説明

相乗的に増強された消毒用液

約10ppm〜約5000ppmの範囲の亜塩素酸ナトリウムと、約0.05ppm〜約500ppmの範囲のミリスタミドプロピルジメチルアミンとを含んでなる、相乗的に増強された消毒用液。さらに、0.05ppm〜500ppmの範囲のミリスタミドプロピルジメチルアミンと、約0.01ppm〜約100ppmの範囲のポリヘキサメチレンビグアニドとを含んでなる、相乗的に増強された消毒用液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して消毒用液に関する。より詳しくは、本発明は、a)多目的のコンタクトレンズ消毒用液、b)皮膚または目のうち少なくともいずれか一方を消毒するための抗菌性/殺菌性/抗ウイルス性/抗真菌性の薬剤、c)褥瘡およびその他の皮膚疾患の治療用調製物、ならびにd)多目的の硬表面消毒・清浄用液、として使用するための相乗的に増強された消毒用液に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2006年5月10日出願の米国仮特許出願第60/799,380号ならびに2006年7月12日出願の米国仮特許出願第60/830,251号の利益を主張するものであり、前記出願いずれの教示内容も参照により明らかに本願に組込まれる。
【0003】
先行技術には、様々な物品を消毒するために使用可能であるか、または、消毒処理と、治癒支援のため微生物の生育を抑制もしくは防止することが望ましい皮膚障害(例えば創傷、熱傷、表皮剥離、感染)の治療と、のうち少なくともいずれか一方を行うべく生物に局所施用するために使用可能であるか、少なくともいずれかであるとされてきた多数の抗微生物薬が含まれる。そのような局所用抗微生物薬には、ヨウ素、マーキュロクロム、過酸化水素および二酸化塩素のような様々な活性殺菌成分が含められてきた。
【0004】
二酸化塩素の前駆体である亜塩素酸塩は、飲用水のための消毒薬として、またコンタクトレンズケア用液のための防腐剤として使用可能であることが知られている。しかしながら、亜塩素酸塩は、皮膚への局所施用に許容可能かつ安全な濃度範囲内(例えば50〜1000ppm)では弱い殺菌作用しか示さない。したがって、亜塩素酸塩は、皮膚に局所施用するための調製物中の殺菌用活性成分としては通常使用されてこなかった。
【0005】
複合抗生物質も、熱傷、創傷、ならびに皮膚感染症および眼感染症の治療的処置に一般的に使用されてきた。抗生物質は有効な治療形態を提供する場合もあるが、臨床環境における抗生物質の使用にはいくつかの危険を伴うことが多い。これらの危険には、限定するものではないが(1)身体の正常細菌叢が変化し、その結果抗生物質耐性の生物の異常増殖による「重複感染」を生じること;(2)直接的な抗生物質の毒性、特に長期使用に伴うものであって、抗生物質の種類に応じて腎臓、肝臓および神経組織に損傷をもたらす可能性のあるもの;(3)それ以上の抗生物質治療を受け付けない抗生物質耐性の微生物群が発生すること、を挙げることができる。
【0006】
小さな創傷および膿瘍であっても、ある種の患者またはある種の条件下のうち少なくともいずれか一方において治療が困難な場合もあるが、好結果をもたらす治療を目指した特定の課題を提示する乾癬および皮膚潰瘍のような良く知られた皮膚障害も存在する。
【0007】
乾癬は非伝染性の皮膚障害であり、最も一般的には、炎症を起こして腫れた皮膚病変が銀白色の鱗屑で覆われたものとして現れる。この最も一般的なタイプの乾癬は「プラーク乾癬」と呼ばれる。乾癬は様々な種類および重症度で現れる。タイプの異なる乾癬が示す特徴は、例えば膿のような水疱(膿疱性乾癬)、皮膚の重篤な痂皮形成(乾癬性紅皮症)、滴状の斑点(滴状乾癬)および滑らかな炎症病変(逆乾癬)などである。
【0008】
乾癬に遺伝的要素があることは一般に認められており、また自己免疫性の皮膚障害であることが最近確証されたが、乾癬の原因は現時点では不明である。3人中およそ1人に乾癬の家族歴が報告されるものの、遺伝のパターンはない。該疾患の明白な家族歴を持たない小児が乾癬を発症する多くの症例が存在する。
【0009】
任意の個体における乾癬の発生は、何らかの引き金となる事象または「トリガー要因」に依存する可能性がある。乾癬の発生に影響すると考えられる「トリガー要因」の例には、敗血性咽頭炎のような全身感染症、皮膚損傷(ケブネル現象)、ワクチン接種、ある種の薬物投与、ならびに筋肉内注射もしくは経口によるステロイド投与が挙げられる。何らかが引き金となり、ある人の遺伝的な乾癬発症傾向を一旦触発すると、次には免疫系が引き金となって過剰な皮膚細胞の複製を引き起こすと考えられている。
