説明

皮膚活性化剤

【解決手段】 皮膚活性化剤は、哺乳動物の初乳と多価アルコールを含有し、人の皮膚上で30〜45℃に発熱する。本発明に用いられる哺乳動物の初乳は、代表的には乳牛から得られるものであるが、ヒト、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ラクダなどの初乳も利用可能である。哺乳動物の初乳は、保存安定性を高めるため脱脂した後、得られる脱脂初乳を噴霧乾燥ないし凍結乾燥により粉末化することが好ましい。初乳の粉末を得るための脱脂、噴霧乾燥、凍結乾燥などは常法に従って行うことができる。多価アルコールは、プロピレングリコール、グリセリン等、水分との接触により水和熱を発生させるものであればよく、好ましくはグリセリンである。
【効果】皮膚活性化剤は、発熱性及びその持続性に優れ、発熱効果により、哺乳動物の初乳の効果を向上させ、皮膚に効果的に皮膚活性化作用を与え、温感による塗布時の感じが良く、血行の促進による肌の活性化、湿潤状態による擦過傷などの治癒効果にも優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に接触させたとき30〜45℃に発熱し、肌を効果的に温めながら血行を促進し、有効成分である哺乳動物の初乳の細胞活性化作用を最も高める温度にすることにより、肌の活性化(新陳代謝の活発化、美観の向上)を一段と高める作用を有する皮膚活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に対して薬剤で発熱を与えると、温熱効果と総称される種々の効用、例えば温感に基づく塗布時の快感、血行の促進による肌の活性化(疲労回復、新陳代謝の活発化、美観の向上等)、毛穴の拡張や熱による表皮汚れの除去性向上といった効果、さらに化粧料が薬剤を含有する場合には、発熱が薬剤の皮膚浸透性を促進させる効果などを得ることが期待できる。このような効用をもたらすような発熱性を付与する手段として、従来より酸化還元反応、中和反応、水和反応等の化学反応の応用が検討されているが、これらのうち、水和反応は、劇薬を使用しないために安全性が高く、当該分野への適用が最も好ましい発熱手段である。
【0003】
皮膚への発熱付与の具体例としては、水性粘性体からなる第1剤と酸化カルシウムを油剤中に分散させた第2剤を用時に混合することによって発生する熱を利用して、除毛成分を迅速に毛根部分に作用させる方法が開示されている(特許文献1参照)。この方法においては、酸化カルシウムが水と反応して水酸化カルシウムに変化する際の発熱が利用されている。
【0004】
また焼き石膏を主成分とした無水の無機塩類が結晶水を吸蔵する際の発熱を利用したパック化粧料が提案されている(特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。このような無機塩類の水和反応は、単位重量当たりの発熱量が比較的大きいという特徴を有するものの、無機塩類が用時以前に水分と接触するのを防ぎかつ化粧料の形状を保持する目的で使用されている非水性媒質の親水性・熱伝導性が不充分であるため、温熱効果は必ずしも満足できるものではなかった。
【0005】
さらに、活性化ゼオライトの水和熱を利用した化粧料等も公知である(特許文献5、特許文献6、特許文献7参照)。これらの化粧料には、活性化ゼオライトを分散する目的でポリオール類やポリエチレングリコールが使用されているほか、配合安定化の見地から、活性化ゼオライトに対して予めイオン交換処理を行うことも提案されている。しかしながら、これら公知の化粧料は、水を混合した瞬間に発熱が終了するので、発熱を5分以上持続させるためには活性化ゼオライトを高濃度で分散させる必要があり、経済性、製造操作の点で不便であった。しかも、活性化ゼオライトを高濃度で配合した化粧料は、水混合と同時に一時的に高温になるため、皮膚上に火傷を起こす等、安全性の面でも問題があった。
【0006】
一方、哺乳動物の初乳は、皮膚再生化作用や細胞活性化作用を示すことが報告されており、細胞活性化剤として期待されているが、我が国では未だ使用が許されておらず、研究がすすんでいない。加えて、上記作用の程度がまちまちであり、どのような条件で細胞活性化効果が高まるか未だ解決されていない問題点が多い。
【特許文献1】特開昭51−104043号公報
【特許文献2】特開昭57−114506号公報、
【特許文献3】特開昭62−30704号公報
【特許文献4】特開昭63−54308号公報
【特許文献5】特開平4−89424号公報
【特許文献6】欧州特許第187912号明細書
【特許文献7】米国特許第3250680号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、哺乳動物の初乳の細胞活性化効果を高めるため、どのような条件、例えばどのような温度で皮膚上に与えることが適当であるのかを探求することが重要である。すなわち、適温に肌を温める効果に優れつつ、哺乳動物の初乳の皮膚再生化(細胞活性化)を効果的に促進できる皮膚活性化剤が望まれている。
【0008】
本発明はこのような課題を解決すべく工夫されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情において、本発明者らは鋭意研究を行った結果、有効成分が哺乳動物の初乳であり、かつ、多価アルコールを含有し、人の皮膚上で30〜45℃に発熱する皮膚活性化剤であって、さらに好ましくは牛の初乳を有効成分とし、かつ、グリセリンを含有することによって、人の皮膚上で、10〜15分、30〜45℃の適温に発熱し、哺乳動物の初乳の皮膚活性化効果を高めることを特徴とする皮膚活性化剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明による皮膚活性化剤は、哺乳動物の初乳と多価アルコールを含有し、人の皮膚上で30〜45℃に発熱することを特徴とするものである。
【0011】
本発明による皮膚活性化剤は、医薬品、医薬部外品または化粧品であってよい。
【0012】
本発明に用いられる哺乳動物の初乳は、代表的には乳牛から得られるものであるが、ヒト、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ラクダなどの初乳も利用可能である。
