説明

皮膚化粧料

【課題】経時での保湿効果が高く、過酷環境下においても効果の持続性に優れた皮膚化粧料の提供。
【解決手段】(A)一般式(1)
1a2b3cSiO(4-a-b-c)/2 (1)(R1はC1〜30のアルキル基等、R2は一般式(3)−Q−O−X (3)(Qはエーテル結合及び/又はエステル結合を有していてもよいC3〜20の二価炭化水素基、Xは多価アルコール置換炭化水素基)、1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5)で表される多価アルコール変性シリコーン、(B)オルガノポリシロキサンセグメントの末端若しくは側鎖のケイ素原子の少なくとも1個に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して下記式(5)で表される繰り返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)が結合してなるシリコーン系ポリマー


(RはH、C1〜22のアルキル基等、xは2又は3)を含有する皮膚化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時での保湿効果が高く、過酷環境下においても効果の持続性に優れた皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の皮膚は常に外界から色々な刺激や環境の変化を受け、肌荒れや乾燥を起こしやすい状態にさらされている。そこで、皮膚の恒常性を維持し、皮膚に潤いを与え、乾燥等から肌を守るために、保湿化粧料の研究開発が行なわれてきた。従来、保湿化粧料には、グリセリン等の水溶性多価アルコール、ムコ多糖類等の水溶性高分子、アミノ酸等の天然保湿因子、セラミド等の細胞間脂質などの保湿剤が配合されているが、十分な保湿効果を得るためには多量配合を余儀なくされ、使用感上必ずしも好ましいものではなかったり、適用製剤に制限を受けるなど、保湿化粧料としての効果を十分に発揮できない場合があった。
【0003】
保湿化粧料の使用感を良くするため、ローションタイプのもの(特許文献1)や、べたつきの少ない保湿剤(特許文献2、特許文献3)が検討されているが、保湿効果の持続性では未だ不十分であった。また、保湿剤を多量に配合できる製剤(特許文献4)や、高分子を利用した保湿能の持続性を高めた製剤(特許文献5、特許文献6)も検討されているが、これらは製剤の湿度変化による水分蒸発抑制能や耐水性に問題があり、実際の保湿化粧料の使用環境において、十分な保湿効果を得ることはできなかった。
【特許文献1】特開平11−292734号公報
【特許文献2】特開2000−204015号公報
【特許文献3】特開2002−60335号公報
【特許文献4】特開平7−149621号公報
【特許文献5】特表2006−509718号公報
【特許文献6】特開平11−29432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、経時での保湿効果が高く、過酷環境下においても効果の持続性に優れた皮膚化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の多価アルコール変性シリコーンと特定のシリコーン系ポリマーを組み合わせて用いれば、塗布直後だけでなく経時において高い保湿効果が持続し、その高い効果は乾燥を引き起こしやすい環境下でも発揮され、また耐水面でも優れた皮膚化粧料が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)次の一般式(1)
1a2b3cSiO(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素置換アルキル基、アミノ置換アルキル基、カルボキシル置換アルキル基又は一般式(2)
−Cd2d−O−(C24O)e(C36O)f4 (2)
(式中、R4は炭素数4〜30の炭化水素基又はR5−(CO)−で表される有機基(R5は炭素数1〜30の炭化水素基を示す)を示し、d、e及びfはそれぞれ0≦d≦15、0≦e≦50、0≦f≦50の数を示す)で表される有機基を示し、R2は一般式(3)
−Q−O−X (3)
(式中、Qはエーテル結合及び/又はエステル結合を有していてもよい炭素数3〜20の二価炭化水素基を示し、Xはヒドロキシ基を少なくとも2個有する多価アルコール置換炭化水素基を示す)を示し、R3は下記一般式(4)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1は同一又は異なって、前記と同じ意味を示し、g及びhはそれぞれ1≦g≦5、0≦h≦500の数を示す)で表されるオルガノシロキサン残基を示し、a、b及びcはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5を示す)
で表される多価アルコール変性シリコーン、
