説明

直接粒子ビーム蒸着によって得られる液晶用配向フィルム

【課題】直接粒子ビーム蒸着によって得られる液晶用配向フィルムを提供する。
【解決手段】本発明は、直接粒子ビーム蒸着法により液晶(LC)または反応性メソゲン(RM)を配向するための配向フィルムを調製するための方法と、前記方法により得られる配向フィルムと、LCまたはRMを配向するための特に薄層の形態での前記配向フィルムの使用と、前記配向フィルムおよび1つ以上のLCおよび/またはRM層を含む多重層と、光学的、電子的および電気光学的用途における配向フィルムおよび多重層の使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接粒子ビーム蒸着法により液晶(LC)または反応性メソゲン(RM)を配向するための配向フィルムを調製するための方法と、前記方法により得られる配向フィルムと、LCまたはRMを配向するための特に薄層の形態での前記配向フィルムの使用と、前記配向フィルムおよび1つ以上のLCおよび/またはRM層を含む多重層と、光学的、電子的および電気光学的用途における配向フィルムおよび多重層の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上または2つの基板間に提供されるLC材料の薄層を含む液晶ディスプレイ(LCD)などの多くの光学的および電気光学的装置において、LC材料の均一な配向を達成することが、しばしば要求される。ディスプレイモードによって、例えば、LC分子がそれらの分子長軸を基板に対して平行に配向する平面配向、LC分子がそれらの分子長軸を基板に対して直交して配向するホメオトロピック配向、または、LC分子がそれらの分子長軸を基板に対してある角度で配向するチルト配向を有することが望まれる。
【0003】
平面またはチルトLC配向を達成するための先行技術に記載される殆どの従来技術は、基板表面のラビングである。この機械的処理は、表面の損傷、帯電および粉塵、パターニングが複雑なこと、および、微視的なレベルにおける不十分な配向均一性など数多くの不具合を有する。
【0004】
LCラビング配向技術に固有な問題は、代替となる配向法の発達を促した。それらの中でも、所謂粒子ビーム配向法は、工業的用途にとって有望視されている。粒子イオンとして、中性原子、電子、またはそれらの混合物、特に、プラズマを使用できる。
【0005】
LC配向のために特に有望視されている3つの基本的な粒子ビーム法:
1)表面エッチング、
2)スパッタリング蒸着、
3)直接蒸着
を選択できる。
【0006】
上述の異なる方法を同時に行うこともあるが、それらの効率は粒子のエネルギーに依存する。3つの方法は全て下で議論されており、図1に概略的に示されている。
【0007】
図1aに示される通りの方法1)の場合、加速された粒子(1)のビームが100eV〜10,000eVのエネルギーを有していれば、所謂表面エッチング/ミル法が好ましい。この場合、基板(2)に衝突する粒子(1)は基板の原子(3)を抜き出し、それにより、材料の削磨が生じる。これは化学結合の切断、反応性ガスの場合、プラズマ化学反応を伴うことがある。この所謂表面エッチング法は、主に表面清浄のために使用される。
【0008】
図1bに示される通りの方法2)の場合、100eV〜10,000eVのエネルギーを有する粒子(1’)の加速ビームが任意の他の基板(4)(ターゲット)に向いていれば、ターゲット(4)からの材料削磨が生じる。抜き出された粒子(1)は低いエネルギー(100eV未満)を有しており、所望の基板(2)上に蒸着でき、その上にフィルム(3)を形成する。この方法は、粒子ビームスパッタリング蒸着として既知である。
【0009】
最後に、図1cに示される通りの方法3)の場合、非常に低いエネルギー(100eVよりはるかに低い)を有する粒子(1)のビームが基板(2)に向いていれば、粒子は基板原子を抜き出すには不十分なエネルギーを有している。その代わり、粒子は基板上で凝結および反応でき、その上に常置フィルム(3)を形成する。この方法を、以降、直接(粒子ビーム)蒸着と呼ぶ。
【0010】
この分類は、イオンおよびプラズマビームソースによって形成される粒子ビームを扱う方法のみを含む。熱的に起動される粒子ビーム、および物理的および化学的蒸気蒸着などの関連する方法を含んでおらず、これらは、特に大面積の基板をコーティングする場合、LC技術にそれほど好適ではない。
【0011】
LC分子の均一な配向を確かなものとするために、通常、粒子ビームは配向基板に対して斜めに向けられる。この場合、変性フィルム(エッチング法の場合)または蒸着フィルム(蒸着法の場合)の表面は異方性となり、これにより、LCを配向できるようになる。誘発された表面異方性は、レリーフの異方性および分子または分子間結合の異方性として現れる。
【0012】
上述の粒子ビーム法のなかでも、表面エッチング1)がLC配向用に最も盛んに研究されている方法であり、例えば、米国特許第4,153,529号明細書(特許文献1);P.Chaudhari、J.Lacey、S.A.LienおよびJ.Speidell、Jpn J Appl Phys 37巻(1〜2号)L55〜L56頁(1998年)(非特許文献1);P.Chaudhariら、Nature 411巻、56〜59頁(2001年)(非特許文献2)で開示されている。いくぶん高いエネルギー(数keV)の粒子を使用するエッチング配向の最初の試みとは対照的に、後の実験においては、エネルギーは0.1keVに下げられる。これにより、表面の劣化を最小限とするように、配向フィルムの極めて最表面層のみを処理できる。この技術は、非常に多岐にわたる有機および無機基板上に、良好な均一性で低プレチルトの配向を提供する。
【0013】
例えば、国際特許出願公開第2004/104682号パンフレット(特許文献2)で開示される通り、直線的構成のプラズマビームソースを使用することによって、最新のLCD技術において使用される大面積の基板の配向処理にエッチング技術を適用する。また、最近、国際特許出願第EP/2007/007078号(特許文献3)において開示される通り、「反応性メソゲン」(RM)としても既知の重合性LC、およびO.Yaroshchukら、J.Soc.Inf.Display 16巻、905頁(2008年)(非特許文献3)において報告されている通りの固化メソゲンを配向するためにもエッチング法が提案された。
【0014】
スパッタリング蒸着法2)は、現在、従来のLCを配向するための実験室的手段として広く使用されている。配向フィルムとして、SiOコートが、通常、塗工される。しかしながら、スパッタリング法は普及しているにも関わらず、工業的手段としては使用されていない。例えば、米国特許第5,529,817号明細書(特許文献4)、米国特許第5,529,817号明細書(特許文献4)、米国特許第5,658,439号明細書(特許文献5)、MatahiroおよびTaga、Thin Solid Films 185巻、137〜144頁(1990年)(非特許文献4)で開示される方法は、スパッタリング蒸着および蒸気蒸着技術の比較を開示している。また、この配向技術の見識はJ.SID.、14/3巻、257頁(2006年)(非特許文献5)にも与えられている。
【0015】
しかしながら、また、先行技術で既知のエッチングおよびスパッタリング法は、それらの工業的用途の妨げとなる幾つかの不具合も有する。例えば、高い配向均一性を達成できることがあるが、配向の経時上の問題、即ち、LCセルの保管時間における配向の劣化のために、依然としてエッチング配向法は工業化されていない。この問題を克服するためには、O.Yaroshchuk、R.Kravchuk、L.Dolgov、A.Dobrovolskyy、N.Klyui、E.Telesh、A.Khokhlov、J.Brill、N.Fruehauf、「Aging of LC alignment on plasma beam treated substrates: choice of alignment materials and liquid crystals」、Mol.Cryst.Liq.Cryst.、479巻、111〜120頁(2007年)(非特許文献6)で報告されている通り、配向材料および加工条件を徹底的に最適化しなければならない。従来のLCと対照的に、RMに対しては、経時上の問題はさほど深刻ではない。中間層が一切なしで極めて多数の基板上に、RMの高度に均一な平面配向を、エッチング法によって提供できる。しかしながら、この方法は、ホメオトロピック配向に対しては、非常に効果的なわけではない。また、RM配向は、しばしば、基板の特性に影響される。
【0016】
スパッタリング蒸着法は、(チルトおよびチルトしていない)垂直配向に対して特に効果的であるため、エッチングを補う。しかしながら、この方法においては、配向均一性および配向安定性に関する問題がしばしば発生する。従って、RMに関しては、この配向法は体系的には使用されていない。
【0017】
また、プラズマより直接蒸着3)によって得られるコーティングも、LC配向用に試験されてきた。例えば、J.C.Dubois、M.GazardおよびA.Zann、Appl.Phys.Letters、24巻(7号)、29738〜40頁(1974年)(非特許文献7);R.Watanabe、T.Nakano、T.Satoh、H.HatohおよびY.Ohki、Jpn.J.Appl.Phys.、26巻(3号)、373頁(1987年)(非特許文献8)およびA.I.VangonenおよびE.A.Konshina、Mol.Cryst.Liq.Cryst.、304巻、507頁(1997年)(非特許文献9)において開示される通り、これらのコーティングの大多数は、プラズマ放電内に基板を直接置くことによって得られる。しかしながら、これらの文献で報告され結果として生じるコーティングは等方的である。このため、通常はラビングである追加の配向操作をしなければ、それらは、均一なチルトLC配向を誘発できない。
【0018】
SprokelおよびGibson、J.Electrochem.Soc.、124巻(4号)、557頁(1977年)(非特許文献10)および米国特許第4,261,650号明細書(特許文献6)には、基板上に傾いて入射する直接プラズマ束による蒸着法が記載されている。ガスの流れによって運搬される反応性粒子は基板上で凝結し、形成されるコーティングのタイプおよびLCの化学的組成に依存して均一な平面またはホメオトロピック配向を提供する配向フィルムを形成する。この方法の不具合は、「冷」プラズマより生じる粒子は低い運動エネルギーを有することである。このため、接着が弱く、配向フィルムの密度が低く、均一性が不十分との結果となる。加えて、この方法は、大面積の基板上でのコーティングには適していない。
【0019】
米国特許第6,632,483号明細書(特許文献7)には、炭素含有ガスより生成されるイオンビームに基板を衝突させることによって、基板上に配向された原子構造を有するアモルファスフィルムを形成する方法が開示されている。原子およびイオンを含むイオンビームを生成するために、放電チャンバー内でガスをイオン化し、次いで、加速電圧を印加してイオンソースより加速放出し、基板に向ける。イオンビームエネルギーは100〜500eV以上である。フィルムはLCDにおいて配向フィルムとして働くと報告されているが、達成された配向の詳細および具体的な例は提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第4,153,529号明細書
【特許文献2】国際特許出願公開第2004/104682号パンフレット
【特許文献3】国際特許出願第EP/2007/007078号
【特許文献4】米国特許第5,529,817号明細書
【特許文献5】米国特許第5,658,439号明細書
【特許文献6】米国特許第4,261,650号明細書
【特許文献7】米国特許第6,632,483号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】P.Chaudhari、J.Lacey、S.A.LienおよびJ.Speidell、Jpn J Appl Phys 37巻(1〜2号)L55〜L56頁(1998年)
【非特許文献2】P.Chaudhariら、Nature 411巻、56〜59頁(2001年)
【非特許文献3】O.Yaroshchukら、J.Soc.Inf.Display 16巻、905頁(2008年)
【非特許文献4】MatahiroおよびTaga、Thin Solid Films 185巻、137〜144頁(1990年)
【非特許文献5】J.SID.、14/3巻、257頁(2006年)
【非特許文献6】O.Yaroshchuk、R.Kravchuk、L.Dolgov、A.Dobrovolskyy、N.Klyui、E.Telesh、A.Khokhlov、J.Brill、N.Fruehauf、「Aging of LC alignment on plasma beam treated substrates: choice of alignment materials and liquid crystals」、Mol.Cryst.Liq.Cryst.、479巻、111〜120頁(2007年)
【非特許文献7】J.C.Dubois、M.GazardおよびA.Zann、Appl.Phys.Letters、24巻(7号)、29738〜40頁(1974年)
【非特許文献8】R.Watanabe、T.Nakano、T.Satoh、H.HatohおよびY.Ohki、Jpn.J.Appl.Phys.、26巻(3号)、373頁(1987年)
