説明

皮膚を薄色化するためのテトラペプチド

本発明は、ヒトの皮膚を薄色化するための、色素斑を漂白するための、および/または皮膚の色ムラを均一にするための、テトラペプチドPKEKの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの皮膚を薄色化する(lighten)ための、色素斑を漂白するための、および/または皮膚の色ムラを均一にするための、テトラペプチドPKEKの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ケア用化粧品の目的は、例えば、皮膚や毛髪の外見が若い印象を維持することである。原則的に、この経路を達成するために様々な方法を使用することができる。例えば、ムラのある色素沈着または皺の形成などの既に生じた皮膚のダメージは、隠蔽用の粉末またはクリームで処置することができる。別の方法は、永久的なダメージ、従って皮膚の老化を招く環境の影響から皮膚を保護することである。従って、この考えは、老化過程に予防的に介入し、それにより老化過程を遅延させることである。
【0003】
皮膚の最も重要な機能は、一方では水分が無制御に逃げないように、他方には有毒な化学物質または細菌、および太陽放射線が入らないように身体を保護することである。ヒトの皮膚が長時間日照に暴露されると、光によって誘導される皮膚の老化やしみ(pigment disorders)が発生することがある。このような日光の有害作用は、とりわけ日光のスペクトル中に存在する紫外線B波(280〜320nm)によるものである。
【0004】
しみは、美容上の欠陥と認識される。これらの局所的色素沈着過度の例としては:そばかす、黒皮症、褐色斑、炎症後色素沈着過度、および肝斑などがある。メラニン産生の障害が発生することがすべての形態の色素沈着過度に共通している。
【0005】
皮膚の色素沈着は、本質的に皮膚自体の色素であるメラニンによって決まるといってもよい。これは、表皮中の特殊な細胞であるメラノサイトによって生成される。メラニンの合成中、ペースメーカー酵素であるチロシナーゼが非常に決定的な役割を果たす。
【0006】
皮膚は紫外線の影響に反応し、メラニンを生成する。ヒトメラニンは、メラノサイトによって合成される生体高分子である。メラノサイトは、皮膚の表皮に局在化している。メラノサイトは樹状突起分枝を有し、それらを介してケラチノサイトに接続している。メラニンはメラノサイトで生成された後、メラノソームによって隣接するケラチノサイトに移行する。メラニンの生成を誘発するため、ケラチノサイトはパラクリンシグナルを送る。従って、例えば、ケラチノサイトでは、UV−AおよびUV−Bの照射の結果、NOが生成し、それによってメラノサイト中でメラニンの生成が誘発される。メラノサイトはNOに反応して細胞増殖が亢進し、樹状突起の形成が促進され、メラニン産生が亢進する。さらに、メラノサイト中でのメラニン産生の調節は、ホルモン、α−MSHによる制御を受ける。
【0007】
局所的な色素沈着過度あるいは自然な皮膚色素沈着は、美容上の欠陥と認識されることが多い。従って、皮膚の色素沈着を減少させるために様々な方法が開発されてきた。
【0008】
最もよく使用される皮膚および毛髪用ライトナーの1つには、ハイドロキノンまたはハイドロキノン配糖体であるアルブチンがある。しかし、これらの化合物は、メラノサイトに対して細胞毒性作用があり、皮膚に対して刺激作用がある。別の選択肢は、ペースメーカー酵素であるチロシナーゼを阻害することによる、メラニン合成の阻害である。これに関して、とりわけ、コウジ酸およびコウジ酸誘導体、例えば、コウジ酸ジパルミテート、コウジ酸など、アゼライン酸、オキシレスベラトロール、リノレン酸、ビタミンCおよびアスコルビン酸誘導体(例えば、リン酸アスコルビルまたはパルミチン酸アスコルビルなど)などの物質が使用される。しかし、これらの物質は、感作性が高く、接触アレルギーを引き起こし、化粧品製剤中での化学的安定性が不十分であるか、または皮膚に対して不十分な効果しか有していない。
【0009】
さらに、メラノサイトから周囲のケラチノサイトへのメラニンの移行を防止する方法も知られている。従って、ケラチノサイトの表面のPAR2受容体を阻害し、その結果、メラニンの移行を低減するプロテアーゼ阻害剤が記載されている。大豆加水分解物およびナイアシンアミドは、このようにして色素沈着を減少させると言われている。
【0010】
同様に、例えば、甘草抽出物、桑の木の抽出物、またはウワウルシなどの様々な植物抽出物について皮膚を薄色化する効果が認められている。ここで、皮膚に対する一貫した有効性に関して、抽出物の標準化が十分に行われていないという問題がある。
