説明

目標追跡装置及び目標追跡方法

【課題】外乱の影響によって、撮像器の指向方向にずれが発生することを抑制する。
【解決手段】実施形態によれば、撮像部11にて撮像視野内の目標に関する画像情報を得て、この画像情報を画像処理部にて画像処理することで撮像部の指向方向と目標の方向との差異となる目標方向情報を得て、駆動部12、14にて目標方向情報及び当該駆動部の駆動に関するセンサ情報に基づいて撮像部11の視軸方向を目標の方向に指向させて追跡する目標追跡装置において、センサ情報に基づいて、駆動部自体に内在する外乱の量を算出する外乱量演算手段143と、この外乱量演算手段で得られた外乱の量に基づいて、当該外乱が印加された場合に発生する撮像部の指向方向のずれ量を算出するずれ量算出手段144と、画像処理部から出力される目標方向情報をずれ量で補正する補正手段とを備えた目標追跡装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、撮像装置を用いて移動目標を撮影し、その撮像情報から移動目標を追跡する目標追跡装置及び目標追跡方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、目標追跡装置にあっては、撮像器を搭載して、その撮像画像を解析することで移動目標の検出・追跡を行うものがある。この目標追跡装置では、目標物の方向にできるだけ正確に撮像器を含む搭載機器を指向させることが求められる。そのために搭載機器を駆動する機構を設けるが、その駆動装置自体に内在する外乱(例:駆動モータのコギングトルク、角度・角速度センサの誤差)の影響によって、撮像器の指向方向にずれが発生する場合がある。
【0003】
特に、目標物の方向に対して撮像器を高精度で指向させる場合には、このような指向方向のずれを制御によって補正することが行われている。例えば、モータ駆動装置におけるトルクリップルや推力リップルを抑制するために、モータ回転角やモータ電流を基に外乱による影響を補正するトルクを算出し、それに応じてモータを駆動するアンプに補正信号を印加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4047747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、目標物の方向に対して撮像器を指向させる制御方式として、直接的に指向方向を制御(位置制御)するのではなく、目標物の方向と撮像器の指向方向との差に応じたトルクをモータで発生させるような速度制御を行う場合、目標物の方向と撮像器の指向方向との差異が微小な場合にはモータが発生するトルクは小さく(両者が一致する場合はゼロ)、そこに、上記外乱が作用した場合には、それと釣合う駆動トルクをモータに発生させる必要があり、定常偏差(目標追跡誤差)が発生する。上記技術のようなモータのトルク補正を行うことによって、目標追跡誤差を減少させることは可能であるが、撮像器の指向方向を直接的には制御していないため、駆動装置の応答遅れ等によって目標追跡誤差を十分に低減させることは困難である。
【0006】
本発明の目的は、外乱の影響によって、撮像器の指向方向にずれが発生することを抑制でき、目標の方向に対して撮像器を高精度で指向させ得る目標追跡装置及び目標追跡方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、撮像部にて撮像視野内の目標に関する画像情報を得て、この画像情報を画像処理部にて画像処理することで撮像部の指向方向と目標の方向との差異となる目標方向情報を得て、駆動部にて目標方向情報及び当該駆動部の駆動に関するセンサ情報に基づいて撮像部の視軸方向を目標の方向に指向させて追跡する目標追跡装置において、センサ情報に基づいて、駆動部自体に内在する外乱の量を算出する外乱量演算手段と、この外乱量演算手段で得られた外乱の量に基づいて、当該外乱が印加された場合に発生する撮像部の指向方向のずれ量を算出するずれ量算出手段と、画像処理部から出力される目標方向情報をずれ量で補正する補正手段とを備えた目標追跡装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る目標追跡装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同第1の実施形態に係る目標追跡装置の具体的構成を示す回路ブロック図である。
【図3】同第1の実施形態における外乱なし/補正なしの撮像器画像を示す図である。
【図4】同第1の実施形態における外乱あり/補正なしの撮像器画像を示す図である。
【図5】同第1の実施形態における外乱あり/補正ありの撮像器画像を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る目標追跡装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示した補正テーブルの記憶内容の一例を示す図である。
【図8】第3の実施形態に係る目標追跡装置の構成を示すブロック図である。
【図9】第3の実施形態に係る外乱量算出部の制御処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る目標追跡装置の構成を示すブロック図である。
【0010】
