説明

真空処理装置、蒸着装置、プラズマCVD装置及び有機蒸着方法

【課題】種々の基板5の表面に分布が均一の成膜等の真空処理を行うことができる技術を提供する。
【解決手段】基板5が配置される真空槽2と、真空槽2の外部に設けられ処理ガスを供給する処理ガス供給源7と、配管を用いて構成され、処理ガス供給源7から供給された処理ガスを基板5に向って放出する蒸気放出器10とを備える。蒸気放出器10は、有機材料の蒸気の導入側から放出側に向って4n-1(nは自然数)の等比級数で段階的に分岐する第1〜第3の分岐配管ユニット11〜13を有する分岐配管群110〜130を備え、最終段の第3の分岐配管群130における分岐配管ユニット13のガス放出側端部に、処理ガスを放出する蒸気放出口14a〜14dがそれぞれ設けられ、これら複数のガス放出口14a〜14dから基板5に向って有機材料の蒸気を放出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機ELディスプレイや有機EL照明デバイスや蒸着重合膜等を作製する際、あるいは蒸着重合、前処理、CVD、クリーニング、エッチングの際における材料のガス供給技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置としては、例えば、特許文献1、2に記載されたものが知られている。
特許文献1、2に記載された装置は、導入されたガスをパイプを分岐させることによって複数の流出口からガスを流出させるようにしている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に係る従来技術の場合、ガスを流出させる流出開口部が一列に並べられているため、ガス流の面内分布を均一にすることが困難であり、特に大型基板に対して均一な処理を行うことができないという問題がある。
【0004】
また、特許文献2に係る従来技術では、管の分岐の数が2n-1であり、分岐回数が非常に多く、構成が複雑でコストが高くなるという問題がある。
さらに、特許文献1、2に記載された装置では、サイズの小さい基板に対して成膜を行う場合に、材料が無駄になるという問題がある。
さらにまた、特許文献1、2に記載された装置では、成膜以外のプロセスへの対応について記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−90572号公報
【特許文献2】特開2004−79904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、種々の処理対象物の表面に分布が均一の成膜等の真空処理を行うことができる技術を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、構成が簡素で安価な真空処理装置を用いた真空処理技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明は、処理対象物が配置される真空槽と、前記真空槽の外部に設けられ処理ガスを供給する処理ガス供給源と、配管を用いて構成され、前記処理ガス供給源から供給された処理ガスを前記処理対象物に向って放出するガス放出器とを備え、前記ガス放出器は、前記処理ガスの導入側から放出側に向って4n-1(nは自然数)の等比級数で段階的に分岐する分岐配管ユニットを有する複数の分岐配管群を備え、当該分岐配管群のうち最終段の分岐配管群における分岐配管ユニットのガス放出側端部に、前記処理ガスを放出するガス放出口がそれぞれ設けられ、これら複数のガス放出口から前記処理対象物に向って当該処理ガスを放出するように構成されている真空処理装置である。
本発明では、前記ガス放出器は、前記複数のガス放出口が同一の平面内に配置されている場合にも効果的である。
本発明では、前記ガス放出器は、同一の段の分岐配管群における分岐配管ユニットの配管長さが等しい場合にも効果的である。
本発明では、前記ガス放出器の各分岐配管ユニットは、それぞれのガス放出側の端部が正方形の頂点に位置するように構成されている場合にも効果的である。
本発明では、前記ガス放出器の前記複数のガス放出口は、隣接するガス放出口の間の距離が等しくなるように配置されている場合にも効果的である。
