説明

皮膚外用剤

【課題】 本発明は、消費者が美白機能を実感できる製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明によれば、2−フランカルボン酸を有効成分とすることを特徴とする皮膚外用剤が提供され、当該皮膚外用剤は、2−フランカルボン酸の有する美白効果をいかんなく発揮することができる製剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2−フランカルボン酸を有効成分とすることを特徴とした皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
健康食品や機能性食品の積極的な摂取等の行動様式にもみられるように近年の健康志向は根強い。スキンケア領域においても同様、消費者は美白、老化防止素材配合の化粧料を利用した皮膚の手入れを積極的に行い、エステティックによるマッサージ等も一般のライフスタイルとして定着しつつある。
このような状況を踏まえ、出願人らは、メシマコブの多機能性に着目し、スキンケア用の素材として応用開発した。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−129113号公報
【特許文献2】特開2002−241300号公報
【特許文献3】特開2003−73225号公報
【特許文献4】特開2007−31303号公報
【0004】
特開昭61−129113号公報にはメシマコブの菌糸体培養物の入浴剤に関する製造方法が開示されている。また、特開2002−241300号公報にはメシマコブ子実体の抽出物が肌荒れ改善、しわ予防および美白用の皮膚外用剤として応用された技術が、さらに特開2003−73225号公報には子実体の他に菌床の抽出物を配合した化粧料がそれぞれ開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの技術においては、ある程度の効果が認められるものの、実用的には不十分な効果しか得られなかった。
【0006】
その原因は、有効性画分の見極めと抽出手法にあった。すなわち、ある効果に有効な成分種を含みながらもその成分が十分抽出されない場合、あるいは抽出されてはいてもクルードな状態であるがゆえに拮抗成分を含む場合などにおいては、その効果が本来の期待された水準に至らないという結果を招来しており、特に担子菌を素材とする場合には、子実体からの抽出方法やその条件設定において困難な課題を抱えていた。
【0007】
そこで出願人らは、上述した担子菌の子実体に係る課題を解決するために当該抽出技術をさらに応用開発した結果、特開2007−31303号公報に開示した発明の完成に至った。
【0008】
さらに、当該発明によって得られた抽出物につき追試をする過程で、当該抽出物における美白効果を有する分画のうち、毛穴の黒ずみが要因で生じるくすみにも有効な特定成分を見出すことができ、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明によれば、2−フランカルボン酸を有効成分とする皮膚外用剤が提供される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
出願人らが見出した特定の製法に基づく抽出物において、美白効果を奏する成分としては種々あることが判明していたが、成分の同定にまでは至ってなかったところ、効果の主成分はプロトカテキュアルデヒドであることが明らかとなった。しかしながら、当該成分の美白効果は既知であるほか、高濃度では皮膚刺激という問題点を有するため、皮膚トラブルのリスクを軽減すべくさらなる改良成分の分取が必要とされた。
【0011】
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために、さらに追試する中で、分画中に他の美白成分として有効な2−フランカルボン酸を見出すに至った。2−フランカルボン酸はB16細胞白色化試験において期待どおりの効果を示すほか、くすみに有効なNF−κB活性化抑制作用を併せ持つことが判明した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、顕著な美白効果を備え、皮膚の透明性を向上させる機能を有する製剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の皮膚外用剤は、自社製法によりキコブタケ属のメシマコブ(学名:phellinus linteus)から抽出・特定された2−フランカルボン酸を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0014】
本発明で使用される2−フランカルボン酸は、以下の化学構造式を有するものであり、医薬品中間体、香料、農薬、樹脂等の原料として知られているが、皮膚外用剤の有効成分としては未知の物質である。
【化1】

