64)およびベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物33)で処理し24時間インキュベーションした後の、Flag−MLL−AF9を形質移入したHEK293細胞における共免疫沈降実験を示している。図2Bは、最も強力なチエノピリミジン化合物(RJS−4−020=化合物67、および、AS−1−19=化合物70)で処理し6時間インキュベーションした後の、Flag−MLL−AF9を形質移入したHEK293細胞における、共免疫沈降実験を示している。
【0029】
図3は、ヒト肝臓(HepG2)株化細胞およびヒト腎臓(HK−2)株化細胞における、ベンゾジアゼピン(CCG−21196=化合物33)化合物およびチエノピリミジン(CCG−21397=化合物1、および、CCG−21397−25=化合物4)化合物のMTT生存率アッセイを示している。なお、該株化細胞は、これらの化合物に対して目立った毒性を有する徴候を示していない。
【0030】
図4Aは、チエノピリミジン化合物(MI−1=化合物64、および、MI−1−25=化合物4)で処理した、異なるMLL転座(MV4;11―MLL−AF4;ML−2―MLL−AF6;KONP8―MLL−ENL;Karpas45―MLL−AFX)を有するヒト白血病株化細胞における、ATPに基づく発光細胞生存率アッセイを示している。このアッセイから、MLL白血病細胞の増殖が大きく抑制されることが分かる。図4Bは、最も強力なチエノピリミジン化合物(AS−1−19=化合物70)を使用した場合の、複数のMLL転座(MLL−AF4融合タンパク質を有するMV4;11、および、MLL−AF9融合タンパク質を有するMonoMac6)を有するヒト白血病株化細胞における、MTT生存率アッセイを示している。
【0031】
図5Aは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物32、および、MI−8=化合物39)で処理した、異なるMLL転座(MV4;11―MLL−AF4;KONP8―MLL−ENL;THP−1―MLL−AF9)を有するヒト白血病株化細胞における、MTT細胞生存率アッセイを示している。このアッセイから、MLL白血病細胞の増殖が化合物32によって大きく抑制されるが、化合物39の場合には効果がないことがわかる。これらの結果は、これらの化合物のインビトロIC50値と非常に良好に相関する。図5Bは、最も強力なベンゾジアゼピン化合物(MI−2−12=化合物86)を用いた場合の、複数のMLL転座(MLL−AF4融合タンパク質を有するMV4;11、および、MLL−AF9融合タンパク質を有するMonoMac6)を有するヒト白血病株化細胞における、MTT生存率アッセイを示している。
【0032】
図6Aは、チエノピリミジン化合物(化合物64=MI−1、化合物4=MI−1−25、および、化合物63=MI−1−72)を用いた、MLLではない白血病株化細胞(AML1−ETO融合タンパク質を有するKasumi−1、および、CBFβ−SMMHC融合タンパク質を有するME−1)における、MTT細胞生存率アッセイを示している。効果は一切観察されないか、あるいは、観察されても非常に限定されている。これによって、これらの化合物がMLL白血病株化細胞に対して選択性を有することが確認できる。図6Bは、最も強力なチエノピリミジン化合物(化合物70=AS−1−19)を用いた場合の、MLLではない白血病株化細胞(AML1−ETO融合タンパク質を有するKasumi−1、および、CBFβ−SMMHC融合タンパク質を有するME−1)における、MTT細胞生存率アッセイを示している。細胞増殖に対する効果は一切見られない。これによって、この化合物がMLL白血病細胞に対して選択性を有することが示される。図6Cは、最も強力なベンゾジアゼピン化合物(化合物86=MI−2−12)を用いた場合の、MLLではない白血病株化細胞(Kasumi−1、および、ME−1)における、MTT細胞生存率アッセイを示している。細胞増殖に対する効果は一切観察されないか、または、観察されても非常に限定されている。
【0033】
図7は、チエノピリミジン化合物(化合物70=AS−1−19)を用いた場合の、MLL−AF9、MLL−ENL、および、E2A−HLF(pro−B細胞白血病、これを負のコントロールとして使用する)を形質導入したマウス骨髄における、MTT生存率アッセイを示している。これによって、MLL融合導入マウス骨髄の成長阻害に選択性があることが示される。
【0034】
図8は、チエノピリミジン化合物(化合物64=MI−1、化合物4=MI−1−25)およびベンゾジアゼピン化合物(化合物32=MI−2)を用いた、MLL融合白血病株化細胞(MLL−AF4を有するMV4;11およびMLL−AF9を有するTHP−1)における、アネキシンV/PIフローサイトメトリー実験を示している。全ての化合物が、25μMおよび50μMの濃度において、高率のアポトーシスおよび細胞死を誘発する。
【0035】
図9は、MLL−AF9を形質移入したHEK293細胞において実施し、プロモーターHoxa9のトランス活性化で化合物の効果を示すルシフェラーゼ・レポーターアッセイを示している。図9Aは、チエノピリミジン化合物(MI−1=化合物64、RJS−3−080をネガティブコントロールとして使用した)によるプロモーターHoxa9のトランス活性化の阻害を示している。図9Bは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物32は投与量に依存して阻害する。MI−8=化合物39を負のコントロールとして使用した)を用いた場合の効果を示している。
【0036】
図10は、qRT−PCR実験によって測定した、MLL下流標的(THP−1白血病細胞におけるHoxa9およびMeis1)の発現レベルに対する各化合物の効果を示している。図10Aは、チエノピリミジン化合物(RJS−3−082=化合物65、AS−1−19=化合物70、MI−1−72=化合物63)による、Hoxa9の発現の下方制御を示している。図10Bは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2−12=化合物86)による、Hoxa9およびMeis1の発現の下方制御を示している。
【0037】
図11は、フローサイトメトリー法を用いてCD11bの発現レベルによって測定した、THP−1白血病細胞の分化を示している。図11Aは、チエノピリミジン化合物(RJS−4−020=化合物67、AS−1−19=化合物70)を用いた場合の効果である。図11Bは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物32)を用いた場合の効果である。
〔定義〕
「システム」という用語は、所望の目的を実現するためのネットワークを形成する一群の物体、化合物、方法、および/または、装置を指す。
【0038】
ここでは、「サンプル」とは、ここで提供される組成物の作用を受けることができる任意のもの、および、ここで提供される方法を実施する対象となることができる任意のものを指す。サンプルはインビトロであっても、インビボであってもかまわない。一部の実施形態では、サンプルは、複数の被験体または単一の被験体から得られる“混合物”のサンプルである。一部の実施形態では、ここで提供される方法は、サンプルを精製または単離することを含む。一部の実施形態では、サンプルは、精製タンパク質または非精製タンパク質である。一部の実施形態では、サンプルは、臨床現場または研究現場から得られてもよい。一部の実施形態では、サンプルは、細胞、流体(例えば、血液、尿、細胞質など)、組織、器官、溶解細胞、生物全体などを含有してもよい。一部の実施形態では、サンプルは、被験体に由来してもかまわない。一部の実施形態では、サンプルは、1以上の被験体全体またはその一部を含有してもかまわない。
【0039】
ここでは、「被験体」という用語は、昆虫、ヒト、非ヒトの霊長類、脊椎動物、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ブタ、齧歯類(例えば、マウス)などを含めた任意の動物を指すが、これらの例に限定されるものではない。「被験体」および「患者」という用語は互換的に使用し、「患者」という用語は一般的に、臨床医または医療提供者から治療または予防策を受けようとしている、または、受けている被験体を指す。被験体は、生命の任意の段階(例えば胚、胎児、乳児、新生児、子供、成人、生存、死亡など)にあってかまわない。
【0040】
ここでは、「癌を発生させるリスクを有する被験体」という用語は、ある特定の癌を発生させる1つ以上の危険因子を有する被験体を指す。危険因子としては、性別、年齢、遺伝的素因、環境曝露、さらに、癌の罹患歴、癌以外の疾患の既往歴、および、生活様式などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
【0041】
ここでは、「被験体において癌の特性を同定する」という用語は、被験体において癌サンプルの1つ以上の特性を特定することを指し、この特性としては、良性、事前癌性、または、癌性の組織または細胞の存在、および、癌の段階などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。癌は、本発明の組成物および方法を用いて癌細胞を特定することによって特性を同定してもよい。
【0042】
「試験化合物」および「候補化合物」という用語は、身体機能の疾患、疾病、病的状態、または、障害(例えば、癌)を治療または予防するために使用する候補である、任意の化学的実体、医薬品、薬、などを指す。試験化合物は、公知の治療用化合物も、治療用化合物となる可能性のあるものも包含する。試験化合物は、本発明のスクリーニング法を用いたスクリーニングによって、治療上の効果があると判定することができる。
【0043】
ここでは、「有効量」という用語は、有益または所望の結果を実現するために十分な、化合物(例えば、ここで上述または他で提示する構造を有する化合物)の量を指す。有効量は、1回以上の投与、塗布、または、服用で投与することも可能であるが、特定の処方または投与経路に限定されるものでも、限定されることを意図したものでもない。
【0044】
ここでは、「併用投与」という用語は、少なくとも2つの薬剤(例えば、ここで上述または他で提示する構造を有する化合物)を被験体に投与すること、または、少なくとも2つの治療法を被験体に対して実施することを指す。一部の実施形態では、2つ以上の薬剤/治療法の併用投与は、同時に行われる。別の実施形態では、第1の薬剤/治療法が、第2の薬剤/治療法に先立って投与される。当業者であれば、使用する各種薬剤/治療法の投与の処方および/または経路が一定でなくてもかまわないことが理解できるはずである。併用投与に用いる適切な投与量は、当業者によって容易に決定可能である。一部の実施形態では、薬剤/治療法を併用投与する場合、各薬剤/治療法は、単独で投与する場合に適切な投与量より少ない量で投与される。したがって、併用投与は、薬剤/治療法を併用投与することによって、公知の潜在的に有害な(例えば、有毒な)薬剤の必要な投与量が抑制される実施形態において、特に望ましい。
【0045】
ここでは、「薬学的組成物」という用語は、活性薬剤と、該組成物をインビボ、インビボ、または、エキソビボでの診断用途または治療用途に特に適したものにする担体(活性を有していても有していなくてもよい)との組み合わせを指す。
【0046】
ここでは、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、任意の標準的な医薬的担体(例えば、リン酸緩衝食塩水溶液、水、乳濁液(例えば、油/水の乳濁液、または、水/油の乳濁液)、各種タイプの湿潤剤など)を指す。該組成物は、安定剤および保存剤を含有してもかまわない。担体、安定剤、および、免疫賦活剤の例については、例えば、Martin, Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Ed., Mack Publ. Co., Easton, PA [1975] を参照せよ。
【0047】
ここでは、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、被験体に投与すると、本発明の化合物または該化合物の活性代謝物もしくは活性残基を提供することができる、本発明の化合物の任意の薬学的に許容可能な塩(例えば、酸または塩基)を指す。当業者であれば理解できるように、本発明の化合物の「塩」は、無機酸または有機酸および無機塩基または有機塩基に由来してもかまわない。酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、蟻酸、ベンゾイック酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。これ以外の、例えばシュウ酸などの酸は、これ自身が薬学的に許容可能ではないものの、塩の調製において利用することはでき、本発明の化合物および該化合物の薬学的に許容可能な酸を付加した塩を得る際の中間体として有用である。
【0048】
塩基の例としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)の水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)の水酸化物、アンモニア、および、化学式NW4+で表わされる化合物(ただし、式中で、Wは炭素数が1〜4のアルキルである)などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
【0049】
塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩(flucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、半硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシレート、ウンデカン酸塩などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。これ以外の塩の例としては、例えばNa+、NH4+、および、NW4+(ただし、式中で、Wは炭素数が1〜4のアルキル基である)などの適切な陽イオンと配合した、本発明の化合物の陰イオンなどが挙げられる。
【0050】
治療用途に用いる場合、本発明の化合物の塩は薬学的に許容可能であるとみなされる。ただし、酸と塩基とからなる薬学的には許容不可能な塩も、例えば、薬学的に許容可能な化合物の調製または精製において使用できる場合がある。
【0051】
ここでは、「化合物を被験体に投与するための指示」という用語、および、該用語の文法的に等価の表現としては、ウイルス感染を特徴とする症状を治療するためのキットに同梱される、組成物の使用指示(例えば、投薬方法、投与経路、治療にあたる医師が患者に特異的な特徴を治療手順と関連付けるための決定木などを記した指示)などがある。本発明の化合物(例えば、ここで上述または他で提示する構造を有する化合物)はキットに同梱されてもよく、該キットは化合物を被験体に投与するための指示を含んでもよい。
【0052】
〔詳細な説明〕
一部の実施形態では、本発明は、白血病(例えば、MLLに関連する白血病などの急性白血病)を予防および/または治療するための組成物および方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、メニンとMLL融合タンパク質とのタンパク質間相互作用、および/または、メニンとMLL野生型タンパク質とのタンパク質間相互作用を阻害するための組成物および方法を提供する。一部の実施形態では、組成物および方法は、MLL融合の潜在的発癌(例えば、白血病誘発)能力にとって重要な相互作用を阻害する。一部の実施形態では、本発明は、メニンとMLL融合タンパク質との間、および/または、メニンとMLL野生型タンパク質との間の相互作用を阻害する、小分子の阻害剤を提供する。一部の実施形態では、組成物および方法は、MLL融合の潜在的発癌(例えば、白血病誘発)能力を無効化(例えば、阻害、抑制、根絶など)する。一部の実施形態では、組成物は、対象とする治療(例えば、抗白血病薬剤)において有用である。一部の実施形態では、化合物は、メニンとMLLとの相互作用を妨害する。
【0053】
一部の実施形態では、本発明は、MLL(例えば、MLL融合タンパク質やMLL野生型)とメニンとの相互作用を阻害する組成物を提供する。一部の実施形態では、上記MLLとメニンとの相互作用を阻害する任意の化合物(小分子(例えば、医薬品、薬、薬状の分子など)、巨大分子(例えば、ペプチドや核酸)、および/または、巨大分子複合体)が、本発明において有用である。一部の実施形態では、本発明は、MLLとメニンとの相互作用を阻害する小分子の化合物を提供する。一部の実施形態では、本発明の組成物は、MLL(例えば、MLL融合タンパク質)に対するメニンの親和性、および/または、メニンに対するMLL(例えば、MLL野生型タンパク質)の親和性を低下させる。一部の実施形態では、本発明の組成物は、結合(例えば、水素結合、イオン結合、共有結合など)、分子の相互作用(例えば、疎水性相互作用、静電性相互作用、ファンデルワールス相互作用など)、形状認識、および/または、MLL(例えば、MLL融合タンパク質またはMLL野生型タンパク質)とメニンとの間の分子認識を攪乱する。ただし、作用機構の理解は、本発明の実施には不要であり、本発明は、いかなる特定の作用機構にも限定されるものではない。
【0054】
本発明は、MLLとメニンとの相互作用を攪乱、標的、もしくは、阻害し、および/または、白血病を治療/予防する任意の小分子、または小分子のクラスを提供する。一部の実施形態では、小分子は、MLL融合タンパク質とメニンとの相互作用、または、MLL野生型タンパク質とメニンとの相互作用の阻害において有効である。特定の実施形態において、本発明は、チエノピリミジン・クラスおよびベンゾジアゼピン・クラスの小分子を提供する。一部の実施形態では、チエノピリミジンの小分子およびベンゾジアゼピン小分子は、MLL(例えば、MLL融合タンパク質またはMLL野生型)とメニンとの相互作用を阻害する。一部の実施形態では、チエノピリミジンの小分子およびベンゾジアゼピンの小分子は、MLL融合タンパク質の発癌(例えば、白血病誘発)作用、および/または、MLLとメニンとの相互作用およびMLL融合タンパク質とメニンとの相互作用を阻害する。一部の実施形態では、チエノピリミジンの小分子およびベンゾジアゼピンの小分子は、白血病(例えば、MLL依存白血病、MLLに関連する白血病、または、高レベルのHox遺伝子発現を伴う、および、高レベルのHox遺伝子発現を伴わない、その他の白血病など)を治療および/または予防する。
【0055】
一部の実施形態では、チエノピリミジン・クラスの小分子は、次式で表わされる一般構造、または、該構造物の薬学的に許容可能な塩もしくは水和物を有する。
【0056】
【化6】
【0057】
