説明

皮下デリバリーシステム、その製造法、およびコリン作動欠損障害の治療のためのその使用

生体分解性ポリマー性マトリックスと、一般式(I)[式中、残基Aはアミノ基−NHまたはアンモニウム基−NH、または一般式(II)の残基である:
(式中、X〜Xのそれぞれは、独立に水素原子、直鎖または分岐鎖のC−Cアルキル基、直鎖または分岐鎖のC−Cアルキルオキシ基、ヒドロキシル基−OH、アミノ基−NH、1級または2級C−Cアルキルアミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基−NOである)]の薬理活性物質の少なくとも1つとを含み、該物質は該マトリックス中に埋め込まれる、皮下デリバリーシステム。これはまた、該皮下デリバリーシステムの製造法、神経機能不全の治療のための、更に詳しくはコリン作動欠損障害の治療および/またはコリン作動依存性機能の改善のための、その使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセチルコリンエステラーゼインヒビターを含む皮下デリバリーシステムに関する。これはまた、該皮下デリバリーシステムの製造法、神経機能不全の治療のための、更に詳しくはコリン作動欠損(deficient)障害の治療および/またはコリン作動依存性機能の改善のための、その使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経機能不全は、集中力喪失、記憶獲得喪失、および情報保存または取り出し喪失を特徴とする認知機能の低下を含む。神経機能不全はまた、中枢神経系傷害、例えば卒中、脊髄損傷、および末梢血神経損傷からも起きる。認知機能の低下は、例えば加齢と微少認知障害が引き起こす神経障害、ならびにアルツハイマー病のような重症の神経変性障害の症状である。神経機能不全はまた、運動機能の喪失を引き起こす疾患(例えば、パーキンソン病および筋萎縮性側策硬化症)によっても起きる。中枢コリン作動系の変性は、認知機能低下の一因であると考えられている。アルツハイマー病は、高齢者が罹る痴呆症の最も一般的な型であり、臨床症状の出現から死亡までの平均期間が約8.5年である。アルツハイマー病では、アセチルコリン(ACh)の合成に関与する酵素であるコリンアセチルトランスフェラーゼの新皮質障害、ならびにコリン取り込みとACh放出の低下およびコリン作動性ニューロンの喪失が証明されている。
【0003】
現在、アルツハイマー病の治療法は存在せず、対症療法はコリン作動性神経伝達の増強に集中している。アルツハイマー病の治療のために、すでにいくつかのアセチルコリンエステラーゼインヒビターが販売されている。これらには可逆性インヒビター(例えば、タクリン、ドネペジル、ガランタミン)および準可逆性インヒビター(例えばリバスチグミン)がある。
【0004】
これらの活性物質はすべて、毎日経口投与する必要がある。薬剤のかかる投与経路は、記憶喪失に罹った患者の正規の治療には適切ではない。
【0005】
フペルジンA(Huperzine A)(CAS RN:102518−79−6)(漢方薬草フペルジア・セラータ(Huperzia Serrata)から単離されたヒカゲノカズラ(Lycopodium)アルカロイド)は、Wangら、Zhongguo Yaoli Xuebao,1986,7:110−3によるそのアセチルコリンエステラーゼ活性の最初の報告以来、有望な物質である。これは現在、可逆的で高度に選択的なアセチルコリンエステラーゼインヒビターとして認識されており、高齢者やアルツハイマー病患者で記憶増強作用が証明されている。更に、インビトロとインビボのデータは、フペルジンAが更に神経防御性を有することを証明している。フペルジンAの薬理学的性質の報告以来、より強力な物質を同定するために多くのフペルジンA誘導体が合成されている。Zhuらは、特許出願EP0806416において、非常に有望なフペルジンA誘導体(特にシッフ塩基と見なされるもの)を記載している。かかる化合物は、フペルジンAより優れた治療効果を有し毒性が低いことが証明されている。特に式(III)
【0006】
【化1】

【0007】
のフペルジンA誘導体(CAS登録番号180694−97−7を有する)は、ブチリルコリンエステラーゼよりアセチルコリンエステラーゼに対する高い選択活性を有することが証明されている。これらのフペルジンA誘導体の欠点の1つは、水に対する感受性であり、水と接触する制御できない条件下では扱うことができないことである。
【0008】
フペルジンAの提唱されている投与経路の1つは、経口経路である。しかしかかる治療の不便な点の1つは、投与が頻繁になり、1日に2〜4回またはそれ以上の投与が必要となり、これはアルツハイマー病患者が厳密に守ることが困難である。かかる治療の他の不便な点の1つは、多様な大脳傷害を研究中に、暴露が変動してあまり神経防御がされないことである。かかる変動は、特に食物吸収およびフペルジンA血漿レベルの変動に依存するかまたはこれらの影響を受ける。
【0009】
経口投与以外に、異なる経路も研究されている。
【0010】
例えば、特許出願CN1383824でWangらは、老人性痴呆および記憶障害の治療法としてまたは記憶機能を改善するために、例えば鼻噴霧剤、点鼻薬、軟膏剤、ゲル剤、散剤、または微小球を使用して、鼻腔を介してフペルジンAを投与することを提唱している。彼らは、各投与により、80〜500μgのフペルジンAが体にデリバリーできると主張する。同様の鼻薬剤デリバリーシステムが、Zhangの特許出願CN1279065により提唱されている。薬剤を投与するためのこのような経路は、粘膜から血液への迅速な通過と急速な脳標的化を可能にする。しかし投与される用量は追跡することが困難であり、その日に投与を繰り返さなければならない。上記と同様の理由により、かかる経路は、集中力と記憶喪失に罹った患者の正規の治療には適切ではない。
【0011】
特許US6,352,716においてKouらは、0.833〜146μg/cm/h以下の治療的有効速度で7日間にわたってフペルジンAの制御放出を与えるように設計された経皮デリバリー装置を、アルツハイマー病患者に応用することを提唱している。週1回投与用に設計されたかかる制御放出皮膚パッチは、その全機能を有して患者に治療効果を与えると認識されている。しかし、その局所的な刺激作用のため、および記憶喪失と行動問題のある患者はこれをはがしてしまうという事実のために、治療を負に妨害する。