(B)オルガノポリシロキサンセグメントの末端若しくは側鎖のケイ素原子の少なくとも1個に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して下記式(5)で表される繰り返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)が結合してなるシリコーン系ポリマー
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、xは2又は3の数を示す)
を含有する皮膚化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の皮膚化粧料は、塗布直後だけでなく経時において高い保湿効果が持続し、その高い効果は乾燥を引き起こしやすい環境下でも発揮され、また耐水面でも優れたものである。さらに、一般に疎水性粉体が化粧料中に配合されると、疎水性粉体特有のかさつき(きしみ)感のため保湿効果は弱まってしまうが、本発明の皮膚化粧料は優れた保湿効果が維持され、サンスクリーンのUV防御効果やメイクの仕上がりの持続性も高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いる成分(A)の多価アルコール変性シリコーンは、前記一般式(1)で表されるものである。
式中、R1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;トリフロロプロピル基、ヘプタデカフロロデシル基等のフッ素置換アルキル基などを挙げることができる。さらに、3−アミノプロピル基、3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基等のアミノ置換アルキル基、3−カルボキシプロピル基等のカルボキシル置換アルキル基などが挙げられる。
【0013】
また、R1は一般式(2)
−Cd2d−O−(C24O)e(C36O)f4 (2)
で表される有機基であってもよい。ここで、R4は炭素数4〜30の炭化水素基又はR5−(CO)−で表される有機基であって、R5は炭素数1〜30の炭化水素基である。d、e及びfはそれぞれ0≦d≦15、0≦e≦50、0≦f≦50の数である。このR1の一部はアルコール残基又はアルケニルエーテル付加物残基であり、具体例としては、d=0の時:−O−(C24O)e(C36O)f4が挙げられる。この場合、e=0、f=0であれば炭素数4〜30のアルコキシ基、例えばブトキシ基等の低級アルコキシ基からオレイロキシ基、ステアロキシ基等の高級アルコキシ基が挙げられ、あるいは酢酸、乳酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、ベヘニル酸等の脂肪酸残基が挙げられる。また、e、f>0であれば、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物(末端は水酸基)のアルコール残基となる。
【0014】
dが1以上、e=0、f=0の場合は、特にdが3、5又は11が好ましく、この場合はアリルエーテル、ペンテニルエーテル、ウンデセニルエーテル残基であり、R4の置換基によって、例えばアリルステアリルエーテル残基、ペンテニルベヘニルエーテル残基、ウンデセニルオレイルエーテル残基等が挙げられる。e又はfが0でない場合は、ポリオキシアルキレンを介してアルコキシ基やエステル基が存在することとなる。ここで、e、fが何であれ、dが0のときは耐加水分解性に劣る場合があり、dが15以上であると油臭が強いため、3〜5であることが好ましい。特に、R1全体の50%以上がメチル基であることが好ましく、さらに好ましくは70%以上がメチル基であり、100%ということもあり得る。
【0015】
また、R2は下記一般式(3)を示す。
−Q−O−X (3)
ここで、Qはエーテル結合及び/又はエステル結合を有していてもよい炭素数3〜20の二価炭化水素基を示し、−(CH22−、−(CH23−、−CH2CH(CH3)CH2−、−(CH24−、−(CH25−、−(CH26−、−(CH27−、−(CH28−、−(CH22−CH(CH2CH2CH3)−、−CH2−CH(CH2CH3)−、−(CH23−O−(CH22−、−(CH23−O−(CH22−O−(CH22−、−(CH23−O−CH2CH(CH3)−、−CH2−CH(CH3)−COO(CH22−等を例示することができる。
Xは、ヒドロキシ基を少なくとも2個有する多価アルコール置換炭化水素基であり、好ましくは、グリセリン、ポリグリセリン又は糖誘導体が置換した炭化水素基である。
【0016】
グリセリン置換炭化水素基としては、下式の化合物が挙げられ、式中のQは式(3)中のQと同様であり、式中のsおよびtは1〜20の整数である。また、下記化合物中のヒドロキシ基の一部がアルコキシ基又はエステル基で置換されていてもよい。
【0017】
【化3】