本発明では、前記処理ガス供給源は、異なる処理ガスを発生させる複数のガス発生源を有し、当該複数のガス発生源がガス混合器を介して前記ガス放出器に接続されている場合にも効果的である。
本発明では、前記ガス放出器の配管を加熱冷却するための加熱冷却手段を有する場合にも効果的である。
一方、本発明は、上述したいずれかの真空処理装置を備え、前記処理ガス供給源として、有機蒸発材料を蒸発させる蒸発源を有する蒸着装置である。
また、本発明は、上述したいずれかの真空処理装置を備え、前記処理ガス供給源として、所定の反応ガスを供給するガス源と、前記ガス放出器内の反応ガスを放電させるための電源とを有するプラズマCVD装置である。
さらに、本発明は、上述した蒸着装置を用い、真空中で基板表面に有機膜を形成する方法であって、有機蒸発材料として、有機EL装置の有機薄膜層を形成するためのホスト材料とドーパント材料を用いる有機蒸着方法である。
本発明の場合、ガス放出器が、処理ガスの導入側から放出側に向って4n-1(nは自然数)の等比級数で段階的に分岐する分岐配管ユニットを有する複数の分岐配管群を備え、分岐配管群のうち最終段の分岐配管群における分岐配管ユニットのガス放出側端部に、処理ガスを放出するガス放出口がそれぞれ設けられ、これら複数のガス放出口から処理対象物に向って処理ガスを放出するように構成されていることから、複数のガス放出口から面状に処理ガスを放出することができ、これにより、種々の処理対象物、特に大型基板の表面に分布が均一の成膜等の処理を行うことができる。
本発明において、ガス放出器が、複数のガス放出口が同一の平面内に配置されている場合、ガス放出器が、同一の段の分岐配管群における分岐配管ユニットの配管長さが等しい場合、又はガス放出器の各分岐配管ユニットが、それぞれのガス放出側の端部が正方形の頂点に位置するように構成されている場合には、各ガス放出口から放出されるガスの面内分布がより均一になるため、処理対象物の表面に対する処理の均一性をより向上させることができる。
特に、ガス放出器の複数のガス放出口について、隣接するガス放出口の間の距離が等しくなるように配置すれば、各ガス放出口から放出されるガスの面内分布がより一層均一になるため、処理対象物の表面に対する処理の均一性を一層向上させることができる。
本発明において、処理ガス供給源が、異なるガスを発生させる複数のガス発生源を有し、当該複数のガス発生源がガス混合器を介してガス放出器に接続されている場合には、異なるガスを確実に混合させて処理対象物の表面に対して均一な処理を行うことができる。
本発明において、ガス放出器の配管を加熱冷却するための加熱冷却手段を有する場合には、各分岐配管群の分岐配管ユニットにおいて処理ガスの成分が析出することなく、また、処理ガスを一定の温度に保持することができるので、より均一な状態で処理ガスを放出することができる。
一方、上述したいずれかの真空処理装置を備え、処理ガス供給源として、有機蒸発材料を蒸発させる蒸発源を有する蒸着装置によれば、従来技術に比べ配管の分岐級数を減少させることができるため、コンパクトな蒸着装置を提供することができる。
この場合、当該蒸着装置を用い、有機蒸発材料として、有機EL装置の有機薄膜層を形成するためのホスト材料とドーパント材料を用いる場合には、有機EL装置の有機薄膜を均一な膜厚及び膜質で蒸着形成することができる。
一方、上述したいずれかの真空処理装置を備え、処理ガス供給源として、所定の反応ガスを供給するガス源と、ガス放出器内の反応ガスを放電させるための電源とを有するプラズマCVD装置によれば、CVD法によって処理対象物上に均一な膜厚及び膜質の成膜を行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、種々の処理対象物の表面に、分布が均一の成膜等の真空処理をコンパクトな真空処理装置で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態である有機蒸着装置の内部を示す概略構成図
【図2】同有機蒸着装置の蒸気放出器の構成を示す斜視図
【図3】(a)(b):同蒸気放出器の蒸気放出口の位置関係を示す説明図
【図4】同有機蒸着装置の外観構成を示す平面図
【図5】本発明の他の実施の形態を示す平面図
