説明

盗難防止装置、及び該装置を備えた車両

【課題】 コスト高を抑制しつつ、外乱による影響を受けにくいセンサを取り付け、緩衝部材の長さの変動に基づいて盗難に係る作業が行われたか否かを検出することができる盗難防止装置及び該装置を備えた車両を提供する。
【解決手段】 車輪に加わる荷重に応じて緩衝部材の長さが変動する懸架装置とを備えた車両に対して盗難に係る作業が外部から行われたか否かを検出する盗難防止装置において、緩衝部材は、作動液を充填した内筒と、該内筒との間に空気室を形成する外筒と、該内筒に対して移動可能なピストンと、該ピストンの移動により内筒から作動液を空気室へ誘導するオリフィスと、空気室内に配置してあるサーミスタとを有し、サーミスタに係る電気量に基づいて緩衝部材毎の長さの変動量を検出し、検出した変動量に基づいて車輪毎の荷重を推算し、推算した荷重に基づいて盗難に係る作業が外部から行なわれたと判断した場合、その旨を外部へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に外部から加わる荷重を車輪ごとに検出することにより、レッカー車、クレーン車等により車両を吊り上げる等の盗難に係る作業が行われたか否かを検出して、車両の盗難を防止する盗難防止装置、及び該装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の電子制御が進展するに伴い、駐車中の車両に対して盗難に係る作業が行われた場合に特有の荷重、姿勢変化等を検出し、盗難に係る作業が行われている旨を示す警報を出力することにより車両の盗難を防止する盗難防止装置が多々開発されている。例えば特許文献1では、前輪又は後輪の回転状況を監視しておき、駐車場内で監視状態にある車両の前輪又は後輪が回転したことを検知した場合、警報を報知するようにした盗難防止装置が開示されている。これにより、エンジンを起動することなく、例えば複数人で押して移動させる等の作業による車両盗難を防止することができる。しかし、レッカー車、クレーン車等を使用し、車両を吊り上げることにより車両を盗む大規模な車両盗難では、車両の車輪が回転しないことから、特許文献1の盗難防止装置では車両盗難を防止することができなかった。
【0003】
そこで、特許文献2では、車両に既設の牽引フックを、駐車場内に設置して有るフックに連結可能なロック機構を用い、車両の吊り上げ、移動等を困難にすることにより、レッカー車、クレーン車等を使用した大規模な車両盗難に対しても盗難防止効果を奏することができる盗難防止装置が開示されている。しかし、設備が大掛かりになることから設置コストが高くなり、駐車する車両毎にフック等の連結作業を行う必要がある等、駐車場の利便性を損なうという問題があった。
【0004】
上述した問題を解消すべく特許文献3では、GPS又は傾斜センサにより、自車位置又は傾斜角度を定期的に監視しておき、自車位置の変化又は傾斜角度が所定の値以上であり、イモビライザが正当に解除されていない場合に盗難発生したものと判定することで、レッカー車、クレーン車等を使用した大規模な車両盗難に対しても盗難防止効果を奏することができる車両盗難防止装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−182527号公報
【特許文献2】特開2001−354115号公報
【特許文献3】特開平9−240432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献3に開示されている構成では、盗難対象の車両を傾斜させずに吊り上げた場合、傾斜センサで異常を検出することができない。また、GPSで車両の位置は精度良く特定することができるのに対して、車両の高さを精度良く特定することは困難であり、車両が路面から離れた位置に吊り上げられたか否かを正確に把握することは困難であるという問題点があった。さらに、GPSを併設することにより装置全体としてコスト高になるという問題点もあった。
【0006】
斯かる問題を解消すべく、例えば車輪ごとに設置してある緩衝部材のコイルばね長さの変動を、磁気式の変位センサ、超音波式変位センサ等により検出し、盗難に係る作業が行なわれたか否かを判断する方法も開発されている。しかし、斯かる方法では、磁気式の変位センサ、超音波式変位センサ等を車輪近傍に設ける必要があることから、路面から跳ね上げられた泥、小石等の異物の衝突等の外乱によりセンサに障害が発生する等の影響を受けやすい。したがって、センサ部分のカバー、保護容器等の保護用具を備えることが必要となり、コスト低減効果が半減するという問題点があった。