説明

皮膚有益性を与える方法

スキンケア活性成分および携帯用湿熱供給装置の使用を包含する、皮膚有益性を皮膚に与える方法であって、携帯用湿熱供給装置が、水蒸気供給源および熱供給源を含んでなる水蒸気発生部分と、前記水蒸気発生部分の、皮膚に面した側に配置された水蒸気−空気調整部分とを含んでなり、前記水蒸気−空気調整部分が、水蒸気−空気混合層、水蒸気−空気分配層、潜熱供給表面、および所望により皮膚接触層を含んでなり、前記水蒸気発生部分および該水蒸気−空気調整部分が流体連絡している、方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、携帯用湿熱供給装置およびスキンケア活性成分の使用により、皮膚有益性を与える方法に関する。特に、本発明は、スキンケア活性成分を含むスキンケア組成物を皮膚に塗布し、次いで水蒸気を発生し、皮膚に湿熱を与える携帯用湿熱供給装置を使用することに関する。
【発明の背景】
【0002】
皮膚にスキンケア活性成分を与えるための様々な手法が開発されている。スキンケア活性成分を与えるための一般的な方法は、活性成分、例えば皮膚の状態を調整および/または改良する活性成分、を含むスキンケア組成物の使用によるものである。さらに、そのような組成物を塗布するか、またはひげを剃るために皮膚を準備する伝統的な方法はとしては、蒸しタオルの使用がある。しかし、高温の湿ったタオルは、使用するのが困難で、不都合であるか、または皮膚有益性を与えるのに十分に長い時間、一定温度の湿熱を与えない。
【0003】
使い捨てヒートラップが、急性または慢性の、身体の鈍痛または苦痛による不快感を和らげるための一般的な加熱方法になっている。使い捨てヒートラップは、典型的には熱を発生するための発熱組成物を含み、その発熱組成物は、典型的には金属粉末、塩、および水を含み、その発熱組成物が、金属粉末の酸化により放熱する。他の使い捨てまたは再使用可能な装置は、酸と塩基の中和により発生するエネルギー、無機塩の水和熱、再加熱可能なゲル、および発熱させるための電気的エネルギーを使用することができる。そのような装置は、通常、発熱するが、水分をほとんど含まない。
【0004】
上記のことから、スキンケア活性成分と共に容易に、都合良く使用することができ、有益性を皮膚に与えるのに十分に長い時間、一定した温度および湿分を皮膚に与えることもできる湿熱供給源が必要とされている。
【0005】
既存技術のいずれも、本発明の利点および有益性の全てを与えてはいない。
【発明の概要】
【0006】
有益性を皮膚に与える方法は、i)スキンケア組成物を皮膚に塗布すること、ii)水蒸気供給源および熱供給源を含んでなる水蒸気発生部分と、前記水蒸気発生部分の、皮膚に面した側に配置された水蒸気−空気調整部分とを含んでなり、前記水蒸気−空気調整部分が、水蒸気−空気混合層、水蒸気−空気分配層、および所望により皮膚接触層を含んでなる携帯用湿熱供給装置、を用意すること、iii)前記水蒸気発生部分および前記水蒸気−空気調整部分が流体連絡しており、前記水蒸気−空気調整部分が、前記水蒸気−空気調整部分に隣接して配置された潜熱供給装置を有し、前記携帯用湿熱供給装置が、皮膚温度を約43℃未満に維持しながら、凝縮潜熱として熱の約15%〜約95%を使用者に伝達すること、を含んでなる。
【0007】
有益性を皮膚に与える方法は、i)蒸気供給源および熱供給源を含んでなる蒸気発生部分と、前記蒸気発生部分の、顔に面した側に配置された露点減少部分とを含んでなり、前記露点減少部分が、蒸気−空気混合層、蒸気−空気分配層、および所望により皮膚接触層を含んでなり、前記蒸気発生部分および前記露点減少部分が流体連絡しており、前記蒸気調整部分が、前記蒸気−空気調整部分に隣接して配置された潜熱供給装置を有する携帯用湿熱供給装置、を用意すること、ii)前記携帯用湿熱供給装置を使用者の皮膚に付けること、iii)前記携帯用湿熱供給装置の加熱を開始すること、およびiv)前記携帯用湿熱供給装置から発生した蒸気−空気混合物を使用者の皮膚に供給すること、を含んでなり、前記蒸気−空気混合物が潜熱を与え、前記携帯用湿熱供給装置の加熱開始から約1分間〜約8時間以内に皮膚有益性をもたらし、皮膚温度が約43℃未満に維持され、スキンケア活性成分を前記蒸気発生部分中に、前記蒸気供給源中に、または前記露点減少部分中に取り込むものである。
【0008】
有益性を皮膚に与える方法は、i)携帯用湿熱供給装置を顔の皮膚に付けること、携帯用湿熱供給装置が、ii)水蒸気供給源および熱供給源を含んでなる水蒸気発生部分と、iii)前記水蒸気発生部分の皮膚に面した側に配置された水蒸気−空気調整部分とを含んでなり、前記水蒸気−空気調整部分が、水蒸気−空気混合層、水蒸気−空気分配層、および所望により皮膚接触層を含んでなり、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気−空気調整部分が流体連絡しており、前記水蒸気−空気調整部分が、前記水蒸気−空気調整部分に隣接して配置された潜熱供給装置を有し、前記携帯用湿熱供給装置が、皮膚温度を約43℃未満に維持しながら、凝縮潜熱として熱の約15%〜約95%を使用者に伝達し、iv)髭剃り組成物を顔の皮膚に塗布すること、およびv)顔の皮膚を髭剃りすることを含んでなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】水蒸気と空気の混合物の露点およびエネルギー含有量に対する湿分比を例示する湿度図表である。
【図2】乾球温度および露点温度を例示する湿度図表である。
【図3】本発明の一実施態様を図式的に示す図である。
【図4】本発明の一実施態様を図式的に示す図である。
【図5】本発明の一実施態様を図式的に示す図である。
【図6】本発明の一実施態様を図式的に示す図である。
【図7】本発明の一実施態様を図式的に示す図である。
【図8】本発明の一実施態様を図式的に示す図である。
【図9】本発明の一実施態様を図式的に示す図である。
【図10】本発明の一実施態様を図式的に示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0010】
本発明の皮膚有益性を与える方法は、i)スキンケア活性成分を含んでなるスキンケア組成物該皮膚に塗布すること、およびii)前記皮膚に本発明の携帯用湿熱供給装置を付けることにより、皮膚状態を調整することを包含する。熱供給装置は、一回使用の使い捨て装置でよいか、または再使用可能な、もしくは部分的に再使用可能な装置の中に組み込むことができる。携帯用湿熱供給装置により供給される湿熱は、有益な皮膚活性成分の浸透を促進すると考えられる。本発明の携帯用湿熱供給装置により供給される湿熱は、約8時間までの間、皮膚に作用させることができる。この熱は、皮膚に火傷を起こす恐れがある温度を超えない。
【0011】
本発明は、ここに記載する本発明の要素および制限、ならびに追加の、または所望により使用する原料、成分、ここに記載する制限、を含むか、これらからなるか、または実質的にこれらからなる、ものである。
【0012】
ここで使用する「水蒸気」は、気体状の水を意味する。「水蒸気−空気混合物」および「水蒸気−空気を混合」は、ここに規定するように、空気を「水蒸気」に加えることを意味する。液体水から水蒸気への相変化を達成するために加えるエネルギーは、蒸発潜熱である。蒸発潜熱エネルギーは、水蒸気から液体水への凝縮の相変化により放出され、凝縮潜熱と呼ばれる。ここで使用する「蒸気」の語は、気体状にある水も意味し、蒸気が、水蒸気と液体水滴の混合物ではなく、水蒸気だけを意味する点で、用語「水蒸気」とは異なっている。
【0013】
ここで使用する「露点」は、水蒸気−空気混合物を、その中にある水が凝縮し始める前に、冷却する必要がある温度を意味する。
【0014】
「湿度比」は、水蒸気の重量と乾燥空気の重量の比である。
【0015】
ここで使用する「潜熱」は、相変化(すなわち、固体、液体または気体への、またはからの)の際にある物質から放出されるか、またはある物質により吸収される熱の形態におけるエネルギー量を意味する。
【0016】
ここで使用する「水分」は、水を意味する。
【0017】
ここで使用する「湿熱」は、移動し得る熱エネルギーの約15%〜約95%が水蒸気の凝縮潜熱の形態にある熱を意味する。水蒸気および水蒸気凝縮が湿熱に関連するので、湿熱は水分成分を包含する。湿熱供給装置は、水蒸気、および凝縮が起こり、潜熱が放出される場合には、液体水も移動させることができる。
【0018】
ここで使用する「予め選択された温度」は、記載する温度±1℃または±2℃を包含することができる。
【0019】
用語「中間粒子径」は、指定する中間サイズより大きなサイズを有する粒子と同じ位多くの、指定する中間サイズより小さなサイズを有する粒子があることを意味する。
【0020】
他の定義は、本発明の説明の中で必要に応じて行う。
【0021】
本明細書に記載する全てのカリパス測定した厚さは、他に指示が無い限り、ASTM法第D5729号により測定する。
【0022】
本明細書に記載する全ての坪量は、他に指示が無い限り、ASTM法第D3776号により測定する。
【0023】
本明細書に記載する全ての空気透過率は、他に指示が無い限り、ASTM法第D737号により測定する。
【0024】
本明細書に記載する全ての水蒸気透過率(MVTR)は、他に指示が無い限り、ASTM法第E96により測定する。
【0025】
ここで使用する「スキンケア活性成分」または「活性成分」は、皮膚に塗布した時に、皮膚に有益性を与えるか、または皮膚を改善する化合物を意味する。スキンケア活性成分は、皮膚の状態を調整または改善するために使用することができる。無論、スキンケア活性成分は、皮膚用途のみならず、毛髪、爪、および他の哺乳動物のケラチン質組織にも有用である。
【0026】
ここで使用する「美容保護有益性」は、人間のケラチン質組織(皮膚、毛髪および爪を包含する)上に、薬物として使用するのではなく、そのような組織の外観を改善する目的で、外観を浄化、美化、魅力を増強するために、スキンケア活性成分を塗布することから得られる美容上の有益性を意味する。
【0027】
ここで使用する「皮膚状態を調整する」は、皮膚の外観および/または感触をほとんど、または全く損なわずに、皮膚の外観および/または感触を維持することにより、美容保護有益性を与えることを意味する。ここで使用する「皮膚状態を改良」は、皮膚の外観および/または感触に好ましい変化を与えることにより、美容保護有益性を与えることを意味する。皮膚の外観および/または感触の有益性は、長期間の有益性であり、下記の、すなわち、ケラチン質組織を厚くすること(例えば皮膚の表皮および/または真皮および/または皮下層、ならびに場合により爪および毛幹のケラチン質層を構築し、皮膚、毛髪、または爪の萎縮を軽減する)、真皮−表皮境界(網隆起部(rete ridge)とも呼ばれる)の渦巻(convolution)を増加させること、皮膚または毛髪の弾性低下を防止すること、例えば機能性皮膚弾力素の損失、損傷および/または不活性化により、皮膚または弾力線維症、たるみ、皮膚または毛髪の変形からの戻りの低下のような症状を防止すること、セルライトの減少、皮膚、毛髪、または爪の着色変化、目の下のくま、しみ(例えば酒さによる不均質な赤着色)、黄ばみ、色素沈着過度により引き起こされる変色、皮膚老化徴候の維持/改良、および傷害により引き起こされるケラチン質組織の維持/改善、の一つ以上を含むことができる。
【0028】
「傷害により引き起こされるケラチン質組織」とは、例えば物理的および/または化学的刺激物に露出された後の、不快感、刺激、不快または不規則外観、等を示すケラチン質組織を意味する。傷害により引き起こされるケラチン質組織の例としては、火傷(例えば日焼け、風焼け、薬品または熱による火傷)、皮疹(例えばおむつ皮疹、剃刀負け、およびアレルゲンにより引き起こされる皮疹)、変色(例えば漂白、染み、色素沈着過度)、傷および切り傷(例えば髭剃り傷害)、および乾燥、あかぎれ、または荒れ肌(例えば風、低温および/または低湿度に対する露出による)が挙げられるが、これらに限定するものではない。傷害の例としては、放射線、風、低湿度、アレルゲン、汚染物、化学的および自然の刺激物、体液、身体排泄物、過剰水分、最近、菌類、等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0029】
ここで使用する「皮膚老化徴候」としては、ケラチン質皮膚の線、割れ目、こぶ、大きい孔、ざらつきまたは粗さによる、外側から目に見える、および触感的に知覚し得る徴候、ならびに全ての巨視的または微視的影響、皮膚弾性低下、変色(目の下のくまを含む)、染み、黄ばみ、色素沈着過度の皮膚区域、例えば年齢による染みおよび斑点、角質増殖、異常分化、角化症、弾力線維症、コラーゲン破壊、および角質層、真皮、表皮、血管系(例えば毛細管拡張症または蜘蛛血管(spider vessel))、および下部組織(例えば脂肪および/または筋肉)、特に皮膚に近い組織における他の組織学的変化が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0030】
本発明の全ての実施態様で、他に指示が無い限り、全ての百分率は、組成物全体に対する重量で表す。他に指示が無い限り、全ての比は、重量比である。全ての範囲は包括的および組合せ可能である、したがって、本明細書全体にわたって記載されるどの範囲も、狭い範囲が全てここに記載されているように、そのような広い範囲内に入る全ての狭い範囲を包含する。有効数字の数は、指示する量に対しても、測定精度に対しても、制限を加えない。他に指示が無い限り、全ての測定は、25℃および周囲条件で行うものとし、「周囲条件」とは、圧力約1気圧、湿度約50%の条件を意味する。記載する成分に関するそのような全ての重量は、他に指示が無い限り、活性レベルに基づいており、市販材料に含まれることがあるキャリヤーまたは副生成物を含まない。
【0031】
<携帯用湿熱供給装置>
湿熱の有益性、例えばスキンケア活性成分の浸透を強化することは、湿熱装置が特定有効量の湿熱を供給する場合にのみ達成される。有効量の湿熱を供給するために、本発明の携帯用湿熱供給装置は、水蒸気供給源および熱供給源を含んでなる水蒸気発生部分と、水蒸気発生部分の、皮膚に面した側に配置された水蒸気−空気調整部分とを包含し、水蒸気−空気調整部分が、水蒸気−空気混合層、水蒸気−空気分配層、および所望により皮膚接触層を含んでなり、水蒸気発生部分および水蒸気−空気調整部分が流体連絡しており、水蒸気−空気調整部分が、水蒸気−空気調整部分に隣接して配置された、湿熱を予め選択された温度範囲で湿熱を供給する潜熱供給装置を有する。具体的には、この構造は、水蒸気および空気を混合し、急速で、安全な、効率的で、持続される湿熱を発生し、移動させるように設計される。携帯用湿熱供給装置の実施態様は、「携帯用湿熱供給装置」と題する同時係属中の米国特許出願第12/号(2009年5月13日出願)に詳細に記載されている
【0032】
一実施態様では、水蒸気発生部分は、温度約50℃〜約70℃にある水蒸気を発生する。水蒸気が形成される時、水蒸気が温められるだけではなく、熱も蒸発潜熱として保存される。水蒸気を発生させるために、水蒸気供給源は、急速に加熱し、高い水蒸気化速度を少なくとも約10分間、好ましくは約30分間以上与える必要がある。保存された蒸発熱は、水蒸気が凝縮する時に放出される。水蒸気は、凝縮する時の潜熱による熱移動のため、および水蒸気を容易に発生させ、使用できるので、理想的な熱移動候補である。本明細書に記載する代表的な実施態様では、水蒸気を発生させるための熱は、発熱組成物、例えば米国特許出願第11/233,916号に開示されている鉄系熱組成物、を使用して発生させる。しかし、当業者には明らかなように、他の発熱組成物および/または熱および/または他のエネルギーの供給源も同様に使用し、本発明の実施における熱を発生させることができる。
【0033】
代表的な実施態様では、水蒸気発生部分は、発熱用熱組成物および蒸発に使用できる水を包含する。所望により、これらの成分は、混合することができる。
【0034】
湿熱装置の水蒸気−空気調整部分は、複数の目的および機能を有する。その第一機能は、水蒸気発生部分に、十分な空気を送り込んで発熱反応を支援することである。十分な空気を供給して発熱反応を支援することは、携帯用湿熱供給装置の透過部分が皮膚に対して温まるので、重要である。水を発熱組成物中で蒸発させるために、組成物の温度を約70℃まで高くすることができる。しかし、人間の皮膚は約43℃以上の温度で火傷することがあるので、皮膚を高温の発熱組成物から保護する必要がある。したがって、本装置では、水蒸気が発生する時に、水蒸気は、水蒸気発生部分から出て、水蒸気−空気調整部分を通る/水蒸気−空気調整部分の中に入る。水蒸気が水蒸気−空気調整部分を通過する時、水蒸気は、蒸気−空気混合物の露点温度が、皮膚を火傷させない温度約43℃に低下するように、空気と混合され、分配される。したがって、水蒸気−空気調整部分は、水蒸気発生部分で発生した水蒸気の高温から皮膚を安全に保護する。これによって皮膚は、熱損傷からも保護される。
【0035】
以前は、湿熱装置から出る水蒸気の温度は、皮膚の火傷を防止するために約50℃未満に下げる必要があると考えられていた。しかし、火傷の防止に重要なのは、水蒸気の温度だけ、または主として水蒸気の温度であるのではなく、存在する水蒸気のエネルギー含有量およびその、エネルギーを皮膚に伝達する能力が重要であることが分かった。