ただし、式中で、R1、R2は、H、置換されていても置換されていなくてもよいアルキル、置換されていても置換されていなくてもよいアルコキシ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、At)、炭素環式芳香族環、炭素数が6の炭素環式芳香族環、炭素環式非芳香族環、炭素数が3〜6の炭素環式非芳香族環、複素環式芳香族環、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/または、硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員の複素環式芳香族環、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていない、あるいは置換されている任意の芳香族環もしくは非芳香族環、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員複素環式非芳香族環、上記チエノピリミジン環系に縮合した炭素環式芳香族環もしくは炭素環式非芳香族環、上記チエノピリミジン環系に縮合した5員もしくは6員の炭素環式芳香族環もしくは炭素環式非芳香族環、チエノピリミジン環系に縮合し、アルキル、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは、水素結合受容体で置換されていない、あるいは、置換されている任意の芳香族環系もしくは非芳香族環系、または、置換型もしくは非置換型の別の芳香族環、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体に縮合し、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員または6員の炭素環式芳香族環もしくは複素環式芳香族環である。一部の実施形態では、R1およびR2は互いに共有結合している(例えば、環上に存在している)。R3、R4、R5、R6、R7、および、R8は、H、置換型または非置換型アルキル、アルコキシ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、At)、炭素数が6の炭素環式芳香族環、炭素数が3〜6の炭素環式非芳香族環、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員の複素環式芳香族環、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員の複素環式非芳香族環、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、または、水素結合受容体で置換されていない、あるいは置換されている任意の芳香族環もしくは非芳香族環、または、別の芳香族環、水素結合供与体、水素結合受容体などに縮合し、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは、硫黄とを環員原子として有する5員または6員の炭素環式芳香族環もしくは複素環式芳香族環である。ZはS、O、NH、または、CH−CHである。Wは存在または非存在であって、かつ、NH、NH−(CH2)n(n=0〜10)、(CH2)n(n=0〜10)、O、または、O−(CH2)n(n=0〜10)である。XおよびYはそれぞれ独立的にNまたはCである。また、mは0〜3である(m=0の場合には、R7は非存在である)。一部の実施形態では、R1、R2、R3、および、R4は、MLL融合タンパク質とメニンとの相互作用を阻害する、および/または、白血病を治療または予防する化合物を生成することができる任意の置換基を含有する。
【0058】
一部の実施形態では、チエノピリミジン・クラスの小分子は、表1および表2の組成物、または、該組成物の誘導体、組み合わせ、薬学的に許容可能な塩、および/または、水和物を含有する。一部の実施形態では、チエノピリミジン・クラスの小分子は、MLL(例えば、MLL融合タンパク質)とメニンとの相互作用を阻害する。一部の実施形態では、チエノピリミジン・クラスの小分子は、MLL融合タンパク質の発癌(例えば、白血病誘発)作用、および/または、MLLとメニンとの相互作用およびMLL融合タンパク質とメニンとの相互作用を無効化および/または阻害する。一部の実施形態では、チエノピリミジン・クラスの小分子は、白血病を予防または治療する。
【0059】
一部の実施形態では、ベンゾジアゼピン・クラスの小分子は、次式で表わされる一般構造、または、該一般構造の薬学的に許容可能な塩もしくは水和物を有する。
【0060】
【化7】
【0061】
ただし、式中で、R1、R2、R3、R4はH、アルキル、アセチル、アルコキシ、ケトン、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、At)、炭素環式芳香族環、炭素数が6の炭素環式芳香族環、炭素環式非芳香族環、炭素数が3〜6の炭素環式非芳香族環、複素環式芳香族環、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員の複素環式芳香族環、複素環式非芳香族環、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員の複素環式非芳香族環、アルキル、アルコキシ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、Atなど)、水素結合供与体、水素結合受容体、もしくは別の芳香族環もしくは非芳香族環に縮合し、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員の炭素環式芳香族環もしくは複素環式芳香族環、または、別の芳香族環、水素結合供与体、水素結合受容体などに縮合し、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員複素環式非芳香族環である。一部の実施形態では、R1、R2、R3、および、R4は、MLL融合タンパク質とメニンとの相互作用を阻害する、および/または、白血病を治療または予防する化合物を生成することができる任意の置換基を含有する。
【0062】
一部の実施形態では、ベンゾジアゼピン・クラスの小分子は、表3の組成物、または、該組成物の誘導体、組み合わせ、薬学的に許容可能な塩、および/または、水和物を包含する。一部の実施形態では、ベンゾジアゼピン・クラスの小分子は、MLL(例えば、MLL融合タンパク質またはMLL野生型)とメニンとの相互作用を阻害する。一部の実施形態では、ベンゾジアゼピン・クラスの小分子は、MLL、MLL融合タンパク質、および/または、MLLとメニンとの相互作用の発癌(例えば、白血病誘発)作用を無効化および/または阻害する。一部の実施形態では、ベンゾジアゼピン・クラスの小分子は、白血病を予防または治療する。
【0063】
一部の実施形態では、上記化合物は化合物42〜59またはその誘導体の構造を有する。
【0064】
一部の実施形態では、本発明は、疾患(例えば、癌、白血病、MLLに関連する白血病など)を治療または予防するために、本発明の組成物の被験体(例えば、白血病患者)への投与を提供する。一部の実施形態では、本発明は、白血病(例えば、急性白血病、慢性白血病、リンパ性白血病、リンパ性白血病、骨髄性白血病、骨髄性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリーセル白血病(HCL)、T細胞の前リンパ球性白血病(T−PLL)、大顆粒リンパ球性白血病、MLL陽性白血病、MLL誘発白血病など)を治療または予防するための組成物の投与を提供する。
【0065】
一部の実施形態では、上記化合物のいずれかが併用投与、または、公知の治療薬(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、抗体療法など)と組み合わせて使用される。
【0066】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、医薬品および/または治療用組成物として提供される。本発明の医薬品および/または治療用組成物は、局所的な治療が所望されるのか、または、全身的な治療が所望されるのか、および、治療対象の面積に応じて複数の方法で投与可能である。投与は、局所的な投与(眼や経腟送達および経直腸送達を含めた粘膜への投与)であっても、肺への投与(例えば、噴霧器の使用を含めた、粉末またはエアロゾルの吸入またはガス注入による投与、気管、鼻腔、上皮性を通じた投与、および、経皮投与など)であっても、経口投与または非経口的投与であってもかまわない。非経口投与の例としては、静脈内注射または注入、動脈内注射または注入、皮下注射または注入、腹腔内注射または注入、または、筋肉内注射または注入、さらに、頭蓋内投与(例えば、くも膜下腔内投与や心室内投与)などが挙げられる。局所投与される組成物および処方方法の例としては、経皮性パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、噴霧、液体、および、粉末などが挙げられる。従来の担体(水性でも、粉末でも、油性塩基でもよい)や増粘剤の使用が必要であっても、望ましくてもかまわない。経口投与される組成物および処方方法の例としては、粉末または顆粒、水性または非水系培地性の懸濁液または水性溶液、カプセル、小袋、錠剤などが挙げられる。増粘剤、調味料、希釈液、乳化剤、分散補助剤、または、結合剤が望ましくてもかまわない。非経口投与、くも膜下腔内投与、または、心室内投与される組成物および処方方法の例としては、バッファ液、希釈液、および、例えば、透過促進剤や担体化合物などの薬学的に許容可能な担体または賦形剤(ただし、これらの例に限定されるものではない)などの、その他の適した添加剤をも含有し得る無菌水溶液などが挙げられる。本発明の医薬品および/または治療用組成物としては、溶液、乳濁液、および、リポソーム含有処方物などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。これらの組成物は、例えば予備処方された液体、自己乳化固体、および、自己乳化半固体などの種々の成分から生成可能であるが、これらの例に限定されるものではない。
【0067】
一回の服用単位で便利に提供される、本発明の医薬品および/または治療用処方物は、医薬品/栄養薬品産業において周知の従来の手法で調製可能である。このような手法は、上記有効成分を医薬的担体または賦形剤と会合させるステップを含む。一般に、上記処方物は、上記有効成分を液体担体と微細に分割された固体の担体とのいずれか一方または両方に一様におよび密接に会合させ、さらに、必要であれば、生成物を整形することによって調製される。本発明の組成物は、例えば、錠剤、カプセル、液体シロップ、軟質ゲル、坐薬、浣腸などの多数の可能な剤形のうちのいずれかを形成するように処方可能であるが、これらの例に限定されるものではない。さらに、本発明の組成物は、水性、非水系、油系、または、混合培地性の懸濁液として処方可能である。さらに、懸濁液は、上記懸濁液の粘性を増加させる物質(例えば、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ソルビトール、および/または、デキストランなど)を含有してもかまわない。さらに、上記懸濁液は安定剤を含有してもかまわない。本発明の一実施形態では、上記薬学的組成物は、発泡剤として処方および使用可能である。医薬的発泡剤の例としては、例えば、乳濁液、マイクロ乳濁液、クリーム、ゼリー、リポソームなどの処方物が挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。これらの各処方物は、基本的には特性が類似しているが、成分および最終産物の一貫性という点では異なる。
【0068】
投画および投与計画は、望ましい治療効果のレベル、および、実際に得られる治療効果のレベル(ただし、これらの例に限定されるものではない)を含めた周知の薬理学上および治療上の判断事項に基づいて、臨床医または薬理学的分野の当業者によって調整される。一般的に、化学療法薬を投与するための周知の薬理学的な原理に従うことが薦められる(例えば、一般的に、3〜4の薬剤半減期を超えない程度で、一度に50%を超える服用量の変更はしないことが薦められる)。用量に関連する毒性について考慮すべきことが比較的少ない、または、全くない組成物の場合であって、かつ、最大効力が所望されるのであれば、必要とされる平均投与量を超える投与量は珍しくない。投薬法に対するこの手法は、一般に”極量”戦略と称される。ある一部の実施形態では、上記化合物は、約0.01mg/kg〜約200mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kg〜約100mg/kg、さらにより好ましくは約0.5mg/kg〜約50mg/kgの投与量で被験体に投与される。ここに記載する化合物が別の薬剤(例えば、感作剤として)とともに併用投与される場合、有効量は、該薬剤が単独で使用される場合の量より少なくてもよい。投薬は、1日以上の連続する日にわたって、一日当たり1回または一日当たり複数回であってもよい。
【0069】
〔実験〕
化合物1〜3および5〜8は、Chembridge Corporation社から市販されている。化合物9は、Asinex社から市販されている。化合物10は、InterbioScreen Ltd.社から市販されている。化合物11および32〜41は、Chemdiv Inc.社から市販されている。化合物12〜27および31は、Enamine社市販されている。化合物4は、Labotest社(LT00160569)から市販されている。化合物28〜30は、Princeton Biomolecular Research社から市販されている。残りの化合物は、下記の商業ソースから入手、または、合成した。化合物2、4、6〜8、26、27、64〜72、および、75〜76は、HCl塩として使用した。
【0070】
〔実施例1〕
〔化合物のスクリーニング〕
〔蛍光偏光アッセイ〕
MLLのメニンへの結合の阻害をモニタリングする際に有効なアッセイを、本発明の実施形態の開発時に実施した実験において開発した。高親和性メニン結合モチーフを有するMLLに由来する、フルオレセインで標識済みの12個のアミノ酸からなるペプチドを生成した(Yokoyama et al., Cell., 2005.123(2): p. 207-18.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。ペプチド(1.7kDa)がこれより非常に大きなメニン(−67kDa)に結合すると、フルオロフォア(N終端に位置するフルオレセインで標識済みのペプチド)の回転相関時間が大幅に変化し、したがって、蛍光偏光および蛍光異方性の測定結果が大きく増加する(500nmにおいて励起、525nmにおいて蛍光)。蛍光偏光法(FP)アッセイを使用し、メニンと50nMのフルオレセインで標識済みのMLLペプチドとの連続希釈物を用いて、メニンとMLLペプチドとの結合のKdを決定した。滴定曲線は、メニンとMLLとの相互作用のナノモル親和性(Kd=56nM)を示す。
【0071】
メニンとMLLとの相互作用における化合物の有効性(IC50値)を、FP競合実験において判定した。上記相互作用を阻害する化合物は、化合物のスクリーニングおよびIC50の決定を行うための読み取り値として使用している蛍光異方性を低下させる。上記FPアッセイを検証するために、(フルオレセインを付加していない)未標識のMLLペプチドを用いたコントロール競合実験を実施した。未標識のMLLペプチドによる、メニンから得られる、フルオレセインで標識済みのMLLペプチドの競争的置換をモニターした。このアッセイを用いて、メニンと結合しているMLLペプチドのIC50値を求めるとIC50=0.23μMであった。本発明の一部の実施形態では、同じ競合FPアッセイを使用して、メニンを標的とし、メニンとMLLとの相互作用を阻害する化合物をスクリーニングする。
【0072】
〔HTRFアッセイ〕
上記FPアッセイが有する1つの潜在的な限界は、FPアッセイに干渉する可能性を有する化合物を選択し、いわゆる”偽陽性”を作り出してしまうリスクである。したがって、本発明の実施形態の開発時には、CIS−BIO社によって均一時間分解蛍光(“HTRF”: homogeneous time−resolve fluorescence)アッセイとして市販されている時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR−FRET)アッセイを、二次アッセイとして(例えば、結果を確認するために)使用した。一部の実施形態では、HTRFアッセイを一次アッセイとして使用し、FPアッセイを二次アッセイとして使用して、結果を確認してもかまわない。HTRFは、ユーロピウム・クリプテート(Eu3+クリプテート)供与体からアロフィコシアニン(XL665)受容体への、長時間蛍光の非蛍光エネルギー移動をベースとして、時間分解検出法と組み合わせた方法である。これらの2つのフルオロフォアが生体分子の相互作用によって結合すると、337nmでの励起の間にEu3+クリプテートによって捕捉されたエネルギーの一部が、供与体の620nmでの蛍光放射によって放出される一方で、残存エネルギーがXL665受容体に移動し、665nmで特異的蛍光として放出される。本発明およびその実施形態の開発において使用されるHTRFでは、Eu3+クリプテート供与体がマウスの抗6His単クローン抗体と接合し、この抗体がHis標識メニンに結合する。また、XL665受容体はストレプトアビジン(SA−XL665)に接合し、このストレプトアビジンがビオチン化MLLペプチドに結合する。メニンとMLLペプチドとの相互作用によって、供与体と受容体とが結合し、その結果、受容体へのエネルギー移動が起き、このエネルギー移動が665nmでの蛍光放射の増加、および、HTRF比(665nmにおける放射強度/620nmにおける放射強度)の増加に反映される。メニンとMLLとの相互作用を競合者が阻害することによって、供与体は受容体から分離され、その結果、665nmにおける放射が減少し、HTRF比が減少する。未標識のMLLペプチドを用いて滴定実験を実施することによって、上記アッセイを検証したところ、IC50=2.3μMとなり、FPデータと良好に一致したままであった。
【0073】
〔リード化合物のNMR分光による検証〕
本発明の実施形態において、および、その開発時に、飽和移動差(STD)実験、競合STD実験、および、WaterLOGSY実験によってNMR分光を実施して、化合物のメニンに対する結合を検証した。STDは、(例えば、製薬会社が)薬物スクリーニングのためによく使う蛍光法と大きく異なる原理に基づいて、信頼できる方法を提供する。STD実験の原理は、タンパク質から小分子への磁化の移動に基づいている。このような移動は、リガンドとタンパク質との接触が直接的である場合にだけ発生し、リガンドが結合状態と非結合状態との間で高速で入れ替わっている場合に検出可能である(Mayer & Meyer. J Am Chern Soc., 2001. 123(25): p. 6108-17.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。タンパク質が飽和している状態とタンパク質が飽和していない状態とで記録されるリガンドの差スペクトルを分析する。化合物のメニンへの結合を検出するために、2.5μMのメニンの存在下における化合物のSTDスペクトルを測定する。実験の感度は、有意なサイズのメニン(−70kDa)が存在しているので高い。
