説明

直動案内機構

【課題】 多様な方向からの荷重を受けることができ、剛性が高く、直動案内精度が良く、コンパクトに構成できる直動案内機構を提供する。
【解決手段】 直動案内機構1は、ハウジング2と、このハウジング2に軸中心O回りに回転自在かつ軸方向に移動不能に支持されたねじ軸3と、このねじ軸3に螺合したナット4を含みねじ軸3の回転によりねじ軸3の軸方向に移動させられる直動体5とを備える。ハウジング1にねじ軸3の軸方向に沿う複数の案内面15,15A,15B,15C,15Dを設ける。これら複数の案内面15は2面ずつが対となる。これら対となる2つの案内面15は、互いに非平行で背を向き合う。直動体5に、各案内面15にそれぞれ接する複数の被案内体16を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械、測定装置、搬送機器等において直線上を進退する直線進退部材の案内に用いられる直動案内機構に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等の位置決め部における直動案内に使用される部品として、例えば図17に示すように、直線レール30と、この直線レール30に沿ってスライドするスライドユニット31とを組み合わせたリニアレールガイド(直動転がり軸受とも称す)がある。このリニアレールガイドは、サイズや形状等が異なる多様な製品がメーカ各社から販売されており、負荷荷重や使用姿勢等の適用条件に合った適正なリニアレールガイドを選択することが可能である。
【0003】
現在、多く使用されているリニアレールガイドには、2つのタイプがある。1つは、リニアレールガイド内のボールやローラ等の転動体(図示せず)が、スライドユニット31の内部を循環する循環タイプである。もう1つのタイプは、クロスローラガイドと称する転動体が、保持器によって拘束された有限ストロークタイプである。いずれのタイプも、案内面となる直線レール30や転動体に軸受鋼等の焼入れ鋼材を使用して、耐久性を高めてある。図17の例のように、ボールねじ機構とリニアレールガイドとを組み合わせて、両者を互いに並列に設置することにより、ボールねじ機構にラジアル荷重およびモーメント荷重が直接作用しないようになり、耐久性能に優れ、高精度な直動案内を実現することができる。
【0004】
リニアガイドレールを用いない直動案内の方法として、特許文献1〜4に、ハウジングの内面等に垂直溝や垂直案内面を設け、これら垂直溝や垂直案内面に沿ってカムフォロア等の軸受を転走させることで、直動案内を実現する技術が提案されている。また、特許文献5には、ハウジング側に円周方向に並ぶ複数の軸受を設け、これら軸受の外輪面を、中心に配置した直線進退部材に当てることで、直動案内を実現する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−216280号公報
【特許文献2】特開平2−186157号公報
【特許文献3】特開2010−179323号公報
【特許文献4】特開2007−333046号公報
【特許文献5】特開2001−221229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図18に示すように、モータ6の駆動によるシリンダ型直動アクチュエータ7が、省エネルギー化を目的に、エアシリンダの代替として生産設備や搬送設備への採用が進んでいる。このシリンダ型直動アクチュエータは、使用する直動案内機構が重要で、直動案内機構がシリンダ型直動アクチュエータの外観、コスト、性能を決める主な要因となる。
【0007】
リニアレールガイドによる直動案内機構は、剛性が高く真直性に優れた案内構造ではあるが、図17のように直線レール30を多数のボルト等の固定具32で固定する必要があり、省スペース化と低コスト化を進める上で障害となる。
【0008】
また、リニアレールガイドを用いない直動案内機構には、以下の課題がある。
前記特許文献1〜4には、回転運動を直線運動に変換する機構における直線運動部材の回り止めを主な目的としたもの(特許文献1,2)と、荷重を受けられるようにすることを主な目的としたもの(特許文献3,4)とがあるが、後者でも、軸受の個数と配置の都合上、受けられる荷重方向に制限がある。特に、斜め方向からの荷重に対しては、適応できない構造となっている。
【0009】
特許文献5の場合、多様な方向からの荷重を受けることができるが、軸受の固定方法や、軸受の直線進退部材への押付け圧の調整が複雑である。