【0036】
しかし、皮膚または毛髪と高温供給源との接触が火傷を引き起こすのは、皮膚が、皮膚が受けるエネルギーを放散させることができない場合だけであることを理解すべきである。したがって、エネルギー移動ならびに温度が損傷の可能性を決定する。典型的には、乾燥または伝導性熱移動では、皮膚温度が約43℃を超えると火傷が起こる。しかし、理論に捕らわれたくはないが、湿熱の場合、エネルギーの多くが凝縮潜熱により移動すると考えられる。したがって、水蒸気−空気混合物の温度が高い、例えば約50℃であっても、水蒸気により移動するエネルギー量が不十分である、および/または皮膚温度を43℃より上に上昇させるのに不十分な速度で移動する、および/または皮膚温度を約43℃以下に維持するのに十分な速度で放散する場合、皮膚は火傷にならない。
【0037】
したがって、本開示の装置により、人間の皮膚または毛髪に損傷を与えることなく、約43℃より高い温度を使用することができる。以前は、火傷を防止するためには、湿熱装置から出る水蒸気の温度自体を、乾球温度計または熱電対で測定して、約50℃未満に下げる必要があると考えられていた。しかし、組織損傷の可能性および/またはエネルギー移動は、従来の乾球または熱電対により測定した温度に信頼性良く反映されず、水蒸気の露点温度に、より信頼性良く関連している。乾球温度と異なり、露点温度は、ガス混合物中の水蒸気量に関連している。本発明の携帯用湿熱供給装置により、皮膚は水蒸気と接触し、それによって水蒸気が凝縮し、凝縮を通して潜熱を放出する。そのような熱移動様式で、水蒸気の凝縮が大量のエネルギーを急速に放出する。したがって、皮膚の火傷を防止するには、水蒸気−空気混合物の乾球温度だけではなく、水蒸気−空気混合物の凝縮温度を制御することが重要である。水蒸気−空気混合物の凝縮温度は、その露点温度である。
【0038】
図1の湿度図表に示すように、露点温度は、空気中の湿度の絶対レベルである、水蒸気−空気混合物の湿度比により決定される。露点温度と湿度比の関係は、湿度比が増加するにつれて露点温度が増加する関係である。水蒸気−空気混合物のエネルギー含有量は、その乾球温度(すなわち、感じられる熱)よりも、水蒸気の量(すなわち、保存された潜熱)により、より大きな影響を受ける。皮膚火傷を防止するためには、乾燥空気に対する水蒸気の量または比を、水蒸気が約43℃未満の温度で凝縮するように制御する必要がある。水蒸気−空気比を調整する際、水蒸気−空気混合物の乾球温度が偶発的に低下することがある。しかし、温度変化で獲得または損失するエネルギーは、潜熱として存在するエネルギーより遙かに小さいので、水蒸気−空気混合物の乾球温度を調整する必要は無い。したがって、潜熱により移動するエネルギーの量は、水蒸気と乾燥空気の比を調整することにより、制御することができる。そのような比は、水蒸気のポンド/乾燥空気のポンドとして、または水蒸気のkg/乾燥空気のkgとして表すことができる。
【0039】
図2の湿度図表で分かるように、点Aは、水蒸気−空気混合物を、その飽和点で表し、約43.3℃(約110°F)の露点を有する。点Aにおける水蒸気−空気比は、約0.06kg水蒸気/kg乾燥空気である。
【0040】
点Bは、湿度が低いか、または飽和程度が低い水蒸気−空気混合物を、水蒸気−空気比約0.052kg水蒸気/kg乾燥空気で表す。点Aの水蒸気−空気混合物と同じエネルギー含有量を有するには、点Bにおける水蒸気−空気混合物は、乾球温度が約60℃(約140°F)である。水蒸気−空気混合物、例えば点Bにおける混合物、が皮膚上で凝縮する場合、その混合物は、約40.6℃(約105°F)で凝縮する。この混合物が凝縮する時、エネルギー移動速度は非常に高いが、その乾球温度が約60℃(約140°F)であっても、その凝縮温度または露点は約40.6℃しかないので、皮膚に火傷を起こすことはない。対照的に、点Aにおける水蒸気−空気混合物が皮膚上で凝縮する場合、その混合物は約43.3℃(約110°F)で凝縮し、その潜熱含有量を急速に移動させるので、その乾球温度が、点Bにおける水蒸気−空気混合物の乾球温度より大幅に低くても、火傷の危険性が大きくなる。
【0041】
したがって、先行技術と異なり、本発明の湿熱供給装置は、水蒸気−空気混合物の乾球温度を調整するのではなく、水蒸気−空気混合物比を調整することにより、皮膚の火傷を回避する。水蒸気−空気比を約0.065kg水/kg乾燥空気未満あるいは約0.060kg水/kg乾燥空気未満に調整することにより、水蒸気−空気混合物の露点は、約43℃未満になる。湿熱供給装置の露点温度を制御することの利点の一つは、装置の熱力学が温度調節を行い、その際、潜熱移動が皮膚温度により調整される(すなわち、潜熱が露点で移動する。したがって、皮膚温度が水蒸気の露点以下でない限り、移動が起こらない)ことである。
【0042】
本明細書に記載する携帯用湿熱供給装置は、水蒸気を使用者の皮膚に対して、約36℃〜約50℃、あるいは約36℃〜約45℃、あるいは約36℃〜約42℃、あるいは約38℃〜約40℃の望ましい露点温度で選択的に供給する。この装置は、水蒸気を皮膚に約20秒間〜約8時間、あるいは20分間〜約4時間、あるいは1分間〜約60分間、あるいは15分間〜約30分間、あるいは1分間〜約20分間、あるいは20分間〜約40分間、あるいは約半時間〜約2時間供給することができる。最高皮膚温度および皮膚温度をその最高皮膚温度に維持する時間の長さは、そのような処理を必要とする人が、悪影響、例えば皮膚の火傷、を受けずに、所望の有益性を達成できるように、適切に選択的にすることができる。水蒸気−空気調整部分が、ある量の湿熱を使用者の皮膚に、悪影響を及ぼさずに、確実に供給する。
【0043】
湿熱装置の水蒸気−空気調整部分は、水蒸気空気混合層および水蒸気−空気分配層を有する。さらに、水蒸気−空気調整装置の機能は水蒸気と空気の比率を調整することなので、水蒸気−空気調整部分は、水蒸気発生部分と流体連絡している必要があり、水蒸気が、水蒸気発生部分と水蒸気−空気調整部分との間を自由に通過する。代表的な実施態様では、水蒸気−空気調整部分は、水蒸気発生部分に隣接している。さらに、水蒸気−空気調整部分は、水蒸気−空気比調節を達成するために、空気供給を必要とするが、特定の比または比の範囲が望ましいので、空気供給の調整が望ましい。空気供給は、例えば、装置の構築に使用する材料の密度および/または気孔率を制御することにより、あるいは水および/または空気不透過性の材料から製造された通路および開口部を使用することにより、調整することができる。
【0044】
水蒸気−空気調整部分と最終使用者との間の界面は、皮膚に近い、所望により皮膚接触層に近い潜熱供給表面である。幾つかの実施態様では、その潜熱供給表面および/または皮膚接触層が、皮膚と接触または部分的に接触することができる。別の実施態様では、潜熱供給表面および/または皮膚接触層と皮膚との間に小さな空気隙間があるのが望ましい場合がある。湿熱供給装置中で、発生した水蒸気は、優先的に潜熱供給表面に向けられる。水蒸気は、潜熱供給表面を通り、皮膚に送られ、水蒸気は、潜熱供給表面/皮膚接触層で凝縮し、潜熱エネルギーを使用者に供給するか、または水蒸気凝縮と水蒸気移動の組合せが起こることができる。
【0045】
潜熱供給「表面」の用語を選択した。しかし、表面は、特定の幾何学的形状に限定されるものではなく、平らな表面、輪郭がある表面、および不規則な表面を包含するが、これらに限定するものではない。潜熱移動表面は、材料の層を含んでなることができる。所望により、潜熱供給表面は、水蒸気−空気調整部分、および/または水蒸気−空気調整部分の表面、に一体的に取り付けることができる。あるいは、潜熱供給表面は、例えば本装置用の再使用可能なホルダーの一部でもよい。毛髪接触層を包含するこれらの実施態様では、潜熱供給表面は、皮膚接触層と接触することができる。
【0046】
<水蒸気発生部分>
本発明の水蒸気発生部分は、少なくとも一個の水蒸気供給源および熱供給源を含む。水蒸気供給源は、どのような方法ででも、エネルギーおよび水蒸気を発生させることができる。熱供給源の例としては、化学的エネルギー、酸と塩基の中和により発生するエネルギー、無機塩の水和熱、再加熱可能なゲル、および電気的エネルギーが挙げられるが、これらに限定するものではない。水蒸気供給源は、熱供給源と組み合わせることができる。例えば、発熱セルは、湿熱供給装置の水蒸気発生部分として、燃料(すなわち、熱供給源)と、水および/または水管理手段(manager)(例えばゲル)中に保持された水の混合物を包含することができる。あるいは、水と熱供給源を分離し、水を貯蔵部から供給するか、または表面、例えば毛髪、に塗布し、次いで熱発生源により発生した熱と接触させることができる。水と相容性がないエネルギー供給源、例えば電気的素子、を含んでなる水蒸気発生部分では、そのエネルギー供給源を使用して別の水含有部品を加熱し、水蒸気を発生させることができる。本発明で有用な水蒸気発生部分の一例は、少なくとも一個の水蒸気発生熱セル中に形成された水管理手段中の水を含む発熱組成物を使用する。湿熱供給装置は、単一の熱セルまたは複数の熱セルを含むことができる。特定の実施態様では、複数の熱セルが、本発明の装置で特に有用である。複数の熱セルにより、様々なサイズおよび形状の融通性のある装置が可能になる。さらに、複数の熱セルの使用により、水蒸気−空気混合比を容易に制御し、露点を制御することができる。例えば、熱セルの数を増減することにより、特定の水蒸気混合および通気設計に対する露点温度を増減することができる。さらに、蒸気発生部分の単位面積あたりに使用する熱セルの数を変えることにより、加熱時間および供給者される総エネルギーを制御することができる。面積あたりの熱セルの数が多い程、加熱時間が長くなる。面積あたりの熱セルの数が少ない程、加熱時間が短くなる。特定の実施態様では、上記のような湿熱供給装置、および一個以上の他の型の熱セル、例えば乾式熱セル、の組合せを使用するのが望ましい場合がある。
【0047】
<発熱組成物>
代表的な一実施態様では、水蒸気を発生させるための熱エネルギーを、粒子状発熱組成物を含んでなる発熱セルにより供給する。発熱組成物は、流動性の粒子状プレミックスおよび食塩水溶液を含んでなることができる。米国特許出願第11/233,916号に開示されている発熱組成物が特定の実施態様に好適である。
【0048】
粒子状発熱組成物は、望ましい特徴およびその望ましい特徴を達成するための特定の条件の両方を備えている。例えば、発熱セルの性能は、発熱組成物の粒子状成分の粒子径により2通りの主な様式で影響を受けることがある。第一に、発熱組成物中にある粒子状成分の粒子径の変動により、発熱組成物中で粒子の分離または偏析が起こることがある。粒子径は、粒子の移動度に直接影響し、粒子状成分は、それらの移動度が変動し、粒子の分離または偏析を引き起こすことがある。粒子偏析による発熱組成物の変化により、最適な、または望ましい反応挙動が得られないことがある。
【0049】
ここに規定する発熱組成物は、発熱組成物が粒子の分離または偏析を起こし難いような、規定された中間粒子径範囲を有する粒子状成分を含んでなる。しかし、ここに規定する範囲より上または下の中間粒子径範囲を有する粒子状成分が、ここに規定する発熱組成物に使用するのに好適である場合もある。
【0050】
発熱セルの性能が、発熱組成物の粒子状成分の粒子径により影響を受ける第二の様式は、粒子径が、粒子状発熱組成物を通る空気の到達可能性に影響を及ぼす様式である。水蒸気を放出するための活発な発熱反応を支援および持続するには、粒子状発熱組成物は、粒子状発熱組成物の反応物に空気が自由に到達できるように、多孔質であるべきである。粒子状発熱組成物は、初期含水量が高くても(高水蒸気発生のために)多孔質であり、反応を通して多孔質のままであるべきである。多孔質であり、多孔質のままであるためには、粒子状発熱組成物は、効率的な水管理手段成分を有する必要があり、発熱組成物の成分の粒子径は、ゆるい粒子充填挙動を示すべきである。理論に捕らわれたくはないが、適切な気孔率および気孔率の維持は、熱発生期間が長い(例えば24時間まで)熱セルを形成し、複数の熱セル中で一定した、再現性がある挙動を示す組成物を形成する上で重要である。
【0051】
一実施態様では、本開示の熱セルは、熱セルを携帯用湿熱供給装置中に取り入れた時に、数分間〜数時間の時間枠全体にわたって、信頼性のある加熱、したがって、信頼性のある、かなりの水蒸気発生を行う粒子状発熱組成物を含んでなることができる。代表的な粒子状発熱組成物は、粒子状プレミックス組成物および食塩水溶液を含んでなる。
【0052】
粒子状プレミックス組成物の成分としては、鉄粉末、炭素、吸収性ゲル化材料、および水が挙げられ、これらの成分を以下に詳細に説明する。食塩水溶液の成分としては、金属塩、水、および所望により水素ガス抑制剤、例えばチオ硫酸ナトリウム、が挙げられる。ここに規定する粒子状発熱組成物は、一般的に粒子状プレミックス組成物を製造し、そのプレミックスに食塩水溶液を急速に加え、発熱組成物を形成することにより、製造する。
【0053】
湿熱装置中で使用するために、粒子状発熱組成物は、急速な初期加熱および長時間の発熱を行う能力を有するべきである。この分野で公知の典型的な発熱装置は、一般的に高レベルの熱を急速に与えるが、数分間しか持続しないか、または長時間熱を与えることができるが、加熱するのに約30分間までを要することがある。本発明は、部分的に、粒子状発熱組成物中の成分を選択することにより達成される、急速で、長時間の加熱の両方を提供する。非限定的な例として、成分粒子径を修正することにより、加熱速度、加熱持続時間および発熱反応の温度を制御することができる。
【0054】
例として、発熱反応を修正する特別な一方法では、中間粒子径が約200μmである鉄粉末および中間粒子径が約300μmである吸収性ゲル化材料を使用し、その際、吸収性ゲル化材料と鉄粉末の中間粒子径の比が約1.5:1である。吸収性ゲル化材料と鉄粉末の特別な比により、従来の発熱組成物では達成するのが困難であった、急速な初期加熱および水蒸気発生を示す発熱組成物が得られる。高レベルの水分を従来の発熱組成物に取り入れようとすると、粒子間空隙中に水が入り、これが酸素の流れを抑制し、初期加熱速度を遅延させると考えられる。粒子間空隙容積の外に水を保持するために、水管理手段を発熱組成物の中に配合し、過剰の水を吸収することが多い。しかし、ほとんどの水管理手段、例えばバーミキュル石、および吸収性ゲル化材料は、酸化鉄反応は鉄粒子の表面積により制限されるという考えに基づいて非常に細かい鉄粒子を使用する技術における一般的な慣行のために、鉄粒子より遙かに大きい粒子径を有する。したがって、従来は、小さな鉄粒子は鉄表面積を増加すると考えられている。しかし、気孔率も反応速度で重要なファクターである。したがって、水管理手段と鉄の粒子間のサイズの違いにより、粒子偏析および緻密な粒子充填が促進され、反応を抑制する。例えば、水管理手段と鉄粒子の粒子径比が約7:1を超える場合、緻密な粒子充填および反応抑制が起こることがある。
【0055】
したがって、本発明により、吸収性ゲル化材料と鉄粉末の特別な中間粒子径比を有する発熱組成物を使用し、所望の充填を達成する。粒子径の分布および比を選択することにより、粒子間空隙容積中における過剰の水が防止され、粒子偏析および空隙容積による充填が防止され、初期加熱速度が高くなる。本発明における吸収性ゲル化材料と鉄粉末の中間粒子径比は、約10:1〜約1:10、あるいは約7:1〜約1:7、あるいは約5:1〜約1:5、あるいは約3:1〜1:3である。

【0056】
本明細書に記載する代表的な粒子状発熱組成物は、鉄粉末の酸化により発熱すると考えられる。鉄粉末の純度、種類、サイズ、等には、水および空気との酸化反応による発熱に使用できる限り、特に制限は無い。
【0057】
本発明の粒子状発熱組成物は、一種以上の鉄粉末成分を、乾燥プレミックス組成物の重量に対して、約10%〜約90%、あるいは約30%〜約88%、あるいは約50%〜約87%の濃度で含んでなる。さらに、本発明の装置は、約0.1g/cm水蒸気発生部分を超える鉄粉末を含んでなることができる。
【0058】
鉄粉末に好適な供給源の例としては、鋳鉄粉末、還元鉄粉末、電解鉄粉末、スクラップ鉄粉末、スポンジ鉄、銑鉄、鍛造鉄、各種の鋼、鉄合金、これらの鉄供給源の処理物、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0059】
スポンジ鉄は、スポンジ鉄の内部表面積が高いために、特に有利な鉄粉末の一供給源である。内部表面積は、外部表面積より1等級大きく、反応性は、粒子径により制御することはできない。市販されているスポンジ鉄の例としては、New Jersey、米国、にあるHoeganaes Corporationから市販のM−100およびF−417が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0060】
中間粒子径が約50μm〜約400μm、あるいは約100μm〜約400μm、あるいは約150μm〜約300μmである鉄粉末が、本発明で使用するのに好適である。鉄の中間粒子径と吸収性ゲル化材料の中間サイズの比が、それらの粒子のサイズおよび分布により、十分な空隙容積を有し、実質的に自由に空気に到達できる粒子充填が得られる比である限り、他のサイズも同様に好適である。
