説明

皮膚洗浄剤組成物

【課題】外観が良く、パール光沢付与剤の効果を十分に発揮でき、すすぎ時のストップフィーリングが良好で、乾燥後にべたつかず、すべすべした感触が得られる皮膚洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、
(B)エーテルカルボン酸型界面活性剤、
(C)ポリビニルピロリドン
を含有し、成分(C)の含有量が0.05〜1.35質量%である皮膚洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚や毛髪を対象とする洗浄剤分野においては、洗浄基剤である界面活性剤にある種のカチオン性ポリマーを組み合わせて、いわゆるコンディショニング効果を付与する試みがなされている。特に、毛髪洗浄の分野においては、アニオン界面活性剤とカチオン性ポリマーによる複合体を形成させ、シリコーンなどの液状油と一緒に毛髪に吸着させ、髪の感触を滑りやすく変化させるコアセルベーションという技術が知られている。
しかしながら、このようにアニオン界面活性剤とカチオン性ポリマーを含有する組成物は、複合体の析出を起こして濁った外観となるため、パール光沢付与剤を添加しても美麗な外観が得られにくいという問題があった。また、このような組成物を皮膚の洗浄に用いた場合(特許文献1)には、析出して肌に吸着した複合体は残留感が強く、べたつく感じが生じるという問題もあった。
【0003】
顔や全身を清浄にするための皮膚洗浄剤に求められる諸性能の中で、使用する際のすすぎ時の感触として、摩擦抵抗のある感触(ストップフィーリング)があることが重要である。すすぎ時にこのストップフィーリングを感じるまでの時間が早く、且つその強度が強い方がさっぱりとした洗浄感を与えるので好ましい。
【0004】
従来、この分野で汎用の界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を主剤とした皮膚洗浄剤組成物は、泡立ちが良好であるものの、すすぎ時にいつまでもヌルヌルした感触が続くという問題があった。特許文献2及び3では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等の水溶性界面活性剤を主剤としたパーソナルクレンジング組成物において、ポリイソブテン、シリコーン油等の水不溶性オイルを添加することにより、すすぎ時に改善されたリンスフィールを与えることが記載されている。しかしながら、このように皮膚洗浄剤組成物に油性成分を添加すると、特に、全身を洗浄するために使用する場合、すすぎ時のストップフィーリングが十分でなかったり、洗い流し後に皮膚への残留感や油性感が強いため、べたつきがあり、さっぱりした感触が得られないなどの問題があった。
【特許文献1】特開2004−107319号公報
【特許文献2】特表2001−513539号公報
【特許文献3】特表2001−513538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特に外観が良く、パール光沢付与剤の効果を十分に発揮でき、すすぎ時のストップフィーリング性が良好で、乾燥後の皮膚がべたつかず、すべすべした感触が得られる皮膚洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、エーテルカルボン酸型界面活性剤及びポリビニルピロリドンを組み合わせて用いれば、上記課題を解決した皮膚洗浄剤組成物が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、
(B)エーテルカルボン酸型界面活性剤、
(C)ポリビニルピロリドン
を含有し、成分(C)の含有量が0.05〜1.35質量%である皮膚洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、泡立ちが速く、泡量、泡質ともに優れ、すすぎ時のストップフィーリング性が良好であり、乾燥後の皮膚がべたつかず、すべすべした感触が得られる。また、複合体の析出が生じないため、透明で美麗な外観であり、パール光沢付与剤を添加したときには、美しいパール外観を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いる成分(A)のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、次式で表されるものが好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rは炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは平均で0.5〜5の数を示し、Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す)
【0012】
式中、Rとしては、特に炭素数12〜14のアルキル基が好ましい。また、エチレンオキシドの平均付加モル数は、0.5〜5であるが、特に1〜4であるのが好ましい。
また、Xとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;アンモニウム;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来のアンモニウム;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸由来のカチオンなどが挙げられる。
【0013】
成分(A)は、1種以上を用いることができ、全組成中に1〜20質量%、特に3〜13質量%含有するのが、泡立ちの速さ・泡量に優れるので好ましい。
【0014】