【0012】
国際特許出願WO03/04024においてLiuらは、生体分解性ポリマーとしてポリ(ラクチド−co−グリコリド)を含む除放性微小球中に封入されたフペルジンAを1週間置きに注射することにより、アルツハイマー病患者を治療することを提唱している。これらの微小球は、2つの古典的な方法により得られる(1つは、溶媒としてジクロロメタンと水を使用する「エマルジョン蒸発」法として知られている方法、2つめは「噴霧乾燥」として知られている方法)。これらの微小球で得られた薬剤放出プロファイルを考慮すると、フペルジンAは少なくとも17日間にわたって放出されるが、2相に従うようである。微小球に封入されたフペルジンAの量のほとんど40%は、1日目と2日目に放出され、薬剤の残りの量は主に8〜15日目に放出される。このような2相放出プロファイルは注射直後に放出される薬剤の重要なバーストがあるため、非常に短期間のアセチルコリンエステラーゼインヒビターへの過剰暴露により、そしてこのような薬剤の狭い治療指数を考慮すると、重要な有害な副作用を引き起こす可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
技術水準のレビューからは、医療の専門家の関与が少なく患者が何もする必要がなく自己薬剤療法を避けることができる、数週間〜数ヶ月にわたってフペルジンAおよび/またはその薬剤活性成分類似体の一部の除放性かつ制御放出を与える生薬を、医師に提供するニーズがいまだに存在すると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、これらの目的は、本発明のデリバリーシステムが成功裏に達成した。
【0015】
従って本発明の目的の1つは、生体分解性ポリマー性マトリックスと、一般式(I):
【化2】

【0016】
[式中、残基Aはアミノ基−NHまたはアンモニウム基−NH、または一般式(II):
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、X〜Xのそれぞれは、独立に水素原子、直鎖または分岐鎖のC−Cアルキル基、直鎖または分岐鎖のC−Cアルキルオキシ基、ヒドロキシル基−OH、アミノ基−NH、1級または2級C−Cアルキルアミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基−NOである)の残基である]の薬理活性物質の少なくとも1つとを含み、該物質は該マトリックス中に埋め込まれる、皮下デリバリーシステムに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
一般式(I)で定義される薬理活性物質は非対象性を有するため、本定義は、可能な光学的に純粋な異性体のすべて、および該光学的に純粋な異性体のすべての混合物を包含する。好ましくは、残基Aを有する不斉炭素原子は基本的に、絶対構造R(アミノ基−NHであるAに関して)を有する。
【0020】
一般式(I)において残基Aがアンモニウム基−NHである時、対応する物質は、適切な薬理学的に許容される対イオン(例えば、ハロゲン化物、好ましくは塩素陰イオン)とともに、デリバリーシステム中に存在する。
【0021】
一般式(I)において残基Aがアミノ基−NHである時、そのように定義された薬理活性物質はフペルジンA、好ましくは(−)−フペルジンAである。フペルジンAは植物(例えばフペルジア・セラータ(Huperzia Serrata))から抽出して得られるか、または全合成もしくは半合成により得られる。両方の種類の方法が文献で既に公知である。
【0022】
一般式(I)において残基Aが一般式(II)の残基である時、そのように定義された薬理活性物質は、特許出願EP0806416に記載の方法、またはかかる方法との類似により、フペルジンAとアルデヒド基を有する適切な成分との縮合により対応するシッフ塩基を形成することにより得られる。
【0023】
好ましくは残基Aは、アミノ基−NHまたはアンモニウム基−NHまたは一般式(II):
【0024】
【化4】

【0025】
(式中、X〜Xのそれぞれは、独立に水素原子、メチルまたはエチル基、メトキシ基、ヒドロキシル基−OH、アミノ基−NH、メチルアミノ基またはジメチルアミノ基、塩素もしくは臭素原子、ニトロ基−NOである)の残基である。
【0026】
更に好ましくは薬理活性物質は以下の式(III)を有する:
【0027】
【化5】

【0028】
上記で定義した薬理活性物質、特に式(III)の物質の主要な薬理学的作用は、コリンエステラーゼを阻害する能力である。更に式(III)の物質は、異なる種(ラット、ウシおよびヒト)において、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の強力かつ選択的なインヒビターとなるようである。これに対して、ブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)については、はるかに弱い阻害活性を示す。これらの酵素は、神経伝達物質アセチルコリン(ACh)の分解を引き起こす。従ってコリンエステラーゼの阻害はAChを増加させて、脳と程度は弱いが末梢の標的臓器(例えば、筋肉、自律神経伝達系、消化管系)でのコリン作動性を上昇させる。
【0029】
この阻害プロファイルは特に式(III)の物質に、コリン作動欠損障害(例えば、アルツハイマー病、重症筋無力症、血管のような他の起源の痴呆)に有効となる能力、コリン作動依存性機能(例えば、注意力、記憶、集中力、認識、学習)において認知を改善する能力を付与し、従って発病前の状態(例えば軽い認知障害)または持続的認知改善が有効な状態(例えばパイロットなど)で有効となる能力を付与する。更に中枢阻害を優先するコリンエステラーゼの可逆的予防的選択阻害は、例えば有機リン酸塩により中毒になったヒトを防御できる可能性がある。
【0030】