【0061】
鉄粉末およびここに規定する他の粒子状成分の中間粒子径は、篩法、例えばASTM法B214に開示されている方法、使用することにより測定することができる。一般的に、粒子を、異なったサイズからなる一連の篩を通してスクリーニングし、各スクリーン上に保持された粒子の重量画分を測定する。次いで、各スクリーンにおける粒子の重量画分を使用し、累積重量分布曲線を作成する。累積重量分布曲線は、粒子径を、次に最も大きい篩上に保持された粒子径未満の粒子の累積された重量%に対してプロットすることにより、作成される。中間直径は、累積重量分布曲線から決定するが、その際、中間直径は、累積重量の50%に相当する粒子径として定義される。累積重量分布曲線作成の詳細は、Particle Size Measurement、153−156頁、第4版、Terrence Allen, (1990)の「Methods of Presenting Size Analysis Data」に記載されている、
【0062】
本発明の一実施態様による代表的な粒子状発熱組成物は、一種以上の炭素成分を、組成物の重量に対して約1%〜約25%、あるいは約1%〜約15%、あるいは約1%〜約10%の濃度で含んでなる。
【0063】
ここで使用するのに好適な炭素の例としては、活性炭、非活性炭、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。炭素成分は、中間粒子径が約25μm〜約200μm、あるいは約50μm〜約100μmである。活性炭は特に有用である。さらに、各種炭素の組合せも有用である。
【0064】
活性炭は、内側構造が極めて多孔質であり、特に良好な酸素吸着能力を有する。実際、活性炭は、活性炭が濡れている時に、極めて良く酸素を吸着する能力を有し、したがって、活性炭が酸化反応における触媒として機能することができる。したがって、高水吸収材料、例えば吸収性ゲル化材料またはバーミキュル石の存在下で、炭素に対する水の利用可能性を制限することができ、高水吸収材料を加える前に、活性炭を予め濡らしておくことは、重要である。理論に捕らわれたくはないが、粒子状プレミックスに食塩水を与えた場合、活性炭は、高水吸収材料に対して効果的に競合できないので、予め濡らしておくべきであると考えられる。活性炭を予め濡らした場合、吸着熱が放出されるので、活性炭に吸着された水が熱力学的に低エネルギー状態になり、水が活性炭から高水吸収材料に移動しない。したがって、高水吸収材料を加えた時に、活性炭は濡れたままであり、酸素を吸着するための触媒として機能することができる。
【0065】
その触媒的挙動に加えて、活性炭は水を吸収する能力を有し、発熱反応のための水管理手段としても作用することができる。さらに、活性炭は、臭気、例えば鉄粉末の酸化により引き起こされる臭気、を吸着することができる。
【0066】
好適な炭素の例としては、ココナツシェル、木材、木炭、石炭、骨炭、等から製造された活性炭があり、それらの組合せがここで使用するのに好適であるが、他の原料、例えば動物性物質、天然ガス、脂肪、油、樹脂、およびそれらの組合せから製造された活性炭も有用である。使用する活性炭の種類に特に制限は無い。しかし、好ましい活性炭は、良好な酸素吸着能力を有する。市販されている活性炭の例としては、Covington(米国バージニア州)にあるMeadWestvacoから市販の活性炭がある。
【0067】
さらに、ここに規定する粒子状発熱組成物中にある炭素の量は、粒子間空隙容積を最大限にするために、最小に抑えるべきである。炭素は典型的には最も細かい粒子成分であり、過剰の炭素は、炭素による、他の材料の大きい粒子間の粒子間空隙容積の充填を引き起こすことがある。したがって、湿熱発生用の発熱組成物を形成するのに必要な炭素の量は、ここで使用する吸収性ゲル化材料のレベルが比較的高いために、一般的に、従来の発熱組成物に使用される炭素の量より遙かに低い。したがって、ここでは炭素を、主としてその触媒活性のために、およびその水保持特性のために最小量で使用する。
【0068】
低レベルの予め濡らした炭素により、プレミックスは食塩水溶液を容易に吸収できるので、本発明の熱セルを高速で製造するには、低レベルの予め濡らした炭素が非常に望ましい。高レベルの炭素では、炭素の湿潤のために、食塩水吸収速度が低い。したがって、低レベルの予め濡らした炭素により、ここに規定する熱セルの製造速度が大きく増加する。
【0069】
本発明の粒子状発熱組成物は、一種以上の吸収性ゲル化材料を組成物の重量に対して約1%〜約25%、あるいは約1%〜約15%、あるいは約1%〜約10%の濃度で含んでなる。
【0070】
ここで使用するのに好適な吸収性ゲル化材料(「AGM」)は、本発明の粒子状発熱組成物中に水を物理的または化学的に保持することができる。特に、吸収性ゲル化材料は、水を鉄粉末成分に放出するために保存し、水を調整された様式で放出する機能を果たす。加熱により、保存された水がAGMから放出され、熱の吸収により水蒸気に変換され、したがって、熱エネルギーを水蒸気中に蒸発潜熱として保存する。さらに、保存された水の一部は、活性炭の水分レベルを維持することにも利用される。過剰の水を、粒子間空隙容積の代わりに、AGM中に保存することにより、熱セル中の発熱組成物は、鉄を急速に酸化し、AGM中に保存された水から水蒸気を発生させるのに十分に高い内部温度を生み出す。AGMの高い水保持能力のために、熱セル中の発熱組成物は、長時間にわたって反応性が高い状態にある。理論に捕らわれたくはないが、AGMは、液体の水が粒子状発熱組成物の空隙中に入る、および/または保持されるのを阻止または抑制することができ、それによって、発熱組成物の水浸しを防止できると考えられる。
【0071】
好適な吸収性ゲル化材料の例としては、流体吸収特性を有し、水と接触した時にヒドロゲルを形成することができる吸収性ゲル化材料がある。そのような吸収性ゲル化材料の例は、ポリ酸、例えばポリアクリル酸、を基剤とする、ヒドロゲル形成、吸収性ゲル化材料である。この種のヒドロゲル形成重合体状材料は、液体、例えば水、との接触により、そのような流体を吸収し、ヒドロゲルを形成する材料である。これらの特に有用な吸収性ゲル化材料は、一般的に、重合可能な不飽和の酸含有モノマーから製造された、実質的に非水溶性の、僅かに架橋した、部分的に中和したヒドロゲル形成重合体材料を含んでなる。そのような材料では、不飽和の酸含有モノマーから形成された重合体状成分が、ゲル化剤全体を含んでなるか、または他の種類の重合体部分、例えばデンプンまたはセルロース、上にグラフト化することができる。アクリル酸グラフト化されたデンプン材料は、この後者の種類の材料である。したがって、具体的な好適な吸収性ゲル化材料としては、加水分解されたアクリロニトリルがグラフト化されたデンプン、アクリル酸がグラフト化されたデンプン、ポリアクリレート、無水マレイン酸系共重合体、およびそれらの組合せがある。ポリアクリレートおよびアクリル酸がグラフト化されたデンプン材料は、特に有用である。市販のポリアクリレートとしては、Chatanooga(米国テネシー州)にある日本触媒から市販のポリアクリレートがある。
【0072】
吸収性ゲル化材料は、中間粒子径が約300μm〜約800μm、あるいは約400μm〜約800μm、あるいは約500μm〜約800μmである。中間粒子径が300μm以上の吸収性ゲル化材料は、粒子偏析作用がほとんど、または全く無いことが分かっている。偏析作用を軽減することにより、温度の持続が改良されるので、悪影響、例えば皮膚の火傷、を引き起こさずに、所望の熱有益性が達成される。偏析作用を軽減することにより、複数の熱セルを含んでなる携帯用湿熱供給装置の高速製造が可能になり、湿熱を4〜5時間まで供給することができる。
【0073】
上に説明したように、ここに規定する粒子状発熱組成物は、吸収性ゲル化材料と鉄粉末の特定中間粒子径比を有する。これらの限定された、選択された中間粒子径比の成分を含んでなる発熱組成物は、偏析作用をほとんど、または全く示さず、所望の湿熱有益性を得るための意図する熱的挙動に適合する発熱組成物を与える。
【0074】
吸収性ゲル化材料に加えて、本発明の粒子状発熱組成物は、所望により、毛細管機能および/または親水性を有する多の水保持材料を含んでなることができる。これらの所望により使用する水保持材料は、粒子状発熱組成物中に、組成物の重量に対して約0.1%〜約25%、あるいは約0.5%〜約20%、あるいは約1%〜約15%の濃度で含むことができる。そのような所望により使用する水保持材料の例としては、バーミキュル石、多孔質ケイ酸塩、木材粉末、木粉、綿、紙、植物材料、カルボキシメチルセルロース塩、無機塩、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。吸収性ゲル化材料および所望により使用する水保持材料は、米国特許第5,198,590および第5,984,995号にさらに記載されている。
【0075】
<金属塩>
本発明の粒子状発熱組成物は、一種以上の金属塩を、組成物の重量に対して約0.5%〜約10%、あるいは約0.5%〜約7%、あるいは約1%〜約5%の濃度で含んでなる。
【0076】
ここで使用するのに好適な金属塩の例としては、鉄粉末の表面を活性化し、空気との酸化反応を容易にし、発熱組成物に導電性を与え、腐食(すなわち、酸化)反応を持続するための反応促進剤として役立つ金属塩が挙げられるが、これらに限定するものではない。一般的に、幾つかの好適なアルカリ、アルカリ土類金属、および遷移金属塩が存在し、これらを単独で、または組合せで使用し、鉄の腐食反応を持続することができる。
【0077】
好適な金属塩の例としては、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。硫酸塩の具体例としては、硫酸第二鉄、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マンガン、硫酸マグネシウム、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。塩化物の具体例としては、塩化第二銅、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マンガン、塩化マグネシウム、塩化第一銅、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。塩化第二銅、塩化ナトリウム、およびそれらの混合物が特に好適な金属塩である。市販の塩化ナトリウムの例としては、Morton Salt(米国イリノイ州シカゴ)から市販の塩化ナトリウムがある。
【0078】
<水>
本発明の粒子状発熱組成物は、水を、組成物の重量に対して約1%〜約50%、あるいは約1%〜約35%、あるいは約5%〜約33%の濃度で含んでなる。ここで使用するのに好適な水は、どのような好適な供給源からの水でもよく、その例としては、水道水、蒸留水、脱イオン水、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0079】
発熱セルの熱的性能は、水分レベルに非常に敏感であり、少量の水は短時間の反応しか与えず、多過ぎる水は、所望の加熱速度を与える、および/または熱セルを水浸しにし、反応を終わらせる。湿熱を発生する装置で、一つの問題は、湿熱用の水蒸気を造り出すのに水の供給が必要なことである。しかし、本発明の鉄およびAGMの粒子径および粒子径分布を選択することにより形成される空隙空間を有する粒子状発熱組成物は、反応の経過全体にわたってセルあたり0.25グラムを超える大量の水蒸気を発生するのに非常に効果的な熱セルを与えるのみならず、所望の温度を迅速に達成する急速な初期加熱時間を有する熱セルも与えることが分かっている。これは、粒子状発熱組成物が高い内部水保持量(好ましくは主要容器として作用するAGMによる)、および高い粒子間空隙容積を有するように、十分な重量比の水と吸収性ゲル化材料を配合することにより、達成される。本発明の粒子状発熱組成物は、水と吸収性ゲル化材料の重量比が、発熱組成物の重量で約3:1〜約9:1、あるいは約4:1〜約7:1である。
【0080】
本発明の粒子状発熱組成物は、高レベルの水を含んでなるが、従来の熱セルより低いセル重量レベルで構築することができる。したがって、本発明の発熱組成物は、高い水濃度でより効果的に使用され、望ましい量および持続時間の水蒸気発生を達成するのに必要な発熱組成物がより少なくて済む。
【0081】
<所望により使用する成分>
本発明の発熱組成物は、発熱組成物に使用するための、公知の、または効果的な一種以上の所望により使用する成分をさらに含んでなることができるが、但し、所望により使用する成分は、上記の組成物成分と物理的および化学的に相容性があるか、または製品の安定性、美観、または性能を過度に損なわないことが必要である。
【0082】
ここで使用するのに好適な所望により使用する成分には、粒子を凝集させるための凝集助剤、その例としては、コーンシロップ、マルチトールシロップ、結晶性ソルビトールシロップ、および無定形ソルビトールシロップが挙げられるが、これらに限定するものではない、乾燥結合剤、その例としては、ミクロクリスタリンセルロース、微小セルロース、マルトデキストリン、噴霧されたラクトース、共結晶化されたスクロースおよびデキストリン、変成デキストロース、マンニトール、予備ゼラチン化されたデンプン、リン酸二カルシウム、および炭酸カルシウムが挙げられるが、これらに限定するものではない、酸化反応促進剤、その例としては、元素状クロム、マンガン、銅、および該元素を含んでなる化合物が挙げられるが、これらに限定するものではない、水素ガス抑制剤、その例としては、無機および有機アルカリ化合物、が挙げられるが、これらに限定するものではない、およびアルカリ弱酸塩、その具体例としては、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、およびプロピオン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定するものではない、充填材、その例としては、木材粉塵、綿リンター、およびセルロースを包含する天然セルロース系断片、ポリエステル繊維を包含する断片形態の合成繊維、合成樹脂フォーム、例えばポリスチレンおよびポリウレタンフォーム、シリカ粉末、多孔質シリカゲル、硫酸ナトリウム、硫酸バリウム、酸化鉄、およびアルミナを包含する無機化合物、ケーキング防止剤、その例としては、リン酸三カルシウムおよびシリコアルミン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定するものではない、およびそれらの混合物のような材料が含まれる。
【0083】
そのような成分は、増粘剤も含み、その例としては、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、カルボキシメチルセルロース、およびアルファ−デンプンが挙げられるが、これらに限定するものではない、および界面活性剤、その例としては、陰イオン系、陽イオン系、非イオン系、双生イオン系、および両性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定するものではない。本発明の組成物または系には、適切であれば、増量剤を包含する、さらに他の所望により使用する成分を包含することができ、その例としては、メタケイ酸塩、ジルコニウム、およびセラミック、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。所望により使用する成分は、粒子状発熱組成物中に、組成物の重量に対して約0.01%〜約35%、あるいは約0.1%〜約30%の濃度で含むことができる。
【0084】
酸化反応が起こるためには、酸素が必要である。しかし、ここに記載する代表的な実施態様では、内部酸素供給源を必要としない。所望により、湿熱供給装置の範囲内にある他の実施態様では、酸素を発生する化学的材料を粒子状発熱組成物中に、その製造の時点で配合することができる。本発明で使用するのに好適な酸素供給源の例としては、空気および人工的に作られた、様々な純度の酸素が挙げられるが、これらに限定するものではない。空気が、好都合で、安価であるので、特に有用である。
【0085】
<熱セル>
本発明による水蒸気発生部分の熱セルは、発熱鉄酸化反応系を使用して水蒸気供給源を与える粒子状発熱組成物を含んでなる。粒子状発熱組成物を含んでなり、水蒸気供給源として使用し、湿熱を供給する熱セルは、高含水量でも高い反応性を維持することができる粒子状発熱組成物を有するべきである。高含水量は、長時間にわたって高速度で水蒸気を発生させる。粒子状発熱組成物は、熱セルを携帯用湿熱供給装置の水蒸気発生部分中に取り入れた時に、人間の皮膚と接触するのに安全な温度で水蒸気を急速に発生させる。水蒸気発生部分は、水蒸気−空気調整部分と連絡しており、水蒸気−空気調整部分は、水蒸気と水蒸気−空気混合物中の空気の比率を調整することにより、水蒸気の露点を予め選択された温度(すなわち、皮膚に火傷を起こさない温度)に調節する。
【0086】
本発明の発熱組成物は、粒子状発熱組成物である。ここで使用する「粒子状」は、組成物中に含まれる個別の粒子を指す。ここに規定する粒子状発熱組成物は、個別の粒子を含み、各粒子は、中間粒子径が約25μm〜約800μmである。特定の実施態様では、所望の空隙細孔径空間を有する組成物を与える粒子径範囲が好ましい。