【0010】
この発明の目的は、多様な方向からの荷重を受けることができ、剛性が高く、直動案内精度が良く、コンパクトに構成できる直動案内機構を提供することである。
この発明の他の目的は、多様な方向からの荷重を受けることができ、剛性が高く、直動案内精度が良く、コンパクトに構成できる直動アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の直動案内機構は、ハウジングと、このハウジングに軸中心回りに回転自在かつ軸方向に移動不能に支持されたねじ軸と、このねじ軸に螺合したナットを含み前記ねじ軸の回転によりねじ軸の軸方向に移動させられる直動体とを備える。この直動案内機構において、前記ハウジングに前記ねじ軸の軸方向に沿う複数の案内面を設け、これら複数の案内面は2面ずつが対となり、これら対となる2つの案内面は、互いに非平行で背を向き合い、前記直動体に前記各案内面にそれぞれ接する複数の被案内体を設けたことを特徴とする。
【0012】
この構成によると、ねじ軸を回転することにより、ナットを含む直動体がねじ軸の軸方向に移動する。このとき、直動体に設けられた複数の被案内体が、ハウジングに設けられた複数の案内面にそれぞれ接した状態で移動することで、直動体がねじ軸の軸方向に精度良く案内される。
【0013】
前記複数の案内面は2面ずつが対となり、これら対となる2つの案内面は、互いに非平行で背を向き合っているため、直動体に作用する荷重が、各案内面により荷重分散されて受けられる。そのため、さまざまな方向からの荷重や大きな荷重を受けることができる。また、背を向き合う2つの案内面にそれぞれ接する2つの被案内体により、2つの案内面に挟まれたハウジングの部分を挟み付けた状態となり、剛性を向上させられる。案内面はハウジングの内面に設けられており、被案内体を案内するためのレールを別途に設けなくて済むので、コンパクトな構成にすることができる。
【0014】
この発明において、前記被案内体は、前記直動体に外面から突出させて設けた支軸と、この支軸に取付けられて外周面が前記案内面に転接する転がり軸受とからなる案内軸受とするのがよい。
被案内体を、支軸と転がり軸受とからなる案内軸受とすると、案内面と被案内体との摩擦抵抗が少なく、直動体を円滑に移動させられる。
【0015】
前記案内面の対を、前記ねじ軸の直径方向の両側に位置するように複数設けてもよい。
この構成とすると、直動体に作用する荷重を、各対の案内面でバランス良く支持することができる。
【0016】
前記ハウジングが平坦な底面を有する場合、前記各案内面は前記底面に対して傾斜させてもよい。案内面の傾斜角度は、荷重条件に合わせて定めればよい。
【0017】
前記支軸の軸心を、前記ねじ軸の軸中心に直交し前記支軸の軸心と平行な直線に対してオフセットさせてもよい。
上記構成とすることで、より一層多様な荷重を受けることが可能となり、負荷の分散やハウジング強度の向上を図ることができる。
【0018】
前記被案内体を、前記直動体にねじ軸の軸方向に並べて複数設けてもよい。
この場合は、負荷容量を増加することができる。
【0019】
また、前記複数の被案内体を、前記直動体にねじ軸の軸方向に互いにずらせて配置してもよい。
この場合は、荷重条件に合った被案内体の配置とすることができる。
【0020】
前記被案内体が前記ナットとこのナットの外周に嵌合する移動ブラケットとでなる場合、前記ねじ軸の軸中心と前記移動ブラケットの中心とを不一致として、移動ブラケットの側面における前記被案内体が設けられない箇所に前記ねじ軸を配置してもよい。
ねじ軸の軸中心と移動ブラケットの中心とが一致していなくても、ねじ軸を回転させることで被案内体を移動させる。よって、移動ブラケットの側面における被案内体が設けられない箇所にねじ軸を配置することが可能であり、それによってハウジング内の各部品の配置の自由性が高まる。
【0021】
前記被案内体の前記案内軸受を、深溝玉軸受としてもよい。
深溝玉軸受は、組立が容易で、手に入り易く低コストである。
【0022】
また、前記被案内体の前記案内軸受を、前記支軸に軸方向に並べて背面組み合わせまたは正面組み合わせで複数設けたアンギュラ玉軸受とし、これら複数のアンギュラ玉軸受に予圧を与えてもよい。
転がり軸受を複列のアンギュラ玉軸受とすると、案内面に垂直な方向の荷重の他に、案内面の幅方向の荷重も受けることができる。また、予圧を与えることで、軸受間の隙間を無くして剛性を高めることができる。