図1において、符号11は撮像器で、駆動装置12によって例えば高低方向(AZ軸回り)及び方位方向(EL軸回り)に回動自在に支持される。撮像器11は、移動する目標物Tを撮像し、得られる画像データを画像処理装置13に出力する。
【0011】
画像処理装置13は、撮像器11から送られた画像データに基づいて、撮像器11の指向方向と目標物Tの方向との差異となる目標方向情報を算出し、この目標方向情報を駆動制御装置14に出力する。
【0012】
駆動制御装置14は、上記目標方向情報と駆動装置12からの位置・速度・角度・角速度等のセンサ情報に基づいて駆動信号を生成する。この駆動信号は、駆動装置12に供給され、撮像器11の撮像視野、つまり視軸方向を目標中心に位置させる制御に供される。
【0013】
図2は、上記目標追跡装置の具体的構成を示す回路ブロック図である。
撮像器11で得られた画像データは、画像処理装置13の目標方向検出部131に出力される。目標方向検出部131は、画像データから目標方向座標を検出し、この目標方向座標を加算部132を介して駆動制御装置14の角速度制御系141に出力する。
【0014】
角速度制御系141では、目標方向座標と駆動装置12の駆動機構121から得られる位置・速度・角度・角速度等の情報とに基づいて、駆動装置12の各軸のモータ122に対する速度指令データが生成される。この速度指令データは、アンプ142で増幅されて各軸のモータ122に供給され、モータ122の駆動に供される。これにより、駆動機構121によって撮像器11は移動する目標物Tを追跡するように指向方向が制御される。
【0015】
従って、図3に示すように、撮像器11の指向方向と目標物Tの方向と撮像器基準指向方向とが一致することとなる。
【0016】
一方、モータ122または駆動機構121において、外乱トルク(例えばコキングトルク)が加えられた場合、図4に示すように、撮像器11の指向方向及び撮像器基準指向方向が目標物Tの方向とずれてしまうことになる。
【0017】
そこで、本第1の実施形態では、駆動制御装置14に、外乱量算出部143と、指向方向ずれ算出部144と、補正手段としての加算部145とを備えるようにしている。外乱量算出部143は、駆動機構121から出力されるセンサ信号に基づいて、駆動装置12自体に内在する外乱の量を算出する。
【0018】
指向方向ずれ算出部144は、外乱量算出部143で算出された外乱量に基づいて、当該外乱が印加された場合に発生する撮像器11の指向方向のずれ量を算出する。加算部145は、上記指向方向ずれ算出部144で算出されたずれ量を撮像器追跡原点座標に加算する。この加算値は、画像処理装置13の加算部132により目標方向座標に加えられる。すると、図5に示すように、撮像器基準指向方向を外乱トルクによる指向方向のずれ量分ずらした状態で、撮像器11の指向方向と目標物Tの方向を一致させることができる。
【0019】
以上のように上記第1の実施形態では、駆動制御装置14において、駆動装置12から得られるセンサ信号を利用して、駆動装置12自体に内在する外乱の量を算出し、この外乱量に基づいて外乱が印加された場合に発生する撮像器11の指向方向のずれ量を算出し、このずれ量で画像処理装置13で得られる目標方向情報を補正するようにしている。
【0020】
従って、外乱の影響による撮像器11の指向方向のずれを抑制でき、目標物Tの方向に対して撮像器11を高精度で指向させることができる。
【0021】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係わる目標追跡装置の構成を示す回路ブロック図である。なお、図6において、上記図2と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0022】
第2の実施形態では、指向方向ずれ算出部144に代えて、補正テーブル146を設けるようにしている。ここでは、計測したセンサ情報に対して外乱の量が一意に定まり、そのばらつきが小さい(再現性が良い)場合に、計測するセンサ情報(例えば、駆動機構角度)に対する外乱印加時の撮像器11の指向方向のずれによる補正量を予め算出しておくようにしている。
【0023】
補正テーブル146には、図7に示すように、センサ情報と撮像器横方向及び縦方向それぞれへのずれ補正量X及びYとの対応関係を表すデータが記憶されている。すなわち、外乱量算出部143は、センサ情報(駆動機構角度)θ1に対応するずれ補正量(X1,Y1)を補正テーブル146から読み出して加算部145に出力する。これにより、補正処理に要する演算負荷を低減できる。
【0024】
以上のように上記第2の実施形態では、駆動制御装置14に補正テーブル146を設けておくことで、補正テーブル146に記憶されたセンサ情報(駆動機構角度)に対応するずれ補正量を用いて、簡単な手順により目標方向情報を補正するようにしている。従って、補正処理に要する演算負荷を低減できる。
【0025】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態に係わる目標追跡装置の構成を示す回路ブロック図である。なお、図8において、上記図2と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0026】
第3の実施形態では、指向ずれ量算出部148において、アンプ142に流れる電流を検出し、この電流を利用してモータ駆動トルクを算出し、モータ駆動トルクの大きさにより、目標方向情報の補正処理の実行・停止を制御するようにした。
