説明

真空バルブ用接点材料

【課題】Cu−Cr系合金の通電特性、溶着特性を改善するBiを添加した接点を通電軸に強固に固定する。
【解決手段】接離自在の接触面となるCu−Cr−Bi合金の第1の接点層1と、第1の接点層1に連接するとともに、通電軸3端がろう材4で固定されるCu−Cr合金の第2の接点層2とを備え、第2の接点層2は、Biが存在しない当該材料が露出するとともに、焼結時に付着したBi付着物を取除いた基材面2aに、通電軸3端が固定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接離自在の一対の接点を有する真空バルブの接点材料に係り、特に、接点にBiを添加した真空バルブ用接点材料に関する。
【背景技術】
【0002】
真空バルブ用接点材料に要求される特性としては、通電特性、耐電圧特性、遮断特性などがあるが、単一の金属種でこれらの特性の全てを達成することは困難である。そこで、各種の金属種を添加し、不足する特性を相互に補うようなことが行われている。従来、この真空バルブ用接点材料においては、Cu−Cr系接点材料の通電特性、溶着特性を改善するため、概ね0.4wt%のBiを添加することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−2955号公報 (第4ページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来のBiを添加した真空バルブ用接点材料においては、次のような問題がある。Cu−Cr−Bi合金を焼結法などで製造するとき、Biが金属蒸気となって拡散し、接点の外周面に付着、凝固する。一方、製造した接点には、電路となる通電軸がろう付けで固定されるが、Biが付着している面にろう付けを行うと、接合強度が低下する。このため、Biを添加した接点を、ろう付けにより強固に通電軸に固定できるものが望まれていた。
【0005】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、Biを添加した接点を通電軸に強固に固定できる真空バルブ用接点材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の真空バルブ用接点材料は、接触面となるCu−Cr−Bi合金の第1の接点層と、前記第1の接点に連接するとともに、通電軸端がろう材で固定されるCu−Cr合金の第2の接点層とを備え、前記第2の接点層は、当該材料が露出した基材面に前記通電軸端が固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通電軸と接合される接点面をBi付着物が付着されていない基材面としているので、通電軸と接点をろう付けにより強固に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1に係る真空バルブ用接点の構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る真空バルブ用接点の製造方法を説明する図。
【図3】本発明の実施例2に係る真空バルブ用接点の製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、通電軸との接合面を、Bi付着物が付着、およびBiが添加されていない材料の基材面とし、ろう付けにより接合するものである。以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
先ず、本発明の実施例1に係る真空バルブ用接点材料を図1、図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係る真空バルブ用接点の構成を示す断面図、図2は、本発明の実施例1に係る真空バルブ用接点の製造方法を説明する図である。なお、一対の真空バルブ用接点を、一方の接点を用いて説明する。
【0011】
図1に示すように、接点は、接触面となる第1の接点層1と、第1の接点層1に連接された第2の接点層2と、第1の接点層1と対向する第2の接点層2側の略中央部に設けられるとともに、通電軸3端がろう材4で接合される基材面2aとから構成されている。第1の接点層1は、厚さ数mmであり、第2の接点層2よりも薄い。
【0012】
次に、接点の製造方法を図2を参照して説明する。
【0013】
図2(a)に示すように、先ず、第1の接点層1となるCu粉とCr粉を同量ずつ混合するとともに、0.4wt%のBiを添加した第1の混合体5を直径40mmの金型内に充填し、その上に、第2の接点層2となる同量のCu粉とCr粉を混合した第2の混合体6を充填する。そして、10t/cmで加圧し、圧粉体を得る。
【0014】
次に、この圧粉体を真空雰囲気中で、温度1100℃−1時間の条件で焼結する。すると、第1の混合体5と第2の混合体6とが連接し、二層構造の接点(第1の接点層1と第2の接点層2に相当)が形成される。同時に、第1の混合体5に添加しているBiが拡散し、図2(b)の点線で示すように、Bi付着物7となって外周面に付着する。
【0015】
冷却後、図2(c)に示すように、外周端部を機械加工し所定の曲率を持たせる。また、第2の混合体6の略中央部に通電軸3端を嵌合するための深さ1mm程度の嵌合穴8を機械加工で設ける。この場合、Bi付着物7は、側面などに残存するものの、嵌合穴8のBi付着物7は完全に取除かれる。即ち、Biが存在しない第2の混合体6の材料そのものの面が露出する。これを、基材面2aと定義する。
