説明

監視レーダ装置

【課題】応答信号に対する受信感度を向上させるために、簡易な構成により、減衰特性が大きく、群遅延特性のばらつきが小さい受信フィルタ特性を実現し得る監視レーダ装置を提供する。
【解決手段】各IF信号をバンドパスフィルタ53−1〜53−3に通す前に、各IF信号をA/D変換器51−1〜51−3にてアナログ信号からデジタル信号に変換し、I/Q検波器52−1〜52−3にて複素形式のデジタル信号(I信号、Q信号)に変換してバンドパスフィルタ53−1〜53−3に通すように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば航空管制用の二次監視レーダ装置に係り、特に応答信号に対する受信感度の向上を目的とした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制用の二次監視レーダ装置は、例えば特許文献1に示されているように、質問信号(1030MHz)を航空機上のトランスポンダ(応答装置)に送信し、このトランスポンダにより解読された質問信号に対応する応答信号(1090MHz)を受信することによって航空機の識別を行なうものである。
【特許文献1】特開昭61−11683号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、二次監視レーダ装置では、トランスポンダからの微弱な応答信号をできる限り受信し、応答信号を忠実に再生することを目的として、受信フィルタの使用が求められる。この受信フィルタのフィルタ特性としては、減衰特性が大きく(減衰特性の傾斜が大きい)、群遅延特性のばらつきが小さい特性が要求されることになる。しかし、この要求を満たした受信フィルタについては、アナログ回路にて実現されており、理想の特性を得ることが難しい。
【0004】
また、上記二次監視レーダ装置では、モノパルス測角方式で使用するマルチ受信機を備える場合に、測角精度を向上させるために、各系統間(和パターン、差パターン)の振幅/位相特性を同一にする必要がある。この場合、各系統間の振幅/位相特性を測定し、この測定結果に基づいて、空中線・受信機間の各フィーダ長の調整、受信機内の減衰器による振幅レベルの調整及び位相器による位相特性の調整を人為的作業によって行なっている。このため、調整が完了するまでに多くの手間と時間がかかり、また調整精度の確保が難しく、運用における長期間の安定度の確保が難しい。
【0005】
そこで、この発明の第1の目的は、応答信号に対する受信感度を向上させるために、簡易な構成により、減衰特性が大きく、群遅延特性のばらつきが小さい受信フィルタ特性を実現し得る監視レーダ装置を提供することにある。
【0006】
また、この発明の第2の目的は、応答信号に対する受信感度を向上させるために、受信信号の振幅・位相特性の調整を人手を要することなく迅速かつ適切に行なえるようにし、これにより運用における長期間の安定度の確保が可能な監視レーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記目的を達成するために、以下のように構成される。
対象物に向けて質問信号を送出し、対象物から質問信号に対する応答信号を受信部にて受信し、周波数変換部にてIF周波数に変換し帯域フィルタに通してビデオ信号を得る監視レーダ装置において、周波数変換部の出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換手段と、このアナログ/デジタル変換手段で得られるデジタル信号を直交変換して帯域フィルタに出力する直交変換手段とを備えるようにしたものである。
【0008】
この構成によれば、IF周波数に変換された応答信号を帯域フィルタに通す前に、IF周波数帯の応答信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、このデジタル信号を直交変換して複素形式のデジタル信号(I信号、Q信号)を帯域フィルタに通すようにしている。従って、帯域フィルタをデジタルFIR(Finit Impulse Response)フィルタで作成することができ、これにより減衰特性が大きく、しかも群遅延特性のばらつきが小さい受信フィルタ特性を実現することができる。
【0009】
周波数変換部とアナログ/デジタル変換手段との間に、周波数変換部の出力信号から不要波成分を除去する除去手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、デジタル信号への変換に先立ち、IF周波数に変換された応答信号から不要波成分を除去するようにしているので、さらに良好な受信フィルタ特性を実現できる。
【0011】
