監視装置
【課題】安全管理・セキュリティ面から特に重要な滞留人数を特定して効果的に監視する。
【解決手段】監視エリア付近の画像取得手段1と、前記画像取得手段1からの入力画像を処理して、監視エリア内の検知対象の人数を0人、1人、2人以上の区分のうち1人か1人以外かを推定する人数推定部7と、前記監視エリア内の推定人数が1人のときの滞留を特定して発報する滞留発報部8を備えることで、一人の滞留を効果的に監視する。
【解決手段】監視エリア付近の画像取得手段1と、前記画像取得手段1からの入力画像を処理して、監視エリア内の検知対象の人数を0人、1人、2人以上の区分のうち1人か1人以外かを推定する人数推定部7と、前記監視エリア内の推定人数が1人のときの滞留を特定して発報する滞留発報部8を備えることで、一人の滞留を効果的に監視する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラ等を用いて監視エリア内の画像を取得し、この取得画像を処理して監視員等に通報する監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラを目視により安全確認する監視員の負荷の軽減のために、撮影画像から画像認識によって事故の発生時の人物の挙動や、事故につながる危険行為といった異常挙動を検知し、監視員に発報する監視システムが普及しつつある。
【0003】
前記の異常挙動のうち人物が特定の場所に居続ける滞留は、たとえば安全管理を目的とした監視システムでは人物が事故や負傷により動けない状況や、またセキュリティを目的とした監視システムでは家屋への進入の準備をしているなどの状況に結びつくために重要度が高い異常挙動である。
【0004】
監視エリア内の滞留を検出する技術として、特許文献1ではエスカレータのデッキ付近を監視エリアとして、2時刻の撮影画像のフレーム間の差分の量が多いほど、また監視エリアの背景差分(監視エリアからの入力画像と背景画像との間の差分)の面積が広いほど、デッキ上にたくさんの乗客がいて混雑度が高いと推測する技術が開示されている。この特許文献1では、前記の方法により計算した混雑度を閑散時と混雑時の2レベルに区分し、閑散時にはデッキ上での座り込みやハンドレールへのいたずらといった乗客の異常挙動を検出し、混雑時には乗客の通行を妨げるような異常挙動は発生している可能性が低いとみなして異常挙動の検知は行わず、代わりに乗客の通行量を計測するように画像認識の内容を切り替えている。
【0005】
また、一般に、取得した画像の時間的変化を分析することで人物の挙動及び移動等を検知する技術としては非特許文献1等が知られており、エスカレータの分野においても、取得した画像の時空間的特徴を抽出し、エスカレータの動きと人物の動きとを区別して認識することで、人物の異常行動を検知する技術が非特許文献2で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−7264号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G. Bradski and J. Davis.著、「Real-time recognition of activity using temporal templates」、Third IEEE Workshop on Applications of Computer Vision(1996年12月)
【非特許文献2】村井泰裕, 藤吉弘亘, 数井誠人著、「時空間特徴に基づくエスカレータシーンにおける人の異常行動検知」、社団法人 情報処理学会 研究報告、CVIM、第164回、 pp. 251−258(2008年9月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
滞留の中でも特に滞留の当事者以外に周囲に人がいない状況は、たとえば安全管理を目的とした監視システムでは、事故発生時において周囲の人により事故の当事者が救助されることを期待できないので危険度が高く、またセキュリティを目的とした監視システムでは、他の人物からの人目によって犯罪が抑止されることが期待できないので危険度が高く、監視員は重点的に監視する必要がある。
【0009】
また、非特許文献1又は2の様な画像処理によって人物の移動及び挙動を検知する監視システムにおいて、異常な挙動と類似した画像上の変化があっても、実際には監視エリア内に人物がいないシーンにおいては、監視システムから発報する必要はない。不要な発報は監視員に煩わしさを感じさせてしまうからである。
【0010】
以上のことから、画像認識により滞留を検知する監視システムでは、滞留を検知するとともに、滞留時に監視エリア内にいるのが0人、1人、2人以上の区分で人数を推定することが望ましいことが判った。
【0011】
そこで、特許文献1の技術を0人、1人、2人以上という人数推定に適用しようとすると、特許文献1に開示されている背景差分の面積が広いほど混雑度が高いという基準では、夕陽のように低い角度で照明光が差し込んで影が伸びる状況においては、影の部分で発生した面積が影響して誤判定してしまうという問題がある。たとえば人物がエスカレータのデッキ上に1人の場合に人物から長い影が伸びる状況では、影のために背景差分の面積が広くなってしまい、実際には乗客1人で閑散なのに混雑と判定してしまう可能性がある。また、ハンドレールなどの構造物の影が伸びる状況では、デッキ上に乗客が1人もいないにもかかわらず、ハンドレールなどの構造物の影によって背景差分の面積が広くなり、実際には乗客がひとりもいなく閑散なのに混雑と判定してしまう可能性がある。よって、特許文献1で開示されている技術では、監視エリア内の人数が0人の場合と1人あるいは2人以上の場合とを正確に判別できない。
また、特許文献1で開示されているもう1つの基準であるフレーム間の差分の面積が広いほど混雑度が高いという基準では、たとえば1人の乗客が転倒後に起き上がろうとしてもがいている状況では、乗客の動きによってフレーム間の差分の面積が広くなり、実際には乗客が1人しかおらず閑散なのに混雑していると誤判定してしまう可能性がある。また反対に、極度に混雑して多数の乗客が身動きできない状況では、乗客の動きが小さいためにフレーム間の差分の面積が狭くなり、実際にはたくさんの人物で混雑しているのに、閑散であると誤判定してしまう可能性がある。よって、特許文献1で開示されている技術を人数推定に適用しても、乗客が少数いる場合と多数いる場合とを区別できないので、監視エリア内の人数が0人あるいは1人の状況と2人以上の状況を正確に推定できない。
【0012】
以上のことから、特許文献1の技術では、監視エリア内の人数が0人であるのか、1人であるのか、2人以上であるのかを正確に判別することは困難である。
【0013】
一方、前記非特許文献1及び2は、人物の移動、エスカレータの動きと区別した人物の認識技術等で優れているが、監視エリア内にいる人物を0人、1人、2人以上の区分で人数を推定する思想は無く、監視エリア内の人数に着目することで、人物がいないシーンでの発報を軽減すること等については配慮されていない。
【0014】
本発明は、このような従来の監視技術に鑑みて成されたもので、その主な目的とするところは、安全管理及びセキュリティの面から特に重要な人数である1人のみの状況を特定できるように人数を推定することで、監視エリア内を効果的に監視することのできる監視装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、前記人数が1人であることを精度よく推定するとともに、検知対象の人数を0人、1人、2人以上に区分して推定するに好適な装置等を提供することにあるが、それらの目的については以下述べる実施の態様で詳述する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記主な目的を達成するため、本発明の特徴とするところは、監視エリア付近の入力画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段からの入力画像を処理して、監視エリア内の検知対象の人数を0人、1人、2人以上の区分のうち1人か1人以外かを推定する人数推定手段と、前記監視エリア内の推定人数が1人のときの滞留を特定して外部に発報する滞留発報手段とを備えることである。これにより、監視エリア内の人数が0人又は2以上の場合と区別し、1人であることを特定して知らせることができるので、1人の滞留という特に重要な場面を特定して監視員等の注意を促すようにできる。
【0017】
ここで、前記「監視エリア内の推定人数が1人のときの滞留を特定して外部に発報する」とは、滞留人数が1人のときを0人又は2以上の場合と区別して発報することであって、人数が1人以外の場合には発報しないようにしてもよいし、人数が1人以外の場合にも発報するが、信号の内容又は長さ等を変えたり、特定の信号を付加することで、0人又は2人以上の場合と1人の場合とを区別することも含む概念である。
【0018】
本発明の他の特徴は、前記検知対象の人数が1人であることを精度よく推定するための構成、更には、検知対象の人数を0人、1人、2人以上に区分して推定するに好適な構成及びその応用例等の構成であるが、それらの特徴については以下述べる実施の態様で詳述する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、監視エリア内の人数が1人であることを特定して注意を促すことができるので、安全管理及びセキュリティの面からも監視エリア内を効果的に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例に係る監視装置の機能ブロック図。
【図2】本発明の一実施例をエスカレータに適用した場合の機器構成図。
【図3】本発明の一実施例に係る長期変化抽出部を説明する図。
【図4】本発明の一実施例に係る短期変化抽出部を説明する図。
【図5】本発明の一実施例に係る人数推定手段の処理フローを説明する図。
【図6】本発明の一実施例に係る人数推定手段の時間関係を補足する図。
【図7】本発明の一実施例に係る人物の移動軌跡の抽出手法を説明する図。
【図8】本発明の一実施例に係る影部分の移動軌跡の抽出手法を説明する図。
【図9】本発明の一実施例に係る人物の移動軌跡の抽出手法を説明する図。
【図10】本発明の一実施例に係る密集した人物の移動軌跡の抽出手法を説明する図。
【図11】本発明の一実施例に係る警報手段の画面表示例を説明する図。
【図12】本発明の一実施例に係る短期変化抽出部を補足する図。
【図13】本発明の他の実施例に係る監視装置の機能構成図。
【図14】本発明の他の実施例をエスカレータに適用した場合の機器構成図。
【図15】本発明の他の実施例の検知エリアを説明する図。
【図16】本発明の更に他の実施例に係る監視装置の機器構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる監視装置の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、監視対象としてエスカレータに適用した場合を例に挙げて説明するが、本発明の監視装置はこれに限らず、エレベータ、建屋の内外等、人物が移動及び滞留する任意の場所に適用可能である。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1に係る監視装置の機能ブロック図を図1に示し、エスカレータの監視装置として適用した場合の装置構成例を図2に示す。本実施例1では、エスカレータのデッキを監視エリアとし、エスカレータの運行によって移動するステップやハンドレール付近における人物の滞留が、ステップやハンドレールに巻き込まれるような事故につながる恐れのある挙動として検知の対象としている。
【0023】
図2において、101はエスカレータで、110はエスカレータの下部の乗り場のデッキ、103はデッキ110の後方からデッキ110の周囲を視野内にとらえたカメラ、104は画像処理装置、105はエスカレータ101の制御装置、106はエスカレータ101の乗客に向けてスピーカによる音声やライトの発光等により警報する警報装置、107は監視員に向けて画面出力や音声出力を行うモニタ、108はカメラ103の画像あるいは画像処理装置104の映像を遠隔に伝送する伝送装置、109はカメラ103の入力画像あるいは画像処理装置104の出力画像を連続的に記録する録画装置である。カメラ103は可視光の撮像装置に限らず、近赤外の撮像装置のように、デッキ110およびデッキ110付近の2次元的な像を取得する装置を適用することができる。
【0024】
画像処理装置104の具体的機能ブロックを図1に示す。図1において、画像取得部1からの取得画像は、背景作成部2、長期変化抽出部3、短期変化抽出部4、短期変化蓄積部5、軌跡抽出部6、人数推定部7、滞留発報部8から構成される画像処理装置104により処理され、警報部9(図2では警報装置106に対応)及び制御部10(図2では制御装置105に対応)へ出力する。
【0025】
尚、画像処理装置104は匡体に納められた所定の計算機によって実現されるほか、カメラ103および制御装置105、警報装置106、モニタ107、伝送装置108、録画装置109の各機能との接続が可能であれば、機能の全てあるいは機能の一部を制御装置105、警報装置106、モニタ107、伝送装置108、録画装置109内の信号処理装置と共用してもよい。
【0026】
また図1において、検知対象情報記憶部11及び地点情報記憶部12は、画像処理装置104に設けられた記憶部であって、画像取得部1、背景作成部2、長期変化抽出部3、短期変化抽出部4、短期変化蓄積部5、軌跡抽出部6、人数推定部7、滞留発報部8等の各機能ブロックの信号処理に必要なデータが格納されている。検知対象情報記憶部11は検知対象の空間中における高さや幅といった大きさや、移動速度の情報を保持している。地点情報記憶部12はカメラ103の入力画像上における領域の情報(例えば、入力画像上のどの領域がデッキに対応し、どの領域がステップに対応し、どの領域を検知エリアとするかなどの情報)や、カメラ103の地点毎に合わせた画像処理に必要なしきい値や、カメラ103の入力画像上における検知対象の画像上における高さや幅や移動速度の情報を保持している。
【0027】
図1において、画像取得部1は、カメラ103から各フレームの入力画像を連続的に取得するように構成しているが、カメラ103の画像を記録したものを再生しても同等の機能を達成できる。また、画像取得部1からの取得画像は、背景作成部2、長期変化抽出部3、短期変化抽出部4、及び短期変化蓄積部5で処理及び記憶されるが、これらの部分が監視エリア内における検知対象の滞留を検知する手段を構成している。