【0016】
次に、図2(d)に示すように、嵌合穴8に通電軸3を嵌合し、所定温度に加熱し、Cu−Ag系合金からなるろう材4で固定する。
【0017】
これにより、接触面がCu−Cr−Bi合金の第1の接点層1と、これに連接されたCu−Cr合金の第2の接点層2とを製造することができ、Bi付着物7を取除いた第2の接点層2の基材面2aに通電軸3を強固に固定することができる。なお、第1、第2の接点層1、2のCrは、10〜50wt%の範囲とすることができる。
【0018】
上記実施例1の真空バルブ用接点材料によれば、Cu−Cr−Bi合金の第1の接点層1により、Cu−Cr系接点材料の通電特性、溶着特性を改善することができる。また、第1の接点層1に連接されたCu−Cr合金の第2の接点層2に、Bi付着物7を取除いた基材面2aを設けているので、通電軸3をろう材4で強固に固定することができる。
【0019】
上記実施例1では、第2の接点層2をCu−Cr合金で説明したが、これを全てCu粉の圧粉体とし、焼結してCu単独層とすることができる。第1の接点層1で通電特性、溶着特性を改善することができ、更にCu単独層により導電率がよく、通電特性を向上させることができる。
【実施例2】
【0020】
次に、本発明の実施例2に係る真空バルブ用接点材料を図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施例2に係る真空バルブ用接点の製造方法を説明する図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、接点の層構成である。図3において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0021】
図3(a)に示すように、先ず、第1の接点層1となるCu粉とCr粉とBiを添加した第1の混合体5を金型内に充填し、その上に、第2の接点層2となるCu粉とCr粉の第2の混合体6を充填し、更にその上に、t0.2mmのCu箔9を載せる。そして、10t/cmで加圧し、圧粉体を得る。
【0022】
次に、この圧粉体を真空雰囲気中で、温度1100℃−1時間の条件で焼結する。すると、第1の混合体5と第2の混合体6とCu層10(Cu箔9に相当)が連接するとともに、第1の混合体5に添加しているBiが拡散し、図3(b)の点線で示すように、Bi付着物7となって外周面に付着する。
【0023】
冷却後、図3(c)に示すように、外周端部を機械加工し所定の曲率を持たせる。また、Cu層10の表面を機械加工して削り、Bi付着物7を取除く。即ち、Cu層10の材料そのものの面を露出させる。これを、基材面10aと定義する。
【0024】
次に、図3(d)に示すように、基材面10aにろう材4を介して通電軸3を置き、所定温度に加熱し、固定する。基材面10aには、Bi付着物7が付着しておらず、強固に通電軸3を固定することができる。
【0025】
上記実施例2の真空バルブ用接点材料によれば、実施例1と同様の効果を得ることができるほか、Cu層10の導電率がよいため、通電軸3との接合部の通電特性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 第1の接点層
2 第2の接点層
2a、10a 基材面
3 通電軸
4 ろう材
5 第1の混合体
6 第2の混合体
7 Bi付着物
8 嵌合穴
9 Cu箔
10 Cu層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触面となるCu−Cr−Bi合金の第1の接点層と、
前記第1の接点層に連接するとともに、通電軸端がろう材で固定されるCu−Cr合金の第2の接点層とを備え、
前記第2の接点層は、当該材料が露出した基材面に前記通電軸端が固定されることを特徴とする真空バルブ用接点材料。
【請求項2】
接触面となるCu−Cr−Bi合金の第1の接点層と、
前記第1の接点層に連接されたCu−Cr合金の第2の接点層と、
前記第2の接点層に連接するとともに、通電軸端がろう材で固定されるCu層とを備え、
前記Cu層は、当該材料が露出した基材面に前記通電軸端が固定されることを特徴とする真空バルブ用接点材料。
【請求項3】
接触面となるCu−Cr−Bi合金の第1の接点層と、
前記第1の接点層に連接するとともに、通電軸端がろう材で固定されるCuからなる第2の接点層とを備え、
前記第2の接点層は、当該材料が露出した基材面に前記通電軸端が固定されることを特徴とする真空バルブ用接点材料。
【請求項4】
前記基材面は、前記Cu−Cr−Bi合金の焼結時に拡散して付着したBi付着物を取除いた面であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の真空バルブ用接点材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−142054(P2011−142054A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3288(P2010−3288)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(595019599)芝府エンジニアリング株式会社 (40)
【Fターム(参考)】