説明

白金(II)錯体の製造

【課題】中性二座配位子を含有する白金(II)錯体(例えば、オキサリプラチン等)の製造法に関連する従来技術の問題点を解決する。
【解決手段】中性二座配位子を含有するハロゲノ白金錯体をオキサレ−ト塩溶液と反応させる過程を含む中性二座配位子を含有する白金(II)錯体の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性二座配位子を含有する白金(II)錯体、例えば、抗癌活性を有する点で重要性が増大しているシス−オキサラト(トランス−L−1,2−シクロヘキサンジアミン)白金(II)(該錯体はオキサリプラチン(oxaliplatin)としても知られている)の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から中性二座配位子(非脱離基)を含有するジカルボキシラト白金(II)錯体(例えば、オキサリプラチン等)は、銀塩を使用して錯体からハロゲン化物イオンを除去する方法によって合成されている。この方法においては、銀塩の使用によって多数の不純物がもたらされる。該錯体を抗癌性薬剤用に供するのに適当な純度まで精製するためには、この種の不純物は別の方法によって除去されなければならない。
【0003】
オキサリプラチンとその薬学的特性は、キダニらによって最初に開示されている(非特許文献1および特許文献1参照)。この特許発明においては、ハロゲノ白金化合物が出発物質として使用されている。ハロゲン化物イオンが銀塩によって除去された後、オキサレートは遊離酸又はその塩の形態で導入される。
【0004】
一般に、オキサリプラチンの製造法は以下の反応式によって説明される。
【化1】

【0005】
田中貴金属工業社による特許文献2には、上記の方法には、生成物中に多くの不純物が含まれるという欠点があるということが教示されている。この種の不純物には、未反応のPtLX、AgX及びAgが含まれる。PtLXの存在は、一般に該化合物が水に対して不溶性であるということに起因する。この結果、第二段階においては、PtLXを溶解させるために多量の水を使用しなければならない。このため、AgXは水に対して不溶性ではあるが、該化合物を溶液から完全に除去することが妨げられる。田中貴金属工業社による特許文献3および4には、高い光学的純度を有するシス−オキサラト(トランス−l−1,2−シクロヘキサンジアミン)白金(II)の製造法が開示されており、該化合物が抗癌剤の活性な薬学的成分として使用できることが教示されている。しかしながら、これらの特許公報に記載されている方法には、複雑な多段階工程が含まれており、最終的に生成物から除去されなければならない銀化合物を使用するという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4169846号明細書
【特許文献2】米国特許第5290961号明細書
【特許文献3】米国特許第5338874号明細書
【特許文献4】米国特許第5420319号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】キダニら、J. Med. Chem.、1978年、第21巻、第13135頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術に関連する問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の観点によれば、下記の工程を含む中性二座配位子を含有する白金(II)錯体(例えば、オキサリプラチン等)の製造方法が提供される:
中性二座配位子を含有するハロゲノ白金錯体(一般的には、中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体)及びオキサレート塩を溶剤中で反応させる(この場合、溶剤中には、1g/Lよりも多量のオキサレート塩が溶解可能である)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
溶剤は、水性溶剤、非水性溶剤又は混合溶剤系であってもよい。「混合溶剤系」とは、非水性溶剤と水を含有する溶剤混合物を意味する。
好ましくは、中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体及びオキサレートを、1:1よりも大きなモル比(一般的には、1:1〜1:15、好ましくは1:1〜1:5)で反応させる。
上記の反応は、40〜100℃、好ましくは50〜100℃、最も好ましくは60〜90℃の温度でおこなうのが一般的である。
【0011】
好ましくは、この反応は非水性溶剤中、又は混合溶剤系中でおこなう。非水性溶剤としては、有機溶剤、一般的にはアミド、例えば、ジメチルホルムアミド(dmf)等が好ましい。
【0012】
ハロゲノ白金錯体中の中性二座配位子はアミン、例えば、1,2−ジアミノシクロヘキサンであってもよく、あるいは、中性二座配位子は、N以外のドナー原子をふくんでいてもよく、又は、N以外のドナー原子(S又はSe)とNを併有していてもよい。このような配位子としては以下の化合物が例示される。
【0013】
(a)Sドナー原子(例えば、チオエーテル性基)を有する中性二座複素環式アミン、例えば、1−アルキル/アリール−2−アルキルチオアルキル/アリール複素環式アミン、特にイミダゾール又はピリジン。この種の配位子としては、次の化合物が例示される:
配位子(i) 1−メチル−2−メチルチオメチルイミダゾール
配位子(ii) 1−メチル−2−メチルチオエチルイミダゾール
配位子(iii) 1−メチル−2−メチルチオプロピルイミダゾール
配位子(iv) 1−ブチル−2−メチルチオメチルイミダゾール
配位子(v) 1−メチル−2−メチルチオエチルイミダゾール
配位子(vi) 2−メチルチオメチルピリジン
配位子(vii) 2−メチルチオエチルピリジン
配位子(viii) 2−メチルチオプロピルピリジン
【0014】
(b)アミノアルキルチオアルキル/アリール化合物。この種の配位子としては次の化合物が例示される:
配位子(ix) 1−アミノ−2−チオメチルエタン
配位子(x) 1−アミノ−2−チオエチルエタン
【0015】
(c)ジチオエーテル。この種の配位子としては次の化合物が例示される:
配位子(xi) 2,5−ジチアヘキサン
【0016】
(d)ジセレノエーテル。この種の配位子としては次の化合物が例示される:
配位子(xii) 2,5−ジセレノヘキサン等。
【0017】
ハロゲノ白金(II)錯体中のハロゲンはCl、B又はIであってもよいが、Clが好ましい。
【0018】
本発明方法において使用してもよいドナー原子としてS又はSeを含有する新規なハロゲノ白金(II)錯体としては、下記の錯体が例示される:
錯体(xi) ビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール)白金(II)、
錯体(xii) ビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオエチル−イミダゾール)白金(II)、
錯体(xiii) ビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオプロピル−イミダゾール)白金(II)、
錯体(xiv) ビス−クロロ−(1−ブチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール)白金(II)、
錯体(xv) ビス−クロロ−(1−ブチル−2−メチルチオエチル−イミダゾール)白金(II)。
【0019】
中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体としては、光学的に純粋である錯体が有利である。