【0015】
ここで、本発明で見出された効果の本質は2−フランカルボン酸であることが判明しており、例えばそれ自体活性を有しない塩類または誘導体類であっても、皮膚外用剤に配合した結果、当該外用剤中で遊離し2−フランカルボン酸としての効果を奏するものであれば本発明にいう有効成分と同質のものとして含まれる。
【0016】
従って、2−フランカルボン酸の塩類は既知の方法によって製することができるが、本発明の皮膚外用剤には2−フランカルボン酸を塩の形での配合が許容されるものである。塩の種類は特に限定はされないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の他、アンモニウム塩、アミノ酸塩等の塩が挙げられる。
【0017】
2−フランカルボン酸の入手は、糖や炭水化物の熱分解により5−ヒドロキシメチルフルフラールおよびフルフラール等と共に生成するため、糖や炭水化物を含む植物を加熱して、抽出、分離、精製してもよいが、微量であるためコスト的に不利である。従って、一般にはフルフラールを原料に化学合成して製することができる。
【0018】
2−フランカルボン酸は常温で安定であり、溶液状態でもpH5以上では安定であることから、通常外用剤として一般に許容しうる製剤に配合して使用することができる。
なお、2−フランカルボン酸の製剤中での安定性および有効な美白効果を得るために、製剤のpH領域としてはpH5.0〜8.0とすることが好ましい。
【0019】
製剤の形態は外用として提供し得るものであるが、皮膚外用剤一般に許容し得る基剤を選択し患部に直接塗布して使用される。この場合には、ローションやエッセンス等に代表される均一系製剤のほか、クリームや乳液に代表されるO/W、W/O型などの一般乳化系、W/O/W、O/W/O型の特殊な多層エマルジョン、その他にもペースト剤、軟膏及びチンキ剤等の塗布剤型、エアゾール剤、スプレー剤等の噴霧剤型、パップ剤、プラスター剤等の貼付剤型など公知の形態の基礎基剤としても他の成分と組合せて幅広く使用に供されるものであり特段の制約はない。
【0020】
これらの本発明において、2−フランカルボン酸又はその塩の配合量は、クリーム、ローション、乳液、パック、化粧水、エッセンス等の化粧品の場合と、シートマスク剤、パップ剤、プラスター剤等の剤型として使用する場合のいずれにおいても、製剤全体に対して「0.001〜25重量%」、好ましくは「0.01〜10重量%」の範囲で配合される。配合量が「0.001重量%未満」の場合は、美白作用が不十分である。また「25重量%」を越えて用いてもそれ以下の場合と特に効果上の差異はなく、この場合は経済的に不利であるという問題がある。
【0021】
なお、本発明においては、通常に用いられる種々の公知の有効成分、例えば、美白剤として公知のコウジ酸、クエルセチン、グルタチオン、ハイドロキノン、及びこれらの誘導体、縮合型タンニン類、カフェー酸、エラグ酸等のフェノール性化合物、末梢血管拡張剤としてはビタミンE、ビタミンEニコチネート、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等の各種ビタミン類、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ、消炎剤としては副腎皮質ホルモン、ε−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン、アラントイン等の各種化合物、その他にも胎盤抽出物、甘草抽出物、紫根エキス、乳酸菌培養抽出物などの動植物・微生物由来の各種抽出物等を本発明の効果を損なわない範囲で、その時々の目的に応じて適宜添加して使用することができる。
【0022】
またさらに、本発明の皮膚外用剤にはこれら公知の有効成分に加え、油脂類などの基剤成分のほか、必要に応じて公知の保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、着色剤等種々の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
【実施例】
【0023】
次に実施例により本発明を説明するが、これらの開示は本発明の好適な態様を示すものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0024】
<試験例1>メラニン生成抑制作用
a) 試験方法
培地はFBS(ウシ胎児血清)を10.0%添加したMEM(Eagle’s Minimum Essential Medium)培地を用い、細胞はマウスメラノーマB16−F10株を用いた。プラスチックシャーレ(Falcon製、内径9cm)にMEM培地を8mL、FBSを1mLおよびMEM培地1mLに懸濁した0.5×10個/mLの細胞を添加して24時間培養後、水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整した2−フランカルボン酸水溶液を表1に示す量で添加した。コントロールは、試料無添加とした。培養の2日後に培地交換を行い、計5日間、5%CO、95%空気条件下、37℃で培養した。培養終了後、シャーレの底に増殖した細胞をセルスクレーパーで集めPBS(Phosphate buffered saline)に懸濁させ、透明な遠心チューブに入れ、1,000rpmで2分間遠心分離を行い、得られた細胞ペレットの色調を肉眼判定し、5段階で評価した。また培養終了後の細胞数を、コントロールと比較して細胞増殖率を表した。
細胞の白色化度は、以下の基準で判定した。
判定基準: − : 黒色(コントロールと同等)
± : 黒灰色
+ : 灰色
++:灰色〜白色
+++: 白色
【0025】
b)試験結果
表1にメラニン産生抑制効果試験の測定結果を示す。2−フランカルボン酸はコントロール群と比較して高いメラニン産生抑制効果が認められた。
【表1】

【0026】
<試験例2>NF−κB活性化抑制試験
a) 試験方法
NF-κB活性化により分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)を発現するレポーター遺伝子(pNiFty2-SEAP(Zeo)、InvivoGen社)をトランスフェクトしたBalb/3T12-3細胞(マウス由来線維芽細胞株)を作製した。
培地はFBSを2%添加したMEM培地を用いた。培地に懸濁したトランスフェクト細胞を24ウェルプレート(Falcon製)に1.5×10個/ウェルとなるように播種して24時間培養後、2−フランカルボン酸水溶液を表2に示す量で添加した。コントロールは、試料無添加とした。その6時間後にNF−κB活性化のため10ng/mLの濃度となるようにリコンビナントTNF−α溶液を添加し、さらに24時間培養した。培養終了後、培養液上清のSEAP活性を4−MUPを基質として、励起波長360nm、蛍光波長440nmで測定した。
NF-κB活性抑制率は下式により算出した。
NF-κB活性化抑制率( % )
= { 1 − ( A − B ) / ( C − D ) } × 1 0 0
但し、前記中、A は、2−フランカルボン酸溶液及びTNF-α溶液を添加したときの蛍光強度を表す。Bは、2−フランカルボン酸溶液を添加し、TNF−α溶液を添加しないときの蛍光強度を表す。C は、試料無添加で、TNF−α溶液を添加したときの蛍光強度を表す。D は、試料およびTNF−α溶液を添加しないときの蛍光強度を表す。
【0027】
b)試験結果
表2にNF−κB活性化抑制試験の結果を示す。2−フランカルボン酸は、細胞毒性を示さず濃度依存的にNF-κB活性化を抑制した。
【表2】