対象物に向けて質問信号を送出し、対象物から質問信号に対する応答信号を受信部にて受信し、周波数変換部にてIF周波数に変換してビデオ信号を得る監視レーダ装置において、周波数変換部の出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換手段と、このアナログ/デジタル変換手段で得られるデジタル信号を直交変換する直交変換手段と、応答信号の振幅特性及び位相特性が最良となるように求められた基準振幅情報及び基準位相情報を記憶するメモリと、このメモリに記憶された基準振幅情報及び基準位相情報に従って、アナログ/デジタル手段により変換されたデジタル信号の振幅及び位相を補正する補正手段とを備えるようにしたものである。
【0012】
この構成によれば、ビデオ信号の生成処理に先立ち、IF周波数帯の応答信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、このデジタル信号を直交変換して複素形式のデジタル信号(I信号、Q信号)からビデオ信号を生成するようにし、しかもメモリに記憶された基準振幅情報及び基準位相情報を利用してデジタル信号の振幅及び位相を補正するようにしている。従って、基準振幅情報及び基準位相情報をメモリを記憶しておくだけで、受信信号の振幅・位相特性の調整を人手を要することなく迅速かつ適切に行なえるようになり、これにより運用における長期間の安定度の確保が可能となる。
【0013】
対象物に向けて質問信号を送出し、対象物から質問信号に対する応答信号を受信部にて受信し、この受信部の複数個所で得られる各受信信号の和信号を第1系統へ、各受信信号の差信号を第2系統へ分岐し、系統ごとに周波数変換部にてIF周波数に変換してビデオ信号を得る二次監視レーダ装置において、第1系統の和信号及び第2系統の差信号に対しそれぞれ既知の振幅・位相特性を有するパイロット信号を重畳するパイロット信号重畳手段と、周波数変換部の出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換手段と、このアナログ/デジタル変換手段で得られるデジタル信号を直交変換する直交変換手段と、第1及び第2系統のビデオ信号それぞれからパイロット信号を抽出し、これらパイロット信号により第1及び第2系統間の振幅・位相特性の差分を検出する検出手段と、この検出手段により得られる差分に基づいて、アナログ/デジタル変換手段により変換されたデジタル信号の振幅及び位相を補正する補正手段とを備えるようにしたものである。
【0014】
この構成によれば、既知の振幅・位相特性を有するパイロット信号を受信信号の和信号及び差信号それぞれに重畳しておくようにし、これら和信号及び差信号に重畳されているパイロット信号を利用して、各系統間の振幅・位相特性の差分を検出して系統間のデジタル信号の振幅及び位相合わせを行なうようにしている。従って、特別な測定器等を用いることなく、容易に受信信号の振幅・位相特性の調整を行なうことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上詳述したようにこの発明によれば、応答信号に対する受信感度を向上させるために、簡易な構成により、減衰特性が大きく、群遅延特性のばらつきが小さい受信フィルタ特性を実現し得る監視レーダ装置を提供することができる。
【0016】
また、受信信号の振幅・位相特性の調整を人手を要することなく迅速かつ適切に行なえるようにし、これにより運用における長期間の安定度の確保が可能な監視レーダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、この発明の第1の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
図1において、送信機1から例えば航空機(図示せず)の識別を行なうために必要な質問信号が発生される。この質問信号は、サーキュレータ2を介して空中線装置3により航空機に向けて送出される。
【0019】
そして、航空機のトランスポンダから上記質問信号に対する応答信号が空中線装置3で受信される。空中線装置3は、複数個所における各受信信号を加算して和パターンのRF(無線周波数)信号を生成し、各受信信号を減算して差パターンのRF信号を生成する。
【0020】
上記空中線装置3で得られた和パターンのRF信号はサーキュレータ2を介して受信機4に供給され、差パターンのRF信号は直接受信機4に供給される。
【0021】
一方、送信機1から発生されるオムニパターンの送信信号は、サーキュレータ6を介して空中線装置3にて航空機に向けて送出され、空中線装置3にて得られたオムニパターンのRF信号は、サーキュレータ6を介して受信機4に供給される。
【0022】
図2は、上記受信機4と信号処理部5との接続構成を示すブロック図である。
【0023】
すなわち、空中線装置3にて受信された各RF信号(和パターン、差パターン、オムニパターン)は、各系統に設けられるバンドパスフィルタ41−1〜41−3にて所望の受信周波数が選択され、高周波増幅器42−1〜42−3にて増幅され、ミキサ43−1〜43−3及び局部発振器44によりIF(中間周波数)信号に変換された後、IF段での不要な信号をバンドパスフィルタ45−1〜45−3にて除去し各IF信号(和パターン、差パターン、オムニパターン)を得る。