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、コスト高を抑制しつつ、路面から跳ね上げられた泥、小石等の異物の衝突等の外乱による影響を受けにくいセンサを取り付けることにより、車輪ごとに設置してある緩衝部材の長さの変動に基づいて盗難に係る作業が行われたか否かを検出することができ、車両の盗難を防止することができる盗難防止装置、及び該装置を備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1発明に係る盗難防止装置は、複数の車輪と、車輪に加わる荷重に応じて緩衝部材の長さが変動する懸架装置とを備えた車両に対して盗難に係る作業が外部から行われたか否かを検出して盗難を防止する盗難防止装置において、前記緩衝部材は、作動液を充填した内筒と、該内筒との間に空気室を形成する外筒と、該内筒に対して移動可能なピストンと、該ピストンの移動により前記内筒から作動液を前記空気室へ誘導するオリフィスと、前記空気室内に配置してあるサーミスタとを有し、前記サーミスタに係る電気量に基づいて前記緩衝部材毎の長さの変動量を検出する検出手段と、検出した前記緩衝部材毎の長さの変動量に基づいて前記車輪毎の荷重を推算する荷重推算手段と、推算した荷重に基づいて盗難に係る作業が外部から行なわれたか否かを判断する判断手段と、該判断手段で盗難に係る作業が外部から行なわれたと判断した場合、その旨を外部へ出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、第2発明に係る盗難防止装置は、第1発明において、前記判断手段は、推算した荷重が所定値より小さいか否かを判断し、小さいと判断した場合に盗難に係る作業が外部から行なわれたと判断するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
また、第3発明に係る盗難防止装置は、第1又は第2発明において、前記サーミスタは、作動液に浸る度合が大きくなるほど抵抗値が大きくなる特性を有することを特徴とする。
【0011】
また、第4発明に係る車両は、第1乃至第3発明のいずれかの盗難防止装置を備えたことを特徴とする。
【0012】
第1発明では、作動液を充填した内筒と、該内筒との間に空気室を形成する外筒と、該内筒に対して移動可能なピストンと、該ピストンの移動により内筒から作動液を空気室へ誘導するオリフィスと、空気室内に配置してあるサーミスタとを有する緩衝部材を備えており、サーミスタに係る電気量、例えば電流値に基づいて緩衝部材毎の長さの変動量を検出する。検出した緩衝部材毎の長さの変動量に基づいて車輪毎に加わる荷重を推算し、推算した荷重に基づいて盗難に係る作業、例えば車両を吊り上げる作業等が行なわれたか否かを判断し、盗難に係る作業が行われたと判断した場合、その旨を外部へ出力する。これにより、車輪毎にかかっている荷重を略リアルタイム的に推算することで、車両に対して盗難に係る作業が外部から行なわれたか否かを略リアルタイム的に判断することができ、センサ部分の保護用具を必要とすることなく、路面から跳ね上げられた泥、小石等の異物の衝突等の外乱によりセンサに障害が発生する等の影響を受けない。したがって、センサからの検出値の信頼度が高く、複雑な構成によるコスト高を回避しつつ、車輪毎の荷重推算値が異常値であるか否かに基づいて、レッカー車、クレーン車等を使用した大規模な車両盗難が行われる場合であっても確実に検出することができ、その旨を出力することにより盗難を防止することが可能となる。
【0013】
第2発明では、車輪毎に推算した荷重が所定値より小さいか否かを判断し、小さいと判断した場合に盗難に係る作業が行われたものと判断する。これにより、レッカー車、クレーン車等を使用した大規模な車両盗難が行われる場合に、車両が吊り上げられる等により車輪が浮く状態になっている状態を確実に検出することができ、その旨を出力することにより盗難を防止することが可能となる。
【0014】
第3発明では、サーミスタは、作動液に浸る度合が大きくなるほど抵抗値が大きくなる特性を有する。これにより、ピストンに荷重が加わり、サーミスタがオリフィスから流れ出た作動液に浸る度合が大きくなるほど、電気抵抗値が増大し、電流値が減少する。したがって、ピストンに加わる荷重、すなわち車輪にかかっている荷重を略リアルタイム的に推算することができ、車両が吊り上げられる等により車輪が浮く状態になっている状態を確実に検出することができ、その旨を出力することにより盗難を防止することが可能となる。
【0015】
第4発明では、上述したような盗難防止装置を備えることにより、車両の盗難を確実に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