インビトロとインビボのデータは、フペルジンAが更に神経防御性を有することを証明している。この2重の薬理学的作用機序は、一般式(I)の薬理活性物質に、種々の脳障害における神経防御能力を付与する。これらの作用は、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体の調節および他の機構により仲介されるかも知れない。NMDA受容体は脳に広く分布しており、脳の発達、記憶形成および学習において重要な役割を果たす。更にNMDA受容体活性は、興奮毒性として記載される機構を介して多くの神経変性疾患の原因の一端となっている可能性がある。興奮毒性は、制御不能なシナプス過度活性中に存在し、興奮性神経伝達物質の放出増強を引き起こす。グルタミン酸は、皮質および海馬ニューロンの支配的な興奮性神経伝達物質である。これは、シナプス後NMDA受容体を活性化することによりシグナル伝達カスケードを開始させる。いったん開始されると、その関連イオンチャネル孔が開いて、細胞へのCa2+流入が起きる。過剰の細胞内Ca2+イオンは次に、神経細胞死滅を引き起こし得るCa2+依存性経路を活性化させる。
【0031】
NMDA受容体を阻止することにより種々の神経病理的症状が改善されることを、多くの研究が証明している。アルツハイマー病の脳では、グルタミン酸レベルの上昇がNMDA受容体の部分的脱分極を引き起こして、Ca2+流入が増加する。このCa2+流入の持続的かつ一定の防止により、ADおよび興奮毒性が関与する他の神経変性疾患の臨床的結果が良くなる。更にフペルジンAレスキュー治療の有効な神経防御作用が、脳低酸素症虚血のラットモデルで証明された。神経細胞死滅の減少は、認知障害の減少に有意に相関した。
【0032】
本発明のデリバリーシステムにおいてマトリックスは、生体分解性ポリマー物質から作成され、この物質は以下の群から選択される:ポリアセタール類およびポリ(ヒドロキシカルボン酸エステル)類、ポリオルトエステル類、ポリ無水物、ポリラクトン類、またはこれらの混合物。好ましくはポリ(ヒドロキシカルボン酸エステル)類は、D−乳酸および/またはL−乳酸および/またはグリコール酸のホモポリマーおよびコポリマー;ポリエチレングリコールとのこれらのブロックポリマーからなる群から選択される;およびポリラクトン類は、ポリカプロラクトン、ポリ(3−ヒドロキシブチロラクトン)、およびヒドロキシブチロラクトン−ヒドロキシバレロラクトンコポリマーから選択される。
【0033】
更に好ましくは生体分解性ポリマー物質は、ポリ乳酸、およびD−乳酸および/またはL−乳酸および/またはD,L−乳酸、グリコール酸のコポリマーからなる群から選択される。更に好ましくは生体分解性ポリマー物質は、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)とポリラクチドからなる群から選択される。生体分解性ポリマー物質を構成するD,L−ラクチドとグリコリドとの比は、25:75〜100:0モル%、好ましくは50:50〜75:25モル%の範囲である。生体分解性ポリマー物質の固有粘度は、0.10〜0.9dL/g、好ましくは0.15〜0.6dL/gの範囲である。比率は、問題のポリマーのNMRスペクトルの記録から得られ、記載の値は通常の誤差内で考慮すべきである。固有粘度は25℃の温度で測定され、ポリマーはクロロホルム中0.5g/dLの溶液であり、記載の値は通常の誤差内で考慮すべきである。一方でポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマー中のD,L−ラクチドとグリコリドの比を、および他方で固有粘度を、上記の範囲内で適切に妥協することにより、当業者は、本発明のデリバリーシステムのマトリックスとして使用され、少なくとも1ヶ月にわたって一般式(I)の薬理活性物質の徐放性および制御放出を可能にする適切なポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーを選択することができる。一般に、選択されたポリマーは市販されている。例えば、ベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim)(ドイツ)は、レゾマー(Resomer;登録商標)の商品名でD,L−ラクチド/グリコリドのモル比75:25で固有粘度が0.14〜0.22dL/gのポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーを提供し、三井化学(日本)は、商品名PLGA5−50で、D,L−ラクチド/グリコリドのモル比50:50で固有粘度が0.47〜0.53dL/gのポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーを提供する。
【0034】
好ましくは本発明のデリバリーシステムは固体のインプラント型を有する。このインプラントの任意の形が企図される。好ましくはこの固体インプラントは円筒形を有する。
【0035】
本発明の他の目的の1つは、本デリバリーシステムの製造法である。この方法は以下の工程を含む:
【0036】
a)一般式(I)の薬理活性物質の該少なくとも1つの適切な量の乾燥粉末と、生体分解性ポリマー物質の適切な量の乾燥粉末とを含む均一混合物を製造する工程;
【0037】
b)工程a)で得られた混合物を、60℃〜120℃の範囲の温度に置かれた適切な円形断面を有するダイからを制御された速度で押し出す工程;
【0038】
c)工程b)で得られた押出し物を基本的に該押出し物の断面に沿って適切な長さで切断して、固体インプラントを得る工程;および
【0039】
d)工程c)で得られたインプラントを滅菌する工程。
【0040】
式(III)の薬理活性物質を参照して、かつポリマー物質がポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーである時、活性物質の相対的比率(得られたインプラントの総重量に対する重量%)は、20〜60%、好ましくは25〜35%である。各粉末の適切なサイズは、当業者により容易に選択される。好ましくは本方法の工程b)において、温度は60〜100℃、更に好ましくは60℃〜90℃である。好ましくはダイの内径は1.6mm未満であり、得られた押出し物は、その断面で2〜6mmからなる長さで切断される。
【0041】