【0087】
代表的な実施態様では、発熱組成物は、濡れた炭素、鉄、およびAGMのプレミックスを調製し、これを続いて食塩水溶液で処理することにより製造される。一実施態様では、組成物は、約10〜約90重量%の鉄粉末、約1〜約25重量%の、活性炭、非活性炭およびそれらの混合物から選択された炭素、約1〜約25重量%、あるいは約2〜約12重量%のAGM、および約1〜約50重量%、あるいは約1〜約35重量%、または約15〜約35重量%の水を含んでなることができる。本発明の代表的な単一熱セルは、セルあたり約0.4gのプレミックス〜セルあたり約2.5gのプレミックス、およびセルあたり約0.4gの食塩水溶液〜セルあたり約1.5gの食塩水溶液を含んでなることができる。本発明の熱セルの総セル重量は、セルあたり約0.8g〜約10.0g、あるいは約1.5g〜約3.5g、あるいは約2.5g〜約3.0gでよい。湿熱供給装置の特定の実施態様では、複数の熱セルを装置中に使用することができる。
【0088】
上記のように、発熱組成物の粒子状成分、例えば鉄およびAGMの粒子径選択は、発熱組成物中の粒子の分離または偏析を最少に抑えるのに重要である。粒子径は、粒子の移動度に直接影響し、粒子状成分は、それらの移動度が変動し、粒子の分離または偏析を引き起こすことがある。ここに規定する発熱組成物は、好ましくは発熱組成物が粒子の分離または偏析を起こし難いような、限定された中間粒子径範囲を有する粒子状成分を含んでなる。しかし、ここに規定する範囲の上または下にある中間粒子径範囲を有する粒子状成分が、ここに規定する発熱組成物に使用するのに好適である場合もある。
【0089】
本発明の熱セルは、ほとんど、または全くの従来の市販熱セルと比較して小型であり、粒子偏析作用を相殺するために過剰レベルの発熱組成物を使用することはできない。上記のように、本発明の粒子状発熱組成物では、鉄粉末を吸収性ゲル化材料に対して特別な比で使用することにより、粒子偏析作用を軽減している。理論に捕らわれたくはないが、そのような発熱組成物の酸化反応速度は、発熱組成物の気孔率により制御されると考えられる。粒子状発熱組成物を通した酸素の到達性は、粒子の充填挙動、すなわち、空隙容積により、および発熱組成物中に存在する水の量により影響される。
【0090】
代表的な一実施態様では、熱セルが、少なくとも2個の対向表面を含んでなる統合された構造に形成され、好ましくは一方の表面が実質的に非空気透過性で、非水分透過性の表面、例えばフィルム層基材あり、一方が通気された、皮膚に面した、高度に空気透過性で水分透過性の表面、例えば重合体不織材料である。湿熱を皮膚に向けるには、熱セルの空気および水分透過性の側を、湿熱供給装置の潜熱供給表面および皮膚に面する側に向けて配置する。一実施態様では、空気および水分透過性表面を、湿熱供給装置の熱セルと水蒸気−空気調整部分との間に配置し、水蒸気−空気調整部分を熱セルと潜熱移動表面/毛髪に面した表面との間に配置する。実質的に非空気透過性表面は、外部表面であるか、または外部表面の近くに向けることができる。
【0091】
一様な加熱および水蒸気発生は、複数の熱セルを使用することにより、与えられる。複数の熱セルを使用することにより、個々の熱セルのサイズを小さくすることができる。比較的小さいサイズの熱セル、およびそれらの、本発明の装置における空間配置により、熱セルに対する一様な空気流が可能になる。さらに、発生した水蒸気を、使用する熱セルの数およびそれらの空間配置により、制御することができる。本発明を制限しない例として、2基の同じサイズおよび構成(すなわち、熱セルの数および熱セル間の空間配置を除いた全ての点で等しい)の湿熱供給装置の一実施態様では、24個の熱セルで製造された装置の水蒸気発生速度が、12個の熱セルで製造された装置の水蒸気発生速度の2倍未満であるが、4倍長く持続する。理論に捕らわれたくはないが、この非直線的な水蒸気発生および持続時間関係は、装置の、空気が到達し得る固定された表面積によるものと考えられる。したがって、反応速度、水蒸気発生速度、および発熱の持続時間は、使用する熱セルの数およびそれらの空間配置により制御することができる。
熱セルの、皮膚に面する通気された表面
【0092】
熱セルの、皮膚に面する通気された表面(例えば「通気された熱セル表面」)は、水蒸気発生部分における粒子状発熱組成物に空気を供給し、粒子状発熱組成物が熱セルから漏れるのを阻止すること、ならびに水蒸気−空気調整部分の一部として水蒸気−空気混合層を形成することの二重機能を果たすことができる。通気された皮膚に面する表面は、特に装置が垂直方向で使用される場合、水蒸気と空気の混合の調整に影響を及ぼす。したがって、通気された皮膚に面する表面を変化させることにより、発生した水蒸気と混合される空気の量を調整し、水蒸気−空気混合物の露点温度を下げることができる。しかし、通気された皮膚に面する表面は、その空気透過性が高いので、装置の反応速度、特に水蒸気発生速度に対する制限効果は無い。
【0093】
熱セルの、皮膚に面する通気された表面は、SMMS(スパンボンド−メルトブロー−メルトブロー−スパンボンド)材料、SMS(スパンボンド−メルトブロー−スパンボンド)材料、スパン−ボンド材料、メルト−ブロー材料、メッシュ、織布、およびそれらの組合せから形成することができ、それらの坪量は、約15gsm(グラム/平方メートル)〜約90gsm、あるいは約15gsm〜約76gsmでよい。SMMS材料では、構造中の「S」層は、強度を与え、空気進入を可能にし、「M」層は、遙かに細いデニールのフィラメントから製造され、小さな炭素粒子がセルの外に漏れるのを阻止する機能を果たす。SMMS層に使用する好適な材料の例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルまたは他の、当業者には公知の好適な重合体材料が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0094】
熱セルの、皮膚に面する通気された表面は、約25cm/cm/秒を超える空気透過率を有することができ、約5,000g/m/24時間を超える水蒸気透過速度を有することができる。通気された表面は、厚さが約0.05mm〜約1mm、あるいは約0.1mm〜約0.8mm、あるいは約0.4mmでよい。
【0095】
<熱セルの対向表面>
熱セルの対向する非空気透過性または半空気透過性/非水分透過性または半水分透過性表面は、フィルムまたは不織布に張り合わせたフィルムから製造し、フィルム層基材を形成することができる。一般的に、好適なフィルムは、熱密封性を有するフィルムであり、容易に熱融解し得る。不織材料は、使用する場合、フィルム層基材を支持し、一体性を与える。好適なフィルムの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリスチレン、けん化したエチレン−ビニルアセテート共重合体、エチレン−ビニルアセテート共重合体、天然ゴム、再生ゴム、および合成ゴム、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。フィルム層基材は、厚さが約1μm〜約300μmであり、非空気透過性または半空気透過性および非水分透過性でよい。使用する場合、不織布に関しては、軽量および高引張強度の好ましい特性を有する不織布、例えばナイロン、レーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体、ポリオレフィン、ポリアミド、またはポリエステルが好適である。
【0096】
好ましい不織材料の例は、坪量が約15gsm〜約100gsm(グラム/平方メートル)のSMMSラミネーション加工した構造であり、特別な実施態様では、坪量が約2gsm〜約16gsm、あるいは約4gsm〜約10gsm、あるいは約6gsm〜約8gsmのメルトブロウン層であるが、これらに限定するものではない。そのような不織材料は、一般的にRiedelの「不織接着方法および材料(Nonwoven Bonding Methods and Materials)」、Nonwoven World,(1987)に記載されている。市販不織シートの例は、材料番号W502FWHであり、これは、Waynesboro,米国バージニア州にあるPGI(Polymer Group International)またはHaxle Township,米国ペンシルバニア州にあるFQN(First Quality Nonwoven)から市販されている。
【0097】
有用なフィルム層基材の例としては、厚さが約5μm〜約100μmのポリ(エチレン−ビニルアセテート)または低密度ポリエチレン(LDPE)のフィルムにラミネーション加工されたポリプロピレン不織シートが挙げられるが、これらに限定するものではない。市販ポリプロピレン/エチレンビニルアセテート(PP/EVA)フィルムの例は、材料番号DH245であり、これは、Cincinnati,米国オハイオ州のClopay Plasticsから市販されている。
【0098】
熱セルは、通気された表面材料および非/半透過性フィルムの対向表面を、それらの周辺部で一つに接着し、それによって小袋、封筒またはポケットを形成することにより、形成することができる。ポケットは、非/半空気および非/半水分透過性基材で、真空、熱成形、機械的エンボス加工、真空エンボス加工、または他の妥当な手段により製造することもできる。ここで使用するには、「熱成形(Thermoforming)」、The Wiley Encyclopedia of Packaging Technology,pp.668−675(1986),Marilyn Bakker,ed.に記載されている熱成形が好ましい。
【0099】
粒子状発熱組成物を充填した時、各熱セルは、充填体積、空隙容積、およびセル容積を有する。ここで使用する充填体積は、充填された熱セル中の粒子状組成物の体積を意味する。ここで使用する空隙容積は、完成したセルの、セル中の粒子状組成物により充填されずに残った、熱セル中の差圧無しに、および基材材料をさらに延伸または変形させずに測定した容積を意味する。ここで使用するセル容積は、熱セルの充填体積+空隙容積を意味する。充填体積とセル容積の比は、約0.7〜約1.0、あるいは約0.75〜約1.0、あるいは約0.8〜約1.0、あるいは約0.85〜約1.0、あるいは約0.9〜約1.0である。
【0100】
熱セルは、熱セルの最も厚い点における高さまたは厚さで測定することができる。代表的な実施態様では、熱セルの最も厚い点における厚さは、約0.2cm(センチメートル)を超え、約1.0cmまで、好ましくは約0.3cmを超え、約0.9cmまで、あるいは約0.4cm〜約0.8cm、あるいは約0.5cm〜約0.7cmである。
【0101】
得られる熱セルは、どのような幾何学的形状でも、例えばディスク、三角形、ピラミッド、円錐、球、正方形、立方体、長方形、平行六面体、円筒、長円、等でもよい。熱セルの形状は、その幾何学的構造で、細長くすることができ、長軸を基材に対して平行にして高さが約0.2cm〜約5cm、あるいは約0.5cmを超え、約1cmまで、幅が約0.2cm〜約20cm、あるいは約5cm〜約10cm、長さが約1cm〜約20cm、あるいは約5cm〜約10cmで、約0.04cm〜約2,000cm、または0.04cm〜約30cm、あるいは約1.25cm〜約10cmのセル容積を得ることができる。
【0102】
あるいは、形状は、ディスク形状の幾何学的構造を有し、セル直径が約0.2cm〜約5cm、約1cm〜約4cm、あるいは約2cm〜約3cm、高さが約0.2cm〜約1cm、あるいは約0.3cm〜約0.9cm、あるいは約0.4cm〜約0.8cm、あるいは約0.5cm〜約0.7cmで、約0.0045cm〜約20cm、あるいは約0.2cm〜約1cmのセル容積を得ることができる。
【0103】
熱セルは、セルあたり、約0.03cm〜約20cm、あるいは約0.1cm〜約20cm、あるいは約1cm〜約20cmの平面図表面積を有することができる。このセルあたりの面積を有する熱セルは、身体の形態と良く適合する可撓性装置に容易に取り入れ、標的区域に均質で一様な熱を与え、着用者の快適性を改良することができる。
【0104】
熱セルは、セルあたり約0.4gのプレミックス〜セルあたり約2.5gのプレミックス、あるいはセルあたり約1.0gのプレミックス〜セルあたり約2.4gのプレミックス、あるいはセルあたり約1.5gのプレミックス〜セルあたり約2.3gのプレミックスを有することができる。このセルあたりのプレミックス重量を有する熱セルも、身体の形態と良く適合する可撓性装置に容易に取り入れ、標的区域に均質で一様な熱を与え、着用者の快適性を改良することができる。
【0105】
湿熱装置の一実施態様では、複数の熱セルを使用する。これらの熱セルの全てが、湿熱発生装置または湿熱発生装置の構成部品でよいか、または熱セルの一部が、乾式熱セルと併用する湿熱発生装置または湿熱発生装置の構成部品でよい。
【0106】
水蒸気供給源が熱セル中に取り込まれている一個以上の湿熱供給装置を含んでなる代表的な湿熱ラップ(wrap)では、水蒸気供給源は、水蒸気発生部分の総平面積の約25%〜約90%、あるいは約25%〜約75%、あるいは約25%〜約60%の平面積を含んでなることができる。
【0107】
<水蒸気−空気調整部分>
本発明の湿熱供給装置は、上記の水蒸気発生部分を含む。水蒸気発生部分は、好ましくは水蒸気を水蒸気−空気調整部分に選択的に向ける。ここに記載する代表的な一実施態様では、これは、水蒸気発生装置の片側にある透過性フィルムおよび水蒸気発生装置の反対側にある不透過性フィルムを使用することにより、達成される。水蒸気−空気調整部分は、露点温度を調節する。水蒸気発生部分は、水蒸気−空気調整部分と流体連絡しており、装置から出る水蒸気−空気混合物の露点温度を、使用者の毛髪に潜熱を供給するための安全温度に下げる。所望により、水蒸気−空気調整部分は、水蒸気発生部分から発生した水蒸気を潜熱供給表面に向け、最終的に使用者の身体または皮膚に供給し、快適な装置を提供するが、その装置は、皮膚に対して保持できる、皮膚の近くに、表面と皮膚との間に調整された、予め選択された量の隙間を持たせて保持できる、接着剤により皮膚に接着させるか、またはホルダー、例えば再使用可能な布製ポケット、ラップ、または身体表面、例えば頭、に適合させることにより少なくとも部分的に、所定の位置に保持される輪郭のある装置の中に配置することができ、そのホルダーは、水蒸気発生部分および/または水蒸気−空気調整部分を所望の身体部分に対して所定の位置に保持する。代表的な一実施態様では、水蒸気−空気調整部分または水蒸気−空気調整部分の一部を、ホルダーの構造中に包含することができる。ホルダーは、一回使用の使い捨てホルダーでも、繰り返し使用できるホルダーでもよい。ホルダーは、接着剤、ファスナー、タイ、噛み合わせ部分、ボタン、スナップ、またはそれらの組合せを包含する、ただし、これらに限定するものではない、この分野で公知の様々な手段のいずれかにより、所定の位置に保持することができる。
【0108】
代表的な一実施態様では、水蒸気−空気調整部分は、少なくとも一個の水蒸気−空気混合層および少なくとも一個の水蒸気−空気分配層を含んでなる。これらの層は、水蒸気および空気が、それらの層と水蒸気発生部分と間を通過できるように配置されている。水蒸気−空気調整部分により、特に装置を圧迫する様式で装置を使用する場合に、水蒸気発生部分の中に、および水蒸気発生部分の外に、空気および水蒸気が一様に流れ易くなる。圧迫の影響を最少に抑えるために、圧迫に耐えられる水蒸気混合層を使用することが望ましい。そのような材料の一例は、ニードルパンチ加工した不織材料である。水蒸気−空気調整部分は、一個以上の潜熱移動表面および/または皮膚接触層も含んでなることができる。潜熱移動表面/皮膚接触層は、水蒸気−空気調整部分の一部であるか、または材料の層でよい。
【0109】
一実施態様では、水蒸気−空気混合層、水蒸気−空気分配層および潜熱供給表面および所望により使用する皮膚接触層を含んでなる水蒸気−空気調整部分の空気透過率は、ASTM法No.D737を使用して測定し、約25cm/cm/秒〜約8000cm/cm/秒、あるいは約300cm/cm/秒〜約8000cm/cm/秒、あるいは約500cm/cm/秒〜約7000cm/cm/秒である。別の実施態様では、水蒸気−空気混合層、水蒸気−空気分配層および潜熱供給表面および所望により使用する皮膚接触層を含んでなる水蒸気−空気調整部分の空気透過率は、ASTM法No.D737を使用して測定し、約25cm/cm/秒〜約100cm/cm/秒、あるいは約30cm/cm/秒〜約70cm/cm/秒、あるいは約40cm/cm/秒〜約60cm/cm/秒、あるいは約50cm/cm/秒である。適切な空気透過率は、例えば湿熱供給装置、例えばスキンケア活性成分を供給するための装置の使用によって異なる。水蒸気−空気調整部分の水蒸気透過率は、ASTM法No.E96を使用して測定し、約500g/m/24時間〜約2,500g/m/24時間、あるいは約1,000g/m/24時間〜約2,000g/m/24時間、特に約1400g/m/24時間を超える。代表的な一実施態様では、水蒸気−空気調整部分は、一個以上の水蒸気−空気混合層および一個以上の水蒸気−空気分配層を含んでなる。
【0110】
