説明

監視制御用表示器

【課題】現場に設置されてデバイスを監視したり操作したりする際に極めて有用なプログラマブル表示器を提供すること。
【解決手段】PLC3により制御されるデバイスを図形要素で状況表示したりユーザ操作したりするための操作画面を画面表示する表示器2であって、上記画面中にハードウエアキーボード26と同じキー配列の仮想キーボード27を表示可能とし、仮想キーボード27の個々のキーボタンオブジェクトとハードウエアキーボード26の個々のキーボタンと同じ操作イベントを発生させるよう定義付けをし、仮想キーボード27の操作時に、それに対応するハードウエアキーボード26と同じ操作イベントを発行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視制御用表示器に関するものである。本発明は、特に、当該表示器から分離されたハードウエアキーボードとは別にグラフィカルユーザインタフェースを利用して表示画面上に仮想キーボードを表示することができる監視制御用表示器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
制御システムのHMIとして、監視制御用表示器として用いることができるプログラマブル表示器が広く使用されている。当該プログラマブル表示器は、デバイスを制御するプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)と通信して、デバイスの状態を表示/制御しており、デバイスの状態を画面表示する際の動作や、操作に応じてデバイスの状態を制御する際の動作は、制御用ホストコンピュータで作成された後でプログラマブル表示器にインストールされる画面データに基づいて特定される。
【0003】
プログラマブル表示器は、入力装置として、タッチパネルが使用されており、オペレータは、プログラマブル表示器の表示に基づいて、制御対象のデバイスの状態などを把握すると共に、タッチパネルを操作して、プログラマブル表示器へデバイスへの制御指示などを入力している。
【0004】
上記タッチパネルは、ポインティングデバイスであり、文字や数字を直接入力することができない。したがって、例えば、パラメータを入力する場合など、数字や文字を入力する必要がある場合には、プログラマブル表示器は、キーボード(仮想キーボード)を画面に表示すると共に、入力位置が仮想キーボードのどのキーを指しているかに応じて、ユーザが入力を指示した文字や数字を識別している(特許文献1参照)。
【0005】
このような制御システムにおいて、プログラマブル表示器は、工場設備内の操作盤、スイッチ、表示灯等のデバイスの表示機能を備えることができる他、デバイスの稼働状況や作業指示のような管理のための各種のモニタ、デバイスに対する設定値を入力する端末としての機能を備えている。
【0006】
このようなプログラマブル表示器においては、その多機能化に伴い、表示器画面の作成を容易にするため、作画ソフトウェアがMS−DOS版から、Windows(登録商標)版に変わり、画面作成機能そのものも進化し、キーボードもあらかじめ用意されている標準部品をドラッグアンドドロップするだけで、簡単にキーボードを作成することができ、ユーザの操作性は大きく向上している。
【0007】
しかしながら、従来、表示画面中に仮想キーボードを表示するプログラマブル表示器の場合は、ハードウエアキーボードが不要であるので、プログラマブル表示器にハードウエアキーボードが接続されることを予定されておらず、そのため仮想キーボードの操作イベントとハードウエアキーボードの操作イベントとが対応付けされていないため、使いづらく、また、ハードウエアキーボードを接続することが予定されている場合では、仮想キーボードが不要なため、この場合も、標準部品からドラッグアンドドロップしただけでは操作イベントの対応が無く使いづらかった。
【0008】
特に、プログラマブル表示器においてPLCと組み合わせされて現場の制御盤に組み込まれる場合、現場で作業するユーザは、その設置環境によっては仮想キーボードをハードウエアキーボードとして表示したり、ハードウエアキーボードを接続したりすることができれば便利であることに加えて、この場合、例えば同一の文字キーや数値キーを操作したとき操作イベントが対応していれば便利であり、使いやすい。
【特許文献1】特開2002−244798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明により解決すべき課題は、プログラマブル表示器にハードウエアキーボードと仮想キーボードの双方を選択的に使用可能となし、かつ、その操作イベントを対応付けしたことにより、使い易くし、現場に設置されてデバイスを監視したり操作したりする際に極めて有用なプログラマブル表示器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による監視制御用表示器は、監視制御対象の状況表示やユーザ操作に用いる監視制御用表示器において、当該表示器の画面中にキーボタンオブジェクトをハードウエアキーボードと同じキー配列で配列してなる仮想キーボードを選択表示可能とし、この仮想キーボード内の各キーボタンオブジェクトにハードウエアキーボード内の各キーボタンと同じ操作イベント生成定義を付け、仮想キーボード操作時に、それに対応するハードウエアキーボードと同じ操作イベントを発行することを特徴とするものである。
【0011】