【0020】
オキサレートは、銀オキサレート以外の金属オキサレート又は有機オキサレート塩であってもよい。
【0021】
本発明の第1の好ましい態様においては、オキサレートは、銀オキサレート以外の金属オキサレートであり、一般的には、アルカリ金属オキサレート、例えば、ルビジウムオキサレート又はセシウムオキサレート(好ましくはセシウムオキサレートである)であり、また、溶剤は混合溶剤系である。
【0022】
好ましい溶剤系は、アミド(例えば、ジメイルホルムアミド(dmf))と水との混合物である。dmfと水との混合比(容量比)は、好ましくは60:40〜90:10であり、最も好ましくは70:30〜90:10である。
【0023】
溶剤中への金属オキサレートの好ましい溶解度は>2g/Lであり、最も好ましくは、>3g/Lである(一般的には、約5g/Lである)。
【0024】
好ましくは、中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体を有機溶剤(例えば、dmf)に溶解させた後、該溶液中へ水を添加することによって、該溶液の溶媒を有機溶剤と水との混合物にする。有機溶剤と水との混合物中へ金属オキサレートを溶解させた後、該溶液を、中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体を含む溶剤中へ添加してもよい(一般的には、滴下する)。
【0025】
一般的には、上記の反応は、40〜100℃、好ましくは80〜100℃、最も好ましくは90℃でおこなう。
【0026】
ハロゲノ白金(II)錯体は、好ましくはビス−クロロ−(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)であり、最も好ましくはシス−ビス−クロロ−(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)である。
【0027】
本発明の第2の好ましい態様においては、オキサレートは、テトラアルキルアンモニウム化合物又はテトラアリールアンモニウム化合物のようなオキサレート塩、例えば、テトラエチルアンモニウムオキサレート、テトラプロピルアンモニウムオキサレート、テトラブチルアンモニウムオキサレ−ト又はテトラフェニルホスホニウムオキサレートであり(好ましくはテトラブチルアンモニウムオキサレートである)、また、溶剤は混合溶剤系又は純粋な非水性溶剤系である。
【0028】
混合溶剤系は、非水性溶剤(例えば、dmf)と水との混合物であってもよく、dmfと水との好ましい混合比(容量比)は、好ましくは90:10〜95:5である。
【0029】
溶剤中への有機オキサレート塩の好ましい溶解度は>2g/Lであり、より好ましい溶解度は>10g/Lであり、就中、>50g/Lであり、最も好ましい溶解度は>100g/Lである(約300g/Lであってもよい)。
【0030】
好ましくは、中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体を非水溶剤に溶解させ、一方、有機オキサレート塩を非水溶剤へ溶解させて該溶液を、中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体を含む溶剤中へ添加してもよい(一般的には、滴下する)。
【0031】
シス−ビス−ハロゲノ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)を非水溶剤中へ溶解させた後、該非水溶剤中へ水を添加してもよい。
【0032】
一般的には、上記の反応は、30〜90℃、好ましくは50〜70℃、最も好ましくは60℃でおこなう。
【0033】
ハロゲノ白金(II)錯体は、好ましくはビス−クロロ−(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)であり、最も好ましくはシス−ビス−クロロ−(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)である。
【0034】
本発明は、中性二座配位子を含有するオキサラト白金(II)錯体(例えば、オキサリプラチン)の製造方法であって、中性二座配位子を含有するハロゲノ白金錯体(一般的には、中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体)及び銀オキサレート以外の金属オキサレートを、混合溶剤系中において反応させる工程を含む該製造方法にも関する。
【0035】
本発明は、中性二座配位子を含有するオキサラト白金(II)錯体(例えば、オキサリプラチン)の製造方法であって、中性二座配位子を含有するハロゲノ白金錯体(一般的には、中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体)を有機オキサレート塩と反応させる工程を含む該製造方法にも関する。
【0036】
ドナー原子としてS又はSeを含む中性二座配位子を含有する新規なハロゲノ白金(II)錯体には下記の錯体が含まれる:
錯体(xi) ビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール)白金(II)、
錯体(xii) ビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオエチル−イミダゾール)白金(II)、
錯体(xiii) ビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオプロピル−イミダゾール)白金(II)、
錯体(xiv) ビス−クロロ−(1−ブチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール)白金(II)、
錯体(xv) ビス−クロロ−(1−ブチル−2−メチルチオエチル−イミダゾール)白金(II)。
【0037】
上記の新規な錯体は、患者の癌を処置する方法に使用してもよく、又、患者の癌を処置するための薬剤の製造に使用してもよい。
【0038】
シス−ビス−ハロゲノ(トランス−L−1,2ジアミノシクロヘキサン)白金(II)の形態を有する光学的に純粋な中性二座配位子を含有するハロゲノ白金錯体をKPtX(式中、XはCl,Br又はIを示し、好ましくはClを示す)で表される化合物から調製するためには、光学的に純粋なトランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサンが使用される。
【0039】
光学的に純粋なトランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサンは、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンを水に溶解させ、次いで、90℃での連続的撹拌条件下において、該溶液中へL−酒石酸を添加することによって調製してもよい。全ての酒石酸を溶解させた後、撹拌下で氷酢酸を滴下する。得られる混合物を90℃で1時間加熱した後、室温まで冷却させる。得られる白色のl−1,2ジアミノシクロヘキサン−l−タータレートを濾取し、水洗後、乾燥させる。得られる塩は熱水から晶出させた後、冷却する。再結晶化されたL−1,2−ジアミノシクロヘキサン−L−タータレートを水酸化ナトリウムへ加えた後、水に溶解させる。アミンが溶解したならば、これをジクロロメタンで抽出する。ジクロロメタン抽出物を一緒にした後、無水硫酸ナトリウムを用いる脱水処理に付す。大部分の溶剤は真空蒸留によって除去する。最後の残存溶剤は、真空下でのアミンの留出を回避するために、空気コンデンサーを用いて大気圧下で除去してもよい。
【0040】