【非特許文献9】A.I.VangonenおよびE.A.Konshina、Mol.Cryst.Liq.Cryst.、304巻、507頁(1997年)
【非特許文献10】SprokelおよびGibson、J.Electrochem.Soc.、124巻(4号)、557頁(1977年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の1つの目的は、その上に塗工される材料の均一および安定な配向を提供し、特に大量生産において使用が容易であり、上記の先行技術の欠点を有しておらず、ラビングを必要としないLCおよびRMを配向する方法を提供することである。本発明の他の目的は、以下の詳細な記載より、当業者には直ちに明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、本発明において特許請求される通りの方法を提供することにより、これらの目的を達成できることを見出した。特に、本発明は、実現が容易で、高い配向品位のフィルムを提供するプラズマビーム蒸着の主に異なる方法に関する。また、本発明は、大面積な基板およびプラスチックフィルム上の蒸着にも拡張できる。それらのLC配向特性に加え、これらのフィルムは、ガスバリア性、化学的および機械的保護機能を示す。
【0024】
<用語および定義>
用語「粒子ビーム」は、イオン、中性粒子、ラジカル、電子、または、プラズマなどのそれらの混合物のビームを意味する。以降において、粒子ビームとの用語は、主に、加速されたイオンまたはプラズマのビームを表すために使用される。
【0025】
用語「プラズマビーム」または「加速プラズマビーム」は、グロー放電において直ちに形成され、電界、通常は高いアノード電位により放電領域外に押出される粒子ビームを意味する。
【0026】
用語「イオンビーム」は、一般にグリッド系によってグロー放電より抽出されるイオン束を表すために使用される。この場合、グロー放電領域および形成されたビームは、空間的に分離される。
【0027】
用語「粒子エネルギー」は、個々の粒子の運動エネルギーを意味する。粒子ソースに応じて、粒子は広いまたは狭いエネルギー分布を有する。エネルギー分布の最大に対応する粒子のエネルギーは「主粒子エネルギー」と呼ばれる。非常に狭いエネルギー分布の場合、それぞれの粒子は、主エネルギーに等しいエネルギーを有する。
【0028】
用語「弱く(または僅かに)加速された粒子/イオン/プラズマのビーム」は、0.1〜200eV、好ましくは1〜100eV、非常に好ましくは1〜50eVの主エネルギーを有する上で定義される通りの加速された粒子のビームを意味する。
【0029】
用語「中程度に加速された粒子/イオン/プラズマのビーム」は、100〜10000eV、好ましくは100〜5000eV、非常に好ましくは100〜1000eVの主エネルギーを有する上で定義される通りの加速された粒子のビームを意味する。
【0030】
用語「エンドHallソース」は、広い分布の粒子エネルギー、即ち、200eV未満の最大粒子エネルギーおよび最大エネルギーの2/3の主エネルギーを有する弱く加速されたプラズマ束を生成する一群のHallソースからの粒子ビームソースを意味する。このソースは、通常、フィルム蒸着において、直接蒸着および粒子ビームの補助のために使用される。このソースの構成の詳細、動作原理および操作上のパラメータは、例えば、米国特許第4,862,032号明細書において見出すことができる。
【0031】
用語「陽極層ソース」は、広い分布の粒子エネルギー、即ち、10,000eVより著しく低い最大粒子エネルギーおよび最大エネルギーの2/3のエネルギー分布の最大、即ち、主粒子エネルギーを有する中程度に加速されたプラズマ束を生成する一群のHallソースからの粒子ビームソースを意味する。このソースは、通常、粒子ビームエッチングおよびスパッタリング蒸着のために使用される。このソースの構成の詳細、動作原理および操作上のパラメータは、V.Zhurin、H.Kaufman、R.Robinson、Plasma Sources Sci.Technol.、8巻、1頁、1999年において見出すことができる。
【0032】
用語「反応性粒子」は、結果としてフィルム蒸着が起きる基板上において他の粒子と化学的に反応できる粒子を表すよう働く。そのプラズマが反応性粒子を生成するガスは、「反応性ガス」と呼ばれる。これらのガスの例は、炭化水素ガス(CH、CまたはCなど)、SiH4,およびOである。
【0033】
用語「非反応性粒子」は、他の粒子と反応しない(または、反応性に乏しい)粒子を意味する。十分に加速されていれば、これらの粒子は、フィルム蒸着よりも基板の物理的エッチングを引き起こす。反応性粒子を与えないガスは、「非反応性」ガスと呼ばれる。これらのガスの例は、Ar、Xe、Krなどの希ガスである。
【0034】
用語「a−CH」、「a−CHF」、「a−CHN」、「a−SiO」などは、水素化炭素、フッ素化炭化水素、窒素化炭化水素、酸化ケイ素などのアモルファスフィルムまたはコーティングを意味する。
【0035】
用語「液晶化合物」または「メソゲン化合物」は、1個以上のカラミチック(棒形状または板形状/ラス形状)またはディスコチック(ディスク形状)メソゲン基を含む化合物を意味する。用語「メソゲン基」は、液晶相(または中間相)の挙動を誘発する能力を有する基を意味する。メソゲン基を含む化合物は、それら自体が必ずしも液晶相を示す必要はない。また、それらが、他の化合物との混合物においてのみ、または、メソゲン化合物または材料、またはそれらの混合物を重合させた際に、LC相を示すことも可能である。簡単のために、以降、用語「液晶」をメソゲンおよびLC材料のいずれにも使用する。LC相または中間相の温度範囲は、室温の範囲と必ずしも重なっている必要はないと理解される。
【0036】
カラミチックメソゲン基は、通常、互いに直接または連結基を介してつながっている1個以上の芳香族または非芳香族環状基から成るメソゲン核を含んでおり、任意成分として、メソゲン核の両端に結合している末端基を含んでおり、さらに、任意成分として、メソゲン核の長手側につながっている1個以上の横方向の基を含んでおり、ただし、これらの末端および横方向の基は、通常、例えば、カルビルまたはヒドロカルビル基、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシなどの極性基、または重合性基より選択される。
【0037】
用語「反応性メソゲン(RM)」は、重合性のメソゲンまたは液晶化合物を意味する。
【0038】
また、1個の重合性基を有する重合性化合物を「一反応性」化合物とも呼び、2個の重合性基を有する化合物を「二反応性」化合物とも呼び、2個より多い重合性基を有する化合物を「多反応性」化合物とも呼ぶ。重合性基を有しない化合物を、「非反応性」化合物とも呼ぶ。
【0039】
用語「薄膜」は、数nm〜数μmの範囲内で、LCまたはRMの場合、通常、0.5〜100μm、好ましくは0.5〜10μmの範囲内の厚みを有するフィルムを意味する。
【0040】
用語「フィルム」および「層」としては、剛直または柔軟で、機械的に安定な自立性または独立性のフィルム、ならびに支持基板上または2枚の基板間のコーティングまたは層が挙げられる。
【0041】
用語「ダイレクター」は先行技術において既知であり、LCまたはRM分子の分子長軸(カラミチック化合物の場合)または分子短軸(ディスコチック化合物の場合)の好ましい配向方向を意味する。単軸性で正の複屈折のLCまたはRM材料を含むフィルムにおいて、光軸はダイレクターによって与えられる。
【0042】
LCまたはRM材料の用語「均一配向」または「均一配置」は、例えば材料の層において、LCまたはRM分子の分子長軸(カラミチック化合物の場合)または分子短軸(ディスコチック化合物の場合)が、実質的に同一の方向に配向していることを意味する。
【0043】
用語「ホメオトロピック配向/配置」は、例えばLCまたはRM材料の層において、LCまたはRM分子の分子長軸(カラミチック化合物の場合)または分子短軸(ディスコチック化合物の場合)が、層面に実質的に垂直に配向していることを意味する。
【0044】
用語「平面配向/配置」は、例えばLCまたはRM材料の層において、LCまたはRM分子の分子長軸(カラミチック化合物の場合)または分子短軸(ディスコチック化合物の場合)が、層面に実質的に平行に配向していることを意味する。
【0045】
用語「チルト配向/配置」は、例えばLCまたはRM材料の層において、LCまたはRM分子の分子長軸(カラミチック化合物の場合)または分子短軸(ディスコチック化合物の場合)が、層面に対して0および90°の間の角度θ(「チルト角」)で配向していることを意味する。
【0046】
用語「スプレイ配向/配置」は、フィルム面に垂直な方向にチルト角が、好ましくは最小から最大の値に変化する上に定義される通りのチルト配向を意味する。
【0047】
平均チルト角θaveは、以下の通り定義される。
【0048】
【数1】

式中、θ’(d’)は層内の厚みd’における局所的なチルト角であり、dは層の総厚みである。
【0049】
他に明らかに述べない限り、スプレイ層におけるチルト角は、以降、平均チルト角θaveによって与えられる。
【0050】
用語「Aプレート」は、層面に対して平行に配向した、それの異常軸を有する単軸性複屈折材料の層を利用する光学的リターダーを意味する。
【0051】
用語「Cプレート」は、層面に対して垂直に配向した、それの異常軸を有する単軸性複屈折材料の層を利用する光学的リターダーを意味する。
【0052】
用語「Oプレート」は、層面に対してある角度で傾く、それの異常軸を有する単軸性複屈折材料の層を利用する光学的リターダーを意味する。
【0053】
均一に配向する光学的に単軸性の複屈折液晶材料を含むA−およびC−プレートにおいて、フィルムの光軸は異常軸の方向によって与えられる。
【0054】
また、正の複屈折率を有する光学的に単軸性の複屈折材料を含むAプレートまたはCプレートを、「+A/Cプレート」または「正のA/Cプレート」とも呼ぶ。また、負の複屈折率を有する光学的に単軸性の複屈折材料のフィルムを含むAプレートまたはCプレートを、「−A/Cプレート」または「負のA/Cプレート」とも呼ぶ。
【0055】
疑念がある場合、C.Tschierske、G.PelzlおよびS.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁に与えられる通りの定義を適用するものとする。
【0056】
<発明の概要>
本発明は、液晶(LC)または反応性メソゲン(RM)を配向させるための配向フィルムを基板上に調製する方法であって、イオンまたはプラズマなどの1〜100eVの主粒子エネルギーを有する弱く加速された粒子ビームに、直接またはマスクを介して、基板を曝露し、それにより、基板上に蒸着粒子の層またはフィルムを提供(直接粒子蒸着)する工程を含む方法に関する。
【0057】
本発明は、更に、上および下に記載される通りの方法であって、1つ以上の追加の配向フィルムを調製するための1つ以上の追加の粒子蒸着工程を含み、ただし、更なる蒸着工程(1つまたは複数)における粒子ビームは第1の蒸着工程と同一または異なっており、ただし、粒子ビームは、第1の蒸着工程と同一または異なる方向(好ましくは、基板面に対して傾いた角度)より基板に向けられている方法に関する。
【0058】
任意工程として、方法は、100eVを超える主粒子エネルギーを有する加速された粒子ビームに、直接またはマスクを介して、好ましくは基板面に対して傾いた角度で、蒸着フィルムを曝露し、それにより、蒸着フィルムの異方性エッチングを提供する工程を含む。
【0059】
本発明は、更に、上および下で記載される通りの方法によって得られる配向フィルムに関する。
【0060】
本発明は、更に、前記配向フィルム上に好ましくは薄層として塗工されるLCまたはRMを配向するための、上および下に記載される通りの配向フィルムの使用に関する。
【0061】
本発明は、更に、上および下に記載される通りの配向フィルムと、その上に塗工された1つ以上のLCおよび/またはRM層とを含み、ただし、RMは重合されていてもよい多重層に関する。
【0062】
本発明は、更に、上および下に記載される通りの多重層を調製する方法であって、
A)イオンまたはプラズマなどの1〜100eVの主粒子エネルギーを有する弱く加速された粒子ビームに、直接またはマスクを介して、基板を曝露し、それにより、直接粒子蒸着によって第1の配向フィルムを形成する工程(蒸着工程)と、
A1)任意工程として、100eVを超える主エネルギーを有する加速された粒子(イオンまたはプラズマ)ビームに、直接またはマスクを介して、蒸着配向フィルムを曝露し、それにより、蒸着フィルムの異方性エッチングを提供する工程(表面エッチング工程)と、
B)工程Aにおいて調製された第1の配向フィルム上に、1種類以上のLCおよび/またはRMを含み、任意成分として、1種類以上の重合性非メソゲン化合物を含む1つ以上の層を塗工する工程と、
C)任意工程として、工程Bにおいて調製された少なくとも1つの層において、1種類以上のRM(1種類または多種類)および/または重合性非メソゲン化合物(1種類または多種類)を重合する工程と、
D)任意工程として、工程BおよびCにおいて調製されたLCまたはRM層(1つまたは複数)上に、工程Aにおいて記載される通りの蒸着工程によって、第2の配向フィルムを蒸着する工程と、
D1)任意工程として、工程A1において記載される通りの表面エッチング工程を第2の配向フィルムに施す工程と、
E)任意工程として、工程Dにおいて調製された第2の配向フィルム上に、1種類以上のLCおよび/またはRMを含み、任意成分として、1種類以上の重合性非メソゲン化合物を含む1つ以上の層を塗工する工程と、