この方法は、そのすべての工程で水の使用またはその存在を避け、従って操作の過程でまたはいったんデリバリーシステムが得られると該物質のすべてのまたはほとんどすべての分解を排除するため、一般式(I)(ここでAは式(II)の残基である)の薬理活性物質を含む本発明のデリバリーシステムの製造に特に便利である。得られたデリバリーシステムは、薬局方の安定性基準を満たすようであり、室温(25℃)で数ヶ月保存できる。
【0042】
本発明の他の目的の1つは、コリン作動欠損障害のヒトの治療および/またはヒトのコリン作動依存性機能の改善用の薬剤の製造のための、上記デリバリーシステムの使用である。これらの疾患は、アルツハイマー病、軽い認知障害、重症筋無力症、痴呆、血管起源の痴呆を含み;これらの認知機能は、認識、注意力、学習、記憶、思考、概念形成、読書、問題解決、および言語からなる群から選択されるヒトの行為に関与する。
【0043】
本発明の使用において薬剤はまた、コリンエステラーゼ阻害活性を有する物質を受けたかまたはこれにより中毒になったヒトの予防および/または治療を目的とする。これらの物質のほとんどは、有機リン酸塩からなる群から選択される。
【0044】
本発明のデリバリーシステムは、腹部の皮膚のすぐ下、または医薬品の皮下投与のための他の一般的に使用される部位(例えば、腕、脇の下)に注射される。医療専門家は、腹部の皮膚をよせて皮膚の下に針を挿入し、インプラントを注入する。注入前に、不快感を低減するために局所麻酔薬を投与してもよい。
【0045】
本発明のデリバリーシステムは、数週間〜数ヶ月間一定の間隔で、好ましくは少なくとも1ヶ月およびおそらく3ヶ月またはそれ以上の間隔で注射されるものであり、式(III)の物質について3mg〜50mgの用量反応を包含する。用量は、患者の応答と適切な注入器具(例えば、市販されているトロカール)の必要性に応じて調整することができる。この器具は、1つの注射部位にいくつかのインプラントを提供することにより、個々の用量の簡便で調整可能な注入を可能にする。
【0046】
皮下注射のさらなる利点の1つは、例えば先行技術のものと類似した微小球で使用される筋肉内注射経路より、良く許容されるという事実である。更に治療を中断する必要がある場合は、薬理活性物質の効果は逆転する。筋肉内に注射される微小球と比較して、皮膚を介するインプラントの局在化が行われる。皮下経路はまた、局所的許容性の容易な監視を可能にする。局所的または全身性に許容されない場合は、簡便で侵襲性の少ない外科的処置でインプラントを取り出すことができる。
【0047】
本発明のデリバリーシステム、その製造および性質は、以下の実施例に記載される。
【実施例】
【0048】
実施例において、
【0049】
図1は、実施例1の除放性製剤の単回皮下投与後の、ラット中の式(III)の物質の薬物動態プロファイルである;および
【0050】
図2は、実施例2の除放性製剤の単回皮下投与後の、ラット中の式(III)の誘導体の薬物動態プロファイルである。
【0051】
実施例1:
【0052】
ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーと式(III)の誘導体からなるインプラントを作成するのに、以下の方法(乾燥押出しとして知られている)を使用した。
【0053】
まず、14.0gの摩砕した(500μm)ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(D,L−ラクチド/グリコリドのモル比:54/51〜46/49モル%;固有粘度:クロロホルム(CHCl中0.5g/dl)25℃で0.47〜0.53dL/g;PLGA 5−50の名前で知られている、三井化学)と6.0gの式(III)の誘導体をバールミル中で混合(400rpm、4分)して製造した。次に、得られた混合物を連続的ゾーンを介して、70、80、90、90℃の温度で、1.3mmの直径のダイを介してネジ型押出し機を使用して押し出した。式(III)の誘導体(理論的コア負荷 30%w/w)を含有する得られた押出し物をインプラント(平均直径1.5mm)に切断し、ガンマ線照射(25kGy)により滅菌した。
【0054】
以下の方法に従ってラットでインプラントを試験した。6匹の10〜11週齢のオスのスプラーグ−ドーレイラットの群に、インプラント(用量:約15mg/kgの式(III)の誘導体、すなわち37μmol/kg)を、トロカールを使用して首の皮膚の下に1回皮下投与した。
【0055】
投与前日に、参照血漿試料を採取した。次に、投与後2時間、6時間、8時間、10時間目、次に投与後2日〜35日に1週間に2回、薬剤測定のための血漿試料を採取した。
【0056】
シッフ塩基加水分解のインヒビターとしてNaBHのような還元剤を使用してLC/MS/MS法により、ラット血漿試料中の式(III)の誘導転写体とインビボで作成したフペルジンAの両方の血漿レベルを同時に定量した。各ラットについて時間濃度曲線を作成し、図1に記載した。平均薬物動態プロファイルを計算した(±SEM、n=6)。一方、試験期間中、動物を臨床症状について観察した。試験の最後に動物を屠殺し、局所的炎症とインプラント分解の評価のために、移植の部位を回収した。
【0057】
以下の結論が得られる。血漿中のフペルジンAの漸進性放出(式(III)の誘導体のインビボ加水分解により生じる)が、7日と35日(0日は投与日)に観察された。1ヶ月にわたって持続性のフペルジンA血漿レベルが達成され、一方式(III)の誘導体のレベルは無視できる程度であった。個体間の変動は小さかった。試験の期間中臨床症状は観察されず、局所的不耐性も報告されなかった。インプラントは、投与35日以内にほとんど完全に分解された。
【0058】
実施例2:
【0059】
実施例1と同様に以下の方法を使用して、インプラントを作成したが、異なるポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーを使用した。
【0060】