【0010】
皮膚細胞は、考えられる2つのプログラム、すなわち正常な増殖または創傷治癒、に従うようにプログラム設定されている。正常な増殖パターンでは、皮膚細胞は基底細胞層の中で作られ、次に表皮を通って角質層、皮膚の最外層へと移行する。死細胞は新しい細胞が生まれるのとほぼ同じ速さで皮膚から脱落し、バランスが維持されている。この正常なプロセスは細胞の誕生から死まで約28日を要する。皮膚が傷を受けると、再生的成熟(regenerative maturation)としても知られる創傷治癒プログラムが誘発される。細胞は、理論上は創傷に取って代わり該創傷を修復するために、非常に速い速度で作られる。血液供給も増加し、局所的な炎症も生じる。多くの点で、乾癬の皮膚は、創傷から治癒しつつある皮膚または感染のような刺激に反応している皮膚に類似している。
【0011】
病変部の乾癬は、この第2の増殖プログラムでの細胞増殖を特徴とする。乾癬の病変には創傷は存在しないが、皮膚細胞(「ケラチノサイト」と呼ばれる)はあたかも創傷があるかのようにふるまう。これらのケラチノサイトは正常な増殖プログラムから再生的成熟へと切り替わる。細胞が作られ、2 4日ほどで表面へと押し出されるが、皮膚は十分な速さで細胞を脱落させることができない。過剰な皮膚細胞は蓄積し、隆起した鱗片状の病変を形成する。病変を通常覆っている白色の鱗屑(「プラーク」と呼ばれる)は死んだ皮膚細胞からできており、病変の発赤は、急速に分裂している皮膚細胞の領域への血液供給の増加によってもたらされる。
【0012】
周知の乾癬治療法はないが、様々な治療処置について一部の患者に一時的な軽減をもたらすことが実証されている。しかしながら、現時点で一般に認められている乾癬治療の有効性は、著しい個人差に左右されている。その結果、患者およびその担当医は、最も有効な療法を発見するために実験の実施または治療法の併用のうち少なくともいずれか一方を行わなくてはならない場合がある。現在利用可能な乾癬治療法は、段階的な方法で実施されることが多い。段階1の治療には、a)局所用の医薬(例えば局所用のステロイド、局所用のレチノイド)、b)全身用のステロイド、c)コールタール、d)アントラリン、e)ビタミンD3および日光が含まれる。段階2の治療には、a)光線療法(例えば紫外線照射)、b)光化学療法(例えば放射線で活性化される薬剤の局所施用と、その後の同剤を活性化するための放射線照射との組み合わせ)ならびにc)併用療法が含まれる。段階3の治療には、a)メトトレキセート、経口用レチノイドおよびシクロスポリンのような全身性薬物療法、ならびにb)交代療法が含まれる。
【0013】
皮膚潰瘍は、圧迫、摩耗、または原発性/二次性の血管障害の結果生じることが知られている。褥瘡性潰瘍または床擦れは、長期にわたる圧迫の結果下になっている組織に損傷を生じることによって引き起こされる病変である。褥瘡性潰瘍は通常、肘関節部または股関節部のような骨ばった隆起部に発症する。長期にわたる圧迫は、多数の要因と合わせて、皮膚の破壊および持続性の潰瘍をもたらす。
【0014】
静脈性潰瘍は外傷に起因する場合もあれば、慢性静脈不全(CVI)の後で発症する場合もある。CVIでは、静脈弁が完全には閉じないため、血液が深部静脈系から穿通枝静脈を通って表在静脈系へと逆流できるようになっている。時間とともに、この血液の柱の重みにより水分およびタンパク質が周囲の組織へと滲み出し、その結果足関節が腫れて過度に色素沈着し、組織が破壊され、潰瘍が生じる。静脈性潰瘍は浅い場合もあるし、深く筋肉内まで及ぶ場合もある。下腿潰瘍は、動脈血管の圧迫もしくは閉塞、血管壁の変化、または慢性的血管収縮によって引き起こされた動脈不全を有する患者においても発症する可能性がある。ニコチンは動脈を収縮させ、アテローム斑の蓄積を促進し、炎症性の動脈疾患(バージャー病)および血管収縮性疾患(レイノー病またはレイノー症状)を悪化させるので、喫煙者は特に高い動脈疾患のリスクに直面している。虚血肢の外傷を原因とする動脈性潰瘍は激しい痛みを伴う可能性がある。動脈不全は、糖尿病患者における難治性潰瘍の原因となる可能性がある。しかしながら、ほとんどの糖尿病性潰瘍は糖尿病性神経障害に起因する。というのも、糖尿病性神経障害の患者は自身の足の痛みを感じることができず、外傷、窮屈すぎる靴からの圧迫、または皮膚の破壊を招きうる反復性のストレスに気づかないからである。
【0015】
コンタクトレンズを目から取り外す場合は必ず、再び装用するまで浸漬用かつ消毒用の溶液中に置かなければならない。浸漬用かつ消毒用の溶液は、下記の機能すなわち:1)レンズを目から取り外した後、レンズからの眼性分泌物の除去を支援すること;2)細菌に汚染されたレンズによる眼感染症を予防すること;ならびに3)装用中にレンズが到達する水和平衡の状態を維持すること、を有している。