F)任意工程として、工程Eにおいて調製された少なくとも1つの層において、1種類以上のRM(1種類または多種類)および/または重合性非メソゲン化合物(1種類または多種類)を重合する工程と、
G)任意工程として、工程A〜Fによって調製された多重層上に、工程Aにおいて記載される通りの蒸着工程によって、耐傷性、ガスバリア性または反射防止性を有する最上層を蒸着する工程と
を含み、
ただし、工程D〜Fは、1回または2回以上繰り返しても構わない方法に関する。
【0063】
本発明は、更に、光学的、電子的および電気光学的用途および装置における、上および下に記載される通りの配向フィルムまたは多重層の使用に関する。
【0064】
本発明は、更に、上および下に記載される通りの配向フィルムまたは多重層を含む、光学的、電子的または電気光学的装置またはそれの素子に関する。
【0065】
前記装置および素子としては、限定することなく、電気光学的ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、光学的フィルム、偏光子、コンペンセータ、ビームスプリッター、反射フィルム、配向フィルム、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンピングホイル、カラー画像、装飾またはセキュリティ用マーキング、LC顔料、接着層、非線形光学(NLO)装置、光学的情報記憶装置、電子的装置、有機半導体、有機電界効果型トランジスタ(OFET)、集積回路(IC)、薄膜トランジスタ(TFT)、無線識別(RFID)タグ、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、有機光起電(OPVO)装置、有機太陽電池(O−SC)、有機レーザーダイオード(O−レーザー)、有機集積回路(O−IC)、照明装置、センサー装置、電極材料、光伝導体、光検出器、電子写真記録装置、コンデンサ、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、伝導性基板、伝導性パターンが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】a)表面エッチング、b)スパッタリング蒸着およびc)粒子ビームを使用する直接蒸着の工程を概略的に図示する。
【図2】本発明による方法において使用されるエンドHallソースの構成および動作原理を例示的に図示する。
【図3a】本発明による方法において適用される蒸着の配置を概略的に図示する。
【図3b】本発明による方法において適用される蒸着の配置を概略的に図示する。
【図3c】粒子ビームに曝露の際の基板およびそれの配置を概略的に図示する。x、yおよびzは、基板の主軸であり;1は基板であり;2は粒子ビームであり;OO’は粒子ビームの基板上への射影である。図3cは、側面図に対応する。
【図3d】粒子ビームに曝露の際の基板およびそれの配置を概略的に図示する。x、yおよびzは、基板の主軸であり;1は基板であり;2は粒子ビームであり;OO’は粒子ビームの基板上への射影である。図3dは、上面図に対応する。
【図4】ラビングされた基板と、例1.1による配向フィルムを含む基板との間の平面配向LC混合物を含有するLCセルの写真を、(a)交差および(b)平行偏光子間で見る場合で示す。
【図5】例1.4による配向フィルムを含む2枚の伝導性基板間の平面配向LC混合物を含有するLCセルの写真を、(a)電界がない、および(b)印加された電界がある状態において、1組の交差偏光子間で見る場合で示す。
【図6】例1.7による配向フィルムを含む2枚の伝導性基板間のホメオトロピック配向LC混合物を含有するLCセルの写真を、(a)電界がない、および(b)印加された電界がある状態において、1組の交差偏光子間で見る場合で示す。
【図7】例2.1による配向フィルム上に調製された平面配向を有する重合RMフィルムの写真を、配向軸(y軸、図3c参照)が一方の偏光子に対して(a)0°および(b)45°の角度を向いている1組の交差偏光子間で見る場合で示す。
【図8】例2.1による配向フィルム上に調製された平面配向を有する重合RMフィルムに対する偏光解析曲線(テスト光入射角に対する分析器の角度の曲線)を示し、ただし、上の曲線はサンプル長軸xの水平配向に、下の曲線は垂直配向に対応する(図3c参照)。点は実験データであり、一方、連続曲線は実験データに合わせた結果である。
【図9】例2.1による配向フィルム上に調製されたホメオトロピック配向を有する重合RMフィルムの写真を、サンプル長軸xが一方の偏光子に対して(a)0°および(b)45°の角度を向いている1組の交差偏光子間で見る場合で示す。
【図10】例2.1による配向フィルム上に調製されたホメオトロピック配向を有する重合RMフィルムに対する偏光解析曲線を示す。点は実験データであり、一方、連続曲線は実験データに合わせた結果である。サンプル長軸xの垂直および水平位置に対して測定された曲線が重ねてある。
【図11】例2.1による配向フィルム上に調製されたチルト配向を有する重合RMフィルムに対する偏光解析曲線を示し、ただし、上の曲線は配向軸の面内射影の垂直配向に、下の曲線は水平配向に対応する。
【図12】例2.6による配向フィルム上に調製された平面配向を有する重合RMフィルムの写真を、配向軸(y軸、図3’)が一方の偏光子に対して45°の角度を向いている1組の交差偏光子間で見る場合で示す。(a)および(b)は、フィルムの曲がっていないおよび曲がった状態に対応する。
【図13】例2.7による配向フィルム上に調製されたホメオトロピック配向を有する重合RMフィルムの写真を、サンプル長軸xが一方の偏光子に対して45°の角度を向いている1組の交差偏光子間で見る場合で示す。(a)および(b)は、フィルムの曲がっていないおよび曲がった状態に対応する。
【図14】本発明により調製される配向フィルム上のRM二重層フィルムの調製を概略的に図示し、ただし、例2.11〜2.13において記載される通り、(a)はホメオトロピックおよび平面RMフィルムの組み合わせを示し、(b)は互いに直交する方向に配向する2つの平面RMフィルムの組み合わせを示し、(c)は互いに平行な方向に配向する2つの平面RMフィルムの組み合わせを示す。
【図15】例2.11によるホメオトロピックおよび平面RMフィルムの組み合わせに対する偏光解析曲線を示し、ただし、上の曲線はサンプルの面内長軸(x軸)の水平配向に、下の曲線は垂直配向に対応する。点は実験データであり、一方、連続曲線は実験データに合わせた結果である。
【図16】互いに直交する方向xおよびy(図3c参照)に配向する例2.12による2つの平面RMフィルムの組み合わせに対する偏光解析曲線を示し、ただし、上の曲線はサンプル軸xの水平配向に、下の曲線は垂直配向に対応する。点は実験データであり、一方、連続曲線は実験データに合わせた結果である。
【図17】それぞれ互いに平行な方向(yサンプル軸の方向、図3c参照)に配向する例2.12による2つの平面RMフィルムの組み合わせに対する偏光解析曲線を示し、ただし、上の曲線はサンプル長軸xの水平配向に、下の曲線は垂直配向に対応する。点は実験データであり、一方、連続曲線は実験データに合わせた結果である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明は、先行技術の方法の問題を克服するために、配向フィルムを調製するための直接プラズマ蒸着法の新たな形態を記載する。
【0068】
例えば、SprokelおよびGibson J.Electrochem.Soc.、124巻(4号)、557頁(1977年)および米国特許第4,261,650号明細書において開示される通りの先行技術のプラズマ発生法は、数meV(ミリeV)のみの粒子エネルギーを有し、ガスの流れによって基板まで運ばれる冷r.f.(radio frequency generated:無線周波数発生)プラズマ束を発生するのみである。
【0069】
対照的に、本発明による方法は、1〜200、好ましくは1〜100eVのより高い主粒子エネルギーを有し、基板に直接適用される僅かに加速されたd.c.プラズマ束を使用する。これにより、密度および基板への接着性の増加など、蒸着フィルムの品位を著しく改良できる。
【0070】
加えて、本発明による直接蒸着技術は、先行技術の配向方法と比べ数多くの利点を有する。
【0071】
・ラビングと比べ、平面およびホメオトロピック配向のより良好な微視的均一性を与え、上述の通りのラビングの他の欠点を克服する。
【0072】
・粒子ビームエッチングと比べ、従来のネマチックLCおよびRMの両者のチルト/チルトしていない垂直配向のために非常により効果的である。それらのLC配向の特性に加えて、直接蒸着技術によって得られるフィルムは、化学的プロテクターおよびガスバリアとしても使用できる。
【0073】
・スパッタリング蒸着と比べ、技術的により単純な方法である。よって、例えば、ターゲットは必要ない。低い電圧動作により、粒子の発生によって作業領域に「粉塵」を生じる寄生放電の量が減少する。直接蒸着技術は、スッパタリング蒸着の場合よりも一般により均一なアモルファスコーティングを提供する。プラズマ/イオンビームソースによって形成される粒子ビームは、ターゲットよりスパッタされる粒子束よりも平行である。このため、蒸着フィルムのより強い異方性が提供される。最後に、供給ガス混合物を形成するガスの相対含有量を変化させることで、蒸着フィルムの含有量を連続的に変化できる。このため、そのようなフィルム上のLCの配向特性を変化させることができる。
【0074】
上で議論される通りの直接粒子ビーム蒸着を実現するためには、弱く加速された反応性粒子の集中的な流れを生成するイオン/プラズマビームソースが必要である。この目的のために、好ましくは、図2に概略的および例示的に示される通り、例えば、米国特許第4,862,032号明細書で開示される通りのHallソースの一群からのエンドHallソースを使用する。図2に示されるソースは、向こう側に間隔をあけて陰極(2)がある陽極(1)から成る。陽極上には、電磁石巻線(3)がある。図解において、中性粒子(原子、分子)、電子およびイオンは、それぞれ、「0」、「−」および「+」で示される。動作ガスの中性粒子は、注入口(4)を介してイオンソースに導入される。
【0075】
装置は、以下の通り動作する:熱陰極によって放射された電子は、ポテンシャルU下の陽極によって引き付けられる。陽極に接近すると、電子は、磁界線に、ほぼ従う。加速された電子は中性体に衝突し、それらのイオン化を引き起こす。ほとんどのイオン化衝突は、陽極近傍で起こる。生成されたイオンは、陰極に向かって加速する。これらのイオンは、最大2/3(eU)の広いエネルギー分布を有する。ソースを離れると、イオンは幾つかの電子を取り込み、中性化されたビームを形成する。グロー放電においては瞬時にビームが形成されるため、ビームは、陽極ポテンシャルにより抽出および加速されたプラズマの一部と考えることができる。
【0076】
エンドHallソースの重要な利点は、蒸着に加え、事前清浄方式においても動作できることである。生成されるコーティングの基板に対する良好な接着を確かなものとするために、事前清浄は、通常、蒸着に先立って行われる。
【0077】
ソースは、典型的には、真空チャンバー中に装着される。基礎真空は3×10−5Torr未満である。事前清浄方式においては、動作ガスは、通常、アルゴンである。この方式における動作圧PAr、陽極ポテンシャルUおよび放電電流Iは、好ましくは、PAr=0.6〜0.9×10−3Torr、U=110〜200VおよびI=1.0〜2.0Aである。蒸着方式においては、反応性ガスまたは反応性および希ガスの混合物がガスフィードとして使用される。この方式における動作圧Pは、好ましくは、P=0.8〜3×10−3Torrであり、一方、陽極ポテンシャルUおよび放電電流Iは、好ましくは、U=50〜100VおよびI=1〜5Aである。蒸着時間は、材料、電流および水晶制御器で測定されるコーティング厚に依存して、典型的には、1〜5分である。
【0078】
蒸着は、2つの配置で行われる。図3aに示される通りの第1の配置においては、ソース(1)の対称軸は垂直を向いており、一方、基板(2)および移動プラットホーム(3)は水平レベルに対して斜めに配置される。第2の配置においては、図3bに示される通り、基板(2)は移動プラットホーム(3)により水平に並進され、一方、ソース(1)は傾いた位置に配置される。粒子ビームおよびフィルムの法線より形成される蒸着角αは、0°〜85°に変化する。フィルムは、静止または移動の何れか一方の方式で蒸着される。後者の場合、基板には、0.5〜3mm/sの速度で繰り返して並進が施される。
【0079】
基板としては、例えば、ベアガラススライド、ITO伝導層でコートされたガラススライド、ポリイミドフィルム、カラーフィルター、等方性TAC(トリアセチルセルロース)フィルムまたはCOP(環状オレフィンポリマー)プラスチック片を使用できる。
【0080】
上記の機構を使用して、例えば、a−CH、a−CHN、a−CHF、a−SiOおよびa−SiOの配向フィルムの蒸着を達成できる。これらのフィルムのそれぞれのタイプに対応する加工パラメータを表1にまとめる。
【0081】
【表1】

また、蒸着および清浄(エッチング)方式の両者において働くエンドHallソースを活用し、蒸着およびエッチング法の組み合わせを実現することも可能であり、これにより、しばしば、LC配向が改良され、RMまたはRMおよびLCの特有な複合フィルムを調製できる。加えて、エッチング配向加工用に蒸着および陽極層ソースとしてエンドHallソースを使用することにより、蒸着およびエッチングの組み合わせを実現する[H.R.Kaufman、「Technology of Closed drift thrusters」AIAA Journal、23巻、78〜87頁(1985年)参照]。