【0018】
単糖、オリゴ糖又は多糖から誘導される糖残基としては、例えばグリコシル基、マンノシル基、ガラクトシル基、リボシル基、アラビノシル基、キシロシル基、フルクトシル基等の単糖基;マルトシル基、セロビオシル基、ラクトシル基、マルトトリオシル基等のオリゴ糖基;セルロース、澱粉等の多糖基が例示され、単糖基及びオリゴ糖基が好ましい。
【0019】
3は前記一般式(4)で表されるオルガノポリシロキサン残基である。ここで、式中のgは1〜5の整数であって、特にビニルシロキシ基とSiH基との反応から合成する場合、gは2である。hは0〜500であり、好ましくは1〜50である。hが500より大きいと主鎖との反応性が悪くなるなどの問題が起こることがある。上記(4)のオルガノポリシロキサン残基は、公知の方法によりジビニルテトラメチルジシロキサンとヘキサメチルジシロキサンおよびオクタメチルシクロテトラシロキサンとの平衡化反応によって片末端ビニルシロキサンを合成することが可能であり、さらに5配位ケイ素錯体触媒やアニオン重合触媒によるヘキサメチルシクロトリシロキサンの開環重合法によって片末端封鎖率を向上させたシリコーン化合物を合成することができる。
【0020】
aは1.0〜2.5、好ましくは1.2〜2.3であり、この範囲内であれば、油剤との相溶性や、親水性の点から、安定な組成物を得ることができる。bは0.001〜1.5、好ましくは0.05〜1.0であり、この範囲内であれば、親水性などの点から、安定な組成物を得ることができる。cは0.001〜1.5、好ましくは0.05〜1.0であり、この範囲内であれば、シリコーン油との相溶性や、親水性の点から安定な組成物を得ることができる。
【0021】
本発明で用いる多価アルコール変性シリコーンは、例えば、特開2002-179798号公報に記載の方法に従って、製造することができる。
多価アルコール変性シリコーンの重量平均分子量は特に制限されないが、500〜200000、特に1000〜100000が好ましい。
成分(A)としては、特にポリグリセリン変性シリコーンが好ましい。
【0022】
また、成分(A)の多価アルコール変性シリコーンとしては、例えば、ポリグリセリル−3−ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(例:KF−6104、信越化学工業社)、ラウリルポリグリセリル−3−ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(例:KF−6105、信越化学工業社)、ポリグリセリル−3−ジシロキサンジメチコン(例:KF−6100、信越化学工業社)、(ジメチコン/ポリグリセリン−3)クロスポリマー(例:KSG−710、信越化学工業社)、(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン−3)クロスポリマー(例:KSG−820、信越化学工業社)等の市販品を使用することができる。
【0023】
成分(A)の多価アルコール変性シリコーンは、1種以上を用いることができ、全組成中に0.05〜20質量%、特に0.1〜10質量%含有するのが、良好な使用感と高い保湿効果が得られるので好ましい。
【0024】
本発明で用いる成分(B)のシリコーン系ポリマーは、オルガノポリシロキサンセグメントの末端又は側鎖のケイ素原子の少なくとも1個に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して上記式(5)で表される繰り返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)が結合してなる共重合体であり、常温・常圧では粘性液体状又は固体状を呈する物質である。
【0025】
オルガノポリシロキサンセグメントの末端又は側鎖のケイ素原子の少なくとも1個に、2−置換オキサゾリン類または2−置換オキサジン類の開環重合によって得られる、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して上記式(5)で表される繰り返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)が結合してなる共重合体は、該ポリ(N−アシルアルキレンイミン)のセグメントとオルガノポリシロキサンのセグメントとの重量比が1/50〜20/1、特に1/40〜2/1で、分子量が5000〜500,000、特に1,000〜300,000のものが、本発明において高い効果を得る上で好ましい。
【0026】
式(5)中、Rで示されるシクロアルキル基としては炭素数3〜6のものが挙げられ;アラルキル基としてはフェニルアルキル、ナフチルアルキル等が挙げられ;アリール基としてはフェニル、ナフチル、アルキル置換フェニル等が挙げられる。
前記オルガノポリシロキサンのセグメントとポリ(N−アシルアルキレンイミン)のセグメントとの結合において介在するヘテロ原子を含むアルキレン基としては、窒素原子、酸素原子及び/又はイオウ原子を1〜3個含む炭素数2〜20のアルキレン基が挙げられ、その具体例としては、下記式で表される基が挙げられる。
【0027】
【化4】