【0074】
〔ライブラリースクリーニング〕
本発明の実施形態の開発時に、メニンとMLLとの相互作用を標的とする化合物を特定するために、20μMでテストした65,000種類の化合物のハイスループットスクリーニング(HTS)を実施した。一次スクリーニングをFPで実施した。約1400種類の化合物が、阻害できることを一次スクリーニングにおいて示した。これらのうち、240種類を再確認した。用量反応曲線(DRC)を決定するために、FPと大きく干渉しない(これは非FPアッセイで確認した)180種類の化合物を選択した。用量反応曲線の決定は、独立した2つのFPアッセイ(フルオロフォアはFLSN_MLLおよびTexas Red_MLL)によって実施した(TR_MLLを使用して、フルオレセインに干渉する”偽陽性”を除外した)。DRCによって、40種類の化合物がどちらのFPアッセイにおいても活性を有することが示された。詳細にわたる分析をした後に、さらに分析する対象として、16種類の化合物を選択した。これらの化合物を、FP(両方のフルオロフォアを用いた)およびHTRFでテストした結果、5種類の化合物のIC50値が100μM未満であった。もっとも強力な化合物は、化合物1であり、IC50値が1.9μMであった。非常に強力な化合物を構造上2つのグループに分類することができ、これは2つのクラス(チエノピリミジン・クラスおよびベンゾジアゼピン・クラス)が存在することを示唆している。各グループの化合物をNMRによってテストし、各化合物がメニンに結合すること、および、結合するためにMLLと競合することを確認した。これは、該化合物の、抗白血病薬剤としての有用性を示唆している。
【0075】
〔実施例2〕
〔チエノピリミジン・クラスの化合物に関する詳細な調査〕
化合物1が、本発明の実施形態の開発時に実施したスクリーニングで、もっとも有効な阻害性化合物であった。化合物1(独立した商業ソースから得られる)について、メニンとMLLとの相互作用の阻害性をFPおよびHTRFで再テストすると、同じIC50値(1.9μM)が得られた(表1)。同じスクリーニングにおいて、構造的に関連する2つの化合物をさらに特定した(化合物2および化合物3、表1)。また、化合物1の41種類の類似体を商業ソースから購入し、10種類の類似体を合成し、メニンとMLLとの相互作用の阻害性についてFPアッセイでテストした。その結果、複数の活性化合物が見つかった(表1および表2)。化合物4は、親化合物に匹敵するインビトロIC50を示す上に溶解度が向上しているので、細胞研究にはより適している。化合物1をHCl塩に転化すると、溶解度が向上した化合物64が得られた。合成化合物65、66、67、および、70は、インビトロFPアッセイにおいてさらに強力な活性を示し(表2)、最も強力な化合物は化合物70であった(IC50=0.43μM)。表1および表2は、チエノピリミジン・クラスの複数の活性化合物のIC50に関するデータを一覧表にしたものである。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
【表9】
【0085】
〔NMRによって測定した、チエノピリミジン化合物のメニンへの結合〕
FPアッセイおよびHTRFアッセイにおいて、メニンに対するMLLの結合の阻害において活性を有するチエノピリミジン化合物をNMR実験においてテストして、MLLがメニンに直接結合していることを確認し、(例えば、凝集、タンパク質の変性、沈殿などによって引き起こされる)一切の無差別な阻害を除外した。NMRリガンド検出方法(例えば、STD、競合STD、WaterLOGSYなど)を使用して、MLLがメニンに結合していることを確認した(化合物1の代表的なスペクトルについては図1Aを参照せよ)。
【0086】
〔チエノピリミジン化合物の合成〕
合成スキーム1にしたがって、化合物65〜72を合成した。トリエチルアミンを塩基として用いて、エチルシアノアセテート2および硫黄元素でアルデヒド1を縮合して、チオフェン3を得た(Gewald反応)。加熱条件(120℃)下で化合物3をホルムアミド4で処理し、チエノピリミジン5を形成した。塩化オキサリル中で化合物5を還流させることによって塩素化を達成し、化合物6を産生した。6をピペラジン7で求核置換すると、化合物8が得られた。この化合物8を、次に、HCl塩9に転化した。
【0087】
【化8】
【0088】
〔実施例3〕
〔ベンゾジアゼピン・クラスの化合物に関する詳細な調査〕
化合物32は、HTSによって特定されたベンゾジアゼピン・クラスの化合物の中では最も有効な阻害を示した。化合物32を、メニンとMLLとの相互作用の阻害性について、FPおよびHTRFによって再テストすると、IC50=13μMであった(表3)。一次スクリーニングにおいて特定された構造的に関連する2つの化合物も再テストした(化合物33および化合物34、表3)。さらに、化合物32に対する類似度が85%である、ライブラリーから得られる化合物(一次スクリーニングでは、ヒットとして見つけられなかった)について、メニンとMLLとの相互作用の阻害性を、用量反応曲線において再テストすると、複数の活性化合物が得られた(表3)。表3は、ベンゾジアゼピン・クラスの複数の活性化合物のIC50に関するデータを一覧表にしたものである。化合物32の12種類の市販の類似体を注文し、テストを実施した結果、もとの化合物よりも良好なIC50値を有する化合物が1つ見つかった(化合物86、IC50=7.4μM)。各活性化合物を表3に示す。
【0089】
【表10】
【0090】
【表11】
【0091】
【表12】
【0092】
〔NMRによって測定した、ベンゾジアゼピン化合物のメニンへの結合〕
FPアッセイおよびHTRFアッセイにおいて、メニンに対するMLLの結合の阻害において活性を有するベンゾジアゼピン化合物をNMR実験においてテストして、MLLがメニンに直接結合していることを確認し、(例えば、凝集、タンパク質の変性、沈殿などの非特異的な作用によって引き起こされる)一切の無差別な阻害を除外した。NMRリガンド検出方法(例えば、STD、競合STD、WaterLOGSYなど)を使用して、MLLがメニンに結合していることを確認した(化合物33の代表的なスペクトルについては図1Bを参照せよ)。
【0093】
〔実施例4〕
〔インビボ化合物テスト〕
〔ヒト細胞におけるメニンとMLLとの相互作用の阻害〕
チエノピリミジン(化合物64(MI−1)、化合物67(RJS−4−020)、化合物70(AS−1−19))化合物およびベンゾジアゼピン(化合物32(MI−2またはCCG−21196))化合物について、Flag−MLL−AF9を移入したHEK293細胞において免疫共沈降実験を適用してメニンとMLLとの相互作用の阻害性をテストした(図2を参照せよ)。どちらのクラスの化合物も、DMSOコントロールと比較して、この相互作用を、50μMおよび25μMの化合物濃度でヒト細胞において有効に阻害することができる。これは、薬物の候補としてさらに開発を進め得る潜在的能力を示している。
【0094】
〔腎臓株化細胞および肝臓株化細胞におけるチエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物の作用〕
チエノピリミジン・クラスおよびベンゾジアゼピン・クラスの化合物の有効性を、ヒト株化細胞においてテストした。MTT生存率アッセイによって、細胞増殖に対する効果を調べた(Mosmann. Immunol Methods., 1983; 65(1-2):55-63,、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。Hep−G2(肝臓)株化細胞およびHK−2(腎臓)株化細胞を用いた生存率アッセイ(MIT)を実施した結果、どちらのクラスの化合物の場合にも顕著な毒性の徴候が見られなかった(図3を参照せよ。化合物1(CCG_21397)、化合物4(CCG_21397_25)、化合物32(CCG_21196))。
【0095】
〔MLL転座を有するヒト白血病株化細胞の増殖抑制に対する、チエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物の作用〕
ヒト白血病株化細胞における生存率アッセイを、チエノピリミジン・クラスおよびベンゾジアゼピン・クラスの代表的な化合物を用いて実施した。異なるMLL転座を有するMV4;11株化細胞、ML−2株化細胞、KOPN−8株化細胞、Karpas45株化細胞、MonoMac6株化細胞を含めた複数の株化細胞をテストして、ヒト白血病株化細胞の成長の阻害における、化合物の有効性を評価した。ヒト白血病株化細胞の増殖の非常に有効な抑制が、数マイクロモルから数十マイクロモルのGI50値(7μM〜25μM)を有するチエノピリミジン・クラスの化合物(具体的には、化合物64(CCG_21397またはMI−1)、化合物4(CCG_21397_25またはMI−1−25)(図4Aを参照せよ))の場合(図4Bを参照せよ)、および、インビトロFP実験においてチエノピリミジン・クラスの中でもっとも強力な化合物である化合物70(AS−1−19)の場合(表1および表2)に観察された。
【0096】
化合物32(CCG_21196またはMI−2)および化合物86(MI−2−12)を含めたベンゾジアゼピン化合物も、MLL白血病細胞の成長を強力に阻害した(図5を参照せよ)。その一方で、負のコントロールとして使用した化合物39(MI−8)は、MLL白血病細胞の増殖抑制を一切示さなかった。これは、この化合物のインビトロIC50値と非常に良好に相関している。
【0097】
〔MLL白血病細胞に対するチエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物の特異性〕
チエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物をMTT生存率アッセイにおいてテストし、MLL転座を有しない他の白血病株化細胞の成長に対する効果を評価した。どちらのクラスの化合物の場合にも限定的な効果しか観察されなかったか、あるいは、そのような効果が一切観察されなかった(図6を参照せよ)。これは、MLL融合株化細胞の成長阻害における選択性を示している。
【0098】
〔MLL−AF9およびMLL−ENLを導入したマウス骨髄に対する、チエノピリミジン化合物の効果〕
チエノピリミジン化合物(化合物70、AS−1−19)は、MTT細胞生存率アッセイによる測定結果によれば、MLL−AF9およびMLL−ENL融合タンパク質を導入済みのマウス骨髄において、細胞増殖の高い阻害性を示す(図7を参照せよ)。その一方で、E2A−HLF(pro−B−細胞白血病)を導入したマウス骨髄においては、この化合物の場合、細胞増殖の有意な阻害性が一切観察されなかった。これも、MLL転座を有する細胞の成長を、チエノピリミジン化合物が特異的に阻害することを示している。
【0099】
〔チエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物は、MLL白血病細胞においてアポトーシスを誘発する〕
アネキシンV/PI染色フローサイトメトリー実験によって、両方のクラスの化合物を、MLL白血病株化細胞(MV4;11およびTHP−1)におけるアポトーシス誘発能力について評価した(図8を参照せよ)。どちらのクラスの化合物も、MLL融合株化細胞において、数十マイクロモルの濃度(25μM〜50μM)でアポトーシスおよび細胞死を有効に誘発ことができる。この効果は、MLL−AF4細胞ではより顕著である(化合物64(MI−1および化合物32(MI−2)が25μMであれば、アポトーシス細胞が20%を超え、同じ実験条件での死細胞は20%を超える)。THP−1 MLL白血病細胞では、ベンゾジアゼピン・クラスの化合物の場合に、さらに顕著な効果が観察された。具体的には、化合物32(MI−2)で処理すると、50μMの化合物濃度において、アポトーシス細胞は約20%、死細胞は40%を超えた。チエノピリミジン化合物64(MI−1)で処理すると、効果はそれほど顕著でなかったが、DMSOコントロールに比較すればアポトーシスおよび細胞死が誘発された(図8を参照せよ)。
【0100】
〔MLL融合下流標的Hoxa9およびMeis1に対する、チエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物の効果〕
MLL融合下流標的の発現に対する両方のクラスの化合物の効果を、ルシフェラーゼ・レポーターアッセイ(図9を参照せよ)において、および、RT−PCR(図10を参照せよ)によって評価した。どちらのクラスの化合物(化合物64(MI−1)および化合物32(MI−2))も、MLL−AF9を移入したHEK293細胞におけるルシフェラーゼ・レポーターアッセイにおいて、プロモーターHoxa9のトランス活性化を有効に阻害することができる。負のコントロール化合物(RJS−3−080、および、化合物39(MI−8))の場合には、効果が一切観察されなかった。これは、インビトロのIC50値と良好に相関している。さらに、Hoxa9の発現の下方制御も、どちらのクラスの化合物の場合にも、THP−1細胞において実施したRT−PCR実験において観察され(図10を参照せよ)、化合物とともに7日間インキュベーションを行った後により顕著な効果が観察された。これらの化合物によって、MLLのもう1つの下流標的であるMeis1の発現レベルも低下した(図10bを参照せよ)。
【0101】
〔チエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物が、MLL白血病細胞の分化を誘発する〕
チエノピリミジン(化合物67(RJS−4−020)および化合物70(AS−1−19))およびベンゾジアゼピン(化合物32(MI−2))を用いてTHP−1白血病細胞を処理すると、細胞表面におけるCD11bの発現が増加した(図11を参照せよ)。これは、化合物を用いた処理に応答して、これらの細胞が分化したことを示唆している。
【0102】
〔実施例5〕
〔さらに別の化合物〕
FPアッセイを用いてMaybridge断片ライブラリー(MFL)(多様な分子骨格、薬物としての特性、および、300Da未満の分子量を有する500種類の化合物)のサブセットをスクリーニングするために、実験を実施した。FPによるフルオレセインで標識済みのMLLペプチドの、メニンからの競争的置換について、MFLをスクリーニングした。
【0103】
MFLのスクリーニングの結果、500μMの濃度において、MLLペプチドのメニンへの結合の阻害率が25%を超える、20種類の化合物が得られた。次に、これらの化合物を投与量に依存する形式でテストして、IC50値を決定した。アッセイと干渉した化合物(沈殿や自家蛍光)を偽陽性であると見なして、その後の分析から除外した。最後には、2mM未満のIC50値でメニンとMLLとの相互作用を阻害する、多様な分子骨格を有する11種類の化合物が得られた。NMR分光法を適用することによって、4種類の化合物(化合物42(4H8)、化合物43(6G10)、化合物44(1F4)、および、化合物45(4A6))について、メニンへの結合を確認した。最も強力な化合物は化合物42であった(IC50=50μM)。
【0104】
【化9】
【0105】
化合物43の類似体を、メニンとMLLとの相互作用の阻害におけるその効力を改善するために評価した。15種類の化合物をテストした。もっとも活性の高い化合物(6G10_3)は、もとのヒットの約4倍の活性を有していた(表4)。
【0106】
【表13】
【0107】
【表14】
【0108】
【表15】
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】Aは、化合物1(CCG21397、チエノピリミジン・クラス)のメニンとの結合を、80μMの化合物1および2.5μMのメニンの場合について測定したSTD(saturation transfer difference、飽和移動差)実験によって示している。参照1Dスペクトル(黒色)は、芳香族性および脂肪族性を有する別々の領域を示している。STDスペクトル(赤色)は、化合物1がメニンに結合することを示している。競合(competition)STDスペクトル(青色)は、25μMのMLLペプチドの存在下ではSTD効果が減少することを示し、これによって、化合物1がメニンと特異的に結合することが確認できる。スペクトル上に示したリガンドからのHシグナルおよびCH3シグナルを、構造上に符号をつけて示す。Bは、化合物33(CCG23668、ベンゾジアゼピン・クラス)のメニンとの結合を、100μMの化合物33および2.5μMのメニンの場合について測定したSTD実験によって示している。参照1Dスペクトル(黒色)は、該化合物の脂肪族性を有する領域の場合である。STDスペクトル(赤色)からは、メニンに結合することが確認できる。競合STDスペクトル(青色)は、25μMのMLLペプチドの存在下ではSTD効果が減少することを示し、これによって、化合物33がメニンと特異的に結合することが確認できる。リガンドのメチル基からのシグナルを、M1、M2、および、M1’、M2’として示す(2組のピークは、互いに異なる立体異性体から得られたピークである)。不純物(アステリスクをつけて示す)に対応するピークの強度は、MLLを加えても影響されない。
【図2】Aは、チエノピリミジン化合物(MI−1=化合物64)およびベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物33)で処理し24時間インキュベーションした後の、Flag−MLL−AF9を形質移入したHEK293細胞における共免疫沈降実験を示している。Bは、最も強力なチエノピリミジン化合物(RJS−4−020=化合物67、および、AS−1−19=化合物70)で処理し6時間インキュベーションした後の、Flag−MLL−AF9を形質移入したHEK293細胞における、共免疫沈降実験を示している。
【図3】ヒト肝臓(HepG2)株化細胞およびヒト腎臓(HK−2)株化細胞における、ベンゾジアゼピン(CCG−21196=化合物33)化合物およびチエノピリミジン(CCG−21397=化合物1、および、CCG−21397−25=化合物4)化合物のMTT生存率アッセイを示している。
【図4】Aは、チエノピリミジン化合物(MI−1=化合物64、および、MI−1−25=化合物4)で処理した、異なるMLL転座(MV4;11―MLL−AF4;ML−2―MLL−AF6;KONP8―MLL−ENL;Karpas45―MLL−AFX)を有するヒト白血病株化細胞における、ATPに基づく発光細胞生存率アッセイを示している。Bは、最も強力なチエノピリミジン化合物(AS−1−19=化合物70)を使用した場合の、複数のMLL転座(MLL−AF4融合タンパク質を有するMV4;11、および、MLL−AF9融合タンパク質を有するMonoMac6)を有するヒト白血病株化細胞における、MTT生存率アッセイを示している。