次いで、光学的に純粋なトランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサンを白金(II)化合物、例えば、KPtX(式中、Xはハロゲン、例えば、Cl,Br又はIを示す)で表される化合物(一般的には、KPtCl)と反応させることによって、シス−ビス−ハロゲノ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)[一般的には、シス−ビス−クロロ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)]を生成させる。この方法は、次の文献に記載されており、この記載内容も本願明細書の一部を成すものである:イノルガニカ・キミカ・アクタ、第108巻、第63頁〜第66頁(1985年)。
【0041】
光学的に純粋なシス−ビス−ハロゲノ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)[一般的には、シス−ビス−クロロ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)]は、溶剤中において、オキサレート塩と反応させる。従来法、例えば、本願明細書の従来技術に関連する部分に記載のような方法においては、オキサリプラチンの製造に際して、銀イオンが使用される。このような反応は水性溶液中でおこなわれ、塩化銀(AgCl)は、この反応の副生成物として生成する。シス−ビス−クロロ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)の水性溶液中での溶解度は1g/L未満であり、この反応の駆動力はAgClの不溶性である(塩化銀は濾過処理によって溶液から除去されなければならない)。
【0042】
本発明の1つの観点によれば、本発明に係る反応は、1g/Lよりも高い濃度でオキサレート塩が溶解する溶剤系中でおこなうのが有利であることが判明した。この溶剤系においては、反応の駆動力は、溶液中のオキサレートイオンがジアニオン性であって、Pt(II)とキレートを形成し、塩化物よりも熱力学的に有利な錯体をもたらすという事実に起因する。好ましくは、少なくとも5g/Lのシス−ビス−ハロゲノ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)及びオキサレート塩は別々の溶液として調製する。別の有利な点は、不溶性の副生成物であるAgClが生成せず、また、望ましくない副生成物を適当な洗浄処理によって除去できることである。溶剤は水性溶剤であってもよいが、好ましい溶剤は非水性溶剤又は混合溶剤系である(混合溶剤系は、非水性溶剤と水を含有する溶剤混合物を意味する)。
【0043】
本発明の好ましい第1の実施態様においては、シス−ビス−ハロゲノ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)(好ましくは、ハロゲン原子は塩素原子である)をジメチルホルムアミド(dmf)に加熱下(40〜100℃、好ましくは80〜100℃、最も好ましくは90℃)で溶解させる。次いで、加熱下(40〜100℃、好ましくは80〜100℃、最も好ましくは90℃)において、該溶液中へ水を添加することによって溶媒を混合溶剤系(即ち、dmfと水の混合物)にする。得られる溶液はシス−ビス−クロロ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)の黄色の熱溶液である。銀オキサレート以外の金属オキサレート、例えば、ルビジウムオキサレート又はセシウムオキサレート(好ましくはセシウムオキサレート)1モル当量をdmfと水の混合物(混合比は87:13である)を含有する混合溶剤系中へ溶解させ、該溶液を上記の黄色熱溶液中へ滴下する。
【0044】
シス−ビス−クロロ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)の溶液中の溶解度は10g/Lであり、また、セシウムオキサレートの溶液中の溶解度は5g/Lである。窒素雰囲気の閉鎖系内での反応は、90℃では4時間おこなう。その後、好ましくは、上記の混合溶剤系へモル当量のセシウムオキサレートを溶解させた溶液をさらに滴下する。好ましくは、水を更に添加することによって、dmfと水との混合比を70:30にする。反応はさらに2時間おこなう。シス−ビス−クロロ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)と金属オキサレートは、全モル比が1:1よりも大きくなる条件下(好ましくは1:2)で反応させる。全反応時間は4〜15時間であり(一般的には6〜8時間である)、反応後には溶液の黄色は消失する。
【0045】
次いで、非水性溶剤を真空下で除去し、白金(II)錯体の粗生成物(この場合は、オキサリプラチン生成物である)を回収する。反応が少なくとも4時間進行した後、又は全反応時間の約半分が経過した後、過剰の金属オキサレートを反応系へ導入することによって、白金(II)錯体の粗生成物のより高い収率を達成してもよい。この粗生成物は、少量の冷水を用いる複数回(約4回)の洗浄処理に付すことによって精製される。残存固形分は、水中へ高温(約70℃)で約15分間懸濁させる。この懸濁液を濾過処理に付し、濾液を真空下で蒸発させる。残存固形分を少量のdmfで洗浄した後、さらにアセトンで洗浄し、次いで真空下での乾燥処理に付すことによって白色固体(光学的に純粋なオキサリプラチン)を得る。生成物の全収率は約30%であり、光学的純度は99.94%以上である。
【0046】
本発明の第2の好ましい実施態様においては、シス−ビス−ハロゲノ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)(好ましくは、ハロゲン原子は塩素原子である)を適当な非水性溶剤(好ましくはジメチルホルムアミド(dmf))に、不活性雰囲気下において加熱下(40〜100℃、好ましくは60〜70℃)で溶解させることによって黄色の熱溶液を得る。適当な有機オキサレート塩、例えば、テトラアルキルアンモニウム化合物又はテトラアリールアンモニウム化合物を上記の溶剤と同種類の溶剤に溶解させる。好ましい有機オキサレート塩はテトラブチルアンモニウムオキサレートである。この溶液を上記の黄色熱溶液中へ撹拌下で滴下する。該溶液中へ水を添加することによって溶媒を混合溶剤系にしてもよい。シス−ビス−クロロ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)及びテトラブチルアンモニウムオキサレートを、1:1よりも大きなモル比(一般的には、1:1〜1:10、好ましくは1:1〜1:5、最も好ましくは1:3)の条件下で反応させる。
【0047】
シス−ビス−クロロ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)の溶液中の溶解度は10g/Lであり、また、テトラブチルアンモニウムオキサレートの溶液中の溶解度は300g/Lである。反応混合物を、30〜90℃(好ましくは60〜70℃)において4〜24時間(好ましくは6〜10時間)にわたって連続的に撹拌させる。黄色溶液は黒ずむ。溶剤は真空下で除去する。反応混合物から回収する暗色生成物を冷水及びエタノールで洗浄することによって未反応のオキサレートを除去した後、遠心分離処理に付す。上層の溶剤をデカンテーションによって除去することにより、濃黄色の固体状生成物を得る。
【0048】