まず、14.0gの摩砕したポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(D,L−ラクチド/グリコリドのモル比:76/74〜24/26;固有粘度:0.16〜0.20dL/g(25℃でクロロホルム中0.1%);Resomer RG 75:25Hとして知られている、ベーリンガーインゲルハイム)と6.0gの式(III)の誘導体をバールミル中で混合(400rpm、4分)して製造した。次に、得られた混合物を連続的ゾーンを介して、60、70、80、75℃の温度で、1.3mmの直径のダイを介してネジ型押出し機を使用して押し出した。式(III)の誘導体(理論的コア負荷 30%w/w)を含有する得られた押出し物をインプラント(平均直径1.3mm)に切断し、ガンマ線照射(25kGy)により滅菌した。
【0061】
実施例1に記載の方法に従ってラットでインプラントを試験し、各ラットについて時間濃度曲線を作成し、図2に記載した。実施例1と非常に良く似た結論が得られる。
【0062】
以下の方法で製造した持続放出製剤は、本発明の目的を満たすようである。
【0063】
実施例3
【0064】
ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーと式(III)の誘導体からなるインプラントを、以下の方法に従ってフィルムの押出しにより作成した。
【0065】
まず、無水硫酸マグネシウムを酢酸エチルに懸濁して溶媒から水を除去し、次にろ過して乾燥剤を除去した。600mgの式(III)の誘導体を10.0gの酢酸エチルに溶解した。1.40gのポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)50:50ポリマーを80.0gの酢酸エチルに懸濁してポリマー懸濁液を製造した。懸濁液を15分間超音波にかけた。式(III)の誘導体とポリマー懸濁液の溶液を、丸底フラスコに入れた。丸底フラスコを37℃に加熱し、75rpmで回転して、約90%の溶媒を蒸発させて除去した。粘性の懸濁液をテフロン(登録商標)シートに注ぎ、ドラフト内で乾燥させ、次に真空下で室温で乾燥オーブン中でフィルムを形成させた。得られたフィルムの重量は1.64gであった。
【0066】
フィルムを切断して小片にし、54℃の温度でプレス押出し機を使用して0.8mmのダイから押し出した。得られた押出し物を切断してインプラントにし、ガンマ線照射して滅菌した。インプラントは1.30mmの平均直径を有し、24.80重量%の式(III)の誘導体を含有した。取り込まれた活性成分は95.06%の純度であった。
【0067】
実施例4
【0068】
乾燥押出しとして知られている方法を使用して、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーと式(III)の誘導体からなるインプラントを作成した。
【0069】
まず、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)50:50ポリマーを摩砕して、微粒を得た。次に、1400mgの摩砕ポリマーと600mgの式(III)の誘導体を、乳鉢と乳棒を使用して混合して、物理的混合物を製造した。プレス型押出し機を使用して、71〜77℃の温度で0.8mmのダイから物理的混合物を押し出した。得られた押出し物は1.3gの重さであった。
【0070】
押出し物を切断してインプラントにし、ガンマ線照射して滅菌した。インプラントは1.3mmの平均直径を有し、30(w/w)の式(III)の誘導体を含有した。取り込まれた活性成分は97.56%の純度であった。インプラントを、ラットに皮下投与した。
【0071】
実施例5
【0072】
乾燥押出しとして知られている方法を使用して、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーと式(III)の誘導体からなるインプラントを作成した。
【0073】
まず、1400mgのポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)50:50ポリマー(レゾマー(登録商標)RG503H(D,L−ラクチド:48〜52モル%;グリコリド、48〜52%;固有粘度:25℃でCHCl中0.1%:0.32〜0.44dL/g)として知られている)と600mgの式(III)の誘導体を、乳鉢と乳棒を使用して混合して、物理的混合物を製造した。プレス型押出し機を使用して、74℃の温度で0.8mmのダイから物理的混合物を押し出した。得られた押出し物は1.320gの重さであった。押出し物を切断してインプラントにし、ガンマ線照射して滅菌した。インプラントは1.40mmの平均直径を有し、27.65重量%の式(III)の誘導体を含有した。取り込まれた活性成分は97.37%の純度であった。インプラントを、ラットに皮下投与した。
【0074】
実施例6
【0075】
ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーと式(III)の誘導体からなるインプラントを、以下の方法に従ってフィルムの押出しにより作成した。
【0076】
まず、無水硫酸マグネシウムを酢酸エチルに懸濁して溶媒から水を除去し、次にろ過して乾燥剤を除去した。900mgの式(III)の誘導体を20.0gの酢酸エチルに溶解した。2.10gのポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)50:50ラウリルエステル末端キャップポリマーを20.0gの酢酸エチルに溶解してポリマー溶液を製造した。2つの溶液を丸底フラスコに入れ、これを75rpmで回転させた。溶液を37℃に加熱した。溶媒の蒸発により溶液の重量が33g減少した。粘性の溶液をテフロン(登録商標)シートに注いだ。粘性の溶液をドラフト内で乾燥させ、次に真空下で室温で乾燥オーブン中でフィルムを形成させた。得られたフィルムの重量は2.77gであった。
【0077】
フィルムを切断して小片にし、38〜49℃の温度でプレス押出し機を使用して0.8mmのダイから押し出した。得られた押出し物は1.18gの重さであった。押出し物を切断してインプラントにし、ガンマ線照射して滅菌した。インプラントは1.2mmの平均直径を有し、26.50%(w/w) の式(III)の誘導体を含有した。取り込まれた活性成分は94.74%の純度であった。インプラントを、ラットに皮下投与した。
【0078】
実施例7
【0079】