【0024】
得られた各IF信号(和パターン、差パターン、オムニパターン)は、信号処理装置5に入力され、A/D(アナログ/デジタル)変換器51−1〜51−3にてアナログ信号からデジタル信号に変換された後、I/Q検波器52−1〜52−3によりI/Qビデオ信号を得る。各I/Qビデオ信号(和パターン、差パターン、オムニパターン)は最小受信感度の確保および受信信号の忠実な再生を目的としたバンドパスフィルタ53−1〜53−3を通り、ビデオ作成回路54−1〜54−3により各ビデオ信号(和パターン、差パターン、オムニパターン)に生成される。
【0025】
また、I/Qビデオ信号(和)とI/Qビデオ信号(差)はモノパルスビデオ作成回路55によりビデオ信号(モノパルス)に生成される。
【0026】
次に、上記構成における動作について説明する。
以前は、二次監視レーダ装置の受信機として、図3に示すような構成が考えられていた。なお、図3において、上記図2と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0027】
バンドパスフィルタ45−1〜45−3を通過した各IF信号(和パターン、差パターン、オムニパターン)は、おのおのビデオ検波回路71−1〜71−3にてビデオ検波されビデオ信号(和パターン、差パターン、オムニパターン)として、さらにIF信号(和)とIF信号(差)はπ/2ハイブリット回路72、ビデオ検波回路73、モノパルスビデオ作成回路74によりビデオ信号(モノパルス)が作成され、信号処理装置へ出力されていた。
【0028】
この二次監視レーダ装置の受信フィルタ特性は、IF信号段におけるバンドパスフィルタ45−1〜45−3により実現されていた。しかし、これらバンドパスフィルタ45−1〜45−3に減衰特性が大きく、群遅延特性のばらつきが小さい受信フィルタ特性を持たせることは非常に困難であり、また回路構成の複雑化も招いてしまうことになる。
【0029】
そこで、本第1の実施形態では、受信フィルタ特性がRF段のバンドパスフィルタ41−1〜41−3、IF段のバンドパスフィルタ45−1〜45−3、デジタル段のバンドパスフィルタ53−1〜53−3の各減衰特性の合成で実現されることに着目し、各フィルタ41−1〜41−3,45−1〜45−3,53−1〜53−3の帯域幅について、RF段バンドパスフィルタ41−1〜41−3>IF段バンドパスフィルタ45−1〜45−3>ディジタル段バンドパスフィルタ53−1〜53−3の関係とするようにした。
【0030】
これにより、最小受信感度の確保および受信信号の忠実な再生を得るための受信フィルタ特性の実現は、デジタル段のバンドパスフィルタ53−1〜53−3の特性で決まることになる。
【0031】
そこで、デジタル段のバンドパスフィルタ53−1〜53−3をデジタルFIR(Finit Impulse Response)フィルタで作成することにより、減衰特性が大きく(減衰特性の傾きが大きい)、なおかつ群遅延特性のばらつきが小さい受信フィルタ特性を実現することができる。
【0032】
また、バンドパスフィルタ53−1〜53−3をデジタルFIRフィルタで構成することにより各系統間(和パターン、差パターン、オムニパターン)のフィルタ特性を同一にすることが可能となり、各系統間の特性のばらつきをなくすことができる。
【0033】
以上のように上記第1の実施形態では、各IF信号をバンドパスフィルタ53−1〜53−3に通す前に、各IF信号をA/D変換器51−1〜51−3にてアナログ信号からデジタル信号に変換し、I/Q検波器52−1〜52−3にて複素形式のデジタル信号(I信号、Q信号)に変換してバンドパスフィルタ53−1〜53−3に通すように構成している。
【0034】
従って、バンドパスフィルタ53−1〜53−3をデジタルFIRフィルタで作成することができ、これにより減衰特性が大きく、しかも群遅延特性のばらつきが小さい受信フィルタ特性を実現することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
図4は、この発明の第2の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図である。なお、図4において、上記図2と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0036】
この第2の実施形態では、上記バンドパスフィルタ45−1〜45−3を削除するようにしている。従って、このような第2の実施形態であれば、バンドパスフィルタ53−1〜53−3のみで受信フィルタ特性を実現しているので、精度面では上記第1の実施形態より劣るが、回路構成を簡単化できる。
【0037】
