説明

皮膚外用剤

【課題】従来の皮膚外用剤が含有する蜂蜜の欠点を改善し、需要者が充分に満足できるように皮膚の痒みを抑制し、皮膚を速やかに健全化でき、かつ使用感のよい皮膚外用剤とすることである。
【解決手段】ニラなどのユリ科ネギ属植物体の搾汁液または粉砕物と蜂蜜を有効成分として含有する皮膚外用剤とする。例えばニラ粉砕物50〜70重量%および蜂蜜30〜50重量%の液状組成物を常温で4日以上熟成させて皮膚外用剤を製造する。ニラ搾汁液と蜂蜜の混合物は、前記した蜂蜜の皮膚修復作用が、ニラ搾汁液の作用と不可分一体になって飛躍的に高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乾燥した皮膚やアトピー性皮膚炎などの荒れた皮膚の健全化のために適用される皮膚外用剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、皮膚は、その表面から順に表皮、真皮、皮下組織で構成されており、表皮の最外側は角質層で覆われている。
角質層は、死滅した細胞が角質細胞間脂質(セラミドとも別称される)を介してレンガ壁のように積み重なった層であり、そのようなセラミドには保水性が認められる。
さらに、角質層に含有されるアミノ酸などの天然保湿因子によっても水分は保持され、皮膚の乾燥が抑制されている。また、角質層の表面は、皮脂腺から分泌された皮脂で覆われることによっても水分の蒸発が防止されている。
【0003】
このように健康な皮膚では、皮脂膜が水分の蒸発を防ぎ、角質層のセラミドと天然保湿因子によって適当な水分量が保たれることにより、様々な外部刺激を緩和していると考えられている。
【0004】
ところが、何らかの原因で皮膚の健全性が阻害され、角質層の皮脂や水分が失われ、細胞間に隙間が生じると、外部刺激が角質層を通過して肌の深部にある神経末端に到達しやすくなる。特に、痒みを感じる神経の末端は、角質層近くまで伸びてきて僅かな刺激でも痒みを感じるようになる。
さらに、痒みがひどく感じられると、皮膚を指などで引き掻いてしまうことが多くなり、そのことによって皮脂膜や角質層が剥れた皮膚は、いっそう刺激に敏感になってしまう。
【0005】
ところで、このような痒みを感じやすい乾燥肌やアトピー性皮膚炎などのように、痒みを感じやすくなった肌荒れに対処する皮膚外用剤として、天然の保湿成分であるセラミドや、ワセリン、尿素などの保湿成分を含む塗布剤が周知である。
【0006】
さらに、アトピー性皮膚炎や乾皮症に起因する肌荒れに対する皮膚修復の有効成分として、蜂蜜が知られている(特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】特開2006−321778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記した従来の皮膚外用剤は、保湿成分や皮膚修復成分として含まれる蜂蜜だけでは、充分に満足されるように皮膚の痒みを抑制して皮膚を速やかに健全化できない場合があった。
【0009】
また、皮膚に対する痒み抑制効果を高めるために蜂蜜の濃度を高くすると、蜂蜜の粘性が高まって塗布した際の使用感が悪くなり、例えば塗布後に1〜2時間程度で洗い流さなければ、蜂蜜の糖分が析出した塗膜がぴったりと皮膚に張り付き、そのまま放置すると却って皮膚荒れを助長することにもなる。
【0010】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、従来の皮膚外用剤が含有する蜂蜜の欠点を改善し、需要者が充分に満足できるように皮膚の痒みを抑制し、皮膚を速やかに健全化でき、かつ使用感のよい皮膚外用剤とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の発明者は、蜂蜜だけでは不足する抗菌性、抗カビ性、血流改善性を高める必要があるのではないかと考え、すなわち上記の課題を解決するために、この発明では、ニラ搾汁液または粉砕物と蜂蜜を有効成分として含有する皮膚外用剤としたのである。
【0012】