【0028】
以下、図1における各機能ブロックの処理内容について順次説明する。
【0029】
短期変化抽出部4は、短期の変化として、2時刻[T−ΔT、T]の入力画像の差分から、画像上で短期に変化した部分を抽出する。図4(a)および(b)は短期変化抽出部4の時刻T−ΔTおよび時刻Tの入力画像の例を示し、111はハンドレール、112はステップ、113は人物、矢印117は人物113の移動方向である。図4(a)から図4(b)の間に、人物113は、ステップ112に向けて歩行した分、入力画像内を下から上に少し移動している。短期変化抽出部4は、2時刻の画像から所定のしきい値以上に明度が変化した差分(短期の変化)を画素単位で抽出する。また、短期変化抽出部4は、前記短期の変化から、差分の連結領域を抽出する。
【0030】
図4(c)は、短期変化抽出部4の抽出結果の例として、図4(a)と図4(b)から差分を抽出した結果の一例を示しており、132はステップ112の移動による差分の連結領域であり、133は人物113の移動による差分の連結領域である。この連結領域133は、2時刻[T−ΔT,T]の間の人物113の画面上の移動の輪郭に相当する。図4(c)の例では人物113が入力画像において画面の下から上に移動するために、連結領域133は縦方向に移動量に相当した厚みを持っている。短期変化抽出部4は、図4(c)の例のように、短期の変化から、連結領域133を抽出し、連結領域133から、連結領域133の外接矩形135、外接矩形135の代表辺136、代表辺136の代表点137を抽出する。
【0031】
図4(c)において、連結領域133が人物113の全体を捉えている場合、図2に示すようにデッキ110を斜め後ろから捉えるカメラ103の画角では、外接矩形135の底辺がデッキ110上にあるので、代表辺136は外接矩形135の底辺とする。この代表辺136の幅は人物113の幅に相当する。代表点137は代表辺136の中点であり、人物113の足元の左右の中心に相当する。
【0032】
なお、人物113の形状が縦長であるために、画面上を下から上に移動するときには2時刻[T−ΔT、T]の間における人物113の横方向の移動が小さいために、2時刻[T−ΔT、T]の入力画像の間で差分をとったときに、図4(d)のように人物113の側面で差分の連結領域が133a、133bのように、人物113の上部と下部に分断される場合がある。
【0033】
図4(d)のように人物113の差分の連結領域が分断された場合にも、個別の連結領域133a、133bから、外接矩形135a、135b、代表辺136a、136b、代表点137a、137bを抽出しておけば、少なくとも一方からは人物113の足元の座標を抽出できる。
【0034】
なお、人物113が画面上を横方向に移動する場合には、連結領域133は左右に分断される可能性があるが、その場合も同様に分断されたそれぞれの連結領域に対して外接矩形、代表辺、代表点を求める。
【0035】
また、連結領域133には、デッキ110上で反射した天井の照明の揺らぎのような微小なノイズが混じることがあるので、短期変化抽出部4は、外接矩形135の縦方法あるいは横方向の長さが、カメラ103の入力画像上における人物のサイズを見積もったしきい値未満のものである場合は、その外接矩形135を、ノイズとして棄却する。
【0036】
以上の説明では、短期変化抽出部4が、短期の変化として、連結領域133を2時刻の入力画像上の同一画素の明度から差分を抽出する方法について述べたが、あくまでこれは一例であり、2時刻の入力画像それぞれからRGBやHSIのような色の特徴量や、エッジの特徴量などの特徴量を抽出して、同一画素における特徴量の差分から連結領域133を抽出してもよい。
【0037】
また、連結領域133を抽出する方法としては、2時刻の同一画素の明度あるいは特徴量の変化を用いる方法以外にも、移動ベクトルにより入力画像上の動きある部分を抽出する方法で、連結領域133を抽出してもよい。また、短期変化抽出部4は、2時刻の入力画像を使う方法以外にも、非特許文献1に記載されたMotion History Imageのような2時刻以上の複数の時刻の入力画像上から動きを抽出する手法で連結領域133を抽出してもよい。
【0038】
短期変化抽出部4は、以上述べた機能を所定の処理周期で繰り返す。そして、短期変化蓄積部5は、短期変化抽出部4が処理周期ごとに抽出した代表点137を時系列で蓄積する。
【0039】
次に、背景作成部2は、異常挙動時の人物113の滞留の継続時間よりも十分にゆっくりとした周期で背景画像を更新することで、人物113が存在しない背景画像を生成する。この背景作成部2の背景画像の作成の方法には、たとえば短期変化抽出部4の変化が小さなフレームの画像を収集し、現時刻から所定時間内の収集画像から各画素のメジアンをとる方法が考えられるが、この例に限らない。
【0040】
長期変化抽出部3は、長期の変化として、各フレームの入力画像と背景画像との間で変化している部分を抽出するために、入力画像と背景画像との間の差分である背景差分を求める。また、長期変化抽出部3は、求めた背景差分から、デッキ110上の背景差分の連結領域を求める。
【0041】
図3は長期変化抽出部3を説明する図であり、図3(a)は背景作成部2が保持する背景画像の例を示し、111はハンドレール、112はステップを示している。図3(b)は入力画像の例であり、113は人物であってステップ112に乗り損ねて倒れている。人物113はステップ112の近くで転倒しているために、移動するステップ112に靴やズボンのすそが巻き込まれる可能性があって危険である。図3(c)は図3(a)と図3(b)の間で同一画素において明度変化が所定のしきい値以上生じた部分であり、入力画像内における長期の差分(背景差分)を示している。図3(c)において、120はデッキ110に対応した検知エリア、122はステップ112が背景画像と入力画像との間で移動した差分の連結領域であり、123は倒れた人物の差分の連結領域を示している。
【0042】
長期変化抽出部3は、前記長期の変化から、検知エリア120内の入力画像と背景画像との差分である背景差分の連結領域を求めて、連結領域のうち面積が検知対象情報記憶部11の保持する人物のサイズを想定したしきい値以上のものを有効な連結領域として選定し、有効な連結領域から外接矩形を求める。入力画像が図3(a)の場合、連結領域123を有効とし、連結領域123の外接矩形125を求める。また、長期変化抽出部3は、外接矩形125の場所を示す情報として、中心座標と縦横の長さを保持しておく。また、長期変化抽出部3は、連結領域123のように有効な連結領域を複数抽出した時は、外接矩形125のような外接矩形を複数抽出する。
【0043】
さらに、長期変化抽出部3は、以上述べた方法で抽出した外接矩形125が一つ以上抽出された時刻を保持しておく。また、一つ以上の外接矩形125の検出が同じ場所で継続する場合、滞留であると判断し、その滞留が発生している時期を示す情報を、滞留の時期の情報として保持しておく。尚、ここで滞留の時期の情報は、例えば、滞留の開始時刻と終了時刻、あるいは、滞留の開始時刻と継続時間の長さなど、滞留の発生している時刻と長さを特定できる情報を含む。また、長期変化抽出部3は、滞留が発生している場所の情報についても保持しておく。
【0044】
なお、図3において、ステップの移動による差分122は、検知エリア120外なので外接矩形125の抽出に影響を与えない。よって、長期変化抽出部3が差分を計算する範囲を検知エリア120内に限定してもよい。
【0045】
以上の説明では、長期変化抽出部3が、長期の変化として連結領域123を背景画像と入力画像の同一画素の明度の変化から抽出すると述べたが、あくまでこれは一例であり、背景画像と入力画像それぞれからRGBやHSIのような色の特徴量や、エッジの特徴量などの特徴量を抽出して、同一画素における特徴量の差分から連結領域123を抽出してもよい。また、背景画像としては、一枚の画像を用いる方法以外に、各画素の明度を確率分布のパラメータで記述したものを背景画像とし、背景差分を演算する際には、この各画素の明度を確率分布のパラメータで記述した背景画像と入力画像との差分を演算するような方法をとってもよい。
【0046】
次に、人数推定部7は、図5に示す処理フローによって検知エリア120上の人数を0人、1人、2人以上の区分で推定する。以下、図5の処理ステップS1〜S7、及び図6に示す人数推定時の時間関係を補足する図を適宜引用して、その処理内容を説明する。尚、図6(a)(b)(c)は、それぞれ、検知エリア内に0人、1人、2人以上がいる場合に対応する。
【0047】
S1では、人数推定部7は、長期変化抽出部3での背景差分の抽出結果または滞留の抽出結果に基づき、滞留の最低継続時間である時間τ以上に滞留が継続しているか否かを判定する。滞留が時間τ以上に継続していなければ(S1でno)、検知エリア120上に人物113の滞留はないとみなして0人と推定する(S5)。
【0048】
S1において、滞留が時間τ以上に継続している場合には、処理ステップS2に進む。このときの時間関係は図6(a)(b)(c)の何れかのようになっており、滞留の開始時刻を時刻T2、時刻T2から時間τだけ後を時刻T3とすると、時刻T2から時刻T3の間に滞留の継続期間201が存在する。
【0049】
S2では、人数推定部7は、時刻T2の直前に、S1の滞留箇所に向けて検知エリア120の外(検知エリア120の端)から移動する移動軌跡があるか否かを判定する。
【0050】
尚、S2における判定に用いられる移動軌跡の抽出は、軌跡抽出部6で行われる。検知エリア120の長さと、人物113の最低の移動速度から見積もった、人物113が検知エリア120を通過するのに最も長く要する最長通過時間を時間πとしたとき、時刻T2から時間πだけ遡った時刻T1と時刻T2との間において、軌跡抽出部6が前記移動軌跡を探索する。
【0051】
軌跡抽出部6による移動軌跡の抽出を、人物113がデッキ110上において図3(b)のように倒れた状態で時刻T2から時刻T3まで滞留した場面を例に挙げて説明する。図3(a)が背景画像であり図3(b)が入力画像であるときに、長期変化抽出部3は、長期の変化(背景差分)から、人物113の連結領域123、連結領域123の外接矩形125を抽出している。図7(a)と図7(b)は、時刻T2と時刻T1との間の時刻Taから、時刻T2のまでの間に、人物113がデッキ110の外から矢印117の方向にステップ112の付近まで歩行した状況を示している。
【0052】
図7(a)から図7(b)の間、短期変化抽出部4は、動作周期ごとに短期の変化を抽出し、短期変化蓄積部5は、動作周期ごとの短期変化抽出部4の出力(代表点137)の時系列を蓄積している。軌跡抽出部6は、時刻T2から遡って短期変化蓄積部5に蓄積された代表点137の時系列から対応点を探索することで移動軌跡を抽出する。対応点の探索の方法には、隣接する2時刻の代表点137の最近傍点を探索し、最近傍の2つの代表点137の画像上の座標のずれが許容誤差の範囲内に収まる対応点同士を連結する方法が考えられるが、これに限らない。図7(c)は、軌跡抽出部6が、図7(a)から図7(b)の間の代表点137の移動軌跡153を抽出した例を示している。
【0053】
なお、以上の説明では軌跡抽出部6が代表点137の時系列から移動軌跡153を抽出する方法を述べたが、軌跡抽出部6は代表点137以外のデータから移動軌跡153を求めてもよい。一例としては、非特許文献1では、連結領域133のような2時刻[T−ΔT、T]の人物113の変化(例えば、フレーム間差分)を累積させて、所定の時間の間に物体が移動した領域を特定する方法が記されてあり、これを利用して移動軌跡153を求めることも可能であり、前記実施例に限られるものではない。この場合、短期変化蓄積部5は、代表点137の時系列を蓄積することに代えて、短期の変化(例えばフレーム間差分)の時系列を蓄積するようにしてもよい。
【0054】
例えば、図7に示すように、時刻T1より後の時刻Taから時刻T2の期間に人物113がデッキ110の外からステップ112の付近まで歩行し、時刻T2から時刻T3の期間に、図3に示すように人物113がステップ112の付近で滞留した場面では、図6(b)に示す時間関係となり、時刻T1から時刻T2の期間に図3および図7に示すように検知エリア120の外から外接矩形125まで移動軌跡153が伸びているために、S2の判定はyesとなる。尚、図6(b)では、時刻Taから時刻T2の間に、検知エリア120の外から滞留の箇所まで伸びる移動軌跡153の発生期間202が存在している。
【0055】
一方、図8(a)(b)のように時刻T2から時刻T3の間に、ハンドレール111から影115がデッキ110上に伸びることが継続した場面では、時刻T2から時刻T1まで遡っても、軌跡抽出部6はエスカレータ101付近の照明条件の動揺による影115の動揺によって図8(c)に示すわずかな移動軌跡155を抽出するか、あるいはまったく移動軌跡を抽出しない。よって、S2の判定はnoとなり、人数推定部7はデッキ110内に滞留する人数を0人と推定する(S5)。この場合は、図6(a)に示す時間関係となる。
【0056】
人数推定部7はS2の判定がyesであれば、少なくとも1人以上の人物113が時刻T1から時刻T2の間にデッキ120内に進入し、時刻T2から時刻T3の間に滞留したものと考え、S3に進む。
【0057】
次に、S3では、人数推定部7は、時刻T1から時刻T2の間に、検知エリア120の外からいずれかの外接矩形125に伸びる移動軌跡153が2つ以上あるか否かを判定する。2つ以上あれば、時刻T1から時刻T2の間に2人以上の人物が進入して時刻T2から時刻T3の間に滞留したとみなして、人数推定部7はデッキ110内に滞留する人数を2人以上と推定する(S7)。S3の判定がnoの場合、S4に進む。
【0058】
次に、S4では、人数推定部7は、時刻T2から時刻T3の間に移動軌跡(2人目の人物)が検知エリア120の外から検知エリア120に進入したか否かを判定する。図9(a)(b)は、時刻T2から時刻T3の間に2人目の人物114がデッキ110の外からデッキ110の中に進入した例を示している。S4において、軌跡抽出部6は、S2と同様に時刻T2から時刻T3の間の代表点137の時系列から移動軌跡を探索し、図9(c)のように検知エリア120の外から検知エリア120に進入する2人目の人物114の移動軌跡154が一つでも見つかればS4の判定はyesとなり、時刻T1から時刻T2の間に進入した人物113に加えて、時刻T2から時刻T3の期間に2人目の人物114あるいはそれ以上多くの人物が進入したとみなして、人数推定部7は人数を2人以上と推定する(S7)。この場合の時間関係は、例えば図6(c)のようになる。図6(c)において、203は人物113の移動軌跡153の発生期間で、204は人物114の移動軌跡154の発生期間に相当する。