(第3の実施形態)
図5は、この発明の第3の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図である。なお、図5において、上記図2と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
この第3の実施形態では、差パターンの系統のI/Q検波器52−2とバンドパスフィルタ53−2との間に振幅/位相補正回路81を介挿接続している。この振幅/位相補正回路81には、メモリ82が接続されている。
【0039】
メモリ82には、各系統間(和パターン、差パターン)の振幅/位相特性を同一にするべく、和パターンを基準とした基準振幅データ及び基準位相データが記憶されている。
【0040】
振幅/位相補正回路81は、I/Q検波器52−2から出力されるI/Qビデオ信号を入力し、メモリ82に記憶されている基準振幅データ及び基準位相データに基づいてI/Q信号の振幅及び位相を補正する。
【0041】
以上のように上記第3の実施形態では、ビデオ作成回路54−1によるビデオ信号の生成処理に先立ち、メモリ81に記憶された基準振幅データ及び基準位相データを利用してI/Q検波器52−2から出力されるI/Q信号の振幅及び位相を補正するようにしている。
【0042】
従って、和パターンの基準振幅データ及び基準位相データをメモリ82に記憶しておくだけで、系統間の振幅・位相特性の調整を人手を要することなく迅速かつ適切に行なえるようになり、これにより運用における長期間の安定度の確保が可能となる。
【0043】
なお、この第3の実施形態では、メモリ82に和パターンの基準振幅データ及び基準位相データを記憶しておく例について説明したが、差パターンの信号の振幅・位相特性が最良となる基準振幅データ及び基準位相データを記憶しておくようにしてもよい。
【0044】
(第4の実施形態)
図6は、この発明の第4の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図である。なお、図6において、上記図5と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
この第4の実施形態では、A/D変換器51−2とI/Q検波器52−2との間に振幅補正回路83を介挿接続し、I/Q検波器52−2とバンドパスフィルタ53−2との間に位相補正回路84を介挿接続するようにしている。このとき、振幅補正回路83及び位相補正回路84にメモリ82を接続し、このメモリ82に和パターンの基準振幅データ及び基準位相データを記憶しておくようにしている。
【0046】
振幅補正回路83は、A/D変換器51−2から出力されるデジタル信号を入力し、メモリ82に記憶されている基準振幅データに基づいてデジタル信号の振幅を補正する。また、位相補正回路84は、I/Q検波器52−2から出力されるI/Qビデオ信号を入力し、メモリ82に記憶されている基準位相データに基づいてI/Q信号の位相を補正する。
【0047】
このように第4の実施形態であれば、上記第3の実施形態と同様な作用効果が得られるとともに、振幅補正回路83と位相補正回路84とを別々に分けているので、1回路当たりの処理負担は上記第3の実施形態に比して軽減される。
【0048】
(第5の実施形態)
図7は、この発明の第5の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図である。なお、図7において、上記図5と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
この第5の実施形態では、和パターンの系統のI/Q検波器52−1とバンドパスフィルタ53−1との間に振幅/位相補正回路81を介挿接続している。この振幅/位相補正回路81には、メモリ82が接続されている。
【0050】
メモリ82には、各系統間(和パターン、差パターン)の振幅/位相特性を同一にするべく、差パターンを基準とした基準振幅データ及び基準位相データが記憶されている。
【0051】
振幅/位相補正回路81は、I/Q検波器52−1から出力されるI/Qビデオ信号を入力し、メモリ82に記憶されている基準振幅データ及び基準位相データに基づいてI/Q信号の振幅及び位相を補正する。
【0052】
このように第5の実施形態であっても、上記第3の実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0053】
(第6の実施形態)
図8は、この発明の第6の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図である。なお、図8において、上記図6と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