【0082】
最後に、エンドHallソースにより、本明細書で記載される通りの実験において使用される従来の形式と比較して、十分な改変が可能となる。例えば、電磁気系を永久磁石に置き換えることができる。また、陽極層ソースと同じく、エンドHallソースも直線形式を形成するために配置できる[J.Madocks、Proceeding of 45回 Annual Technical Conference of Society of Vacuum Coaters、Orlando、米国、202頁(2002年)を参照]。このため、大面積基板用に開示される方法を拡張でき、プラスチック片のロール−ツー−ロール(roll−to−roll)加工を実現できる。
【0083】
本発明による配向フィルムは、例えば、サーモトロピックなネマチック、コレステリックまたはスメクチックLCまたはRM化合物または混合物、クロモニックLCを含むリオトロピックLCおよびRMの均一な配向を提供するのに適する。本発明による配向フィルム上、または、本発明による配向フィルムを一方または両方が保持する2つの基板の間で、好ましくは、薄層として、LCまたはRMを塗工する。ラビング法は必要ない。
【0084】
加えて、ロール可能なプラスチック基板上の配向フィルムの蒸着を、ロール−ツー−ロール(roll−to−roll)並進により実現できる。この場合、プラスチック片をロール−ツー−ロール(roll−to−roll)で巻き取る際に、プラズマビーム法を提供する。例えば、このことは、適切な真空を実現するために、真空チャンバー中にロールを配置し、引き続いて、基板を巻解ローラーから巻取ローラーへ移動させながら、フィルムをプラズマ蒸着に曝露することで達成できる。次いで引き続いて、このロールを、従来のコーティング技術を使用して適切なLCまたはRM溶液でコートでき、引き続いて、例えば、UV光に曝露することで、その場でRMを重合できる。このようにして、配向され重合されたRMフィルムを調製でき、また、次いで、1つの連続するプロセスにおけるロール−ツー−ロール(roll−to−roll)積層によって、他のフィルム、例えば、光学的フィルムに積層できる。
【0085】
加えて、パターン化された配向(即ち、異なる配向の領域のパターン)を、マスクを使用し、複数の蒸着または蒸着およびエッチング工程により実現できる。
【0086】
本発明による方法を使用することにより、蒸着フィルムの含有量、プラズマ束の入射角、プラズマ密度および流束量、および使用するLCまたはRMのタイプに依存して、種々の配向方向、例えば、平面、ホメオトロピック、チルトまたはスプレイ配向をLCまたはRM中に誘発できる。よって、Aプレート、CプレートまたはOプレートの光学的特性を有するLC層または重合RMフィルムを調製することが可能である。どのようにして配向を制御できるかという更に詳細な記載を例において見出すことができるが、しかしながら、これらの例に限定されると考える必要はなく、その代わりに、本発明の他の実施形態にも適用できる一般的な記載と考えるべきである。
【0087】
この技術の更なる使用は、第1のLCまたはRMフィルムの最表面上における第2のLCまたはRMフィルムの配向である。これにより、例えば、光学的コンペンセータとして使用できる、より複雑な構造の多重層を製造できる。先行技術において記載される通りの従来法によれば、多重層コンペンセータ構造は、通常、別途にコートされた層を積層し、(任意工程として)搬送用の基板を剥離することで形成される。これに対し、本発明において記載される通り、もう一方の上に一方のLCまたはRM層を直接コートすることで、積層工程を省ける利点があり、また、非常により薄い製品が与えられる。同一の方法は、コンペンセーションおよび偏光フィルム、コンペンセーションおよびカラーフィルターフィルムなどの堆積を得るために適用できる。
【0088】
基板としては、例えば、ガラスまたは石英シートまたはプラスチックフィルムを使用できる。等方性または複屈折の基板が使用できる。重合後に基板を重合されたフィルムから除去しない場合、好ましくは等方性基板を使用する。好適で好ましいプラスチック基板は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート(PC)またはトリアセチルセルロース(TAC)などのポリエステルのフィルム、非常に好ましくはPETまたはTACフィルムである。また、基板は、LCディスプレイなどの光学的、電気光学的または電子的装置の部品、例えば、ITO電極を含有するガラス基板、パッシブまたはアクティブマトリクス基板、例えば、LCoS装置またはカラーフィルター層において使用される電子的構造のシリコンウエハーでもよい。また、上述の材料の1つ以上の層またはフィルムを含む基板も使用できる。
【0089】
LCDなどの電気光学的装置においてアドレス可能なLCを電気的に配向させる場合、LCは、通常、上記の通り調製された2つの配向層の間に含まれる。対向配向層によって誘発される配向方向は、LCDの動作モードに応じて、逆平行、平行または交差で構わない。この装置は、開示される方法により配向される多数の更なるLCまたはRM層を追加的に含有することもできる。
【0090】
ポリマーフィルムを調製する際、重合前および/または重合中および/または重合後にコートされたRMの最表面上に、第2の基板を設けることも可能である。基板は、重合後に除去してもよいし除去しなくてもよい。2枚の基板を使用し化学線によって硬化を行う場合、少なくとも一方の基板は重合のために使用される化学線に対して透過性でなければならない。
【0091】
LCまたはRM材料は、スピンコーティングまたはブレードコーティングなどの従来のコーティング技術によって、配向フィルムを保持する基板上に塗工できる。また、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、リール−ツー−リール(reel−to−reel)印刷、活版印刷、グラビア印刷、輪転グラビア印刷、フレキソ印刷、凹版印刷、パッド印刷、ヒートシール印刷、インクジェット印刷またはスタンプまたはプリントプレートを用いる印刷などの当業者に既知で文献に記載される従来の印刷技術によって基板に塗工することもできる。
【0092】
また、LCまたはRM材料を適切な溶媒に溶解することも可能である。次いで、例えば、スピンコーティングまたは印刷または他の既知の技術により、この溶液を、配向フィルムを保持する基板上にコートまたは印刷し、溶媒を重合前に蒸発させる。多くの場合、溶媒の蒸発を促進するために、混合物を加熱することが適切である。溶媒として、例えば、標準的な有機溶媒を使用できる。溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンまたはシクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチルまたは酢酸ブチルまたはアセト酢酸メチルなどの酢酸エステル類;メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールなどのアルコール類;トルエンまたはキシレンなどの芳香族溶媒類;ジクロロメタンまたはトリクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類;PGMEA(酢酸プロピルグリコールモノメチルエーテル)、γ−ブチロラクトンなどのグリコール類またはそれらのエステル類などから選択できる。また、上記溶媒の2成分系、3成分系以上の混合物を使用することも可能である。
【0093】
また、本発明による方法はLCD工業において使用される他の真空法とも両立でき、限定することなく、ITO蒸着、TFTコーティング、例えば、ワンドロップ充填(ODF、One Drop Filling)法によるLCDの真空充填などが挙げられる。これは、LCD生産の全体が真空である技術ライン中で優位に使用でき、埃、湿度、空気イオンなどに関する良く知られている問題を強力に低減できる。
【0094】
本発明の特に好ましい実施形態は、以下の通りである。
【0095】
−基板は、等方性である。
【0096】
−基板は、ラビングされていない。
【0097】
−基板は、有機または無機材料を含む。
【0098】
−基板は、ガラス、石英、シリコンまたはプラスチック基板、例えば、プレートまたはホイルより選択され、1つ以上の電極層またはLC分子を電気的にアドレスするための他の電子的構造を含有してもよい。
【0099】
−基板は、カラーフィルターである。
【0100】
−配向フィルムは、a−CH、a−CHF、a−CHN、a−SiO、a−SiOから成る群より選択される材料の層である。
【0101】
−基板の少なくとも一部分、好ましくは全体が、粒子(イオンまたはプラズマ)ビームソースからの粒子(イオンまたはプラズマ)ビームに曝露され(蒸着工程)、ただし、粒子(イオンまたはプラズマ)ビームは、ソースの対称軸(粒子ビーム方向)が基板の法線に対して角度(「入射角」)を形成するように基板に向けられている。
【0102】
−入射角は0°〜89°、好ましくは70°〜85°である(入射角の好ましい範囲は、主に、平面およびチルト配向を含む配向フィルムに関する。ホメオトロピック配向を含む配向フィルムについては、蒸着角の重要性は低いが、代わりに、コーティングの含有量がより関係する)。
【0103】
−基板は、プラズマビームソースより5〜50cmの距離に位置する。
【0104】
−粒子またはプラズマビームソースは、Hallソースである。
【0105】
−粒子またはプラズマビームソースは、エンドHallソースである。
【0106】
−蒸着工程における粒子(イオンまたはプラズマ)ビームは、好ましくは、CHおよび他の炭化水素系ガス、N、CF、SiH、Oから成る群より選択される反応性ガスまたは2種類以上の反応性ガスの混合物より生成される。また、動作ガス混合物は、Ar、Kr、Xe、Hなどの他のガスを含有しても構わない。
【0107】
−蒸着工程における陽極ポテンシャルは、50〜100Vである。
【0108】
−蒸着工程における放電電流は、1〜5Aである。
【0109】
−蒸着工程における動作圧は、0.6×10−3〜3×10−3Torrである。
【0110】
−蒸着工程における主粒子エネルギーは、0.1〜200eV、好ましくは1〜100eV、最も好ましくは1〜50eVである。
【0111】
−蒸着工程により調製された配向フィルムの厚み、または、多重層の場合、1つ以上の、好ましくは、それぞれの配向フィルムの厚みは、5〜100nm、好ましくは10〜30nmである。
【0112】
−方法は、更に、例えば、プラズマビーム曝露の前または最中に基板にマスクを塗工して、プラズマビームが基板の所定部分に到達することを防ぐためにマスクを利用する工程を含む。
【0113】
−好ましくは、蒸着工程と同一の粒子ビームソースを使用し、しかしながら、蒸着工程より高い粒子エネルギー、好ましくは、100eVより高い粒子エネルギーを有する粒子ビームを提供する粒子(イオンまたはプラズマなど)ビームに基板を曝露することにより、蒸着工程前に基板に清浄工程(事前清浄工程)を施す。
【0114】
−事前清浄工程における粒子ビームは、好ましくは、Ar、Kr、Xeなどの希ガスから成る群より選択されるガスまたは2種類以上のガスの混合物より生成される。
【0115】
−事前清浄工程におけるエンドHallソースの陽極ポテンシャルは、100〜200Vである。
【0116】
−事前清浄工程における放電電流は、粒子ソース、基板の硬さなどに依存して、0.5〜2Aである。
【0117】
−事前清浄工程における動作圧は、6×10−4〜9×10−4Torrである。
【0118】
−事前清浄工程における曝露時間は、0.5〜5分である。
【0119】
−任意工程として、好ましくは蒸着工程の直後に、最も好ましくは、蒸着工程と同一の粒子(プラズマまたはイオンなど)ビームソースを使用して、好ましくは、事前清浄工程に対して上述される通りの条件下において、配向フィルムにプラズマまたはイオンビームエッチング工程(表面エッチング工程)を施す(それにより、平面LCまたはRM配向の品位を改良できる)。
【0120】
−非常に好ましくは、表面エッチング工程を、好ましくは、100eVより高い粒子エネルギーを有する希ガス(Ar、Kr、Xeなど)のプラズマによって生成される粒子(イオンまたはプラズマなど)ビームに配向フィルムを曝露することによって行い、ただし、粒子ビームは、好ましくは、入射角が30°〜89°、非常に好ましくは70°〜85°となるように基板に向けられる(本発明による方法において、斜めに入射する粒子ビームによって蒸着される配向フィルムは、例えば、国際特許出願公開第2004/104682号パンフレットで開示される通りの蒸着後エッチング工程なしで、一般に、LCまたはRMをホメオトロピックまたは平面に配向することができることに留意しなければならない。それにも関わらず、蒸着配向フィルムを斜めにエッチングすれば、蒸着配向フィルムの平面LCまたはRM配向を更に改良できる。よって、配向フィルムの蒸着後エッチング工程は好ましいが、平面配向を与えるためには必ずしも必要な工程ではない)。
【0121】
−前記方法によってLCまたはRM層に誘発される配向は、異なる配向方向を有する少なくとも2つの領域のパターンを含む。
【0122】
−粒子(イオンまたはプラズマ)ビームは、シート形状である。
【0123】
−方法は、粒子(イオンまたはプラズマ)ビームの経路を通り抜けて、基板を動かす工程を含む。