【0028】
かかるシリコーン系ポリマーの好ましい例としては、ポリ(N−ホルミルエチレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N−n−オクタノイルエチレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N−n−ドデカノイルエチレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N−ホルミルプロピレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N−アセチルプロピレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N−プロピオニルプロピレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N−n−オクタノイルプロピレンイミン)変性シリコーン、ポリ(N−n−ドデカノイルプロピレンイミン)変性シリコーン等が挙げられる。
【0029】
これらのシリコーン系ポリマーは、公知の方法(特開平2-276824号公報、特開平4-85334号公報、特開平4-85335号公報、特開平5-112423号公報、特開平7-133352号公報、特開平10-95705号公報等)により製造することができる。
【0030】
成分(B)は、溶解又は分散性を向上させるためにアルコールを組み合わせて用いるのが好ましい。成分(B)をアルコール分散液として配合すると、化粧料中での高分子化合物の溶存状態が良好となり、肌表面に均一に広がり、効果が十分に発揮できる。成分(B)と組み合わせて用いられるアルコールとしては、溶解性、分散性及び化粧料に配合する際のハンドリングの良さから、炭素数1〜4の低級アルコールが好ましく、その中でもエタノールが特に好ましい。
【0031】
成分(B)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.001〜10質量%、特に0.1〜8質量%含有するのが、べたつきのない優れた使用感と保湿効果の持続性が得られるので好ましい。
【0032】
本発明の皮膚化粧料は、更に(C)糖類を含有することができ、保湿効果をより高めることができるので好ましい。糖類としては、例えば、ポリオキシエチレンメチルグルコシド等のポリオキシアルキレン変性糖類;トレハロース、エリスリトール、マルトース、キシリトール、ソルビトール(ソルビット液含む)等の糖類;ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等の酸性ムコ多糖類;キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、水溶性マンナン等の多糖類などが挙げられる。
これらのうち、特にポリオキシアルキレン変性糖類、酸性ムコ多糖類が好ましい。
【0033】
成分(C)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜30質量%、特に1〜20質量%含有するのが、高い保湿効果とべたつきのない優れた使用感が得られるので好ましい。
【0034】
本発明の皮膚化粧料は、更に(D)多価アルコールを含有することができ、より保湿効果を高めることができるので好ましい。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子量1000以下)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン等のグリセリン類;ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール等の糖アルコールなどが挙げられる。これらのうち、特に、グリセリン、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0035】
成分(D)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜30質量%、特に1〜20質量%含有するのが、高い保湿効果とべたつきのない優れた使用感が得られるので好ましい。
【0036】
本発明の皮膚化粧料は、更に(E)疎水性粉体を含有することができる。
本発明で用いる成分(E)の疎水性粉体は、通常の化粧料に用いられる疎水性粉体、及び化粧料用粉体を疎水化処理した粉体を含むものである。
疎水性粉体としては、ポリアミド樹脂パウダー(ナイロン粉末)、多孔質ナイロンパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリ四弗化エチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、ポリウレタンパウダー、ラウロイルリジン、シリコーンパウダー、シリコーンエラストマー球状粉体、網状型メチルポリシロキサン粉体、アクリル酸ブチル・酢酸ビニル共重合体、シクロデキストリン、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂パウダー等の、有機樹脂粉体などの架橋型あるいは非架橋型の高分子粉体が挙げられる。
【0037】
疎水化処理粉体に用いられる基材としては、無機粉体、天然繊維の粉体、スターチの粉体、真珠光沢顔料、有機色素等が含まれる。