【0059】
反対に、S4の判定がnoの場合、時刻T2から時刻T3の間に新たな人物114の進入はないと考えて、人数推定部7はデッキ110内に滞留する人数を1人と推定する(S6)。
【0060】
尚、図6(c)では、検知エリア120内に2人以上の場合の一例を示しているが、これに限られず、他のパターンも存在する。例えば、S3で説明したように、時刻T1から時刻T2の間に2人以上の人物が進入して時刻T2から時刻T3の間に滞留した場合は、図6(c)における移動軌跡の発生期間203、204のうち、203のみが存在(但し2人分の移動軌跡が存在)することもありうる。この場合でも、S3により2人以上と判定することが可能である。
【0061】
次に、エスカレータ101が非常に混み合っている場合について図5ではどのような判定が行われるかを説明する。図10(a)(b)は、エスカレータ101が非常に混み合っていて、時刻T2から時刻T3の間に、人物の密集143が、デッキ110上を進んだり立ち止まったりを繰り返しながら、矢印117の方向に脈動的にゆっくりとステップ112に向かって進んでいる場面の例を示している。図10(a)(b)のような場面では、人物の密集143は、デッキ110上の広い範囲に居続けるので、図10(c)のように長期変化抽出部3において長期の変化から抽出された連結領域173の検知エリア120内における外接矩形175は、検知エリア120の広い範囲にまたがり、図5のS1の判定はyesとなる。
【0062】
次にS2について述べると、まず人物の密集143は時刻T1から時刻T2の間も図10(a)(b)と同様にデッキ110上を脈動的に進み続けるので、時刻T1から時刻T2の間に短期変化抽出部4は図示しない連結領域133および代表点137を抽出している。そのような時、人物の密集143から抽出した移動軌跡は、多くの場合、人物の密集143中の人物が移動と停止を繰り返すことによって連結領域133が断続的に表れることによって、図10(d)の移動軌跡163a、163b、163cように短く断片的になる。また、人物の密集143の中の人物が同時に動いた場合には、連結領域133が検知エリア120付近で一塊りになって代表点137が抽出できないことが生じる。S2では、検知エリア120の境界付近の人物の動きの状態によって、移動軌跡163aのように検知エリア120の外から検知エリア120に進入する移動軌跡をとらえることができれば、外接矩形175が検知エリア120の広い範囲に広がっていることより、移動軌跡163aは外接矩形175まで伸びて判定はyesとなりS3に進む。反対に、検知エリア120の境界付近の人物の動きの状態によって、S2において移動軌跡が163bや163cのように検知エリアの中央付近にしかない場合や移動軌跡が全くない場合には、S2の判定はnoになり、人数推定部7は0人と推定する(S5)。
【0063】
S2の判定がyesの場合、次にS3では、移動軌跡163aのような検知エリア120の外から伸びる移動軌跡が時刻T1から時刻T2の間に2つ以上存在すれば、判定はyesとなり人数推定部7は2人以上と推定する(S7)。S3の判定がnoの場合、次にS4では、移動軌跡163aのような検知エリア120の外から伸びる移動軌跡が時刻T2から時刻T3の間に少なくとも1つ存在すれば、判定はyesとなり人数推定部7は2人以上と推定する(S7)。ここで、滞留の最低継続時間である時間τを十分に長くとれば、移動軌跡163aのように検知エリア120の外から伸びるものを確実に抽出して、S4の判定がnoになることの抑止が可能である。
【0064】
以上述べたように人数推定部7は、人物の密集143に対して、S2で0人と誤って判定することはあっても、S4で発報の対象となる1人と判定することはない。なお、人物の密集143に対して、人数推定部7がS2で0人と誤って判定してしまうことは、最長通過時間である時間πを滞留の最低継続時間である時間τと同程度に長くとれば抑止することが可能である。
【0065】
前記の滞留の最低継続時間である時間τはあらかじめ見積もっておく。例えば、S1において人物113が立ち止まって時計を見るなどの正常挙動ではなく倒れているなどの異常挙動をして滞留していると判断できる時間を時間τ1とし、S3で人物の密集143から移動軌跡163aが確実に抽出されるのに十分な長さの時間を時間τ2としたとき、時間τ1と時間τ2の最大値max(τ1,τ2)をもって時間τとする。時間τは地点情報記憶部12に値を記憶しておく。最長通過時間である時間πは、デッキ110の空間での長さを人物113の空間での最低の移動速度で除算するか、検知エリア120の画像での長さを人物113の画像での最低の移動速度で除算することで計算できる。
【0066】
軌跡抽出部6を補足すると、図4(d)のように人物113の差分の連結領域が133aや133bのように2つ以上に分断された場合でも、軌跡抽出部6は連結領域133aや133bの代表点137aや137bの時系列のデータから最近傍点を連結させることで、図4(c)のように人物113の連結領域が分断されない場合と同様に移動軌跡153を抽出できる。このとき、複数の代表点137aや137bの時系列から移動軌跡153が2つ以上抽出される可能性があるが、両者の距離が人物の大きさを考慮した許容誤差以内である移動軌跡153を1つに統合することで1人の人物113から1本の移動軌跡を抽出することが可能となる。
【0067】
次に、滞留発報部8は、人数推定部7が検知エリア120に1人の人物113が滞留していると判定した時に限定して、即ち、0人でも2人以上でもなく、1人のときの滞留であることを特定して警報部9と制御部10の少なくとも一方に発報を出力する。
【0068】
警報部9は、滞留発報部8から発報を受け取ると、警報装置106のライトを明滅させることやスピーカの音声出力などによって、滞留する人物への注意喚起や、エスカレータ101の周囲の人物への救助の要請を行う。更に、警報部9は、滞留発報部8から発報を受け取ると、カメラ103の入力画像をモニタ107へ画面表示させ、あるいは伝送装置108から外部装置への送信を行わせ、あるいは録画装置109を制御して記録を行うよう制御する。
【0069】
ここで警報部9は、滞留の発生に監視員の注意が引き付けられるように、所定周期でカメラ103の入力画像を明滅させるような、画面効果を加えてもよい。また警報部9は、モニタ107へ画面表示する入力画像の上に外接矩形125や移動軌跡153を描画して表示させるようにしてもよい。監視員は移動軌跡153を見ることで、人物113がデッキ110のどこから進入したか、また人物113がデッキ110上をどう移動したかを容易に把握できる。
【0070】
警報部9は、画面描画を行う場合、描画画像あるいは描画画像とカメラ103の入力画像をモニタ107あるいは伝送装置108あるいは録画装置109に出力する。なお、図2の装置構成において、警報部9は、警報装置106、モニタ107、伝送装置108、録画装置109のうち、少なくとも1つ以上の装置があれば、機能を実現することができる。
【0071】
最後に、制御部10は、警報発報部8から発報を受け取ると、エスカレータ101の運行速度を低下させたり、エスカレータ101を緩停止させることで、滞留した人物の事故を防止したり、事故発生時の被害を軽減する。
【0072】
以上述べた機能構成によって、本実施例1では、デッキ110上の滞留を検知するとともに、デッキ110上の人数を0人、1人、2人以上の区分で推定し、デッキ110上の人数が1人の場合の滞留時のみ発報すること、あるいはデッキ110上の人数が1人の場合の滞留に高い重要度を付与して発報することが可能である。なお、本実施例1は、人数推定部7が図5の処理フロー以外の方法により0人、1人、2人以上の区分で人数を推定した場合にも、同様の効果を発揮する。
【0073】
実施例1では、人数推定部7の図5の処理フローにおいて、S3とS4を省いた場合、S1とS2の判定結果から、0人(S5)と、1人(S6)あるいは2人以上(S7)の2区分で人数を推定することができる。前記の0人と1人あるいは2人以上の区分には、滞留が継続した時に(S1でyes)、滞留が図8に示すような影115のような人物113以外によるものか(S5)、人物113によるものか(S6あるいはS7)を判別することが可能になる。前記の0人と1人あるいは2人以上の2区分の人数推定には、滞留に対して発報する監視装置において、影115のような人物113以外の滞留に対して滞留発報部8が発報することを抑止する効果がある。なお、人数推定部7が図5のフロー以外の方法により、前記の0人と1人あるいは2人以上の2区分の人数推定をした場合にも、同様の効果を発揮する。
【0074】
また、実施例1では、人数推定部7の図5の処理フローにおいて滞留が継続した時に(S1でyes)、S2を省いてS1がyesのときにS3に移るようにした場合、S3がyesになった場合およびS3がnoでS4がyesの場合とそれ以外の場合とで、0人(S5)あるいは1人(S6)と、2人以上(S7)の2区分で人数を推定することができる。前記の0人あるいは1人と2人以上の2区分の人数推定には、滞留が継続した時に(S1でyes)、滞留が図10に示すような人物の密集143によるものか(S7)、そうでないのか(S5あるいはS6)を判別することが可能になる。前記の0人あるいは1人と2人以上の区分には、異常挙動による滞留に対して発報する監視装置において、人物の密集143のようなエスカレータ101の利用者が多く特に異常事象でない状況において、滞留発報部8が発報することを抑止する効果がある。なお、人数推定部7が図5の処理フロー以外の方法により前記の0人あるいは1人と2人以上の2区分の人数推定をした場合にも、同様の効果を発揮する。
【0075】
実施例1において、人数推定部7は、滞留が発生した時に、前記監視エリアの外から滞留箇所までの移動軌跡153あるいは、前記移動軌跡153と長期の変化の位置あるいは外接矩形125の位置情報から、滞留している検知対象(人物113)の挙動の種別を判別する、図示しない挙動判別部を備える。滞留発報部8は、挙動判別部で判別した結果に応じて、例えば警報部9の画面出力に描画するなどの制御を行ってもよい。図11(a)は、移動軌跡153がステップ112付近まで伸びていて、外接矩形153がステップ112付近からデッキ110の手前にあることより、人物113がステップ112の付近で倒れの挙動をしていると滞留発報部8が判定した場面において、画面出力301上にステップ近くで倒れの文字列311aを出力した例を示している。また、図11(b)は、移動軌跡153がハンドレール11付近まで伸びていて、外接矩形125がハンドレール111にかかっていることより、人物113がハンドレール111にいたずらの挙動をしていると滞留発報部8が判定した場面において、画面出力301上にハンドレールいたずらの文字列311bを出力した例を示している。また、312は周囲に人がいなく危険であることを監視員に喚起する注意文の例である。312の文字列の文面(一人で危険)はあくまで例であり、他のものでもよい。なお、図11(a)および(b)において、文字列311aおよび文字列311b以外の構成要素、外接矩形125、移動軌跡153、文字列312は必須でないので省いてもよい。
【0076】
更に、実施例1において、滞留発報部8は発報に重要度を付加して、人数推定部7が1人と推定した場合に高い重要度を付加し、人数推定部7が2人以上と推定した場合に低い重要度を付加して発報するようにしてもよい。滞留発報部8が発報に重要度を付加する場合、警報部9は警報装置106に対して、重要度の高いあるいは低いに応じたスピーカの音声出力やライトの明滅パターンを指示するか、あるいは低い重要度のときにはスピーカの音声出力やライトの明滅パターンを出力しないようにする。また、滞留発報部8が発報に重要度を付加する場合、警報部9は警報装置106に対して、制御装置105に重要度の高いあるいは低いに応じた運行の制御をおこなうか、重要度が高い場合にのみエスカレータ101の運行を制御するようにする。
【0077】
また、滞留発報部8が発報に重要度を付加する場合、警報部9は画面出力301上の文字列312の内容を重要度に応じて切り替えるあるいは重要度が高い場合のみ描画するようにしてよい。
【0078】
また、実施例1において、短期変化抽出部4は、連結領域133の代表辺136が検知エリア120内に収まる場合と収まらない場合とで、連結領域133を抽出した人物113がデッキ110の内側にいるのか外側にいるのか判定してもよい。例として、図12(a)に、長い影がついた人物113pが、矢印117pの方向にデッキ110の横を通り過ぎる場面、図12(b)に、図12(a)の場面において短期変化抽出部4が抽出した連結領域133p、133pの外接矩形135p、135pの代表辺136p、136pの中心の代表点137pを、それぞれ示す。また、図12(c)に、人物113qが、矢印117qの方向にデッキ110の手前を通り過ぎる場面、図12(d)に、図12(c)の場面において短期変化抽出部4が抽出した連結領域133q、133qの外接矩形135q、135qの代表辺136q、136qの中心の代表点137qを、それぞれ示す。代表辺136pおよび代表辺136qは、人物113pおよび人物113qがデッキ110の外にいるために、どちらも検知エリア120から大きくはみ出している。一方で、図4(c)のように人物113がデッキ110上にいるときは、代表辺136はデッキ110上に収まっている。よって、短期変化抽出部4は、代表辺136が検知エリア120内に収まる場合と収まらない場合とで、連結領域133を抽出した人物113がデッキ110の内側にいるのか外側にいるのかの判定が可能である。
【0079】
実施例1において、この代表点137pおよび137qは、軌跡抽出部6においてデッキ外に存在する人物から抽出した代表点137を短期変化蓄積部5に蓄積してしまうと、軌跡抽出部6はデッキ110外の人物113から誤った移動軌跡153を抽出してしまう。よって、短期変化抽出部4は代表辺136が検知エリア120からはみ出ている場合に代表点137を棄却すれば、デッキ110外の人物113の代表点137が短期変化蓄積部5に蓄積されることを防止できる。尚、短期変化蓄積部5が短期の変化そのものを蓄積する場合には、短期変化抽出部4は、デッキ110外(検知エリア120外)に存在する人物に対応する短期の変化を棄却し、短期変化蓄積部5に蓄積されるのを防止する。