乾燥押出しとして知られている方法を使用して、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーと式(III)の誘導体からなるインプラントを作成した。
【0080】
まず、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)50:50ラウリルエステル末端キャップポリマーを摩砕して、微粒を得た。1.400gの摩砕ポリマーと600mgの式(III)の誘導体を、乳鉢と乳棒を使用して混合して、物理的混合物を製造した。プレス型押出し機を使用して、65℃の温度で0.8mmのダイから物理的混合物を押し出した。得られた押出し物は1.170gの重さであった。
【0081】
押出し物を切断してインプラントにし、ガンマ線照射して滅菌した。インプラントは1.3mmの平均直径を有し、27.59重量%の式(III)の誘導体を含有した。取り込まれた活性成分は97.43%の純度であった。インプラントを、ラットに皮下投与した。
【0082】
実施例8
【0083】
ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーと式(III)の誘導体からなるインプラントを、以下の方法に従ってフィルムの押出しにより作成した。
【0084】
まず、無水硫酸マグネシウムを酢酸エチルに懸濁して溶媒から水を除去し、次にろ過して乾燥剤を除去した。600mgの式(III)の誘導体を14.8gの酢酸エチルに溶解した。次に、1.4gのポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)75:25ポリマー(レゾマー(登録商標)RG75:25H;D,L−ラクチド/グリコリドのモル比:76/74〜24/26;固有粘度:0.16〜0.20dL/g(25℃でクロロホルム中0.1%)として知られている)を15.2gの酢酸エチルに溶解してポリマー溶液を製造した。式(III)の誘導体の溶液とポリマー溶液を丸底フラスコに入れた。丸底フラスコを37℃に加熱し、75rpmで回転させて、約90%の溶媒を蒸発させて除去した。粘性の溶液をテフロン(登録商標)シートに注ぎ、ドラフト内で乾燥させ、次に真空下で室温で乾燥オーブン中でフィルムを形成させた。得られたフィルムの重量は1.56gであった。
【0085】
フィルムを切断して小片にし、59℃の温度でプレス押出し機を使用して0.8mmのダイから押し出した。得られた押出し物を切断してインプラントにし、ガンマ線照射して滅菌した。インプラントの直径は約1.3mmであった。インプラントは24.8重量%の式(III)の誘導体を含有した。取り込まれた活性成分は92.59%の純度であった。インプラントを、ラットに皮下投与した。
【0086】
実施例9
【0087】
乾燥押出しとして知られている方法を使用して、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーと式(III)の誘導体からなるインプラントを作成した。
【0088】
まず、1400mgのポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)75:25ポリマー(レゾマー(登録商標)RG75:25H;D,L−ラクチド/グリコリドのモル比:76:74〜24/26;固有粘度:0.16〜0.20dL/g(25℃でクロロホルム中0.1%)として知られている)と600mgの式(III)の誘導体を、乳鉢と乳棒を使用して混合して、物理的混合物を製造した。プレス型押出し機を使用して、65℃の温度で0.8mmのダイから物理的混合物を押し出した。得られた押出し物は1.283gの重さであった。
【0089】
押出し物を切断してインプラントにし、ガンマ線照射して滅菌した。インプラントは1.5mmの平均直径を有し、27.2重量%の式(III)の誘導体を含有した。取り込まれた活性成分は97.3%の純度であった。
【0090】
実施例10
【0091】
微粒の押出しによりインプラントを作成した。
【0092】
3.5gのポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)50:50(レゾマー(登録商標)RG503H(D,L−ラクチド:48〜52モル%;グリコリド、48〜52%;固有粘度:25℃でCHCl中0.1%:0.32〜0.44dL/g)として知られている)を60gのジクロロメタンに溶解した。1.5gの式(III)の誘導体を35gのジクロロメタンに溶解し、次にポリマー溶液に注いだ。得られた混合物を、ミニスプレイ−ドライヤー器具を使用して45℃で噴霧して微粒を形成させた。
【0093】
これらの微粒を直径1.0〜2.0mmのダイを介して60〜95℃の温度で押し出すことにより、直径の異なるインプラントを作成した。
【0094】
得られた押出し物を切断してインプラントにし、ガンマ線照射して滅菌した。インプラントを、ラットに皮下投与した。
【0095】
実施例11
【0096】
微粒の押出しによりインプラントを作成した。
【0097】
3.0gのポリ(D,L−ラクチド)エステル末端キャップポリマー(クロロホルム中0.5g/dLで30℃で測定した0.09〜0.10dL/gの固有粘度、アブソーバブルポリマーテクノロジーズ(Absorbable Polymer Technologies)から得られる)を、60gのジクロロメタンに溶解した。2.0gの式(III)の誘導体を35gのジクロロメタンに溶解し、次にポリマー溶液に注いだ。得られた混合物を、ミニスプレイ−ドライヤー器具を使用して40℃で噴霧して微粒を形成させた。
【0098】
これらの微粒を直径1.0〜2.0mmのダイを介して60〜95℃の温度で押し出すことにより、直径の異なるインプラントを作成した。
【0099】
得られた押出し物を切断してインプラントにし、ガンマ線照射して滅菌した。インプラントを皮下投与した。
【0100】
実施例12
【0101】
微粒の押出しによりインプラントを作成した。
【0102】
3.0gのポリ(D,L−ラクチド)ポリマー(遊離のCOOH、クロロホルム中0.5g/dLで30℃で測定した0.09〜0.10dL/gの固有粘度、アブソーバブルポリマーテクノロジーズから得られる)を、60gのジクロロメタンに溶解した。2.0gの式(III)の誘導体を35gのジクロロメタンに溶解し、次にポリマー溶液に注いだ。得られた混合物を、ミニスプレイ−ドライヤー器具を使用して40℃で噴霧して微粒を形成させた。