代表的な一実施態様では、特に有用な配置は、単一の水蒸気−空気分配層および単一の水蒸気−空気混合層を使用する。この実施態様では、湿熱装置を、湿熱ラップおよび/またはパック中に取り入れる。湿熱装置の単一の水蒸気−空気分配層および単一の水蒸気−空気混合層の周辺部が湿熱ラップパックの周辺部の中で密封されるように、湿熱ラップおよび/またはパックの周辺部を熱密封する。好ましい実施態様では、水蒸気−空気分配層を、フォーム材料で構築し、その際、フォームのベース材料が空気および水蒸気に対して実質的に不透過性であるが、空気および/または水蒸気を通過させる通路および/または開口部を有する。周辺部で熱密封された有孔フォーム層水蒸気−空気分配層を含んでなる水蒸気−空気分配層は、湿熱ラップの周辺部の中に空気が入り込むのを制限する。その結果、水蒸気分配層中の開口部および/または通路のサイズおよび数が、十分な空気に水蒸気を発生させ、水蒸気を容易にラップから外に、皮膚の方に向けて移動させることにより、装置を調整するように作用し、それによって、反応速度を、さらに発生する水蒸気の量を調整する。発生する水蒸気の量を調節することにより、装置の水蒸気調整部分を簡素化することができる。その上、熱セルを使用する実施態様では、反応のための空気量を調整することにより、セルが過度に高い温度に到達しないように、熱セルの加熱も制御し易くなる。代表的な一実施態様では、0.8mm(1/32インチ)フォームの単層により、効果的に湿熱を形成し、移動させること、および交換可能な湿熱パックを手で気密包装から取り出して活性化を開始し、再使用可能なヒートラップまたはホルダーの中に入れる安全な取扱の両方が十分に可能になる。取扱に好都合な薄い湿熱パックは、使い捨て湿熱パックを安全に取り扱い、ラップの少なくとも一部を都合良く再使用することができるので、半耐久性湿熱ラップまたは他の半耐久性湿熱装置に使用するのに望ましい。
【0111】
特定の実施態様では、水蒸気調整部分を構築するのに、一個以上の水蒸気−空気混合層を使用することができ、一個以上の水蒸気−空気分配層を使用することができ、一個以上の皮膚接触層を使用することができる。代表的な一実施態様では、特に有用な配置は、2個の水蒸気−空気混合層および2個の水蒸気−空気分配層を、2個の間で交互に、第一水蒸気−空気混合層を水蒸気発生部分に隣接して使用する。あるいは、水蒸気−空気分配層を水蒸気発生部分に隣接して配置することができる。あるいは、上記のように、水蒸気−空気混合層を水蒸気発生部分と一体的な関係で物理的に形成することもできる。
【0112】
本発明の装置は、発熱水蒸気供給源を約50℃〜約70℃の高温で作動させ、水蒸気形成を最大限にし、潜熱および水分を使用者に、皮膚が損なわれない/火傷しない予め選択された温度で供給するように設計する。水蒸気および潜熱を放出するための水蒸気の凝縮は、湿熱装置におけるエネルギー移動に重要なので、好ましい実施態様における湿熱装置に予め選択された温度は、潜熱移動表面および/または皮膚接触層に近い水蒸気−空気混合物の露点温度である。したがって、この装置は、使用者を熱的損傷から保護すると共に、熱エネルギーを所望の場所で保存し、続いて放出する理想的な水蒸気発生環境を維持する。
【0113】
本発明者らは、驚くべきことに、特定の場合に、約43℃より高い露点温度を、皮膚に害を及ぼさずに、使用できることを見出した。理論に捕らわれたくはないが、これは、皮膚に供給された十分な潜熱エネルギーが、循環を刺激し、熱エネルギーを放散し易くし、傷害を回避するためであると考えられる。あるいは、装置の設計により、水蒸気の全てを凝縮するには接触時間が不十分になり、それによって、皮膚へのエネルギー移動が軽減されるように、水蒸気と皮膚の接触時間を修正することができる。
【0114】
一実施態様では、水蒸気と空気の混合物が、水蒸気と乾燥空気の比が約0.065kg水/kg乾燥空気未満になるように調整することにより、皮膚接触にとって安全になる。水蒸気と空気の比を調整することにより、水蒸気−空気混合物中の水蒸気が露点温度で凝縮するので、熱が、熱的傷害の危険性無しに、最適に、安全に使用者の皮膚に移動する。ここで使用する「乾燥空気」は、容易に感知できる程の水を含まない空気を意味する。
【0115】
本明細書の説明は、2対の水蒸気−空気混合層と2対の水蒸気−空気分配層を使用する代表的な一実施態様を包含するが、当業者には明らかなように、同じ効果が、1、2、またはそれ以上の水蒸気−空気混合層および/または1、2、またはそれ以上の水蒸気−空気分配層で達成できるか、またはそれらの幾つかの組合せも本装置で使用できる。各層および/または材料の種類の位置、厚さ、空気透過性、および水蒸気透過率を調整することが、例えば複数の混合層および/または分配層を有する実施態様に好適な熱的および空気混合環境を造り出すのに望ましい。
【0116】
代表的な一実施態様では、水蒸気と乾燥空気の比を、以下に記載するような、複数の熱セルの列に対して平行に配置した一個以上の縦方向細片を使用することにより、調整することができる。一実施態様では、1個の水蒸気−空気混合層を、水蒸気−空気混合層の皮膚に面した側に配置した縦方向フォーム細片と組み合わせて使用することができる。これらの細片は、水蒸気−空気調整部分の一部として機能することができる。縦方向細片は、複数の熱セルの列に対して平行な空気空間を造り出すのに役立つ。空気空間は、水蒸気発生部分中に一様な空気流を与えるのに役立ち、水蒸気−空気混合に役立つ。縦方向細片の高さは、水蒸気と乾燥空気の比が0.065kg水/kg乾燥空気未満、あるいは0.060kg水/kg乾燥空気未満になるように調節することができる。理論に捕らわれたくはないが、複数の熱セルの上にある一個以上の細片により、複数の熱セルが、細片により覆われ、連携するように作用および/または影響すると考えられる。特別な実施態様では、全ての熱セルを群に分ける、および/または列に並べ、細片で覆う必要は無い。特定の実施態様では、熱セルの一列または一群もしくは列または群の一部だけを細片で覆うことができる。
【0117】
<水蒸気−空気混合層>
代表的な一実施態様では、少なくとも一個の水蒸気−空気混合層は、約18gsm〜約430gsm(グラム/平方メートル)、または約50gsm〜約150gsm、またはさらに約50gsm〜約100gsm、あるいは約70gsm〜約90gsmの通気された構造を含んでなることができる。少なくとも一個の水蒸気−空気混合層は、ASTM法No.D5729によりカリパス測定した厚さ約1mm〜約19mm、あるいは約1mm〜約5mm、あるいは約0.1mm〜約4mm、または約1mm〜約4mm、特に約3mmを有することができる。水蒸気−空気混合層に好適な材料の例としては、織った材料、ウェット−レイド、エア−レイド、ポイント−ボンデッド、ニードルパンチ加工した、および熱的にボンディングした不織材料を包含する不織材料、布地、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、木材パルプ、レーヨン、セルロースを包含する繊維状植物材料、ウール、絹、ジュート、麻、綿、リネン、シサル、ラミー(ramie)、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0118】
少なくとも一個の水蒸気−空気混合層は、ASTM法No.D737により測定した空気透過率約400cm/cm/秒〜約17,000cm/cm/秒、またはさらに約500cm/cm/秒〜約2,000cm/cm/秒、あるいは約1,000cm/cm/秒〜約1,500cm/cm/秒、ASTM法No.E96により測定した水蒸気透過率約5,000g/m/24時間〜約7,000g/m/24時間、あるいは約5,500g/m/24時間〜約6,500g/m/24時間を有する。
水蒸気−空気分配層
【0119】
代表的な一実施態様では、少なくとも一個の水蒸気−空気分配層は、ASTM法No.D5729によりカリパス測定した厚さが約0.1mm〜約13mm、あるいは約0.5mm〜約6mm、あるいは約1mm〜約2mmである絶縁性材料の層を有することができる。別の実施態様では、絶縁性材料の層は、カリパス測定した厚さ約0.1mm〜約13mm、あるいは約0.5mm〜約2mm、特に約1mmを有することができる。一実施態様では、少なくとも一個水蒸気−空気分配層は、ASTM法No.D3776により測定した坪量約5gsm〜約430gsm、あるいは約5gsm〜約50gsm、あるいは約5gsm〜約25gsmを有することができる。別の実施態様では、少なくとも一個水蒸気−空気分配層は、ASTM法No.D3776により測定した坪量約5gsm〜約30gsm、あるいは約7gsm〜約12gsm、特に約10gsmを有することができる。水蒸気−空気分配層の材料は、実質的に空気および水分不透過性であり、圧縮に耐えられる材料である。
【0120】
水蒸気−空気分配層に好適な材料の例としては、ポリエチレン系フォーム、ポリプロピレン系フォーム、ポリエステル系フォーム、ポリスチレン系フォーム、ポリウレタン系フォーム、フォーム処理したプラスチックシート、プラスチックフィルム、ホイル、紙−ホイルラミネート、紙、不織材料、スポンジ、ガラスウール、繊維ガラス、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0121】
空気および水分不透過性材料は、ASTM法No.D737により測定した空気透過率が約0.025cm/cm/秒未満でよく、ASTM法No.E96により測定した水蒸気透過率が約200g/m/24時間未満でよい。一実施態様では、この材料は、熱伝導率が約0.5W/m・K〜約285W/m・K(K=ケルビン温度)であり、密度が約5kg/m〜約150kg/mでよい。別の実施態様では、この材料は、熱伝導率が約0.25W/m*K〜約0.5W/m*K(K=ケルビン温度)であり、密度が約5kg/m〜約15kg/mでよい。この材料の熱伝導率は、下記の文献、すなわち「For Computer Heat−Conduction Properties data」A.L.Edwards,UCRL−505 Copyright K&K.Associates 1997から得られる。
【0122】
特定の実施態様では、特に発熱反応を、水蒸気を発生させるための機構として使用する場合、空気および水分不透過性材料に選択的に穴を開けて水蒸気−空気分配層を形成し、空気および水蒸気を使用者に通過させ、水蒸気発生部分に空気を進入および到達させるのが好ましい。あるいは、開口部および/または通路を使用し、空気および水蒸気−空気混合物を通過させることができる。
【0123】
水蒸気−空気分配層に使用する材料は、空気および水に対して実質的に不透過性でよいが、これらの材料は、水蒸気−空気分配層の全体的な空気透過性が、一実施態様では、ASTM法No.D737により測定して約500cm/cm/秒〜約2500cm/cm/秒、あるいは約1000cm/cm/秒〜約2500cm/cm/秒、あるいは約1500cm/cm/秒〜約2300cm/cm/秒である。別の実施態様では、全体的な空気透過率が、ASTM法No.D737により測定して約100cm/cm/秒〜約300cm/cm/秒、あるいは約150cm/cm/秒を超え、あるいは約200cm/cm/秒を超えることができる。水蒸気−空気分配層の水蒸気透過率は、ASTM法No.E96により測定して約6,000g/m/24時間〜約9,000g/m/24時間、あるいは約7,000g/m/24時間〜約8,500g/m/24時間、あるいは約7,500g/m/24時間〜約8,500g/m/24時間、好ましくは約8,100g/m/24時間である。
【0124】
<縦方向細片>
本明細書に記載するように、特定の実施態様では、水蒸気−空気調整部分は、縦方向細片も含んでなることができる。縦方向細片は、反応のための追加空気を装置に供給し、さらに水蒸気−空気混合させるのに使用することができる。縦方向細片は、どのような可撓性で非圧縮性の材料でも含んでなることができる。縦方向細片の高さは、約0.085kg水/kg乾燥空気未満、さらには約0.065kg水/kg乾燥空気未満、あるいは約0.060kg水/kg乾燥空気未満の所望の水蒸気−空気比を達成するように調節することができる。縦方向細片に使用するのに好適な材料の例としては、ポリエチレン系フォーム、ポリプロピレン系フォーム、ポリスチレン系フォーム、ポリウレタン系フォーム、フォーム処理したプラスチックシート、プラスチックフィルム、ホイル、紙−ホイルラミネート、不織材料、スポンジ、ガラスウール、繊維ガラス、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。縦方向細片は、一回使用の使い捨て装置でも、再使用可能な装置でも、装置の皮膚に面した側にある潜熱移動表面の近くに配置することができる。所望により、装置の一部が使い捨てでもよい再使用可能な装置には、縦方向細片は、使い捨てまたは再使用可能な部分上に配置することができる。
【0125】
<潜熱供給表面>
特別な実施態様では、潜熱供給表面は、装置を使用する時に、水蒸気−空気調整部分と連絡し、皮膚表面または皮膚接触層と接触するか、または隣接する。潜熱供給表面は、皮膚表面と接触するか、または潜熱供給表面と皮膚表面との間に予め決められた隙間をおいて配置することができる。潜熱供給表面は、水蒸気−空気調整部分の一部の上の表面であるか、または別の層でよい。代表的な一実施態様では、潜熱供給表面は、例えば坪量が約20gsm〜約100gsm、あるいは約40gsm〜約90gsm、特に約80gsm〜約82gsmである材料の層でよい。代表的な一実施態様では、潜熱供給表面は、例えばカリパス測定した厚さが約0.05mm〜約12mm、あるいは約0.1mm〜約5.0mm、あるいは約0.2mm〜約2mmでよい。潜熱供給表面は、空気透過率が、ASTM法No.D737により測定して約200cm/cm/秒〜約500cm/cm/秒、あるいは約300cm/cm/秒〜約400cm/cm/秒、特に約314cm/cm/秒でよい。潜熱表面の水蒸気透過率は、ASTM法No.E96により測定して約5,000g/m/24時間でよい。
【0126】
潜熱供給表面に好適な材料の例としては、ナイロン、レーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、セルロース、ウール、絹、ジュート、麻、綿、リネン、シサル、ラミー、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0127】
<皮膚接触層>
所望により、少なくとも一個の皮膚接触層を、装置の皮膚に面した側に、例えば潜熱供給表面に加えることができる。そのような材料は、坪量が約20gsm〜約100gsm、あるいは約40gsm〜約90gsm、特に約80gsm〜約82gsmである。皮膚接触層は、カリパス測定した厚さが約0.05mm〜約12mm、あるいは約0.1mm〜約5.0mm、あるいは約0.2mm〜約2mmでよい。皮膚接触層は、空気透過率が、ASTM法No.D737により測定して約200cm/cm/秒〜約500cm/cm/秒、あるいは約300cm/cm/秒〜約400cm/cm/秒、特に約314cm/cm/秒でよい。皮膚接触層の水蒸気透過率は、ASTM法No.E96により測定して約5,000g/m/24時間でよい。
【0128】
皮膚接触層に好適な材料の例としては、ナイロン、レーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、セルロース、ウール、絹、ジュート、麻、綿、リネン、シサル、ラミー、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0129】
<装置の皮膚に面していない側>
特別な実施態様では、装置の、潜熱供給表面および皮膚に面した側(すなわち、水蒸気発生部分または皮膚から最も遠い表面)に対向する外側表面層(すなわち、皮膚に面していない側)は、装置の皮膚に面していない側が高温になりすぎるのを阻止し、熱を下方に、装置の皮膚に面した側にも向ける絶縁性層を含んでなる。絶縁性層は、熱セルの対向側部または水蒸気発生部分を形成する他の水蒸気供給源に隣接して配置することができる。
【0130】
絶縁性層に好適な材料の例としては、ポリエチレン系フォーム、ポリプロピレン系フォーム、ポリスチレン系フォーム、ポリエステル系フォーム、ポリウレタン系フォーム、フォーム処理したプラスチックシート、プラスチックフィルム、ホイル、紙−ホイルラミネート、不織材料、スポンジ、ガラスウール、繊維ガラス、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0131】
そのような絶縁性層は、ASTM法No.D5729によりカリパス測定した厚さが約0.1mm〜約3mm、あるいは約0.5mm〜約2.5mm、あるいは約1mm〜約2mm、あるいは約1mmである。
【0132】
そのような絶縁性層は、空気透過率が、ASTM法No.D737により測定して約0.025cm/cm/秒未満であり、水蒸気透過率が、ASTM法No.E96により測定して約250g/m/24時間未満である。一実施態様では、絶縁性層は、熱伝導率が約0.5W/m*K〜約285W/m*K、密度が約5kg/m〜約150kg/mでよい。別の実施態様では、絶縁性層は、熱伝導率が約0.25W/m*K〜約0.5W/m*K、密度が約5kg/m〜約15kg/mでよい。この材料の熱伝導率は、下記の文献、すなわち「For Computer Heat−Conduction Properties data」A.L.Edwards,UCRL−505 Copyright K&K.Associates 1997から得られる。