無機粉体としては、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、金雲母、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、エポキシ処理アルミニウム、アルミニウム末、リン酸カルシウム、無水ケイ酸、無水ケイ酸アルミニウム、パイロフェライト質クレー、ベントナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、ゼオライト、ハイジライト、シリカ、黄酸化鉄、黄土、黒酸化鉄、ベンガラ、黒酸化チタン、低次酸化チタン、チタン酸鉄、γ − 酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムコバルト、酸化クロム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、酸化チタンゾル、酸化鉄・二酸化チタン焼結物、酸化セリウム、酸化マグネシウム、水酸化クロム、チタン・二酸化チタン焼結物、チタン酸コバルト、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タングステン酸金属塩、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、オキシ塩化ビスマス、カラミン、ロジン酸ナトリウム処理酸化マグネシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、窒化ホウ素等が挙げられ、またこれらの2種以上の複合化粉体、アクリル樹脂被覆アルミニウム末、酸化チタン被覆ナイロン末等の有機−無機複合化粉体などが挙げられる。
【0038】
天然繊維の粉体としては、シルクパウダー、ウールパウダー、セルロースパウダー等が挙げられる。
スターチの粉体としては、米、コーン、馬鈴薯等が挙げられる。
真珠光沢顔料としては、雲母(マイカ)、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、酸化チタン被覆ガラスフレーク、魚鱗箔等が挙げられる。
この他、カーボンブラック、群青、紺青、グンジョウバイオレット、タール系色素、レーキ等が挙げられる。
【0039】
これら粉体の疎水化処理方法としては、通常化粧料用の粉体に施されている方法、例えば、シリコーン処理、脂肪酸処理、ラウロイルリジン処理、界面活性剤処理、金属石鹸処理、フッ素処理、レシチン処理、ナイロン処理、高分子処理等が含まれ、なかでもシリコーン処理、脂肪酸処理及びフッ素処理が好ましい。具体的には、シリコーン処理としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン樹脂等による処理;脂肪酸処理としては、例えば、ミリスチン酸、ステアリン酸等による処理;フッ素処理としては、例えば、パールフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルシラン等による処理が挙げられる。疎水化処理剤の使用量は、処理前の粉体質量に対して通常0.5〜70質量%、特に1〜40質量%であるのが好ましい。
【0040】
成分(E)の疎水性粉体の形状や粒径は特に制限されないが、平均粒径が10μm以下であるのが、粉っぽさが低減され、かさつき感のない使用感が得られるので好ましい。
疎水性粉体を紫外線防御剤として用いる場合、特に疎水化処理酸化チタンや疎水化処理酸化亜鉛が好ましく、これらの平均粒子径は0.001〜1μm、その形状としては、例えば粒状、球状、紡錘状、樹枝状、バルーン状、毬栗状等が好ましい。疎水化処理を行なう前に、酸化チタン及び酸化亜鉛の粉体表面に、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム等で前処理を行い、粉体表面の活性を抑制することもできる。
【0041】
成分(E)の疎水性粉体は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜90質量%、特に1〜50質量%含有するのが、十分な紫外線防御効果や美しい仕上がりが得られるので好ましい。
【0042】
本発明の皮膚化粧料は、更に(F)エタノールを含有することができ、全組成中に0.1〜30質量%、特に0.1〜20質量%含有するのが、化粧料中の成分の溶解性を高め、分散性や保存安定性を高めるので好ましい。
【0043】
本発明の皮膚化粧料は、更に(G)界面活性剤を含有することができる。かかる界面活性剤としては、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されないが、非イオン界面活性剤が好ましく、特にHLB8以下の非イオン界面活性剤が好ましい。
具体的には、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエートなど)、グリセリン脂肪酸エステル(例えばモノステアリン酸グリセリン、モノイソステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸など)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えばモノステアリン酸ジグリセリン、トリステアリン酸ヘキサグリセリンなど)、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル(例えばモノステアリン酸プロピレングリコール、ステアリン酸ペンタエリスリトールなど)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えばPOE(4)モノステアレート、POE(2)モノオレエートなど)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばPOE(2)セチルエーテル、POE(5)ベヘニルエーテル、POE(3)オクチルフェニルエーテルなど)、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油(例えばPOE(3)ヒマシ油、POE(5)硬化ヒマシ油など)、変性シリコーンでシリコーン鎖が直鎖、分岐または架橋タイプ(例えばポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーンなど)、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0044】