【0027】
上記指向ずれ量算出部148は、目標物Tを追跡する際に、図9の制御処理手順を実行する。
【0028】
まず、上記指向ずれ量算出部148は、アンプ142に流れる電流を検出し(ステップST8a)、このアンプ142の電流に基づいて、モータ駆動トルクを算出する(ステップST8b)。
【0029】
続いて、指向ずれ量算出部148は、外乱量算出部143で算出された外乱量の大きさと、ステップST8bにて算出されたモータ駆動トルクの大きさとを比較して、モータ駆動トルクの大きさが外乱量の大きさより大きいか否かの判断を行う(ステップST8d)。ここで、モータ駆動トルクの大きさが外乱量の大きさ以下の場合(No)、指向ずれ量算出部148は、外乱量算出部143で算出された外乱量に基づいて、当該外乱が印加された場合に発生する撮像器11の指向方向のずれ量を算出し、加算部145に出力する(ステップST8e)。
【0030】
一方、モータ駆動トルクの大きさが外乱量の大きさより大きい場合(Yes)、指向ずれ量算出部148は補正値を0として加算部145に出力する(ステップST8f)。
【0031】
以上のように第3の実施形態では、指向ずれ量算出部148において、アンプ142の電流を利用して予めモータ駆動トルクを算出し、このモータ駆動トルクの大きさが外乱量の大きさより小さい場合にのみ、目標方向情報の補正処理を実行させるようにしているので、目標方向情報の補正における信頼性を高めることができる。
【0032】
(その他の実施形態)
各コギングトルクのように、モータ角度に依存して大きさが決まる外乱トルクについて、モータ角度から外乱トルクを算出するようにしてもよい。
【0033】
上記実施形態以外において、駆動制御装置14から画像処理装置13へセンサ信号を送信し、画像処理装置13にて外乱量の算出、外乱による撮像器11の指向方向のずれの算出、及び目標方向情報の補正を行うようにしてもよい。
【0034】
その他、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0035】
11…撮像器、12…駆動装置、13…画像処理装置、14…駆動制御装置、131…目標方向検出部、141…角速度制御系、142…アンプ、143…外乱量算出部、144…指向方向ずれ算出部、145…加算部、146…補正テーブル、148…指向方向ずれ算出部、T…目標物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部にて撮像視野内の目標に関する画像情報を得て、この画像情報を画像処理部にて画像処理することで前記撮像部の指向方向と前記目標の方向との差異となる目標方向情報を得て、駆動部にて前記目標方向情報及び当該駆動部の駆動に関するセンサ情報に基づいて前記撮像部の視軸方向を前記目標の方向に指向させて追跡する目標追跡装置において、
前記センサ情報に基づいて、前記駆動部自体に内在する外乱の量を算出する外乱量演算手段と、
この外乱量演算手段で得られた外乱の量に基づいて、当該外乱が印加された場合に発生する前記撮像部の指向方向のずれ量を算出するずれ量算出手段と、
前記画像処理部から出力される目標方向情報を前記ずれ量で補正する補正手段とを具備したことを特徴とする目標追跡装置。
【請求項2】
前記ずれ量算出手段は、前記外乱量と前記ずれ量とを対応付けたテーブルを備え、前記外乱量に対応するずれ量を前記テーブルから読み出して前記補正手段に出力することを特徴とする請求項1記載の目標追跡装置。
【請求項3】
前記ずれ量算出手段は、
モータ駆動トルクを算出するトルク算出手段と、
このトルク算出手段により求められたモータ駆動トルクの大きさと前記外乱量演算手段で得られた外乱量の大きさとを比較し、前記モータ駆動トルクの大きさが前記外乱量の大きさより小さい場合にのみ、前記補正手段に補正処理を実行させる制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の目標追跡装置。
【請求項4】
前記外乱量演算手段、前記ずれ量算出手段及び前記補正手段は、前記画像処理部に備えられることを特徴とする請求項1記載の目標追跡装置。
【請求項5】
撮像部にて撮像視野内の目標に関する画像情報を得て、この画像情報を画像処理部にて画像処理することで前記撮像部の指向方向と前記目標の方向との差異となる目標方向情報を得て、駆動部にて前記目標方向情報及び前記駆動部の駆動に関するセンサ情報に基づいて前記撮像部の視軸方向を前記目標の方向に指向させて追跡する目標追跡方法において、
前記センサ情報に基づいて、前記駆動部自体に内在する外乱の量を算出し、
この外乱の量に基づいて、当該外乱が印加された場合に発生する前記撮像部の指向方向のずれ量を算出し、
前記画像処理部から出力される目標方向情報を前記ずれ量で補正することを特徴とする目標追跡方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−59145(P2012−59145A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203600(P2010−203600)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】