説明

皮膚刺激性の無い新規殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症剤

【課題】シャンプーや毛髪染めによって生じる美容師の手荒れの防止と治療効果を有する殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症剤を提供すること。
【解決手段】この発明に係る新規殺菌・抗カビ・保湿剤はグリセリンと、エチルアルコールとカテキンとグリセリン脂肪酸エステルC10とグアイアズレンスルホン酸塩からなる。本発明の新規殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症剤は美容師の手荒れに対して著功するのみでなく多くの細菌・カビに起因する疾病や状況に対して特異な効果を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症性を備えた新規殺菌抗カビ保湿剤に関するものである。
本発明者は先に、美容師の手荒れに対して、荒れた手に塗布することによって劇的な予防および治療効果を発揮する新規殺菌・抗カビ・保湿剤を出願した。本発明では前記殺菌・抗カビ・保湿剤に対して抗炎症作用を付加した新規殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症剤である。
【背景技術】
【0002】
本発明者は長年に渡って殺菌抗カビ剤の開発を行い市場に提供してきた。例えば、本発明者の開発したパワーアンチはアルコール成分を使用せずにグレープフルーツ種子抽出物とポリリジンを含む成分(国際出願番号PCT/JP99/04642)から成っていてすべての成分が食品添加物からなり、子供の遊び場である砂場の除菌や、国際線の機内食の除菌等に継続的に使用されている。また本発明者の別発明として、食品工場においてアルコールによる手あれを防ぐ目的で、アルコール殺菌剤に、通常より高濃度である4%にグリセリンを含ませたアルコール性除菌剤「つやはんど」(特願2006−337308)も開発した。「つやはんど」の市場への投入によって、使用食品工場は、アルコールに起因する手あれを防ぐことができ、これに伴って、手あれに起因する黄色ブドウ球菌による食品工場の汚染を防ぐことができた。
【0003】
以上の長年にわたる殺菌・抗カビあるいは手あれ防止剤開発の経験に基づき、今回美容師の手あれに効果のある殺菌・抗カビ・保湿剤の開発を試みた。美容師の手あれは美容師のほとんどが経験するもので、科学技術の進んだ現在にあって、これまで何ら対策ができてないことは非常に不思議であるが、それだけ解決が困難な課題と言える。原因はシャンプー、髪染め等に起因して生じる。防止もしくは治療するためには、強い殺菌・抗カビに加えて保湿性が必要で、さらに出血している皮膚に塗布しても痛くないほどの低刺激性が要求される。とくにこれまで強い殺菌性に保湿性を加えた商品は知られていない。従ってこれら全ての要件を満たしたものは、現在全く知られていない。
【0004】
ところで、一般に、殺菌剤および又は抗カビ剤としては多くの種類が知られている。前記課題を意識して以下に背景技術を概要すると。
まず、次亜塩素酸が殺菌・抗カビ剤として知られている。次亜塩素酸は濃度の高いものはカビキラーとして知られ風呂場やトイレ、台所のカビ除去に、低濃度のものはピューラックスなどとして、水で500から数千倍に希釈されて食品工場や無菌動物の飼育室での殺菌など多くの場所で用いられている。これらは頻繁に使われているが人体への発がん性、皮膚刺激性、さらに強い刺激臭があり、特にカビキラー噴霧後は強い刺激臭のためしばらく近づくこともできない。しかも臭いが消えて無くなった後は効果も消えている。次亜塩素酸の臭いが充満した美容院ではだれも近づかないであろう。次亜塩素酸類に保湿性は無い。
【0005】
次に70%前後のアルコール製剤も良く使われている。アルコールに起因する皮膚への強い刺激性、可燃性であること、効果は一時的で数分間のみで、揮発後の効果はない。保湿性も無い。
【0006】
塩化ベンザルコニウム等の逆性石鹸も良く消毒剤として病院などで用いられているが、白鮮菌を除去できるほどの効果はない、美容師の手あれ防止に使えるほど強力ではない。保湿性の加わったものは無い。
【0007】
他にも椰子の実に含まれるグリセリン脂肪酸エステルC10をアルコール製剤に混合して効果を高めているアルコール製剤が知られている。しかしグリセリン脂肪酸エステルC10は単独で使われた例はなく、高濃度アルコール(50%以上)に溶解したものしか使われていない。当然に保湿性を付加したものは無い。
【0008】
また他の殺菌・抗カビ成分としてはカテキンが知られている。カテキンは、皮膚刺激もなく持続性もあり、大腸菌や多くの細菌に強い殺菌作用を発揮するが、一般細菌に対しては効果が少ない。細菌への殺菌性に大きなムラがある。単独で美容師の手あれに効果は期待できない。当然に保湿性も無い。
【0009】
また保湿性成分については、グリセリンが知られている、刺激性も無い、しかし強い殺菌性・抗カビ性は無い。ヒアルロン酸やコラーゲンなども皮膚の保湿剤として知られているが殺菌性はない。
以上に基づいて、発明者等は美容師の手あれに効果の期待できる皮膚刺激性の無い殺菌・抗カビ・保湿剤を発明し出願を行った。