【0011】
皮膚を薄色化するために、皮膚の再生を亢進することも記載されている。この処置には、とりわけ乳酸およびグリコール酸などのα−ヒドロキシ酸が使用される。この処置により皮膚の最上層が腐食し、メラニン含有角質細胞が剥離する。この方法の欠点は、皮膚の刺激が頻繁に起こることである。
【0012】
従って、さらに、それ自体、個々の皮膚タイプに十分適している、色素沈着過度を処置するための、および比較的面積の大きい色素沈着がある皮膚を単に化粧により薄色化するための、他の新規な改善された有効成分がますます必要とされている。
【0013】
国際公開第2008/085494号および国際公開第2009/068351号にペプチドPKEKが記載されている。それは、免疫調節特性および老化防止効果を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、十分な忍容性があり容易に製剤化できる、皮膚を薄色化する効果のあるケア有効成分を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
意外なことに、この目的は、望ましくない皮膚の色素沈着を抑制するテトラペプチドPKEK(配列番号1)の使用により達成される。
【0016】
従って、本発明は、ヒトの皮膚を薄色化するための、色素斑を漂白するための、および/または皮膚の色ムラを均一にするための、テトラペプチドPKEKまたはその誘導体の1つの使用を提供する。
【0017】
本発明は、さらに、製剤を製造するためのテトラペプチドPKEKまたはその誘導体の1つの使用、およびこれらの特定の製剤自体を提供する。
【0018】
本発明の利点は、テトラペプチド自体がさらに、例えば、皮膚を引き締める能力、皮膚のしわを目立たなくする能力、ならびに炎症を緩和する能力などの、皮膚を薄色化することに関して有利な他の特性を有することである。
【0019】
特記しない限り、記載するパーセンテージ(%)は全て質量パーセントである。
【0020】
テトラペプチド誘導体は、特に、アシル誘導体を意味するものと理解する;本発明に従って使用されるテトラペプチドをアシル誘導体化するために、オリゴペプチドのN末端および/またはC末端に、アミド結合により親油性アルキル鎖またはアリール基またはそのアルキルオキシもしくはアリールオキシもしくはアルキルアリールオキシ変種(variant)
を、エステル結合によりアルキルアルコールを、またはアミド結合によりNH基または1つのこのようなN−アルキル置換基を、結合させることができる。
【0021】
本発明によれば、アシル基は、好ましくは、アミノ酸配列のN末端に配置される。これは、任意選択により分枝状または直鎖状、長鎖または短鎖、飽和または不飽和基を有してもよく、非置換であっても、または1つ以上のヒドロキシル基、アミノ基、アシルアミノ基、硫酸基または硫化物基で置換されていてもよい。このようなN−アシル誘導体は、例えば、酢酸、ビオチン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オクタン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リノール酸、リノレン酸、リポ酸、オレイン酸、イソステアリン酸、エライジン酸、2−エチルヘキサン酸、ヤシ油脂肪酸、タルク脂肪酸、硬化タルク脂肪酸、パーム核油脂肪酸、ラノリン脂肪酸またはこれらの混合物で製造することができる。
【0022】
好ましいアシル基としては、置換または非置換アセチル基、パルミトイル基、ヘキサノイル基、ミリスチリル基、ビオチニル基およびオクタノイル基が挙げられる。
【0023】
ヒトの皮膚を薄色化するための、色素斑を漂白するための、および/または皮膚の色ムラを均一にするためのテトラペプチドPKEKまたはその誘導体の1つの本発明による使用は、特に非治療的化粧分野に属する。
【0024】
ヒトの皮膚を薄色化するための、色素斑を漂白するための、および/または皮膚の色ムラを均一にするための製剤の製造に、テトラペプチドPKEKまたはその誘導体の1つを有利に使用することができる。
【0025】