成分(B)のエーテルカルボン酸型界面活性剤は、ポリオキシエチレン鎖又はグリコールエーテル単位を介して、疎水基とカルボキシル基とを有する化合物群であり、例えば、アルキルエーテルカルボン酸又はその塩、ヒドロキシエーテルカルボン酸又はその塩、アルキルアミドエーテルカルボン酸又はその塩が挙げられる。この中で、アルキルエーテルカルボン酸又はその塩が、すすぎ時の感触の観点から好ましい。それぞれ、以下の構造式で表される。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rは炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは平均で0.5〜10の数を示し、Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す)
【0017】
式中、Rとしては、特に炭素数12〜16のアルキル基が好ましい。また、エチレンオキシドの平均付加モル数は、0.5〜10であるが、特に1〜6であるのが好ましい。
また、Xとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;アンモニウム;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来のアンモニウム;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸由来のカチオンなどが挙げられる。
【0018】
成分(B)は、1種以上を用いることができ、全組成中に1〜20質量%、特に1〜10質量%含有するのが、泡量・泡質及びすすぎ時のストップフィーリング性に優れるので好ましい。
【0019】
本発明においては、成分(A)及び(B)の質量割合が、(A):(B)=85:15〜25:75、特に75:25〜35:65であるのが、泡立ち・泡量・泡質及びすすぎ時のストップフィーリング性に優れるので好ましい。
また、全組成中における、成分(A)及び(B)の合計含有量が5〜25質量%、特に7.5〜20質量%であるのが、泡立ち・泡量・泡質に優れるので好ましい。
【0020】
成分(C)のポリビニルピロリドンは、すすぎ時のストップフィーリング性をより強めることができる。また、アニオン界面活性剤との共存下で複合体の析出が生じないため、透明で美麗な外観であり、パール光沢付与剤を添加したときには、優れたきれいなパール外観を与えることができる。
【0021】
ポリビニルピロリドンとしては、K値が10〜100、特に15〜90のものが、すすぎ時のストップフィーリングの強さに優れるので好ましい。ここで、K値は、ポリビニルピロリドン溶液の粘度を濃度の関数として表すFikentscherの式から導かれる固有粘度と呼ばれる値である。ポリビニルピロリドンの品種はこのK値で表示されており、分子量の目安となる。
【0022】
成分(C)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.05〜1.35質量%、好ましくは0.1〜1質量%含有される。この範囲内であれば、すすぎ時のストップフィーリング性が良好であり好ましい。
【0023】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、更に(D)パール光沢付与剤を含有することができる。
パール光沢付与剤としては、炭素数16〜22の脂肪酸とエチレングリコールとの(モノ、ジ)エステル、炭素数16〜22の脂肪酸とポリオキシエチレン(1〜7)単位を有するポリエチレングリコールとのエステル等が挙げられ、特に、炭素数16〜18の脂肪酸の(モノ、ジ)エチレングリコールエステルが好ましい。
【0024】
より具体的には、例えば、エチレングリコールモノステアリン酸エステル、エチレングリコールモノベヘニン酸エステル等のエチレングリコールモノ脂肪酸エステル;エチレングリコールジステアリン酸エステル、エチレングリコールジベヘニン酸エステル等のエチレングリコールジ脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0025】
パール光沢付与剤は、1種以上を用いることができ、全組成中に1〜3質量%、特に1.5〜2.5質量%含有するのが、パールの光沢感が良好であるので好ましい。
【0026】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、前記の成分以外に、通常の洗浄剤組成物に用いられる他の界面活性剤を含有することもできる。具体的には、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、アシル化アミノ酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、N−アシル−L−グルタミン酸塩等のアニオン界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、脂肪酸モノ又はジアルカノールアミド、ポリオキシアルキレン型ブロックポリマー、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル等の非イオン界面活性剤;第4級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤;カルボベタイン系、スルホベタイン系、イミダゾリニウムベタイン系、ヒドロキシベタイン系、脂肪酸アミドベタイン系等の両性界面活性剤などが挙げられる。
【0027】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、さらに必要に応じて、通常洗浄剤組成物に用いられる各種成分を含有することができる。具体的には、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の保湿剤;水、エタノール等の溶剤;メチルセルロース等の粘度調整剤;トリクロサン、トリクロロカルバン等の殺菌剤;グリチルリチン酸カリウム、酢酸トコフェロール等の抗炎症剤;メチルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール、安息香酸塩等の防腐剤;その他、色素、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を適宜含有することができる。
