説明

皮膚洗浄用布帛およびその製造方法

【課題】
本発明は、人体の皮膚面、例えば化粧落としの洗顔において、該布帛を石鹸などと併用して用いることにより、毛穴の底または近傍に埋もれた皮脂または/汚れなどを隅々まで綺麗に落とす効果に優れ、かつ、肌面を傷つけることなく、その効果を直接手の感触で確認しやすい皮膚洗浄用布帛およびその製造方法を提供せんとするものである。
【解決手段】
表面に単繊維繊度が0.001デシテックス以上、1.0デシテックス以下の極細繊維からなる布帛を使用し、裏面に通気性に優れた布帛を使用し、二層構造としたことを特徴とする皮膚洗浄用布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の皮膚面、例えば洗顔において、該布帛を石鹸などと併用して用いることにより、毛穴の底または近傍に埋もれた皮脂または汚れなどを隅々まで綺麗に落とす効果に優れ、かつ、二層構造とすることで泡立ち性を大幅に向上させた皮膚洗浄用布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、皮膚洗浄用布帛として、例えば特開2004−332149号公報(特許文献1)などが提案されている。特許文献1は、毛穴の底または近傍に埋もれた皮脂または汚れなどを隅々まで綺麗に落とす効果に優れるものの、使用する際の泡立ちの速度、泡の量に不満の残るものであった。
【特許文献1】特開2004−332149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、人体の皮膚面、例えば化粧落としの洗顔において、該布帛を石鹸と併用して用いることにより、毛穴の底または/近傍に埋もれた皮脂または/汚れなどを隅々まで綺麗に落とす効果に優れ、かつ、泡立ち性に優れた皮膚洗浄用布帛を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らが、鋭意研究の結果、本発明のかかる目的は、下記の構成により達成された。
(1)表面に単繊維繊度が0.001デシテックス以上、1.0デシテックス以下の極細繊維からなる布帛を使用し、裏面に通気性に優れた布帛を使用し、二層構造としたことを特徴とする皮膚洗浄用布帛。
(2)前記いずれかの布帛がポリエステル系繊維または/およびポリアミド系繊維からなることを特徴とする(1)に記載の皮膚洗浄用布帛。
(3)前記いずれかの布帛がピリジン系抗菌剤を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の皮膚洗浄用布帛。
(4)海島構造または剥離構造を有する複合繊維を用いて製織または編成してなる布帛を熱水中またはアルカリ液中で処理し、海成分を除去、または剥離した後、染色処理を行うことにより得られた、単繊維繊度が0.001デシテックス以上、1.0デシテックス以下の極細繊維からなる布帛と、通気性に優れた布帛とを、二層構造とすることを特徴とする皮膚洗浄用布帛の製造方法。
(5)前記染色処理と同時にピリジン系抗菌剤の付与を行うことを特徴とする(4)に記載の皮膚洗浄用布帛の製造方法
【発明の効果】
【0005】
本発明は、人体の皮膚面、例えば化粧落としの洗顔において、該布帛を石鹸と併用して用いることにより、毛穴の底または/近傍に埋もれた皮脂または/汚れなどを隅々まで綺麗に落とす効果に優れ、かつ、泡立ち性に優れた皮膚洗浄用布帛を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、表面に極細繊維からなる布帛を使用し、裏面に通気性に優れた布帛を使用した、二層構造の皮膚洗浄用布帛である。
【0007】
本発明の皮膚洗浄用布帛においては、表面に使用する布帛は、単繊維繊度が0.001デシテックス以上、1.0デシテックス以下の合成繊維を用いる。単繊維繊度は好ましくは0.005デシテックス以上、0.9デシテックス以下であり、さらに好ましくは0.01デシテックス以上、0.8デシテックス以下である。0.001デシテックスを下回る場合には、細過ぎるため、単繊維が爪や指先に引っかかり、単糸切れなどが発生し、結果として耐久性の劣るものになる。泡のきめ細かさを得るため布帛は上記繊度範囲の極細繊維のみで構成されることが好ましいが、 本発明の効果を損なわない範囲で上記繊度範囲以外の繊度の繊維を含んでいてもよい。
【0008】
使用される合成繊維の形態は特に限定されないが、フィラメントが好ましい。また、表面に使用する布帛は織物、編物でもよく、不織布であってもよいが、揉んで泡立てることを考慮すると織物が好ましい。これらは、通常の製織方法、編成方法等で製造することができる。
【0009】
また、裏面に用いる布帛は、通気性に優れた布帛であれば特に限定されない。
【0010】
なお、本発明において「通気性が優れた」とは、JIS L 1096 フラジール形法(測定装置:スイス テクステスト社製 型式FX3300)による通気量が50cm/cm2/S以上であることをいう。裏面に用いる布帛の通気量は、好ましくは200cm/cm2/S以上である。
【0011】
裏面に用いる布帛としては、具体的には開口率が10〜50%であるメッシュ構造、例えば織組織がからみ織りであるメッシュ生地、織組織が模紗織り、ハック織りあるいはナシジ織りであるメッシュ生地、編組織が、トリコット編であるメッシュ生地等が挙げられる。