ヒトの皮膚を薄色化するための、色素斑を漂白するための、および/または皮膚の色ムラを均一にするための製剤は、明らかにこのような目的で製剤化されている製剤、好ましくは化粧品製剤である。これは、特に、皮膚を薄色化するための他の有効成分が含有されていることから分かる。これらは、特に、コウジ酸、コウジ酸誘導体、ナイアシン/ナイアシンアミド、α−ヒドロキシカルボン酸(乳酸など)、アルブチン、アルブチン誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体(リン酸アスコルビルナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウムおよびアスコルビルグルコシドなど)、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体、甘草中のグラブリジン、オレアノール酸、イオウ含有分子(例えば、グルタチオンもしくはシステインなど)、または、皮膚を薄色化するための他の合成もしくは天然有効成分であってもよい。
【0026】
本発明は、さらに、日焼け止め製剤を製造するためのテトラペプチドPKEKまたはその誘導体の1つの使用を提供する。
【0027】
この理由は、日焼け止め製剤が明らかに、同様に皮膚の着色を防止するように製造されたからであるが、ただこの場合、それは予防的なものである。
【0028】
特に、紫外線を吸収する物質が含有されていることから、明らかに日焼け止め製剤が製造されていることが分かる。このような物質の例を下記に列挙する。
【0029】
従って、本発明は、さらに、
a)有効量のテトラペプチドPKEKまたはその誘導体の1つ、
b)安全且つ有効な量の、皮膚漂白、脱色、日焼け防止、および紫外線遮断用有効成分からなる群から選択される少なくとも1種類の追加の有効成分、ならびに任意選択により、
c)皮膚科学的に許容される担体、
含む製剤、好ましくは化粧品製剤も提供する。
【0030】
「皮膚科学的に許容される(dermatologically acceptable)担体」という表現は、本明細書では、担体が角質組織に局所適用するのに適しており、良好な審美性を有し、本発明の成分および他の任意の望ましい成分と適合性があり、好ましくない安全性および毒性の問題を招かないことを意味する。
【0031】
担体は、多くの異なる形態で存在してもよい。例えば、本発明では、水中油型、油中水型、水中油中水型、およびシリコーン中水中油型乳濁液を含む乳濁液担体を使用することができる。
【0032】
本発明の製剤に関して、皮膚の漂白および脱色に好ましい有効成分は、コウジ酸、コウジ酸ジパルミテート、ナイアシン/ナイアシンアミド、α−ヒドロキシカルボン酸(乳酸など)、アルブチン、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体(リン酸アスコルビルナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、およびアスコルビルグルコシド、パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、およびアスコルビルグルコシドなど)、ハイドロキノン、甘草中のグラブリジン、オレアノール酸、グルタチオン、システイン、アゼライン酸、オキシレスベラトロール、リノレン酸、ジカルボン酸(二酸など)である。
【0033】
これらは、特に、本発明の製剤がヒトの皮膚を薄色化するための、色素斑を漂白するための製剤である場合に含有される。
【0034】
本発明の製剤に関して、日焼け防止および紫外線遮断用の好ましい有効成分は:
3−ベンジリデンカンファー、3−(4−メチルベンジリデン)カンファー、4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−エチルヘキシル、4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−エチルヘキシル、4−(ジメチルアミノ)安息香酸アミル、桂皮酸エステル、サリチル酸エステル、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ベンザルマロン酸エステル、トリアジン、2,4,6−トリアニリノ(p−カルボ−2’−エチル−1’−ヘキシルオキシ)−1,3,5−トリアジン、オクチルオチアゾン、プロパン−1,3−ジオン、1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、ベンゾフェノンのスルホン酸誘導体、3−ベンジリデンカンファーのスルホン酸誘導体、ベンゾイルメタン誘導体、微細分散した金属酸化物および塩(二酸化チタンまたは酸化亜鉛など)、2,2’−メチレンビス−{6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールからなる群から選択される。