【図5】Aは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物32、および、MI−8=化合物39)で処理した、異なるMLL転座(MV4;11―MLL−AF4;KONP8―MLL−ENL;THP−1―MLL−AF9)を有するヒト白血病株化細胞における、MTT細胞生存率アッセイを示している。Bは、最も強力なベンゾジアゼピン化合物(MI−2−12=化合物86)を用いた場合の、複数のMLL転座(MLL−AF4融合タンパク質を有するMV4;11、および、MLL−AF9融合タンパク質を有するMonoMac6)を有するヒト白血病株化細胞における、MTT生存率アッセイを示している。
【図6】Aは、チエノピリミジン化合物(化合物64=MI−1、化合物4=MI−1−25、および、化合物63=MI−1−72)を用いた、MLLではない白血病株化細胞(AML1−ETO融合タンパク質を有するKasumi−1、および、CBFβ−SMMHC融合タンパク質を有するME−1)における、MTT細胞生存率アッセイを示している。Bは、最も強力なチエノピリミジン化合物(化合物70=AS−1−19)を用いた場合の、MLLではない白血病株化細胞(AML1−ETO融合タンパク質を有するKasumi−1、および、CBFβ−SMMHC融合タンパク質を有するME−1)における、MTT細胞生存率アッセイを示している。Cは、最も強力なベンゾジアゼピン化合物(化合物86=MI−2−12)を用いた場合の、MLLではない白血病株化細胞(Kasumi−1、および、ME−1)における、MTT細胞生存率アッセイを示している。
【図7】チエノピリミジン化合物(化合物70=AS−1−19)を用いた場合の、MLL−AF9、MLL−ENL、および、E2A−HLF(pro−B細胞白血病、これを負のコントロールとして使用する)を形質導入したマウス骨髄における、MTT生存率アッセイを示している。
【図8】チエノピリミジン化合物(化合物64=MI−1、化合物4=MI−1−25)およびベンゾジアゼピン化合物(化合物32=MI−2)を用いた、MLL融合白血病株化細胞(MLL−AF4を有するMV4;11およびMLL−AF9を有するTHP−1)における、アネキシンV/PIフローサイトメトリー実験を示している。
【図9】MLL−AF9を形質移入したHEK293細胞において実施したルシフェラーゼ・レポーターアッセイを示し、Aは、チエノピリミジン化合物(MI−1=化合物64、RJS−3−080をネガティブコントロールとして使用した)によるプロモーターHoxa9のトランス活性化の阻害を示している。Bは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物32は投与量に依存して阻害する。MI−8=化合物39を負のコントロールとして使用した)を用いた場合の効果を示している。
【図10】qRT−PCR実験によって測定した、MLL下流標的(THP−1白血病細胞におけるHoxa9およびMeis1)の発現レベルに対する各化合物の効果を示し、Aは、チエノピリミジン化合物(RJS−3−082=化合物65、AS−1−19=化合物70、MI−1−72=化合物63)による、Hoxa9の発現の下方制御を示している。Bは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2−12=化合物86)による、Hoxa9およびMeis1の発現の下方制御を示している。
【図11】フローサイトメトリー法を用いてCD11bの発現レベルによって測定した、THP−1白血病細胞の分化を示し、Aは、チエノピリミジン化合物(RJS−4−020=化合物67、AS−1−19=化合物70)を用いた場合の効果である。Bは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物32)を用いた場合の効果である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、米国特許仮出願第61/240,102号(出願日2009年9月4日)に基づいて優先権を主張し、該特許仮出願の開示内容は全て参照によってここに引用されるものとする。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、一般的には白血病の治療に関し、具体的には、メニンとMLLおよびMLL融合腫瘍性タンパク質との相互作用を阻害する組成物、並びに方法、さらに、このような組成物をスクリーニングによって得るシステムおよび方法を提供する。
【0003】
〔背景技術〕
プロト癌遺伝子であるMixed Lineage Leukemia(MLL)に影響を与える染色体転座は、高悪性度のヒトの急性白血病において、子供においても成人においても発生する(Sorensen et al., J Clin Invest., 1994.93(1): p. 429-37., Cox, et al., Am J Clin PathoI., 2004. 122(2): p. 298-306.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。この染色体転座は、急性骨髄芽球性白血病(“AML”: acute myeloblastic leukemia)および急性リンパ性白血病(“ALL”: acute lymphoblastic leukemia)に罹患している乳児において特によく見られ、全ての乳児の急性白血病の症例の80%を占める。MLLと60個の相手遺伝子のうちの1つとの融合により、HOX遺伝子を上方制御するキメラ癌遺伝子が形成され、その結果、血液細胞の分化がブロックされて、最終的に急性白血病となる(Eguchi et al. Int J Hematol., 2003. 78(5): p. 390-401.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。MLL転座を有する白血病患者は予後が非常に悪く(5年間の生存率は35%)、新規な治療方針が、これらの白血病を治療するために緊急に必要とされていることは明白である(Slany. Hematol OncoI., 2005. 23(1): p. 1-9.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。メニンは、MLLに関連する白血病においてクリティカルな補助因子である。メニンは、Multiple Endocrine Neoplasia(MEN)遺伝子によってコード化される腫瘍抑制因子タンパク質である。メニンは、遍在的に発現する核タンパク質であり、転写因子、クロマチン修飾タンパク質、ならびに、DNAプロセッシングおよび修復タンパク質のコホートとの相互作用に関与する(Agarwal et al. Horm Metab Res., 2005. 37(6): p. 369-74.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。メニンの生物学的機能は依然不明なままであり、状況によって変わる。メニンは、内分泌器官においては腫瘍抑制因子として機能する(Marx. Nat Rev Cancer., 2005. 5(5): p. 367-75.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)が、骨髄系細胞においては発癌性の役割を有する(Yokoyama et al., Cell., 2005.123(2): p. 207-18.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。メニンが発癌性のMLL融合タンパク質と会合すると、HOX遺伝子の発現が構成的に上方制御され、造血細胞の増殖分化が損なわれ、白血病の発生を引き起こす。発癌性のMLL−AF9融合タンパク質が形質転換された骨髄系細胞は、効率的に増殖するためにメニンを必要とする(Chen et al., Proc Natl Acad Sci USA., 2006.103(4): p. 1018-23.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。メニンは、MLL−ENL、MLL−GAS7、および、MLL−AF6を含む、他のMLL転座によって誘発される癌化を維持するためにも必要である(Yokoyama et al., Cell., 2005.123(2): p. 207-18.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。これは、メニンが、MLLに関連する白血病において一般的な発癌性補助因子として機能することを実証し、かつ、メニンとMLL融合物との相互作用が、分子治療にとって貴重な標的であることを暗示している。MLL融合腫瘍性タンパク質の白血病誘発活性は、メニンとの会合に依存する。したがって、この相互作用を選択的に標的とすることによって、MLLに関連する白血病の新規な薬を開発するための魅力的な治療方法を提供できる可能性がある。
【0004】
〔発明の概要〕
いくつかの実施形態では、本発明は、1つ以上のMLL融合タンパク質とメニンとの結合、および/または、MLL野生型とメニンとの結合を阻害する、白血病を治療するための組成物を提供する。また、いくつかの実施形態では、上記組成物はチエノピリミジン・クラスの化合物を含有する。一部の実施形態では、上記チエノピリミジン・クラスの化合物は、次の一般式で表わされる化合物または該化合物の薬学的に許容可能な塩である。
【0005】
【化1】
【0006】
ただし、式中で、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は、独立的に、H、置換されていても置換されていなくてもよいアルキル(例えばメチル、エチル等)、置換されていても置換されていなくてもよいアルコキシ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、At)、ケトン、環状炭素、芳香族環、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式非芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、チエノピリミジン環系に付加される、あるいは縮合される炭素環式芳香族環もしくは炭素環式非芳香族環(上記チエノピリミジン環系は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは、水素結合受容体で置換されていない、あるいは、置換されている)、または、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する炭素環式芳香族環もしくは複素環式芳香族環(該環員原子は、別の芳香族環、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体に縮合している)を含有し、ZはS、O、NH、または、CH−CHであり、Wは存在または非存在であって、かつ、NH、NH−(CH2)n(n=0〜10)、(CH2)n(n=0〜10)、O、または、O−(CH2)n(n=0〜10)であり、XおよびYはそれぞれ独立的にNまたはCであり;mは0〜3である(m=0のとき、R7は存在しない)。一部の実施形態では、本発明は、メニンのMLLおよび/またはMLL融合タンパク質との相互作用を阻害し、白血病を治療または予防するために使用可能な化合物を生成することができる任意の置換基を包含する。
【0007】
一部の実施形態では、上記チエノピリミジン・クラスの化合物は、次の一般式で表わされる化合物または該化合物の薬学的に許容可能な塩である。
【0008】
【化2】
【0009】
一部の実施形態では、上記チエノピリミジン・クラスの化合物は、次式で表わされる構造を有する。
【0010】
【化3】
【0011】
一部の実施形態では、上記チエノピリミジン・クラスの化合物は、化合物1〜31および60〜83から選択される。
【0012】
一部の実施形態では、上記組成物は、組成物1〜31および60〜83の任意の構造的類似体を含有する。
【0013】
一部の実施形態では、上記組成物は、ベンゾジアゼピン・クラスの化合物を含有する。一部の実施形態では、上記ベンゾジアゼピン・クラスの化合物は、次の一般式で表わされる化合物または該化合物の薬学的に許容可能な塩である。
【0014】
【化4】
【0015】
ただし、式中で、R1、R2、R3、および、R4は、独立的に、H、置換されていても置換されていなくてもよいアルキル、アセチル、アルコキシ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、At)、ケトン、環状炭素、芳香族環、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式非芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、ベンゾジアゼピン環系に縮合された、あるいは付加された炭素環式芳香族環もしくは炭素環式非芳香族環(上記チエノピリミジン環系は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは、水素結合受容体で置換されていない、あるいは、置換されている)、または、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する炭素環式芳香族環または複素環式芳香族環(該環員原子は、別の芳香族環、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体に縮合している)を含有する。一部の実施形態では、本発明は、メニンのMLLおよび/またはMLL融合タンパク質との相互作用を阻害し、白血病を治療または予防するために使用可能な化合物を生成することができる任意の置換基を包含する。
【0016】
一部の実施形態では、上記ベンゾジアゼピン・クラスの化合物は、次式で表わされる構造を有する。
【0017】
【化5】
【0018】
一部の実施形態では、上記ベンゾジアゼピン・クラスの化合物は、化合物32〜41および84〜86から選択される。
【0019】
一部の実施形態では、上記組成物は、化合物42〜59またはその誘導体の構造を有する。
【0020】
一部の実施形態では、上記組成物は、組成物35〜41および84〜86の任意の構造的類似体を含有する。
【0021】
上記組成物は、上記いずれかの化合物同士の組み合わせ、または、上記いずれかの化合物と注目している他の化合物との組み合わせを含有する。さらに上記化合物の立体異性体、塩、および、誘導体についても考えられる。
【0022】
一部の実施形態では、本発明は、白血病を治療するための組成物(例えば、1つ以上のMLL融合タンパク質のメニンとの結合、または、MLL野生型のメニンとの結合を阻害する組成物)を、白血病を患う被験体に投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、上記白血病は、AMLまたはALLを包含する。一部の実施形態では、上記組成物は、チエノピリミジン・クラスの化合物を含有する。一部の実施形態では、上記組成物は、ベンゾジアゼピン・クラスの化合物を含有する。一部の実施形態では、上記組成物は、化合物42〜59およびその類似体を含有する。
【0023】
一部の実施形態では、本発明は、MLLとメニンとの相互作用を阻害する化合物を探すために1つ以上の化合物に対してアッセイを実施することを含む、白血病の治療において有効な化合物をスクリーニングする方法を提供する。一部の実施形態では、上記スクリーニングはインビトロで実施される。一部の実施形態では、上記スクリーニングは、インビボで実施される。一部の実施形態では、上記アッセイは、蛍光偏光アッセイを含む。一部の実施形態では、上記アッセイは、時間分解蛍光共鳴エネルギー移動アッセイを含む。一部の実施形態では、上記アッセイは、核磁気共鳴アッセイを含む。一部の実施形態では、上記アッセイは、細胞アッセイおよびマウス研究を含む。
【0024】
一部の実施形態では、本発明は、(a)(i)MLLとメニンとを含有するサンプル、および、(ii)MLLとメニンとの相互作用を阻害するように構成された組成物を準備し、(b)上記組成物を上記サンプルに投与し、(c)MLLおよび/またはメニンを上記組成物と接触させ、(d)MLLとメニンとの相互作用、および、MLL融合タンパク質とメニンとの相互作用を阻害することを含む、MLLとメニンとの相互作用を阻害する方法を提供する。一部の実施形態では、上記サンプルは、白血病を患う被験体から得られる細胞を含有する。一部の実施形態では、上記被験体は、ヒトまたはヒト患者である。一部の実施形態では、上記細胞は、白血病を患う被験体内に存在する。一部の実施形態では、上記組成物は、チエノピリミジン・クラスの化合物を含有する。一部の実施形態では、上記組成物は、ベンゾジアゼピン・クラスの化合物を含有する。一部の実施形態では、上記組成物は、化合物42〜59およびその類似体を含有する。
【0025】
一部の実施形態では、本発明は、化合物1〜86の任意の構造的類似体を含有する。
【0026】
〔図面の簡単な説明〕
ここに提供する記載は添付の図面を参照しながら読めばより良好に理解できる。ただし、これらの図面は例として含めるのであって、限定を加えるものではない。
【0027】
図1Aは、化合物1(CCG21397、チエノピリミジン・クラス)のメニンとの結合を、80μMの化合物1および2.5μMのメニンの場合について測定したSTD(saturation transfer difference、飽和移動差)実験によって示している。参照1Dスペクトル(黒色)は、芳香族性および脂肪族性を有する別々の領域を示している。STDスペクトル(赤色)は、化合物1がメニンに結合することを示している。競合(competition)STDスペクトル(青色)は、25μMのMLLペプチドの存在下ではSTD効果が減少することを示し、これによって、化合物1がメニンと特異的に結合することが確認できる。スペクトル上に示したリガンドからのHシグナルおよびCH3シグナルを、構造上に符号をつけて示す。図1Bは、化合物33(CCG23668、ベンゾジアゼピン・クラス)のメニンとの結合を、100μMの化合物33および2.5μMのメニンの場合について測定したSTD実験によって示している。参照1Dスペクトル(黒色)は、該化合物の脂肪族性を有する領域の場合である。STDスペクトル(赤色)からは、メニンに結合することが確認できる。競合STDスペクトル(青色)は、25μMのMLLペプチドの存在下ではSTD効果が減少することを示し、これによって、化合物33がメニンと特異的に結合することが確認できる。リガンドのメチル基からのシグナルを、M1、M2、および、M1’、M2’として示す(2組のピークは、互いに異なる立体異性体から得られたピークである)。不純物(アステリスクをつけて示す)に対応するピークの強度は、MLLを加えても影響されない。
【0028】
図2Aは、チエノピリミジン化合物(MI−1=化合物64)およびベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物33)で処理し24時間インキュベーションした後の、Flag−MLL−AF9を形質移入したHEK293細胞における共免疫沈降実験を示している。図2Bは、最も強力なチエノピリミジン化合物(RJS−4−020=化合物67、および、AS−1−19=化合物70)で処理し6時間インキュベーションした後の、Flag−MLL−AF9を形質移入したHEK293細胞における、共免疫沈降実験を示している。