この第6の実施形態では、A/D変換器51−1とI/Q検波器52−1との間に振幅補正回路83を介挿接続し、I/Q検波器52−1とバンドパスフィルタ53−1との間に位相補正回路84を介挿接続するようにしている。このとき、振幅補正回路83及び位相補正回路84にメモリ82を接続し、このメモリ82に差パターンの基準振幅データ及び基準位相データを記憶しておくようにしている。
【0055】
振幅補正回路83は、A/D変換器51−1から出力されるデジタル信号を入力し、メモリ82に記憶されている基準振幅データに基づいてデジタル信号の振幅を補正する。また、位相補正回路84は、I/Q検波器52−1から出力されるI/Qビデオ信号を入力し、メモリ82に記憶されている基準位相データに基づいてI/Q信号の位相を補正する。
【0056】
このように第6の実施形態であっても、上記第4の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0057】
(第7の実施形態)
図9は、この発明の第7の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図である。なお、図9において、上記図5と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0058】
この第7の実施形態では、和パターン及び差パターンの系統のI/Q検波器52−1,52−2とバンドパスフィルタ53−1,53−2との間に振幅/位相補正回路85を介挿接続している。この振幅/位相補正回路85には、メモリ82が接続されている。
【0059】
メモリ82には、各系統間(和パターン、差パターン)の振幅/位相特性を同一にするべく、和パターン及び差パターンを基準とした基準振幅データ及び基準位相データが記憶されている。
【0060】
振幅/位相補正回路85は、I/Q検波器52−1,52−2から出力されるI/Qビデオ信号を入力し、メモリ82に記憶されている基準振幅データ及び基準位相データに基づいてI/Q信号の振幅及び位相を補正する。
【0061】
このように第7の実施形態であっても、上記第3の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0062】
(第8の実施形態)
図10は、この発明の第8の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図である。なお、図10において、上記図5と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
この第8の実施形態では、和パターン及び差パターンの系統のA/D変換器51−1,51−2とI/Q検波器52−1,52−2との間に振幅補正回路86を介挿接続し、I/Q検波器52−1,52−2とバンドパスフィルタ53−1,53−2との間に位相補正回路87を介挿接続している。この振幅補正回路86及び位相補正回路87には、メモリ82が接続されている。
【0064】
メモリ82には、各系統間(和パターン、差パターン)の振幅/位相特性を同一にするべく、和パターン及び差パターンを基準とした基準振幅データ及び基準位相データが記憶されている。
【0065】
振幅補正回路86は、A/D変換器51−1,51−2から出力されるデジタル信号を入力し、メモリ82に記憶されている基準振幅データに基づいてデジタル信号の振幅を補正する。また、位相補正回路87は、I/Q検波器52−1,52−2から出力されるI/Qビデオ信号を入力し、メモリ82に記憶されている基準位相データに基づいてI/Q信号の位相を補正する。
【0066】
このように第8の実施形態であっても、上記第3の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0067】
(第9の実施形態)
図11は、この発明の第9の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の構成を示すブロック図である。図11において、上記図1と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0068】
この第9の実施形態では、空中線装置3にパイロット信号発生器100を接続している。パイロット信号発生器100は、既知の振幅・位相特性を有するパイロット信号を発生する。このパイロット信号は、空中線装置3により和パターン及び差パターンのRF信号に重畳される。
【0069】
図12は、上記受信機4と信号処理部5との接続構成を示すブロック図である。図12において、上記図2と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0070】
この第9の実施形態では、差パターンの系統におけるI/Q検波器52−2とバンドパスフィルタ53−2との間に振幅/位相補正回路91を介挿接続している。この振幅/位相補正回路91は、パイロット信号検出回路92により制御されるものである。