【0016】
レンズ装用の間、粘液物質、脂質およびタンパク質がコンタクトレンズ上に蓄積し、その結果刺激、灼熱感および発赤によりレンズ装用が不快なものとなる。結果的には、視界がぼやけるようになる。この不快な問題を緩和するためには、そのソフトもしくはハードコンタクトレンズを、酵素系清浄剤および消毒用液を使用して定期的に清浄化かつ消毒するべく目から取り外さなければならない。ソフトコンタクトレンズに関連した深刻な合併症のうちの1つは、巨大乳頭結膜炎(GPC)といってよい。巨大乳頭結膜炎の発症は多くがソフトコンタクトレンズ合併症に関連した炎症反応によるものと考えられている。これは、ほとんどの場合コンタクトレンズ上へのタンパク質の蓄積を原因とする。GPCの症状は、無症状から、そう痒、上部眼瞼の浮腫、眼の充血、粘液様の分泌物、進行性のコンタクトレンズ不耐性に及ぶ。本発明の眼内清浄剤は、タンパク質蓄積物を効果的に清浄化し、角膜表面の微生物感染を防ぐと同時に分子状酸素を供給することにより角膜上皮細胞の健康を維持する。そうすることにより、本発明の眼内清浄剤はソフトおよびハードコンタクトレンズいずれの使用者にも便宜と利益とを提供する。
【0017】
ドライアイは、涙液の産生が不十分であるか、涙液の組成が不適当なため角膜および結膜を適切に湿らせることのできない症候群である。眼の涙液の様々な障害が原因で、眼の乾燥感、異物の存在する不快感が眼に生じる。ほとんどの例では、涙液膜がその正常な連続性を失い急速に崩壊する結果、自然な瞬目と瞬目との間にその構造を維持することができない。それらの涙液異常はいずれも複合的な原因を有する可能性がある。恐らく、最も一般的な種類のドライアイは涙液中の水性成分の減少によるものである。ドライアイを治療しないとさらに悪化して、より重症の上皮びらん、索状の上皮細胞、および角膜上の局所的ドライスポットを生じる可能性があり、これらは微生物感染によってさらに悪化する可能性がある。しかしながら、軽症のドライアイでは、眼の乾燥感および刺激感を人工涙液で解決することができる。したがって、角膜を潤滑化する特性とともに広域スペクトルの抗微生物活性を有する人工涙液は、快適性のみならず、損傷を受けた角膜表面の回復に対する有益な効果をも提供することができる。
【0018】
空中アレルゲンまたは手で媒介されるアレルゲンは通常、IgEを介した過敏性反応によるアレルギー性結膜炎を引き起こす。アレルギー性結膜炎は、眼瞼腫脹、結膜充血、乳頭状反応物、ケモシン(chemosin)、および粘着性の粘液様分泌物を含む、そう痒感、流涙、乾燥、および眼脂を伴う眼を呈する。涙液中にヒアルロン酸(人工涙液製剤に含まれている)が存在することにより、角膜表面がアレルゲンとの接触から保護されることになる。本発明の広域スペクトルの抗微生物薬は、角膜表面の細菌感染を防ぎ、分子状酸素の供給により角膜上皮細胞の健康も維持する。したがって、該抗微生物薬は、アレルゲンに感受性を有する眼に有益な効果をもたらす。
【0019】
細菌性角膜炎は世界的に失明の主要原因のうちの1つである。米国では、先進国における発生率の増加に寄与してきたコンタクトレンズ装用の流行と共に、概算で30,000例が毎年発症している。統計学的調査が示すように、米国では毎年コンタクトレンズ使用者100,000人につき約30人が潰瘍性角膜炎を発症し、したがって潰瘍性角膜炎は、失明を生じ得る可能性があるという観点から重大な公衆衛生上の問題となっている。眼瞼、眼瞼の瞬き、ならびに角膜および結膜の上皮細胞は、微生物の侵入に対する障壁を提供しているが、これらの防衛機構の1つ以上が障害を来す可能性がある。そのような障害には、眼瞼異常、角膜表面の露出、不十分な涙液産生、上皮の障害、薬の副作用、外傷、および切開手術を挙げることができる。細菌性角膜炎の、眼に関する症状発現は、時間とともに穿孔をもたらす可能性のある激しい浸潤および壊死を引き起こす傾向があるブドウ球菌感染および連鎖球菌感染において見出される。緑膿菌性角膜炎は急速に進行する傾向がある。この生物は、壊死性の潰瘍および穿孔をもたらす、プロテアーゼ、リパーゼおよびエラスターゼのような破壊酵素ならびに外毒素を産生する。セラチア菌性角膜炎は、侵攻性の潰瘍および穿孔を生じうる外毒素およびプロテアーゼの分泌とともに、表在性の傍中心性潰瘍として始まる。細菌性角膜炎が確立されるには、微生物付着物が宿主細胞の受容体に結合しなければならない。この結合が一旦生じれば、続いて炎症、壊死および血管新生の破壊的プロセスが生じうる。