この生成物を州中へ懸濁させ、高温(約70℃)で短時間(約10分間)の撹拌処理に付す。この混合物を濾過処理に付し、濾液を真空下での蒸発処理に付すことによって溶剤を除去する。場合によっては、幾分粘着性のある生成物が得られるが、該生成物はエタノールを用いる洗浄処理に付される。この生成物を少量のdmfで洗浄した後、さらにアセトンですすぎ、次いで50℃のオーブン内での乾燥処理に付すことによって、白色の純粋なオキサリプラチン生成物を得る。生成物の全収率(シス−ビス−クロロ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)に基づく値)は約35%であり、光学的純度は99.94%以上であり、また、化学的純度は99.5%以上である。上述の最初のエタノール洗浄と水処理の順序は逆にしてもよい。
【0049】
テトラアルキルアンモニムオキサレートは、1モル当量のシュウ酸を2モル当量のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドの40%標準水溶液と反応させることによって調製してもよい。この反応溶液は、シュウ酸が溶解するまで室温での撹拌処理に付す。次いで、反応系のpHを、上記と同じテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド溶液を用いて7に調整する。40℃の水浴中において、該反応溶液を、ペーストが得られるまで、真空下での蒸発処理に付す。このペースト状生成物を、脱酸素処理に付したdmf(50mL)に溶解させ、該溶液を、モレキュラーシーブ(3Å)に接触させた状態で、暗所に一夜放置する。
【0050】
上記の方法は、中性二座配位子を含む多くのその他の白金(II)錯体を調製するために使用してもよい。中性二座配位子としては、WO−A−2005/051966号公報に記載されているものが例示される(該公報の記載内容も本願明細書の一部を成すものである)。また、上記の方法によって、N以外のドナー原子(一般的にはS又はSe)を含む以下に例示する中性二座配位子を有する白金(II)錯体を調製することも可能である:
i)Sドナー原子を含む複素環式アミン系中性二座配位子、例えば、一般式1−アルキル/アリール−2−アルキルチオアルキル/アリール複素環式アミンで表されるチオエーテル性S含有化合物、特にイミダゾール類又はピリジン類、
ii)アミノアルキルチオアルキル/アリール化合物、
iii)ジチオエーテル、例えば、2,5−ジチアヘキサン、及び
iv)ジセレノエーテル、例えば、2,5−ジセレノヘキサン等。
【0051】
ドナー原子としてSやSeを含有する配位子は銀化合物を用いる反応においては使用することはできない。これらの原子は白金イオンと銀イオンに非常に強く結合するからである。
【0052】
以下に例示する中性の2−メチルチオアルキルイミダゾール及びピリジン二座配位子は、後記のイミダゾール及びピリジンの2−メチルチオアルキル錯体(i)〜(v)を調製するための以下の方法に使用してもよい:
配位子(i) 1−メチル−2−メチルチオメチルイミダゾール、
配位子(ii) 1−メチル−2−メチルチオエチルイミダゾール、
配位子(iii) 1−メチル−2−メチルチオプロピルイミダゾール、
配位子(iv) 1−ブチル−2−メチルチオメチルイミダゾール、
配位子(v) 1−ブチル−2−メチルチオエチルイミダゾール、
配位子(vi) 2−メチルチオメチルピリジン、
配位子(vii) 2−メチルチオエチルピリジン及び
配位子(viii) 2−メチルチオプロピルピリジン。
【0053】
上記の配位子は次の文献に記載の方法によって調製してもよく、該文献の記載内容も本願明細書の一部を成すものである:
JGH デュプリーズ、TIA ゲルバー、W.エッジ、VLV ムトチワ及びBJAM ファンブレヒト、「金属イオン分離における窒素試薬 XI. 新規なNSイミダゾール誘導体の合成と抽出挙動」、Solv. Ext. & Ion Exch. (2001年)、第19巻(1)、第143頁〜第154頁。
【0054】
上記の方法によって調製されるイミダゾールの2−メチルチオアルキル錯体としては、下記の式(I)で表される化合物が例示される。式(I)において、R及びRはアルキル基(例えば、CH基及びC基等)又はアリール基(例えば、フェニル基)から選択されてもよく、一般的なイミダゾールの2−メチルチオアルキル錯体は下記の錯体(i)〜(v)である。
【0055】
【化2】

【0056】
上記の錯体(i)〜(v)の化学名は次の通りである:
錯体(i) オキサラト(1−メチル−2−メチルチオメチルイミダゾール)白金(II)、
錯体(ii) オキサラト(1−メチル−2−メチルチオエチルイミダゾール)白金(II)、
錯体(iii) オキサラト(1−メチル−2−メチルチオプロピルイミダゾール)白金(II)、
錯体(iv) オキサラト(1−ブチル−2−メチルチオメチルイミダゾール)白金(II)及び
錯体(v) オキサラト(1−ブチル−2−メチルチオエチルイミダゾール)白金(II)。
【0057】
本発明によるピリジンの2−メチルチオアルキル錯体としては、下記の式(II)で表される化合物が例示される。式(II)において、Rはアルキル基(例えば、CH基及びC基等)又はアリール基(例えば、フェニル基)から選択されてもよく、一般的なピリジンの2−メチルチオアルキル錯体は下記の錯体(vi)〜(viii)である。
【0058】
【化3】

【0059】
上記の錯体(vi)〜(viii)な化学名は次の通りである:
錯体(vi) オキサラト(2−メチルチオメチルピリジン)白金(II)、
錯体(vii) オキサラト(2−メチルチオエチルピリジン)白金(II)及び
錯体(viii) オキサラト(2−メチルチオプロピルピリジン)白金(II)。
【0060】
上記のイミダゾール及びピリジンの2−メチルチオアルキル錯体は抗癌性を発揮することが判明した。
【0061】
以下の配位子は、下記のPt(II)オキサレートの脂肪族アミノチオエーテル錯体を調製するために使用してもよい:
配位子(ix) 1−アミノ−2−チオメチルエタン及び
配位子(x) 1−アミノ−2−チオエチルエタン。
【0062】
錯体(ix) オキサラト(1−アミノ−2−チオメチルエタン)白金(II)及び
錯体(x) オキサラト(1−アミノ−2−チオエチルエタン)白金(II)。
【0063】
本発明方法において使用してもよい新規なハロゲノ白金(II)錯体には、N以外のドナー原子(一般的には、S及びSeである)を含む中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体が含まれる。この種の配位子としては次の化合物が調製される:
1)Sドナー原子を有する中性二座複素環式アミン、例えば、一般名1−アルキル/アリール−2−アルキルチオアルキル/アリール複素環式アミンで表示されるチオエーテル性S含有化合物、特にイミダゾール類又はピリジン類、
2)アミノアルキルチオアルキル/アリール化合物、
3)ジチオエーテル、例えば、2,5−ジチアヘキサン、
4)ジセレノエーテル、例えば、2,5−ジセレノヘキサン。
中性二座配位子は、前述の配位子(i)〜(x)のいずれから選択してもよい。
【0064】
ハロゲノ白金(II)錯体は白金(II)化合物、例えば、KPtX(式中、Xはハロゲン原子、例えば、Cl、B又はI(好ましくは、Cl)を示す)で表される化合物を適当な中性二座配位子と反応させることによって調製してもよい。このようにして調製されるハロゲノ白金(II)錯体は、下記の構造式(III)によって表される。該式中、R及びRは、アルキル基(例えば、CH、C等)又はアリール基(例えば、フェニル基)から選択してもよい。
【0065】
【化4】

【0066】
上記の錯体(xi)〜(xv)の化学名は以下の通りである:
錯体(xi) ビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール)白金(II)、