【0029】
図3は、ヒト肝臓(HepG2)株化細胞およびヒト腎臓(HK−2)株化細胞における、ベンゾジアゼピン(CCG−21196=化合物33)化合物およびチエノピリミジン(CCG−21397=化合物1、および、CCG−21397−25=化合物4)化合物のMTT生存率アッセイを示している。なお、該株化細胞は、これらの化合物に対して目立った毒性を有する徴候を示していない。
【0030】
図4Aは、チエノピリミジン化合物(MI−1=化合物64、および、MI−1−25=化合物4)で処理した、異なるMLL転座(MV4;11―MLL−AF4;ML−2―MLL−AF6;KONP8―MLL−ENL;Karpas45―MLL−AFX)を有するヒト白血病株化細胞における、ATPに基づく発光細胞生存率アッセイを示している。このアッセイから、MLL白血病細胞の増殖が大きく抑制されることが分かる。図4Bは、最も強力なチエノピリミジン化合物(AS−1−19=化合物70)を使用した場合の、複数のMLL転座(MLL−AF4融合タンパク質を有するMV4;11、および、MLL−AF9融合タンパク質を有するMonoMac6)を有するヒト白血病株化細胞における、MTT生存率アッセイを示している。
【0031】
図5Aは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物32、および、MI−8=化合物39)で処理した、異なるMLL転座(MV4;11―MLL−AF4;KONP8―MLL−ENL;THP−1―MLL−AF9)を有するヒト白血病株化細胞における、MTT細胞生存率アッセイを示している。このアッセイから、MLL白血病細胞の増殖が化合物32によって大きく抑制されるが、化合物39の場合には効果がないことがわかる。これらの結果は、これらの化合物のインビトロIC50値と非常に良好に相関する。図5Bは、最も強力なベンゾジアゼピン化合物(MI−2−12=化合物86)を用いた場合の、複数のMLL転座(MLL−AF4融合タンパク質を有するMV4;11、および、MLL−AF9融合タンパク質を有するMonoMac6)を有するヒト白血病株化細胞における、MTT生存率アッセイを示している。
【0032】
図6Aは、チエノピリミジン化合物(化合物64=MI−1、化合物4=MI−1−25、および、化合物63=MI−1−72)を用いた、MLLではない白血病株化細胞(AML1−ETO融合タンパク質を有するKasumi−1、および、CBFβ−SMMHC融合タンパク質を有するME−1)における、MTT細胞生存率アッセイを示している。効果は一切観察されないか、あるいは、観察されても非常に限定されている。これによって、これらの化合物がMLL白血病株化細胞に対して選択性を有することが確認できる。図6Bは、最も強力なチエノピリミジン化合物(化合物70=AS−1−19)を用いた場合の、MLLではない白血病株化細胞(AML1−ETO融合タンパク質を有するKasumi−1、および、CBFβ−SMMHC融合タンパク質を有するME−1)における、MTT細胞生存率アッセイを示している。細胞増殖に対する効果は一切見られない。これによって、この化合物がMLL白血病細胞に対して選択性を有することが示される。図6Cは、最も強力なベンゾジアゼピン化合物(化合物86=MI−2−12)を用いた場合の、MLLではない白血病株化細胞(Kasumi−1、および、ME−1)における、MTT細胞生存率アッセイを示している。細胞増殖に対する効果は一切観察されないか、または、観察されても非常に限定されている。
【0033】
図7は、チエノピリミジン化合物(化合物70=AS−1−19)を用いた場合の、MLL−AF9、MLL−ENL、および、E2A−HLF(pro−B細胞白血病、これを負のコントロールとして使用する)を形質導入したマウス骨髄における、MTT生存率アッセイを示している。これによって、MLL融合導入マウス骨髄の成長阻害に選択性があることが示される。
【0034】
図8は、チエノピリミジン化合物(化合物64=MI−1、化合物4=MI−1−25)およびベンゾジアゼピン化合物(化合物32=MI−2)を用いた、MLL融合白血病株化細胞(MLL−AF4を有するMV4;11およびMLL−AF9を有するTHP−1)における、アネキシンV/PIフローサイトメトリー実験を示している。全ての化合物が、25μMおよび50μMの濃度において、高率のアポトーシスおよび細胞死を誘発する。
【0035】
図9は、MLL−AF9を形質移入したHEK293細胞において実施し、プロモーターHoxa9のトランス活性化で化合物の効果を示すルシフェラーゼ・レポーターアッセイを示している。図9Aは、チエノピリミジン化合物(MI−1=化合物64、RJS−3−080をネガティブコントロールとして使用した)によるプロモーターHoxa9のトランス活性化の阻害を示している。図9Bは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物32は投与量に依存して阻害する。MI−8=化合物39を負のコントロールとして使用した)を用いた場合の効果を示している。
【0036】
図10は、qRT−PCR実験によって測定した、MLL下流標的(THP−1白血病細胞におけるHoxa9およびMeis1)の発現レベルに対する各化合物の効果を示している。図10Aは、チエノピリミジン化合物(RJS−3−082=化合物65、AS−1−19=化合物70、MI−1−72=化合物63)による、Hoxa9の発現の下方制御を示している。図10Bは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2−12=化合物86)による、Hoxa9およびMeis1の発現の下方制御を示している。
【0037】
図11は、フローサイトメトリー法を用いてCD11bの発現レベルによって測定した、THP−1白血病細胞の分化を示している。図11Aは、チエノピリミジン化合物(RJS−4−020=化合物67、AS−1−19=化合物70)を用いた場合の効果である。図11Bは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物32)を用いた場合の効果である。
〔定義〕
「システム」という用語は、所望の目的を実現するためのネットワークを形成する一群の物体、化合物、方法、および/または、装置を指す。
【0038】
ここでは、「サンプル」とは、ここで提供される組成物の作用を受けることができる任意のもの、および、ここで提供される方法を実施する対象となることができる任意のものを指す。サンプルはインビトロであっても、インビボであってもかまわない。一部の実施形態では、サンプルは、複数の被験体または単一の被験体から得られる“混合物”のサンプルである。一部の実施形態では、ここで提供される方法は、サンプルを精製または単離することを含む。一部の実施形態では、サンプルは、精製タンパク質または非精製タンパク質である。一部の実施形態では、サンプルは、臨床現場または研究現場から得られてもよい。一部の実施形態では、サンプルは、細胞、流体(例えば、血液、尿、細胞質など)、組織、器官、溶解細胞、生物全体などを含有してもよい。一部の実施形態では、サンプルは、被験体に由来してもかまわない。一部の実施形態では、サンプルは、1以上の被験体全体またはその一部を含有してもかまわない。
【0039】
ここでは、「被験体」という用語は、昆虫、ヒト、非ヒトの霊長類、脊椎動物、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ブタ、齧歯類(例えば、マウス)などを含めた任意の動物を指すが、これらの例に限定されるものではない。「被験体」および「患者」という用語は互換的に使用し、「患者」という用語は一般的に、臨床医または医療提供者から治療または予防策を受けようとしている、または、受けている被験体を指す。被験体は、生命の任意の段階(例えば胚、胎児、乳児、新生児、子供、成人、生存、死亡など)にあってかまわない。
【0040】
ここでは、「癌を発生させるリスクを有する被験体」という用語は、ある特定の癌を発生させる1つ以上の危険因子を有する被験体を指す。危険因子としては、性別、年齢、遺伝的素因、環境曝露、さらに、癌の罹患歴、癌以外の疾患の既往歴、および、生活様式などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
【0041】
ここでは、「被験体において癌の特性を同定する」という用語は、被験体において癌サンプルの1つ以上の特性を特定することを指し、この特性としては、良性、事前癌性、または、癌性の組織または細胞の存在、および、癌の段階などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。癌は、本発明の組成物および方法を用いて癌細胞を特定することによって特性を同定してもよい。
【0042】
「試験化合物」および「候補化合物」という用語は、身体機能の疾患、疾病、病的状態、または、障害(例えば、癌)を治療または予防するために使用する候補である、任意の化学的実体、医薬品、薬、などを指す。試験化合物は、公知の治療用化合物も、治療用化合物となる可能性のあるものも包含する。試験化合物は、本発明のスクリーニング法を用いたスクリーニングによって、治療上の効果があると判定することができる。
【0043】
ここでは、「有効量」という用語は、有益または所望の結果を実現するために十分な、化合物(例えば、ここで上述または他で提示する構造を有する化合物)の量を指す。有効量は、1回以上の投与、塗布、または、服用で投与することも可能であるが、特定の処方または投与経路に限定されるものでも、限定されることを意図したものでもない。
【0044】
ここでは、「併用投与」という用語は、少なくとも2つの薬剤(例えば、ここで上述または他で提示する構造を有する化合物)を被験体に投与すること、または、少なくとも2つの治療法を被験体に対して実施することを指す。一部の実施形態では、2つ以上の薬剤/治療法の併用投与は、同時に行われる。別の実施形態では、第1の薬剤/治療法が、第2の薬剤/治療法に先立って投与される。当業者であれば、使用する各種薬剤/治療法の投与の処方および/または経路が一定でなくてもかまわないことが理解できるはずである。併用投与に用いる適切な投与量は、当業者によって容易に決定可能である。一部の実施形態では、薬剤/治療法を併用投与する場合、各薬剤/治療法は、単独で投与する場合に適切な投与量より少ない量で投与される。したがって、併用投与は、薬剤/治療法を併用投与することによって、公知の潜在的に有害な(例えば、有毒な)薬剤の必要な投与量が抑制される実施形態において、特に望ましい。
【0045】
ここでは、「薬学的組成物」という用語は、活性薬剤と、該組成物をインビボ、インビボ、または、エキソビボでの診断用途または治療用途に特に適したものにする担体(活性を有していても有していなくてもよい)との組み合わせを指す。
【0046】
ここでは、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、任意の標準的な医薬的担体(例えば、リン酸緩衝食塩水溶液、水、乳濁液(例えば、油/水の乳濁液、または、水/油の乳濁液)、各種タイプの湿潤剤など)を指す。該組成物は、安定剤および保存剤を含有してもかまわない。担体、安定剤、および、免疫賦活剤の例については、例えば、Martin, Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Ed., Mack Publ. Co., Easton, PA [1975] を参照せよ。
【0047】
ここでは、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、被験体に投与すると、本発明の化合物または該化合物の活性代謝物もしくは活性残基を提供することができる、本発明の化合物の任意の薬学的に許容可能な塩(例えば、酸または塩基)を指す。当業者であれば理解できるように、本発明の化合物の「塩」は、無機酸または有機酸および無機塩基または有機塩基に由来してもかまわない。酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、蟻酸、ベンゾイック酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。これ以外の、例えばシュウ酸などの酸は、これ自身が薬学的に許容可能ではないものの、塩の調製において利用することはでき、本発明の化合物および該化合物の薬学的に許容可能な酸を付加した塩を得る際の中間体として有用である。
【0048】
塩基の例としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)の水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)の水酸化物、アンモニア、および、化学式NW4+で表わされる化合物(ただし、式中で、Wは炭素数が1〜4のアルキルである)などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
【0049】
塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩(flucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、半硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシレート、ウンデカン酸塩などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。これ以外の塩の例としては、例えばNa+、NH4+、および、NW4+(ただし、式中で、Wは炭素数が1〜4のアルキル基である)などの適切な陽イオンと配合した、本発明の化合物の陰イオンなどが挙げられる。
【0050】
治療用途に用いる場合、本発明の化合物の塩は薬学的に許容可能であるとみなされる。ただし、酸と塩基とからなる薬学的には許容不可能な塩も、例えば、薬学的に許容可能な化合物の調製または精製において使用できる場合がある。
【0051】
ここでは、「化合物を被験体に投与するための指示」という用語、および、該用語の文法的に等価の表現としては、ウイルス感染を特徴とする症状を治療するためのキットに同梱される、組成物の使用指示(例えば、投薬方法、投与経路、治療にあたる医師が患者に特異的な特徴を治療手順と関連付けるための決定木などを記した指示)などがある。本発明の化合物(例えば、ここで上述または他で提示する構造を有する化合物)はキットに同梱されてもよく、該キットは化合物を被験体に投与するための指示を含んでもよい。
【0052】
〔詳細な説明〕
一部の実施形態では、本発明は、白血病(例えば、MLLに関連する白血病などの急性白血病)を予防および/または治療するための組成物および方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、メニンとMLL融合タンパク質とのタンパク質間相互作用、および/または、メニンとMLL野生型タンパク質とのタンパク質間相互作用を阻害するための組成物および方法を提供する。一部の実施形態では、組成物および方法は、MLL融合の潜在的発癌(例えば、白血病誘発)能力にとって重要な相互作用を阻害する。一部の実施形態では、本発明は、メニンとMLL融合タンパク質との間、および/または、メニンとMLL野生型タンパク質との間の相互作用を阻害する、小分子の阻害剤を提供する。一部の実施形態では、組成物および方法は、MLL融合の潜在的発癌(例えば、白血病誘発)能力を無効化(例えば、阻害、抑制、根絶など)する。一部の実施形態では、組成物は、対象とする治療(例えば、抗白血病薬剤)において有用である。一部の実施形態では、化合物は、メニンとMLLとの相互作用を妨害する。
【0053】
一部の実施形態では、本発明は、MLL(例えば、MLL融合タンパク質やMLL野生型)とメニンとの相互作用を阻害する組成物を提供する。一部の実施形態では、上記MLLとメニンとの相互作用を阻害する任意の化合物(小分子(例えば、医薬品、薬、薬状の分子など)、巨大分子(例えば、ペプチドや核酸)、および/または、巨大分子複合体)が、本発明において有用である。一部の実施形態では、本発明は、MLLとメニンとの相互作用を阻害する小分子の化合物を提供する。一部の実施形態では、本発明の組成物は、MLL(例えば、MLL融合タンパク質)に対するメニンの親和性、および/または、メニンに対するMLL(例えば、MLL野生型タンパク質)の親和性を低下させる。一部の実施形態では、本発明の組成物は、結合(例えば、水素結合、イオン結合、共有結合など)、分子の相互作用(例えば、疎水性相互作用、静電性相互作用、ファンデルワールス相互作用など)、形状認識、および/または、MLL(例えば、MLL融合タンパク質またはMLL野生型タンパク質)とメニンとの間の分子認識を攪乱する。ただし、作用機構の理解は、本発明の実施には不要であり、本発明は、いかなる特定の作用機構にも限定されるものではない。
【0054】
本発明は、MLLとメニンとの相互作用を攪乱、標的、もしくは、阻害し、および/または、白血病を治療/予防する任意の小分子、または小分子のクラスを提供する。一部の実施形態では、小分子は、MLL融合タンパク質とメニンとの相互作用、または、MLL野生型タンパク質とメニンとの相互作用の阻害において有効である。特定の実施形態において、本発明は、チエノピリミジン・クラスおよびベンゾジアゼピン・クラスの小分子を提供する。一部の実施形態では、チエノピリミジンの小分子およびベンゾジアゼピン小分子は、MLL(例えば、MLL融合タンパク質またはMLL野生型)とメニンとの相互作用を阻害する。一部の実施形態では、チエノピリミジンの小分子およびベンゾジアゼピンの小分子は、MLL融合タンパク質の発癌(例えば、白血病誘発)作用、および/または、MLLとメニンとの相互作用およびMLL融合タンパク質とメニンとの相互作用を阻害する。一部の実施形態では、チエノピリミジンの小分子およびベンゾジアゼピンの小分子は、白血病(例えば、MLL依存白血病、MLLに関連する白血病、または、高レベルのHox遺伝子発現を伴う、および、高レベルのHox遺伝子発現を伴わない、その他の白血病など)を治療および/または予防する。
【0055】
一部の実施形態では、チエノピリミジン・クラスの小分子は、次式で表わされる一般構造、または、該構造物の薬学的に許容可能な塩もしくは水和物を有する。
【0056】
【化6】
【0057】