【0080】
実施例1において、カメラ103はデッキ110の付近を視野内に捉えることができれば、図2における103bのようにデッキ110の真上付近から捉える設置条件あるいは、103cのようにデッキ110の斜め前からからデッキ110の付近を捉える設置条件を適用してもよい。
【0081】
また、カメラ103bのようにデッキ110の真上付近から捉える設置条件では、人物113の側面がほとんど入力画像上にみえなくなるので、人物113の縦方向の長さがカメラ103の入力画像と大きく異なる。よって、監視装置を複数地点においてカメラ103、103b、103cのように異なる画角で適用する場合、入力画像上の人物113の画像上の大きさや移動速度、検知エリア120の大きさが地点毎に変わるので、地点情報記憶部12はあらかじめ画角毎の情報を記憶しておき、カメラ103を設置する画角に合わせて情報を切り替えるようにしてもよい。あるいは、モニタ107にユーザインタフェースを設けて監視員からカメラ103の画角に関する情報を受け取り、監視員から受け取った画角に関する情報に応じて地点情報記憶部12内の情報を切り替えるか微調整するようにしてもよい。
【0082】
実施例1において、非特許文献2に示された時空間特徴による背景モデルでステップ112のような可動部の動きをあらかじめ学習しておき、図4(c)に示すような短期変化抽出部4における連結領域132、および図3(c)に示すような長期変化抽出部3による連結領域122を、ステップ112による定常的な変化として判断し、不要な情報として捨てることで、差分として抽出することを抑止することができる。前記時空間勾配による動的な背景モデルを短期変化抽出部4に適用した場合、人物113がステップ112を逆流した場合にも移動軌跡153を抽出し、エスカレータ112が下りで人物113がステップ112からデッキ110に進入したときに移動軌跡153を抽出することができる。
【0083】
また、長期変化抽出部3において、連結領域123がデッキ110からはみでた部分を含んだ外接矩形125を抽出できる。前記デッキ110からはみでた部分を含んだ外接矩形125を抽出できれば、図11(b)のように人物113がデッキ110からはみ出たときにも、外接矩形125を人物113の全身をカバーするように抽出して、警報部9の描画を見易くできる。
【実施例2】
【0084】
本発明の実施例2の機能ブロック図を図13に示す。図13において、画像取得部1、軌跡抽出部6、人数推定部7、滞留発報部8、警報部9、制御部10、検知対象情報記憶部11、地点情報記憶部12は実施例1と同じ機能をはたす。また、エスカレータに適用した場合の装置構成例を図14に示す。
【0085】
図14において、センサ203はなんらかの計測原理により人物113の有無を検知し、同時に人物113のデッキ110付近での場所に関係した情報を出力可能なセンサであり、デッキ110上の少なくとも一部をセンシング範囲に捉え、所定の動作周期で信号を出力している。
【0086】
図13において、センシング部23は、所定の取り込み周期でセンサ203から信号を受け取り、長期変化抽出部3あるいは短期変化抽出部4の少なくとも一方に出力する。センサ203の計測原理には、レーザレーダやミリ波レーダなどによる測距離情報と設置情報から、地上面から所定の高さがある物体を人物113として抽出すると同時に測距離情報から人物113の場所を特定する方法や、指向性をもった感熱センサで体温に相当した温度の部分から人物113を検出しての場所を特定する方法が例に挙げられるが、この例に限らない。また、センサ203には、顔認識のように1枚の入力画像から人物113を検出し位置を特定するパターン認識を含む。センサ203がパターン認識の場合、カメラ103の入力画像を信号処理の入力としてよい。
【0087】
図13の機能構成において、センシング部23は、センサ203により検出した人物113の検知情報を、長期の変化を長期変化抽出部3に出力するか、短期の変化を短期変化蓄積部5に出力するかの、少なくとも一方を行う。
【0088】
長期変化抽出部3は、実施例1の方法による長期の変化の抽出、あるいはセンシング部23からの長期の変化の受信の少なくともどちらか一方を行う。実施例2では、長期変化抽出部3は前記実施例1の方法による長期の変化の抽出を行う場合、実施例1と同じ背景作成部2を設ける。
【0089】
短期変化蓄積部5は、実施例1の方法による短期の変化の、あるいはセンシング部23からの短期の変化の受信の少なくともどちらか一方を行う。実施例2では、短期変化抽出部4が前記実施例1の方法による短期の変化の抽出を行う場合、実施例1と同じ短期変化抽出部3を設ける。
【0090】
以上述べたように、実施例2では、実施例1の方法によって抽出した人物113の長期の変化および短期の変化に加えて、センサ203の信号から人物113の長期の変化あるいは短期の変化の少なくとも一方が抽出可能である。たとえば、カメラ103が可視光のカメラの場合、デッキ110上の特定の場所で外光が強く反射すれば実施例1の構成では人物113の長期の変化および短期の変化を安定して抽出することは困難であるが、実施例2ではレーザレーダのような外光の影響を受けにくいセンサをセンサ203とすれば、少なくともデッキ110上の一部の範囲を人物113の長期の変化あるいは短期の変化の抽出を補足して監視装置の全体の信頼度を向上させることができる。
【0091】
また、実施例2では図15の検知エリア190のようにデッキ110とステップ112の境界のような巻き込まれによる事故が発生しやすい特定の場所の付近を、高い精度のセンサ203で捉えておけば、検知エリア190の長期の変化を確実に捉えて、監視装置の全体の信頼度を向上させることができる。また、検知エリア190を捉えるセンサ203を測距離型のセンサにすれば、人物113が図3(b)のように倒れている場合や、図7(b)の位置にて立ち続けている場合とで、人物113の挙動を判別することができる。
【実施例3】
【0092】
本発明の実施例3に係る監視装置の装置構成を図16に示す。図16において、通路383に設けられた扉381、扉381に備え付けられた認証装置382、扉381および認証装置382の付近に設けられた監視エリア310、および監視エリア310の付近を視野内にとらえたカメラ103、扉381の脇に備え付けられた制御装置105および警報装置106、画像処理装置104、モニタ107、伝送装置108、録画装置109を示す。図16において通路383を往来する人物113を示している。
【0093】
図16において、扉381は開閉により人物113の通行をコントロールし、認証装置382はカードキーや指紋認証などの所定の認証手段により、認証手段で通行許可を与えた人物113に対して扉381が開くことを許可する。制御装置105は、扉381の開閉を制御し、警報装置106は監視エリア310付近の人物に向けて警報ができるライトあるいはスピーカを有する。104、107、108、109の各装置は、図1に示す実施例1の同一番号の装置と同じ機能を果たす。なお、実施例3では、監視エリア310内の特定部分に検知エリア390を設けたセンサ203を備えてもよい。
【0094】
監視エリア310内に極端に長い時間に滞留する人物は、扉381の通行許可がないにも関わらず、認証装置382あるいは扉381に工作、あるいは通行許可を有す人物が来るのを待って通行許可をもった人物が扉381を開けた瞬間に不正に扉381を通行することを企んでいる可能性があり、異常行動として検知すべきである。また、監視エリア310内に人物が1人しかいない場合は、不正な扉381の通過を目撃する周囲の人物がいなくて危険度が高い。
【0095】
よって、本実施例3では、センサ203がない場合には図1に示す実施例1の機能構成によって、またセンサ203がある場合には図13に示す実施例2の機能構成によって、監視エリア310上の滞留を検知するとともに、監視エリア310上の人数を0人、1人、2人以上の区分で推定し、監視エリア310内の人数が1人で滞留している場合にのみ発報すること、あるいは監視エリア310内の人数が1人の場合の滞留に高い重要度を付与して発報することで、1人のときの滞留であることを特定して注意を促すことができ、安全管理及びセキュリティの面からも効果的に監視することができる。
【符号の説明】
【0096】
1・・・画像取得部
2・・・背景作成部
3・・・長期変化抽出部
4・・・短期変化抽出部
5・・・短期変化蓄積部
6・・・軌跡抽出部
7・・・人数推定部
8・・・滞留発報部
9・・・警報部
10・・・制御部
11・・・検知対象情報記憶部
12・・・地点情報記憶部
101・・・エスカレータ
103,103a,103b・・・カメラ
110・・・乗り場デッキ
113・・・人物
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラ等を用いて監視エリア内の画像を取得し、この取得画像を処理して監視員等に通報する監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラを目視により安全確認する監視員の負荷の軽減のために、撮影画像から画像認識によって事故の発生時の人物の挙動や、事故につながる危険行為といった異常挙動を検知し、監視員に発報する監視システムが普及しつつある。
【0003】
前記の異常挙動のうち人物が特定の場所に居続ける滞留は、たとえば安全管理を目的とした監視システムでは人物が事故や負傷により動けない状況や、またセキュリティを目的とした監視システムでは家屋への進入の準備をしているなどの状況に結びつくために重要度が高い異常挙動である。
【0004】
監視エリア内の滞留を検出する技術として、特許文献1ではエスカレータのデッキ付近を監視エリアとして、2時刻の撮影画像のフレーム間の差分の量が多いほど、また監視エリアの背景差分(監視エリアからの入力画像と背景画像との間の差分)の面積が広いほど、デッキ上にたくさんの乗客がいて混雑度が高いと推測する技術が開示されている。この特許文献1では、前記の方法により計算した混雑度を閑散時と混雑時の2レベルに区分し、閑散時にはデッキ上での座り込みやハンドレールへのいたずらといった乗客の異常挙動を検出し、混雑時には乗客の通行を妨げるような異常挙動は発生している可能性が低いとみなして異常挙動の検知は行わず、代わりに乗客の通行量を計測するように画像認識の内容を切り替えている。
【0005】
また、一般に、取得した画像の時間的変化を分析することで人物の挙動及び移動等を検知する技術としては非特許文献1等が知られており、エスカレータの分野においても、取得した画像の時空間的特徴を抽出し、エスカレータの動きと人物の動きとを区別して認識することで、人物の異常行動を検知する技術が非特許文献2で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−7264号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G. Bradski and J. Davis.著、「Real-time recognition of activity using temporal templates」、Third IEEE Workshop on Applications of Computer Vision(1996年12月)
【非特許文献2】村井泰裕, 藤吉弘亘, 数井誠人著、「時空間特徴に基づくエスカレータシーンにおける人の異常行動検知」、社団法人 情報処理学会 研究報告、CVIM、第164回、 pp. 251−258(2008年9月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
滞留の中でも特に滞留の当事者以外に周囲に人がいない状況は、たとえば安全管理を目的とした監視システムでは、事故発生時において周囲の人により事故の当事者が救助されることを期待できないので危険度が高く、またセキュリティを目的とした監視システムでは、他の人物からの人目によって犯罪が抑止されることが期待できないので危険度が高く、監視員は重点的に監視する必要がある。
【0009】
また、非特許文献1又は2の様な画像処理によって人物の移動及び挙動を検知する監視システムにおいて、異常な挙動と類似した画像上の変化があっても、実際には監視エリア内に人物がいないシーンにおいては、監視システムから発報する必要はない。不要な発報は監視員に煩わしさを感じさせてしまうからである。
【0010】
以上のことから、画像認識により滞留を検知する監視システムでは、滞留を検知するとともに、滞留時に監視エリア内にいるのが0人、1人、2人以上の区分で人数を推定することが望ましいことが判った。
【0011】
そこで、特許文献1の技術を0人、1人、2人以上という人数推定に適用しようとすると、特許文献1に開示されている背景差分の面積が広いほど混雑度が高いという基準では、夕陽のように低い角度で照明光が差し込んで影が伸びる状況においては、影の部分で発生した面積が影響して誤判定してしまうという問題がある。たとえば人物がエスカレータのデッキ上に1人の場合に人物から長い影が伸びる状況では、影のために背景差分の面積が広くなってしまい、実際には乗客1人で閑散なのに混雑と判定してしまう可能性がある。また、ハンドレールなどの構造物の影が伸びる状況では、デッキ上に乗客が1人もいないにもかかわらず、ハンドレールなどの構造物の影によって背景差分の面積が広くなり、実際には乗客がひとりもいなく閑散なのに混雑と判定してしまう可能性がある。よって、特許文献1で開示されている技術では、監視エリア内の人数が0人の場合と1人あるいは2人以上の場合とを正確に判別できない。
また、特許文献1で開示されているもう1つの基準であるフレーム間の差分の面積が広いほど混雑度が高いという基準では、たとえば1人の乗客が転倒後に起き上がろうとしてもがいている状況では、乗客の動きによってフレーム間の差分の面積が広くなり、実際には乗客が1人しかおらず閑散なのに混雑していると誤判定してしまう可能性がある。また反対に、極度に混雑して多数の乗客が身動きできない状況では、乗客の動きが小さいためにフレーム間の差分の面積が狭くなり、実際にはたくさんの人物で混雑しているのに、閑散であると誤判定してしまう可能性がある。よって、特許文献1で開示されている技術を人数推定に適用しても、乗客が少数いる場合と多数いる場合とを区別できないので、監視エリア内の人数が0人あるいは1人の状況と2人以上の状況を正確に推定できない。