【0035】
これらは、特に、本発明の製剤が日焼け止め製剤である場合に含有される。
【0036】
本発明によれば、皮膚の色ムラを均一にするための製剤である製剤が特に好ましい。これは、特に、それが、セルフタンニング剤を含む、好ましくはこれらからなる追加の成分d)を含むことを特徴とする。
【0037】
本発明によれば、これに関して適したセルフタンニング剤は、ジヒドロキシアセトンおよびエリトルロースからなる群から選択される。
【0038】
本発明の製剤は、製剤の全質量に基づいて、テトラペプチドまたはテトラペプチド誘導体を0.00001質量パーセント〜1質量パーセント、好ましくは0.00005質量パーセント〜0.5質量パーセント、特に好ましくは0.0001質量パーセント〜0.1質量パーセント含む。
【0039】
本発明の製剤は、例えば、
エモリエント剤、
乳濁液、
増粘剤/粘度調整剤/安定剤、
酸化防止剤、
ヒドロトロープ(またはポリオール)、
固形分および充填剤、
パール化剤、
脱臭剤および制汗有効成分、
昆虫忌避剤、
セルフタンニング剤、
防腐剤、
調整剤(conditioners)、
香料、
着色剤、
化粧有効成分、
ケア用添加剤、
過脂肪剤、
溶剤、
の群から選択される少なくとも1種類の追加の成分を含むことができる。
【0040】
個々の群の代表例として使用できる物質は当業者に既知であり、例えば、独国特許出願公開第102008001788.4号に開示されている。この特許出願は、参照により本明細書に援用され、従って、開示の一部を形成する。
【0041】
他の任意成分および使用されるこれらの成分の量に関しては、特に、当業者に既知の関連する便覧、例えば、K. Schrader, "Grundlagen und Rezepturen der Kosmetika" ["Principles and Formulations of Cosmetics"], 2nd edition, page 329 to 341, Huethig Buch Verlag Heidelbergを参照されたい。
【0042】
特定の添加剤の量は、目的の用途に左右される。
【0043】
特定の用途に用いる典型的な基本製剤(guide formulations)は、既知の従来技術であり、例えば、特定の基本材料および有効成分の製造業者のパンフレットに記載されている。これらの既存の製剤は、一般にそのまま採用することができる。しかし、必要に応じて、複雑化することなく簡単な実験により、適合および最適化するように所望の変更を行うことができる。
【0044】
本発明の製剤は、テトラペプチド自体に関して前述したように、ヒトの皮膚を薄色化するために、色素斑を漂白するために、および/または皮膚の色ムラを均一にするために有利に使用することができる。
【0045】
本発明は、さらに、ヒトの皮膚を薄色化する方法、色素斑を漂白する方法、および/または皮膚の色ムラを均一にする方法を提供し、本方法は、
A)本発明の製剤を提供する工程、
B)本発明の製剤を皮膚に少なくとも1日1回有効量塗布する工程、
を含む。
【0046】
下記に列挙する実施例で本発明を例として説明するが、本発明は実施例に記載の実施形態に限定されるものではなく、本発明の適用範囲は、詳細な説明全体および特許請求の範囲によって定まる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
以下の図は、実施例の一部を構成する。
【図1】パネル試験におけるメラニンの減少を示す図である。
【図2】色空間Lを示す図である。
【図3】異なる皮膚の色調の分類を示す図である。
【図4】試験製剤を6週間塗布した後のΔΔITAを示す図である。
【図5】皮膚の外見の均一性の改善(**p<0.01、PKEK/ビヒクルと比較)を示す図である。
【実施例】
【0048】
実施例1:in vivo薄色化(2ヶ月試験)
対象20人が、ペプチドを含まないまたは0.005%PKEKを含む試験製剤を8週間にわたりそれぞれ一方の前腕に塗布した。試験開始前および8週間後に、Mexameter probe (Courage & Khazaka, Cologne)を使用して、前腕の内側と外側の両方でメラニン濃度を測定した。
【0049】
皮膚のメラニン濃度の測定は吸収/反射の原理に基づく。Mexameter probeは、皮膚のメラニンの吸収極大と一致する特定の波長の光を照射する。皮膚によって反射される光を測定し、照射した光の量と比較する。得られる測定値を指数として記載する。
【0050】
【表1】