【0124】
−連続的に動く基板、好ましくは、連続ロール−ツー−ロール(roll−to−roll)法においてロールより提供または解かれる屈曲性プラスチック基板上に、直接粒子(イオンまたはプラズマ)ビーム蒸着によって、配向フィルムが調製される。
【0125】
−LCまたはRM層に誘発される配向は、平面配向である。
【0126】
−LCまたはRM層に誘発される配向は、ホメオトロピック配向である。
【0127】
−LCまたはRM層に誘発される配向は、チルトまたはスプレイ配向である。
【0128】
−LCまたはRM層の厚み、または、多重層の場合、1つ以上の、好ましくは、それぞれの単一層の厚みは、500nm〜10μm、好ましくは1〜5μmである。
【0129】
−多重層は、本発明による2つ以上の配向フィルム(AL)と、交互配列の2つ以上のRM層(即ち、AL−RM−AL−RM)とを含み、ただし、RM層は重合されていてもよい。
【0130】
−多重層は、本発明による2つの配向フィルム(AL)と、交互配列の2つの重合RM層(即ち、AL−RM−AL−RM)とを含み、ただし、RM層は平面層であり、ただし、両方のRM層におけるRMの配向方向は、それぞれ互いに平行である。
【0131】
−多重層は、本発明による2つの配向フィルム(AL)と、交互配列の2つの重合RM層(即ち、AL−RM−AL−RM)とを含み、ただし、RM層は平面層であり、ただし、両方のRM層におけるRMの配向方向は、それぞれ互いに直交している。
【0132】
−多重層は、本発明による2つの配向フィルム(AL)と、交互配列の2つの重合RM層(即ち、AL−RM−AL−RM)とを含み、ただし、RM層は平面層であり、ただし、両方のRM層におけるRMの配向方向は、それぞれ互いに相対的に0°より大きく90°未満の角度を向いている。
【0133】
−多重層は、本発明による2つの配向フィルム(AL)と、交互配列の2つ以上の重合RM層(即ち、AL−RM−AL−RM)とを含み、ただし、一方のRM層は平面層であり、もう一方のRM層はホメオトロピック層である。
【0134】
−多重層は、本発明による2つの配向フィルム(AL)と、交互配列の2つ以上の重合RM層(即ち、AL−RM−AL−RM)とを含み、ただし、少なくとも2つのRM層はホメオトロピック層である。
【0135】
−多重層は、本発明による2つの配向フィルム(AL)と、交互配列の2つ以上の重合RM層(即ち、AL−RM−AL−RM)とを含み、ただし、少なくとも2つのRM層はチルトまたはスプレイ層である。
【0136】
−多重層は、本発明による2つの配向フィルム(AL)と、交互配列の2つ以上の重合RM層(即ち、AL−RM−AL−RM)とを含み、ただし、一方のRM層は平面層であり、もう一方のRM層はチルトまたはスプレイ層である。
【0137】
−多重層は、本発明による2つの配向フィルム(AL)と、交互配列の2つ以上の重合RM層(即ち、AL−RM−AL−RM)とを含み、ただし、一方のRM層はホメオトロピック層であり、もう一方のRM層はチルトまたはスプレイ層である。
【0138】
以降、本発明による方法によるLCおよびRMにおいて達成される配向を検討するのに適切で好ましい方法を例示的に記載するが、しかしながら、それは単なる記載であり、本発明を限定しないと理解される。
【0139】
<生成されたコーティング上のLC配向>
従来の液晶の配向を、2つのタイプのサンドイッチ状LCセルを調製することにより検討する:
(1)一方の基板が粒子ビームで処理されており、一方、第2の基板は従来のラビングされたポリイミド層を保持している非対称セル;および
(2)両方の境界板が粒子ビームで照射されている対称セル。
【0140】
均一なダイレクターの配向を得るために、2つの対向する境界板の粒子ビーム処理の方向がそれぞれ互いに逆平行となるように逆平行な様式でセルを組み立てる。セル間隔は、直径15mmのスペーサーによって保持する。それぞれ、TN(twisted nematic:ツイストネマチック)またはVA(vertically aligned:垂直配向)モードのLCD用に設計された正または負の誘電異方性のネマチックLC化合物または混合物によってセルを充填する。対称セルは、LC配向のタイプ(平面、チルト、ホメオトロピック)を決定するために使用される。加えて、対称セルは、結晶回転法によりプレチルト角を推定するためにも使用される。非対称セルは、LC配向の容易軸の面内射影を決定するために使用される。
【0141】
液晶セルは、肉眼によりライトテーブル上で2つの交差偏光子間において偏光顕微鏡によって検査する。垂直配向液晶では、回転した場合、セルは常に暗く見えなければならない。平面セルについては、回転すると、明暗が交互に観察される。
【0142】
a−CHF、a−SiOおよびa−SiOコーティング上において、特に0未満の負の誘電異方性Δεを有するVA−LCの良好でチルトされていない(ホメオトロピック)およびチルトされた垂直配向を達成する。チルト配向のセルは、電界において欠陥のないスイッチングを示す。
【0143】
今度は、a−CH、a−CHNおよびa−SiOコーティングは、特に0より大きい正の誘電異方性Δεを有するLCに均一な配向を誘発する。プレチルト角が本質的にゼロに等しくなるよう、LC分子は蒸着面に直交する方向に配向する。しかしながら、2つの蒸着を相互に直交する方向で組み合わせることで、これらのLCの低いプレチルト配向を実現できる。これらのセルは、ラビングされたポリイミド層に基づくセルと同一のT−V曲線を有する優れた電気光学的スイッチングを示す。
【0144】
<生成されたコーティング上のRM配向>
RMの配向は、等方性配向基板上にRMフィルムを蒸着し、偏光顕微鏡においてライトボックス上の交差偏光子間で、これらのサンプルを観察して試験される。RMフィルムのリターデーション特性は、消光偏光解析技術によって検討する[O.Yaroshchukら、J.Chem.Phys.、114巻(12号)、5330頁(2001年)参照]。この方法の光学的スキームは、プローブビーム、固定偏光子、偏光子の軸に平行な光学軸を有する1/4波長板、および回転分析器から成る。サンプルを偏光子およびリターデーションプレートの間に置く。プローブビーム(628nm)を、異方性サンプルの面内主軸に対して45°で直線偏光とする。異方性サンプルにより伝播された楕円偏光ビームを、1/4波長板によって直線偏光ビームに変換する。直線分析器の回転によって決定される出射偏光角φから、面内リターデーション(ny−nx)dが与えられる(式中、x、yおよびzは、図3cおよび3dにおいて示される通り、サンプルの主軸である)。
【0145】
図3cおよび3dに、粒子ビーム曝露の際の基板およびその配向を概略的に図示する。そこにおいて、1は基板、x、yおよびzは基板の主軸、2は粒子ビーム、OO’は基板上への粒子ビームの射影である。図3cおよび3dは、それぞれ、側面および上面図に対応する。
【0146】
次いで、垂直に配置されたxおよびy軸の回りにサンプルを回転して、偏光角φを入射角θの関数として測定する。面外リターデーション(nz−nx)dを、φ(θ)の理論的表現を合わせることで決定する。この方法によって、面内および面外フィルムリターデーションならびに光学軸の空間的定位が得られる。
【0147】
上に列挙したコーティングを使用して、正のC、正のOおよび正のAプレートの光学的リターデーションを示すRMフィルムの均一なホメオトロピック、チルトおよび平面配向を達成する。また、これらのフィルムの配向パターンも可能である。更に、開示される配向蒸着技術により、多重層コンペンセーションフィルムの調製が簡略化される。RMフィルム上に蒸着された配向フィルムは、引き続くRMフィルムの蒸着の際にRMフィルムが部分的に溶解しないように保護する。配向コーティングの追加の機能は、プラスチックLCDの場合、特に重要なガスバリア機能である。最後に、耐傷性および反射防止性コーティングの蒸着のために、本発明によるコーティング法を成功裏に使用できる。
【0148】
上の機会に加え、LC配向を更に改良し、複合LC構造を調製するために、本発明による直接蒸着の配向方法を、例えば、国際特許出願第EP/2007/007078号で開示されるエッチング配向方法と効果的に組み合わせることができる。
【0149】
本発明による方法は特定のLCまたはRM材料に限定されることなく、原理的には、先行技術より既知の全てのLCまたはRMを配向するために使用できる。LCおよびRMは、好ましくは、サーモトロピックまたはリオトロピック液晶性を示すカラミチックまたはディスコチック化合物、非常に好ましくは、カラミチック化合物、または、ある温度範囲においてLC中間相を有する1種類以上のタイプのこれらの化合物の混合物より選択される。これらの材料は、典型的には、色度が低減されているなどの良好な光学特性を有し、所望の方向に簡単および迅速に配向でき、大規模なポリマーフィルムの工業的生産のために特に重要である。LCおよびRMは、二色性色素または更なる成分または添加剤を含んでいてもよい。LCは、低分子(即ち、モノマー性化合物)またはLCオリゴマーまたはLCポリマーのいずれでも構わない。
【0150】
サーモトロピックなネマチック、スメクチックまたはコレステリック中間相を有するLCまたはRM、または1種類以上のLCまたはRM化合物を含む混合物が、特に好ましい。
【0151】
好ましくは、LC材料は、2種類以上、例えば、2〜25種類のLC化合物の混合物である。LCの化合物は、典型的には、ネマチックまたはネマトゲン性の物質より、例えば、アゾキシベンゼン類、ベンジリデンアニリン類、ビフェニル類、ターフェニル類、フェニルまたはシクロヘキシル安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸のフェニルまたはシクロヘキシルエステル類、シクロヘキシル安息香酸のフェニルまたはシクロヘキシルエステル類、シクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸のフェニルまたはシクロヘキシルエステル類、安息香酸の、シクロヘキサンカルボン酸のおよびシクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸のシクロヘキシルフェニルエステル類、フェニルシクロヘキサン類、シクロヘキシルビフェニル類、フェニルシクロヘキシルシクロヘキサン類、シクロヘキシルシクロヘキサン類、シクロヘキシルシクロヘキセン類、シクロヘキシルシクロヘキシルシクロヘキセン類、1,4−ビス−シクロヘキシルベンゼン類、4,4’−ビス−シクロヘキシルビフェニル類、フェニル−またはシクロ−ヘキシルピリミジン類、フェニル−またはシクロヘキシルピリジン類、フェニル−またはシクロヘキシルピリダジン類、フェニル−またはシクロヘキシルジオキサン類、フェニル−またはシクロ−ヘキシル−1,3−ジチアン類、1,2−ジフェニル−エタン類、1,2−ジシクロヘキシルエタン類、1−フェニル−2−シクロヘキシルエタン類、1−シクロヘキシル−2−(4−フェニルシクロヘキシル)−エタン類、1−シクロヘキシル−2−ビフェニル−エタン類、1−フェニル2−シクロヘキシル−フェニルエタン類、ハロゲン化されていてもよいスチルベン類、ベンジルフェニルエーテル、トラン類、置換桂皮酸類および更なる種類のネマチックまたはネマトゲニック物質の既知の種類より選択される低分子量LC化合物である。また、これらの化合物中の1,4−フェニレン基は、横方向に一フッ素化または二フッ素化されていてもよい。LC混合物は、好ましくは、このタイプのアキラルな化合物に基づく。
【0152】
LC混合物の成分として使用できる最も重要な化合物は、以下の式で特徴付けることができる。
【0153】
R’−L’−G’−E−R”
式中、同一でも異なっていてもよいL’およびEは、それぞれの場合で互いに独立に、−Phe−、−Cyc−、−Phe−Phe−、−Phe−Phe−Phe−、−Phe−Cyc−、−Cyc−Cyc−、−Pyr−、−Dio−、−Pan−、−B−Phe−、−B−Phe−Phe−および−B−Cyc−およびそれらの鏡像より形成される群からの二価の基であり、ただし、Pheは無置換またはフッ素置換された1,4−フェニレンであり、Cycはトランス−1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり、Pyrはピリミジン−2,5−ジイルまたはピリジン−2,5−ジイルであり、Dioは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり、Panはピラン−2,5−ジイルであり、Bは2−(トランス−1,4−シクロヘキシル)エチル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルまたはピラン−2,5−ジイルである。
【0154】
これらの化合物において、G’は以下の二価の基またはそれらの鏡像:−CH=CH−、−CH=CY−、−CY=CY−、−C≡C−、−CH−CH−、−CFO−、−CH−O−、−CH−S−、−CO−O−、−CO−S−または単結合より選択され、Yはハロゲン、好ましくはFまたは−CNである。
【0155】
R’およびR”は、それぞれの場合で互いに独立に、1〜18個、好ましくは3〜12個のC原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシであるか、あるいは、R’およびR”の1つは、F、CF、OCF、Cl、NCSまたはCNである。
【0156】
これらの化合物の殆どにおいて、R’およびR”は、それぞれの場合で互いに独立に、異なる鎖長のアルキル、アルケニルまたはアルコキシで、ただし、ネマチック媒体中のC原子の総和は、一般に、2および9の間、好ましくは2および7の間である。