【0020】
現在の細菌性角膜炎の治療は、主として広域抗生物質療法の使用に頼っている。そのような抗生物質には、スルホンアミド、トリメタプリン(trimethaprin)、およびキノロンが挙げられる。さらに、βラクタム、ペニシリン、セファラスポリン(cephalasporin)、アミノグリコシド、テトラサイクリン、クロラムフェニコールおよびエリスロマイシンも含まれる。そのような抗生物質が広く使用される一方で、該抗生物質は抗生物質耐性の病原体が出現するという点で誤用されるようになる可能性もある。さらに、抗生物質は細菌の増殖を停止させるにすぎず、プロテアーゼ酵素、内毒素または外毒素の活性は抑制しない。
【0021】
自由生活性アメーバであるアカントアメーバ(Acanthamoeba)によって引き起こされる角膜炎は、角膜が許容できる濃度のほとんどの抗微生物薬に対して該生物のシスト期が抵抗性であることから、成功裏に治療することが最も困難な眼感染症のうちの1つである。これまで、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)が局所用の0.02%溶液としてアカントアメーバ角膜炎の治療に使用されてきた。PHMBの使用によりアカントアメーバ角膜炎の治療は劇的に改善されたが、それでもかなりの割合の患者において再発し、PHMBによる治療後でも長期間かつ集中的な薬物療法が必要となっている。局所用の0.01%ミリスタミドプロピルジメチルアミン(MAPD)溶液も、アカントアメーバ角膜炎の治療における改良薬であることが示されている。しかしながら、比較的高濃度のこれらの治療薬は、患者に、例えば限定するものではないが角膜上皮の点状着色および瞼板結膜の変化などの副作用をもたらす場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記理由により、副作用を引き起こさずに患者の皮膚および眼のうち少なくともいずれか一方に使用することができる有効な殺菌剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、多目的のコンタクトレンズ消毒用液として使用するための有効で相乗的に増強された消毒用液を提供する。この多目的のコンタクトレンズ消毒用液は快適性を提供し、角膜上皮の点状着色および瞼板結膜の変化のような副作用は生じない。この相乗的に増強された消毒用液は、抗菌性/殺菌性/抗ウイルス性/抗真菌性の薬剤として、皮膚および眼の消毒のために使用することもできる。さらに、この相乗的に増強された消毒用液は、褥瘡およびその他の皮膚疾患の治療用の調製物として使用することができる。さらに、この相乗的に増強された消毒用液は、硬表面消毒・清浄剤として使用することができる。
【0024】
該多目的消毒用液は一般に、抗微生物薬の相乗効果をなす組み合わせ、例えば限定するものではないが亜塩素酸ナトリウムとミリスタミドプロピルジメチルアミン(MAPD)、またはミリスタミドプロピルジメチルアミン(MAPD)とポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、などを含んでいる。さらに、ミリスタミドプロピルジメチルアミンジメチコーンコポリオールホスファートを、有害な副作用を伴わずに本発明においてMAPDの代わりに使用することができる。
【0025】
MAPDは概して、上記消毒用液中に約0.05ppm〜約500ppmの濃度範囲で存在する。消毒用液中に、亜塩素酸ナトリウムは概して約10ppm〜約5000ppmの濃度範囲で存在する。消毒用中に、PHMBは概して約0.01ppm〜約100ppmの濃度範囲で存在する。さらに、該多目的消毒用液は任意選択で、金属イオン封鎖剤、界面活性剤、潤滑化剤、等張化剤、緩衝剤、粘性剤、タンパク質除去剤、または高分子量のポリマー剤のうち少なくともいずれかを組み入れることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
亜塩素酸ナトリウムとミリスタミドプロピルジメチルアミン(MAPD)、またはMAPDとポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)の組み合わせを含んでいる本発明の消毒用液は、微生物に対して非常に有効であることが見出された。さらに、本発明の組み合わせは相乗的に作用して、個々の抗微生物薬が従来の消毒用液中で使用されてきたよりもはるかに低い濃度でアカントアメーバのシストおよび栄養体に対する抗微生物活性および殺菌活性を示す。さらに、本発明の組み合わせは相乗的に作用して増強された抗ウイルス性活性および抗真菌活性を発揮する。