【0071】
パイロット信号検出回路92は、ビデオ作成回路54−1,54−2から出力される各ビデオ信号に重畳されるパイロット信号を抽出し、これらパイロット信号により和パターン及び差パターンの系統間の振幅・位相特性の差分を検出し、この検出結果を振幅/位相補正情報として振幅/位相補正回路91に出力する。
【0072】
そして、振幅/位相補正回路91は、上記振幅/位相補正情報に基づいてI/Q検波器52−2から出力されるI/Qビデオ信号の振幅及び位相を補正する。
【0073】
以上のように第9の実施形態では、既知の振幅・位相特性を有するパイロット信号を和パターン及び差パターンのRF信号にそれぞれに重畳しておくようにし、これら和パターン及び差パターンのビデオ信号に重畳されているパイロット信号を利用して、パイロット信号検出回路92にて各系統間の振幅/位相特性の差分を検出し、振幅/位相補正回路91にてI/Q検波器52−2から出力されるI/Qビデオ信号の振幅及び位相を補正して系統間のビデオ信号の振幅及び位相合わせを行なうようにしている。
【0074】
従って、特別な測定器等を用いることなく、容易に和パターン及び差パターンの系統間の振幅・位相特性の調整を行なうことができる。
【0075】
(その他の実施形態)
なお、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0076】
また、本発明は一般的な監視レーダでも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明の第1の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の構成を示すブロック図。
【図2】同第1の実施形態における受信機と信号処理部との接続構成を示すブロック図。
【図3】以前に考えられていた二次監視レーダ装置の受信機を示すブロック図。
【図4】この発明の第2の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図。
【図5】この発明の第3の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図。
【図6】この発明の第4の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図。
【図7】この発明の第5の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図。
【図8】この発明の第6の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図。
【図9】この発明の第7の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図。
【図10】この発明の第8の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の受信機と信号処理装置との接続構成を示すブロック図。
【図11】この発明の第9の実施形態に係わる二次監視レーダ装置の構成を示すブロック図。
【図12】同第9の実施形態における受信機と信号処理部との接続構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0078】
1…送信機、2…サーキュレータ、3…空中線装置、4…受信機、5…信号処理装置、41−1〜41−3,45−1〜45−3,53−1〜53−3…バンドパスフィルタ、42−1〜42−3…高周波増幅器、43−1〜43−3…ミキサ、44…局部発振器、51−1〜51−3…A/D(アナログ/デジタル)変換器、52−1〜52−3…I/Q検波器、54−1〜54−3…ビデオ作成回路、55…モノパルスビデオ作成回路、81,85,91…振幅/位相補正回路、82…メモリ、83,86…振幅補正回路、84,87…位相補正回路、92…パイロット信号検出回路、100…パイロット信号発生器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向けて質問信号を送出し、前記対象物から前記質問信号に対する応答信号を受信部にて受信し、周波数変換部にてIF周波数に変換し帯域フィルタに通してビデオ信号を得る監視レーダ装置において、
前記周波数変換部の出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換手段と、
このアナログ/デジタル変換手段で得られるデジタル信号を直交変換して前記帯域フィルタに出力する直交変換手段とを具備したことを特徴とする監視レーダ装置。
【請求項2】
前記周波数変換部と前記アナログ/デジタル変換手段との間に、前記周波数変換部の出力信号から不要波成分を除去する除去手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の監視レーダ装置。