錯体(xii) ビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオエチル−イミダゾール)白金(II)、
錯体(xiii) ビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオプロピル−イミダゾール)白金(II)、
錯体(xiv) ビス−クロロ−(1−ブチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール)白金(II)、
錯体(xv) ビス−クロロ−(1−ブチル−2−メチルチオエチル−イミダゾール)白金(II)。
【0067】
好ましいハロゲノ白金(II)錯体はビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール)白金(II)である。この錯体が非常に優れた抗癌特性を有することが判明した。従って、本発明には、これらのハロゲノ白金(II)錯体を新規な抗癌剤として使用することが含まれ、該錯体は、患者の癌を処置する方法において使用してもよく、また、患者における癌を処置するための薬剤の製造方法において使用してもよい。
【0068】
上記の方法は、従来法に比べて、以下の点で有利である:
1)これらの方法は、濾過処理によって除去されなければならない不溶性の塩化銀を生成させない。
2)これらの方法においては、銀を使用しないので、銀法に付随する汚染物は発生しない。
3)ヒドロキソPt(I)種へ容易に変化する化学種であって、銀法において生成する準安定なPt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)(HO)2+種は存在しない。
4)白金(II)化合物との反応においては、遊離のシュウ酸を使用しないので、該酸による汚染問題は発生しない。
5)非水性溶剤及び大多数の非プロトン性溶剤(dmf)を含む混合溶剤の使用により、溶剤中のHOの活性は大幅に低減されるので、加水分解反応やオキソ橋形成反応のような反応は著しく制限される。
6)高温における反応での平衡に達する時間は著しく短縮される。
【0069】
本発明を以下の非制限的な実施例によってさらに詳細に説明する。全ての実施例において、dmfはジメチルホルムアミドを意味する。また、実施例で使用した溶剤は脱酸素処理に付した。
【実施例】
【0070】
実施例1
この実施例においては、本発明方法における中間体である光学的に純粋なPt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Clの調製法を示す。
【0071】
トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン(5.70g;50mmol)を水(10ml)に溶解させ、該溶液中へL−酒石酸(3.75g;25mmol)を連続的な撹拌下で漸進的に増量させながら添加し、添加終了後、混合物を90℃まで加熱した。全ての酒石酸が溶解した後、氷酢酸(5ml;85mmol)を撹拌下で滴下した。得られた混合物を90℃で1時間加熱した後、室温まで冷却させた。得られた白色のL−1,2−ジアミノシクロヘキサン−L−タータレートを濾取し、冷水(5ml)で2回洗浄した後、メタノール(5ml)で3回洗浄し、次いでオーブン内で乾燥させた。熱水から塩を晶出させ、これを5℃で一夜冷却させた。
【0072】
晶出させたL−1,2−ジアミノシクロヘキサン−L−タータレート(18.9g;72.62mmol)を、水(100ml)に4当量の水酸化ナトリウム(11.62g;290.49mmol)を溶解させた溶液中へ添加した。アミンが溶解した後、ジクロロメタン(100ml)を用いる抽出処理を5回おこなった。抽出されたジクロロメタン層を一緒にし、無水硫酸ナトリウムを用いる乾燥処理に付した。大部分の溶剤は、真空蒸留によって除去した。残存溶剤は、真空蒸留からのアミンを回避するために、空気コンデンサーを用いて大気圧下で除去した。全収率は23%であった。
【0073】
光学的に純粋なPt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Cl2を純粋なKPtClから次の文献に記載の方法に従って調製するために、光学的に純粋なアミンを適用した(該文献の記載内容も本願明細書の一部を成すものである):Inorganica Chimica Acta (1985年)、第108巻、第63頁〜第66頁。
【0074】
実施例2
この実施例においては、中性二座配位子を有するハロゲノ白金(II)錯体及び金属オキサレートを混合溶剤中で反応させることによってオキサリプラチンを調製するための本発明の第1の実施態様を示す。
【0075】
光学的に純粋なPt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Cl(0.508g;1.3mmol)をdmf(93ml)に90℃で溶解させた。水(14ml)を添加することによって、混合溶剤の混合比を調整した(dmf:水=87:13)。dmf(1ml)と水(3ml)を含有する溶剤(4ml)中へ、1当量のシュウ酸セシウム(0.508g;1.3mmol)を溶解させた。この溶液を、黄色のPt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Cl溶液中へ撹拌下で滴下した。窒素雰囲気下の閉鎖系内において、反応混合物を90℃で6時間の連続的な撹拌処理に付した後、溶剤を真空下で除去した。得られた明黄色固体を、少量の冷水(4ml)を用いる洗浄処理に4回付した。残存した固体を、70℃において、水中へ10分間懸濁させた。得られた溶液を濾過処理に付した後、溶剤を真空下で除去した。得られたクリーム色の固体を、少量のdmf(2ml)を用いる洗浄処理に2回付し、最後にアセトンを用いる洗浄処理に付した後、真空下での乾燥処理に付した。得られた白色の固体状生成物が純粋なオキサリプラチンであることを確認した。該生成物の光学的純度は99.94%以上であり、また、Pt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Clからの全収率は約25%であった。
【0076】
実施例3
この実施例においては、中性二座配位子を有するハロゲノ白金(II)錯体及び金属オキサレートを混合溶剤中で反応させることによってオキサリプラチンを調製するための本発明の第1の実施態様を示す。
【0077】
光学的に純粋なPt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Cl(1.017g;2.68mmol)をdmf(176ml)に90℃で溶解させた後、水(17ml)を添加した。dmf(3ml)と水(10ml)を含有する溶剤(13ml)中へ、1当量のシュウ酸セシウム(0.947g;2.68mmol)を溶解させた。この溶液を、黄色のPt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Cl溶液中へ撹拌下で滴下した。この時点での溶剤の混合比(dmf:水)は87:13であった。窒素雰囲気下の閉鎖系内において、反応混合物を90℃で4時間の連続的な撹拌処理に付した後、dmf(2.6ml)と水(8ml)を含有する溶剤(10.6ml)に当量のシュウ酸セシウムを溶解させた溶液を滴下した。さらに水(30ml)を添加することによって、溶剤の混合比(dmf:水)を70:30に変化させた。反応混合物をさらに2時間撹拌させた後、溶液を冷却させ、溶剤を真空下で除去した。得られた青白い固体を、少量の冷水(8ml)を用いる洗浄処理に4回付した。残存した固体を、70℃において、水中へ10分間懸濁させた。得られた溶液を濾過処理に付した後、溶剤を真空下で除去した。得られたクリーム色の固体を、少量のdmf(4ml)を用いる洗浄処理に2回付し、最後にアセトンを用いる洗浄処理に付した後、真空下での乾燥処理に付した。得られた白色の固体状生成物が純粋なオキサリプラチンであることを確認した。該生成物の光学的純度は99.94%以上であり、また、Pt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Clからの全収率は約30%であった。