【0027】
本発明の1つの実施形態では、消毒用液は亜塩素酸ナトリウムとMAPDとを含み、亜塩素酸ナトリウムの濃度範囲は約10ppm〜約5000ppmであり、MAPDの濃度範囲は約0.05ppm〜約500ppmである。好ましい実施形態は、約10ppm〜約1500ppmの亜塩素酸ナトリウムと約0.05ppm〜約50ppmのMAPDとを含んでいる。特定の実施形態は、400ppmの亜塩素酸ナトリウムと5ppmのMAPDとを含んでいる。本発明のこの実施形態は、好ましくはpH範囲が約5.5〜約8.5であり、さらに一層好ましくはpH範囲が約6.5〜約7.5である。眼科用調製物において使用するための本発明の1つの実施形態は、約200ミリオスモル〜約340ミリオスモルの範囲の浸透張力を有することが好ましい。皮膚科用製剤において使用するための本発明の別の実施形態は、約50ミリオスモル〜約5000ミリオスモルの範囲の浸透張力を有することが好ましい。
【0028】
本発明の別の実施形態は、MAPDおよびPHMBを含んでいる消毒用液であって、MAPDが約0.05ppm〜約500ppmであり、PHMBは約0.01ppm〜約100ppmである消毒用液を構想している。好ましい実施形態は、約0.05ppm〜約50ppmのMAPDと約0.01ppm〜約10ppmのPHMBとを含んでいる。特定の実施形態は5ppmのMAPDと0.5ppmのPHMBとを含んでいる。本発明のこの実施形態では、該組成物の好ましいpH範囲は約5.0〜約9.0であり、より一層好ましいpH範囲は約6.5〜約7.5である。眼科用調製物において使用するための本発明の1つの実施形態は、約200ミリオスモル〜約340ミリオスモルの範囲の浸透張力を有することが好ましい。皮膚科用製剤において使用するための本発明の別の実施形態は、約50ミリオスモル〜約5000ミリオスモルの範囲の浸透張力を有することが好ましい。
【0029】
上記の相乗効果を有する消毒用液の組み合わせのいずれも、ミリスタミドプロピルジメチルアミンジメチコーンコポリオールホスファートを、有害な副作用を伴わずにMAPDの代わりに利用することができる。
【0030】
相乗効果を有する消毒用液の抗微生物活性は、エデト酸2ナトリウム(EDTA)のような金属イオン封鎖剤の追加によってさらに増強される。金属イオン封鎖剤は、カルシウムイオンを低減し、かつタンパク質除去の支援もする役割をはたす。更に、ポロキサマーおよびポロキサミンのような無毒で非イオン性の界面活性剤の追加により、本発明の消毒能力の相乗効果はさらに増大することになる。
【0031】
コンタクトレンズ装用者の快適性および受容性を高めるために、潤滑化剤、等張化剤、緩衝剤、粘性剤、およびタンパク質除去剤を、有効な消毒用液のための本発明の抗微生物薬の相乗効果的組み合わせの中に加えることができる。
【0032】
皮膚消毒の快適性および受容性を高めるために、潤滑化剤、等張化剤、緩衝剤、粘性剤、および高分子量のポリマー剤、例えばヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはカルボキシメチルセルロースを、有効な皮膚消毒用液のための本発明の抗微生物薬の相乗効果的組み合わせの中に加えることができる。
【0033】
本発明の1つの実施形態は、下記の処方すなわち
亜塩素酸ナトリウム 10ppm〜5000ppm
MAPD 0.05ppm〜500ppm
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05%〜1.0%
ホウ酸 0.05%〜5.0%
塩化ナトリウム 0.10%〜0.90%
EDTA 0.005%〜0.50%
ポロキサマー127 0.10%〜5.0%
塩化カリウム 0.14%
塩化カルシウム二水和物 0.02%
塩化マグネシウム六水和物 0.011%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 5.5〜8.5
を有する多目的の消毒用組成物を構想する。
【0034】
この実施形態は、好ましくは下記の処方すなわち
亜塩素酸ナトリウム 400ppm
MAPD 0.05ppm
ヒアルロン酸ナトリウム 0.10%
ホウ酸 0.25%
塩化ナトリウム 0.72%
EDTA 0.02%
ポロキサマー127 0.20%
塩化カリウム 0.14%
塩化カルシウム二水和物 0.02%
塩化マグネシウム六水和物 0.011%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 6.5〜7.5
を有する。
【0035】