【図6】本発明の他の実施の形態の内部を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る有機蒸着装置の内部を示す概略構成図、図2は、同有機蒸着装置の蒸気放出器の構成を示す斜視図である。また、図3(a)(b)は、同蒸気放出器の蒸気放出口の位置関係を示す説明図、図4は、同有機蒸着装置の外観構成を示す平面図である。
【0011】
以下、上下関係については図1及び図2に示す構成に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1又は図2に示すように、本実施の形態の有機蒸着装置(蒸着装置)1は、図示しない真空排気系に接続された真空槽2を有し、この真空槽2内の本体部10Aに蒸気放出器(ガス放出器)10が設けられて構成されている。
【0012】
この蒸気放出器10は、真空槽2内の基板(処理対象物)5の下方に設けられるもので、真空槽2の外部に設けられた蒸気供給源7に、供給管6(6h、6d)及び蒸気混合器3を介して接続されている。
また、供給管6h、6d及び蒸気混合器3は、ヒータ及び冷却器を有する加熱冷却手段4によって加熱並びに冷却され、所定の温度に温度制御されるように構成されている。
【0013】
蒸気放出器10は、複数(本例では4個)の第1ホスト材料蒸発源21、第2ホスト材料蒸発源22、第1ドーパント材料蒸発源31、第2ドーパント材料蒸発源32に接続されている。
ここで、第1ホスト材料蒸発源21、第2ホスト材料蒸発源22の蒸発容器内には、有機EL素子の有機薄膜形成用のホスト材料50h、51hがそれぞれ収容されている。
【0014】
また、第1ドーパント材料蒸発源31、第2ドーパント材料蒸発源32の蒸発容器内には、有機EL素子の有機薄膜形成用のドーパント材料50d、51dがそれぞれ収容されている。
そして、第1ホスト材料蒸発源21、第2ホスト材料蒸発源22、第1ドーパント材料蒸発源31、第2ドーパント材料蒸発源32の周囲には、加熱手段20が配設されている。
【0015】
また、第1ホスト材料蒸発源21、第2ホスト材料蒸発源22、第1ドーパント材料蒸発源31、第2ドーパント材料蒸発源32は、それぞれキャリアガス供給装置17h、18h、17d、18dに接続され、キャリアガス源19から供給されるキャリアガスが、それぞれ第1ホスト材料蒸発源21、第2ホスト材料蒸発源22、第1ドーパント材料蒸発源31、第2ドーパント材料蒸発源32に供給されるように構成されている。
【0016】
本例の場合、第1ホスト材料蒸発源21、第2ホスト材料蒸発源22は、それぞれバルブ30を介してホスト材料50h、51h用の供給管6hに接続されている。
一方、第1ドーパント材料蒸発源31、第2ドーパント材料蒸発源32は、それぞれバルブ40を介してドーパント材料50d、51d用の供給管6dに接続されている。
【0017】
なお、有機材料の蒸気を供給する供給管6h及び供給管6dの近傍には、それぞれコンダクタンスの小さい蒸気放出ノズル60h、60dが設けられ、これら蒸気放出ノズル60h、60dから放出される有機材料の蒸気の量を膜厚センサ61h、61dによって測定するように構成されている。
【0018】
蒸気放出器10は、例えば金属材料からなる配管を継手等によって連結して一体的に構成したもので、有機材料の蒸気の導入側から放出側に向って4n-1(nは自然数)の等比級数で段階的に分岐する複数の分岐配管群によって構成されている。
【0019】
本実施の形態においては、有機材料の蒸気の導入側から放出側に向って設けられた、第1の分岐配管群110、第2の分岐配管群120、第3の分岐配管群130によって蒸気放出器10が構成されている。
【0020】
第1〜第3の分岐配管群110〜130は、同一の基本構成を有する分岐配管ユニットから構成されている。以下、同一の段の分岐配管群について一つの分岐配管ユニットを例にとって説明する。
【0021】
図1又は図2に示すように、本実施の形態の第1の分岐配管群110は、供給管6の先端部に取り付けられた第1の分岐配管ユニット11を有し、この第1の分岐配管ユニット11は、供給管6の先端部からそれぞれ水平方向に延びるように4本の水平分岐部11a、11b、11c、11dが設けられて構成されている。
【0022】