第1発明によれば、車輪毎にかかっている荷重を略リアルタイム的に推算することで、車両に対して盗難に係る作業が外部から行なわれたか否かを略リアルタイム的に判断することができ、センサ部分の保護用具を必要とすることなく、路面から跳ね上げられた泥、小石等の異物の衝突等の外乱によりセンサに障害が発生する等の影響を受けない。したがって、センサからの検出値の信頼度が高く、複雑な構成によるコスト高を回避しつつ、車輪毎の荷重推算値が異常値であるか否かに基づいて、レッカー車、クレーン車等を使用した大規模な車両盗難が行われる場合であっても確実に検出することができ、その旨を出力することにより盗難を防止することが可能となる。
【0017】
第2発明によれば、レッカー車、クレーン車等を使用した大規模な車両盗難が行われる場合に、車両が吊り上げられる等により車輪が浮く状態になっている状態を確実に検出することができ、その旨を出力することにより盗難を防止することが可能となる。
【0018】
第3発明によれば、ピストンに荷重が加わり、サーミスタがオリフィスから流れ出た作動液に浸る度合が大きくなるほど、電気抵抗値が増大し、電流値が減少する。したがって、ピストンに加わる荷重、すなわち車輪にかかっている荷重を略リアルタイム的に推算することができ、車両が吊り上げられる等により車輪が浮く状態になっている状態を確実に検出することができ、その旨を出力することにより盗難を防止することが可能となる。
【0019】
第4発明によれば、上述したような車両盗難防止装置を備えることにより、上述した効果を奏することが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る盗難防止装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る盗難防止装置は、車両の車輪1毎に設置してある緩衝部材2により、車輪1へ加わる荷重、例えば路面からの荷重を緩衝する。緩衝部材2は、伸縮度合に応じて出力される電流値を検出する電流検出回路3に接続されており、電流検出回路3で検出した電流値は車載LAN6を介して演算装置5へ送信される。さらに演算装置5は、車載LAN6を介して、他の演算装置5と接続されており、種々のデータを送受信する。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態に係る盗難防止装置の緩衝部材2の構成を示す斜視図である。図2に示すように、本実施の形態に係る盗難防止装置の緩衝部材2は、略円筒形状のカバー21の内部に、一体としてカバー21と相互に移動可能な外筒22及び内筒23を備えている。内筒23の内部は作動液(例えば作動油)25で充填してあり、外筒22及び内筒23の間に配設してある空気室24との間で作動液25を出し入れする弁機能を有するオリフィス26を備えている。
【0023】
作動液25、カバー21内に設けてあるロッド27の先端部に配設してあるピストン28が押し下がることにより、オリフィス26を押し下げ、空気室24内へと流れ込む。すなわち、空気室24は、オリフィス26を介して押し出された作動液25のリザーバとなっている。図3及び図4は、ピストン28の位置と作動油25の状態との関係を示す部分断面図である。図3はピストン28を押し下げた場合の、図4はピストン28を引き上げた場合の、それぞれの場合の作動油25の空気室24内への流入状態を示している。
【0024】
図3に示すように、ピストン28を押し下げた場合、ピストン28自体に配設してあるオリフィス29を介して、ピストン28が下方へ移動した後の空間へ作動液25が流入し、ピストン28は荷重を緩衝しつつ円滑に移動することができる。また、内筒23に配設してあるオリフィス26を介して、作動液25の一部が空気室24へ流入する。したがって、空気室24内の作動液25の液位が上昇する。
【0025】
図4に示すように、ピストン28を引き上げた場合、ピストン28自体に配設してあるオリフィス29を介して、ピストン28が上方へ移動した後の空間に流入していた作動液25が内筒23へと流入し、ピストン28は荷重を緩衝しつつ円滑に移動することができる。また、内筒23に配設してあるオリフィス26を介して、空気室24内の作動液25が内筒23へと流入する。したがって、空気室24内の作動液25の液位が下降する。
【0026】
空気室24内には、上下動する作動液25の液位を検出するためのサーミスタ30が設けてある。サーミスタ30は、作動液25に浸漬する表面積が大きくなるほど周囲の温度が低下し、抵抗値が大きくなる。したがって、サーミスタ30に一定の電圧を印加している場合、負荷抵抗に流れる電流値の変動に応じて液位を推定することができる。
【0027】
また、緩衝部材2は外筒22及び内筒23で保護されており、特段の保護用具を必要とすることなく、路面から跳ね上げられた泥、小石等の異物の衝突等の外乱により検出値に異常が生じるおそれがない。したがって、検出した作動液25の液位の検出精度を一定水準に維持することが容易である。