【0028】
<試験例3>紫外線照射によるヒト色素沈着抑制試験
a) 試験方法
試験薬剤は、1%2−フランカルボン酸配合製剤とプラセボ製剤とした。
試験は健常人10名を対象とし、上腕内側部に1.3cm×1.3cmの紫外線照射部位2箇所を設け、試験薬剤を塗布した。薬剤塗布は、紫外線照射の5時間前から開始し、紫外線照射日には1日5回、紫外線照射の翌日からは1日3回、薬剤を塗布した。紫外線照射は、UVB+UVBランプ(FL20SE、FL20BLB)を用いて、1日あたり1MED(40〜70mJ/cm2程度)となるように連続3日間行った。試験開始前、7日後、14日後、21日後に色素沈着度の判定を行い、1%2−フランカルボン酸配合製剤とプラセボ製剤との比較法により美白効果を調べた。判定は下記の肉眼判定基準により行うとともに、くすみの客観的指標として色彩色差計(コニカミノルタ製)を用いて皮膚色明度(L値)を測定し、紫外線照射前の明度から各観察日の明度を差引いてデルタL値とした。
【表3】

【0029】
b)試験結果
表4に紫外線照射によるヒト色素沈着抑制試験の判定結果を示す。表3から明らかなように2−フランカルボン酸は、色素沈着およびくすみを改善する効果に優れることが判明した。
なお、試験期間中、被験者の試料製剤塗布部位に皮膚刺激反応は認められず、本発明品は製剤の形態においても安全であることが確認できた。
【表4】

【0030】
処方例1 化粧水
(重量%)
1.2−フランカルボン酸 3.00
2.アラントイン 0.10
3.エタノール 15.00
4.クエン酸 0.10
5.パラオキシ安息香酸エステル 0.30
6.1,3−ブチレングリコール 4.00
7.精製水 適 量

【0031】
処方例2 エッセンス
(重量%)

1.2−フランカルボン酸ナトリウム 1.00
2.クエルセチン 0.05
3.ヒアルロン酸 5.00
4.2%コハク化ケフィラン水溶液 1.50
5.グリセリン 2.00
6.パラオキシ安息香酸エステル 1.00
7.1%カルボキシビニルポリマー水溶液 2.00
8. エデト酸二ナトリウム 0.03
9. 精製水 適 量

【0032】
処方例3 クリーム
(重量%)
1.2−フランカルボン酸 0.10
2.アルブチン 0.05
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.50
4.モノステアリン酸グリセリン 1.50
5.ベヘニルアルコール 5.00
6.流動パラフィン 7.00
7.オクタン酸セチル 5.00
8.メチルポリシロキサン 0.50
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.70
10.カルボキシビニルポリマー 0.05
11.キサンタンガム 0.01
12.エデト酸二ナトリウム 0.01
13.精製水 適 量

【0033】
処方例4 クリームパック
(重量%)
1.2−フランカルボン酸 0.50
2.α−グルコシル−L−アスコルビン酸 3.00
3.ポリエチレングリコール1500 5.00
4.ステアリン酸ジエタノールアミド 5.00
5.ステアリン酸 5.00
6.ミリスチン酸 5.00
7.ヤシ油 15.00
8.天然ビタミンE 0.04
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
10.dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液 5.00
11.エデト酸二ナトリウムカルシウム 0.01
12.精製水 適 量

【0034】
処方例5 乳液
(重量%)
1.2−フランカルボン酸カリウム 0.50
2.コウジ酸 5.00
3.α−グルコシル−L−アスコルビン酸 2.00
4.オクチルドデカノール 3.00
5.ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.)
1.00
6.ステアリン酸 0.50
7.シアバター 1.00
8.アボガド油 4.00
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
10.クインスシードエキス 5.00
11.キサンタンガム 0.15
12.フィチン酸 0.02
13.d-δ−トコフェロール 0.01
14.精製水 適 量


これら処方例1乃至5は、いずれも本発明の目的を達成する効果を有していることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−フランカルボン酸を有効成分とすることを特徴とする皮膚外用剤


【公開番号】特開2009−292758(P2009−292758A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146955(P2008−146955)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000176110)三省製薬株式会社 (20)
【Fターム(参考)】