本発明によると、表示画面中に仮想キーボードの任意のキーボタンオブジェクトをタッチ操作した場合と、ハードウエアキーボードの上記任意のキーボタンオブジェクトに対応するキーボタンを操作した場合とで、同じ操作イベントを発行することができるので、監視制御用表示器が使い易くなる。すなわち、監視制御用表示器をPLC等の制御装置と組み合わせされて現場の制御盤に組み込んだ場合、現場で作業するユーザは、その設置環境によっては仮想キーボードを操作したり、ハードウエアキーボードを操作する場合に、例えば同じ配列位置にあるキーボタンを操作して同一の操作イベントを発生させて必要な作業を行うことができることになり、プログラマブル表示器等の監視制御用表示器のユーザー操作が行いやすくなり極めて便利である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、現場に設置されてデバイスを監視したり操作したりする際に極めて有用な監視制御用表示器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る監視制御用表示器を説明する。図1を参照して、1は制御用ホストコンピュータ(外部PC)、2は監視制御用表示器としてのプログラマブル表示器、3はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)、4はターゲットシステム(複数のデバイス)である。外部PC1と、プログラマブル表示器2と、PLC3とにより工場に設備されたターゲットシステム4を制御する制御システムが構築される。
【0014】
外部PC1は、一般の汎用パーソナルコンピュータと同様に、CPU、メモリ、外部記憶装置、表示装置、入力装置、通信制御部、等を有している。外部PC1は、プログラマブル表示器2との間の通信を行うためにネットワーク5を介してプログラマブル表示器2との間のデータ通信処理を行うとともに、ユーザ画面をプログラマブル表示器2に転送したり、プログラマブル表示器2から配信されたPLC3の入力データや出力データを収集して必要な処理を行うことができる。
【0015】
プログラマブル表示器2は、外部PC1やPLC3との通信制御部21a,21b、メモリ22や、タッチパネル装置23、表示装置24、等を備えるとともに、プログラマブル表示器2の各部の動作を制御するCPU25を有してしている。プログラマブル表示器2は、外部PC1で作成されたユーザ画面に基づいてメモリ22を用いて表示装置24にユーザ画面を描画させることができる。ユーザ画面には、HMI部品が外部入出力デバイスの動作に応じて動くようになっており、ターゲットシステム4の動作状況が視覚化されている。26は機械式のキーボード(ハードウエアキーボード)である。
【0016】
図2を参照してタッチパネル装置23は、タッチパネル23aとタッチパネルコントローラ23bとを備える。タッチパネル23aは透明な積層パネルの間に多数の電極配線を交差状に配列したものであり、積層パネルの上からペン先や指先で圧力を加える(タッチする)ことにより、その押圧点直下の縦電極配線と横電極配線とが接触するものである。タッチパネルコントローラ23bは、タッチパネル23aの接触配線の番号の組み合わせからタッチ位置の座標値を特定し、その座標値をCPU25に伝送するようになっている。
【0017】
表示装置24は、液晶表示パネル24aと、表示パネルコントローラ24bとを備える。液晶表示パネル24aは、タッチパネルの有効タッチ面積と同程度かもしくはそれより若干小さい面積を有し多数の液晶画素を縦横マトリクスに配列した画素構成になっている。表示パネルコントローラ24bは、液晶表示パネル24aに対する画面データの表示を制御する。
【0018】
メモリ22は、プログラマブル表示器としての必要なプログラムや画面データを格納したり、書き込んだり、読み出したりすることができるとともに、液晶表示画面24aに仮想キーボードの表示、操作に関するデータやプログラムが格納されている。
【0019】
CPU25は、これらタッチパネルコントローラ23b、表示コントローラ24b、ハードウエアキーボード26、メモリ22を用いて仮想キーボード27の表示、仮想キーボードの操作に基づく操作イベントの発生、ハードウエアキーボード26と仮想キーボード27との対応する操作イベントの発生を制御している。
【0020】
メモリ22には仮想キーボード27の画面データが格納されている。
【0021】
仮想キーボード27は、英数字、英記号、平仮名キー、カタカナキー等の文字を入力するためのキーボタン、「ENTER」キーボタン、等のハードウエアキーボード26と同じキー配列になっている。
【0022】
仮想キーボード27はキーボタンオブジェクト(仮想キーボタン)を複数組み合わせて構成されている。仮想キーボタンとハードウエアキーボタンはそれぞれ図3で示すようにイベント生成定義テーブル28で定義付けられている。
【0023】
タッチ座標の欄(x1,y1),(x2,y2),…(xm,xn)はタッチパネル23aにタッチ操作した位置での座標値であり、仮想キーボード27の欄の「k1」「k2」…「km」はその座標値に位置する仮想キーボタンに対応し、ハードウエアキーボード26の欄の「J1」「J2」…「Jm」は仮想キーボタン「K1」「K2」…「Km」に対応するハードウエアキーボード26のハードウエアキーボタンに対応し、これらは同じ操作イベント「IV1」,「IV2」…「IVm」を発行する。ここで、「k1」と「J1」、「k2」と「J2」、…「km」と「Jm」は、同じキー配列位置に存在し同じ文字で表現されるキーボタンオブジェクトとキーボタンである。
【0024】