ただし、式中で、R1、R2は、H、置換されていても置換されていなくてもよいアルキル、置換されていても置換されていなくてもよいアルコキシ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、At)、炭素環式芳香族環、炭素数が6の炭素環式芳香族環、炭素環式非芳香族環、炭素数が3〜6の炭素環式非芳香族環、複素環式芳香族環、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/または、硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員の複素環式芳香族環、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていない、あるいは置換されている任意の芳香族環もしくは非芳香族環、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員複素環式非芳香族環、上記チエノピリミジン環系に縮合した炭素環式芳香族環もしくは炭素環式非芳香族環、上記チエノピリミジン環系に縮合した5員もしくは6員の炭素環式芳香族環もしくは炭素環式非芳香族環、チエノピリミジン環系に縮合し、アルキル、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは、水素結合受容体で置換されていない、あるいは、置換されている任意の芳香族環系もしくは非芳香族環系、または、置換型もしくは非置換型の別の芳香族環、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体に縮合し、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員または6員の炭素環式芳香族環もしくは複素環式芳香族環である。一部の実施形態では、R1およびR2は互いに共有結合している(例えば、環上に存在している)。R3、R4、R5、R6、R7、および、R8は、H、置換型または非置換型アルキル、アルコキシ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、At)、炭素数が6の炭素環式芳香族環、炭素数が3〜6の炭素環式非芳香族環、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員の複素環式芳香族環、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員の複素環式非芳香族環、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、または、水素結合受容体で置換されていない、あるいは置換されている任意の芳香族環もしくは非芳香族環、または、別の芳香族環、水素結合供与体、水素結合受容体などに縮合し、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは、硫黄とを環員原子として有する5員または6員の炭素環式芳香族環もしくは複素環式芳香族環である。ZはS、O、NH、または、CH−CHである。Wは存在または非存在であって、かつ、NH、NH−(CH2)n(n=0〜10)、(CH2)n(n=0〜10)、O、または、O−(CH2)n(n=0〜10)である。XおよびYはそれぞれ独立的にNまたはCである。また、mは0〜3である(m=0の場合には、R7は非存在である)。一部の実施形態では、R1、R2、R3、および、R4は、MLL融合タンパク質とメニンとの相互作用を阻害する、および/または、白血病を治療または予防する化合物を生成することができる任意の置換基を含有する。
【0058】
一部の実施形態では、チエノピリミジン・クラスの小分子は、表1および表2の組成物、または、該組成物の誘導体、組み合わせ、薬学的に許容可能な塩、および/または、水和物を含有する。一部の実施形態では、チエノピリミジン・クラスの小分子は、MLL(例えば、MLL融合タンパク質)とメニンとの相互作用を阻害する。一部の実施形態では、チエノピリミジン・クラスの小分子は、MLL融合タンパク質の発癌(例えば、白血病誘発)作用、および/または、MLLとメニンとの相互作用およびMLL融合タンパク質とメニンとの相互作用を無効化および/または阻害する。一部の実施形態では、チエノピリミジン・クラスの小分子は、白血病を予防または治療する。
【0059】
一部の実施形態では、ベンゾジアゼピン・クラスの小分子は、次式で表わされる一般構造、または、該一般構造の薬学的に許容可能な塩もしくは水和物を有する。
【0060】
【化7】
【0061】
ただし、式中で、R1、R2、R3、R4はH、アルキル、アセチル、アルコキシ、ケトン、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、At)、炭素環式芳香族環、炭素数が6の炭素環式芳香族環、炭素環式非芳香族環、炭素数が3〜6の炭素環式非芳香族環、複素環式芳香族環、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員の複素環式芳香族環、複素環式非芳香族環、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員の複素環式非芳香族環、アルキル、アルコキシ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、Atなど)、水素結合供与体、水素結合受容体、もしくは別の芳香族環もしくは非芳香族環に縮合し、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員の炭素環式芳香族環もしくは複素環式芳香族環、または、別の芳香族環、水素結合供与体、水素結合受容体などに縮合し、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する5員もしくは6員複素環式非芳香族環である。一部の実施形態では、R1、R2、R3、および、R4は、MLL融合タンパク質とメニンとの相互作用を阻害する、および/または、白血病を治療または予防する化合物を生成することができる任意の置換基を含有する。
【0062】
一部の実施形態では、ベンゾジアゼピン・クラスの小分子は、表3の組成物、または、該組成物の誘導体、組み合わせ、薬学的に許容可能な塩、および/または、水和物を包含する。一部の実施形態では、ベンゾジアゼピン・クラスの小分子は、MLL(例えば、MLL融合タンパク質またはMLL野生型)とメニンとの相互作用を阻害する。一部の実施形態では、ベンゾジアゼピン・クラスの小分子は、MLL、MLL融合タンパク質、および/または、MLLとメニンとの相互作用の発癌(例えば、白血病誘発)作用を無効化および/または阻害する。一部の実施形態では、ベンゾジアゼピン・クラスの小分子は、白血病を予防または治療する。
【0063】
一部の実施形態では、上記化合物は化合物42〜59またはその誘導体の構造を有する。
【0064】
一部の実施形態では、本発明は、疾患(例えば、癌、白血病、MLLに関連する白血病など)を治療または予防するために、本発明の組成物の被験体(例えば、白血病患者)への投与を提供する。一部の実施形態では、本発明は、白血病(例えば、急性白血病、慢性白血病、リンパ性白血病、リンパ性白血病、骨髄性白血病、骨髄性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリーセル白血病(HCL)、T細胞の前リンパ球性白血病(T−PLL)、大顆粒リンパ球性白血病、MLL陽性白血病、MLL誘発白血病など)を治療または予防するための組成物の投与を提供する。
【0065】
一部の実施形態では、上記化合物のいずれかが併用投与、または、公知の治療薬(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、抗体療法など)と組み合わせて使用される。
【0066】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、医薬品および/または治療用組成物として提供される。本発明の医薬品および/または治療用組成物は、局所的な治療が所望されるのか、または、全身的な治療が所望されるのか、および、治療対象の面積に応じて複数の方法で投与可能である。投与は、局所的な投与(眼や経腟送達および経直腸送達を含めた粘膜への投与)であっても、肺への投与(例えば、噴霧器の使用を含めた、粉末またはエアロゾルの吸入またはガス注入による投与、気管、鼻腔、上皮性を通じた投与、および、経皮投与など)であっても、経口投与または非経口的投与であってもかまわない。非経口投与の例としては、静脈内注射または注入、動脈内注射または注入、皮下注射または注入、腹腔内注射または注入、または、筋肉内注射または注入、さらに、頭蓋内投与(例えば、くも膜下腔内投与や心室内投与)などが挙げられる。局所投与される組成物および処方方法の例としては、経皮性パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、噴霧、液体、および、粉末などが挙げられる。従来の担体(水性でも、粉末でも、油性塩基でもよい)や増粘剤の使用が必要であっても、望ましくてもかまわない。経口投与される組成物および処方方法の例としては、粉末または顆粒、水性または非水系培地性の懸濁液または水性溶液、カプセル、小袋、錠剤などが挙げられる。増粘剤、調味料、希釈液、乳化剤、分散補助剤、または、結合剤が望ましくてもかまわない。非経口投与、くも膜下腔内投与、または、心室内投与される組成物および処方方法の例としては、バッファ液、希釈液、および、例えば、透過促進剤や担体化合物などの薬学的に許容可能な担体または賦形剤(ただし、これらの例に限定されるものではない)などの、その他の適した添加剤をも含有し得る無菌水溶液などが挙げられる。本発明の医薬品および/または治療用組成物としては、溶液、乳濁液、および、リポソーム含有処方物などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。これらの組成物は、例えば予備処方された液体、自己乳化固体、および、自己乳化半固体などの種々の成分から生成可能であるが、これらの例に限定されるものではない。
【0067】
一回の服用単位で便利に提供される、本発明の医薬品および/または治療用処方物は、医薬品/栄養薬品産業において周知の従来の手法で調製可能である。このような手法は、上記有効成分を医薬的担体または賦形剤と会合させるステップを含む。一般に、上記処方物は、上記有効成分を液体担体と微細に分割された固体の担体とのいずれか一方または両方に一様におよび密接に会合させ、さらに、必要であれば、生成物を整形することによって調製される。本発明の組成物は、例えば、錠剤、カプセル、液体シロップ、軟質ゲル、坐薬、浣腸などの多数の可能な剤形のうちのいずれかを形成するように処方可能であるが、これらの例に限定されるものではない。さらに、本発明の組成物は、水性、非水系、油系、または、混合培地性の懸濁液として処方可能である。さらに、懸濁液は、上記懸濁液の粘性を増加させる物質(例えば、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ソルビトール、および/または、デキストランなど)を含有してもかまわない。さらに、上記懸濁液は安定剤を含有してもかまわない。本発明の一実施形態では、上記薬学的組成物は、発泡剤として処方および使用可能である。医薬的発泡剤の例としては、例えば、乳濁液、マイクロ乳濁液、クリーム、ゼリー、リポソームなどの処方物が挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。これらの各処方物は、基本的には特性が類似しているが、成分および最終産物の一貫性という点では異なる。
【0068】
投画および投与計画は、望ましい治療効果のレベル、および、実際に得られる治療効果のレベル(ただし、これらの例に限定されるものではない)を含めた周知の薬理学上および治療上の判断事項に基づいて、臨床医または薬理学的分野の当業者によって調整される。一般的に、化学療法薬を投与するための周知の薬理学的な原理に従うことが薦められる(例えば、一般的に、3〜4の薬剤半減期を超えない程度で、一度に50%を超える服用量の変更はしないことが薦められる)。用量に関連する毒性について考慮すべきことが比較的少ない、または、全くない組成物の場合であって、かつ、最大効力が所望されるのであれば、必要とされる平均投与量を超える投与量は珍しくない。投薬法に対するこの手法は、一般に”極量”戦略と称される。ある一部の実施形態では、上記化合物は、約0.01mg/kg〜約200mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kg〜約100mg/kg、さらにより好ましくは約0.5mg/kg〜約50mg/kgの投与量で被験体に投与される。ここに記載する化合物が別の薬剤(例えば、感作剤として)とともに併用投与される場合、有効量は、該薬剤が単独で使用される場合の量より少なくてもよい。投薬は、1日以上の連続する日にわたって、一日当たり1回または一日当たり複数回であってもよい。
【0069】
〔実験〕
化合物1〜3および5〜8は、Chembridge Corporation社から市販されている。化合物9は、Asinex社から市販されている。化合物10は、InterbioScreen Ltd.社から市販されている。化合物11および32〜41は、Chemdiv Inc.社から市販されている。化合物12〜27および31は、Enamine社市販されている。化合物4は、Labotest社(LT00160569)から市販されている。化合物28〜30は、Princeton Biomolecular Research社から市販されている。残りの化合物は、下記の商業ソースから入手、または、合成した。化合物2、4、6〜8、26、27、64〜72、および、75〜76は、HCl塩として使用した。
【0070】
〔実施例1〕
〔化合物のスクリーニング〕
〔蛍光偏光アッセイ〕
MLLのメニンへの結合の阻害をモニタリングする際に有効なアッセイを、本発明の実施形態の開発時に実施した実験において開発した。高親和性メニン結合モチーフを有するMLLに由来する、フルオレセインで標識済みの12個のアミノ酸からなるペプチドを生成した(Yokoyama et al., Cell., 2005.123(2): p. 207-18.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。ペプチド(1.7kDa)がこれより非常に大きなメニン(−67kDa)に結合すると、フルオロフォア(N終端に位置するフルオレセインで標識済みのペプチド)の回転相関時間が大幅に変化し、したがって、蛍光偏光および蛍光異方性の測定結果が大きく増加する(500nmにおいて励起、525nmにおいて蛍光)。蛍光偏光法(FP)アッセイを使用し、メニンと50nMのフルオレセインで標識済みのMLLペプチドとの連続希釈物を用いて、メニンとMLLペプチドとの結合のKdを決定した。滴定曲線は、メニンとMLLとの相互作用のナノモル親和性(Kd=56nM)を示す。
【0071】
メニンとMLLとの相互作用における化合物の有効性(IC50値)を、FP競合実験において判定した。上記相互作用を阻害する化合物は、化合物のスクリーニングおよびIC50の決定を行うための読み取り値として使用している蛍光異方性を低下させる。上記FPアッセイを検証するために、(フルオレセインを付加していない)未標識のMLLペプチドを用いたコントロール競合実験を実施した。未標識のMLLペプチドによる、メニンから得られる、フルオレセインで標識済みのMLLペプチドの競争的置換をモニターした。このアッセイを用いて、メニンと結合しているMLLペプチドのIC50値を求めるとIC50=0.23μMであった。本発明の一部の実施形態では、同じ競合FPアッセイを使用して、メニンを標的とし、メニンとMLLとの相互作用を阻害する化合物をスクリーニングする。
【0072】
〔HTRFアッセイ〕
上記FPアッセイが有する1つの潜在的な限界は、FPアッセイに干渉する可能性を有する化合物を選択し、いわゆる”偽陽性”を作り出してしまうリスクである。したがって、本発明の実施形態の開発時には、CIS−BIO社によって均一時間分解蛍光(“HTRF”: homogeneous time−resolve fluorescence)アッセイとして市販されている時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR−FRET)アッセイを、二次アッセイとして(例えば、結果を確認するために)使用した。一部の実施形態では、HTRFアッセイを一次アッセイとして使用し、FPアッセイを二次アッセイとして使用して、結果を確認してもかまわない。HTRFは、ユーロピウム・クリプテート(Eu3+クリプテート)供与体からアロフィコシアニン(XL665)受容体への、長時間蛍光の非蛍光エネルギー移動をベースとして、時間分解検出法と組み合わせた方法である。これらの2つのフルオロフォアが生体分子の相互作用によって結合すると、337nmでの励起の間にEu3+クリプテートによって捕捉されたエネルギーの一部が、供与体の620nmでの蛍光放射によって放出される一方で、残存エネルギーがXL665受容体に移動し、665nmで特異的蛍光として放出される。本発明およびその実施形態の開発において使用されるHTRFでは、Eu3+クリプテート供与体がマウスの抗6His単クローン抗体と接合し、この抗体がHis標識メニンに結合する。また、XL665受容体はストレプトアビジン(SA−XL665)に接合し、このストレプトアビジンがビオチン化MLLペプチドに結合する。メニンとMLLペプチドとの相互作用によって、供与体と受容体とが結合し、その結果、受容体へのエネルギー移動が起き、このエネルギー移動が665nmでの蛍光放射の増加、および、HTRF比(665nmにおける放射強度/620nmにおける放射強度)の増加に反映される。メニンとMLLとの相互作用を競合者が阻害することによって、供与体は受容体から分離され、その結果、665nmにおける放射が減少し、HTRF比が減少する。未標識のMLLペプチドを用いて滴定実験を実施することによって、上記アッセイを検証したところ、IC50=2.3μMとなり、FPデータと良好に一致したままであった。
【0073】
〔リード化合物のNMR分光による検証〕
本発明の実施形態において、および、その開発時に、飽和移動差(STD)実験、競合STD実験、および、WaterLOGSY実験によってNMR分光を実施して、化合物のメニンに対する結合を検証した。STDは、(例えば、製薬会社が)薬物スクリーニングのためによく使う蛍光法と大きく異なる原理に基づいて、信頼できる方法を提供する。STD実験の原理は、タンパク質から小分子への磁化の移動に基づいている。このような移動は、リガンドとタンパク質との接触が直接的である場合にだけ発生し、リガンドが結合状態と非結合状態との間で高速で入れ替わっている場合に検出可能である(Mayer & Meyer. J Am Chern Soc., 2001. 123(25): p. 6108-17.、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。タンパク質が飽和している状態とタンパク質が飽和していない状態とで記録されるリガンドの差スペクトルを分析する。化合物のメニンへの結合を検出するために、2.5μMのメニンの存在下における化合物のSTDスペクトルを測定する。実験の感度は、有意なサイズのメニン(−70kDa)が存在しているので高い。
【0074】
〔ライブラリースクリーニング〕