【0103】
これらの微粒を直径1.0〜2.0mmのダイを介して60〜95℃の温度で押し出すことにより、直径の異なるインプラントを作成した。
【0104】
得られた押出し物を切断してインプラントにし、ガンマ線照射して滅菌した。実施例13
【0105】
乾燥押出しとして知られている方法を使用して、ポリ(D,L−ラクチド)ポリマーと式(III)の誘導体からなるインプラントを作成した。
【0106】
まず、2.1gの摩砕したポリ(D,L−ラクチド)エステル末端キャップポリマー(クロロホルム中0.5g/dLで30℃で測定した0.09〜0.10dL/gの固有粘度、アブソーバブルポリマーテクノロジーズから得られる)と900mgの式(III)の誘導体を、乳鉢と乳棒を使用して混合して、物理的混合物を製造した。プレス型押出し機を使用して、30〜50℃の温度で1.0〜2.0mmのダイから物理的混合物を押し出した。
【0107】
押出し物を切断してインプラントにし、ガンマ線照射して滅菌した。インプラントを、皮下投与した。
【0108】
実施例14
【0109】
乾燥押出しとして知られている方法を使用して、ポリ(D,L−ラクチド)ポリマーと式(III)の誘導体からなるインプラントを作成した。
【0110】
まず、2.1gの摩砕したポリ(D,L−ラクチド)ポリマー(遊離のCOOH、クロロホルム中0.5g/dLで30℃で測定した0.09〜0.10dL/gの固有粘度、アブソーバブルポリマーテクノロジーズから得られる)と900mgの式(III)の誘導体を、乳鉢と乳棒を使用して混合して、物理的混合物を製造した。プレス型押出し機を使用して、30〜50℃の温度で1.0〜2.0mmのダイから物理的混合物を押し出した。
【0111】
押出し物を切断してインプラントにし、ガンマ線照射して滅菌した。インプラントを、皮下投与した。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、実施例1の除放性製剤の単回皮下投与後の、ラット中の式(III)の物質の薬物動態プロファイルである;および
【図2】図2は、実施例2の除放性製剤の単回皮下投与後の、ラット中の式(III)の誘導体の薬物動態プロファイルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分解性ポリマー性(polymeric)マトリックスと、一般式(I):
【化1】

[式中、残基Aはアミノ基−NHまたはアンモニウム基−NH、または一般式(II)
【化2】

(式中、X〜Xのそれぞれは、独立に水素原子、直鎖または分岐鎖のC−Cアルキル基、直鎖または分岐鎖のC−Cアルキルオキシ基、ヒドロキシル基−OH、アミノ基−NH、1級または2級C−Cアルキルアミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基−NOである)の残基である]、
の薬理活性(pharmacologically active)物質の少なくとも1つとを含み、該物質は該マトリックス中に埋め込まれる(embedded)、皮下デリバリー(delivery)システム。
【請求項2】
該薬理活性物質を規定する一般式(I)において、残基Aは、アミノ基−NHまたはアンモニウム基−NHまたは一般式(II):
【化3】

(式中、X〜Xのそれぞれは、独立に水素原子、メチルまたはエチル基、メトキシ基、ヒドロキシル基−OH、アミノ基−NH、メチルアミノ基またはジメチルアミノ基、塩素もしくは臭素原子、ニトロ基−NOである)、
の残基である、請求項1のデリバリーシステム。
【請求項3】
該薬理活性物質は以下の式(III)を有する、請求項1のデリバリーシステム:
【化4】

【請求項4】
該マトリックスの生体分解性ポリマー物質は、ポリアセタール類およびポリ(ヒドロキシカルボン酸エステル)類、ポリオルトエステル類、ポリ無水物、ポリラクトン類、またはこれらの混合物を含む群から選択される、請求項1のデリバリーシステム。
【請求項5】
該ポリ(ヒドロキシカルボン酸エステル)類は、D−乳酸および/またはL−乳酸および/またはグリコール酸のホモポリマーおよびコポリマー;ポリエチレングリコールとのこれらのブロックポリマーを含む群から選択され;該ポリラクトン類は、ポリカプロラクトン、ポリ(3−ヒドロキシブチロラクトン)、およびヒドロキシブチロラクトン−ヒドロキシバレロラクトンコポリマーを含む群から選択される、請求項4のデリバリーシステム。
【請求項6】
該生体分解性ポリマー物質は、ポリ乳酸、およびD−乳酸および/またはL−乳酸および/またはD,L−乳酸、および/またはグリコール酸のコポリマーを含む群から選択される、請求項4のデリバリーシステム。
【請求項7】
該生体分解性ポリマー物質は、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)とポリラクチドからなる群から選択され、生体分解性ポリマー物質を構成するD,L−ラクチドとグリコリドとの比は、25:75〜100:0モル%、好ましくは50:50〜75:25モル%の範囲であり、生体分解性ポリマー物質の固有(inherent)粘度は、0.10〜0.9dL/g、好ましくは0.15〜0.6dL/gの範囲である、請求項6のデリバリーシステム。
【請求項8】
固体インプラントの形、好ましくは円筒形を有する、請求項1のデリバリーシステム。
【請求項9】
以下の工程を含む、請求項4において定義されたデリバリーシステムの製造法:
a)一般式(I)の薬理活性物質の該少なくとも1つの適切な量の乾燥粉末と、該生体分解性ポリマー物質の適切な量の乾燥粉末とを含む均一混合物を製造する工程;
b)工程a)で得られた混合物を、70℃〜100℃の範囲の温度に置かれた適切な円形断面を有するダイから制御された速度で押し出す工程;
c)工程b)で得られた押出し物を、本質的に(essentially)該押出し物の断面から適切な長さで切断する工程;および
d)工程c)で得られたインプラントを滅菌する工程。
【請求項10】
コリン作動欠損障害の患者の治療用、および/またはヒトのコリン作動依存性機能の改善用の薬剤の製造のための、請求項1で規定したデリバリーシステムの使用。