【0023】
前記被案内体の前記案内軸受を、前記支軸の外周に転動体を介して、外輪を兼ねるローラが設けられたカムフォロアとしてもよい。
カムフォロアは、深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受の玉軸受に比べて、外輪の幅寸法を広くできるため、単体での負荷容量を向上させることができる。転動体が円筒ころ等のころからなる場合は、より一層負荷容量を向上させることが可能である。また、カムフォロアは、内輪を有しないため、直径方向に狭いスペースに配置することができる。
【0024】
前記被案内体の前記案内軸受における外輪の外周面に樹脂コーティングを施してもよい。
これにより、案内軸受の外輪とハウジングの案内面との摺動性を向上させられる。
【0025】
前記案内面を、前記ねじ軸の軸中心に垂直な断面において円弧状に凸となる曲面としてもよい。
この場合、案内面に対して、案内軸受の外輪の外周面がエッジ接触することを避けられる。
【0026】
前記案内面における前記案内軸受と接する幅内に、軸方向に延びる油溜まり溝を設けてもよい。
この場合、案内軸受の外輪の外周面が潤滑油切れになることが防がれて、案内軸受の耐久性を高めることができる。
【0027】
前記案内面と前記被案内体の前記転がり軸受との間に、前記案内面よりも表面硬度の高い耐摩耗用の板状部材を介在させてもよい。例えば、前記板状部材は、前記案内面の表面に貼り付けて設ける。
この場合、転がり軸受の転がり接触による案内面の表面摩耗に対して耐久性を高めることができる。
【0028】
前記案内面の表面に表面硬化処理を施してもよい。
この場合、案内面の耐久性を向上させることができる。
【0029】
前記ハウジングに熱処理により硬化処理を施してもよい。
この場合も、案内面の耐久性を向上させることができる。
【0030】
前記ハウジングが、ハウジング本体と、前記案内面を有し前記ハウジング本体に固定された案内面形成部材とでなっていてもよい。
この場合、案内面の加工が容易である。
【0031】
前記被案内体が、前記直動体に突出して設けられて前記案内面に滑り接触する滑り接触部材であってもよい。
被案内体が案内面に滑り接触する滑り接触部材であっても、直動体をねじ軸の軸方向に精度良く案内することができる。
【0032】
この発明の直動アクチュエータは、請求項1ないし請求項19のいずれか1項に記載の直動案内機構と、この直動案内機構の前記ねじ軸を回転させる駆動源とを有する。
直動案内機構は、先に説明した作用・効果を有するので、この直動案内機構を適用した直動アクチュエータは、多様な方向からの荷重を受けることができ、剛性が高く、直動案内精度が良い。
【発明の効果】
【0033】
この発明の直動案内機構は、ハウジングと、このハウジングに軸中心回りに回転自在かつ軸方向に移動不能に支持されたねじ軸と、このねじ軸に螺合したナットを含み前記ねじ軸の回転によりねじ軸の軸方向に移動させられる直動体とを備え、前記ハウジングに前記ねじ軸の軸方向に沿う複数の案内面を設け、これら複数の案内面は2面ずつが対となり、これら対となる2つの案内面は、互いに非平行で背を向き合い、前記直動体に前記各案内面にそれぞれ接する複数の被案内体を設けたため、多様な方向からの荷重を受けることができ、剛性が高く、直動案内精度が良く、コンパクトに構成できる。
【0034】
この発明の直動アクチュエータは、請求項1ないし請求項19のいずれか1項に記載の直動案内機構と、この直動案内機構の前記ねじ軸を回転させる駆動源とを有するため、多様な方向からの荷重を受けることができ、剛性が高く、直動案内精度が良く、コンパクトに構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(A)はこの発明の一実施形態にかかる直動案内機構を備えた直動アクチュエータの破断側面図、(B)はそのIB−IB断面図である。
【図2】図1(A)の部分拡大図である。
【図3】図1(B)の部分拡大図である。
【図4】直動案内機構の案内面の異なる例を示す断面図である。
【図5】同案内面のさらに異なる例を示す断面図である。
【図6】同案内面のさらに異なる例を示す断面図である。
【図7】同案内面のさらに異なる例を示す断面図である。
【図8】直動案内機構の被案内体の異なる例を示す断面図である。
【図9】同被案内体のさらに異なる例を示す断面図である。
【図10】同被案内体のさらに異なる例を示す断面図である。