CPU25は、操作イベント発行手段として、仮想キーボードの例えば仮想キーボタン「km」がタッチ操作されると、そのタッチ操作位置の座標値をタッチパネルコントローラ23bから入手し、操作イベント生成定義テーブル28を参照して操作イベント「IVm」を発行する。一方、CPU25は、ハードウエアキーボード26のハードウエアキーボタン「Jm」がタッチ操作されると、イベント生成定義テーブルを参照して操作イベント「IVm」をアプリケーションソフト29に発行する。アプリケーションソフト29はこの操作イベントを受信し、その受信した操作イベントに対応する処理を行い表示画面24a上に画面表示を行う。
【0025】
上記においてCPU25はタッチパネル23aにタッチ操作した位置のタッチ座標を検査して、その検査した座標値の位置にキーボタンオブジェクトが存在しているか否かを判定し、キーボタンオブジェクトが存在している場合、そのキーボタンオブジェクトのテキストプロパティに設定されている数字、文字、記号を取得し、必要なイベント発行処理を行う。
【0026】
以上から実施の形態では仮想キーボード27もハードウエアキーボード26も対応する位置のキー操作において同一のイベントをアプリケーションソフト29に発行することができる。
【0027】
実施の形態では、表示パネル24aに表示している仮想キーボード27でもハードウエアキーボード26でも同一の対応するキーボタンを操作すると同じイベントを発行することができるので、プログラマブル表示器2が使い易くなる。すなわち、プログラマブル表示器2をPLC3と組み合わせされて現場の制御盤に組み込んだ場合、現場で作業するユーザは、その設置環境によっては仮想キーボード27を操作したり、ハードウエアキーボード26を操作する場合に、例えば同一の文字キーや数値キーを操作して必要な作業を行うことができることになり、極めて便利である。
【0028】
図4(a)に仮想キーボード27、図4(b)にハードウエアキーボード26の部分平面図を示す。図4(a)で示す仮想キーボード27のキーボタン配列データは、図中ハッチングで示すキーボタン配列の背景オブジェクト、各キーボタンオブジェクトのスケルトンのデータを含む。スケルトンとは、オブジェクト指向プログラミングにおけるイベント、プロパティ、メソッドという骨格である。また、キーボタンオブジェクトに記載されている数字、文字、記号はキーボタンオブジェクトのテキストプロパティの内容である。また、タッチパネルを介してキーボタンオブジェクトをタッチ操作すると、キーボタンオブジェクトに記載されている数字、文字、記号が反転表示される。図4(a)の仮想キーボード27と図4(b)のハードウエアキーボード26とは同じキー配列を有する。このキー配列には特に限定しないが、例えば、QWERTY配列、AZERTY配列、QWERTZ配列等がある。プログラマブル表示器2に接続されるハードウエアキーボード26のキー配列の種類に応じて仮想キーボード27も同様のキー配列とするために、キー配列データおよびキー配列プログラムをメモリ22に格納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明の実施形態に係るプログラマブル表示器を組み込んだ制御システムの構成を示す図である。
【図2】図2はプログラマブル表示器の要部のブロック図である。
【図3】図3はイベント生成定義テーブルを示す図である。
【図4】図4(a)は仮想キーボード、図4(b)はハードウエアキーボードの部分平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 制御用ホストコンピュータ
2 プログラマブル表示器
3 PLC
23 タッチパネル装置
23a タッチパネル
23b タッチパネルコントローラ
24 表示装置
23a 表示パネル
23b 表示コントローラ
25 CPU
26 ハードウエアキーボード
27 仮想キーボード
28 操作イベント生成定義テーブル
29 アプリケーションソフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視制御対象の状況表示やユーザ操作に用いる監視制御用表示器において、当該表示器の画面中にキーボタンオブジェクトをハードウエアキーボードと同じキー配列で配列してなる仮想キーボードを選択表示可能とし、この仮想キーボード内の各キーボタンオブジェクトにハードウエアキーボード内の各キーボタンと同じ操作イベントを生成する定義付けをし、仮想キーボード操作時に、それに対応するハードウエアキーボードと同じ操作イベントを発行する、ことを特徴とする監視制御用表示器。
【請求項2】
監視制御対象の状況表示やユーザ操作に用いる監視制御用表示器において、仮想キーボードを表示する表示パネルと、上記表示パネルに装着され、仮想キーボードの操作位置で指示された座標値を検出するタッチパネルと、上記座標値と、仮想キーボードの仮想キーボタンと、ハードウエアキーボードのハードウエアキーボタンと、操作イベントとを対応付けた操作イベント生成定義テーブルと、上記各キーボードの操作時に上記操作イベント生成定義テーブルを参照して操作イベントを発行するイベント発行手段と、を備えたことを特徴とする監視制御用表示器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−77147(P2008−77147A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252311(P2006−252311)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(501088257)株式会社ウィン・システム (37)
【出願人】(000167288)光洋電子工業株式会社 (354)
【Fターム(参考)】