先の発明により、初めて多くの美容師の手荒れに対して治療効果が得られた。しかしながら、美容師の中には炎症を伴った症例もある。この場合には治療効果の出現に遅れを生じていた。このため前発明に抗炎症作用を付加することは望ましいことであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、先に出願した美容師の手荒れ障害に効果を発揮できる皮膚刺激性が無くて強い殺菌・抗カビ・保湿性を有する殺菌・抗カビ・保湿剤に抗炎症作用を付加したものを開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
先の殺菌・抗カビ・保湿剤は、水溶性殺菌成分と油性殺菌成分を、界面活性剤を用いずに溶解したという特徴をもつ。このため、前記溶液が非常に不安定で、新たに抗炎症成分を添加しようとしてもほとんどの成分は、添加することによって溶液全体の油性成分と水溶性成分へ分離がおきてしまう。このため多くの成分は混合できなかった。しかしながらグアイアズレンスルホン酸塩のみが前記分離を起こすことなく添加でき本発明を完成することが出来た。
本発明はグリセリンとエチルアルコールとカテキンとグリセリン脂肪酸エステルと水とグアイアズレンスルホン酸塩からなる。
その好ましい態様として、40%から85%の高濃度グリセリンにエチルアルコールを1から15%に混合し、次にカテキンを0.001から5%のカテキンを含み、0.1から2%のグリセリン脂肪酸エステルC10と0.005から0.5%を含む混合溶液からなる。
【0012】
本発明品は、水に溶けないグリセリン脂肪酸エステルC10をエチルアルコールに溶解し、且つ高濃度グリセリンを添加して、アルコールの皮膚刺激が抑制できる程度にエチルアルコール濃度を下げる。さらに高濃度のグリセリンは、エチルアルコールの濃度をさげた影響によるグリセリン脂肪酸エステルC10の溶解性低下を補完する。ここにカテキンを前記濃度に添加して、油性で強い殺菌性・抗カビ性をもった脂肪酸グリセリンエステルC10とお茶に含まれる水溶性の殺菌・抗カビ性をもったカテキンを混合する。
最後にグアイアズレンスルホン酸塩を添加する。
【0013】
カテキンはカテキンを含む茶葉エキスでも良い。こうして全く性質の異なった殺菌・抗カビ剤を同居させたことによって、極めて抗菌スペクトルが広く、ほとんどの細菌からカビ類にいたるまで殺菌・殺カビ効果を発揮し、殺菌・殺カビ効果の持続性も長く数時間以上の持続性を有していた。しかも高濃度グリセリンは痛んだ皮膚に対して十分な保湿性を発揮し、且つ高濃度グリセリンの存在によって出血状態にある患部に対しても刺激性を持たないほどに低刺激性であった。グアイアズレンスルホン酸塩は炎症部位に非常に効果的に作用した。こうした全ての成分の存在とその濃度のバランスによって、これまで長い間不可能であったひどい炎症を含む美容師の手荒れに対しても充分に有効な殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症剤を提供することができた。
【発明の効果】
【0014】
皮膚に対して刺激性がなく、強い殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症性を発揮する本新規殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症剤は、当初の美容師の手荒れ防止のみに限らず多くの細菌やカビに起因する疾病にあるいは状況に対して効果を発揮する。それらには、一般の台所の家事に起因する手あれ治療、肌荒れ治療、アトピー患者の皮膚治療、水虫治療、虫歯菌の除去、口臭除去、にきびの治療、頭皮のフケかゆみ除去、加齢臭の除去、歯磨き液等があげられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
その好ましい態様として、40%から85%で好ましくは50%から70%の高濃度グリセリンにエチルアルコールを1から15%好ましくは3から7%に混合し、次にカテキンを0.001から5%好ましくは0.01から0.5%のカテキンを含み、0.1から2%好ましくは0.2から1%のグリセリン脂肪酸エステルC10を含み、グアイアズレンスホン酸塩の0.001から0.5%好ましくは0.01から0.1%からなる新規殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症剤である。ときに前記成分にセルロースガムを増粘剤として添加することもある。
【0016】
繰り返しになるが、各成分の役割は、
1)グリセリンが保湿性とエチルアルコールによる皮膚刺激性の抑制、そしてグリセリン 脂肪酸エステルC10の溶解性の促進、患部皮膚の毛細血管の血流増大である。2) エチルアルコールは、油性のグリセリン脂肪酸エステルC10を水溶液に溶解するた めである。これによって水溶性のカテキンと混合する。3)カテキンは、水溶性の殺 菌作用と抗カビ作用であってその作用スペクトルは油性のグリセリン脂肪酸エステル の殺菌・抗カビ作用スペクトルと補完しあう性質のものである。4)グリセリン脂肪 酸エステルC10は油性の強い殺菌・抗カビ作用である。5)グアイアズレンスルホ ンサン塩は抗炎症作用をもつ。
【実施例1】
【0017】
下記成分を殺菌・抗カビ・保湿剤として調整した。
グリセリン 68% (v/v)
水 16.5%(v/v)
茶葉エキス 10% (v/v)
エチルアルコール 5% (v/v)
グリセリン脂肪酸エステル 0.5%(v/v)
セルロースガム 0.5%(w/v)
グアイアズレンスルホンサンナトリウム
0.05%(w/v)