【図11】この発明の異なる実施形態にかかる直動案内機構の一部を省略した破断側面図である。
【図12】この発明のさらに異なる実施形態にかかる直動案内機構の一部を省略した破断側面図である。
【図13】この発明の異なる実施形態にかかる直動案内機構の破断正面図である。
【図14】この発明のさらに異なる実施形態にかかる直動案内機構の破断正面図である。
【図15】この発明のさらに異なる実施形態にかかる直動案内機構の破断正面図である。
【図16】この発明のさらに異なる実施形態にかかる直動案内機構の破断正面図である。
【図17】(A)は従来の直動案内機構の破断側面図、(B)はそのXVIIB−XVIIB断面図である。
【図18】従来の直動アクチュエータの破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
この発明の一実施形態を図1ないし図3と共に説明する。
図1において、この直動案内機構1は、ハウジング2と、このハウジング2に軸中心回りに回転自在かつ軸方向に移動不能に支持されたねじ軸3と、このねじ軸3に螺合したナット4とを含む直動体5と備える。直動案内機構1は、駆動源であるモータ6と共に直動アクチュエータ7を構成する。
【0037】
ハウジング2は、筒状の直動案内部2aと、この直動案内部2aの左右一方端に結合されたねじ軸支持部2bと、このねじ軸支持部2bの先に結合されたカップリング収容部2cと、前記直動案内部2aの左右他方端に結合されたシャフト支持部2dと、このシャフト支持部2dの先に結合された蓋部2eとでなる。
【0038】
前記ねじ軸3は、前記ナット4が螺合するボールねじ部3aと、このボールねじ部3aから基端側に続く円筒面部3bおよび雄ねじ部3cからなる。ねじ軸3は、ハウジング2のねじ軸支持部2bの内周に嵌合する複列の支持軸受8により、円筒面部3bが回転自在に支持されている。支持軸受8は、例えばアンギュラ玉軸受等の転がり軸受である。雄ねじ部3cには抜け止め用ナット9が螺着しており、ねじ軸3の軸方向移動が拘束されている。ねじ軸3は、ハウジング2のカップリング収容部2c内に収容されたカップリング10を介して、ハウジング2外に設置した前記モータ6の回転軸6aと結合されている。
【0039】
前記ナット4は、例えばねじ軸3のボールねじ部3aとの接触面に沿ってボール(図示せず)を循環させるボールナットとされ、ボールねじ部3aとナット4とでボールねじ機構11を構成する。ボールねじ機構11は、ねじ軸3を回転させることで、ナット4を含む直動体5が軸方向に移動する。
【0040】
直動体5は、前記ナット4と、このナット4の外周に嵌合する移動ブラケット12と、この移動ブラケット12からねじ軸3の軸方向に延びるシャフト13とでなる。ナット4と移動ブラケット12とは、スプライン等により相互回転不能に結合し、かつ図示しない抜け止め手段により互いに軸方向の移動不能とされている。図2に示すようにシャフト13は筒状で、その中空部に、ねじ軸3のナット4よりも突出した先端側部分が挿入されている。シャフト13は、ハウジング2のシャフト支持部2dの内周に嵌合する直動滑り軸受14により、ねじ軸3の軸方向に摺動自在に支持されている。移動ブラケット12とシャフト13は、一体であっても別体であってもよい。また、直動体5は、移動ブラケット12を有さずに、ナット4にシャフト13が取付けられていてもよい。さらに、ナット4と別体のシャフト4を有さずに、シャフト13に相当する出力部材(図示せず)がナット4に一体に設けられていてもよい。
【0041】
ハウジング2の直動案内部2aは、図1(B)のように、ねじ軸3の軸方向と直交する断面が略正方形の筒状で、その内面にねじ軸3の軸方向に沿う一定幅の案内面15(15A〜15D)が複数設けられている。各案内面15は、後述する被案内体16をねじ軸3の軸方向に案内するためのものである。図の例では、左右に1対ずつ、計4面の案内面15が設けられている。これら複数の案内面15は上下に並ぶ2面ずつ、すなわち案内面15Aと案内面15B、および案内面15Cと案内面15Dがそれぞれ対となっており、各対の案内面15は互いに非平行で背を向き合っている。つまり、各対の案内面15は、幅面がその延長線上で互いに交差している。各対の案内面15は、ハウジング2の平坦な底面Fに対し、プラス45°とマイナス45°の角度でそれぞれ傾斜している(θ,θ,θ,θ=45°)。
【0042】