ここで、第1の分岐配管ユニット11の水平分岐部11a〜11dは、それぞれ同一の配管長さを有し、隣接する第1及び第2の水平分岐部11a,11b、第2及び第3の水平分岐部11b,11c、第3及び第4の水平分岐部11c,11d、第4及び第1の水平分岐部11d,11aが、それぞれ90度の角度をなすように設けられている。
そして、第1〜第4の水平分岐部11a〜11dは、それぞれの先端部分が上方に曲げられて鉛直方向に延びるように形成されている(以下、この部分を「鉛直分岐部」という。)。
【0023】
第1の分岐配管ユニット11の第1〜第4の鉛直分岐部11e,11f,11g,11hは、それぞれ同一の配管長さを有しており、これら第1〜第4の鉛直分岐部11e〜11hの先端部は、同一の水平面内に配置され、隣接するものの距離が等しくなるように構成されている。
【0024】
さらに、第1の分岐配管ユニット11の鉛直分岐部11e〜11hは、それぞれの先端部に、それぞれ第2の分岐配管ユニット12が取り付けられ、これら4個の第2の分岐配管ユニット12により第2の分岐配管群120が構成されている。
第2の分岐配管群120の第2の分岐配管ユニット12は、第1の分岐配管ユニット11の各鉛直分岐部11e〜11hの先端部からそれぞれ水平方向に延びるように4本の水平分岐部12a、12b、12c、12dが設けられている。
【0025】
ここで、第2の分岐配管ユニット12の水平分岐部12a〜12dは、それぞれ隣接する第1及び第2の水平分岐部12a,12b、第2及び第3の水平分岐部12b,12c、第3及び第4の水平分岐部12c,12d、第4及び第1の水平分岐部12d,12aが、それぞれ90度の角度をなすように設けられている。
【0026】
また、第2の分岐配管ユニット12の水平分岐部12a〜12dは、第1の分岐配管ユニット11の水平分岐部11a〜11dの配管長さより短くなるようにその配管長さが設定されている。
そして、第2の分岐配管ユニット12の第1〜第4の水平分岐部12a〜12dは、それぞれの先端部分が上方に曲げられ、これにより鉛直方向に延びる鉛直分岐部12e,12f,12g,12hが設けられている。
【0027】
本発明の場合、特に限定されることはないが、有機材料の蒸気の逆流れを生じさせない、即ち圧力勾配を保持する観点からは、第2の分岐配管ユニット12の配管の縦断面積の和が、上述した第1の分岐配管ユニット11の配管の縦断面の面積の和より大きくならない(小さくなる)ように設定することが好ましい。
【0028】
さらに、本実施の形態の場合、第2の分岐配管ユニット12の第1〜第4の鉛直分岐部12e〜12hは、それぞれ同一の配管長さを有しており、これら第1〜第4の鉛直分岐部12e〜12hの先端部は、同一の水平面内に配置され、隣接するものの距離が等しくなるように構成されている。
【0029】
第2の分岐配管群120の各第2の分岐配管ユニット12の各鉛直分岐部12e〜12hの先(上)端部には、それぞれ第3の分岐配管ユニット13が取り付けられ、これら16個の分岐配管ユニット13により第3の分岐配管群130が構成されている。
【0030】
第3の分岐配管群130の第3の分岐配管ユニット13は、第2の分岐配管ユニット12の各鉛直分岐部12e〜12hの先端部からそれぞれ水平方向に延びるように4本の水平分岐部13a、13b、13c、13dが設けられている。
【0031】
ここで、第3の分岐配管ユニット13の水平分岐部13a〜13dは、それぞれ隣接する第1及び第2の水平分岐部13a,13b、第2及び第3の水平分岐部13b,13c、第3及び第4の水平分岐部13c,13d、第4及び第1の水平分岐部13d,13aが、それぞれ90度の角度をなすように設けられている。
【0032】
また、第3の分岐配管ユニット13の水平分岐部13a〜13dは、第2の分岐配管ユニット12の水平分岐部12a〜12dの配管長さより短くなるようにその配管長さが設定されている。
【0033】
そして、第3の分岐配管ユニット13の第1〜第4の水平分岐部13a〜13dは、それぞれの先端部分が上方に曲げられて鉛直方向に延びる鉛直分岐部13e,13f,13g,13hが設けられている。
【0034】