本発明の実施形態の開発時に、メニンとMLLとの相互作用を標的とする化合物を特定するために、20μMでテストした65,000種類の化合物のハイスループットスクリーニング(HTS)を実施した。一次スクリーニングをFPで実施した。約1400種類の化合物が、阻害できることを一次スクリーニングにおいて示した。これらのうち、240種類を再確認した。用量反応曲線(DRC)を決定するために、FPと大きく干渉しない(これは非FPアッセイで確認した)180種類の化合物を選択した。用量反応曲線の決定は、独立した2つのFPアッセイ(フルオロフォアはFLSN_MLLおよびTexas Red_MLL)によって実施した(TR_MLLを使用して、フルオレセインに干渉する”偽陽性”を除外した)。DRCによって、40種類の化合物がどちらのFPアッセイにおいても活性を有することが示された。詳細にわたる分析をした後に、さらに分析する対象として、16種類の化合物を選択した。これらの化合物を、FP(両方のフルオロフォアを用いた)およびHTRFでテストした結果、5種類の化合物のIC50値が100μM未満であった。もっとも強力な化合物は、化合物1であり、IC50値が1.9μMであった。非常に強力な化合物を構造上2つのグループに分類することができ、これは2つのクラス(チエノピリミジン・クラスおよびベンゾジアゼピン・クラス)が存在することを示唆している。各グループの化合物をNMRによってテストし、各化合物がメニンに結合すること、および、結合するためにMLLと競合することを確認した。これは、該化合物の、抗白血病薬剤としての有用性を示唆している。
【0075】
〔実施例2〕
〔チエノピリミジン・クラスの化合物に関する詳細な調査〕
化合物1が、本発明の実施形態の開発時に実施したスクリーニングで、もっとも有効な阻害性化合物であった。化合物1(独立した商業ソースから得られる)について、メニンとMLLとの相互作用の阻害性をFPおよびHTRFで再テストすると、同じIC50値(1.9μM)が得られた(表1)。同じスクリーニングにおいて、構造的に関連する2つの化合物をさらに特定した(化合物2および化合物3、表1)。また、化合物1の41種類の類似体を商業ソースから購入し、10種類の類似体を合成し、メニンとMLLとの相互作用の阻害性についてFPアッセイでテストした。その結果、複数の活性化合物が見つかった(表1および表2)。化合物4は、親化合物に匹敵するインビトロIC50を示す上に溶解度が向上しているので、細胞研究にはより適している。化合物1をHCl塩に転化すると、溶解度が向上した化合物64が得られた。合成化合物65、66、67、および、70は、インビトロFPアッセイにおいてさらに強力な活性を示し(表2)、最も強力な化合物は化合物70であった(IC50=0.43μM)。表1および表2は、チエノピリミジン・クラスの複数の活性化合物のIC50に関するデータを一覧表にしたものである。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
【表9】
【0085】
〔NMRによって測定した、チエノピリミジン化合物のメニンへの結合〕
FPアッセイおよびHTRFアッセイにおいて、メニンに対するMLLの結合の阻害において活性を有するチエノピリミジン化合物をNMR実験においてテストして、MLLがメニンに直接結合していることを確認し、(例えば、凝集、タンパク質の変性、沈殿などによって引き起こされる)一切の無差別な阻害を除外した。NMRリガンド検出方法(例えば、STD、競合STD、WaterLOGSYなど)を使用して、MLLがメニンに結合していることを確認した(化合物1の代表的なスペクトルについては図1Aを参照せよ)。
【0086】
〔チエノピリミジン化合物の合成〕
合成スキーム1にしたがって、化合物65〜72を合成した。トリエチルアミンを塩基として用いて、エチルシアノアセテート2および硫黄元素でアルデヒド1を縮合して、チオフェン3を得た(Gewald反応)。加熱条件(120℃)下で化合物3をホルムアミド4で処理し、チエノピリミジン5を形成した。塩化オキサリル中で化合物5を還流させることによって塩素化を達成し、化合物6を産生した。6をピペラジン7で求核置換すると、化合物8が得られた。この化合物8を、次に、HCl塩9に転化した。
【0087】
【化8】
【0088】
〔実施例3〕
〔ベンゾジアゼピン・クラスの化合物に関する詳細な調査〕
化合物32は、HTSによって特定されたベンゾジアゼピン・クラスの化合物の中では最も有効な阻害を示した。化合物32を、メニンとMLLとの相互作用の阻害性について、FPおよびHTRFによって再テストすると、IC50=13μMであった(表3)。一次スクリーニングにおいて特定された構造的に関連する2つの化合物も再テストした(化合物33および化合物34、表3)。さらに、化合物32に対する類似度が85%である、ライブラリーから得られる化合物(一次スクリーニングでは、ヒットとして見つけられなかった)について、メニンとMLLとの相互作用の阻害性を、用量反応曲線において再テストすると、複数の活性化合物が得られた(表3)。表3は、ベンゾジアゼピン・クラスの複数の活性化合物のIC50に関するデータを一覧表にしたものである。化合物32の12種類の市販の類似体を注文し、テストを実施した結果、もとの化合物よりも良好なIC50値を有する化合物が1つ見つかった(化合物86、IC50=7.4μM)。各活性化合物を表3に示す。
【0089】
【表10】
【0090】
【表11】
【0091】
【表12】
【0092】
〔NMRによって測定した、ベンゾジアゼピン化合物のメニンへの結合〕
FPアッセイおよびHTRFアッセイにおいて、メニンに対するMLLの結合の阻害において活性を有するベンゾジアゼピン化合物をNMR実験においてテストして、MLLがメニンに直接結合していることを確認し、(例えば、凝集、タンパク質の変性、沈殿などの非特異的な作用によって引き起こされる)一切の無差別な阻害を除外した。NMRリガンド検出方法(例えば、STD、競合STD、WaterLOGSYなど)を使用して、MLLがメニンに結合していることを確認した(化合物33の代表的なスペクトルについては図1Bを参照せよ)。
【0093】
〔実施例4〕
〔インビボ化合物テスト〕
〔ヒト細胞におけるメニンとMLLとの相互作用の阻害〕
チエノピリミジン(化合物64(MI−1)、化合物67(RJS−4−020)、化合物70(AS−1−19))化合物およびベンゾジアゼピン(化合物32(MI−2またはCCG−21196))化合物について、Flag−MLL−AF9を移入したHEK293細胞において免疫共沈降実験を適用してメニンとMLLとの相互作用の阻害性をテストした(図2を参照せよ)。どちらのクラスの化合物も、DMSOコントロールと比較して、この相互作用を、50μMおよび25μMの化合物濃度でヒト細胞において有効に阻害することができる。これは、薬物の候補としてさらに開発を進め得る潜在的能力を示している。
【0094】
〔腎臓株化細胞および肝臓株化細胞におけるチエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物の作用〕
チエノピリミジン・クラスおよびベンゾジアゼピン・クラスの化合物の有効性を、ヒト株化細胞においてテストした。MTT生存率アッセイによって、細胞増殖に対する効果を調べた(Mosmann. Immunol Methods., 1983; 65(1-2):55-63,、本文献は全て参照によってここに引用されるものとする)。Hep−G2(肝臓)株化細胞およびHK−2(腎臓)株化細胞を用いた生存率アッセイ(MIT)を実施した結果、どちらのクラスの化合物の場合にも顕著な毒性の徴候が見られなかった(図3を参照せよ。化合物1(CCG_21397)、化合物4(CCG_21397_25)、化合物32(CCG_21196))。
【0095】
〔MLL転座を有するヒト白血病株化細胞の増殖抑制に対する、チエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物の作用〕
ヒト白血病株化細胞における生存率アッセイを、チエノピリミジン・クラスおよびベンゾジアゼピン・クラスの代表的な化合物を用いて実施した。異なるMLL転座を有するMV4;11株化細胞、ML−2株化細胞、KOPN−8株化細胞、Karpas45株化細胞、MonoMac6株化細胞を含めた複数の株化細胞をテストして、ヒト白血病株化細胞の成長の阻害における、化合物の有効性を評価した。ヒト白血病株化細胞の増殖の非常に有効な抑制が、数マイクロモルから数十マイクロモルのGI50値(7μM〜25μM)を有するチエノピリミジン・クラスの化合物(具体的には、化合物64(CCG_21397またはMI−1)、化合物4(CCG_21397_25またはMI−1−25)(図4Aを参照せよ))の場合(図4Bを参照せよ)、および、インビトロFP実験においてチエノピリミジン・クラスの中でもっとも強力な化合物である化合物70(AS−1−19)の場合(表1および表2)に観察された。
【0096】
化合物32(CCG_21196またはMI−2)および化合物86(MI−2−12)を含めたベンゾジアゼピン化合物も、MLL白血病細胞の成長を強力に阻害した(図5を参照せよ)。その一方で、負のコントロールとして使用した化合物39(MI−8)は、MLL白血病細胞の増殖抑制を一切示さなかった。これは、この化合物のインビトロIC50値と非常に良好に相関している。
【0097】
〔MLL白血病細胞に対するチエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物の特異性〕
チエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物をMTT生存率アッセイにおいてテストし、MLL転座を有しない他の白血病株化細胞の成長に対する効果を評価した。どちらのクラスの化合物の場合にも限定的な効果しか観察されなかったか、あるいは、そのような効果が一切観察されなかった(図6を参照せよ)。これは、MLL融合株化細胞の成長阻害における選択性を示している。
【0098】
〔MLL−AF9およびMLL−ENLを導入したマウス骨髄に対する、チエノピリミジン化合物の効果〕
チエノピリミジン化合物(化合物70、AS−1−19)は、MTT細胞生存率アッセイによる測定結果によれば、MLL−AF9およびMLL−ENL融合タンパク質を導入済みのマウス骨髄において、細胞増殖の高い阻害性を示す(図7を参照せよ)。その一方で、E2A−HLF(pro−B−細胞白血病)を導入したマウス骨髄においては、この化合物の場合、細胞増殖の有意な阻害性が一切観察されなかった。これも、MLL転座を有する細胞の成長を、チエノピリミジン化合物が特異的に阻害することを示している。
【0099】
〔チエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物は、MLL白血病細胞においてアポトーシスを誘発する〕
アネキシンV/PI染色フローサイトメトリー実験によって、両方のクラスの化合物を、MLL白血病株化細胞(MV4;11およびTHP−1)におけるアポトーシス誘発能力について評価した(図8を参照せよ)。どちらのクラスの化合物も、MLL融合株化細胞において、数十マイクロモルの濃度(25μM〜50μM)でアポトーシスおよび細胞死を有効に誘発ことができる。この効果は、MLL−AF4細胞ではより顕著である(化合物64(MI−1および化合物32(MI−2)が25μMであれば、アポトーシス細胞が20%を超え、同じ実験条件での死細胞は20%を超える)。THP−1 MLL白血病細胞では、ベンゾジアゼピン・クラスの化合物の場合に、さらに顕著な効果が観察された。具体的には、化合物32(MI−2)で処理すると、50μMの化合物濃度において、アポトーシス細胞は約20%、死細胞は40%を超えた。チエノピリミジン化合物64(MI−1)で処理すると、効果はそれほど顕著でなかったが、DMSOコントロールに比較すればアポトーシスおよび細胞死が誘発された(図8を参照せよ)。
【0100】
〔MLL融合下流標的Hoxa9およびMeis1に対する、チエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物の効果〕
MLL融合下流標的の発現に対する両方のクラスの化合物の効果を、ルシフェラーゼ・レポーターアッセイ(図9を参照せよ)において、および、RT−PCR(図10を参照せよ)によって評価した。どちらのクラスの化合物(化合物64(MI−1)および化合物32(MI−2))も、MLL−AF9を移入したHEK293細胞におけるルシフェラーゼ・レポーターアッセイにおいて、プロモーターHoxa9のトランス活性化を有効に阻害することができる。負のコントロール化合物(RJS−3−080、および、化合物39(MI−8))の場合には、効果が一切観察されなかった。これは、インビトロのIC50値と良好に相関している。さらに、Hoxa9の発現の下方制御も、どちらのクラスの化合物の場合にも、THP−1細胞において実施したRT−PCR実験において観察され(図10を参照せよ)、化合物とともに7日間インキュベーションを行った後により顕著な効果が観察された。これらの化合物によって、MLLのもう1つの下流標的であるMeis1の発現レベルも低下した(図10bを参照せよ)。
【0101】
〔チエノピリミジン化合物およびベンゾジアゼピン化合物が、MLL白血病細胞の分化を誘発する〕
チエノピリミジン(化合物67(RJS−4−020)および化合物70(AS−1−19))およびベンゾジアゼピン(化合物32(MI−2))を用いてTHP−1白血病細胞を処理すると、細胞表面におけるCD11bの発現が増加した(図11を参照せよ)。これは、化合物を用いた処理に応答して、これらの細胞が分化したことを示唆している。
【0102】
〔実施例5〕
〔さらに別の化合物〕
FPアッセイを用いてMaybridge断片ライブラリー(MFL)(多様な分子骨格、薬物としての特性、および、300Da未満の分子量を有する500種類の化合物)のサブセットをスクリーニングするために、実験を実施した。FPによるフルオレセインで標識済みのMLLペプチドの、メニンからの競争的置換について、MFLをスクリーニングした。
【0103】
MFLのスクリーニングの結果、500μMの濃度において、MLLペプチドのメニンへの結合の阻害率が25%を超える、20種類の化合物が得られた。次に、これらの化合物を投与量に依存する形式でテストして、IC50値を決定した。アッセイと干渉した化合物(沈殿や自家蛍光)を偽陽性であると見なして、その後の分析から除外した。最後には、2mM未満のIC50値でメニンとMLLとの相互作用を阻害する、多様な分子骨格を有する11種類の化合物が得られた。NMR分光法を適用することによって、4種類の化合物(化合物42(4H8)、化合物43(6G10)、化合物44(1F4)、および、化合物45(4A6))について、メニンへの結合を確認した。最も強力な化合物は化合物42であった(IC50=50μM)。
【0104】
【化9】
【0105】
化合物43の類似体を、メニンとMLLとの相互作用の阻害におけるその効力を改善するために評価した。15種類の化合物をテストした。もっとも活性の高い化合物(6G10_3)は、もとのヒットの約4倍の活性を有していた(表4)。
【0106】
【表13】
【0107】
【表14】
【0108】
【表15】
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】Aは、化合物1(CCG21397、チエノピリミジン・クラス)のメニンとの結合を、80μMの化合物1および2.5μMのメニンの場合について測定したSTD(saturation transfer difference、飽和移動差)実験によって示している。参照1Dスペクトル(黒色)は、芳香族性および脂肪族性を有する別々の領域を示している。STDスペクトル(赤色)は、化合物1がメニンに結合することを示している。競合(competition)STDスペクトル(青色)は、25μMのMLLペプチドの存在下ではSTD効果が減少することを示し、これによって、化合物1がメニンと特異的に結合することが確認できる。スペクトル上に示したリガンドからのHシグナルおよびCH3シグナルを、構造上に符号をつけて示す。Bは、化合物33(CCG23668、ベンゾジアゼピン・クラス)のメニンとの結合を、100μMの化合物33および2.5μMのメニンの場合について測定したSTD実験によって示している。参照1Dスペクトル(黒色)は、該化合物の脂肪族性を有する領域の場合である。STDスペクトル(赤色)からは、メニンに結合することが確認できる。競合STDスペクトル(青色)は、25μMのMLLペプチドの存在下ではSTD効果が減少することを示し、これによって、化合物33がメニンと特異的に結合することが確認できる。リガンドのメチル基からのシグナルを、M1、M2、および、M1’、M2’として示す(2組のピークは、互いに異なる立体異性体から得られたピークである)。不純物(アステリスクをつけて示す)に対応するピークの強度は、MLLを加えても影響されない。
【図2】Aは、チエノピリミジン化合物(MI−1=化合物64)およびベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物33)で処理し24時間インキュベーションした後の、Flag−MLL−AF9を形質移入したHEK293細胞における共免疫沈降実験を示している。Bは、最も強力なチエノピリミジン化合物(RJS−4−020=化合物67、および、AS−1−19=化合物70)で処理し6時間インキュベーションした後の、Flag−MLL−AF9を形質移入したHEK293細胞における、共免疫沈降実験を示している。
【図3】ヒト肝臓(HepG2)株化細胞およびヒト腎臓(HK−2)株化細胞における、ベンゾジアゼピン(CCG−21196=化合物33)化合物およびチエノピリミジン(CCG−21397=化合物1、および、CCG−21397−25=化合物4)化合物のMTT生存率アッセイを示している。
【図4】Aは、チエノピリミジン化合物(MI−1=化合物64、および、MI−1−25=化合物4)で処理した、異なるMLL転座(MV4;11―MLL−AF4;ML−2―MLL−AF6;KONP8―MLL−ENL;Karpas45―MLL−AFX)を有するヒト白血病株化細胞における、ATPに基づく発光細胞生存率アッセイを示している。Bは、最も強力なチエノピリミジン化合物(AS−1−19=化合物70)を使用した場合の、複数のMLL転座(MLL−AF4融合タンパク質を有するMV4;11、および、MLL−AF9融合タンパク質を有するMonoMac6)を有するヒト白血病株化細胞における、MTT生存率アッセイを示している。
【図5】Aは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物32、および、MI−8=化合物39)で処理した、異なるMLL転座(MV4;11―MLL−AF4;KONP8―MLL−ENL;THP−1―MLL−AF9)を有するヒト白血病株化細胞における、MTT細胞生存率アッセイを示している。Bは、最も強力なベンゾジアゼピン化合物(MI−2−12=化合物86)を用いた場合の、複数のMLL転座(MLL−AF4融合タンパク質を有するMV4;11、および、MLL−AF9融合タンパク質を有するMonoMac6)を有するヒト白血病株化細胞における、MTT生存率アッセイを示している。