【0012】
表面及び裏面のいずれの布帛においても、布帛を構成する繊維としては、合成繊維が好ましく用いられ、具体的にはポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維等が用いられる。極細化可能な繊維であればいかなる繊維でも良いが、中でも極細繊維であって、布帛にした時に洗濯前後で寸法変化が小さい点でポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維が好ましく用いられる。
ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維をそれぞれ単独で用いてもよいが、両方を組合わせて使うことも好ましい。ポリエステル系繊維とは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびこれらの共重合体などからなる繊維であり、ポリアミド系繊維とは、例えばナイロン4、ナイロン6、ナイロン66およびこれらの共重合体などからなる繊維である。
【0013】
本発明の皮膚洗浄用布帛は抗菌剤、特にピリジン系抗菌剤を含有することが好ましい。ピリジン系抗菌剤を含有するのは表面に使用する布帛であっても、裏面に使用する布帛であってもよいが、好ましくは表面に使用する布帛であり、両方の布帛に含有することがさらに好ましい。
次に、本発明の皮膚洗浄用布帛の製造方法について説明する。
表面に使用する布帛は、海島構造または剥離構造を有する複合繊維を用いて製織または編成等してなる布帛を熱水中またはアルカリ液中で処理し、海成分を除去、または剥離して単繊維繊度が0.001デシテックス以上、1.0デシテックス以下の極細繊維とした後、染色処理を行う。染色処理は公知の液流染色機等を用いて、公知の方法で行うことができ、染料も公知の染料を用いることができる。
【0014】
前述の通り本発明の皮膚洗浄用布帛は抗菌剤を含有することが好ましい。布帛に抗菌剤を含有させる方法としては、パディング法でも付与することができるが、染色処理と同時に繊維表面に抗菌剤を付与する方法が好ましい。洗濯耐久性を向上させるため、同時染色処理の条件を最適化し、必要で有れば追加の乾熱処理を施すなどして、抗菌剤を繊維内部にまで吸尽、含浸させることが好ましい。
なお、抗菌剤としてはピリジン系抗菌剤が好ましく、本発明におけるピリジン系抗菌剤としては、2−クロロ−6−トリクロロメチルピリジン、2−クロロ−4−トリクロロメチル−6−メトキシピリジン、2−クロロ−4−トリクロロメチル−6−(2−フリルメトキシ)ピリジン、ジ(4−クロロフェニル)ピリジン、2−ピリジルチオール−1−オキシド亜鉛、ジ(2−ピリジルチオール−1−オキシド)から選ばれた少なくとも1種であり、平均粒子径が1μm以下であることが好ましい。ピリジン系抗菌剤の平均粒子径が1μm以上であると本発明において用いられている合成繊維の繊度が約2μmであるため、繊維に対して抗菌剤が吸尽しにくく、十分な抗菌性能を発揮できないことがあるからである。
【0015】
表面に使用する布帛と裏面に使用する布帛との二層を合わせる方法としては、ほつれ防止のために縁かがりミシンをかける際に同時に縫い合わせる方法が好ましく用いられる。なお、二層を合わせた後に染色処理を行ってもよい。
【実施例】
【0016】
以下、実施例において本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[泡の量の測定方法]
泡立ちの測定方法は、まず、布帛を約35℃の湯に3分間浸したのち、洗顔用石鹸“ビオレ”(登録商標)洗顔フォーム(花王(株)製)1gを付け、30秒間揉んで泡を立てた。次にこのとき発生した泡をスプーンで100ccビーカーに移し、泡立ち量を測定した。
【0017】
(実施例1)
表面層の布帛用の繊維として、トータル繊度が110デシテックス、18フィラメント(70島/フィラメント)の海島型ポリエステル複合繊維で、島成分がポリエチレンテレフタレートで海成分がポリエステルの酸成分としてテレフタル酸と5−ナトリウムイソフタル酸の共重合体からなるアルカリ熱水可溶ポリエステルからなる繊維(海島比率は20/80)を用いた。この繊維をタテ密度145本/2.54cm、タテ密度107本/2.54cmの平織りを通常の織機で製織した。得られた生機を130℃×30分間マレイン酸処理することによって海成分を脆化させた後、80℃×45分間水酸化ナトウム水溶液処理することにより、その海成分を完全に除去した。得られた極細繊維の単繊維繊度は0.07デシテックス、織物の厚さは0.11mmであり、密度はタテ糸本数10,150本/2.54cm、ヨコ糸本数は7,490本/2.54cmの高密度織物であった。この織物を2−ピリジルチオール−1−オキシド亜鉛1g/lと分散染料でライトブルーに染色した後、9.8MPaの高圧水流で表面処理を行った。この布帛と、裏面層の布帛として繊度75デシテックスの繊維をトリコット編機で編成された開口率が20%、通気量は400cm/cm/S、のメッシュ生地とを縁部分で縫い合わせ二層構造の布帛を作製した。
【0018】
この布帛に洗顔用石鹸“ビオレ”(登録商標)洗顔フォーム(花王(株)製)1gを付け、30秒間揉んで泡を立てたところ、すばやく、きめ細かい泡が多量に得られ、使用感は優しい感触であった。このときの泡の量は60ccであった。