【0012】
以上のことから、特許文献1の技術では、監視エリア内の人数が0人であるのか、1人であるのか、2人以上であるのかを正確に判別することは困難である。
【0013】
一方、前記非特許文献1及び2は、人物の移動、エスカレータの動きと区別した人物の認識技術等で優れているが、監視エリア内にいる人物を0人、1人、2人以上の区分で人数を推定する思想は無く、監視エリア内の人数に着目することで、人物がいないシーンでの発報を軽減すること等については配慮されていない。
【0014】
本発明は、このような従来の監視技術に鑑みて成されたもので、その主な目的とするところは、安全管理及びセキュリティの面から特に重要な人数である1人のみの状況を特定できるように人数を推定することで、監視エリア内を効果的に監視することのできる監視装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、前記人数が1人であることを精度よく推定するとともに、検知対象の人数を0人、1人、2人以上に区分して推定するに好適な装置等を提供することにあるが、それらの目的については以下述べる実施の態様で詳述する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記主な目的を達成するため、本発明の特徴とするところは、監視エリア付近の入力画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段からの入力画像を処理して、監視エリア内の検知対象の人数を0人、1人、2人以上の区分のうち1人か1人以外かを推定する人数推定手段と、前記監視エリア内の推定人数が1人のときの滞留を特定して外部に発報する滞留発報手段とを備えることである。これにより、監視エリア内の人数が0人又は2以上の場合と区別し、1人であることを特定して知らせることができるので、1人の滞留という特に重要な場面を特定して監視員等の注意を促すようにできる。
【0017】
ここで、前記「監視エリア内の推定人数が1人のときの滞留を特定して外部に発報する」とは、滞留人数が1人のときを0人又は2以上の場合と区別して発報することであって、人数が1人以外の場合には発報しないようにしてもよいし、人数が1人以外の場合にも発報するが、信号の内容又は長さ等を変えたり、特定の信号を付加することで、0人又は2人以上の場合と1人の場合とを区別することも含む概念である。
【0018】
本発明の他の特徴は、前記検知対象の人数が1人であることを精度よく推定するための構成、更には、検知対象の人数を0人、1人、2人以上に区分して推定するに好適な構成及びその応用例等の構成であるが、それらの特徴については以下述べる実施の態様で詳述する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、監視エリア内の人数が1人であることを特定して注意を促すことができるので、安全管理及びセキュリティの面からも監視エリア内を効果的に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例に係る監視装置の機能ブロック図。
【図2】本発明の一実施例をエスカレータに適用した場合の機器構成図。
【図3】本発明の一実施例に係る長期変化抽出部を説明する図。
【図4】本発明の一実施例に係る短期変化抽出部を説明する図。
【図5】本発明の一実施例に係る人数推定手段の処理フローを説明する図。
【図6】本発明の一実施例に係る人数推定手段の時間関係を補足する図。
【図7】本発明の一実施例に係る人物の移動軌跡の抽出手法を説明する図。
【図8】本発明の一実施例に係る影部分の移動軌跡の抽出手法を説明する図。
【図9】本発明の一実施例に係る人物の移動軌跡の抽出手法を説明する図。
【図10】本発明の一実施例に係る密集した人物の移動軌跡の抽出手法を説明する図。
【図11】本発明の一実施例に係る警報手段の画面表示例を説明する図。
【図12】本発明の一実施例に係る短期変化抽出部を補足する図。
【図13】本発明の他の実施例に係る監視装置の機能構成図。
【図14】本発明の他の実施例をエスカレータに適用した場合の機器構成図。
【図15】本発明の他の実施例の検知エリアを説明する図。
【図16】本発明の更に他の実施例に係る監視装置の機器構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる監視装置の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、監視対象としてエスカレータに適用した場合を例に挙げて説明するが、本発明の監視装置はこれに限らず、エレベータ、建屋の内外等、人物が移動及び滞留する任意の場所に適用可能である。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1に係る監視装置の機能ブロック図を図1に示し、エスカレータの監視装置として適用した場合の装置構成例を図2に示す。本実施例1では、エスカレータのデッキを監視エリアとし、エスカレータの運行によって移動するステップやハンドレール付近における人物の滞留が、ステップやハンドレールに巻き込まれるような事故につながる恐れのある挙動として検知の対象としている。
【0023】
図2において、101はエスカレータで、110はエスカレータの下部の乗り場のデッキ、103はデッキ110の後方からデッキ110の周囲を視野内にとらえたカメラ、104は画像処理装置、105はエスカレータ101の制御装置、106はエスカレータ101の乗客に向けてスピーカによる音声やライトの発光等により警報する警報装置、107は監視員に向けて画面出力や音声出力を行うモニタ、108はカメラ103の画像あるいは画像処理装置104の映像を遠隔に伝送する伝送装置、109はカメラ103の入力画像あるいは画像処理装置104の出力画像を連続的に記録する録画装置である。カメラ103は可視光の撮像装置に限らず、近赤外の撮像装置のように、デッキ110およびデッキ110付近の2次元的な像を取得する装置を適用することができる。
【0024】
画像処理装置104の具体的機能ブロックを図1に示す。図1において、画像取得部1からの取得画像は、背景作成部2、長期変化抽出部3、短期変化抽出部4、短期変化蓄積部5、軌跡抽出部6、人数推定部7、滞留発報部8から構成される画像処理装置104により処理され、警報部9(図2では警報装置106に対応)及び制御部10(図2では制御装置105に対応)へ出力する。
【0025】
尚、画像処理装置104は匡体に納められた所定の計算機によって実現されるほか、カメラ103および制御装置105、警報装置106、モニタ107、伝送装置108、録画装置109の各機能との接続が可能であれば、機能の全てあるいは機能の一部を制御装置105、警報装置106、モニタ107、伝送装置108、録画装置109内の信号処理装置と共用してもよい。
【0026】
また図1において、検知対象情報記憶部11及び地点情報記憶部12は、画像処理装置104に設けられた記憶部であって、画像取得部1、背景作成部2、長期変化抽出部3、短期変化抽出部4、短期変化蓄積部5、軌跡抽出部6、人数推定部7、滞留発報部8等の各機能ブロックの信号処理に必要なデータが格納されている。検知対象情報記憶部11は検知対象の空間中における高さや幅といった大きさや、移動速度の情報を保持している。地点情報記憶部12はカメラ103の入力画像上における領域の情報(例えば、入力画像上のどの領域がデッキに対応し、どの領域がステップに対応し、どの領域を検知エリアとするかなどの情報)や、カメラ103の地点毎に合わせた画像処理に必要なしきい値や、カメラ103の入力画像上における検知対象の画像上における高さや幅や移動速度の情報を保持している。
【0027】
図1において、画像取得部1は、カメラ103から各フレームの入力画像を連続的に取得するように構成しているが、カメラ103の画像を記録したものを再生しても同等の機能を達成できる。また、画像取得部1からの取得画像は、背景作成部2、長期変化抽出部3、短期変化抽出部4、及び短期変化蓄積部5で処理及び記憶されるが、これらの部分が監視エリア内における検知対象の滞留を検知する手段を構成している。
【0028】
以下、図1における各機能ブロックの処理内容について順次説明する。
【0029】
短期変化抽出部4は、短期の変化として、2時刻[T−ΔT、T]の入力画像の差分から、画像上で短期に変化した部分を抽出する。図4(a)および(b)は短期変化抽出部4の時刻T−ΔTおよび時刻Tの入力画像の例を示し、111はハンドレール、112はステップ、113は人物、矢印117は人物113の移動方向である。図4(a)から図4(b)の間に、人物113は、ステップ112に向けて歩行した分、入力画像内を下から上に少し移動している。短期変化抽出部4は、2時刻の画像から所定のしきい値以上に明度が変化した差分(短期の変化)を画素単位で抽出する。また、短期変化抽出部4は、前記短期の変化から、差分の連結領域を抽出する。
【0030】
図4(c)は、短期変化抽出部4の抽出結果の例として、図4(a)と図4(b)から差分を抽出した結果の一例を示しており、132はステップ112の移動による差分の連結領域であり、133は人物113の移動による差分の連結領域である。この連結領域133は、2時刻[T−ΔT,T]の間の人物113の画面上の移動の輪郭に相当する。図4(c)の例では人物113が入力画像において画面の下から上に移動するために、連結領域133は縦方向に移動量に相当した厚みを持っている。短期変化抽出部4は、図4(c)の例のように、短期の変化から、連結領域133を抽出し、連結領域133から、連結領域133の外接矩形135、外接矩形135の代表辺136、代表辺136の代表点137を抽出する。
【0031】
図4(c)において、連結領域133が人物113の全体を捉えている場合、図2に示すようにデッキ110を斜め後ろから捉えるカメラ103の画角では、外接矩形135の底辺がデッキ110上にあるので、代表辺136は外接矩形135の底辺とする。この代表辺136の幅は人物113の幅に相当する。代表点137は代表辺136の中点であり、人物113の足元の左右の中心に相当する。
【0032】
なお、人物113の形状が縦長であるために、画面上を下から上に移動するときには2時刻[T−ΔT、T]の間における人物113の横方向の移動が小さいために、2時刻[T−ΔT、T]の入力画像の間で差分をとったときに、図4(d)のように人物113の側面で差分の連結領域が133a、133bのように、人物113の上部と下部に分断される場合がある。
【0033】
図4(d)のように人物113の差分の連結領域が分断された場合にも、個別の連結領域133a、133bから、外接矩形135a、135b、代表辺136a、136b、代表点137a、137bを抽出しておけば、少なくとも一方からは人物113の足元の座標を抽出できる。
【0034】
なお、人物113が画面上を横方向に移動する場合には、連結領域133は左右に分断される可能性があるが、その場合も同様に分断されたそれぞれの連結領域に対して外接矩形、代表辺、代表点を求める。
【0035】
また、連結領域133には、デッキ110上で反射した天井の照明の揺らぎのような微小なノイズが混じることがあるので、短期変化抽出部4は、外接矩形135の縦方法あるいは横方向の長さが、カメラ103の入力画像上における人物のサイズを見積もったしきい値未満のものである場合は、その外接矩形135を、ノイズとして棄却する。
【0036】
以上の説明では、短期変化抽出部4が、短期の変化として、連結領域133を2時刻の入力画像上の同一画素の明度から差分を抽出する方法について述べたが、あくまでこれは一例であり、2時刻の入力画像それぞれからRGBやHSIのような色の特徴量や、エッジの特徴量などの特徴量を抽出して、同一画素における特徴量の差分から連結領域133を抽出してもよい。
【0037】
また、連結領域133を抽出する方法としては、2時刻の同一画素の明度あるいは特徴量の変化を用いる方法以外にも、移動ベクトルにより入力画像上の動きある部分を抽出する方法で、連結領域133を抽出してもよい。また、短期変化抽出部4は、2時刻の入力画像を使う方法以外にも、非特許文献1に記載されたMotion History Imageのような2時刻以上の複数の時刻の入力画像上から動きを抽出する手法で連結領域133を抽出してもよい。
【0038】
短期変化抽出部4は、以上述べた機能を所定の処理周期で繰り返す。そして、短期変化蓄積部5は、短期変化抽出部4が処理周期ごとに抽出した代表点137を時系列で蓄積する。
【0039】
次に、背景作成部2は、異常挙動時の人物113の滞留の継続時間よりも十分にゆっくりとした周期で背景画像を更新することで、人物113が存在しない背景画像を生成する。この背景作成部2の背景画像の作成の方法には、たとえば短期変化抽出部4の変化が小さなフレームの画像を収集し、現時刻から所定時間内の収集画像から各画素のメジアンをとる方法が考えられるが、この例に限らない。
【0040】
長期変化抽出部3は、長期の変化として、各フレームの入力画像と背景画像との間で変化している部分を抽出するために、入力画像と背景画像との間の差分である背景差分を求める。また、長期変化抽出部3は、求めた背景差分から、デッキ110上の背景差分の連結領域を求める。
【0041】
図3は長期変化抽出部3を説明する図であり、図3(a)は背景作成部2が保持する背景画像の例を示し、111はハンドレール、112はステップを示している。図3(b)は入力画像の例であり、113は人物であってステップ112に乗り損ねて倒れている。人物113はステップ112の近くで転倒しているために、移動するステップ112に靴やズボンのすそが巻き込まれる可能性があって危険である。図3(c)は図3(a)と図3(b)の間で同一画素において明度変化が所定のしきい値以上生じた部分であり、入力画像内における長期の差分(背景差分)を示している。図3(c)において、120はデッキ110に対応した検知エリア、122はステップ112が背景画像と入力画像との間で移動した差分の連結領域であり、123は倒れた人物の差分の連結領域を示している。
【0042】