【0078】
実施例4
この実施例においては、オキサリプラチンを調製するための本発明による第2の実施態様において中間体として使用されるテトラブチルアンモニウオキサレートの調製法を示す。
【0079】
2モル当量のテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(104.2ml)の40%標準水溶液中へ、1モル当量のシュウ酸(6.5g;52.15mmol)を添加した。この溶液を、シュウ酸が溶解するまで、室温で撹拌した後、溶液のpHを、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの添加によって7に調整した。得られた溶液を、40℃の水浴中において、真空蒸発処理に付すことによって、ペースト状生成物を得た。該生成物を、脱酸素処理に付した乾燥dmf(50ml)に溶解させ、該溶液を暗所において、モレキュラーシーブ(3Å)の存在下で一夜放置した。このようにした調製したオキサレートの標準溶液を使用に供した。
【0080】
実施例5
この実施例においては、中性二座配位子を有するハロゲノ白金(II)錯体及び有機オキサレートを非水性溶剤中で反応させることによってオキサリプラチンを調製するための本発明の第2の実施態様を示す。
【0081】
Pt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Cl(0.520g;1.37mmol)をdmf(80ml)に70℃で溶解させた。この溶液中へ、1.2当量のテトラブチルアンモニウムオキサレート(1.275ml;1.65mmol)の1.291Mdmf溶液を撹拌下で滴下した。得られた黄色溶液を、閉鎖系内において、70℃で6時間の撹拌処理に付した。反応中に、溶液は褐色に変色した。溶液を6時間反応させた後、溶剤を真空下で除去した。残存固体を水(20ml)中へ懸濁させ、該懸濁液を70℃で10分間撹拌させた。得られた混合物を濾過処理に付した後、真空下において、濾液から溶剤を除去した。残存固体をエタノールを用いる洗浄処理に2回付し(2×20ml)、最後にdmf(2ml)を用いる洗浄処理に付した。得られた白色生成物を50℃で乾燥させた。該生成物の光学的純度は99.94%以上であり、化学的純度は99.5%以上であった。また、生成物の全収率は30%であった。
【0082】
実施例6
この実施例においては、中性二座配位子を有するハロゲノ白金(II)錯体及び有機オキサレートを混合溶剤系中で反応させることによってオキサリプラチンを調製するための本発明の第2の実施態様を示す。
【0083】
Pt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Cl(1.040g;2.74mmol)をdmf(140ml)に60℃で溶解させた。この黄色のPt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Cl溶液中へ、1.5当量のテトラブチルアンモニウムオキサレート(3.184ml;4.11mmol)の1.291Mdmf溶液を滴下した。蒸留水(7.6ml)を添加して、溶剤の混合比(dmf:水)を95:5に調整した。得られた混合物を、窒素雰囲気下の閉鎖系内において、60℃で6時間の一定速度での撹拌処理に付した。反応中、溶液の色は、黄色から褐色に変化した。反応時間が終了した後、反応溶液を冷却させた後、溶剤を真空下で除去した。残存固体を蒸留水(40ml)中へ懸濁させ、該懸濁液を70℃で10分間撹拌させた。得られた混合物を濾過処理に付した後、真空下において、濾液から溶剤を除去した。残存固体を、エタノールを用いる洗浄処理に2回付し(2×20ml)、次いで遠心分離処理に付した。得られた固体を、dmf(4ml)を用いる洗浄処理に2回付した後、アセトンを用いるすすぎ処理に1回付し、次いで50℃のオーブン内で乾燥させた。該生成物の光学的純度は99.94%以上であり、化学的純度は99.5%以上であった。また、生成物の全収率は35%であった。
【0084】
実施例7
この実施例においては、中性二座配位子を有するハロゲノ白金(II)錯体及び有機オキサレートを混合溶剤系中で反応させることによってオキサリプラチンを調製するための本発明によるスケールアップした第2の実施態様を示す。
【0085】
Pt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Cl(4.018g;10.57mmol)をdmf(490ml)に溶解させ、該溶液中へ水(50ml)を添加した。この黄色のPt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Cl溶液中へ、3当量のテトラブチルアンモニウムオキサレートのdmf溶液(26ml;31.71mmol)を滴下した。得られた混合物を約65℃で4時間の撹拌処理に付した後、dmf(560ml)と水(58ml)との混合溶剤中に溶解させた1当量のPt(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)Cl(3.998g;10.52mmol)を該混合物中へ添加した。得られた混合物を65℃でさらに反応させた(全反応時間:8時間)。
【0086】
反応混合物中の溶剤を真空下で蒸発させた。残存固体を、窒素雰囲気下において、320mlの水中(70℃)で15分間の撹拌処理に付した。得られた懸濁液を濾過処理に付し、濾液中の溶剤を真空下で除去した。得られた固体を、エタノール(60ml)を用いる洗浄処理に2回付した後、dmf(15ml)を用いる洗浄処理に2回付した。全ての洗液は廃棄した。得られたクリーム色の固体を、窒素雰囲気下において、熱水から晶出させた。白色の結晶性生成物の光学的純度は99.94%以上であり、化学的純度は99.5%以上であった。また、生成物の全収率は35%であった。
【0087】
実施例8
この実施例においては、本発明による白金(II)錯体の調製方法において中間体として使用されるビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール)白金(II)の調製方法を示す。
【0088】
PtCl(1.012g;2.4mmol)を水(20ml)に溶解させ、該溶液中へ、1−メチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール(0.392g;2.7mmol)のアセトン溶液(2ml)を滴下した。反応混合物の室温における撹拌処理に一夜付し、得られた沈殿物を濾取した後、冷水(3ml)を用いる洗浄処理に1回付し、次いで55℃のオーブン中で乾燥させた。化学的に純粋なクリーム色のビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール)白金(II)が0.876g得られた(収率:88%)。
【0089】
実施例9
実施例8記載の方法で調製したハロゲノ白金(II)錯体に関する抗癌試験をおこなって、シスプラチンの場合と比較した。結腸癌細胞に対するPt(mmtei)Cl(式中、mmteiは1−メチル−2−メチルチオエチル−イミダゾールを示す)の抑制百分率は92.8%(10μM溶液を用いた場合)及び97.0%(100μM溶液を用いた場合)であった。シスプラチンを用いた場合の対応する値は85.6%及び93.2%であった。また、子宮頚部癌に対する本発明による錯体の抑制百分率は88.5%(10μM溶液を用いた場合)及び95.9%(100μM溶液を用いた場合)であった。シスプラチンを用いた場合の対応する値は85.4%及び95%であった。