【0051】
図1は、出発値と比較した8週間後のメラニン値の差を示す。溶媒と比較して、前腕の内側と外側の両方で皮膚の褐色度の顕しい低下が認められる。
【0052】
実施例2:例示的製剤
例示的製剤を下記に記載する。記載するパーセンテージは質量パーセンテージであり、例示的製剤の全質量を基準にする。製剤の製造には、当業者に既知の通常の製剤化方法を使用した。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
【表7】

【0059】
【表8】

【0060】
【表9】

【0061】
【表10】

【0062】
【表11】

【0063】
【表12】

【0064】
【表13】

【0065】
【表14】

【0066】
【表15】

【0067】
【表16】

【0068】
【表17】

【0069】
実施例3:顔の老人性色素斑の減少
老人性色素斑(ラテン語:Lentigines seniles, Lentigines solares)は皮膚のしみである。これらは、紫外線、例えば、日光に多量に慢性的に暴露されることによって生じる。この結果、主に、手の裏側、前腕、および顔の皮膚の領域でメラニン産生メラノサイトが増加し、局所的で境界がはっきりした薄茶色のしみ(「斑点」)が生じる。
【0070】
このような老人性色素斑を定量化するために、皮膚の色の測定を行う。このために、色彩色差計を使用する。色彩色差計は色値L、aおよびbを測定する。これらは三次元色空間を表し、それによってどの知覚色も表すことができる(図2参照)。
【0071】
軸上で反対色の緑色と赤色が互いに向かい合っており、b軸上で反対色の青色と黄色が互いに向かい合っている。軸Lは明度を与える。端点は黒色(L=0)と白色(L=100)である。
【0072】
皮膚の色調を分類できるように、パラメータLおよびbが必要である。皮膚の色調ITA°は度で与えられ、次式を使用して算出される。
ITA°=[逆正接((L−50)/b)]180/3.14159
皮膚の色調は、これに関して、次のように分類される(図3参照):
ITA°>55° 非常に色白
55°>ITA°>41° 色白
41°>ITA°>28° 中間
28°>ITA°>10° 黄褐色(tanned)。
【0073】
また、これに関して:COLIPA Guideline: Guideline for the colometric determination of skin colour typing and prediction of the minimal erythemal dose (MED) without UV exposureも参照されたい。
【0074】
次の試験の目的は、テトラペプチドPKEKが老人性色素斑を明らかに減少できるかどうかを調べることである。
【0075】
試験は、片側試験として行った。顔に明らかな老人性色素斑がある30〜70才の女性40人が選ばれた。各人に2種類の試験製剤を投与し、一方は顔の右半分に、他方は顔の左半分に投与した。これらの試験製剤を1日2回、6週間にわたって塗布しなければならなかった。
【0076】
【表18】

【0077】
試験の開始前および6週間後、老人性色素斑の真上の皮膚の色と隣接領域の色を測定した。これは、CR 400 chromameter(ミノルタ(Minolta)製)を使用して行った。皮膚の色調ITA°を老人性色素斑(ITA°)と隣接領域(ITA°)の両方について算出し、差を算出した:
ΔITA°=ITA°−ITA°
ΔITA°が大きいほど、老人性色素斑がはっきりと見える。試験製剤の塗布前と6週間後のΔITA°の差を算出した(ΔΔITA):
ΔΔITA=ΔITA°開始−ΔITA°6週
以下の場合に老人性色素斑の明らかな減少が見られた:
ΔITA°開始>ΔITA°6週
⇒ΔITA°開始−ΔITA°6週>0
⇒ΔΔITA>0
【0078】
図4は、試験製剤を6週間塗布した後のΔΔITAの値を示す。
【0079】
PKEK自体とリン酸アスコルビルナトリウムは両方とも老人性色素斑を明らかに減少させた。これに関して、さらにPKEKの方がリン酸アスコルビルナトリウムよりも著しく減少させた。これは、例えば、紫外線により生じた皮膚に対する悪影響を相殺することができる有効成分が存在しなかったことによるものと考えられる。PKEKをリン酸アスコルビルナトリウムと組み合わせることによって、化粧品製剤の有効性を相乗的に向上することができた。
【0080】
実施例4:皮膚の色が濃い人々の皮膚の外見の改善
次の試験では、皮膚の色が濃い女性(FitzpatrickタイプVI−V)を使用した。Fitzpatrickスケールを使用して様々な皮膚タイプに分類した:
【0081】
【表19】