別例として、この実施形態は下記の処方すなわち
亜塩素酸ナトリウム 10ppm〜5000ppm
MAPD 0.05ppm〜500ppm
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.05%〜5.0%
ホウ酸 0.05%〜5.0%
塩化ナトリウム 0.10%〜0.90%
EDTA 0.005%〜0.50%
ポロキサマー127 0.10%〜5.0%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 5.5〜8.5
を有してもよい。
【0036】
この実施形態の好ましい製剤は以下すなわち
亜塩素酸ナトリウム 1000ppm
MAPD 0.30ppm
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.35%
ホウ酸 0.25%
塩化ナトリウム 0.72%
EDTA 0.02%
ポロキサマー127 0.20%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 6.5〜7.5
のとおりである。
【0037】
本発明の別の実施形態は、下記の処方すなわち
PHMB 0.01ppm〜100ppm
MAPD 0.05ppm〜500ppm
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05%〜1.0%
ホウ酸 0.05%〜5.0%
塩化ナトリウム 0.10%〜0.90%
EDTA 0.005%〜0.50%
ポロキサマー127 0.10%〜5.0%
塩化カリウム 0.14%
塩化カルシウム二水和物 0.02%
塩化マグネシウム六水和物 0.011%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 5.0〜9.0
を有する多目的の消毒用組成物を構想する。
【0038】
この実施形態は下記の好ましい処方すなわち
PHMB 0.02ppm
MAPD 0.05ppm
ヒアルロン酸ナトリウム 0.10%
ホウ酸 0.25%
塩化ナトリウム 0.72%
EDTA 0.02%
ポロキサマー127 0.20%
塩化カリウム 0.14%
塩化カルシウム二水和物 0.02%
塩化マグネシウム六水和物 0.011%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 6.5〜7.5
を有する。
【0039】
別例として、この実施形態は下記の処方すなわち
PHMB 0.01ppm〜100ppm
MAPD 0.05ppm〜500ppm
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.05%〜5.0%
ホウ酸 0.05%〜5.0%
塩化ナトリウム 0.10%〜0.90%
EDTA 0.005%〜0.50%
ポロキサマー127 0.10%〜5.0%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 5.0〜9.0
を有してもよい。
【0040】
この実施形態は以下の好ましい処方すなわち
PHMB 0.10ppm
MAPD 0.30ppm
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.35%
ホウ酸 0.25%
塩化ナトリウム 0.72%
EDTA 0.02%
ポロキサマー127 0.20%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 6.5〜7.5
を有する。
【0041】
さらに、本発明は、食品、化粧品、医療用デバイスならびに皮膚科用医薬品においてなど、他の消毒を必要とする目的に関しても同じように有効に使用することができる。本発明はまた、例えば、調理台、テーブル、床、壁、流し、ならびに細菌、ウイルスまたは真菌のうち少なくともいずれかで汚染される可能性のあるその他の硬表面を消毒する際に有用な多目的の硬表面消毒用液として利用することもできる。
【0042】
以上の説明は例として述べたものであり、限定するものではない。さらに、本明細書に開示された実施形態の様々な特徴は、単独で用いられてもよいし、あるいは互いに様々に組み合わされて用いられてもよく、本明細書に記載された特定の組み合わせに限定されるようには意図されない。したがって、特許請求の範囲は例証した実施形態によって限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10ppm〜約5000ppmの亜塩素酸ナトリウムと、約0.05ppm〜約500ppmのミリスタミドプロピルジメチルアミンとを含んでなる多目的の消毒用組成物。