【0133】
所望により使用する一個以上の最も外側の材料層を、絶縁性層に隣接して加えることができる。そのような最も外側の材料の例としては、皮膚接触層に関して上に記載した材料が挙げられるが、これらに限定するものではない。絶縁性層および最も外側の材料は、予め組み合わせたラミネートとして形成することができる。所望により、一個以上の最も外側の材料層は、使用の際に装置を所定の位置に保持するホルダー用構造の被覆として作用する、および/またはその一部でよい。
【0134】
発熱および/または水蒸気−空気調整部分および/または潜熱供給表面/皮膚接触層の様々な層は、当業者には公知のいずれかの方法により、一つに結合することができる。好適な取り付け方法の例としては、層の周辺部の熱密封、各層間のホットメルト糊または接着剤、スプレー接着剤、超音波接着/溶接、加圧結合、折り曲げ、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。特定の実施態様では、幾つかの層だけを選択的に結合させるのが望ましい場合がある。
【0135】
<成形可能な部分>
所望により、本発明の装置は、成形可能な部分を含んでなる、および/または成形可能な構造中に配置することもできる。成形可能な部分は、身体の、良好な適合性を達成するのが困難な部分、例えば顔および/または頭、の上に装置を使用するための、可撓性および安定性をさらに与えることができる。成形可能な部分を形成することができる材料の例としては、金属ホイル、金属ワイヤフレーム構造、可撓性プラスチック構造、可撓性ラミネート構造、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。そのような成形可能な部分は、装置の構造中に取り入れるか、または取り外しできるように、または取り外しできないように外側表面に取り付ける外部構造でよい。
【0136】
湿熱装置を含んでなるラップ、パックまたはパッチは、独立しているか、またはホルダー中に配置することができる。独立した実施態様は、例えば接着剤により、または巻き付け、縛り付け、またはファスナーにより固定できるラップを形成する材料延長部により、使用者に直接取り付けることができる。無論、装置は、一回使用の装置でも、または再使用可能な、もしくは部分的に再使用可能な装置でもよい。再使用可能な、もしくは部分的に再使用可能な装置には、交換可能な部品、例えば熱供給源、は、取り外しできるのが好都合であるが、所定の使用位置に固定することもできる。
【0137】
ホルダーに好適な材料としては、潜熱供給表面および/または外側表面層に好適であるとして挙げた材料が挙げられるが、これらに限定するものではない。
熱セルの製造方法
【0138】
本発明の粒子状発熱組成物は、湿熱有益性を与える発熱組成物を形成するのに好適な公知の、または有効な技術により製造することができる。本発明の粒子状発熱組成物は、従来の混合技術、例えば本明細書に記載する混合技術、を使用して製造するのが好ましい。本発明による粒子状発熱組成物の成分を混合する他の好適な方法は、Yasukiらの米国特許第4,649,895号(1987年3月17日発行)により詳細に記載されている。
【0139】
好ましい実施態様では、粒子状発熱組成物の成分を混合する特定の技術では、炭素をブレンダーまたはミキサーに加え、続いて水全体の少量を加え、次いで炭素/水の組合せを混合する。通常、十分な水を加え、早期の発熱反応を抑制しながら、混合し易くする。混合を停止し、吸収性ゲル化材料を炭素/水の組合せに加える。混合を再開し、成分を十分に混合し、次いで鉄粉末を加え、混合する。次いで、組成物を十分に混合し、粒子状プレミックスを形成する。塩化ナトリウム、所望により水素ガス抑制剤、例えばチオ硫酸ナトリウム、および残りの水を別に混合し、食塩水溶液を形成し、次いでこれを鉄粉末プレミックスに加え、本発明による熱セルの構築に有用な粒子状発熱組成物を形成する。
【0140】
代表的な一実施態様では、2個の対向表面を有する熱セルは、決められた量の粒子状プレミックス組成物をフィルム層基材シート中のポケット、例えばポリプロピレン/ポリ(エチレン−ビニルアセテート)(EVA)共押出フィルム層基材シートの中のポケット、に加えることにより、製造することができる。この方法では、水または食塩水をプレミックス組成物の上に迅速に加え、通気された基材、例えばポリプロピレンSMMS不織基材から形成された基材、をセルの上に、予備形成されたポケットを含むシートのEVAフィルム側に面した対向表面として載せる。フィルム層および不織層を、低熱を使用して一つに結合し、統合された構造を形成する。得られた熱セルは、フィルム層と通気構造との間のポケット中に密封された粒子状発熱組成物を含む。
【0141】
ここに記載する方法により製造された熱セルは、熱セルが、ここに規定する吸収性ゲル化材料と鉄粉末の特定の中間粒子径比を有する発熱組成物を含んでなる限り、高度の水蒸気発生を初期および所望の熱処理全体を通して行うのに特に効果的であることが分かった。
【0142】
あるいは、個々の熱セルを、真空を使用してポケットを形成することにより、製造することができる。すなわち、粒子状プレミックス組成物をフィルム層基材表面の上に直接型の上で配置する時に、真空を使用し、フィルム層基材表面を型の中に吸引する。粒子状プレミックス組成物は、型の底でフィルム上に作用する真空により所定の位置に保持されている真空形成されたポケットの中に落ちる。次に、食塩水溶液をプレミックス組成物の上に迅速に加える。次いで、皮膚に面する通気された構造、例えばSMMSポリプロピレン不織基材表面、を、対向表面としての第一フィルム層基材表面の上に、粒子状発熱組成物が2個の対向する表面間に収容されるように載せる。次いで、粒子状発熱組成物を、第一および第二の対向する表面間で密封する。熱セルが形成され、密封された後、真空を解除する。この特別な構造および複数の熱セルを製造する方法は、発生した水蒸気を装置の皮膚に面する側に向けるための別の水分不透過性フィルムを有する必要が無くなるので、湿熱ラップに特に有利である。
【0143】
得られた熱セルは、個別に、または複数の熱セルとして使用することができる。熱セルは、各種の携帯用および使い捨ての加熱装置、例えば使い捨ておよび/または再使用可能な皮膚処理マスクおよび/またはパッチ、の中に取り入れることができる。本装置を包含することができるある種のマスク、細片、ラップ、および/またはパッチは、マスク、細片、ラップ、および/またはパッチを所定の位置に保持する手段を有することができる。保持手段としては、接着剤および/または固定装置、例えば再閉鎖可能な2部分フックおよびループ固定装置、タイ、ファスナー、および/または接着剤が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0144】
あるいは、例えば複数の熱セルから形成された水蒸気発生部分は、使い捨てでよいが、装置の一部を使い捨てにし、一部を再使用できるように、再使用可能な装置の中に適合させることができる。本発明を制限しない例として、水蒸気発生部分が使い捨てであり、水蒸気−空気調整部分が再使用可能でもよい。
【0145】
得られる熱セルは、上記の米国特許第4,649,895号に記載されているように、食塩水溶液を加えた後、1〜5分以内に二次空気不透過性包装中に包装し、望ましい時点まで酸化反応が起きないようにする。熱セルは、当業者には公知の手段、例えば窒素雰囲気、を使用して無酸素環境に保存される限り、後の時点で包装することもできる。
【0146】
様々な効果および性能を得るために、所望により、装置の皮膚に面した側、対向する側、または両方の構造に追加の層を加えるか、または層を修正することができる。例えば、組織化して柔軟性を与えることができる不織の皮膚に面した層、または芳香またはスキンケア活性成分を含浸させることができる層が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0147】
本発明を制限しない例として、以下に記載するように、一個以上の絶縁性層を皮膚に面した側または対向する側に加えることができる。あるいは、またはそれに加えて、以下に記載するように、様々な他の層を、装置の皮膚に面した側に加えることができる。最終的な構造は、周辺部で全ての層を通して周辺部シールで密封するか、または各層を隣接する層に密封系を使用して密封することができ、その例としては、スプレー接着剤、超音波結合、重合体溶接装置、各層間のホットメルト糊または接着剤、加圧結合、折り曲げ、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。
所望により使用する組成物
【0148】
代表的な一実施態様では、熱セルは、異なった加熱出力を有することができる。例えば、高湿熱/短時間熱セルと低湿熱/長時間熱セルを組み合わせることができる。熱セルの加熱持続時間を制御できる方法の例としては、セル中に含まれる粒子状発熱組成物の量、および/または水蒸気形成に使用できる水分の量が挙げられるが、これらに限定するものではない。別の変形では、単一の装置中で、一個以上の湿熱供給装置熱セルを、一個以上の従来伝導熱セルと組み合わせて使用することができる。
【0149】
本発明の携帯用湿熱供給装置は、所望により、皮膚に供給する組成物を包含することができ、その際、所望により使用する組成物としては、芳香性化合物、不活性芳香性化合物、スキンケア活性成分、およびそれらの組合せがある。
【0150】
そのような活性成分の量は、特定活性成分に応じて変えることができる。しかし、特定の実施態様では、供給される量は、スキンケア活性成分を、例えば乾燥熱機構または非熱機構で、乾燥環境中に供給するのに必要な量より少なくてよい。
【0151】
所望により使用する組成物は、水蒸気発生部分中に別の基材層として配合するか、熱セルを形成する基材層の少なくとも一個に配合するか、熱セル中に含まれる化学物質中に配合するか、別の活性成分含有セル中に配合するか、または別の独立した装置中に配合し、水蒸気発生部分および水蒸気−空気調整部分と共に使用することができる。熱セルは、別の基材層も含んでなるか、または対向する表面の少なくとも一方、自己接着性成分および/または汗吸収成分中に取り入れることもできる。
【0152】
湿熱供給装置は、揮発性材料、水溶性材料、常温で水溶性が限られている材料、およびそれらの組合せを包含する、ただし、これらに限定するものではない、多種多様な活性スキンケア組成物に使用できる。さらに、特定の実施態様では、例えば好適な溶剤および/または可溶化剤との組合せで装置に供給された場合、非水溶性材料を本装置に使用することができる。
【0153】
活性炭芳香化合物の例としては、メントール、しょうのう油、ユーカリ、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。不活性芳香化合物の例としては、ベンズアルデヒド、シトラール、デカノール、アルデヒド、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0154】
<スキンケア組成物>
スキンケア組成物は、携帯用湿熱供給装置の使用の前に、使用と同時に、使用の一部として、またはそれに続いて使用することができる。スキンケア組成物は、クリーム、ローション、ゲル、フォーム、ペースト、および/または血清を包含する、ただし、これらに限定するものではない、様々な製品形態で供給することができる。
【0155】
スキンケア組成物は、加湿剤、コンディショナー、老化防止処理、染み取り(skin lightening)処理、サンスクリーン、サンレスタナー(sunless tunner)、およびそれらの組合せとして使用することができる。スキンケア組成物は、皮膚科学的に許容されるキャリヤーを含んでなることができる。ここで使用する句「皮膚科学的に許容されるキャリヤー」は、そのキャリヤーが、ケラチン質組織に局所投与するのに好適であり、良好な美観的特性を有し、スキンケア組成物の他の全ての成分と相容性があり、不利な安全性または毒性問題を引き起こさないことを意味する。キャリヤーは、多種多様な形態にあることができる。例としては、単純な溶液(水または油を基剤とする)、エマルション、および固体形態(ゲル、スティック、流動性固体、無定形材料)が挙げられるが、これらに限定するものではない。特定の実施態様では、皮膚科学的に許容されるキャリヤーは、エマルションの形態にある。エマルションは、一般的に連続的水相(例えば水中油型および水中油中水型)または連続的油相(例えば油中水型および油中水中油型)を有するものに分類される。本発明の油相は、シリコーン油、非シリコーン油、例えば炭化水素油、エステル、エーテル、等、およびそれらの混合物を含んでなることができる。例えば、エマルションキャリヤーとしては、連続的水相エマルション、例えば水中シリコーン型、水中油型、および水中油中水型エマルション、および連続的油相エマルション、例えば油中水型およびシリコーン中水型エマルション、およびシリコーン中水中油型エマルションが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0156】
スキンケア組成物は、安全で有効な量の、皮膚状態を調整および/または改良するのに有用な、一種以上のスキンケア活性成分(「活性成分」)を含んでなることができる。「安全で有効な量」は、好ましい有益性を誘発するのに十分であるが、深刻な副作用を回避するのに十分に低い(すなわち、当業者の判定内で妥当な有益性と危険性の比を与える)化合物または組成物の量を意味する。スキンケア活性成分の安全で有効な量は、組成物全体の約1x10−6%〜約25重量%、別の実施態様では組成物全体の約0.0001%〜約25重量%、別の実施態様では組成物全体の約0.01%〜約10重量%、別の実施態様では組成物全体の約0.1%〜約5重量%、別の実施態様では組成物全体の約0.2%〜約2重量%でよい。好適な活性成分としては、ビタミン(例えばB3化合物、例えばニコチンアミド、ニアシンニコチン酸、ニアシンニコチン酸トコフェリル、B5化合物、例えばパンテノール、ビタミンA化合物およびビタミンAの天然および/または合成類似体、レチノイド、レチノール、レチニルアセテート、レチニルパルミテート、レチノイン酸、レチンアルデヒド、レチニルプロピオネート、カロテノイド(プロビタミンA)を包含する、ビタミンE化合物、またはトコフェロール、トコフェロールソルベート、トコフェロールアセテートを包含する、ビタミンC化合物、アスコルベート、脂肪酸のアスコルビルエステル、およびアスコルビン酸誘導体、例えばマグネシウムアスコルビルホスフェートおよびナトリウムアスコルビルホスフェート、アスコルビルグルコシド、およびアスコルビルソルベートを包含する)、ペプチド(例えば10個以下のアミノ酸を含むペプチド、それらの誘導体、異性体、および他の化学種、例えば金属イオン、との錯体)、糖アミン(例えばN−アセチルグルコサミン)、サンスクリーン、油調整剤、なめし活性成分、にきび防止活性成分、剥離防止活性成分、抗セルライト(anti−cellulite)活性成分、キレート化剤、染み取り剤、フラボノイド、プロテアーゼ抑制剤(例えばヘキサミジンおよび誘導体)、非ビタミン酸化防止剤およびラジカル補集剤、ペプチド、サリチル酸、毛髪成長調整剤、しわ防止活性成分、萎縮防止活性成分、ミネラル、植物ステロールおよび/または植物ホルモン、チロシナーゼ抑制剤、N−アシルアミノ酸化合物、加湿剤、植物抽出物、脱毛剤、および上記活性成分のいずれかの誘導体が挙げられるが、これらに限定するものではない。ここで使用する「誘導体」は、示されてはいないが、当業者は理解し得る、基本化合物の変形である構造を意味する。例えば、ベンゼンから水素を除去し、それをメチル基で置き換えたものである。好適な活性成分は、米国特許出願公開第US2006/0275237A1号および第US2004/0175347A1号にさらに記載されている。
【0157】
スキンケア組成物は、粒子状材料を含んでなることができる。粒子は、穏やかに摩耗性の重合体状マイクロビーズから中程度に摩耗性の材料、例えば重炭酸ナトリウム、比較的攻撃的な材料、例えばアルミナ結晶、にわたることができる。ここで使用するのに好適な粒子状材料としては、オキシ塩化ビスマス、セリサイト、マイカ、硫酸バリウムまたは他の材料で処理したマイカ、ゼオライト、カオリン、シリカ、窒化ホウ素、ラウロイルリシン、ナイロン、ポリエチレン、タルク、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン/アクリル酸共重合体、セリサイト、酸化アルミニウム、シリコーン樹脂、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、セルロースアセテート、PTFE、ポリメチルメタクリレート、デンプン、変性デンプン、例えばアルミニウムデンプンオクテニルスクシネート、絹、ガラス、繊維、粉砕種、軽石、干渉顔料、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0158】