【0028】
図5は、サーミスタ30の配設状態を模式的に示す図である。ピストン28の上下動に応じて作動液25の液位が上下動し、サーミスタ30が作動液25に浸漬される液位が変動する。電流検出回路3は、一定電圧Vを負荷抵抗Rに印加し、負荷抵抗Rに流れる電流Iを検出する。サーミスタ30は、ピストン28が押し下げられた場合、作動液25の液位が増加し、作動液25に浸漬する表面積が増加する。作動液25に浸漬される表面積が増加するにつれてサーミスタ30の周囲の温度が低下し、サーミスタ30の電気抵抗値が増加する。したがって、負荷抵抗Rに流れる電流Iが減少する。逆に、ピストン28が引き上げられた場合、作動液25の液位が減少し、作動液25に浸漬される表面積が減少する。作動液25に浸漬される表面積が減少するにつれてサーミスタ30の周囲の温度が上がり、サーミスタ30の電気抵抗値が減少する。したがって、負荷抵抗Rに流れる電流Iが増加する。
【0029】
サーミスタ30の抵抗値Rは、サーミスタ定数をB、温度T0での抵抗値をR0とした場合、(数1)に従って変動する。
【0030】
【数1】

【0031】
印加される電圧をVとした場合、電流値をIとすると抵抗値RはR=V/Iであることから、(数2)によりサーミスタ30の温度Tを求めることができる。
【0032】
【数2】

【0033】
したがって、液位hは、温度T0での液位h0を基準に、(数3)で示す実験値として求めることができる。なお、K1は経験値に基づく定数である。
【0034】
【数3】

【0035】
液位hが求まることにより、演算装置5は、車輪1に加わる荷重を推算する。
【0036】
図6は、本発明の実施の形態に係る演算装置5の概略構成を示すブロック図である。演算装置5は、少なくとも、MPU51、ROM52、RAM53、車載LAN6と接続する通信インタフェース54、及び上述したハードウェアを接続する内部バス55で構成する。
【0037】
MPU51は、内部バス55を介して演算装置5の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部を制御するとともに、ROM52に記憶されている処理プログラムに従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。
【0038】
ROM52は、SRAM、フラッシュメモリ等で構成され、電流検出回路3で取得した電圧又は電流の変化量に基づいて、緩衝部材2の長さの変動量を算出するプログラム、算出した緩衝部材2の長さの変動量に基づいて、各車輪1に加わる荷重を算出するプログラム、及び算出した荷重に基づいて、車両の盗難に係る作業が外部から行われたか否かを判断するプログラム等を記憶してある。
【0039】
RAM53は、SRAM、フラッシュメモリ等で構成され、ソフトウェアの実行時に発生する一時的なデータを記憶する。通信インタフェース54は、内部バス55に接続されており、車載LAN6に接続されることにより、処理に必要とされるデータを送受信する。
【0040】
図7は、本発明の実施の形態に係る盗難防止装置の演算装置5のMPU51の処理手順を示すフローチャートである。演算装置5のMPU51は、車輪1毎に電流検出回路3から負荷抵抗に流れる電流値Iを取得し(ステップS701)、(数2)及び(数3)に従って液位hを算出する(ステップS702)。
【0041】
MPU51は、算出した液位hをキー情報として、例えば事前にRAM53に液位hと荷重Fとの関係を荷重テーブルとして記憶しておき、記憶してある荷重テーブルを参照することにより車輪1に加わる荷重Fを推算する(ステップS703)。MPU51は、推算した車輪1に加わる荷重Fが所定値より小さいか否かを判断する(ステップS704)。
【0042】
すなわち、車両がレッカー車、クレーン車等により外部から吊り上げられた場合、特定の車輪1に加わる荷重が0(ゼロ)になる。車両が停止している状態では、少なくとも車両重量に相当する荷重が車輪1に加わっていることから、車輪1に加わる荷重Fが所定値、例えば4輪車の場合には車両重量の4分の1より小さい場合には、外部から盗難に係る作業が行われたものと推定することができる。
【0043】
MPU51が、推算した車輪1に加わる荷重Fが所定値以上であると判断した場合(ステップS704:NO)、MPU51は、盗難に係る作業が外部から行われていないものと判断し、一定時間経過後(ステップS705:YES)、ステップS701へ戻る。
【0044】
MPU51が、推算した車輪1に加わる荷重Fが所定値より小さいと判断した場合(ステップS704:YES)、MPU51は、車両に対して外部から何らかの盗難に係る作業が行われたものと判断し、クラクションの動作を制御するECUへ鳴動指示信号を送出する(ステップS706)。鳴動指示信号を受け付けたECUの指示によりクラクションが鳴動し、盗難に係る作業の第三者による発見、作業者による作業の中止を促し、車両の盗難を防止する。