直動体5の移動ブラケット12には、前記案内面15にそれぞれ接する被案内体16が設けられている。被案内体16は、移動ブラケット12に外面から突出させて設けたトラニオン軸状の支軸17と、この支軸17に取付けられて外周面が案内面15に転接する転がり軸受18とからなる案内軸受とされている。各被案内体16の支軸17は、その軸心Pがねじ軸3の軸中心Oと交差している。この実施形態の転がり軸受18は、深溝玉軸受である。被案内体16は、直動体5の移動ブラケット12以外の部分、すなわちナット4またはシャフト13に設けられていてもよい。
【0043】
この直動案内機構1が適用された直動アクチュエータ7は、モータ6の駆動でねじ軸3を回転させることにより、ナット4を含む直動体5がねじ軸3の軸方向に移動する。このとき、直動体5の移動ブラケット12に設けられた複数の被案内体16が、ハウジング2に設けられた複数の案内面15にそれぞれ接した状態で移動することで、直動体5がねじ軸3の軸方向に精度良く案内される。
【0044】
複数の案内面15は2面ずつが対となり、これら対となる2つの案内面15は、互いに非平行で背を向き合っているため、直動体5に作用する荷重が、各案内面15により荷重分散されて受けられる。そのため、さまざまな方向からの荷重や大きな荷重を受けることができる。また、背を向き合う2つの案内面15にそれぞれ接する2つの被案内体16を各案内面15にそれぞれ圧接させることにより、2つの案内面15に挟まれたハウジング2の部分を挟み付けた状態となり、剛性を向上させられる。案内面15の対が、ねじ軸3の直径方向の両側に位置するように複数設けられているため、直動体5に作用する荷重を、各対の案内面15でバランス良く支持することができる。案内面15はハウジング2の内面に設けられており、被案内体16を案内するためのレールを別途に設けなくて済むので、コンパクトな構成にすることができる。
【0045】
この実施形態では、被案内体16が、支軸17と転がり軸受18とからなる案内軸受であり、転がり軸受18の外輪18aが案内面15に転接するため、案内面15と被案内体16との摩擦抵抗が少なく、直動体5を円滑に移動させられる。また、転がり軸受18として用いられている深溝玉軸受は、組立が容易で、手に入り易く低コストである。
【0046】
図4のように、前記案内面15は、ねじ軸3の軸中心Oに垂直な断面において円弧状に凸となる曲面としてもよい。この場合、案内面15に対して、転がり軸受18の外輪18aの外周面がエッジ接触することを避けられる。
【0047】
また、図5のように、案内面15における転がり軸受18と接する幅内に、軸方向に延びる油溜まり溝20を設けてもよい。この場合、転がり軸受18の外輪18aの外周面が潤滑油切れになることが防がれて、転がり軸受18の耐久性を高めることができる。
【0048】
また、図6にように、案内面15と転がり軸受18との間に、案内面15よりも表面硬度の高い耐摩耗用の板状部材21を介在させてもよい。例えば、板状部材21は、案内面15の表面に貼り付けて設ける。この場合、転がり軸受18の転がり接触による案内面15の表面摩耗に対して耐久性を高めることができる。
【0049】
上記板状部材21を設ける代わりに、案内面15の表面に表面硬化処理を施してもよい。この場合も、案内面15の耐久性を向上させることができる。
あるいは、ハウジング2全体に熱処理による硬化処理を施してもよい。この場合も、案内面15の耐久性を向上させることができる。
【0050】
なお、図7のように、ハウジング2を、ハウジング本体2Aと、案内面15を有しハウジング本体2Aに固定された案内面形成部材22とで構成してもよい。ハウジング本体2Aと案内面形成部材22とは、ボルト固定等の適正な方法で固定する。この場合、案内面15の加工が容易である。
【0051】
前記転がり軸受18は、図8のように、支軸17に軸方向に並べて背面組み合わせまたは正面組み合わせで複数設けたアンギュラ玉軸受としてもよい。これら複数のアンギュラ玉軸受には、予圧を与えるのが望ましい。転がり軸受18を複列のアンギュラ玉軸受とすると、案内面15に垂直な方向の荷重の他に、案内面15の幅方向の荷重も受けることができる。また、予圧を与えることで、軸受間の隙間を無くして剛性を高めることができる。
【0052】