【0157】
これらの化合物またはそれらの混合物の多くは、商業的に入手可能である。これらの化合物の全ては既知であるか、文献(例えば、Houben−Weyl著、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Georg−Thieme−Verlag社、Stuttgart市などの標準的な著作)に記載されている通りの、それ自身既知の方法で調製でき、既知で前記反応に適する反応条件下で正確にできる。それ自身既知であるが本明細書では述べない変法を、本明細書で使用することもできる。
【0158】
適切なRMは当業者に既知であり、例えば、国際特許出願公開第93/22397号パンフレット、欧州特許第0 261 712号明細書、ドイツ国特許第195 04 224号明細書、国際特許出願公開第95/22586号パンフレット、国際特許出願公開第97/00600号パンフレット、米国特許第5,518,652号明細書、米国特許第5,750,051号明細書、米国特許第5,770,107号明細書および米国特許第6,514,578号明細書で開示されている。適切で好ましい一反応性、二反応性およびキラルRMの例を以下のリストに示す。
【0159】
【化1】

【0160】
【化2】

【0161】
【化3】

【0162】
【化4】

【0163】
【化5】

式中、
は、複数出現する場合、互いに独立に重合性基であり、好ましくは、アクリル、メタクリル、オキセタン、エポキシ、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテルまたはスチレン基であり、
およびBは、複数出現する場合、互いに独立に、1個、2個、3個または4個の基Lで置換されていてもよい1,4−フェニレン、またはトランス−1,4−シクロヘキシレンであり、
は、複数出現する場合、互いに独立に、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合であり、
は、1個以上、好ましくは1〜15個のC原子を有し、フッ素化されていてもよいアルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、または、YまたはP−(CH−(O)−であり、
は、F、Cl、CN、NO、OCH、OCN、SCN、SF、1〜4個のC原子を有し、フッ素化されていてもよいアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、または、1〜4個のC原子を有し、一フッ素化、オリゴフッ素化またはポリフッ素化されたアルキルまたはアルコキシであり、
01、02は、それぞれ互いに独立に、H、RまたはYであり、
は、2−メチルブチル、2−メチルオクチル、2−メチルブトキシまたは2−メチルオクトキシなどの、4個以上、好ましくは、4〜12個のC原子を有するキラルなアルキルまたはアルコキシ基であり、
Chは、メンチルまたはシトロネリルなどの、コレステリル、エストラジオール、またはテルペノイド基より選択されるキラル基であり、
Lは、複数出現する場合、互いに独立に、H、F、Cl、CNまたは1〜5個のC原子を有し、ハロゲン化されていてもよいアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、
rは、0、1、2、3または4であり、
tは、複数出現する場合、互いに独立に、0、1、2または3であり、
uおよびvは、それぞれ互いに独立に、0、1または2であり、
wは、0または1であり、
xおよびyは、それぞれ互いに独立に、0または同一または異なって1〜12の整数であり、
zは0または1であり、隣接するxまたはyが0の場合、zは0であり、
ただし、ベンゼンおよびナフタレン環は、1個以上の同一または異なる基Lで追加的に置換されていてもよい。
【0164】
重合LCまたはRMフィルムの一般的な調製は通常の専門家に既知であり、文献、例えば、D.J.Broer、G.Challa、G.N.Mol、Macromol.Chem、1991年、192巻、59頁に記載されている。典型的には、重合性LCまたはRM材料を基板上にコートまたはそうでなければ塗工し、そこで均一な方向に配向させ、例えば、熱または化学線照射に曝露して、好ましくは光重合により、非常に好ましくはUV−光重合により、選択された温度において、それのLC相中でその場で重合し、LCまたはRM分子の配向を固定する。必要に応じて、LCまたはRM材料をせん断またはアニールする、基板の表面処理、またはLCまたはRM材料に界面活性剤を添加するなどの追加的な手段により均一な配向を更に促進できる。
【0165】
重合は、例えば、熱または化学線放射に重合性材料を曝露して達成する。化学線放射とは、UV光、IR光または可視光などの光による照射、X線またはガンマ線による照射またはイオンまたは電子などの高エネルギー粒子による照射を意味する。好ましくは、重合はUV照射により行う。化学線放射ソースとしては、例えば、単一のUVランプまたはUVランプのセットを使用できる。高いランプ出力を用いると、硬化時間を短くできる。もう1つの可能な化学線放射ソースは、例えば、UV、IRまたは可視レーザーなどのレーザーである。
【0166】
重合は、好ましくは、化学線放射の波長において吸収する開始剤の存在下で行う。この目的のために、重合性LC材料は、好ましくは0.01〜10%、非常に好ましくは0.05〜5%の濃度で、好ましくは1種類以上の開始剤を含む。例えば、UV光を用いて重合する場合、UV照射下で分解し、重合反応を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する光開始剤を使用できる。アクリレートまたはメタクリレート基を重合するには、好ましくは、ラジカル光開始剤を使用する。ビニル、エポキシドまたはオキセタン基を重合するには、好ましくは、カチオン性光開始剤を使用する。また、加熱したときに分解し、重合反応を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する熱重合開始剤を使用することも可能である。典型的なラジカル光開始剤は、例えば、商業的に入手できるIrgacure(登録商標)またはDarocure(登録商標)(Ciba Geigy社、Basel、スイス国)である。典型的なカチオン性光開始剤は、例えば、UVI 6974(Union Carbide社)である。
【0167】
LCまたはRM材料は、1種類以上の添加剤、例えば、触媒、増感剤、安定剤、禁止剤、連鎖移動剤、共反応モノマー、界面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤、接着剤、流動性改良剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、助剤、着色剤、色素、顔料またはナノ粒子などを追加的に含むことができる。
【0168】
本発明の配向LCまたはRM層およびポリマーフィルムは、例えば、LCDにおいて大きな視野角におけるコントラストおよび輝度を改良し色度を減少するために、リターデーションまたはコンペンセーションフィルムとして使用できる。それらは、LCD内のスイッチ可能なLCセルの外側、または、通常、ガラス基板である基板間で使用でき、スイッチ可能なLCセルを形成し、およびスイッチ可能なLC媒体を含有する(インセル(incell)用途)。
【0169】
また、本発明のポリマーフィルムは、他のLCまたはRM材料のための配向フィルムとしても使用できる。例えば、スイッチ可能なLC媒体の配向を誘発または改良するために、または、その上にコートされた重合性LC材料の引く続く層を配向するために、LCD中においてポリマーフィルムを使用できる。このようにして、重合LCフィルムの積層体を調製できる。
【0170】
本発明の配向LCまたはRM層およびポリマーフィルムは従来のLCディスプレイ、例えば、DAP(deformation of aligned phases:配向相変形)、ECB(electrically controlled birefringence:電界効果複屈折)、CSH(colour super homeotropic:カラースーパーホメオトロピック)、VA(vertically aligned:垂直配向)、VANまたはVAC(vertically aligned nematicまたはcholesteric:垂直ネマチック配向または垂直コレステリック配向)、MVA(multi−domain vertically aligned:マルチドメイン垂直配向)またはPVA(patterned vertically aligned:パターン化垂直配向)モードなどの垂直配向のディスプレイ;OCB(optically compensated bend cellまたはoptically compensated birefringence:光学補償ベントセルまたは光学補償複屈折)、R−OCB(reflective OCB:反射OCB)、HAN(hybrid aligned nematic:ハイブリッドネマチック配向)またはパイセル(π−cell)モードなどのベンドまたはハイブリッド配向のディスプレイ;TN(twisted nematic:ツイストネマチック)、HTN(highly twisted nematic:高ツイストネマチック)、STN(super twisted nematic:超ツイストネマチック)、AMD−TN(active matrix driven TN:アクティブマトリックス駆動TN)モードなどのツイスト配向のディスプレイ;IPS(in plane switching:面内スイッチング)モードのディスプレイ、または光学的等方性相においてスイッチングするディスプレイにおいて使用できる。
【0171】
本発明は、好ましい実施形態を特に参照して、上および下に記載される。そこでは、本発明の精神および範囲より逸脱することなく、各種の変更および改変を行うことができると理解すべきである。特に、直接粒子ビーム蒸着は、他の粒子ビームソースを使用して実現できる。例えば、[V.DudnikovおよびA.Westner、「Ion source with closed drift anode layer plasma acceleration」、Review of Scientific Instruments、73巻(2号)、729頁(2002年)]に従い、陽極層ソースを直接蒸着モードにおいて動作できる。上記の配向多重層を一つずつ蒸着することは、1つより多い粒子ビームからの同時蒸着に置き換えることができる。直接蒸着を提供する粒子ビームに加え、これらのビームの幾つかは、各種ターゲットのスパッタリングによって生成できる。蒸着およびエッチング方式の提案される組み合わせを、それらが同時に起きるように改変できる。
【0172】
下の例において解説のために使用される配向フィルムは、直接蒸着法によって蒸着でき、配向の目的のために使用できるフィルムの多様性を限定しない。粒子ビームのための他の可能な例は、SiN、Si、Si、Si、Cおよび多くの他のものである。
【0173】
配向コーティングの蒸着のために使用される基板は、上記の好ましい実施形態において使用される種類のものに限定されない。この目的のために、例えば、結晶板、金属ホイル、各種ポリマーの等方性および異方性片を使用できる。
【0174】
従来用いられてきたLCは、当該技術において既知である。好ましくは、それらはネマチックLCである。あるいは、キラルなスメクチックC相を示す強誘電体LCまたはコレステリックLCを用いることができる。また、RMに加え、提案される技術は、リオトロピックLCまたは周囲温度において過冷却状態にあるLCなどの「パッシブ」LCの他のタイプの配向のためにも使用できる。
【0175】
本発明を限定することなく本発明を解説するために役立つ以下の例を参照すれば、本発明を更によく理解できるであろう。例は3つの群に分けられる。第1の群(例1.1〜1.7)は、従来のLCを配向するための本発明による技術の能力を示す。第2の群(例2.1〜2.13)は、RMの配向および対応するフィルムのリターデーション特性を解説する。第3の群(例3.1および3.2)においては、直接蒸着と、粒子ビーム配向のエッチング法との組み合わせを考える。
【実施例】
【0176】
<例1>
<1.従来のネマチックLCの配向>
<例1.1>
以下の方法で、ガラス基板上にa−CHコーティングを生成する:アセトンおよびイソプロパノールで事前清浄され、2×2cmの寸法を有するガラス/ITOスライドを、ソースに面しているITO層を有し、エンドHallソースの真下で真空チャンバー中において移動プラットホーム上に斜めに設置する(図3aに示される通り)。プラットホームの移動速度は2mm/秒である。ビーム入射角αとして定義されるソースの対称軸(粒子ビーム方向)と基板の法線との間のは85°である(図3c参照)。基礎真空の210−5Torrまでチャンバーをポンプで排気する。次に、チャンバーをArで充填して、Arプラズマのビームを生成し、基板を事前清浄するために使用する。事前清浄のパラメータは、次の通りである:アルゴン圧710−4Torr、陽極ポテンシャルU=110V、放電電流I=1A、加工時間5分。その後、CHおよびArガスの混合物をチャンバー内に供給し、15nmの厚みを有するa−CHフィルムの傾いている蒸着を実現する。蒸着のパラメータは、次の通りである:メタンの分圧PCH4=1.210−3Torr、アルゴンの分圧PAr=0.710−4Torr、陽極ポテンシャル70V、放電電流I=2A。
【0177】