【請求項2】
400ppmの亜塩素酸ナトリウムと5ppmのミリスタミドプロピルジメチルアミンとを含んでなる、請求項1に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項3】
約0.05ppm〜500ppmのミリスタミドプロピルジメチルアミンと、約0.01ppm〜100ppmのポリヘキサメチレンビグアニドとを含んでなる多目的の消毒用組成物。
【請求項4】
約0.05ppm〜約50ppmのミリスタミドプロピルジメチルアミンと、約0.01ppm〜約10ppmのポリヘキサメチレンビグアニドとを含んでなる、請求項3に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項5】
約10ppm〜5000ppmの亜塩素酸ナトリウムと、約0.05ppm〜約500ppmのミリスタミドプロピルジメチルアミンジメチコーンコポリオールホスファートとを含んでなる多目的の消毒用組成物。
【請求項6】
約0.05ppm〜500ppmのミリスタミドプロピルジメチルアミンジメチコーンコポリオールホスファートと、約0.01ppm〜100ppmのポリヘキサメチレンビグアニドとを含んでなる多目的の消毒用組成物。
【請求項7】
組成物のpH範囲が約5.5〜約8.5である、請求項1に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項8】
組成物のpH範囲が約6.5〜約7.5である、請求項1に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項9】
組成物のpH範囲が約5.0〜約9.0である、請求項3に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項10】
組成物のpH範囲が約6.5〜約7.5である、請求項3に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項11】
以下の処方すなわち
亜塩素酸ナトリウム 10ppm〜5000ppm
MAPD 0.05ppm〜500ppm
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05%〜1.0%
ホウ酸 0.05%〜5.0%
塩化ナトリウム 0.10%〜0.90%
EDTA 0.005%〜0.50%
ポロキサマー127 0.10%〜5.0%
塩化カリウム 0.14%
塩化カルシウム二水和物 0.02%
塩化マグネシウム六水和物 0.011%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 5.5〜8.5
からなる、請求項1に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項12】
以下の処方すなわち
亜塩素酸ナトリウム 400ppm
MAPD 0.05ppm
ヒアルロン酸ナトリウム 0.10%
ホウ酸 0.25%
塩化ナトリウム 0.72%
EDTA 0.02%
ポロキサマー127 0.20%
塩化カリウム 0.14%
塩化カルシウム二水和物 0.02%
塩化マグネシウム六水和物 0.011%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 6.5〜7.5
からなる、請求項11に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項13】
以下の処方すなわち
PHMB 0.01ppm〜100ppm
MAPD 0.05ppm〜500ppm
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05%〜1.0%
ホウ酸 0.05%〜5.0%
塩化ナトリウム 0.10%〜0.90%
EDTA 0.005%〜0.50%
ポロキサマー127 0.10%〜5.0%
塩化カリウム 0.14%
塩化カルシウム二水和物 0.02%
塩化マグネシウム六水和物 0.011%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 5.0〜9.0
からなる、請求項3に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項14】
以下の処方すなわち
PHMB 0.02ppm
MAPD 0.05ppm
ヒアルロン酸ナトリウム 0.10%
ホウ酸 0.25%
塩化ナトリウム 0.72%