【0028】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、通常の方法により、配合成分を秤量し、水又は水を主体としアルコール等の他の水溶性溶剤を含む水性媒体に、任意の順序で混合することにより製造することができる。ボディシャンプー、洗顔料、メイク落とし等として適用することができる。
【0029】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、弱酸性に調整されるのが、皮膚への刺激が少なく、優れた洗浄力が損なわれることなく洗浄時の泡立ちが良好となり、すすぎ時のストップフィーリング性、使用感に優れるので好ましい。
弱酸性とは、pHが4.5〜7、好ましくはpH4.5〜6.5をいい、本発明においてpHは、イオン交換水で20質量倍に希釈したときの25℃における値を示す。
【実施例】
【0030】
実施例1
表1〜表4に示す組成の皮膚洗浄剤組成物を製造し、外観、パール外観、泡のボリューム、すすぎ時のストップフィーリングを感じるまでの早さ(前腕洗浄評価、全身洗浄評価)、すすぎ終わり時のストップフィーリング及び乾燥後のすべすべ感を評価した。結果を表1〜表4に併せて示す。
【0031】
(製造方法)
表に示す成分を秤量してイオン交換水中に添加し、50℃で十分攪拌して、皮膚洗浄剤組成物を得た。水酸化ナトリウム又はリンゴ酸を適量添加して、20質量倍希釈液のpHが弱酸性になるように調整した。ここでpHは、組成物をイオン交換水にて20質量倍希釈して5質量%水溶液を得た後、pHメーター(堀場製作所製、型番F−22)を用いて測定した。
【0032】
(評価方法)
(1)外観:
洗浄剤組成物をガラス瓶に入れたときの外観を、以下の基準により、目視にて評価した。
透明・やや白濁・白濁
【0033】
(2)パール外観:
洗浄剤組成物をガラス瓶に入れたときの外観、特にパールの光沢感を目視にて評価した。評価結果を以下の基準に従ってランク分けした。
A;パールの光沢がある。
B;パールの光沢がやや弱い。
C;パールの光沢がない。
【0034】
(3)すすぎ時のストップフィーリングを感じるまでの早さ(前腕洗浄評価):
各洗浄剤組成物1.0gを片方の手に取り、水道水を用いて希釈して泡立てた後、両腕(肘から先)を洗浄し、水道水にてすすいだ。その際に、両前腕を擦り合わしながらすすぎを行い、ストップフィーリングを感じるまでの擦り合わせた回数を測定した。測定結果を以下の評価基準に従ってランク分けを行った。
4;擦り合わせ回数が1〜5回。
3;擦り合わせ回数が6〜8回。
2;擦り合わせ回数が9〜11回。
1;擦り合わせ回数が12回以上。
【0035】
(4)すすぎ終わり時のストップフィーリングの強さ(全身洗浄評価):
上記(3)の評価試験において、専門評価者10名が、各洗浄剤組成物を用いて1日1回、全身を洗浄した。これを3日間連続して行い、すすぎ終わり時のストップフィーリングの強さについて評価し、3日間の総合評価で判定した結果を下記基準で示した。
◎;すすぎ終わり時のストップフィーリングが強いと答えた人が8人以上。
○;すすぎ終わり時のストップフィーリングが強いと答えた人が5〜7人。
△;すすぎ終わり時のストップフィーリングが強いと答えた人が2〜4人。
×;すすぎ終わり時のストップフィーリングが強いと答えた人が0または1人。
【0036】
(5)乾燥後のすべすべ感:
専門評価者10名が、各洗浄剤組成物を用いて1日1回、全身を洗浄した。これを3日間連続して行い、乾燥後のすべすべ感について評価し、3日間の総合評価で判定した結果を下記基準で示した。
◎;乾燥後すべすべすると答えた人が8人以上。
○;乾燥後すべすべすると答えた人が5〜7人。
△;乾燥後すべすべすると答えた人が2〜4人。
×;乾燥後すべすべすると答えた人が0または1人。
【0037】
(6)泡のボリューム:
各実施例及び比較例にて調製した洗浄剤組成物を、4度硬水で150倍(身体洗浄時の条件に相当する)に希釈してサンプル水溶液とした。50mLの活栓つきの目盛り付きガラス円筒管(35mm×78mm)に、サンプル水溶液7.5mLを加えて栓をし、シェーカー(イワキ産業株式会社製、型番万能シェーカーV-SX)を用いて300ストローク/分の速度で30秒間振とうし、振とう終了直後の泡量(cm)を読み取った。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、
(B)エーテルカルボン酸型界面活性剤、
(C)ポリビニルピロリドン
を含有し、成分(C)の含有量が0.05〜1.35質量%である皮膚洗浄剤組成物。
【請求項2】
成分(A)及び(B)の質量割合が、(A):(B)=85:15〜25:75であり、全組成中における成分(A)及び(B)の合計含有量が5〜25質量%である請求項1記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項3】
更に、(D)パール光沢付与剤を1〜3質量%含有する請求項1又は2記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項4】
イオン交換水で20質量倍に希釈したときのpHが4.5〜7である請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2008−285480(P2008−285480A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108485(P2008−108485)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】