この方法によって調製された基板を、非対称LCセル用のテスト基板として使用する。第2の基板(参照基板)は、ポリイミド(PI)SE410(日産化学工業社より商業的に入手可)の層によってコートされ、引き続きラビングされた、2×3cmのガラス/ITOスライドである。これらの2つ基板より、ラビングおよび蒸着の方向が逆平行となるようセルを組み立てる。セルの間隔は、15μmのスペーサーで維持する。基板を押し付け、エポキシ接着剤で接着する。ネマチックLC混合物(メルク台湾より商業的に入手可)ZLI−2293をセル内に充填する。
【0178】
図4に、一組のa)交差およびb)平行偏光子の間で見た、このセルの写真を示す。LC混合物は、高度に均一な平面配向を示していることが明らかである。セルにおいて90°ツイストしているダイレクターの立体配置は、蒸着a−CHフィルム上においてLC混合物が蒸着面に対して直交して配向していることを意味する。この配向モードにおいて、LC混合物のプレチルト角は本質的にゼロに等しい。
【0179】
<例1.2>
a−CHFコーティングを、例1.1と同様の方法でガラス基板上に生成する。動作ガス混合物の成分は、CHおよびCFである。蒸着のパラメータは、次の通りである:PCH4=1.210−3Torr、PCF4=0.810−4Torr、U=90V、I=2A、α=85°。得られるa−CHFコーティングの厚みは、15nmである。例1.1において記載される通りの非対称セルとして調製するために、この基板を、ラビングされたPI層を有する参照ガラス基板と組み合わせる。このセルにおいて、ネマチックLC混合物ZLI−2293は、試験a−CHFフィルム上において、蒸着面に対して直交を向いている容易配向軸を有する優れた配向を示す。
【0180】
<例1.3>
a−SiOコーティングを、例1.1と同様の方法でガラス基板上に生成する。動作ガス混合物の成分は、SiHおよびOである。蒸着のパラメータは、次の通りである:PSiH4=210−3Torr、PO2=3.510−4Torr、U=60V、I=2A、α=85°。得られるa−SiOコーティングの厚みは、15nmである。例1.1において記載される通りの非対称セルとして調製するために、この基板を、ラビングされたPI層を有する参照ガラス基板と組み合わせる。ネマチックLC混合物E7(メルク社、Darmstadt市、ドイツ国より商業的に入手可)を、このセルに充填する。LC混合物は、試験a−SiOフィルム上において、蒸着面に対して直交を向いている容易配向軸を有する優れた配向を示す。
【0181】
<例1.4>
第1および第2の粒子ビームの基板上への射影が直交するように第1のa−CHコーティングを第2のa−CHコーティングでオーバーコートする以外は、例1.1と同様にして、a−CHコーティングをガラス/ITOスライド上に調製する。第2の蒸着工程における蒸着パラメータは、第1のものと同一である:PCH4=1.210−3Torr、PAr=0.710−4Torr、U=70V、I=2Aおよびα=85°。第2のa−CH層の厚みは1nmである。それにより得られる基板を、対称LCセルを調製するために使用する。第2の蒸着の方向が逆平行となる様式で基板を組み立てる。15μmの間隔のセルをエポキシ接着剤で接着し、ネマチックLC混合物ZLI−2293で充填する。図5に、a)電界がない状態およびb)10V、1kHzの電界がITO電極に印加されている場合について一組の交差偏光子の間で見る、このセルの写真を示す。これは、得られるセルにおいて優れた平面配向を示す。結晶回転法によって推定されるこのセルのプレチルト角は、およそ1°である。また、図5において、セルが電界において欠陥のないスイッチングを示すことも見て取れる。
【0182】
<例1.5>
二重a−CHFコーティングを、例1.4で記載される通りの連続する2回の相互に直交する蒸着の結果として、ガラス基板上に生成する。例1.4とは対照的に、動作ガス混合物の成分は、CHおよびCFである。蒸着のパラメータは、次の通りである:PCH4=1.210−3Torr、PCF4=0.810−4Torr、U=90V、I=2A、α=85°。第1および第2のa−CHFコーティングの厚みは、15nmおよび1nmである。これらの基板を使用して、例1.4に記載される通り、対称逆平行LCセルを調製する。セルにおけるZLI−2293の平面配向の品位は、図5と同じく高い。ZLI−2293のプレチルト角は、およそ2.4°である。セルは、電界において欠陥のないスイッチングを示す。
【0183】
<例1.6>
二重a−SiOコーティングを、例1.4で記載される通りの連続する2回の相互に直交する蒸着の結果として、ガラス基板上に生成する。例1.4とは対照的に、動作ガス混合物の成分は、SiHおよびOである。蒸着のパラメータは、次の通りである:PSiH4=210−3Torr、PO2=3.510−4Torr、U=60V、I=2A、α=85°。第1および第2のa−SiOコーティングの厚みは、15nmおよび1nmである。これらの基板を使用して、例1.4に記載される通り、対称逆平行LCセルを調製する。セルにおけるE7の平面配向品位は、図5と同じく高い。LC E7のプレチルト角は、1.2°である。セルは、電界において欠陥のないスイッチングを示す。
【0184】
<例1.7>
例1.2の通り、a−CHFコーティングを、2×3cmガラス/ITOスライド上に生成する。これらの基板を使用して、対向基板上の蒸着方向が逆平行となるように対称セルを調製する。セルは7μm厚である。それを、ネマチックLC混合物MJ961180(メルクジャパン社より商業的入手可)で充填する。結晶回転法によって推定されるセルにおけるこのLC混合物のプレチルト角は、89.2°である。a)電界がない状態およびb)10V、1kHzの電界がITO電極に印加されている場合について一組の交差偏光子の間で見る、このセルの写真を示す図6において見て取れる通り、セルは、電界において欠陥のないスイッチングを示す。このことは、得られるセルにおいて優れたホメオトロピック配向を示す。
【0185】
<2.RMの配向>
<例2.1>
例1.1の通り、幾つかのa−CHコーティングを2×3cmガラススライド上に蒸着する。全てメルク社、Darmstadt市、ドイツ国より商業的に入手可能な反応性メソゲン混合物RMM256C、RMM141(両者とも平面配向用に設計されている)、RMM19B(チルト配向用に設計されている)、およびRMM007およびRMM77(ホメオトロピック配向用に設計されている)を、35重量%の濃度でトルエン中に溶解する。それぞれのRMMの濾過された溶液を、a−CHフィルム上にスピンコートする(3000rpm、30秒)。蒸着直後、フィルムを50℃において45秒間ホットステージ上に置き、その後、高圧水銀ランプからのUV照射を施す(100mW/cm、1分)。結果として重合RMフィルムが得られる。
【0186】
RMM141およびRMM256Cのフィルムは、配向軸が偏光子の軸とa)0°およびb)45°の角度を形成している一組の交差偏光子の間で見るRMM256Cのフィルムの写真を示す図7に表される通り、高度に均一な平面配向を示す。RMM256Cのフィルムに関して偏光解析曲線(分析器の角度のテスト光入射角に対する)を示し、ただし、上の曲線はサンプル長軸xの水平配向に、下の曲線は垂直配向に対応する(図3c参照)図8において見て取れる通り、これらのフィルムは正のAプレートコンペンセーションフィルムの特性を有する。点は実験データであり、一方、連続曲線は実験データに合わせた結果である。
【0187】
今度は、RMM007およびRMM77のフィルムは、サンプル長軸xが偏光子の軸とa)0°およびb)45°の角度を形成している一組の交差偏光子の間で見るRMM77のフィルムの写真を示す図9において見て取れる通り、非常に高品位のホメオトロピック配向を示す。光学的に、これらのフィルムは、フィルムの偏光解析曲線を示す図10において見て取れる通り、正のCプレートコンペンセーションフィルムに等しい。点は実験データであり、一方、連続曲線は実験データに合わせた結果である。サンプル長軸xの垂直および水平位置に関して測定された曲線は重なっている。
【0188】
RMM19Bのフィルムも、極めて良好な品位のチルト配向を示す。それは、このフィルムの偏光解析曲線を示し、配向軸の面内射影の垂直配向に、下の曲線は水平配向に対応する図11において見て取れる通り、正のOプレートコンペンセーションフィルムの特性を有する。これらのデータは、表2の対応する列にまとめられている。
【0189】
【表2】

<例2.2>
蒸着法におけるガス混合物がCH/Nであり、蒸着のパラメータが次の通り:PCH4=710−4Torr、PN2=1.210−3Torr、U=80V、I=4A、α=85°である以外は例1.1の通り、幾つかのa−CHNフィルムを2×3cmガラススライド上に蒸着する。コート厚はd=15nmである。得られるフィルムを、例2.1の通り種々のRM混合物を配向するために使用する。配向試験およびリターデーション測定の結果を、表2の対応する列にまとめる。
【0190】
<例2.3>
蒸着法におけるガス混合物がCH/CFであり、蒸着のパラメータが次の通り:PCH4=1.210−3Torr、PCF4=0.810−4Torr、U=90V、I=2A、α=85°である以外は例1.1の通り、幾つかのa−CHFフィルムを2×3cmガラススライド上に蒸着する。コート厚はd=15nmである。得られるフィルムを、例2.1の通り種々のRM混合物を配向するために使用する。配向試験およびリターデーション測定の結果を、表2の対応する列にまとめる。
【0191】
<例2.4>
蒸着法におけるガス混合物がSiH/Oであり、蒸着のパラメータが次の通り:PSiH4=210−3Torr、PO2=3.510−4Torr、U=60V、I=2A、α=85°である以外は例1.1の通り、幾つかのa−SiOフィルムを2×3cmガラススライド上に蒸着する。得られるa−SiOコーティングの厚みは15nmである。これらのコーティングを、例2.1の通り種々のRM混合物を配向するために使用する。配向試験およびリターデーション測定の結果を、表2の対応する列にまとめる。
【0192】
<例2.5>
蒸着法におけるガス混合物がSiH/CF/Oであり、蒸着のパラメータが次の通り:PSiH4=210−3、PCF4=710−4、PO2=3.510−4、U=80V、I=4A、α=85°である以外は例1.1の通り、幾つかのa−SiOフィルムを2×3cmガラススライド上に蒸着する。得られるa−SiOコーティングの厚みは15nmである。これらのコーティングを、例2.1の通り種々のRM混合物を配向するために使用する。配向試験およびリターデーション測定の結果を、表2の対応する列にまとめる。
【0193】
<例2.6>
例1.1に記載される通り、a−CHコーティングを2×3cmの等方性COP片上に蒸着する。例2.1に記載される通り、a−CHフィルムの最表面上に平面RMM073のフィルムをスピンコートする。図12は、配向軸(y軸、図3c参照)が一方の偏光子に対して45°の角度を向いている1組の交差偏光子間で見る場合で、それぞれ、(a)および(b)は、フィルムの曲がっていないおよび曲がった状態に対応するRMM073のフィルムの写真を示す。これは、正のAプレートの光学的特性を有する、このフィルムの高い光学的品位を示す。
【0194】
<例2.7>
例1.1に記載される通り、a−CHコーティングを2×3cmの等方性TAC片上に蒸着する。例2.1に記載される通り、それの最表面上にホメオトロピックRMM007のフィルムをコートする。図13は、サンプルの長軸xが一方の偏光子に対して45°の角度を向いている1組の交差偏光子間で見る場合で、それぞれ、(a)および(b)は、フィルムの曲がっていないおよび曲がった状態に対応するRMM073のフィルムの写真を示す。これは、正のCプレートの光学的特性を有する、このフィルムの高い光学的品位を示す。
【0195】
<例2.8>
例1.1に記載される通り、a−CNコーティングを、カラーフィルターフィルムを含有する2.5×2.5cmのガラススライド上に蒸着する。例2.1に記載される通り、カラーフィルターフィルムの最表面上に、平面RMM256Cのフィルムをスピンコートする。それは光学的品位が高く、正のAプレートの光学的特性を有する。
【0196】
<例2.9>
例1.1および1.2に記載される通り、a−CHFコーティングを、カラーフィルターフィルムを含有する2.5×3.5cmのガラススライド上に蒸着する。例2.1に記載される通り、カラーフィルターフィルムの最表面上に、ホメオトロピックRMM007のフィルムをコートする。それは光学的品位が高く、正のAプレートの光学的特性を有する。
【0197】
<例2.10>
法線蒸着(α=0)を実現する以外は例1.1および1.2に記載される通り、a−CHFコーティングを、2.5×3.5cmのガラススライド上に蒸着する。例2.1に記載される通り、カラーフィルターフィルムの最表面上に、ホメオトロピックRMM007のフィルムをコートする。このフィルムは高い光学的品位を示し、正のCプレートの光学的特性を有する。
【0198】
<例2.11>
例1.1および1.2に記載される通り、a−CHFコーティングを、2×3cmのガラススライド上に蒸着する。例2.1に記載される通り、それの最表面上に、平面RMM256Cをコートする。得られるRMフィルムは、均一な平面配向を示す。第1のRMフィルムの最表面上に、第2のa−CHFコーティングを第1のコーティングに等しい条件下で蒸着する。今度は、例2.1に記載される通り、この第2のコーティングをホメオトロピックRMM007によってコートする。このようにして、図14(a)に概略的に示す通り、サブフィルムにおいて平面およびホメオトロピック配向の二重フィルムを得る。図15は、平面配向を有するサブフィルムの対応する偏光解析曲線を示し、ただし、上の曲線はサンプルの面内長軸(x軸)の水平配向に、下の曲線は垂直配向に対応する。点は実験データであり、一方、連続曲線は実験データに合わせた結果である。このフィルムの面内リターデーションは、光の入射角に非常に弱く依存していることが明らかである。