【請求項11】
該疾患は、アルツハイマー病、軽い認知障害、重症筋無力症、痴呆、血管起源の痴呆を含み;および認知機能は、認識、注意力、学習、記憶、思考、概念形成、読書、問題解決、および言語を含む群から選択されるヒトのプロセスに関与する、請求項10の使用。
【請求項12】
該薬剤は、コリンエステラーゼ阻害親和性を有する物質を受けたかまたはこれにより中毒になったヒトの予防および/または治療のためである、請求項10の使用。
【請求項13】
該物質は有機リン酸塩からなる群から選択される、請求項12の使用。
【請求項14】
該システムに含まれる一般式(I)の薬理活性物質は、少なくとも1ヶ月にわたって連続的に放出される、請求項10の使用。
【請求項15】
薬剤は、少なくとも1ヶ月続く定期的な間隔で患者に投与される、請求項14の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分解性ポリマー性マトリックスと、一般式(I):
【化1】

[式中、残基Aはアミノ基−NHまたはアンモニウム基−NH、または一般式(II):
【化2】

(式中、X〜Xのそれぞれは、独立に水素原子、直鎖または分岐鎖のC−Cアルキル基、直鎖または分岐鎖のC−Cアルキルオキシ基、ヒドロキシル基−OH、アミノ基−NH、1級または2級C−Cアルキルアミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基−NOである)の残基である]の薬理活性物質の少なくとも1つとを含み、該物質は該マトリックス中に埋め込まれる、固体インプラントの形の皮下デリバリーシステム。
【請求項2】
該薬理活性物質を規定する一般式(I)において、残基Aは、アミノ基−NHまたはアンモニウム基−NHまたは一般式(II):
【化3】

(式中、X〜Xのそれぞれは、独立に水素原子、メチルまたはエチル基、メトキシ基、ヒドロキシル基−OH、アミノ基−NH、メチルアミノ基またはジメチルアミノ基、塩素もしくは臭素原子、ニトロ基−NOである)、
の残基である、請求項1のデリバリーシステム。
【請求項3】
該薬理活性物質は以下の式(III)を有する、請求項1のデリバリーシステム:
【化4】

【請求項4】
該マトリックスの生体分解性ポリマー物質は、ポリアセタール類およびポリ(ヒドロキシカルボン酸エステル)類、ポリオルトエステル類、ポリ無水物、ポリラクトン類、またはこれらの混合物を含む群から選択される、請求項1のデリバリーシステム。
【請求項5】
該ポリ(ヒドロキシカルボン酸エステル)類は、D−乳酸および/またはL−乳酸および/またはグリコール酸のホモポリマーおよびコポリマー;ポリエチレングリコールとのこれらのブロックポリマーを含む群から選択され;該ポリラクトン類は、ポリカプロラクトン、ポリ(3−ヒドロキシブチロラクトン)、およびヒドロキシブチロラクトン−ヒドロキシバレロラクトンコポリマーを含む群から選択される、請求項4のデリバリーシステム。
【請求項6】
該生体分解性ポリマー物質は、ポリ乳酸、およびD−乳酸および/またはL−乳酸および/またはD,L−乳酸、および/またはグリコール酸のコポリマーを含む群から選択される、請求項4のデリバリーシステム。
【請求項7】
該生体分解性ポリマー物質は、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)とポリラクチドからなる群から選択され、生体分解性ポリマー物質を構成するD,L−ラクチドとグリコリドとの比は、25:75〜100:0モル%、好ましくは50:50〜75:25モル%の範囲であり、生体分解性ポリマー物質の固有粘度は、0.10〜0.9dL/g、好ましくは0.15〜0.6dL/gの範囲である、請求項6のデリバリーシステム。
【請求項8】
該固体インプラントは円筒形を有する、請求項1のデリバリーシステム。
【請求項9】
以下の工程を含む、請求項4において定義されたデリバリーシステムの製造法:
a)一般式(I)の薬理活性物質の該少なくとも1つの適切な量の乾燥粉末と、該生体分解性ポリマー物質の適切な量の乾燥粉末とを含む均一混合物を製造する工程;
b)工程a)で得られた混合物を、70℃〜100℃の範囲の温度に置かれた適切な円形断面を有するダイからを制御された速度で押し出す工程;
c)工程b)で得られた押出し物を該押出し物の断面から適切な長さで切断する工程;および
d)工程c)で得られたインプラントを滅菌する工程。
【請求項10】
コリン作動欠損障害の患者の治療用、および/またはヒトのコリン作動依存性機能の改善用の薬剤の製造のための、請求項1で規定したデリバリーシステムの使用。
【請求項11】
該疾患は、アルツハイマー病、軽い認知障害、重症筋無力症、痴呆、血管起源の痴呆を含み;および認知機能は、認識、注意力、学習、記憶、思考、概念形成、読書、問題解決、および言語からなる群から選択されるヒトのプロセスに関与する、請求項10の使用。
【請求項12】
該薬剤は、コリンエステラーゼ阻害親和性を有する物質を受けたかまたはこれにより中毒になったヒトの予防および/または治療のためである、請求項10の使用。
【請求項13】
該物質は有機リン酸塩からなる群から選択される、請求項12の使用。
【請求項14】
該システムに含まれる一般式(I)の薬理活性物質は、少なくとも1ヶ月にわたって連続的に放出される、請求項10の使用。
【請求項15】
薬剤は、少なくとも1ヶ月続く定期的な間隔で患者に投与される、請求項14の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−520378(P2006−520378A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506340(P2006−506340)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000734
【国際公開番号】WO2004/080436
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(501230638)デビオ ルシェルシュ ファルマシュティーク ソシエテ アノニム (3)
【Fターム(参考)】