界面活性剤は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.01〜20質量%、特に0.1〜10質量%含有するのが、良好な使用感と安定性が得られるので好ましい。
【0045】
また、本発明の皮膚化粧料には、前記成分のほか、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、前記以外の油性成分、粉体、酸化防止剤、香料、防腐剤、美容成分、薬効成分、pH調整剤、紫外線吸収剤、増粘剤、殺菌剤等を含有させることができる。
【0046】
本発明の皮膚化粧料は、通常の方法により製造することができ、乳液、ハンドクリーム、クリーム(O/W、W/O)、ファンデーション(O/W、W/O)、リップクリーム、頬紅、アイシャドウ、マスカラ等とすることができる。
【実施例】
【0047】
合成例1(オキサゾリン変性シリコーンの製造)
硫酸ジエチル3.76g(0.024mol)及び2−エチル−2−オキサゾリン65.3g(0.66mol)を、脱水した酢酸エチル140gに溶解し、窒素雰囲気下、8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)を合成した。ここに、側鎖1級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(分子量100000、アミン当量20500)500g(アミノ基にして0.024mol)の50%酢酸エチル溶液を一括して加え、12時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N−プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色ゴム状固体(537g、収率95%)として得た。重量平均分子量は149000であった。(N−プロピオニルエチレンイミン含有率12質量%)
【0048】
合成例2(オキサゾリン変性シリコーンの製造)
硫酸ジエチル7.57g(0.049mol)及び2−エチル−2−オキサゾリン263.3g(2.66mol)を、脱水した酢酸エチル550gに溶解し、窒素雰囲気下、8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)を合成した。ここに、側鎖1級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(分子量60000、アミン当量3870)250g(アミノ基にして0.065mol)の50%酢酸エチル溶液を一括して加え、12時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N−プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色ゴム状固体(505g、収率97%)として得た。重量平均分子量は88400であった。(N−プロピオニルエチレンイミン含有率49質量%)
【0049】
実施例1〜11及び比較例1〜5
表1及び表2に示す組成の皮膚化粧料を製造し、使用感(うるおい感、べたつきのなさ)及び保湿効果を評価した。結果を表1及び表2に併せて示す。
【0050】
(製造方法)
油相成分(成分(A)、(B)のほか、(E)及び界面活性剤を含む)を室温にてディスパーで十分撹拌した後、あらかじめ加熱攪拌して溶解させた水相(成分(C)、(D)を含む)に、室温で混合する。アジホモミキサーに移し換え、乳化粒子を均一に調整するため30分間高速攪拌を行った後、脱気を行い、皮膚化粧料を得た。
【0051】
(評価方法)
(1)使用感(うるおい感、べたつきのなさ):
10名の専門パネラーが、実際に各皮膚化粧料を使用したときの「うるおい感」と「べたつきのなさ」を官能評価し、次の基準により判定した。
○:7名以上が良好と評価した。
△:4〜6名が良好と評価した。
×:3名以下が良好と評価した。
【0052】
(2)保湿効果:
保湿効果の指標として、角層内の水分含有量を測定するため、SKICON−200導電率計(I.B.S.Co., Ltd.)を用いて皮膚表面の導電率を求めた。洗浄後の健常人の前腕屈側部に、各皮膚化粧料を2mg/cm2になるよう塗布し、室温20±1℃、湿度30±5%で制御された部屋内において、30分後および3時間後の水分量を測定した。また3時間後の測定終了後に、水道水の流水で1分間軽くすすぎ、水を振り払って15分間放置後に、同様に皮膚表面の水分量を測定した。結果は、塗布前の測定値(導電率)を100としたときの相対値で示した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
実施例1〜11の皮膚化粧料はいずれも、使用感に優れ、保湿効果も塗布後3時間たっても十分に高く、すすぎ処理後も保持された。比較例1は成分(A)、比較例2は成分(B)をそれぞれ含まないものであるが、いずれも使用感及び保湿効果の持続性に劣るものであった。比較例3は成分(A)の多価アルコール変性シリコーンの代わりにポリエーテル変性シリコーンを、比較例4は成分(B)のシリコーン系ポリマーの代わりに高重合ジメチコンを加えて調製したものであるが、評価項目すべてにおいて劣るものであった。
また、実施例11と比較例5はともに疎水性粉体を含有する化粧料であるが、実施例11は使用感、保湿効果ともに優れ、効果が持続しているのに対し、成分(A)と成分(B)を含有しない比較例5は、うるおい感が不足し、保湿効果も劣るものであった。
【0056】
実施例12(ハンドクリーム)
表3に示す組成のハンドクリームを、常法により製造した。
得られたハンドクリームは、うるおい感があって、べたつきがなく使用感に優れていた。また、塗布後だけではなく経時での保湿効果が高く、その効果は手を軽く水洗いしても低下しなかった。
【0057】
【表3】