上記したように構成されるこの発明の皮膚外用剤は、皮膚の修復性の認められる蜂蜜を有効成分としていると共に、ニラ搾汁液またはニラ粉砕物を含有している。
このニラ搾汁液または粉砕物は、ユリ科植物のネギ属のニラ(Allium tuberosum)を切る、擦るという搾汁過程または粉砕過程で生じたアリシンを含有している。
【0013】
そして、ニラ搾汁液または粉砕物と蜂蜜の混合物は、前記した蜂蜜の皮膚修復作用が、ニラ搾汁液の作用と不可分一体になって飛躍的に高められる。
そのため、従来の皮膚外用剤が含有する蜂蜜の欠点は改善され、需要者が充分に満足できるように皮膚の痒みが抑制され、皮膚を修復して速やかに健全化でき、かつ使用感のよい皮膚外用剤となる。
【0014】
皮膚外用剤の製造に際し、ニラなどユリ科ネギ属植物体は含有水分量が少ないため、搾汁するよりも粉砕する方が製造効率はよく、上述の作用が、より確実かつ効果的に発揮されるようにするため、ニラ粉砕物50〜70重量%および蜂蜜30〜50重量%の液状組成物からなる皮膚外用剤とすることが好ましい。
【0015】
ニラ粉砕物の配合量が、50重量%未満の少量では、蜂蜜の作用を補助できず、皮膚の痒みを充分に抑制できない。また、70重量%を超えて多量に配合してもそれ以上に顕著な改善がなく、実用的でなくなり、また相対的に蜂蜜の配合量が減ることになり、蜂蜜による所期した皮膚修復作用が充分に望めなくなるからである。
【0016】
このように所定量のニラ搾汁液と蜂蜜を混合する場合に、蜂蜜に充分にニラ搾汁液が混和して馴染んだ状態とし、安定した効果を得るために、ニラ粉砕物50〜70重量%および蜂蜜30〜50重量%の液状組成物を常温で4日以上熟成させることからなる皮膚外用剤の製造方法を採用することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、皮膚外用剤をニラ搾汁液および蜂蜜を有効成分として組成したので、従来の皮膚外用剤が含有する蜂蜜の欠点が改善され、需要者が充分に満足できるように皮膚の痒みが抑制され、皮膚を速やかに健全化でき、かつ使用感のよい皮膚外用剤となる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の皮膚外用剤は、ニラ搾汁液などのユリ科ネギ属植物体の搾汁液および蜂蜜を有効成分とし、好ましくはニラ粉砕物50〜70重量%および蜂蜜30〜50重量%の混和した液状組成物である。前記組成物を混合後に常温で4日以上(4日〜1ヶ月程度)熟成させて製造することが両成分をよく馴染ませて親和性の高い状態にするために好ましい。
【0019】
この発明に用いるユリ科ネギ属植物は、ニンニク(Allium sativum)、ネギ(Allium fistulosum)、ニラ(Allium tuberosum)など同属の植物を採用するものであり、これらは食用品種としても安全であることは周知であり、茎や球根などの植物体細胞内にアリシンまたはその前駆体であるアリイン、アリナーゼなどを含有する。また、この発明に用いるニラは、ユリ科植物のネギ属のニラ(Allium tuberosum)およびその近縁種を採用できるものである。
【0020】
使用する植物体の部分は、特に限定されないが、葉部よりも茎の部分(白い部分)、球根部分(麟茎等)を採用して好ましい結果を得ている。
【0021】
この発明に用いるニラ搾汁液などのユリ科ネギ属植物体の搾汁液または粉砕物には、植物体の細胞が押しつぶされ、または粉砕された際に、別々の細胞に含有されていた成分のアリインとアリイナーゼが加水分解反応して生じた硫化アリルであるアリシンが粘質物やその他の成分と共に含有されている。アリシンは、搾汁または粉砕の後、エタノールなどのアルコール系有機溶媒で抽出してもよい。
【0022】
因みに、アリシンには、連鎖球菌やブドウ状球菌などに対する強力な殺菌作用があり、抗菌性、抗カビ性、血小板凝集抑制作用、抗酸化作用があり、また血流の改善作用が認められる。
【0023】