【請求項3】
対象物に向けて質問信号を送出し、前記対象物から前記質問信号に対する応答信号を受信部にて受信し、周波数変換部にてIF周波数に変換してビデオ信号を得る監視レーダ装置において、
前記周波数変換部の出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換手段と、
このアナログ/デジタル変換手段で得られるデジタル信号を直交変換する直交変換手段と、
前記応答信号の振幅特性及び位相特性が最良となるように求められた基準振幅情報及び基準位相情報を記憶するメモリと、
このメモリに記憶された基準振幅情報及び基準位相情報に従って、前記アナログ/デジタル手段により変換されたデジタル信号の振幅及び位相を補正する補正手段とを具備したことを特徴とする監視レーダ装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記メモリに記憶された基準振幅情報に従って、前記アナログ/デジタル手段の出力信号の振幅を補正し、前記メモリに記憶された基準位相情報に従って、前記直交変換手段の出力信号の位相を補正することを特徴とする請求項3記載の監視レーダ装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記メモリに記憶された基準振幅情報及び基準位相情報に従って、前記直交変換手段の出力信号の振幅及び位相を補正することを特徴とする請求項3記載の監視レーダ装置。
【請求項6】
受信系統を複数備え、これら複数の受信系統のうちの第1の受信系統にて前記受信部の複数個所で得られる各受信信号の和信号を処理し、前記第1の受信系統とは異なる第2の受信系統にて前記受信部の高低、方位それぞれの差信号を処理するとき、
前記補正手段は、前記第1及び第2の受信系統のいずれか一方に設けられることを特徴とする請求項3記載の監視レーダ装置。
【請求項7】
受信系統を複数備え、これら複数の受信系統のうちの第1の受信系統にて前記受信部の複数個所で得られる各受信信号の和信号を処理し、前記第1の受信系統とは異なる第2の受信系統にて前記複数の受信信号の差信号を処理するとき、
前記補正手段は、前記第1及び第2の受信系統にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項3記載の監視レーダ装置。
【請求項8】
対象物に向けて質問信号を送出し、前記対象物から前記質問信号に対する応答信号を受信部にて受信し、この受信部の複数個所で得られる各受信信号の和信号を第1系統へ、各受信信号の差信号を第2系統へ分岐し、系統ごとに周波数変換部にてIF周波数に変換してビデオ信号を得る監視レーダ装置において、
前記第1系統の和信号及び第2系統の差信号に対しそれぞれ既知の振幅・位相特性を有するパイロット信号を重畳するパイロット信号重畳手段と、
前記周波数変換部の出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換手段と、
このアナログ/デジタル変換手段で得られるデジタル信号を直交変換する直交変換手段と、
前記第1及び第2系統のビデオ信号それぞれからパイロット信号を抽出し、これらパイロット信号により第1及び第2系統間の振幅・位相特性の差分を検出する検出手段と、
この検出手段により得られる差分に基づいて、前記アナログ/デジタル変換手段により変換されたデジタル信号の振幅及び位相を補正する補正手段とを具備したことを特徴とする監視レーダ装置。
【請求項9】
前記補正手段は、前記第1及び第2系統のいずれか一方に設けられる前記アナログ/デジタル手段の出力信号の振幅を補正し、前記直交変換手段の出力信号の位相を補正することを特徴とする請求項8記載の監視レーダ装置。
【請求項10】
前記補正手段は、前記第1及び第2系統のいずれか一方に設けられる前記直交変換手段の出力信号の振幅及び位相を補正することを特徴とする請求項8記載の監視レーダ装置。
【請求項11】
前記補正手段は、前記第1及び第2の受信系統にそれぞれ設けられる前記アナログ/デジタル手段の出力信号の振幅を補正し、前記直交変換手段の出力信号の位相を補正することを特徴とする請求項8記載の監視レーダ装置。
【請求項12】
前記補正手段は、前記第1及び第2の受信系統にそれぞれ設けられる前記直交変換手段の出力信号の振幅及び位相を補正することを特徴とする請求項8記載の監視レーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−78463(P2007−78463A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265383(P2005−265383)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000221155)東芝電波プロダクツ株式会社 (62)
【Fターム(参考)】