【0058】
実施例13(O/W型サンスクリーン)
表4に示す組成のO/W型サンスクリーンを、常法により製造した。
得られたサンスクリーンは、うるおい感があって、べたつきがなく使用感に優れていた。また、塗布後だけではなく経時での保湿効果が高く、その効果は水にさらされても低下しなかった。さらに、疎水性粉体の分散状態が良好で、紫外線防御効果も高く、耐水面でも優れていた。
【0059】
【表4】

【0060】
実施例14(W/O型UVクリーム)
表5に示す組成のW/O型UVクリームを、常法により製造した。
得られたクリームは、うるおい感があって、べたつきがなく使用感に優れていた。また、塗布後だけではなく経時での保湿効果が高く、その効果は水にさらされても低下しなかった。さらに、疎水性粉体の分散状態が良好で、紫外線防御効果も高く、耐水面でも優れていた。
【0061】
【表5】

【0062】
実施例15(O/W型ファンデーション)
表6に示す組成のO/W型ファンデーションを、常法により製造した。
得られたファンデーションは、うるおい感があって、べたつきがなく使用感に優れていた。また、塗布後だけではなく経時での保湿効果が高く、その効果は水にさらされても低下しなかった。さらに、疎水性粉体の分散状態が良好なため、化粧の仕上がりがきれいで、経時でもその美しい仕上がりは持続した。
【0063】
【表6】

【0064】
実施例16(W/O型ファンデーション)
表7に示す組成のW/O型ファンデーションを、常法により製造した。
得られたファンデーションは、うるおい感があって、べたつきがなく使用感に優れていた。また、塗布後だけではなく経時での保湿効果が高く、その効果は水にさらされても低下しなかった。さらに、疎水性粉体の分散状態が良好なため、化粧の仕上がりがきれいで、経時でもその美しい仕上がりは持続した。
【0065】
【表7】