【0199】
<例2.12>
例1.1および1.2に記載される通り、a−CHFコーティングを、2×3cmのガラススライド上に蒸着する。例2.1に記載される通り、それの最表面上に、平面RMM256Cをコートする。得られるRMフィルムは、均一な平面配向を示す。第1のRMフィルムの最表面上に、第2のa−CHFコーティングを第1のa−CHFコーティングに直交する方向で蒸着する。これを、今度は、例2.1に記載される通り、平面RMM256Cによってコートする。このようにして、図14(b)に示す通り、直交する方向に配向される2つの平面RMサブフィルムを有する二重フィルムを得る。図16は、この二重フィルムに関する偏光解析曲線を示し、ただし、上の曲線はサンプル軸xの水平配向に、下の曲線は垂直配向に対応する。点は実験データであり、一方、連続曲線は実験データに合わせた結果である。これは、この二重フィルムが負のCプレートのリターデーション特性を有することを示す。
【0200】
<例2.13>
例1.1および1.2に記載される通り、a−CHFコーティングを、2×3cmのガラススライド上に蒸着する。例2.1に記載される通り、それの最表面上に、平面RMM256Cをコートする。得られるRMフィルムは、均一な平面配向を示す。第1のRMフィルムの最表面上に、第2のa−CHFコーティングを第1のコーティングに等しい条件下で蒸着する。今度は、この第2のコーティングを、第2の平面RMM256Cフィルムによってコートする。このようにして、図14(c)に示す通り、平行な配向を有する2つの平面RMサブフィルムを含有する二重フィルムを得る。図17は、それぞれ互いに平行な方向に配向している(yサンプル軸の方向、図3c参照)この二重フィルムに関する偏光解析曲線を示し、ただし、上の曲線はサンプル長軸xの水平配向に、下の曲線は垂直配向に対応する。点は実験データであり、一方、連続曲線は実験データに合わせた結果である。これは、この二重フィルムが正のAプレートのリターデーション特性を有することを示す。単一のフィルムのリターデーションと比較して、このフィルムの面内リターデーションは2倍である。
【0201】
<3.直接蒸着およびエッチング法の組み合わせ>
<例3.1>
例1.1の通り、幾つかのa−CHコーティングをガラス基板上に生成する。引き続いて、エンドHallソースを清浄方式内へスイッチし、基板を3分間エッチングする。清浄条件は、例1.1と同一である。対称セルを、対向基板上の粒子ビーム処理方向が逆平行となるように組み立てる。セルは15μmの厚みを有し、ZLI−2293で充填する。ビーム加工方向に均一なLC配向が、セル内で観察される。プレチルト角は、およそ2.6°である。
【0202】
<例3.2>
例1.1および1.2に記載される通り、a−CHFコーティングを、2×3cmのガラススライド上に蒸着する。例2.1に記載される通り、それの最表面上に、ホメオトロピックRMM007をコートする。得られるRMフィルムは、高度に均一なホメオトロピック配向を示す。引き続いて、このRMフィルムを、直線的構成の陽極層ソースからのArビームによって斜めにエッチングする。加工条件は、次の通りである:基礎真空P=4.5 10−5Torr、動作圧PAr=6 10−4Torr、陽極ポテンシャルU=600V、ビームにおけるイオン電流密度j=7μA/cm、プラズマビーム入射角α=85°。処理されたRMフィルムの最表面上に、平面RMM256Cのフィルムをスピンコートする。優れた光学的均一性の二重フィルムを得る。この二重フィルムの偏光解析曲線は、例2.11で記載されるものと同様である。
【図1a】

【図1b】

【図1c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶または反応性メソゲンを配向させるための配向フィルムを基板上に調製する方法であって、1〜100eVの主粒子エネルギーを有する弱く加速された粒子ビームに、直接またはマスクを介して、該基板を曝露し、それにより、該基板上に粒子の蒸着層を提供する工程を含む方法。
【請求項2】
前記粒子ビームはプラズマビームであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子ビームはイオンビームであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板は有機または無機材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基板は、ガラス、石英、シリコンまたはプラスチックプレートまたはホイルより選択され、1つ以上の電極層またはLC分子を電気的にアドレスするための他の電子的構造、またはカラーフィルターを含有してもよいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記配向フィルムは、a−CH、a−CHF、a−CHN、a−SiO、a−SiN、a−SiO、a−SiOから成る群より選択される材料の層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子またはプラズマビームは、1種類以上の希ガス(Ar、Kr、He、Xe、Ne)またはHによってドープされていてもよい、炭化水素(CH、C、C、Cなど)、フッ化炭素(CF、Cなど)、SiH、NまたはOなどの反応性ガスから成る群より選択されるガスまたは2種類以上のガスの混合物より生成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記基板の少なくとも一部分、好ましくは全体が、プラズマまたはイオンビームソースからの粒子ビームに曝露され(蒸着工程)、ただし、該粒子ビームは、ソースの対称軸(粒子ビーム方向)が前記基板の法線に対して角度(「入射角」)を形成するように該基板に向けられており、ただし、該入射角は0°〜89°、好ましくは70°〜85°であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子またはプラズマビームソースはエンドHallソースであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記主粒子エネルギーは1〜50eVであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記配向フィルム(第1の配向フィルム)を、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によって調製される第2の配向フィルムでコートし、ただし、第2の配向フィルムを調製するプロセスにおける粒子ビームは、第1の配向フィルムを調製するプロセスと同一の方向または異なる方向に向けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
好ましくは、100eVより高い主粒子エネルギーを有する希ガスから成る群より選択される、好ましくは、ガスまたは2種類以上のガスの混合物より生成される粒子ビームに基板を曝露することによって、該蒸着工程前の該基板に事前清浄工程を施すことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
好ましくは、100eVより高い主粒子エネルギーを有する希ガスから成る群より選択される、好ましくは、ガスまたは2種類以上のガスの混合物より生成される粒子ビームに基板を曝露することによって、ただし、該粒子ビームは、入射角が30°〜89°、非常に好ましくは70°〜85°となるよう該基板に向けられて、該蒸着工程後の該配向層に表面エッチング工程を施すことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法によって得られる配向フィルム。
【請求項15】
前記配向フィルム層上に塗工される液晶(LC)または反応性メソゲン(RM)の配向のための請求項14に記載の配向フィルムの使用。
【請求項16】
請求項14に記載の配向フィルムと、それの上に塗工された1つ以上のLCおよび/またはRM層とを含む多重層。
【請求項17】
該LCまたはRM層に誘発される配向は、平面、ホメオトロピック、チルトまたはスプレイ配向であることを特徴とする請求項16に記載の多重層。
【請求項18】
請求項14に記載の2つ以上の配向フィルムおよび2つ以上のRM層を交互の配列で含み、ただし、該RM層は重合されていてもよいことを特徴とする請求項16または17に記載の多重層。
【請求項19】
請求項14に記載の2つの配向フィルムおよび2つの重合RM層を交互の配列で含み、ただし、該RM層は平面層であり、ただし、両RM層における該RMの配向方向は、それぞれ互いに平行または垂直であることを特徴とする請求項16または17に記載の多重層。
【請求項20】
請求項14に記載の2つの配向フィルムおよび2つの重合RM層を交互の配列で含み、ただし、一方のRM層は平面層であり、もう一方のRM層はホメオトロピック層であることを特徴とする請求項16または17に記載の多重層。
【請求項21】
請求項16〜20のいずれか一項に記載の多重層を調製する方法であって、
A)1〜100eVの主粒子エネルギーを有する弱く加速された粒子ビームに、直接またはマスクを介して、基板を曝露し、それにより、直接粒子蒸着によって第1の配向フィルムを形成する工程(蒸着工程)と、
A1)任意工程として、100eVを超える主エネルギーを有する加速された粒子ビームに、直接またはマスクを介して、蒸着配向フィルムを曝露し、それにより、蒸着フィルムの異方性エッチングを提供する工程(表面エッチング工程)と、
B)工程Aにおいて調製された第1の配向フィルム上に、1種類以上のLCおよび/またはRMを含み、任意成分として、1種類以上の重合性非メソゲン化合物を含む1つ以上の層を塗工する工程と、
C)任意工程として、工程Bにおいて調製された少なくとも1つの層において、1種類以上のRM(1種類または多種類)および/または重合性非メソゲン化合物(1種類または多種類)を重合する工程と、
D)任意工程として、工程BまたはCにおいて調製されたLCまたはRM層(1つまたは複数)上に、工程Aにおいて記載される通りの蒸着工程によって、第2の配向フィルムを蒸着する工程と、
D1)任意工程として、工程A1において記載される通りの表面エッチング工程を第2の配向フィルムに施す工程と、
E)任意工程として、工程Dにおいて調製された第2の配向フィルム上に、1種類以上のLCおよび/またはRMを含み、任意成分として、1種類以上の重合性非メソゲン化合物を含む1つ以上の層を塗工する工程と、
F)任意工程として、工程E)において調製された少なくとも1つの層において、1種類以上のRM(1種類または多種類)および/または重合性非メソゲン化合物(1種類または多種類)を重合する工程と、
G)任意工程として、工程A〜Fによって調製された多重層上に、工程Aにおいて記載される通りの蒸着工程によって、耐傷性、ガスバリア性または反射防止性を有する最上層を蒸着する工程と
を含み、
ただし、工程D)〜F)は、1回または2回以上繰り返しても構わない方法。
【請求項22】
光学的、電子的および電気光学的用途および装置における、請求項14〜20のいずれか一項に記載の配向フィルムまたは多重層の使用。
【請求項23】
請求項14〜20のいずれか一項に記載の配向フィルムまたは多重層を含む、光学的、電子的または電気光学的装置またはそれの素子。
【請求項24】
電気光学的ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、光学的フィルム、偏光子、コンペンセータ、ビームスプリッター、反射フィルム、配向フィルム、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンピングホイル、カラー画像、装飾またはセキュリティ用マーキング、LC顔料、接着層、非線形光学(NLO)装置、光学的情報記憶装置、電子的装置、有機半導体、有機電界効果型トランジスタ(OFET)、集積回路(IC)、薄膜トランジスタ(TFT)、無線識別(RFID)タグ、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、有機光起電(OPV)装置、有機太陽電池(O−SC)、有機レーザーダイオード(O−レーザー)、有機集積回路(O−IC)、照明装置、センサー装置、電極材料、光伝導体、光検出器、電子写真記録装置、コンデンサ、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、伝導性基板、伝導性パターンから成る群より選択される請求項22に記載の装置または素子。

【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2011−514983(P2011−514983A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547981(P2010−547981)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000704
【国際公開番号】WO2009/106208
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】