被案内体16を構成する案内軸受は、支軸17と転がり軸受18の組合せに代えて、図9のように、支軸24aの外周に転動体24bを介して、外輪を兼ねるローラ24cが設けられたカムフォロア24としてもよい。カムフォロア24は、深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受等の転がり軸受18に比べて、外輪であるローラ24cの幅寸法を広くできるため、単体での負荷容量を向上させることができる。転動体24bが円筒ころ等のころからなる場合は、より一層負荷容量を向上させることが可能である。また、カムフォロア24は、内輪を有しないため、直径方向に狭いスペースに配置することができる。
【0053】
案内軸受が、転がり軸受18やカムフォロア24等のように案内面15に転接する場合、案内軸受の外輪18a,24cの外周面に、ポリウレタン等の樹脂コーティングを施すとよい。これにより、外輪18a,24cと案内面15との摺動性を向上させられる。
【0054】
また、被案内体16は、図10のように、案内面15に滑り接触するものであってもよい。この被案内体16は、移動ブラケット12に外周側へ突出して設けられた支持部材25に、案内面15に滑り接触する滑り接触部材26を固定して設けてある。被案内体16が案内面15に滑り接触しても、直動体5をねじ軸3の軸方向に精度良く案内することができる。
【0055】
図11のように、被案内体16を、直動体5にねじ軸3の軸方向に並べて複数設けてもよい。これにより、負荷容量を増加することができる。
また、図12のように、複数の被案内体16を、直動体5にねじ軸3の円周方向に互いにずらせて配置してもよい。複数の被案内体16は、互いに対となる被案内体16同士であってもよく、また互いに異なる対に属する被案内体16同士であってもよい。このように、複数の被案内体16の軸方向位置をずらして千鳥状配置とすることにより、荷重条件に合った被案内体16の配置とすることができる。
【0056】
前記実施形態は、各案内面15のハウジング2の底面Fに対する角度θ,θ,θ,θが、プラス45°またはマイナス45°とされているが、これ以外の角度であってもよい。案内面15の傾斜角度は、荷重条件に合わせて定めればよい。例えば、図13の例では、左右各対の案内面15は、ハウジング2の平坦な底面Fに対し、プラス30°とマイナス30°の角度でそれぞれ傾斜している(θ,θ,θ,θ=30°)。また、図14の例では、各案内面15の傾斜角度がそれぞれ異なっており、θはプラス45°、θはマイナス15°、θとθはそれぞれプラス30°とマイナス30°とされている。
【0057】
また、図13および図14の例では、全ての被案内体16の支軸17または一部の被案内体16の支軸17の軸心Pが、ねじ軸3の軸中心Oに直交し支軸17の軸心Pと平行な直線に対してオフセットさせてある。これにより、より一層多様な荷重を受けることが可能となり、負荷の分散やハウジング強度の向上を図ることができる。
【0058】
ハウジング2の直動案内部2aの、ねじ軸3の軸方向と直交する断面の形状は、正方形等の多角形に限定せず、図15のような円形や、楕円形(図示せず)としてもよい。案内面15の対の数も、図15のように3組、またはそれ以上としてもよい。要は、直動案内機構1が使用される箇所、姿勢、荷重条件等に合わせて、ハウジング2および案内面15の形状や配置を定めればよい。
【0059】
ねじ軸3の軸中心Oと移動ブラケット12の中心は一致していなくてもよい。その場合でも、ねじ軸3を回転させることで直動体5を移動させることができる。図16は、ねじ軸3の軸中心Oと移動ブラケット12の軸心Qとを不一致とした直動案内機構1の一例であり、この例では、移動ブラケット12の側面における被案内体16が設けられない箇所にねじ軸3を配置してある。このように、ねじ軸3の配置を任意に定めることができるので、ハウジング2内の各部品の配置の自由性が高まる。
【符号の説明】
【0060】
1…直動案内機構
2…ハウジング
2A…ハウジング本体
3…ねじ軸
4…ナット
5…直動体
6…モータ(駆動源)
7…直動アクチュエータ
12…移動ブラケット
15,15A,15B,15C,15D…案内面
16…被案内体
17…支軸
18…転がり軸受
18a…外輪
20…油溜まり溝
21…板状部材
22…案内面形成部材
24…カムフォロア
24c…ローラ(外輪)
26…滑り接触部材
F…ハウジングの底面
O…ねじ軸の軸中心
P…支軸の軸心
Q…移動ブラケットの中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、このハウジングに軸中心回りに回転自在かつ軸方向に移動不能に支持されたねじ軸と、このねじ軸に螺合したナットを含み前記ねじ軸の回転によりねじ軸の軸方向に移動させられる直動体とを備えた直動案内機構であって、