【0066】
実施例17(リップグロス)
表8に示す組成のリップグロスを、製造した。
得られたリップグロスは、うるおい感があって、べたつきがなく使用感に優れていた。また、塗布後だけではなく経時での保湿効果が高く、その効果は水にさらされても低下しなかった。さらに、きれいな発色を示し、唇の乾燥を防ぎながら、仕上がりは長時間持続した。
【0067】
(製造方法)
成分(1)〜(16)を加熱して溶解した後、成分(17)〜(26)を加えてよく攪拌混合して、リップグロスを得た。
【0068】
【表8】

【0069】
実施例18(アイシャドウ)
表9に示す組成のアイシャドウを、製造した。
得られたアイシャドウは、うるおい感があって、べたつきがなく使用感に優れていた。また、塗布後だけではなく経時での保湿効果が高く、その効果は水にさらされても低下しなかった。さらに、きれいな発色を示し、目の周りの乾燥を防ぎながら、仕上がりは長時間持続した。
【0070】
(製造方法)
成分(1)〜(6)を加熱して溶解した後、冷却して成分(7)〜(19)を加え、よく攪拌混合して、アイシャドウを得た。
【0071】
【表9】

【0072】
実施例19(チーク)
表10に示す組成のチークを、製造した。
得られたチークは、うるおい感があって、べたつきがなく使用感に優れていた。また、塗布後だけではなく経時での保湿効果が高く、その効果は水にさらされても低下しなかった。さらに、きれいな発色を示し、頬の乾燥を防ぎながら、仕上がりは長時間持続した。
【0073】
(製造方法)
成分(1)〜(17)をよく攪拌混合して、チークを得た。
【0074】
【表10】

【0075】
実施例20(マスカラ)
表11に示す組成のマスカラを、製造した。
得られたマスカラは、うるおい感があって、べたつきがなく使用感に優れていた。また、塗布後だけではなく経時での保湿効果が高く、その効果は水にさらされても低下しなかった。
【0076】
(製造方法)
成分(1)〜(10)を加熱して溶解した後、成分(11)〜(16)を加えてよく攪拌しながら冷却する。そこに、あらかじめ加熱溶解して撹拌しておいた成分(17)〜(20)及び(22)を室温で加えてよく混合する。最後に、成分(21)を加えてよく混合して、マスカラを得た。
【0077】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)次の一般式(1)
1a2b3cSiO(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素置換アルキル基、アミノ置換アルキル基、カルボキシル置換アルキル基又は一般式(2)
−Cd2d−O−(C24O)e(C36O)f4 (2)
(式中、R4は炭素数4〜30の炭化水素基又はR5−(CO)−で表される有機基(R5は炭素数1〜30の炭化水素基を示す)を示し、d、e及びfはそれぞれ0≦d≦15、0≦e≦50、0≦f≦50の数を示す)で表される有機基を示し、R2は一般式(3)
−Q−O−X (3)
(式中、Qはエーテル結合及び/又はエステル結合を有していてもよい炭素数3〜20の二価炭化水素基を示し、Xはヒドロキシ基を少なくとも2個有する多価アルコール置換炭化水素基を示す)を示し、R3は下記一般式(4)
【化1】

(式中、R1は同一又は異なって、前記と同じ意味を示し、g及びhはそれぞれ1≦g≦5、0≦h≦500の数を示す)で表されるオルガノシロキサン残基を示し、a、b及びcはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5を示す)
で表される多価アルコール変性シリコーン、
(B)オルガノポリシロキサンセグメントの末端若しくは側鎖のケイ素原子の少なくとも1個に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して下記式(5)で表される繰り返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)が結合してなるシリコーン系ポリマー
【化2】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、xは2又は3の数を示す)
を含有する皮膚化粧料。
【請求項2】
更に、(C)糖類を含有する請求項1記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
更に、(D)多価アルコールを含有する請求項1又は2記載の皮膚化粧料。

【公開番号】特開2008−143823(P2008−143823A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331605(P2006−331605)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】