EDTA 0.02%
ポロキサマー127 0.20%
塩化カリウム 0.14%
塩化カルシウム二水和物 0.02%
塩化マグネシウム六水和物 0.011%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 6.5〜7.5
からなる、請求項13に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項15】
約200ミリオスモル〜約340ミリオスモルの範囲の浸透張力を有する、請求項1に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項16】
約200ミリオスモル〜約340ミリオスモルの範囲の浸透張力を有する、請求項3に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項17】
約50ミリオスモル〜約5000ミリオスモルの範囲の浸透張力を有する、請求項1に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項18】
約50ミリオスモル〜約5000ミリオスモルの範囲の浸透張力を有する、請求項3に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項19】
以下の処方すなわち
亜塩素酸ナトリウム 10ppm〜5000ppm
MAPD 0.05ppm〜500ppm
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.05%〜5.0%
ホウ酸 0.05%〜5.0%
塩化ナトリウム 0.10%〜0.90%
EDTA 0.005%〜0.50%
ポロキサマー127 0.10%〜5.0%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 5.5〜8.5
からなる、請求項1に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項20】
以下の処方すなわち
亜塩素酸ナトリウム 1000ppm
MAPD 0.30ppm
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.35%
ホウ酸 0.25%
塩化ナトリウム 0.72%
EDTA 0.02%
ポロキサマー127 0.20%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 6.5〜7.5
からなる、請求項19に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項21】
以下の処方すなわち
PHMB 0.01ppm〜100ppm
MAPD 0.05ppm〜500ppm
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.05%〜5.0%
ホウ酸 0.05%〜5.0%
塩化ナトリウム 0.10%〜0.90%
EDTA 0.005%〜0.50%
ポロキサマー127 0.10%〜5.0%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 5.0〜9.0
からなる、請求項3に記載の多目的の消毒用組成物。
【請求項22】
以下の処方すなわち
PHMB 0.10ppm
MAPD 0.30ppm
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.35%
ホウ酸 0.25%
塩化ナトリウム 0.72%
EDTA 0.02%
ポロキサマー127 0.20%
純水(USP Q.S.) 100mL
溶液のpH 6.5〜7.5
からなる、請求項21に記載の多目的の消毒用組成物。

【公表番号】特表2010−505740(P2010−505740A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509839(P2009−509839)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/011226
【国際公開番号】WO2007/136558
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(504353291)エス.ケイ.ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】S.K.PHARMACEUTICALS,INC.
【Fターム(参考)】