【図6】Aは、チエノピリミジン化合物(化合物64=MI−1、化合物4=MI−1−25、および、化合物63=MI−1−72)を用いた、MLLではない白血病株化細胞(AML1−ETO融合タンパク質を有するKasumi−1、および、CBFβ−SMMHC融合タンパク質を有するME−1)における、MTT細胞生存率アッセイを示している。Bは、最も強力なチエノピリミジン化合物(化合物70=AS−1−19)を用いた場合の、MLLではない白血病株化細胞(AML1−ETO融合タンパク質を有するKasumi−1、および、CBFβ−SMMHC融合タンパク質を有するME−1)における、MTT細胞生存率アッセイを示している。Cは、最も強力なベンゾジアゼピン化合物(化合物86=MI−2−12)を用いた場合の、MLLではない白血病株化細胞(Kasumi−1、および、ME−1)における、MTT細胞生存率アッセイを示している。
【図7】チエノピリミジン化合物(化合物70=AS−1−19)を用いた場合の、MLL−AF9、MLL−ENL、および、E2A−HLF(pro−B細胞白血病、これを負のコントロールとして使用する)を形質導入したマウス骨髄における、MTT生存率アッセイを示している。
【図8】チエノピリミジン化合物(化合物64=MI−1、化合物4=MI−1−25)およびベンゾジアゼピン化合物(化合物32=MI−2)を用いた、MLL融合白血病株化細胞(MLL−AF4を有するMV4;11およびMLL−AF9を有するTHP−1)における、アネキシンV/PIフローサイトメトリー実験を示している。
【図9】MLL−AF9を形質移入したHEK293細胞において実施したルシフェラーゼ・レポーターアッセイを示し、Aは、チエノピリミジン化合物(MI−1=化合物64、RJS−3−080をネガティブコントロールとして使用した)によるプロモーターHoxa9のトランス活性化の阻害を示している。Bは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物32は投与量に依存して阻害する。MI−8=化合物39を負のコントロールとして使用した)を用いた場合の効果を示している。
【図10】qRT−PCR実験によって測定した、MLL下流標的(THP−1白血病細胞におけるHoxa9およびMeis1)の発現レベルに対する各化合物の効果を示し、Aは、チエノピリミジン化合物(RJS−3−082=化合物65、AS−1−19=化合物70、MI−1−72=化合物63)による、Hoxa9の発現の下方制御を示している。Bは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2−12=化合物86)による、Hoxa9およびMeis1の発現の下方制御を示している。
【図11】フローサイトメトリー法を用いてCD11bの発現レベルによって測定した、THP−1白血病細胞の分化を示し、Aは、チエノピリミジン化合物(RJS−4−020=化合物67、AS−1−19=化合物70)を用いた場合の効果である。Bは、ベンゾジアゼピン化合物(MI−2=化合物32)を用いた場合の効果である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式で表わされる構造を有する化合物または該化合物の薬学的に許容可能な塩を含有する薬剤:
【化1】
ただし、式中で、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は、独立的に、H、置換型もしくは非置換型アルキル、置換型もしくは非置換型アルコキシ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、At)、ケトン、環状炭素、芳香族環、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式芳香族環(該環員原子は、置換型もしくは非置換型アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式非芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、チエノピリミジン環系に縮合される、あるいは付加される炭素環式芳香族環もしくは炭素環式非芳香族環(上記チエノピリミジン環系は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは、水素結合受容体で置換されていない、あるいは、置換されている)、または、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する炭素環式芳香族環もしくは複素環式芳香族環(該環員原子は、別の芳香族環、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体に縮合している)を含有し;ZはS、O、NH、または、CH−CHであり;Wは存在または非存在であって、かつ、NH、NH−(CH2)n(n=0〜10)、(CH2)n(n=0〜10)、O、または、O−(CH2)n(n=0〜10)であり;XおよびYはそれぞれ独立的にNまたはCであり;mは0〜3である。
【請求項2】
上記構造が化合物1である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
上記構造が化合物4である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項4】
上記構造が、化合物2〜3、化合物5〜31、および化合物60〜83からなる群より選択される、請求項1に記載の薬剤。
【請求項5】
上記構造が、組成物1〜31および60〜83の任意の構造的類似体である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項6】
次式で表わされる構造を有する化合物または該化合物の薬学的に許容可能な塩を含有する薬剤:
【化2】
ただし、式中で、R1、R2、R3、および、R4は、それぞれ独立的に、H、置換型もしくは非置換型アルキル、置換型もしくは非置換型アルコキシ、ハロゲン、ケトン、環状炭素、芳香族環、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式非芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、ベンゾジアゼピン環系に縮合した炭素環式芳香族環もしくは炭素環式非芳香族環(上記チエノピリミジン環系は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは、水素結合受容体で置換されていない、あるいは、置換されている)、または、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する炭素環式芳香族環もしくは複素環式芳香族環(該環員原子は、別の芳香族環、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体に縮合している)を含有する。
【請求項7】
上記構造が化合物32である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項8】
上記構造が化合物33である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項9】
上記構造が化合物34である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項10】
上記構造が、化合物35〜41からなる群より選択される、請求項6に記載の薬剤。
【請求項11】
上記構造が、化合物84〜86からなる群より選択される、請求項6に記載の薬剤。
【請求項12】
上記構造が、組成物35〜41および84〜86の任意の構造的類似体である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項13】
化合物42〜59の構造を有する化合物を含有する薬剤。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物を被験体に投与することを含む、方法。
【請求項15】
上記被験体がヒトである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記被験体が非ヒトの動物である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
上記ヒトが白血病を患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記白血病がAMLまたはALLを包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項6に記載の組成物を被験体に投与することを含む、方法。
【請求項20】
上記被験体がヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
上記被験体が非ヒトの動物である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
上記ヒトが白血病を患っている、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
上記白血病がAMLまたはALLを包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
a)i)MLLまたはMLL融合タンパク質とメニンとを含有するサンプル、および、
ii)チエノピリミジン・クラスの化合物またはベンゾジアゼピン・クラスの化合物を含有し、MLLまたはMLL融合タンパク質とメニンとの相互作用を阻害するように構成された組成物を準備し、
b)上記組成物を上記サンプルに投与し、
c)上記MLLと上記メニンとの相互作用、または、上記MLL融合タンパク質と上記メニンとの相互作用を阻害することを含む、MLLとメニンとの相互作用を阻害する方法。
【請求項25】
上記組成物が、化合物1〜86からなる群より選択される化合物を含有する、請求項24に記載の方法。
【請求項1】
次式で表わされる構造を有する化合物または該化合物の薬学的に許容可能な塩を含有する薬剤:
【化1】
ただし、式中で、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は、独立的に、H、置換型もしくは非置換型アルキル、置換型もしくは非置換型アルコキシ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I、At)、ケトン、環状炭素、芳香族環、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式芳香族環(該環員原子は、置換型もしくは非置換型アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式非芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、チエノピリミジン環系に縮合される、あるいは付加される炭素環式芳香族環もしくは炭素環式非芳香族環(上記チエノピリミジン環系は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは、水素結合受容体で置換されていない、あるいは、置換されている)、または、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する炭素環式芳香族環もしくは複素環式芳香族環(該環員原子は、別の芳香族環、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体に縮合している)を含有し;ZはS、O、NH、または、CH−CHであり;Wは存在または非存在であって、かつ、NH、NH−(CH2)n(n=0〜10)、(CH2)n(n=0〜10)、O、または、O−(CH2)n(n=0〜10)であり;XおよびYはそれぞれ独立的にNまたはCであり;mは0〜3である。
【請求項2】
上記構造が化合物1である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
上記構造が化合物4である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項4】
上記構造が、化合物2〜3、化合物5〜31、および化合物60〜83からなる群より選択される、請求項1に記載の薬剤。
【請求項5】
上記構造が、組成物1〜31および60〜83の任意の構造的類似体である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項6】
次式で表わされる構造を有する化合物または該化合物の薬学的に許容可能な塩を含有する薬剤:
【化2】
ただし、式中で、R1、R2、R3、および、R4は、それぞれ独立的に、H、置換型もしくは非置換型アルキル、置換型もしくは非置換型アルコキシ、ハロゲン、ケトン、環状炭素、芳香族環、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、炭素と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する複素環式非芳香族環(該環員原子は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体で置換されていなくても置換されていてもよい)、ベンゾジアゼピン環系に縮合した炭素環式芳香族環もしくは炭素環式非芳香族環(上記チエノピリミジン環系は、アルキル、アリール、ハロゲン、水素結合供与体、もしくは、水素結合受容体で置換されていない、あるいは、置換されている)、または、炭素原子と1つ以上の窒素、酸素、および/もしくは硫黄とを環員原子として有する炭素環式芳香族環もしくは複素環式芳香族環(該環員原子は、別の芳香族環、水素結合供与体、もしくは水素結合受容体に縮合している)を含有する。
【請求項7】
上記構造が化合物32である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項8】
上記構造が化合物33である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項9】
上記構造が化合物34である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項10】
上記構造が、化合物35〜41からなる群より選択される、請求項6に記載の薬剤。
【請求項11】
上記構造が、化合物84〜86からなる群より選択される、請求項6に記載の薬剤。
【請求項12】
上記構造が、組成物35〜41および84〜86の任意の構造的類似体である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項13】
化合物42〜59の構造を有する化合物を含有する薬剤。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物を被験体に投与することを含む、方法。
【請求項15】
上記被験体がヒトである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記被験体が非ヒトの動物である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
上記ヒトが白血病を患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記白血病がAMLまたはALLを包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項6に記載の組成物を被験体に投与することを含む、方法。
【請求項20】
上記被験体がヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
上記被験体が非ヒトの動物である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
上記ヒトが白血病を患っている、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
上記白血病がAMLまたはALLを包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
a)i)MLLまたはMLL融合タンパク質とメニンとを含有するサンプル、および、
ii)チエノピリミジン・クラスの化合物またはベンゾジアゼピン・クラスの化合物を含有し、MLLまたはMLL融合タンパク質とメニンとの相互作用を阻害するように構成された組成物を準備し、
b)上記組成物を上記サンプルに投与し、
c)上記MLLと上記メニンとの相互作用、または、上記MLL融合タンパク質と上記メニンとの相互作用を阻害することを含む、MLLとメニンとの相互作用を阻害する方法。
【請求項25】
上記組成物が、化合物1〜86からなる群より選択される化合物を含有する、請求項24に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−503906(P2013−503906A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528106(P2012−528106)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/047894
【国際公開番号】WO2011/029054
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(506277410)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (19)
【出願人】(501038296)ユニバーシティ オブ バージニア パテント ファンデーション (17)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF VIRGINIA PATENT FOUNDATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/047894
【国際公開番号】WO2011/029054
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(506277410)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (19)
【出願人】(501038296)ユニバーシティ オブ バージニア パテント ファンデーション (17)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF VIRGINIA PATENT FOUNDATION
【Fターム(参考)】
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