前記ハウジングに前記ねじ軸の軸方向に沿う複数の案内面を設け、これら複数の案内面は2面ずつが対となり、これら対となる2つの案内面は、互いに非平行で背を向き合い、前記直動体に前記各案内面にそれぞれ接する複数の被案内体を設けたことを特徴とする直動案内機構。
【請求項2】
請求項1において、前記被案内体は、前記直動体に外面から突出させて設けた支軸と、この支軸に取付けられて外周面が前記案内面に転接する転がり軸受とからなる案内軸受である直動案内機構。
【請求項3】
請求項2において、前記案内面の対を、前記ねじ軸の直径方向の両側に位置するように複数設けた直動案内機構。
【請求項4】
請求項3において、前記ハウジングは平坦な底面を有し、前記各案内面は前記底面に対して傾斜させた直動案内機構。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、前記支軸の軸心を、前記ねじ軸の軸中心に直交し前記支軸の軸心と平行な直線に対してオフセットさせた直動案内機構。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のいずれか1項において、前記被案内体を、前記直動体にねじ軸の軸方向に並べて複数設けた直動案内機構。
【請求項7】
請求項2ないし請求項5のいずれか1項において、前記複数の被案内体を、前記直動体にねじ軸の軸方向に互いにずらせて配置した直動案内機構。
【請求項8】
請求項2ないし請求項7のいずれか1項において、前記被案内体が前記ナットとこのナットの外周に嵌合する移動ブラケットとでなり、前記ねじ軸の軸中心と前記移動ブラケットの中心とを不一致として、移動ブラケットの側面における前記被案内体が設けられない箇所に前記ねじ軸を配置した直動案内機構。
【請求項9】
請求項2ないし請求項8のいずれか1項において、前記被案内体の前記案内軸受が深溝玉軸受である直動案内機構。
【請求項10】
請求項2ないし請求項8のいずれか1項において、前記被案内体の前記案内軸受が、前記支軸に軸方向に並べて背面組み合わせまたは正面組み合わせで複数設けたアンギュラ玉軸受であり、これら複数のアンギュラ玉軸受に予圧を与えた直動案内機構。
【請求項11】
請求項2ないし請求項8のいずれか1項において、前記被案内体の前記案内軸受が、前記支軸の外周に転動体を介して、外輪を兼ねるローラが設けられたカムフォロアである直動案内機構。
【請求項12】
請求項2ないし請求項10のいずれか1項において、前記被案内体の前記案内軸受における外輪の外周面に樹脂コーティングを施した直動案内機構。
【請求項13】
請求項2ないし請求項12のいずれか1項において、前記案内面を、前記ねじ軸の軸中心に垂直な断面において円弧状に凸となる曲面とした直動案内機構。
【請求項14】
請求項2ないし請求項13のいずれか1項において、前記案内面における前記案内軸受と接する幅内に、軸方向に延びる油溜まり溝を設けた直動案内機構。
【請求項15】
請求項2ないし請求項14のいずれか1項において、前記案内面と前記被案内体の前記転がり軸受との間に、前記案内面よりも表面硬度の高い耐摩耗用の板状部材を介在させた直動案内機構。
【請求項16】
請求項2ないし請求項14のいずれか1項において、前記案内面の表面に表面硬化処理を施した直動案内機構。
【請求項17】
請求項2ないし請求項14のいずれか1項において、前記ハウジングに熱処理により硬化処理を施した直動案内機構。
【請求項18】
請求項1ないし請求項17のいずれか1項において、前記ハウジングが、ハウジング本体と、前記案内面を有し前記ハウジング本体に固定された案内面形成部材とでなる直動案内機構。
【請求項19】
請求項1において、前記被案内体が、前記直動体に突出して設けられて前記案内面に滑り接触する滑り接触部材である直動案内機構。
【請求項20】
請求項1ないし請求項19のいずれか1項に記載の直動案内機構と、この直動案内機構の前記ねじ軸を回転させる駆動源とを有する直動アクチュータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−225444(P2012−225444A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94670(P2011−94670)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】