【0019】
(実施例2)
表面層の布帛として、タテ密度150本/2.54cm、タテ密度110本/2.54cmの平織りとする以外は実施例1と同様の方法で二層構造の布帛を得た。なお、得られた表面層の布帛は極細繊維の単繊維繊度は0.07デシテックス、密度はタテ糸本数10,500本/2.54cm、ヨコ糸本数7,700本/2.54cmの高密度織物であった。
【0020】
この布帛に洗顔用石鹸“ビオレ”(登録商標)洗顔フォーム(花王(株)製)1gを付け、30秒間揉んで泡を立てたところ、すばやく、きめ細かい泡が多量に得られ、使用感は優しい感触であった。このときの泡の量は55ccであった。
【0021】
(比較例1)
布帛を使用せず手で直接洗顔用石鹸“ビオレ” (登録商標)洗顔フォーム(花王(株)製)1gを付け、30秒間揉んで泡を立てた。このときの泡の量は20ccであった。
【0022】
(比較例2)
海島型複合繊維、トータル繊度が110デシテックス、18フィラメント(70島/フィラメント)の海島型ポリエステル複合繊維で、島成分がポリエチレンテレフタレートで海成分がポリエステルの酸成分としてテレフタル酸と5−ナトリウムイソフタル酸の共重合体からなるアルカリ熱水可溶ポリエステルからなる繊維(海島比率は20/80)を用いた。この繊維をタテ密度145本/2.54cm、タテ密度107本/2.54cmの平織りを通常の織機で製織した。得られた生機を130℃×30分間マレイン酸処理することによって海成分を脆化させた後、80℃×45分間水酸化ナトウム水溶液処理することにより、その海成分を完全に除去した。得られた極細繊維の単繊維繊度は0.07デシテックス、織物の厚さは0.11mmであり、密度はタテ糸本数10,150本/2.54cm、ヨコ糸本数は7,490本/2.54cmの高密度織物であった。この織物を2−ピリジルチオール−1−オキシド亜鉛1g/lと分散染料でライトブルーに染色した後、9.8MPaの高圧水流で表面処理を行った。
【0023】
この布帛を2枚重ね合わせ縁部分で縫い合わせ二層構造の布帛を作製した。
【0024】
この布帛に洗顔用石鹸“ビオレ” (登録商標)洗顔フォーム(花王(株)製)1gを付け、30秒間揉んで泡を立てたところ、きめ細かい泡が得られたが、また泡の量は少なかった。このときの泡の量は20ccであった。
【0025】
(比較例3)
海島型複合繊維、トータル繊度が110デシテックス、18フィラメント(70島/フィラメント)の海島型ポリエステル複合繊維で、島成分がポリエチレンテレフタレートで海成分がポリエステルの酸成分としてテレフタル酸と5−ナトリウムイソフタル酸の共重合体からなるアルカリ熱水可溶ポリエステルからなる繊維(海島比率は20/80)を用いた。この繊維をタテ密度145本/2.54cm、タテ密度107本/2.54cmの平織りを通常の織機で製織した。得られた生機を130℃×30分間マレイン酸処理することによって海成分を脆化させた後、80℃×45分間水酸化ナトウム処理することにより、その海成分を完全に除去した。得られた極細繊維の単繊維繊度は0.07デシテックス、織物の厚さは0.11mmであり、密度はタテ糸本数は10,150本/2.54cm、ヨコ糸本数は7,490本/2.54cmの高密度織物であった。この織物を2−ピリジルチオール−1−オキシド亜鉛1g/lと分散染料でライトブルーに染色した後、9.8MPaの高圧水流で表面処理を行った。
【0026】
この布帛に洗顔用石鹸“ビオレ” (登録商標)洗顔フォーム1gを付け、30秒間揉んで泡を立てたところ、きめ細かい泡が得られたが、泡の量は少なかった。このときの泡の量は25ccであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に単繊維繊度が0.001デシテックス以上、1.0デシテックス以下の極細繊維からなる布帛を使用し、裏面に通気性に優れた布帛を使用し、二層構造としたことを特徴とする皮膚洗浄用布帛。
【請求項2】
前記いずれかの布帛がポリエステル系繊維または/およびポリアミド系繊維からなることを特徴とする請求項1に記載の皮膚洗浄用布帛。
【請求項3】
前記いずれかの布帛がピリジン系抗菌剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の皮膚洗浄用布帛。
【請求項4】
海島構造または剥離構造を有する複合繊維を用いて製織または編成してなる布帛を熱水中またはアルカリ液中で処理し、海成分を除去、または剥離した後、染色処理を行うことにより得られた、単繊維繊度が0.001デシテックス以上、1.0デシテックス以下の極細繊維からなる布帛と、通気性に優れた布帛とを、二層構造とすることを特徴とする皮膚洗浄用布帛の製造方法。
【請求項5】
前記染色処理と同時にピリジン系抗菌剤の付与を行うことを特徴とする請求項4に記載の皮膚洗浄用布帛の製造方法。

【公開番号】特開2006−336149(P2006−336149A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162358(P2005−162358)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】