本発明の場合、特に限定されることはないが、有機材料の蒸気の逆流れを生じさせない、即ち圧力勾配を保持する観点からは、第3の分岐配管ユニット13の配管の縦断面の面積の和が、上述した第2の分岐配管ユニット12の配管の縦断面の面積の和より大きくならない(小さくなる)ように設定することが好ましい。
【0035】
さらに、本実施の形態の場合、第3の分岐配管ユニット13の第1〜第4の鉛直分岐部13e〜13hは、それぞれ同一の配管長さを有しており、これら第1〜第4の鉛直分岐部13e〜13hの先端部には、図3(a)(b)及び図4に示すように、それぞれの先端部には、有機材料の蒸気を放出するための蒸気放出口14a、14b、14c、14dが形成されている。
【0036】
ここで、第3の分岐配管ユニット13の蒸気放出口14a〜14dは、同一の水平面内に配置され、正方形16の頂点の位置に配置されている。すなわち、隣接する蒸気放出口14a及び14b、14c及び14dの間の距離が等しくなるように構成されている(P1)。
【0037】
さらに、本発明の場合、特に限定されることはないが、均一な膜厚及び膜質の成膜を行う観点からは、隣接する第3の分岐配管ユニット13同士についても、それぞれ隣接する蒸気放出口14b及び14a、蒸気放出口14d及び14cの間の距離が等しく(P2)、かつ、隣接する全ての蒸気放出口14a〜14dの間の距離が等しくなるなるように構成することが好ましい(P1=P2)。
【0038】
なお、本体部10A内には、上述した蒸気放出器10を加熱冷却する加熱冷却手段15が複数設けられ、さらに、本体部10Aの上部には、熱輻射防止板(図示せず)が設けられている。
【0039】
このような構成を有する本実施の形態において、基板5上に有機材料の膜を蒸着形成する場合には、真空槽2内の圧力を所定の圧力にした状態で、第1ホスト材料蒸発源21、第2ホスト材料蒸発源22から供給管6hを介してホスト材料50h、51hの蒸気を蒸気混合器3内に導入する。
【0040】
また、第1ドーパント材料蒸発源31、第2ドーパント材料蒸発源32からドーパント材料50d、51dの蒸気を、供給管6dを介して蒸気混合器3内に導入する。
【0041】
蒸気混合器3内に導入されたホスト材料50h、51hの蒸気とドーパント材料50d、51dの蒸気は、上述した第1の分岐配管群110、第2の分岐配管群120及び第3の分岐配管群130によって分岐されて蒸気放出器10内を通過し、最終段である第3の分岐配管ユニット13の各蒸気放出口14a〜14dから基板5に向って面状に放出され、これにより基板5全表面に有機材料の蒸着膜が形成される。
【0042】
以上述べたように本実施の形態によれば、蒸気放出器10が、有機材料の蒸気の導入側から放出側に向って4n-1(nは自然数)の等比級数で段階的に分岐する分岐配管ユニット11〜13を有する第1〜第3の分岐配管群110〜130を備え、第1〜第3の分岐配管群110〜130のうち最終段の第3の分岐配管群130の分岐配管ユニット13の蒸気放出側端部に、有機材料の蒸気を放出する蒸気放出口14a〜14dがそれぞれ設けられ、これら複数の蒸気放出口14a〜14dから基板5に向って有機材料の蒸気を放出するように構成されていることから、複数の蒸気放出口14a〜14dから面状に有機材料の蒸気を放出することができ、これにより、特に大型基板の表面に分布が均一の成膜を行うことができる。
【0043】
しかも、本実施の形態においては、蒸気放出器10が、複数の蒸気放出口14a〜14dが同一の平面内に配置されるとともに、各分岐配管群110〜130における分岐配管ユニット11〜13の配管長さが等しく、さらに蒸気放出器10の各分岐配管ユニット11〜13は、それぞれの蒸気放出側の端部が正方形の頂点に位置し、かつ、隣接する蒸気放出口14a〜14dの間の距離が等しくなるように配置されていることから、各蒸気放出口14a〜14dから放出される有機材料の蒸気の面内分布がより均一になるため、基板5の表面に対する膜厚及び膜質の均一性をより向上させることができる。
【0044】
また、本実施の形態では、蒸気供給源7が、異なる蒸気を発生させる複数の蒸気発生源、すなわち、第1ホスト材料蒸発源21、第2ホスト材料蒸発源22、第1ドーパント材料蒸発源31、第2ドーパント材料蒸発源32を供給管6h並びに供給管6dを介して蒸気混合器3に導入するよう構成されていることから、異なる蒸気を確実に混合させて基板5の表面に対して均一な処理を行うことができる。