【0045】
なお、車両に対して外部から何らかの盗難に係る作業が行われた旨を出力する方法は、クラクションの鳴動に限定されるものではなく、ハザードランプの点滅、ヘッドランプの点灯、エンジンの起動及びスロットル全開による騒音、振動等、第三者が以上であると認識することができる形態の出力方法であれば何でも良い。また、外部の監視機関へ異常が発生した旨を無線送信する方法であっても良い。
【0046】
また、車両故障が発生し、レッカー車、クレーン車等により車両を吊り上げる必要がある場合には、上述した盗難防止装置を機能させる必要がない。したがって、車室内(例えばコンソール内に装着)のスイッチにより、車両に対して外部から何らかの盗難に係る作業が行われたものと判断した場合に、その旨を示す情報を出力するか否かをオンオフ可能にしておくことが好ましい。これにより、不要な場合にまで警報出力することを防止することが可能となる。
【0047】
なお、サーミスタ30は、作動液25に浸漬する表面積が大きくなるほど周囲の温度が低下し、抵抗値が小さくなる特性を有していても良い。この場合、サーミスタ30に一定の電圧を印加している場合、負荷抵抗に流れる電流値が所定値より大きくなった場合に、車両に対して盗難に係る作業が外部から行われたものと判断することで、上述した効果と同様の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係る盗難防止装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る盗難防止装置の緩衝部材の構成を示す斜視図である。
【図3】ピストンを押し下げた場合の作動油の空気室内への流入状態を示す図である。
【図4】ピストンを引き上げた場合の作動油の空気室内への流入状態を示す図である。
【図5】サーミスタの配設状態を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る演算装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る盗難防止装置の演算装置のMPUの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1 車輪
2 緩衝部材
3 電流検出回路
5 演算装置
6 車載LAN
21 カバー
22 外筒
23 内筒
24 空気室
25 作動液
26、29 オリフィス
28 ピストン
30 サーミスタ
51 MPU
52 ROM
53 RAM
54 通信インタフェース
55 内部バス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪と、車輪に加わる荷重に応じて緩衝部材の長さが変動する懸架装置とを備えた車両に対して盗難に係る作業が外部から行われたか否かを検出して盗難を防止する盗難防止装置において、
前記緩衝部材は、
作動液を充填した内筒と、該内筒との間に空気室を形成する外筒と、該内筒に対して移動可能なピストンと、該ピストンの移動により前記内筒から作動液を前記空気室へ誘導するオリフィスと、前記空気室内に配置してあるサーミスタとを有し、
前記サーミスタに係る電気量に基づいて前記緩衝部材毎の長さの変動量を検出する検出手段と、
検出した前記緩衝部材毎の長さの変動量に基づいて前記車輪毎の荷重を推算する荷重推算手段と、
推算した荷重に基づいて盗難に係る作業が外部から行なわれたか否かを判断する判断手段と、
該判断手段で盗難に係る作業が外部から行なわれたと判断した場合、その旨を外部へ出力する出力手段と
を備えることを特徴とする盗難防止装置。
【請求項2】
前記判断手段は、推算した荷重が所定値より小さいか否かを判断し、小さいと判断した場合に盗難に係る作業が外部から行なわれたと判断するようにしてあることを特徴とする請求項1記載の盗難防止装置。
【請求項3】
前記サーミスタは、作動液に浸る度合が大きくなるほど抵抗値が大きくなる特性を有することを特徴とする請求項1又は2記載の盗難防止装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の盗難防止装置を備えたことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−8340(P2007−8340A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192359(P2005−192359)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】