この発明に用いる蜂蜜は、蜂が花から得た蜜を体内で転化酵素(インベルターゼ)を加えて巣に持ち帰って蓄えたものであって、食品等として安全かつ周知のものであり、成分としてブドウ糖、果糖のほか各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸(イソマルトオリゴ糖)を含んでおり、殺菌・消炎作用が認められる。この発明に用いる蜂蜜は、雑菌などを含まない精製されたものがより好ましく、例えば日本薬局方蜂蜜、化粧品原料用蜂蜜などを使用できる。
【0024】
この発明では、ニラなどのユリ科ネギ属植物体の搾汁液または粉砕物と蜂蜜を有効成分として、好ましくはニラ粉砕物50〜70重量%および蜂蜜30〜50重量%の液状組成物からなるが、皮膚外用剤の剤型は、特に限定されるものではなく、乳液、パック、軟膏剤、クリーム、ゲル剤、貼付(パップ)剤などの周知の外用剤の形態を採用することができる。
【0025】
この発明では、皮膚に酷い外傷が無い場合には、皮膚面にニラの比較的柔らかな茎などの部分をすり潰しながら押し付け、適宜に蜂蜜を添加混合するように塗擦することによっても調製された皮膚外用剤の塗布と全く同様の作用効果を得ることができる。
【0026】
また、皮膚外用剤の形態に応じて、任意成分として通常、化粧品や医薬品などの皮膚外用剤に配合される成分として、例えば、水(例えば、アルカリ単純温泉水、深層水、ミネラルウォータ(商品名:日田天領水など)精製水等を含む)、低級アルコール、多価アルコール、油脂、ロウ、鉱物油、脂肪酸、粉体、pH調整剤、界面活性剤、増粘剤、色素、ビタミン類、ホルモン類、殺菌・消毒剤、酵素、清涼剤、安定化剤、精油、消臭剤、香料等を配合することもできる。
【実施例1】
【0027】
ニラ(可食部)600gを調理用ミキサーでペースト状に粉砕し、これに日本薬局方の蜂蜜400gを混合し、常温で5日間馴染ませて皮膚外用剤を得た。
得られた皮膚外用剤を乾燥肌のパネラー5人に協力を求め、1日1回塗布し、14日後の結果をまとめたところ、いずれも痒みが軽快するか、または全く痒みがなくなり、全快したとの評価を得た。
【実施例2】
【0028】
生鮮なニラの白い茎の部分を二つに折り、その部分に日本薬局方の蜂蜜を付けてアトピー性皮膚炎の患者の患部に擦りつけながら塗布した。このようにすると、ニラの折られた茎部分で潰された細胞と蜂蜜が混じりながら患部に塗布される。
このような使用状態を1日1回行ない、30日後に患部の外観を調べたところ、痒みや炎症の赤い面積が消失していることが確認できた。
【0029】
[処方例1:軟膏剤]
(1) ニラ粉砕物(茎部) 600g
(2) 蜂蜜(日本薬局方) 400g
(3) ワセリン軟膏基材(日本薬局方) 700g
【0030】
[処方例2:クリーム](重量%)
(1) ニラ粉砕物(茎部) 6.0
(2) 蜂蜜(日本薬局方) 4.0
(3) 1,3ブチレングリコール 6.0
(4) ポリエチレングリコール 4.0
(5) セチルアルコールエーテル 3.0
(6) モノステアリン酸グリセリン 2.0
(7) セチルアルコール 3.0
(8) 固形パラフィン 2.0
(9) ワセリン 5.0
(10) ブチルパラベン 0.2
(11) 香料 0.1
(12) 天然水(日田天領水) 64.7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユリ科ネギ属植物体の搾汁液または粉砕物と蜂蜜を有効成分として含有する皮膚外用剤。
【請求項2】
ユリ科ネギ属植物体がニラである請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
ニラ粉砕物50〜70重量%および蜂蜜30〜50重量%の液状組成物からなる皮膚外用剤。
【請求項4】
ニラ粉砕物50〜70重量%および蜂蜜30〜50重量%の液状組成物を常温で4日以上熟成させることからなる皮膚外用剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−263247(P2009−263247A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111418(P2008−111418)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(508123537)
【Fターム(参考)】