【0013】
哺乳動物の初乳は、保存安定性を高めるため脱脂した後、得られる脱脂初乳を噴霧乾燥ないし凍結乾燥により粉末化することが好ましい。初乳の粉末を得るための脱脂、噴霧乾燥、凍結乾燥などは常法に従って行うことができる。
【0014】
本発明に用いられる多価アルコールは、プロピレングリコール、グリセリン等、水分との接触により水和熱を発生させるものであればよく、好ましくはグリセリンである。
【0015】
さらに、本発明の皮膚活性化剤には、その他通常一般的に使用されている医薬品及び医薬品添加物、化粧品原料など、例えば、ビタミン類、鎮痛消炎剤、ステロイド類、無機塩類、無機酸類、薬草類、界面活性剤、アルコール類、油脂類、色素類、香料などを本発明の効果を妨げない限り、適宜な量で添加することができる。
【0016】
ビタミン類は、各種ビタミンおよびその誘導体であってよく、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEならびにその誘導体であることが好ましい。
【0017】
鎮痛消炎剤はインドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェンなどであってよい。
【0018】
ステロイド類は、ハイドロコーチゾン、ベータメサゾンなどであってよい。
【0019】
無機塩類は、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭類ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫化カリウム、臭化カリウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム、タルク、酸化亜鉛、ホウ酸、無水ケイ酸、メタケイ酸などであってよい。
【0020】
薬草類は、ウイキョウ、黄柏(オウバク)、カミツレ、桂皮(ケイヒ)、当帰(トウキ)、薄荷(ハッカ)、菖蒲(ショウブ)、芍薬(シャクヤク)、トウヒ、十薬(ジュウヤク)、サンショウ、竜脳(リュウノウ)などであってよい。
【0021】
界面活性剤は、公知のアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでもよい。
【0022】
アルコール類は、エタノール、ステアリルアルコール、イソプロピルアルコール、セチルアルコールなどであってよい。
【0023】
油脂類は、オリーブ油、大豆油、米ヌカ油、サフラワー油、流動パラフィンなどであってよい。
【0024】
色素類、香料類は、天然品、合成品またはそれらの混合のいずれでもよい。
【0025】
本発明による皮膚活性化剤は、人の皮膚上に適用されたとき、30〜45℃に発熱すればよく、これによって有効成分である哺乳動物の初乳の活性効果が高まり、皮膚の活性化効果が有効に適用される。この温度での発熱は、10〜15分間続くことが好ましい。
【0026】
発熱温度が35℃より低いと、皮膚活性化が十分になされず、45℃を越えると皮膚が損傷をきたす恐れがある。
【0027】
本発明の好適な実施形態では、哺乳動物が牛であって、多価アルコールがグリセリンである場合、牛の初乳を6〜60重量%、グリセリンを40〜94重量%の割合で組み合わせればよく、人の皮膚上に皮膚活性化剤5gを面積5cm2に塗り広げればよい(有効成分TGFは0.35〜3.5μg/cm2で効果を発揮する。初乳にTGFは5.8μg/g含有されればよい。)。
【0028】
グリセリンは、40〜60重量%の配合割合で発熱する。さらに温度を上げる場合は塩化マグネシウムを加える。
【0029】
皮膚活性化剤により生じた熱が30〜45℃で10〜15分間皮膚に与えられることにより、有効成分の皮膚への活性が高められ、皮膚の活性化が促進される。
【0030】
本発明の皮膚活性化剤の剤型は、特に限定されず、ローション剤、乳液剤、クリーム剤、ジェル剤、ペースト剤、パック剤、プラスター剤、軟膏剤、固体剤などの形態をとることが可能である。これらの剤型を調製するには、それぞれ公知の基剤が用いられる。炭酸ガス、窒素ガスなどの圧縮ガスまたはLPGなどの液化ガスを使用し、エアゾール容器から吐出するエアゾール剤の形態をとることも可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の皮膚活性化剤は、発熱性及びその持続性に優れ、発熱効果により、有効成分である哺乳動物の初乳の効果を向上させ、人の皮膚に効果的に皮膚活性化作用を与えることができ、また温感による塗布時の感じが良く、血行の促進による肌の活性化、湿潤状態による擦過傷などの治癒効果にも優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1
乳牛から得られた初乳を脱脂した後、得られる脱脂初乳を噴霧乾燥により粉末化したものと、グリセリンとローション用基剤を混合してローション剤を製造した。これを哺乳動物の皮膚に一定量接触させ、皮膚表面の皮膚活性化を測定した。
【0034】
その結果、ローション剤を塗布した皮膚の表面では30〜45℃の温度が塗布開始0.5分後から10分後にわたって持続し、かつ、比較例に比べ、皮膚活性化が促進された。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の初乳と多価アルコールを含有し、人の皮膚上で30〜45℃に発熱することを特徴とする皮膚活性化剤。
【請求項2】
哺乳動物が牛であることを特徴とする請求項1記載の皮膚活性化剤。
【請求項3】
多価アルコールがグリセリンであることを特徴とする請求項1または2記載の皮膚活性化剤。
【請求項4】
医薬品、医薬部外品または化粧品であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚活性化剤。

【公開番号】特開2006−96671(P2006−96671A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280893(P2004−280893)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】