スキンケア組成物は、着色剤をさらに含んでなることができる。好適な着色剤としては、無機または有機顔料および粉末がある。有機顔料は、天然着色剤および合成単量体状および重合体状着色剤を包含することができる。有機顔料は、各種芳香族型、例えばアゾ、インジゴイド、トリフェニルメタン、アントラキノン、およびD&CおよびFD&Cブルー、ブラウン、グリーン、オレンジ、レッド、イエロー、等と呼ばれるキサンチン染料、を包含する。有機顔料は、レーキと呼ばれる認定された色添加剤の不溶性金属塩からなることができる。無機顔料としては、酸化鉄、フェロシアン化第二鉄アンモニウム、マンガンバイオレット、ウルトラマリン、クロム、水酸化クロム着色剤、およびそれらの混合物がある。顔料は、顔料を疎水性にする一種以上の成分で被覆することができる。顔料に親油性を与える好適な被覆材料としては、シリコーン、アミノ酸、リン脂質、無機および有機油、ポリエチレン、および他の重合体材料がある。好適なシリコーン処理された顔料は米国特許第5,143,722号に開示されている。無機白色または無着色顔料としては、多くの供給源から市販されているTiO、ZnO、またはZrOがある。他の好適な着色剤は、米国特許第7,166,279号に記載されている。着色剤は、一般的にスキンケア組成物が知覚し得る色を得るような重量%で包含する。一実施態様では、スキンケア組成物は、アプリケータの色とは知覚的に異なった色を示す。知覚的に異なったとは、正常な感知能力を有する人に標準的な照明条件下(例えば日中に屋外で経験されるような自然の照明、標準的な100ワット白熱光電球の、距離2メートルにおける照明、または1964 CIE標準観察者に対する800 luxにおける、CIE D65により規定される標準照明)で知覚し得る違いを意味する。
【0159】
さらに、スキンケア組成物は、好ましくない毛髪を除去するための、米国特許第5,026,542号および第5,645,825号に開示されている材料を包含する、脱毛剤を包含することができる。
【0160】
さらに、スキンケア組成物は、適切な処方および安定化のために、抗真菌および抗細菌成分を包含することができる。
【0161】
スキンケア組成物は、髭剃りゲルまたはフォーム、例えば米国特許第号、第2,995,521号、第3,541,581号、第4,405,489号、第4,528,111号、第4,651,503号、第5,248495号、第5,308,643号、第5,326,556号、および第5,500,211号に記載されている製品でよい。そのような組成物は、一般的に水中油型エマルションの形態をとり、そこでは、発泡後の試剤、一般的に揮発性(すなわち、低沸点)脂肪族炭化水素、が油相中に可溶化されており、水相が水分散性のセッケン、中断されたセッケン成分、および/または界面活性剤を含んでなる。製品は、一般的にエーロゾル容器中に包装され、発泡後のゲルを、製品を排出するのに必要な噴射剤から分離するバリヤー、例えばピストンまたは潰れるバッグ、を含む。製品は、皮膚上に広がるまでは実質的に発泡しない透明、半透明、または不透明なゲルとして供給され、広がった時点で、揮発性炭化水素発泡剤の揮発により、泡を生じる。
【0162】
スキンケア処方物は、乾燥および/または脱水し、携帯用湿熱供給装置の皮膚に面した側の上に被覆することができる。さらに、携帯用湿熱供給装置の皮膚に面した側に被膜を施すことができ、その被膜は、携帯用湿熱供給装置から発生した湿熱に露出された時に、クリームまたは流動性の組成物に変換される。本発明で有用な組成物の一例は、米国特許出願公開第2006/0228319号に開示されている。
【0163】
<装置の使用方法>
本発明には多くの用途があり、その例としては、皮膚に一貫した、安全な、効率的な、持続性がある湿熱を供給することが挙げられるが、これらに限定するものではない。この湿熱は、スキンケア活性成分と併用した時に、ケラチン質組織を厚くすること(例えば皮膚の表皮および/または真皮および/または皮下層、および場合により爪および毛幹のケラチン質層を構築し、皮膚、毛髪、または爪の萎縮を軽減する)、真皮−表皮境界(網隆起部とも呼ばれる)の渦巻を増加させること、皮膚または毛髪の弾性低下を防止すること、例えば機能性皮膚弾力素の損失、損傷および/または不活性化により、皮膚または弾力線維症、たるみ、皮膚または毛髪の変形からの戻り低下のような症状を防止すること、セルライトの減少、皮膚、毛髪、または爪の着色変化、目の下のくま、しみ(例えば酒さによる不均質な赤着色)、黄ばみ、色素沈着過度により引き起こされる変色、皮膚老化徴候の維持/改良、および傷害により引き起こされるケラチン質組織の維持/改良、皮膚の滑らかさ増加、毛髪成長を最少に抑えること、好ましくない毛髪を除去すること、およびそれらの組合せ、を包含する、ただし、これらに限定するものではない、美容上の有益性を与える。
【0164】
皮膚有益性は、i)スキンケア組成物を該皮膚に塗布すること、およびii)携帯用湿熱供給装置を、スキンケア組成物で被覆された皮膚区域に付けること、およびiii)携帯用湿熱供給装置を起動することにより達成される。別の実施態様では、皮膚有益性は、i)該携帯用湿熱供給装置をスキンケア組成物で被覆すること、およびii)携帯用湿熱供給装置を、処理を必要とする該皮膚区域に付けることにより達成される。別の実施態様では、皮膚有益性は、携帯用湿熱供給装置をスキンケア組成物で皮膜の形態に被覆すること、およびii)携帯用湿熱供給装置を、処理を必要とする該皮膚区域に付けること、およびiii)皮膜を該携帯用湿熱供給装置から発生した湿熱で活性化することにより達成される。別の実施態様では、皮膚有益性は、i)携帯用湿熱供給装置を、顔区域に付けること、およびii)携帯用湿熱供給装置を起動すること、iii)携帯用湿熱供給装置を取り外すこと、およびiv)湿熱で処理した該顔区域を髭剃りすることにより達成される。携帯用湿熱供給装置は、所望の皮膚区域に約20秒間〜約8時間、あるいは約20分間〜約4時間、あるいは約1分間〜約60分間、あるいは約15分間〜約30分間、あるいは約1分間〜約20分間、あるいは約20分間〜約40分間、あるいは約半(1/2)時間〜約2時間付けることができる。
【0165】
使用する際の装置の、水蒸気−空気混合物の身体に対する温度は通常の皮膚温度約32℃〜約35℃より数度高いだけであり、水蒸気−空気混合物の露点温度は、その混合物が皮膚に到達した時に、ほぼ通常の皮膚温度であるので、熱は、水蒸気−空気混合物から水の凝縮潜熱を介して皮膚に安全に移動することができる。したがって、この装置は、大量の熱を皮膚に安全に供給することができ、その際、熱の約15%〜約95%、あるいは約20%〜約80%、あるいは約40%〜約75%が潜熱として供給される。一実施態様では、湿熱装置は、熱の約15%〜約95%を凝縮潜熱として少なくとも10分間、あるいは少なくとも30分間、または少なくとも1時間、特定の実施態様では、少なくとも3時間、あるいは少なくとも5時間供給する。
【0166】
湿熱の供給に加えて、湿熱装置は、水蒸気が水に凝縮し、凝縮潜熱を皮膚に供給する時に、皮膚の加湿を行うこともできる。
【0167】
皮膚表面温度は、下記の方法により測定する。測定は全て常温で行う。測定中の温度範囲は21℃〜23℃である。相対湿度範囲は38%〜42%である。温度測定は、熱電対を使用して行うことができる。熱電対は、毛髪と潜熱供給表面および/または毛髪接触層との間に配置する。一実施態様では、温度測定は、K型熱電対(Omega、部品#5SRTC−TT−K−40−72)で行い、温度データ自記計(Omega,HH84)により記録する。使用者の皮膚の表面温度を測定するために、使用者は、約22℃の室内に約20分間座り、皮膚を室温および条件に適合させる。この間に、熱電対を皮膚表面上に置き、熱電対の感知区域の上にテープが来ないように注意しながら、テープ留めする。平衡時間が経過した後、所望の時間、温度を測定し、記録することができる。
【0168】
本発明の装置の、皮膚表面温度に対する影響を測定する場合、測定すべき本発明の各装置を構築し、次いで不透過性容器中に密封し、試験前に24時間放置して平衡化する。装置を試験する時、装置を保護包装物から取り出し、皮膚表面上の熱電対上に配置する。皮膚温度は、装置を付ける前に測定し、装置を付け、加熱を開始した後、60分間記録する。
【0169】
皮膚表面に供給された水蒸気−空気混合物の温度も、熱電対を使用者の皮膚上に配置することにより、測定することができる。皮膚温度は、装置を付ける前に測定し、装置を付け、加熱を開始した後、60分間記録する。
【0170】
露点温度は、特に問題とする露点温度が、使用者と湿熱装置との間の水蒸気の量に関連するので、湿熱装置を起動し、使用者の上に配置した時に測定するのが好ましい。身体と湿熱ラップとの間の水蒸気の量は、装置により発生した水蒸気の量から凝縮した水蒸気の量および装置の外に流れる水蒸気の量を差し引いた量によって異なる。露点は、例えばVaisala,Wobum(米国マサチューセッツ州)から市販されている、Stainless Steel HM47453Pフィルターを備えたHUMICAP(登録商標)HMT337露点発信器で測定することができる。
【0171】
一実施態様では、ここに記載する本発明の装置は、約75W/m〜約500W/m、あるいは約100W/m〜約200W/m、あるいは約200W/m〜約500W/m、あるいは約300W/m〜約500W/mの熱フラックスを安全な皮膚および/または毛髪温度で発生させ、供給することができる。別の実施態様では、ここに記載する本発明の装置は、約180W/m〜約500W/m、あるいは約200W/m〜約500W/m、あるいは約220W/m〜約300W/mの熱フラックスを安全な皮膚温度で発生させ、供給することができる。
【0172】
本装置は、熱を皮膚表面に供給し、その際、皮膚表面に供給される熱の約15〜約95%、あるいは約20〜約80%、および約40〜約75%は、水蒸気−空気混合物の凝縮による潜熱として供給される。理論に捕らわれたくはないが、皮膚表面に供給される熱の残りは、伝導による熱移動であると考えられる。熱移動の大部分が身体上の凝縮により行われるので、水蒸気−空気混合による露点温度を制御することにより、本発明の装置は、一定の皮膚温度約43℃を維持しながら、従来の乾燥熱ラップの2〜5倍までのピーク加熱レベルを身体に供給することができ、それによって、使用者は安全に使用することができる。
【0173】
本発明の装置は、約0.05mg水蒸気/分/cm〜約2.5mg水蒸気/分/cm水蒸気発生部分、あるいは約0.1mg水蒸気/分/cm〜約2.0mg水蒸気/分/cm水蒸気発生部分を発生し、その際、水蒸気は、皮膚表面上への凝縮により、水分を皮膚表面に供給する。
【0174】
発生した水蒸気の量、および水蒸気発生速度は、本発明の装置、または他の発熱装置の、加熱開始前から装置が消費された後まで、および装置使用中の時間全体にわたる重量変化を測定することにより、測定することができる。重量変化を測定し、記録するために、Mettler−Toledo Balance Model PG503−Sをコンピュータ操作するSoftware Wedge v3.0C−RS232Cインターフェースケーブルを使用する業務用ソフトウエアに接続する。試験の前に、天秤を製造業者の指示書にしたがって校正する。厚さ1.59mm(1/16インチ)のポリスチレンフォームシートを天秤のスケール上に配置し、天秤をゼロ合わせする。
【0175】
試験する装置を、製造後に装置が中に保存されていた気密ホイル小袋から取り出し、ポリスチレンフォームシートの中央に配置する。試験を開始するには、天秤上の「メニュー」およびコンピュータ上のストップウォッチ機能上の「開始/停止」を同時に押す。基準としてストップウォッチを使用し、1分毎に天秤上の「メニュー」を押し、試験している装置の重量をソフトウエアに記録する。発熱装置の開始重量および発熱装置のその後の重量を、装置が消費されるまで記録し、それによって、反応開始から最後までの水分損失を測定することができる。
【0176】
重量損失の量を水分損失の量に相関させ、反応中に発生した水蒸気の量を推定する。発熱組成物、例えば本発明の発熱組成物、では、反応中に発熱組成物の他の成分のどれも失われず、水が反応の一部として消費されないので、重量損失は、失われた水および発生した水蒸気に相関させることができる。反応中に酸化鉄が生成し、したがって、反応中に重量が幾分増加するので、重量損失に基づく測定、および発生した水蒸気の計算は近似である。しかし、形成される酸化鉄の量はほんの僅なので、重量増加もほんの僅かである。したがって、重量損失の量は、水損失の量に近似される。
【0177】
使用者の皮膚面積あたりに発生する水蒸気の量は、装置から発生した水蒸気の総量を、装置を付けた皮膚の面積で割ることにより、計算できる。単位時間あたりに発生した水蒸気も、装置から発生した水蒸気の量を、水蒸気発生の持続時間で割ることにより、計算できる。当業者は、手動またはコンピュータソフトウエアを使用することにより、そのような計算を行うことができる。
【0178】
さらに、本装置は、皮膚水分レベルを、約30分間未満の間に、本装置を使用する前の皮膚水分レベルに対して、約300%増加させることができる。
【0179】
皮膚水分量および皮膚水分増加は、Corneometer 810キャパシタンス皮膚水分測定器(Courage Khazaka Electronics,Cologne,DE)で測定する。水分計は、皮膚の角質層の水分レベルを電気的キャパシタンスにより測定する。皮膚の水和レベル変化により、キャパシタンスが変化する。キャパシタンスプローブを皮膚に1秒間、圧力7.1N/cmで押し付ける。皮膚キャパシタンスの程度が1〜100単位で示される。1単位は、測定深度20nmにおける角質層の含水量0.02mg/cmを表す。非常に乾燥した皮膚は、30単位未満であり、乾燥した皮膚は30〜45単位であり、十分に加湿された皮膚は45単位を超える。
【0180】
組織(すなわち、この場合は皮膚)キャパシタンスは、電磁波を周波数100,000サイクル/秒間(Hz)で、深度20nmで印加し、皮膚表面の画像をとる。プローブを被検者の、試験したい場所の皮膚上に配置する。試験の前に、被検者は、約22℃、相対湿度40%の室内に20分間座り、皮膚を通常の条件に適合させる。皮膚水分を計算するためのキャパシタンスを加熱の前と直後に測定する。
【0181】
一種以上の上記のスキンケア組成物および携帯用湿熱供給装置の組合せを包含するキットを製造することができる。
【実施例】
【0182】
<携帯用湿熱供給装置の例>
例1〜3 水蒸気供給源
以下に例示する水蒸気供給源は、本発明による装置の水蒸気発生部分で使用する粒子状発熱組成物を満たした発熱セルである。
【0183】
以下に例示する粒子状発熱組成物は、従来の混合技術を使用して製造され、得られた組成物を使用して本発明の熱セルを構築する。
【0184】
プレミックスは、活性炭および水をブレンダーまたはミキサー、例えばLittleford Day Mixer、に加え、約10分間混合することにより、製造する。次いで、ポリアクリレート吸収性ゲル化材料を加え、混合物を約10分間混合する。次に、スポンジ鉄粉末をミキサーに加え、得られたプレミックスを約5分間混合する。
【0185】
得られたプレミックス組成物約2.2gを各予備形成されたポケットに入れるが、これらのポケットは、ポリプロピレン/EVA共押出されたフィルムのシートでポケットに真空形成されている。
【0186】
次に、食塩水溶液を、水、塩化ナトリウム、および所望によりチオ硫酸ナトリウムをミキサーに加え、約15分間混合することにより、調製する。次いで、得られた食塩水溶液をプレミックス組成物に迅速に加える。
【0187】
ポリプロピレンSMMS不織材料の通気された皮膚に面する表面を、予備形成されたポケットを含むフィルムシートのEVA側に面する、プレミックスおよび食塩水溶液を含むポケット上に配置する。フィルムシートおよびSMMSを、低熱を使用して一つに結合し、統合された構造を形成する。得られた統合された構造は、通気された表面の対向する表面と対向するフィルム層表面との間のポケット中に粒子状発熱組成物を含む熱セルを含む。
【0188】
セルは、食塩水を粒子状組成物に加えた後、すぐに発熱を開始するので、上および下表面を結合し、完成した熱セルを気密二次包装物の中に迅速に包装し、将来の使用に備える。表1は、本発明による熱セルの様々な粒子状発熱組成物を示す。
【0189】
本発明の例実施態様を図を参照しながら以下に説明する。全体を通して、同じ記号は同じ構造的要素を示す。
【0190】
【表1】

【0191】
図3は、水蒸気−空気調整部分の一部として2個の水蒸気−空気混合層および2個の水蒸気−空気分配層を有する実施態様を例示する。熱セルは、上記の組成物を使用し、例1により構築する。熱セルの通気された皮膚に面する表面には、下記のように構築した水蒸気−空気調整部分が隣接している。熱セルの対向する表面には、絶縁性層および最も外側にある層が隣接している。
【0192】
熱セルは、ポリプロピレンSMMSの通気された皮膚に面する表面14に対向する空気不透過性、水分不透過性のポリプロピレン/EVAフィルム層の対向する表面12の中に形成されたポケット中に入れられた粒子状発熱組成物10を有する。
【0193】
対向する表面12には、1.59mm(1/16インチ)の絶縁性ポリプロピレンフォーム層16が取り付けられている。フォーム層16には、最も外側にあるポリプロピレン不織層18が取り付けられている。