【0090】
10mMのグルタチオンを含有する培地中において100μM溶液を使用する別の抗癌試験においても、ハロゲノ白金(II)錯体は、シスプラチンに比べて、優れた効能を示した。即ち、結腸癌細胞に対する該錯体の抑制百分率は98.2%であり(シスプラチンの場合:48.0%)、子宮頚部癌細胞に対する該錯体の抑制百分率は99.3%(シスプラチンの場合:58.6%)であり、また、乳癌細胞に対する該錯体の抑制百分率は66.1%であった(シスプラチンの場合:14%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性二座配位子を含有する白金(II)錯体の調製方法であって、中性二座配位子を含有するハロゲノ白金錯体を、濃度が1g/Lよりも高いオキサレ−ト塩溶液と反応させる過程を含む該方法。
【請求項2】
中性二座配位子を含有するハロゲノ白金錯体が、中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体である請求項1記載の方法。
【請求項3】
中性二座配位子を含有するハロゲノ白金錯体とオキサレートを1:1よりも大きなモル比で反応させる請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
中性二座配位子を含有するハロゲノ白金錯体とオキサレート1:1〜1:15のモル比で反応させる請求項3記載の方法。
【請求項5】
中性二座配位子を含有するハロゲノ白金錯体とオキサレート1:1〜1:5のモル比で反応させる請求項4記載の方法。
【請求項6】
反応を40〜100℃でおこなう請求項1から5いずれかに記載の方法。
【請求項7】
反応を60〜90℃でおこなう請求項6記載の方法。
【請求項8】
反応を非水溶剤系中又は混合溶剤系中でおこなう請求項1から7いずれかに記載の方法。
【請求項9】
非水溶剤が有機液体である請求項8記載の方法。
【請求項10】
有機液体がアミドである請求項9記載の方法。
【請求項11】
アミドがジメチルホルムアミド(dmf)である請求項10記載の方法。
【請求項12】
中性二座配位子がアミンである請求項1から11いずれかに記載の方法。
【請求項13】
アミンがシクロヘキサン−1,2−ジアミンである請求項12記載の方法。
【請求項14】
中性二座配位子がN以外のドナー原子を含有するか、又はN以外のドナー原子とNを含有する請求項1から11いずれかに記載の方法。
【請求項15】
中性二座配位子がSドナー原子又はSeドナー原子を含有する請求項14記載の方法。
【請求項16】
中性二座配位子がSドナー原子を有する複素環式アミンである請求項15記載の方法。
【請求項17】
中性二座の複素環式アミンがチオエーテル性のSドナー原子を含有する請求項16記載の方法。
【請求項18】
中性二座配位子が1−アルキル/アリール−2−アルキルチオアルキル/アリール複素環式アミンである請求項17記載の方法。
【請求項19】
複素環式アミンがイミダゾール基又はピリジン基を含有する請求項18記載の方法。
【請求項20】
中性二座配位子が下記の配位子(i)〜(viii)から選択される配位子である請求項19記載の方法:
配位子(i) 1−メチル−2−メチルチオエチル−イミダゾール、
配位子(ii) 1−メチル−2−メチルチオプロピル−イミダゾール、
配位子(iii) 1−ブチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール、
配位子(iv) 1−メチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール、
配位子(v) 1−ブチル−2−メチルチオエチル−イミダゾール、
配位子(vi) 2−メチルチオメチル−ピリジン、
配位子(vii) 2−メチルチオエチル−ピリジン、及び
配位子(viii) 2−メチルチオプロピル−ピリジン。
【請求項21】
中性二座配位子がアミノアルキルチオアルキル/アリール化合物である請求項14記載の方法。
【請求項22】
中性二座配位子が下記の配位子(ix)又は(x)である請求項21記載の方法:
配位子(ix) 1−アミノ−2−チオメチル−エタン、及び
配位子(x) 1−アミノ−2−チオエチル−エタン。
【請求項23】
中性二座配位子がジチオエーテルである請求項22記載の方法。
【請求項24】
中性二座配位子が下記の配位子(xi)である請求項23記載の方法:
配位子(xi) 2,5−ジチアヘキサン。
【請求項25】
中性二座配位子がジセレノエーテルである請求項14記載の方法。
【請求項26】
中性二座配位子が下記の配位子(xii)である請求項25記載の方法:
配位子(xii) 2,5−ジセレノヘキサン。
【請求項27】
ハロゲノ白金(II)錯体中のハロゲンがCl、Br又はIである請求項1から26いずれかに記載の方法。
【請求項28】
ハロゲノ白金(II)錯体中のハロゲンがClである請求項27記載の方法。
【請求項29】
中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体が、キラル化合物の場合には、光学的に純粋である請求項1から28いずれかに記載の方法。
【請求項30】
オキサレートが金属オキサレート又は有機オキサレート塩である請求項1記載の方法。
【請求項31】
オキサレートが金属オキサレートであり、溶剤が混合溶剤系である請求項30記載の方法。
【請求項32】
金属オキサレートがアルカリ金属オキサレートである請求項31記載の方法。
【請求項33】
金属オキサレートがルビジウムオキサレート又はセシウムオキサレートである請求項32記載の方法。
【請求項34】
金属オキサレートがセシウムオキサレートである請求項33記載の方法。
【請求項35】
混合溶剤系が、アミドと水の混合物である請求項31から34いずれかに記載の方法。
【請求項36】
アミドがジメチルホルムアミド(dmf)である請求項35記載の方法。
【請求項37】
dmf対水の容量比が60:40〜90:10である請求項36記載の方法。
【請求項38】
dmf対水の容量比が70:30〜90:10である請求項37記載の方法。
【請求項39】
金属オキサレートの溶剤中での溶解度が2g/Lよりも高い溶解度である請求項31から38いずれかに記載の方法。
【請求項40】
金属オキサレートの溶剤中での溶解度が3g/Lよりも高い溶解度である請求項39記載の方法。
【請求項41】
金属オキサレートの溶剤中での溶解度が約5g/Lである請求項40記載の方法。
【請求項42】
中性二座配位子を含有するビス−ハロゲノ白金(II)錯体を有機液体に溶解させ、次いで得られた溶液中へ水を添加することによって、溶剤を有機液体と水との混合物にする請求項31から38いずれかに記載の方法。
【請求項43】
金属オキサレートを有機液体と水との混合物に溶解させ、次いで、該溶液を中性二座配位子を有するハロゲノ白金(II)錯体を含有する溶剤中へ添加する請求項31から38いずれかに記載の方法。
【請求項44】
反応を、40〜100℃の温度範囲内でおこなう請求項31から43いずれかに記載の方法。
【請求項45】
反応を、80〜100℃の温度範囲内でおこなう請求項44記載の方法。
【請求項46】
反応を、90℃の温度でおこなう請求項45記載の方法。
【請求項47】
ハロゲノ白金(II)錯体がビス−クロロ−(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)である請求項31から46いずれかに記載の方法。