長期変化抽出部3は、前記長期の変化から、検知エリア120内の入力画像と背景画像との差分である背景差分の連結領域を求めて、連結領域のうち面積が検知対象情報記憶部11の保持する人物のサイズを想定したしきい値以上のものを有効な連結領域として選定し、有効な連結領域から外接矩形を求める。入力画像が図3(a)の場合、連結領域123を有効とし、連結領域123の外接矩形125を求める。また、長期変化抽出部3は、外接矩形125の場所を示す情報として、中心座標と縦横の長さを保持しておく。また、長期変化抽出部3は、連結領域123のように有効な連結領域を複数抽出した時は、外接矩形125のような外接矩形を複数抽出する。
【0043】
さらに、長期変化抽出部3は、以上述べた方法で抽出した外接矩形125が一つ以上抽出された時刻を保持しておく。また、一つ以上の外接矩形125の検出が同じ場所で継続する場合、滞留であると判断し、その滞留が発生している時期を示す情報を、滞留の時期の情報として保持しておく。尚、ここで滞留の時期の情報は、例えば、滞留の開始時刻と終了時刻、あるいは、滞留の開始時刻と継続時間の長さなど、滞留の発生している時刻と長さを特定できる情報を含む。また、長期変化抽出部3は、滞留が発生している場所の情報についても保持しておく。
【0044】
なお、図3において、ステップの移動による差分122は、検知エリア120外なので外接矩形125の抽出に影響を与えない。よって、長期変化抽出部3が差分を計算する範囲を検知エリア120内に限定してもよい。
【0045】
以上の説明では、長期変化抽出部3が、長期の変化として連結領域123を背景画像と入力画像の同一画素の明度の変化から抽出すると述べたが、あくまでこれは一例であり、背景画像と入力画像それぞれからRGBやHSIのような色の特徴量や、エッジの特徴量などの特徴量を抽出して、同一画素における特徴量の差分から連結領域123を抽出してもよい。また、背景画像としては、一枚の画像を用いる方法以外に、各画素の明度を確率分布のパラメータで記述したものを背景画像とし、背景差分を演算する際には、この各画素の明度を確率分布のパラメータで記述した背景画像と入力画像との差分を演算するような方法をとってもよい。
【0046】
次に、人数推定部7は、図5に示す処理フローによって検知エリア120上の人数を0人、1人、2人以上の区分で推定する。以下、図5の処理ステップS1〜S7、及び図6に示す人数推定時の時間関係を補足する図を適宜引用して、その処理内容を説明する。尚、図6(a)(b)(c)は、それぞれ、検知エリア内に0人、1人、2人以上がいる場合に対応する。
【0047】
S1では、人数推定部7は、長期変化抽出部3での背景差分の抽出結果または滞留の抽出結果に基づき、滞留の最低継続時間である時間τ以上に滞留が継続しているか否かを判定する。滞留が時間τ以上に継続していなければ(S1でno)、検知エリア120上に人物113の滞留はないとみなして0人と推定する(S5)。
【0048】
S1において、滞留が時間τ以上に継続している場合には、処理ステップS2に進む。このときの時間関係は図6(a)(b)(c)の何れかのようになっており、滞留の開始時刻を時刻T2、時刻T2から時間τだけ後を時刻T3とすると、時刻T2から時刻T3の間に滞留の継続期間201が存在する。
【0049】
S2では、人数推定部7は、時刻T2の直前に、S1の滞留箇所に向けて検知エリア120の外(検知エリア120の端)から移動する移動軌跡があるか否かを判定する。
【0050】
尚、S2における判定に用いられる移動軌跡の抽出は、軌跡抽出部6で行われる。検知エリア120の長さと、人物113の最低の移動速度から見積もった、人物113が検知エリア120を通過するのに最も長く要する最長通過時間を時間πとしたとき、時刻T2から時間πだけ遡った時刻T1と時刻T2との間において、軌跡抽出部6が前記移動軌跡を探索する。
【0051】
軌跡抽出部6による移動軌跡の抽出を、人物113がデッキ110上において図3(b)のように倒れた状態で時刻T2から時刻T3まで滞留した場面を例に挙げて説明する。図3(a)が背景画像であり図3(b)が入力画像であるときに、長期変化抽出部3は、長期の変化(背景差分)から、人物113の連結領域123、連結領域123の外接矩形125を抽出している。図7(a)と図7(b)は、時刻T2と時刻T1との間の時刻Taから、時刻T2のまでの間に、人物113がデッキ110の外から矢印117の方向にステップ112の付近まで歩行した状況を示している。
【0052】
図7(a)から図7(b)の間、短期変化抽出部4は、動作周期ごとに短期の変化を抽出し、短期変化蓄積部5は、動作周期ごとの短期変化抽出部4の出力(代表点137)の時系列を蓄積している。軌跡抽出部6は、時刻T2から遡って短期変化蓄積部5に蓄積された代表点137の時系列から対応点を探索することで移動軌跡を抽出する。対応点の探索の方法には、隣接する2時刻の代表点137の最近傍点を探索し、最近傍の2つの代表点137の画像上の座標のずれが許容誤差の範囲内に収まる対応点同士を連結する方法が考えられるが、これに限らない。図7(c)は、軌跡抽出部6が、図7(a)から図7(b)の間の代表点137の移動軌跡153を抽出した例を示している。
【0053】
なお、以上の説明では軌跡抽出部6が代表点137の時系列から移動軌跡153を抽出する方法を述べたが、軌跡抽出部6は代表点137以外のデータから移動軌跡153を求めてもよい。一例としては、非特許文献1では、連結領域133のような2時刻[T−ΔT、T]の人物113の変化(例えば、フレーム間差分)を累積させて、所定の時間の間に物体が移動した領域を特定する方法が記されてあり、これを利用して移動軌跡153を求めることも可能であり、前記実施例に限られるものではない。この場合、短期変化蓄積部5は、代表点137の時系列を蓄積することに代えて、短期の変化(例えばフレーム間差分)の時系列を蓄積するようにしてもよい。
【0054】
例えば、図7に示すように、時刻T1より後の時刻Taから時刻T2の期間に人物113がデッキ110の外からステップ112の付近まで歩行し、時刻T2から時刻T3の期間に、図3に示すように人物113がステップ112の付近で滞留した場面では、図6(b)に示す時間関係となり、時刻T1から時刻T2の期間に図3および図7に示すように検知エリア120の外から外接矩形125まで移動軌跡153が伸びているために、S2の判定はyesとなる。尚、図6(b)では、時刻Taから時刻T2の間に、検知エリア120の外から滞留の箇所まで伸びる移動軌跡153の発生期間202が存在している。
【0055】
一方、図8(a)(b)のように時刻T2から時刻T3の間に、ハンドレール111から影115がデッキ110上に伸びることが継続した場面では、時刻T2から時刻T1まで遡っても、軌跡抽出部6はエスカレータ101付近の照明条件の動揺による影115の動揺によって図8(c)に示すわずかな移動軌跡155を抽出するか、あるいはまったく移動軌跡を抽出しない。よって、S2の判定はnoとなり、人数推定部7はデッキ110内に滞留する人数を0人と推定する(S5)。この場合は、図6(a)に示す時間関係となる。
【0056】
人数推定部7はS2の判定がyesであれば、少なくとも1人以上の人物113が時刻T1から時刻T2の間にデッキ120内に進入し、時刻T2から時刻T3の間に滞留したものと考え、S3に進む。
【0057】
次に、S3では、人数推定部7は、時刻T1から時刻T2の間に、検知エリア120の外からいずれかの外接矩形125に伸びる移動軌跡153が2つ以上あるか否かを判定する。2つ以上あれば、時刻T1から時刻T2の間に2人以上の人物が進入して時刻T2から時刻T3の間に滞留したとみなして、人数推定部7はデッキ110内に滞留する人数を2人以上と推定する(S7)。S3の判定がnoの場合、S4に進む。
【0058】
次に、S4では、人数推定部7は、時刻T2から時刻T3の間に移動軌跡(2人目の人物)が検知エリア120の外から検知エリア120に進入したか否かを判定する。図9(a)(b)は、時刻T2から時刻T3の間に2人目の人物114がデッキ110の外からデッキ110の中に進入した例を示している。S4において、軌跡抽出部6は、S2と同様に時刻T2から時刻T3の間の代表点137の時系列から移動軌跡を探索し、図9(c)のように検知エリア120の外から検知エリア120に進入する2人目の人物114の移動軌跡154が一つでも見つかればS4の判定はyesとなり、時刻T1から時刻T2の間に進入した人物113に加えて、時刻T2から時刻T3の期間に2人目の人物114あるいはそれ以上多くの人物が進入したとみなして、人数推定部7は人数を2人以上と推定する(S7)。この場合の時間関係は、例えば図6(c)のようになる。図6(c)において、203は人物113の移動軌跡153の発生期間で、204は人物114の移動軌跡154の発生期間に相当する。
【0059】
反対に、S4の判定がnoの場合、時刻T2から時刻T3の間に新たな人物114の進入はないと考えて、人数推定部7はデッキ110内に滞留する人数を1人と推定する(S6)。
【0060】
尚、図6(c)では、検知エリア120内に2人以上の場合の一例を示しているが、これに限られず、他のパターンも存在する。例えば、S3で説明したように、時刻T1から時刻T2の間に2人以上の人物が進入して時刻T2から時刻T3の間に滞留した場合は、図6(c)における移動軌跡の発生期間203、204のうち、203のみが存在(但し2人分の移動軌跡が存在)することもありうる。この場合でも、S3により2人以上と判定することが可能である。
【0061】
次に、エスカレータ101が非常に混み合っている場合について図5ではどのような判定が行われるかを説明する。図10(a)(b)は、エスカレータ101が非常に混み合っていて、時刻T2から時刻T3の間に、人物の密集143が、デッキ110上を進んだり立ち止まったりを繰り返しながら、矢印117の方向に脈動的にゆっくりとステップ112に向かって進んでいる場面の例を示している。図10(a)(b)のような場面では、人物の密集143は、デッキ110上の広い範囲に居続けるので、図10(c)のように長期変化抽出部3において長期の変化から抽出された連結領域173の検知エリア120内における外接矩形175は、検知エリア120の広い範囲にまたがり、図5のS1の判定はyesとなる。
【0062】
次にS2について述べると、まず人物の密集143は時刻T1から時刻T2の間も図10(a)(b)と同様にデッキ110上を脈動的に進み続けるので、時刻T1から時刻T2の間に短期変化抽出部4は図示しない連結領域133および代表点137を抽出している。そのような時、人物の密集143から抽出した移動軌跡は、多くの場合、人物の密集143中の人物が移動と停止を繰り返すことによって連結領域133が断続的に表れることによって、図10(d)の移動軌跡163a、163b、163cように短く断片的になる。また、人物の密集143の中の人物が同時に動いた場合には、連結領域133が検知エリア120付近で一塊りになって代表点137が抽出できないことが生じる。S2では、検知エリア120の境界付近の人物の動きの状態によって、移動軌跡163aのように検知エリア120の外から検知エリア120に進入する移動軌跡をとらえることができれば、外接矩形175が検知エリア120の広い範囲に広がっていることより、移動軌跡163aは外接矩形175まで伸びて判定はyesとなりS3に進む。反対に、検知エリア120の境界付近の人物の動きの状態によって、S2において移動軌跡が163bや163cのように検知エリアの中央付近にしかない場合や移動軌跡が全くない場合には、S2の判定はnoになり、人数推定部7は0人と推定する(S5)。
【0063】
S2の判定がyesの場合、次にS3では、移動軌跡163aのような検知エリア120の外から伸びる移動軌跡が時刻T1から時刻T2の間に2つ以上存在すれば、判定はyesとなり人数推定部7は2人以上と推定する(S7)。S3の判定がnoの場合、次にS4では、移動軌跡163aのような検知エリア120の外から伸びる移動軌跡が時刻T2から時刻T3の間に少なくとも1つ存在すれば、判定はyesとなり人数推定部7は2人以上と推定する(S7)。ここで、滞留の最低継続時間である時間τを十分に長くとれば、移動軌跡163aのように検知エリア120の外から伸びるものを確実に抽出して、S4の判定がnoになることの抑止が可能である。
【0064】
以上述べたように人数推定部7は、人物の密集143に対して、S2で0人と誤って判定することはあっても、S4で発報の対象となる1人と判定することはない。なお、人物の密集143に対して、人数推定部7がS2で0人と誤って判定してしまうことは、最長通過時間である時間πを滞留の最低継続時間である時間τと同程度に長くとれば抑止することが可能である。
【0065】
前記の滞留の最低継続時間である時間τはあらかじめ見積もっておく。例えば、S1において人物113が立ち止まって時計を見るなどの正常挙動ではなく倒れているなどの異常挙動をして滞留していると判断できる時間を時間τ1とし、S3で人物の密集143から移動軌跡163aが確実に抽出されるのに十分な長さの時間を時間τ2としたとき、時間τ1と時間τ2の最大値max(τ1,τ2)をもって時間τとする。時間τは地点情報記憶部12に値を記憶しておく。最長通過時間である時間πは、デッキ110の空間での長さを人物113の空間での最低の移動速度で除算するか、検知エリア120の画像での長さを人物113の画像での最低の移動速度で除算することで計算できる。
【0066】
軌跡抽出部6を補足すると、図4(d)のように人物113の差分の連結領域が133aや133bのように2つ以上に分断された場合でも、軌跡抽出部6は連結領域133aや133bの代表点137aや137bの時系列のデータから最近傍点を連結させることで、図4(c)のように人物113の連結領域が分断されない場合と同様に移動軌跡153を抽出できる。このとき、複数の代表点137aや137bの時系列から移動軌跡153が2つ以上抽出される可能性があるが、両者の距離が人物の大きさを考慮した許容誤差以内である移動軌跡153を1つに統合することで1人の人物113から1本の移動軌跡を抽出することが可能となる。
【0067】
次に、滞留発報部8は、人数推定部7が検知エリア120に1人の人物113が滞留していると判定した時に限定して、即ち、0人でも2人以上でもなく、1人のときの滞留であることを特定して警報部9と制御部10の少なくとも一方に発報を出力する。
【0068】
警報部9は、滞留発報部8から発報を受け取ると、警報装置106のライトを明滅させることやスピーカの音声出力などによって、滞留する人物への注意喚起や、エスカレータ101の周囲の人物への救助の要請を行う。更に、警報部9は、滞留発報部8から発報を受け取ると、カメラ103の入力画像をモニタ107へ画面表示させ、あるいは伝送装置108から外部装置への送信を行わせ、あるいは録画装置109を制御して記録を行うよう制御する。