【0082】
http://dermatology.about.com/od/cosmeticprocedure/a/fitzpatrick.htmも比較されたい。
【0083】
それぞれ、女性の対象25人に顔用クリームを投与したが、それはテトラペプチドPKEKを含むものか、または有効成分を含まないもの(溶媒)のいずれかであった。対象は、この製剤を12週間、1日2回顔全体に塗布しなければならなかった。試験開始前と2、4、8および12週間後に、専門科が皮膚の外見の均一性を目視評価した。
【0084】
皮膚の外見を5段階で評価した:
5=コントラストなし、皮膚の外見は非常に均一である
4=コントラストが僅かであり、皮膚の外見に僅かなムラがある
3=コントラストが中程度であり、皮膚の外見にムラがある
2=コントラストが高く、皮膚の外見にムラが多い
1=コントラストが非常に高く、皮膚の外見にムラが非常に多い
【0085】
下記の表に試験製剤の組成を記載する:
【0086】
【表20】

【0087】
図5から、最初の8週間以内に、対象の皮膚の外見は両方の試験製剤で明らかに改善され、テトラペプチドPKEKによる改善の方が溶媒を用いた場合より経時でますます著しくなったことが分かる。12週間後、溶媒ではそれ以上の改善が認められないが、PKEKは皮膚の外見をさらに明らかに改善する。
【0088】
配列リスト
<110> Evonik Goldschmidt GmbH
<120> 皮膚を薄色化するためのテトラペプチド
<130> 200900345
<160> 1
<170> PatentIn version 3.4
<210> 1
<211> 4
<212> PRT
<213> 人工
<220>
<223> 人工ペプチド
<400> 1
Pro Lys Glu Lys


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの皮膚を薄色化するための、色素斑を漂白するための、および/または皮膚の色ムラを均一にするための、テトラペプチドPKEKまたはその誘導体の1つの使用。
【請求項2】
ヒトの皮膚を薄色化するための、色素斑を漂白するための、および/または皮膚の色ムラを均一にするための製剤を製造するための、テトラペプチドPKEKまたはその誘導体の1つの使用。
【請求項3】
日焼け止め製剤を製造するための、テトラペプチドPKEKまたはその誘導体の1つの使用。
【請求項4】
a)有効量のテトラペプチドPKEKまたはその誘導体の1つ、
b)安全且つ有効な量の、皮膚漂白、脱色、日焼け防止、および紫外線遮断用の有効成分からなる群から選択される少なくとも1種類の追加の有効成分、ならびに任意選択により、
c)皮膚科学的に許容される担体、
を含む製剤。
【請求項5】
前記皮膚漂白用の有効成分または前記脱色用の有効成分が、コウジ酸およびそのエステル、ナイアシン/ナイアシンアミド、乳酸などのα−ヒドロキシカルボン酸、アルブチン、アスコルビン酸およびそのエステル、ハイドロキノン、甘草中のグラブリジン、オキシレスベラトロールおよびその誘導体、リノレン酸およびそのエステルからなる群から選択されることを特徴とする、ヒトの皮膚を薄色化するためのまたは色素斑を漂白するための請求項4に記載の化粧品製剤。
【請求項6】
前記日焼け防止用の有効成分または前記紫外線遮断用の有効成分が、3−ベンジリデンカンファー、3−(4−メチルベンジリデン)カンファー、4−(ジメチルアミノ)安息香酸2−エチルヘキシル、4−(ジメチルアミノ)安息香酸アミル、桂皮酸エステル、サリチル酸エステル、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ベンザルマロン酸エステル、トリアジン、2,4,6−トリアニリノ(p−カルボ−2’−エチル−1’−ヘキシルオキシ)−1,3,5−トリアジン、オクチルオチアゾン、プロパン−1,3−ジオン、1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、ベンゾフェノンのスルホン酸誘導体、3−ベンジリデンカンファーのスルホン酸誘導体、ベンゾイルメタン誘導体、二酸化チタンまたは酸化亜鉛などの微細分散した金属酸化物および塩、2,2’−メチレンビス−{6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の日焼け止め製剤。
【請求項7】
追加の成分のd)セルフタンニング剤を含むことを特徴とする、皮膚の色ムラを均一にするための請求項4に記載の化粧品製剤。
【請求項8】
ヒトの皮膚を薄色化するための、色素斑を漂白するための、および/または皮膚の色ムラを均一にするための、請求項4〜7のいずれか1項に記載の製剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−510809(P2013−510809A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538263(P2012−538263)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065588
【国際公開番号】WO2011/061024
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】