【請求項48】
ハロゲノ白金(II)錯体がシス−ビス−クロロ−(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)である請求項47記載の方法。
【請求項49】
オキサレートが有機オキサレート塩であり、溶剤が混合溶剤系又は非水溶剤である請求項1記載の方法。
【請求項50】
有機オキサレート塩がテトラ−アルキル若しくはアリールアンモニウム化合物である請求項49記載の方法。
【請求項51】
有機オキサレート塩が、テトラメチルアンモニウムオキサレート、テトラエチルアンモニウムオキサレート、テトラプロピルアンモニウムオキサレート、テトラブチルアンモニウムオキサレート、又はテトラフェニルホスホニウムオキサレートである請求項50記載の方法。
【請求項52】
有機オキサレート塩が、テトラブチルアンモニウムオキサレートである請求項51記載の方法。
【請求項53】
混合溶剤系が非水溶剤と水との混合物である請求項49から52いずれかに記載の方法。
【請求項54】
非水溶剤がジメチルホルムアミド(dmf)である請求項53記載の方法。
【請求項55】
dmf対水の容量比が90:10〜95:5である請求項54記載の方法。
【請求項56】
溶剤が非水溶剤である請求項49から52いずれかに記載の方法。
【請求項57】
有機オキサレート塩が、溶剤中において2g/Lよりも高い溶解度を示す請求項49から56いずれかに記載の方法。
【請求項58】
有機オキサレート塩が、溶剤中において10g/Lよりも高い溶解度を示す請求項57記載の方法。
【請求項59】
有機オキサレート塩が、溶剤中において50g/Lよりも高い溶解度を示す請求項59記載の方法。
【請求項60】
有機オキサレート塩が、溶剤中において100g/Lよりも高い溶解度を示す請求項59記載の方法。
【請求項61】
中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体を有機液体に溶解させ、次いで有機オキサレート塩を該有機液体に溶解させた後、得られた溶液を、中性二座配位子を有するハロゲノ白金(II)錯体を含有する溶剤中へ添加する請求項49記載の方法。
【請求項62】
反応を、50〜70℃の温度範囲内でおこなう請求項49から61いずれかに記載の方法。
【請求項63】
反応を60℃でおこなう請求項62記載の方法。
【請求項64】
シス−ビス−ハロゲノ(トランス−L−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)を有機液体中へ溶解させた後、水を該有機液体中へ添加する請求項49記載の方法。
【請求項65】
中性二座配位子を含有するオキサラト白金(II)錯体の調製方法であって、中性二座配位子を有するハロゲノ白金錯体を、銀オキサレート以外の水溶性金属オキサレートと反応させる過程を含む該方法。
【請求項66】
中性二座配位子を含有するオキサラト白金(II)錯体の調製方法であって、中性二座配位子を有するハロゲノ白金錯体を、有機オキサレート塩と反応させる過程を含む該方法。
【請求項67】
中性二座配位子を含有するオキサラト白金(II)錯体がオキサリプラチンである請求項31から66いずれかに記載の方法。
【請求項68】
Sドナー原子又はSeドナー原子を有する中性二座配位子を含有するハロゲノ白金(II)錯体。
【請求項69】
中性二座配位子が、Sドナー原子を有する複素環式アミンである請求項68記載の錯体。
【請求項70】
中性二座の複素環式アミンがチオエーテル性のSドナー原子を含有する請求項69記載の錯体。
【請求項71】
中性二座配位子が1−アルキル/アリール−2−アルキルチオアルキル/アリール複素環式アミンである請求項70記載の錯体。
【請求項72】
複素環式アミンがイミダゾール基又はピリジン基を含有する請求項71記載の錯体。
【請求項73】
中性二座配位子が下記の配位子(i)〜(viii)から選択される配位子である請求項72記載の錯体:
配位子(i) 1−メチル−2−メチルチオエチル−イミダゾール、
配位子(ii) 1−メチル−2−メチルチオプロピル−イミダゾール、
配位子(iii) 1−ブチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール、
配位子(iv) 1−メチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール、
配位子(v) 1−ブチル−2−メチルチオエチル−イミダゾール、
配位子(vi) 2−メチルチオメチル−ピリジン、
配位子(vii) 2−メチルチオエチル−ピリジン、及び
配位子(viii) 2−メチルチオプロピル−ピリジン。
【請求項74】
中性二座配位子がアミノアルキルチオアルキル/アリール化合物である請求項68記載の錯体。
【請求項75】
中性二座配位子が下記の配位子(ix)又は(x)である請求項74記載の錯体:
配位子(ix) 1−アミノ−2−チオメチル−エタン、及び
配位子(x) 1−アミノ−2−チオエチル−エタン。
【請求項76】
中性二座配位子がジチオエーテルである請求項68記載の錯体。
【請求項77】
中性二座配位子が下記の配位子(xi)である請求項76記載の錯体:
配位子(xi) 2,5−ジチアヘキサン。
【請求項78】
中性二座配位子がジセレノエーテルである請求項68記載の錯体。
【請求項79】
中性二座配位子が下記の配位子(xii)である請求項78記載の錯体:
配位子(xii) 2,5−ジセレノヘキサン。
【請求項80】
ハロゲノ白金(II)錯体中のハロゲンがCl、Br又はIである請求項68から79いずれかに記載の錯体。
【請求項81】
ハロゲノ白金(II)錯体中のハロゲンがClである請求項80記載の錯体。
【請求項82】
ビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール)白金(II)。
【請求項83】
ビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオエチル−イミダゾール)白金(II)。
【請求項84】
ビス−クロロ−(1−メチル−2−メチルチオプロピル−イミダゾール)白金(II)。
【請求項85】
ビス−クロロ−(1−ブチル−2−メチルチオメチル−イミダゾール)白金(II)。
【請求項86】
ビス−クロロ−(1−ブチル−2−メチルチオエチル−イミダゾール)白金(II)。
【請求項87】
請求項68から86いずれかに記載のハロゲノ白金(II)錯体を癌患者に投与することを含む、患者における癌の処置方法。
【請求項88】
患者における癌の処置方法に使用するための請求項68から86いずれかに記載のハロゲノ白金(II)錯体。
【請求項89】
請求項68から86いずれかに記載のハロゲノ白金(II)錯体の使用であって、患者における癌の処置方法に使用する薬剤の製造法における該使用。

【公開番号】特開2010−254710(P2010−254710A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173784(P2010−173784)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【分割の表示】特願2007−529012(P2007−529012)の分割
【原出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(506177855)プラトコ・テクノロジーズ・(プロプライエタリー)・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】PLATCO TECHNOLOGIES (PROPRIETARY) LIMITED
【Fターム(参考)】