【0069】
ここで警報部9は、滞留の発生に監視員の注意が引き付けられるように、所定周期でカメラ103の入力画像を明滅させるような、画面効果を加えてもよい。また警報部9は、モニタ107へ画面表示する入力画像の上に外接矩形125や移動軌跡153を描画して表示させるようにしてもよい。監視員は移動軌跡153を見ることで、人物113がデッキ110のどこから進入したか、また人物113がデッキ110上をどう移動したかを容易に把握できる。
【0070】
警報部9は、画面描画を行う場合、描画画像あるいは描画画像とカメラ103の入力画像をモニタ107あるいは伝送装置108あるいは録画装置109に出力する。なお、図2の装置構成において、警報部9は、警報装置106、モニタ107、伝送装置108、録画装置109のうち、少なくとも1つ以上の装置があれば、機能を実現することができる。
【0071】
最後に、制御部10は、警報発報部8から発報を受け取ると、エスカレータ101の運行速度を低下させたり、エスカレータ101を緩停止させることで、滞留した人物の事故を防止したり、事故発生時の被害を軽減する。
【0072】
以上述べた機能構成によって、本実施例1では、デッキ110上の滞留を検知するとともに、デッキ110上の人数を0人、1人、2人以上の区分で推定し、デッキ110上の人数が1人の場合の滞留時のみ発報すること、あるいはデッキ110上の人数が1人の場合の滞留に高い重要度を付与して発報することが可能である。なお、本実施例1は、人数推定部7が図5の処理フロー以外の方法により0人、1人、2人以上の区分で人数を推定した場合にも、同様の効果を発揮する。
【0073】
実施例1では、人数推定部7の図5の処理フローにおいて、S3とS4を省いた場合、S1とS2の判定結果から、0人(S5)と、1人(S6)あるいは2人以上(S7)の2区分で人数を推定することができる。前記の0人と1人あるいは2人以上の区分には、滞留が継続した時に(S1でyes)、滞留が図8に示すような影115のような人物113以外によるものか(S5)、人物113によるものか(S6あるいはS7)を判別することが可能になる。前記の0人と1人あるいは2人以上の2区分の人数推定には、滞留に対して発報する監視装置において、影115のような人物113以外の滞留に対して滞留発報部8が発報することを抑止する効果がある。なお、人数推定部7が図5のフロー以外の方法により、前記の0人と1人あるいは2人以上の2区分の人数推定をした場合にも、同様の効果を発揮する。
【0074】
また、実施例1では、人数推定部7の図5の処理フローにおいて滞留が継続した時に(S1でyes)、S2を省いてS1がyesのときにS3に移るようにした場合、S3がyesになった場合およびS3がnoでS4がyesの場合とそれ以外の場合とで、0人(S5)あるいは1人(S6)と、2人以上(S7)の2区分で人数を推定することができる。前記の0人あるいは1人と2人以上の2区分の人数推定には、滞留が継続した時に(S1でyes)、滞留が図10に示すような人物の密集143によるものか(S7)、そうでないのか(S5あるいはS6)を判別することが可能になる。前記の0人あるいは1人と2人以上の区分には、異常挙動による滞留に対して発報する監視装置において、人物の密集143のようなエスカレータ101の利用者が多く特に異常事象でない状況において、滞留発報部8が発報することを抑止する効果がある。なお、人数推定部7が図5の処理フロー以外の方法により前記の0人あるいは1人と2人以上の2区分の人数推定をした場合にも、同様の効果を発揮する。
【0075】
実施例1において、人数推定部7は、滞留が発生した時に、前記監視エリアの外から滞留箇所までの移動軌跡153あるいは、前記移動軌跡153と長期の変化の位置あるいは外接矩形125の位置情報から、滞留している検知対象(人物113)の挙動の種別を判別する、図示しない挙動判別部を備える。滞留発報部8は、挙動判別部で判別した結果に応じて、例えば警報部9の画面出力に描画するなどの制御を行ってもよい。図11(a)は、移動軌跡153がステップ112付近まで伸びていて、外接矩形153がステップ112付近からデッキ110の手前にあることより、人物113がステップ112の付近で倒れの挙動をしていると滞留発報部8が判定した場面において、画面出力301上にステップ近くで倒れの文字列311aを出力した例を示している。また、図11(b)は、移動軌跡153がハンドレール11付近まで伸びていて、外接矩形125がハンドレール111にかかっていることより、人物113がハンドレール111にいたずらの挙動をしていると滞留発報部8が判定した場面において、画面出力301上にハンドレールいたずらの文字列311bを出力した例を示している。また、312は周囲に人がいなく危険であることを監視員に喚起する注意文の例である。312の文字列の文面(一人で危険)はあくまで例であり、他のものでもよい。なお、図11(a)および(b)において、文字列311aおよび文字列311b以外の構成要素、外接矩形125、移動軌跡153、文字列312は必須でないので省いてもよい。
【0076】
更に、実施例1において、滞留発報部8は発報に重要度を付加して、人数推定部7が1人と推定した場合に高い重要度を付加し、人数推定部7が2人以上と推定した場合に低い重要度を付加して発報するようにしてもよい。滞留発報部8が発報に重要度を付加する場合、警報部9は警報装置106に対して、重要度の高いあるいは低いに応じたスピーカの音声出力やライトの明滅パターンを指示するか、あるいは低い重要度のときにはスピーカの音声出力やライトの明滅パターンを出力しないようにする。また、滞留発報部8が発報に重要度を付加する場合、警報部9は警報装置106に対して、制御装置105に重要度の高いあるいは低いに応じた運行の制御をおこなうか、重要度が高い場合にのみエスカレータ101の運行を制御するようにする。
【0077】
また、滞留発報部8が発報に重要度を付加する場合、警報部9は画面出力301上の文字列312の内容を重要度に応じて切り替えるあるいは重要度が高い場合のみ描画するようにしてよい。
【0078】
また、実施例1において、短期変化抽出部4は、連結領域133の代表辺136が検知エリア120内に収まる場合と収まらない場合とで、連結領域133を抽出した人物113がデッキ110の内側にいるのか外側にいるのか判定してもよい。例として、図12(a)に、長い影がついた人物113pが、矢印117pの方向にデッキ110の横を通り過ぎる場面、図12(b)に、図12(a)の場面において短期変化抽出部4が抽出した連結領域133p、133pの外接矩形135p、135pの代表辺136p、136pの中心の代表点137pを、それぞれ示す。また、図12(c)に、人物113qが、矢印117qの方向にデッキ110の手前を通り過ぎる場面、図12(d)に、図12(c)の場面において短期変化抽出部4が抽出した連結領域133q、133qの外接矩形135q、135qの代表辺136q、136qの中心の代表点137qを、それぞれ示す。代表辺136pおよび代表辺136qは、人物113pおよび人物113qがデッキ110の外にいるために、どちらも検知エリア120から大きくはみ出している。一方で、図4(c)のように人物113がデッキ110上にいるときは、代表辺136はデッキ110上に収まっている。よって、短期変化抽出部4は、代表辺136が検知エリア120内に収まる場合と収まらない場合とで、連結領域133を抽出した人物113がデッキ110の内側にいるのか外側にいるのかの判定が可能である。
【0079】
実施例1において、この代表点137pおよび137qは、軌跡抽出部6においてデッキ外に存在する人物から抽出した代表点137を短期変化蓄積部5に蓄積してしまうと、軌跡抽出部6はデッキ110外の人物113から誤った移動軌跡153を抽出してしまう。よって、短期変化抽出部4は代表辺136が検知エリア120からはみ出ている場合に代表点137を棄却すれば、デッキ110外の人物113の代表点137が短期変化蓄積部5に蓄積されることを防止できる。尚、短期変化蓄積部5が短期の変化そのものを蓄積する場合には、短期変化抽出部4は、デッキ110外(検知エリア120外)に存在する人物に対応する短期の変化を棄却し、短期変化蓄積部5に蓄積されるのを防止する。
【0080】
実施例1において、カメラ103はデッキ110の付近を視野内に捉えることができれば、図2における103bのようにデッキ110の真上付近から捉える設置条件あるいは、103cのようにデッキ110の斜め前からからデッキ110の付近を捉える設置条件を適用してもよい。
【0081】
また、カメラ103bのようにデッキ110の真上付近から捉える設置条件では、人物113の側面がほとんど入力画像上にみえなくなるので、人物113の縦方向の長さがカメラ103の入力画像と大きく異なる。よって、監視装置を複数地点においてカメラ103、103b、103cのように異なる画角で適用する場合、入力画像上の人物113の画像上の大きさや移動速度、検知エリア120の大きさが地点毎に変わるので、地点情報記憶部12はあらかじめ画角毎の情報を記憶しておき、カメラ103を設置する画角に合わせて情報を切り替えるようにしてもよい。あるいは、モニタ107にユーザインタフェースを設けて監視員からカメラ103の画角に関する情報を受け取り、監視員から受け取った画角に関する情報に応じて地点情報記憶部12内の情報を切り替えるか微調整するようにしてもよい。
【0082】
実施例1において、非特許文献2に示された時空間特徴による背景モデルでステップ112のような可動部の動きをあらかじめ学習しておき、図4(c)に示すような短期変化抽出部4における連結領域132、および図3(c)に示すような長期変化抽出部3による連結領域122を、ステップ112による定常的な変化として判断し、不要な情報として捨てることで、差分として抽出することを抑止することができる。前記時空間勾配による動的な背景モデルを短期変化抽出部4に適用した場合、人物113がステップ112を逆流した場合にも移動軌跡153を抽出し、エスカレータ112が下りで人物113がステップ112からデッキ110に進入したときに移動軌跡153を抽出することができる。
【0083】
また、長期変化抽出部3において、連結領域123がデッキ110からはみでた部分を含んだ外接矩形125を抽出できる。前記デッキ110からはみでた部分を含んだ外接矩形125を抽出できれば、図11(b)のように人物113がデッキ110からはみ出たときにも、外接矩形125を人物113の全身をカバーするように抽出して、警報部9の描画を見易くできる。
【実施例2】
【0084】
本発明の実施例2の機能ブロック図を図13に示す。図13において、画像取得部1、軌跡抽出部6、人数推定部7、滞留発報部8、警報部9、制御部10、検知対象情報記憶部11、地点情報記憶部12は実施例1と同じ機能をはたす。また、エスカレータに適用した場合の装置構成例を図14に示す。
【0085】
図14において、センサ203はなんらかの計測原理により人物113の有無を検知し、同時に人物113のデッキ110付近での場所に関係した情報を出力可能なセンサであり、デッキ110上の少なくとも一部をセンシング範囲に捉え、所定の動作周期で信号を出力している。
【0086】
図13において、センシング部23は、所定の取り込み周期でセンサ203から信号を受け取り、長期変化抽出部3あるいは短期変化抽出部4の少なくとも一方に出力する。センサ203の計測原理には、レーザレーダやミリ波レーダなどによる測距離情報と設置情報から、地上面から所定の高さがある物体を人物113として抽出すると同時に測距離情報から人物113の場所を特定する方法や、指向性をもった感熱センサで体温に相当した温度の部分から人物113を検出しての場所を特定する方法が例に挙げられるが、この例に限らない。また、センサ203には、顔認識のように1枚の入力画像から人物113を検出し位置を特定するパターン認識を含む。センサ203がパターン認識の場合、カメラ103の入力画像を信号処理の入力としてよい。
【0087】
図13の機能構成において、センシング部23は、センサ203により検出した人物113の検知情報を、長期の変化を長期変化抽出部3に出力するか、短期の変化を短期変化蓄積部5に出力するかの、少なくとも一方を行う。
【0088】
長期変化抽出部3は、実施例1の方法による長期の変化の抽出、あるいはセンシング部23からの長期の変化の受信の少なくともどちらか一方を行う。実施例2では、長期変化抽出部3は前記実施例1の方法による長期の変化の抽出を行う場合、実施例1と同じ背景作成部2を設ける。
【0089】
短期変化蓄積部5は、実施例1の方法による短期の変化の、あるいはセンシング部23からの短期の変化の受信の少なくともどちらか一方を行う。実施例2では、短期変化抽出部4が前記実施例1の方法による短期の変化の抽出を行う場合、実施例1と同じ短期変化抽出部3を設ける。
【0090】
以上述べたように、実施例2では、実施例1の方法によって抽出した人物113の長期の変化および短期の変化に加えて、センサ203の信号から人物113の長期の変化あるいは短期の変化の少なくとも一方が抽出可能である。たとえば、カメラ103が可視光のカメラの場合、デッキ110上の特定の場所で外光が強く反射すれば実施例1の構成では人物113の長期の変化および短期の変化を安定して抽出することは困難であるが、実施例2ではレーザレーダのような外光の影響を受けにくいセンサをセンサ203とすれば、少なくともデッキ110上の一部の範囲を人物113の長期の変化あるいは短期の変化の抽出を補足して監視装置の全体の信頼度を向上させることができる。
【0091】
また、実施例2では図15の検知エリア190のようにデッキ110とステップ112の境界のような巻き込まれによる事故が発生しやすい特定の場所の付近を、高い精度のセンサ203で捉えておけば、検知エリア190の長期の変化を確実に捉えて、監視装置の全体の信頼度を向上させることができる。また、検知エリア190を捉えるセンサ203を測距離型のセンサにすれば、人物113が図3(b)のように倒れている場合や、図7(b)の位置にて立ち続けている場合とで、人物113の挙動を判別することができる。
【実施例3】
【0092】