【0018】
上記、組成物は薄グリーンで弱いお茶の香りと甘い味のする粘張性のある液体である。本組成の新規殺菌・抗カビ・保湿剤は美容師の手荒れに対して強力な治癒力を発揮した。手荒れのある美容師120名について効果を確認したところ1から2週間で100名が有効であった。さらに1から2ケ月後には95名が治癒した。
【0019】
皮膚刺激が無く新規の殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症剤の殺菌・抗カビ作用は安全性が高く強力で、足の白癬菌つまり水虫の部位に塗布すると数日で、水虫が消滅し患部は何ら副作用を認めなかった。この効果も、被験者10名中10名が1週間で完全治癒を示した。さらに頭皮のフケ、かゆみもシャンプーに起因する炎症部位の細菌繁殖と考えられるので、試験したところ、7名中7名において数日でフケかゆみは完全消失した。とくに驚いたことに30年近くにわたってフケかゆみが治らなかった患者が数日で完治し、その後は前記を塗布しなくても再びフケかゆみを発症しなかった。
グアイアズレンスルホン酸塩を含まないものではヒトの唇の炎症に効果がなかったが、本新規の殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症剤を塗布すると数日以内に治癒した。
【0020】
子供のアトピー患者に対しても、患部は、黄色ブドウ球菌等の細菌が多量に増殖しているので塗布したところ、症状が消失した。現在5名の子供アトピー患者に塗布し5名とも治癒した。他にも歯磨き粉のようにもちいて歯磨きを行うと口臭がなくなり口内のスッキリ感がえられた。また「にきび」に対しても患部に塗布すると一日でニキビの消失があった。
このように皮膚刺激が無く、安全性が高く、強い殺菌性と抗カビ性で且つ保湿性・抗炎症性を有する新規殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症剤は、当初の目的であった美容師の手荒れ防止に対してだけでなく、さまざまな細菌やカビに起因する状況に対して有効であった。上記に加えて例えば高齢男性の加齢臭に対しても薄く体に塗布することによって除去できた。
【0021】
その作用は、油性の殺菌・抗カビ成分の脂肪酸グリセリンエステルとチャ葉に含まれる水溶性のカテキンの殺菌/抗カビ作用の相乗作用に加えて高濃度のグリセリンが保有する肌への保湿作用さらに同高濃度グリセリンの皮膚刺激抑制作用とグアイアズレンスルホン酸塩の抗炎症作用によって実現した。
【産業上の利用可能性】
【0022】
皮膚に対して刺激性がなく、食品添加物のみで製造でき、強い殺菌・抗カビ・保湿性を発揮する本新規殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症剤は、以外にもこれまで知られていなかったので当初の美容師の手荒れ防止のみに限らず多くの細菌やカビに起因する疾病に利用可能である。それらには、一般の台所の家事に起因する手あれ治療、肌荒れ治療、アトピー患者の皮膚治療、水虫治療、虫歯菌の除去、口臭除去、にきびの治療、頭皮のフケかゆみ除去、加齢臭の除去、歯磨き液等があげられる。さらには刺激臭がなく安全性もたかいので次亜塩素酸からなるカビキラーやピューラックス等の風呂、台所、トイレ等への利用も可能であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40%以上85%以下で好ましくは50%から70%の高濃度グリセリンにエチルアルコールを1から15%好ましくは3から7%に混合し、前記グリセリンとエチルアルコールの混合液を用いて作成した油性のグリセリン脂肪酸エステルと水溶性のカテキンならびにグアイアズレンスルホン酸塩を添加した新規殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症剤。
【請求項2】
40%以上85%以下で好ましくは50%から70%の高濃度グリセリンにエチルアルコールを1から15%好ましくは3から7%に混合し、次にカテキンを0.001から1%好ましくは0.01から0.5%のカテキンをふくみ、最後に0.1から2%好ましくは0.2から1%のグリセリン脂肪酸エステルC10を含み、さらにグアイアズレンスホン酸塩を0.001から0.5%、好ましくは0.005から0.1%を含む新規殺菌・抗カビ・保湿・抗炎症剤。
【請求項3】
[請求項1]記載の美容師の手荒れ防止・治療剤
【請求項4】
[請求項1]記載の新規歯磨き
【請求項5】
[請求項1]記載の家庭用手あれ防止剤
【請求項6】
[請求項1]記載の手術後の消毒剤
【請求項7】
[請求項1]記載のアトピー治療剤
【請求項8】
[請求項1]記載の新規美容師向け化粧水
【請求項9】
[請求項1]記載の水虫治療剤
【請求項10】
[請求項1]記載の爪水虫治療剤
【請求項11】
[請求項1]記載の唇の腫れ治療剤
【請求項12】
[請求項1]記載の乾燥肌のかゆみ治療剤
【請求項13】
[請求項1]記載の痔治療剤

【公開番号】特開2012−224609(P2012−224609A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106707(P2011−106707)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(304057380)株式会社バイオアーク (2)
【Fターム(参考)】