【0194】
通気された皮膚に面する表面14には、厚さ3mmの高ロフトポリエチレン/ポリエステル不織中入れ綿の第一水蒸気−空気混合層20が隣接している。第一水蒸気−空気混合層20には、厚さ1.59mm(1/16インチ)の有孔ポリプロピレンフォームの第一水蒸気−空気分配層22が隣接している。第一水蒸気−空気分配層22には、厚さ3mmの、高ロフトポリエチレン/ポリエステル不織中入れ綿の第二水蒸気−空気混合層24が隣接している。第二水蒸気−空気混合層24には、第二水蒸気−空気混合層24には、厚さ1.59mm(1/16インチ)の有孔ポリプロピレンフォームの第二水蒸気−空気分配層26が隣接している。第二水蒸気−空気分配層26には、2個のポリプロピレン不織材料28の皮膚接触層が取り付けられている。これらの層は、周辺部で一つに密封され、装置を形成している。
【0195】
図4は、本発明の携帯用湿熱供給装置が顔マスク形状になっている実施態様を示す。マスクは、1個(図4に示すような)でも、図5に示すような複数個でもよい。
【0196】
図6は、本発明の携帯用湿熱供給装置が長方形であり、顔の一部、例えば上唇および/または額、に付けて使用することができる実施態様を例示する。
【0197】
図7は、本発明の携帯用湿熱供給装置が円形であり、顔の部分に付けて使用することができる実施態様を例示する。
【0198】
図7は、本発明の携帯用湿熱供給装置が、眼の角部を取り囲む皮膚に適合する形状にある実施態様を例示する。
【0199】
図7は、本発明の携帯用湿熱供給装置が、顔の下側半分に適合する形状にある実施態様を例示する。
【0200】
図10は、本発明の、それぞれ水蒸気供給源を含んでなる24個の熱セル32を有し、一緒に水蒸気発生部分を形成する実施態様30の上平面図である。
スキンケア組成物の例
【0201】
下記の処方物は、上記の容易に知覚できる違いの一つ以上を与える、好適なスキンケア組成物の、本発明を制限しない例である。適用される場合、成分はCTFA名称で記載する。本発明の特別な実施態様を説明したが、当業者には明らかなように、本発明の精神および範囲から離れることなく、本発明に対する様々な変形および修正を行うことができる。これらの例は、容易に知覚できる違いを与える重要な成分を省略することにより、僅かに修正することができる(例えば、例5は、着色剤FD&C Red 40およびBlue 1を含むが、これらを省略して着色剤を含まない例を得ることができる)。特に、太字で記載する成分の一種以上を省略し、代わりの例を得ることができる。
【0202】
【表2】

【0203】
【表3】

【0204】
【表4】

【0205】
【表5】

【0206】
1.シクロペンタシロキサン中12.5%Dimethicone Crosspolymer、ダウコーニング社から市販されている。
2.シクロペンタシロキサン中Dimethicone Crosspolymer、ダウコーニング社から市販されている。
3.例えばTospearl 145AまたはTospearl 2000、GE 東芝シリコン社から市販されている。
4.PFM(250−500μm)着色ビーズ、コボ社から市販されている。
5.Dimethicone中DimethiconePEG−10/15 Crosspolymer、信越化学社から市販されている。
6.鉱油中PEG−15/Lauryl Dimethicone Crosspolymer、信越化学社から市販されている。
7.Jeenate 3Hポリエチレンワックス、ジーン社から市販されている。
8.Stearyl Dimethicone、ダウコーニング社から市販されている。
9. Bis−PEG/PPG−14/14 Dimethicone、デグサ社から市販されている。
10.PEG−10 Dimethicone、信越化学社から市販されている。
11.疎水性付与変成した、TiO被覆されたマイカ、コボ社から市販されている。
12.Dimethicone/Dimethiconol、ダウコーニング社から市販されている。
13.Polymethyl silsesquioxane
14.マイカおよび酸化鉄、Eckart社から市販されている。
15.ポリエチレン粉末、Equistar社から市販されている。
16.ジオレオイルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート混合物、Degussa Care&Surface Specialties,Hopewell(バージニア州)から市販されている。
17.キャリヤー中ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、Sanyo Performance Chemical(日本)から市販されている。
18.ヘキサミジンジイソチオネート、Laboratories Serobiologiques社から市販されている。
19.DMDMヒダントインおよびヨードプロピルブチルカルバメート、ロンザ社から市販されている。
20.味の素U.S.A社.Paramus(ニュージャージー州)から市販されている。
21.水、グリセリン、ポリアクリレート、およびメチルパラベンを含むTiO、コボ・プロダクツ社から市販されている。
22.ポリアクリルアミド、C13〜C14イソパラフィン、およびLaureth−7ブレンド、Seppic社から市販されている。
【0207】
例1に関して、相Aの成分を好適な容器中で組み合わせる。別の好適な容器中で、相Bの成分を組み合わせる。各相を、好適なミキサー(例えばアンカーブレード、プロペラブレード)を使用して混合しながら、それぞれの温度に達し、均質になるまで、各相を75〜80℃に加熱する。相Bを相Aに、相Aを混合しながら徐々に加える。バッチが一様になるまで、混合を続行する。生成物をUltra−Turraxホモジナイザー(IKA,Inc.)または同等品で均質化し、生成物を好適な容器中に75〜80℃で注ぎ込む。容器を室温で、攪拌せずに、少なくとも12時間保存する。
【0208】
例2および5に関して、好適な容器中で、相Aの成分を組み合わせ、好適なミキサーで均質になるまで混合する。別の好適な容器中で、相Bの成分を組み合わせ、均質になるまで混合する。相Bを相Aに、相Aを混合しながら徐々に加える。バッチが一様になるまで、混合を続行する。生成物をUltra−Turraxホモジナイザー(IKA,Inc.)または同等品で均質化し、生成物を好適な容器中に注ぎ込む。
【0209】
例3、6〜8および10に関して、好適な容器中で、水相成分を組み合わせ、一様になるまで混合するが、水相を温め、全成分を溶解させるとよい。別の好適な容器中で、シリコーン/油相成分を組み合わせ、一様になるまで混合するが、シリコーン/油相を温め、全成分を溶解させるとよい。次いで、増粘剤半分、次いでシリコーン/油相を水相に加え、得られたエマルションを摩砕する(例えばTekmar T−25で)。増粘剤の残り、次いで成分の残りをエマルションに攪拌しながら加える。組成物が一様になった後、生成物を好適な容器中に注ぎ込む。
【0210】
例4および9に関して、好適な容器中で、成分を組み合わせ、一様になるまで混合するが、組成物を温め、全成分を溶解させるとよい。組成物が一様になった後、生成物を好適な容器中に注ぎ込む。
【0211】
後発泡髭剃りゲルの例
【表6】

【0212】
上記の組成物は、下記のように製造する。水溶性重合体(ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース)を水に加え、重合体が完全に溶解するまで(約30分間)混合する。次いで、この水性混合物を加熱し、グリセリルオレエート、ソルビトールおよび脂肪酸を約60℃で加え、加熱しながら十分に混合する。80〜85℃で、トリエタノールアミンを加え、約20分間混合し、水性セッケン相を形成する。水性セッケン相を室温に冷却後、残りの成分(すなわち、Lubrajel(登録商標)油、グリセリル、香料、着色剤、植物成分)を水性セッケン相に加え、良く混合してゲル濃縮物を形成する。(必要であれば、水を加えてバッチ重量を100%にすることにより、蒸発による水分損失を補うことができる)次いで、充填ライン中で、濃縮物を揮発性後発泡剤と加圧下で組み合わせ、窒素加圧下でバルブを通してせん断しながら、底部にガスを入れたエーロゾル缶中に充填する。(注意:Lubrajel(登録商標)油の代わりに、別のヒドロゲル形成重合体を使用する場合、処方物中に入れる前に、重合体を水で予備水和するのが好ましい)
【0213】
ここに開示する寸法および値は、記載する精確な数値に厳密に制限されるものではない。他に指示が無い限り、そのような寸法は、記載された値およびその値を取り囲む機能的に同等の範囲の両方を意味する。例えば、「40mm」と記載された寸法は、「約40mm」を意味する。
【0214】
ここに引用する、反対文献または関連特許もしくは出願を包含する文献は全て、他に指示が無い限り、ここにその全文を参考として含める。全ての文献の引用は、ここに開示する、または特許権請求する発明に対する先行技術であること、および単独で、または他の文献との組合せで、そのような発明を教唆、示唆、または開示することを認めるものではない。さらに、本文書における用語の意味または定義が、参考として含まれる文書における同じ用語の意味または定義と対立する場合、本文書でその用語に指定された意味または定義が支配するものとする。
【0215】
本発明の特別な実施態様を例示し、説明したが、当業者には明らかなように、本発明の精神および範囲から離れることなく、他の様々な変形および修正を行うことができる。したがって、本発明の範囲内に入るそのような変形および修正は全て付随する請求項に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有益性を皮膚に与える方法であって、
(a)美容保護有益性を与えるためのスキンケア組成物を前記皮膚に塗布すること、
(b)
(1)水蒸気供給源および熱供給源を含んでなる水蒸気発生部分と、
(2)前記水蒸気発生部分の、皮膚に面した側に配置された水蒸気−空気調整部分とを含んでなり、前記水蒸気−空気調整部分が、水蒸気−空気混合層、水蒸気−空気分配層、および所望により皮膚接触層とを含んでなる携帯用湿熱供給装置、を用意すること、
(c)前記水蒸気発生部分および前記水蒸気−空気調整部分が流体連絡しており、前記水蒸気−空気調整部分が、前記水蒸気−空気調整部分に隣接して配置された潜熱供給装置を有し、前記携帯用湿熱供給装置が、皮膚温度を約43℃未満に維持しながら、凝縮潜熱として熱の約15%〜約95%を使用者に伝達することを含んでなる、方法。
【請求項2】
前記スキンケア組成物が、ビタミン、ペプチド、糖アミン、サンスクリーン、油調整剤、なめし活性成分、にきび防止活性成分、剥離防止活性成分、抗セルライト活性成分、キレート化剤、染み取り剤、フラボノイド、プロテアーゼ抑制剤、非ビタミン酸化防止剤およびラジカル補集剤、毛髪成長調整剤、しわ防止活性成分、萎縮防止活性成分、ミネラル、植物ステロールおよび/または植物ホルモン、チロシナーゼ抑制剤、N−アシルアミノ酸化合物、加湿剤、植物抽出物、脱毛剤、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されたスキンケア活性成分を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記携帯用湿熱供給装置が前記皮膚上に約1分間〜約8時間放置される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記携帯用湿熱供給装置が前記皮膚上に約15分間放置される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記携帯用湿熱供給装置が前記皮膚上に約30分間放置される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記携帯用湿熱供給装置が、皮膚温度を約43℃未満に維持しながら、凝縮潜熱として熱の約20%〜約80%を使用者に伝達する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記携帯用湿熱供給装置が、皮膚温度を約43℃未満に維持しながら、凝縮潜熱として熱の約40%〜約75%を使用者に伝達する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記携帯用湿熱供給装置が、マスクの形状を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記スキンケア組成物が、前記携帯用湿熱供給装置上のフィルムである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記携帯用湿熱供給装置が長方形パッチである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記携帯用湿熱供給装置が、接着剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記携帯用湿熱供給装置が円形パッチである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記携帯用湿熱供給装置が、前記顔の下側半分を覆う形状を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記携帯用湿熱供給装置の起動から約5分間以内に少なくとも約36℃の皮膚表面温度を与える工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記水蒸気供給源が、少なくとも一個の水蒸気発生熱セルを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
有益性を皮膚に与える方法であって、
(a)蒸気供給源および熱供給源を含んでなる蒸気発生部分と、前記蒸気発生部分の、皮膚に面した側に配置された水蒸気−空気調整部分とを含んでなり、前記水蒸気−空気調整部分が、水蒸気−空気混合層、水蒸気−空気分配層、および所望により皮膚接触層を含んでなり、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気−空気調整部分が流体連絡しており、前記蒸気調整部分が、前記蒸気−空気調整部分に隣接して配置された潜熱供給表面を有する携帯用湿熱供給装置、を用意すること、
(b)前記携帯用湿熱供給装置を使用者の前記皮膚に付けること、
(c)前記携帯用湿熱供給装置の加熱を開始すること、および
(d)前記携帯用湿熱供給装置から発生した蒸気−空気混合物を前記使用者の前記皮膚に供給すること、
を含んでなり、
前記水蒸気−空気混合物が潜熱を与え、前記携帯用湿熱供給装置の加熱開始から約1分間〜約8時間以内に皮膚有益性をもたらし、皮膚温度が約43℃未満に維持され、美容保護有益性を与えるスキンケア活性成分を、前記蒸気発生部分中に、前記蒸気供給源中に、または前記水蒸気−空気調整部分中に取り入れる、方法。
【請求項17】
前記携帯用湿熱供給装置が前記皮膚上に約1分間〜約60分間止まる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記携帯用湿熱供給装置が前記皮膚上に約15分間止まる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記携帯用湿熱供給装置を取り外した後、顔の区域を髭剃りする工程をさらに含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
有益性を皮膚に与える方法であって、
(a)
(1)水蒸気供給源および熱供給源を含んでなる水蒸気発生部分と、
(2)前記水蒸気発生部分の皮膚に面した側に配置された水蒸気−空気調整部分を含んでなり、前記水蒸気−空気調整部分が、水蒸気−空気混合層、水蒸気−空気分配層、および所望により皮膚接触層を含んでなり、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気−空気調整部分が流体連絡しており、前記水蒸気−空気調整部分が、前記水蒸気−空気調整部分に隣接して配置された潜熱供給装置を有する携帯用湿熱供給装置、を顔の皮膚に付け、前記携帯用湿熱供給装置が、皮膚温度を約43℃未満に維持しながら、凝縮潜熱として熱の約15%〜約95%を使用者に伝達し、
(b)髭剃り組成物を前記顔の皮膚に塗布すること、および
(c)前記顔の皮膚を髭剃りすることを含んでなる、方法。
【請求項21】
前記携帯用湿熱供給装置が前記顔の皮膚に5分間付けられる、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−520518(P2011−520518A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509645(P2011−509645)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/043765
【国際公開番号】WO2009/140367
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】