本発明の実施例3に係る監視装置の装置構成を図16に示す。図16において、通路383に設けられた扉381、扉381に備え付けられた認証装置382、扉381および認証装置382の付近に設けられた監視エリア310、および監視エリア310の付近を視野内にとらえたカメラ103、扉381の脇に備え付けられた制御装置105および警報装置106、画像処理装置104、モニタ107、伝送装置108、録画装置109を示す。図16において通路383を往来する人物113を示している。
【0093】
図16において、扉381は開閉により人物113の通行をコントロールし、認証装置382はカードキーや指紋認証などの所定の認証手段により、認証手段で通行許可を与えた人物113に対して扉381が開くことを許可する。制御装置105は、扉381の開閉を制御し、警報装置106は監視エリア310付近の人物に向けて警報ができるライトあるいはスピーカを有する。104、107、108、109の各装置は、図1に示す実施例1の同一番号の装置と同じ機能を果たす。なお、実施例3では、監視エリア310内の特定部分に検知エリア390を設けたセンサ203を備えてもよい。
【0094】
監視エリア310内に極端に長い時間に滞留する人物は、扉381の通行許可がないにも関わらず、認証装置382あるいは扉381に工作、あるいは通行許可を有す人物が来るのを待って通行許可をもった人物が扉381を開けた瞬間に不正に扉381を通行することを企んでいる可能性があり、異常行動として検知すべきである。また、監視エリア310内に人物が1人しかいない場合は、不正な扉381の通過を目撃する周囲の人物がいなくて危険度が高い。
【0095】
よって、本実施例3では、センサ203がない場合には図1に示す実施例1の機能構成によって、またセンサ203がある場合には図13に示す実施例2の機能構成によって、監視エリア310上の滞留を検知するとともに、監視エリア310上の人数を0人、1人、2人以上の区分で推定し、監視エリア310内の人数が1人で滞留している場合にのみ発報すること、あるいは監視エリア310内の人数が1人の場合の滞留に高い重要度を付与して発報することで、1人のときの滞留であることを特定して注意を促すことができ、安全管理及びセキュリティの面からも効果的に監視することができる。
【符号の説明】
【0096】
1・・・画像取得部
2・・・背景作成部
3・・・長期変化抽出部
4・・・短期変化抽出部
5・・・短期変化蓄積部
6・・・軌跡抽出部
7・・・人数推定部
8・・・滞留発報部
9・・・警報部
10・・・制御部
11・・・検知対象情報記憶部
12・・・地点情報記憶部
101・・・エスカレータ
103,103a,103b・・・カメラ
110・・・乗り場デッキ
113・・・人物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視エリア付近の入力画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段からの入力画像を処理して、監視エリア内の検知対象の人数を0人、1人、2人以上の区分のうち1人か1人以外かを推定する人数推定手段と、
前記監視エリア内の推定人数が1人のときの滞留を特定して外部に発報する滞留発報手段とを備えたことを特徴とする監視装置。
【請求項2】
監視エリア付近の入力画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段からの入力画像を用いて監視エリア内における検知対象の滞留を検知する滞留検知手段と、
前記監視エリア内で検知対象が移動する軌跡を抽出する移動軌跡抽出手段と、
前記滞留検知手段からの滞留情報及び前記移動軌跡抽出手段からの移動軌跡情報を用いて、前記監視エリア内の検知対象の人数を0人、1人、2人以上の区分のうち1人か1人以外かを推定する人数推定手段と、
前記監視エリア内の推定人数が1人のときの滞留を特定して外部に発報する滞留発報手段とを備えたことを特徴とする監視装置。
【請求項3】
監視エリア付近の入力画像を取得する画像取得手段と、
背景画像を作成する背景作成部、長期の変化として前記入力画像と前記背景画像との間で変化している部分を抽出するとともに前記長期の変化から滞留の場所と時期を抽出する長期変化抽出部、短期の変化として2時刻以上の前記入力画像から画像上で短期に変化している部分を抽出する短期変化抽出部、及び前記短期の変化の時系列または前記短期の変化から抽出された情報を蓄積する短期変化蓄積部とから、前記監視エリア内における検知対象の滞留を検知する滞留検知手段と、
前記短期の変化の時系列または前記短期の変化から抽出された情報の時系列の蓄積から移動軌跡を抽出する移動軌跡抽出手段と、
前記滞留と前記移動軌跡それぞれが発生した時期と場所から、前記監視エリア内の検知対象の人数を0人、1人、2人以上の区分のうち1人か1人以外かを推定する人数推定手段と、
前記監視エリア内の推定人数が1人のときの滞留を特定して外部に発報する滞留発報手段とを備えたことを特徴とする監視装置。
【請求項4】
請求項1〜3記載のいずれかの監視装置において、前記滞留発報手段からの出力に応じて、画面出力あるいは音声出力の少なくとも一方により警報する警報手段又は前記監視エリア付近の装置を制御する制御手段の少なくとも一方を備えることを特徴とする監視装置。
【請求項5】
請求項2又は3記載の監視装置において、前記人数推定手段は、前記滞留の検知が継続した直前において前記監視エリアの外から前記滞留の場所まで移動軌跡が検知されない場合に、前記監視エリア内の人数を0人と推定し、残りの場合の人数を1人あるいは2人以上と推定することを特徴とする監視装置。
【請求項6】
請求項2又は3記載の監視装置において、前記人数推定手段は、前記滞留の検知が継続した直前において前記監視エリアの外から前記滞留の場所まで移動軌跡が検知されるとともに前記監視エリア内に前記滞留の検知が継続している間に前記監視エリアの外から前記監視エリア内に進入した前記移動軌跡が1つ以上検知された場合、あるいは前記監視エリア内に前記滞留が継続した直前に前記監視エリアの外から前記監視エリア内に進入した前記移動軌跡が2つ以上検知された場合には、前記監視エリア内の検知対象を2人以上と推定し、残りの場合の人数を0人あるいは1人と推定することを特徴とする監視装置。
【請求項7】
請求項3記載の監視装置において、前記短期の変化から抽出された情報は、前記短期の変化から抽出された連結領域の外接矩形の代表辺の代表点であることを特徴とする監視装置。
【請求項8】
請求項3記載の監視装置において、前記短期変化抽出部は、前記短期の変化、または、前記短期の変化から抽出された情報の位置から、前記短期の変化を抽出した検知対象が前記監視エリア内にいるか監視エリア外にいるのかを判別し、前記監視エリア外にいる場合には、対応する前記短期の変化または対応する前記短期の変化から抽出された情報を棄却することを特徴とする監視装置。
【請求項9】
請求項4記載の監視装置において、前記警報手段は、前記滞留発報手段からの出力に応じて、前記監視エリアの外から滞留箇所までの移動軌跡を画面出力することを特徴とする監視装置。
【請求項10】
請求項2又は請求項3記載の監視装置において、前記人数推定部は、前記滞留が発生した時に、前記監視エリアの外から滞留箇所までの移動軌跡、又は前記移動軌跡と前記長期の変化の位置あるいは外接矩形の位置情報から、滞留している検知対象の挙動の種別を判定する挙動判別手段を備えたことを特徴とする監視装置。
【請求項11】
請求項1〜3記載のいずれかの監視装置において、前記監視エリアの少なくとも一部を捉えるセンサを前記画像取得手段とは別に備え、前記人数推定手段は、前記画像取得手段からの入力画像と前記センサからのエリア情報を用いて、前記監視エリア内の検知対象の人数を推定することを特徴とする監視装置。
【請求項12】
請求項3記載の監視装置において、前記監視エリアの少なくとも一部を捉えるセンサを前記画像取得手段とは別に備え、前記センサが前記監視エリア内の検知対象にかかわる長期の変化あるいは短期の変化を抽出して、前記背景作成部による長期の変化に置き換えるか、前記短期変化抽出部による短期の変化に置き換えるか、前記背景作成部による長期の変化を補うか、前記短期変化抽出部による短期の変化を補うか、少なくともいずれか一つを行うことを特徴とする監視装置。
【請求項13】
請求項1〜3記載のいずれかの監視装置において、前記画像取得手段の監視エリアをエスカレータのデッキ部に設定することにより、前記エスカレータの監視を行うことを特徴とする監視装置。
【請求項1】
監視エリア付近の入力画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段からの入力画像を処理して、監視エリア内の検知対象の人数を0人、1人、2人以上の区分のうち1人か1人以外かを推定する人数推定手段と、
前記監視エリア内の推定人数が1人のときの滞留を特定して外部に発報する滞留発報手段とを備えたことを特徴とする監視装置。
【請求項2】
監視エリア付近の入力画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段からの入力画像を用いて監視エリア内における検知対象の滞留を検知する滞留検知手段と、
前記監視エリア内で検知対象が移動する軌跡を抽出する移動軌跡抽出手段と、
前記滞留検知手段からの滞留情報及び前記移動軌跡抽出手段からの移動軌跡情報を用いて、前記監視エリア内の検知対象の人数を0人、1人、2人以上の区分のうち1人か1人以外かを推定する人数推定手段と、
前記監視エリア内の推定人数が1人のときの滞留を特定して外部に発報する滞留発報手段とを備えたことを特徴とする監視装置。
【請求項3】
監視エリア付近の入力画像を取得する画像取得手段と、
背景画像を作成する背景作成部、長期の変化として前記入力画像と前記背景画像との間で変化している部分を抽出するとともに前記長期の変化から滞留の場所と時期を抽出する長期変化抽出部、短期の変化として2時刻以上の前記入力画像から画像上で短期に変化している部分を抽出する短期変化抽出部、及び前記短期の変化の時系列または前記短期の変化から抽出された情報を蓄積する短期変化蓄積部とから、前記監視エリア内における検知対象の滞留を検知する滞留検知手段と、
前記短期の変化の時系列または前記短期の変化から抽出された情報の時系列の蓄積から移動軌跡を抽出する移動軌跡抽出手段と、
前記滞留と前記移動軌跡それぞれが発生した時期と場所から、前記監視エリア内の検知対象の人数を0人、1人、2人以上の区分のうち1人か1人以外かを推定する人数推定手段と、
前記監視エリア内の推定人数が1人のときの滞留を特定して外部に発報する滞留発報手段とを備えたことを特徴とする監視装置。
【請求項4】
請求項1〜3記載のいずれかの監視装置において、前記滞留発報手段からの出力に応じて、画面出力あるいは音声出力の少なくとも一方により警報する警報手段又は前記監視エリア付近の装置を制御する制御手段の少なくとも一方を備えることを特徴とする監視装置。
【請求項5】
請求項2又は3記載の監視装置において、前記人数推定手段は、前記滞留の検知が継続した直前において前記監視エリアの外から前記滞留の場所まで移動軌跡が検知されない場合に、前記監視エリア内の人数を0人と推定し、残りの場合の人数を1人あるいは2人以上と推定することを特徴とする監視装置。
【請求項6】
請求項2又は3記載の監視装置において、前記人数推定手段は、前記滞留の検知が継続した直前において前記監視エリアの外から前記滞留の場所まで移動軌跡が検知されるとともに前記監視エリア内に前記滞留の検知が継続している間に前記監視エリアの外から前記監視エリア内に進入した前記移動軌跡が1つ以上検知された場合、あるいは前記監視エリア内に前記滞留が継続した直前に前記監視エリアの外から前記監視エリア内に進入した前記移動軌跡が2つ以上検知された場合には、前記監視エリア内の検知対象を2人以上と推定し、残りの場合の人数を0人あるいは1人と推定することを特徴とする監視装置。
【請求項7】
請求項3記載の監視装置において、前記短期の変化から抽出された情報は、前記短期の変化から抽出された連結領域の外接矩形の代表辺の代表点であることを特徴とする監視装置。
【請求項8】
請求項3記載の監視装置において、前記短期変化抽出部は、前記短期の変化、または、前記短期の変化から抽出された情報の位置から、前記短期の変化を抽出した検知対象が前記監視エリア内にいるか監視エリア外にいるのかを判別し、前記監視エリア外にいる場合には、対応する前記短期の変化または対応する前記短期の変化から抽出された情報を棄却することを特徴とする監視装置。
【請求項9】
請求項4記載の監視装置において、前記警報手段は、前記滞留発報手段からの出力に応じて、前記監視エリアの外から滞留箇所までの移動軌跡を画面出力することを特徴とする監視装置。
【請求項10】
請求項2又は請求項3記載の監視装置において、前記人数推定部は、前記滞留が発生した時に、前記監視エリアの外から滞留箇所までの移動軌跡、又は前記移動軌跡と前記長期の変化の位置あるいは外接矩形の位置情報から、滞留している検知対象の挙動の種別を判定する挙動判別手段を備えたことを特徴とする監視装置。
【請求項11】
請求項1〜3記載のいずれかの監視装置において、前記監視エリアの少なくとも一部を捉えるセンサを前記画像取得手段とは別に備え、前記人数推定手段は、前記画像取得手段からの入力画像と前記センサからのエリア情報を用いて、前記監視エリア内の検知対象の人数を推定することを特徴とする監視装置。
【請求項12】
請求項3記載の監視装置において、前記監視エリアの少なくとも一部を捉えるセンサを前記画像取得手段とは別に備え、前記センサが前記監視エリア内の検知対象にかかわる長期の変化あるいは短期の変化を抽出して、前記背景作成部による長期の変化に置き換えるか、前記短期変化抽出部による短期の変化に置き換えるか、前記背景作成部による長期の変化を補うか、前記短期変化抽出部による短期の変化を補うか、少なくともいずれか一つを行うことを特徴とする監視装置。
【請求項13】
請求項1〜3記載のいずれかの監視装置において、前記画像取得手段の監視エリアをエスカレータのデッキ部に設定することにより、前記エスカレータの監視を行うことを特徴とする監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−14302(P2012−14302A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148413(P2010−148413)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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