【0045】
さらに、本実施の形態では、蒸気放出器10の配管を加熱冷却するための加熱冷却手段15を有することから、第1〜第3の分岐配管群110〜130の分岐配管ユニット11〜13において有機材料の蒸気の成分が析出することなく、また、有機材料の蒸気を一定の温度に保持することができるので、より均一な状態で有機材料の蒸気を放出することができる。
その一方で、本実施の形態によれば、従来技術に比べ配管の分岐級数を減少させることができるため、コンパクトな蒸着装置を提供することができる。
【0046】
このように、本実施の形態によれば、有機EL装置の有機薄膜層を形成するためのホスト材料とドーパント材料を用いることにより、有機EL装置の有機薄膜を均一な膜厚及び膜質で蒸着形成することができる。
【0047】
図5は、本発明の他の実施の形態を示す平面図であり、以下、上記実施の形態と対応する部分には、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
図5に示すように、本実施の形態の有機蒸着装置1Aは、上述した有機蒸着装置1を複数、すなわち、3×4個並べて構成したものである。
【0048】
ここで、各有機蒸着装置1は、独立して制御可能な蒸気供給源7を有し、各蒸気供給源7は、上述した供給管6を介して蒸気放出器10にそれぞれ接続されている。
そして、蒸気放出口14は、隣接するもの同士の距離が等しくなるように、それぞれの位置が設定されている。
【0049】
このような構成を有する本実施の形態によれば、非常に大型の基板の表面に分布が均一の成膜を行うことができる。
また、本実施の形態によれば、12個の有機蒸着装置1のうち所定のもののみを動作させることにより、種々の形状及び大きさの処理対象物に対して成膜を行うことができる。
【0050】
その他の構成及び作用効果については上述の実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
図6は、本発明の他の実施の形態の内部を示す概略構成図であり、以下、上記実施の形態と対応する部分には、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0051】
図6に示すように、本実施の形態のプラズマCVD装置101は、真空槽2内の上方に、基板ホルダー106によって保持された基板5が配置されるようになっている。
ここで、基板ホルダー106は、絶縁部材100aを介して本体部100の上部に取り付けられ、接地されている。そして、基板5は、処理面と反対側に導電性の金属板106aが基板5と接触するように設けられ、金属板106aも電気的に接地となっている。
【0052】
さらに、真空槽2内の基板5の下方には、本体部100が設けられ、この本体部100には、上述した蒸気放出器10と同一の構成を有するガス放出器10Bが設けられ、その第3の分岐配管群130の各第3の分岐配管13のガス放出側端部には、それぞれガス放出口14が設けられている。
【0053】
一方、真空槽2の外部には、処理ガス供給源107が設けられている。
処理ガス供給源107は、反応ガスを供給する反応ガス源107A、107Bを有し、この反応ガス源107A、107Bがバルブ70を介して供給管6Bに接続されている。
【0054】
また、処理ガス供給源107は、放電補助ガスを供給する放電補助ガス供給源107Cを有し、この放電補助ガス供給源107Cは、バルブ70を介して供給管6Bに接続されている。
【0055】
ここで、供給管6Bは、例えば高周波電源からなる電源104に接続されている。この供給管6Bは、絶縁性材料からなる接続部6aを有し、処理ガス供給源107に対して電気的に絶縁されている。
【0056】
一方、供給管6Bのガス導入側端部は、ガス放出器10Bの第1の分岐配管群110の第1の分岐配管ユニット11に取り付けられ、供給管6Bに対して電気的に接続されている。
そして、本実施の形態のガス放出器10Bは、電気的にフローティング状態にされている。
【0057】
一方、ガス放出器10Bの基板5側の部分には、例えば平板状のシャワープレート102が設けられている。このシャワープレート102には、基板5の大きさに対応する領域に、多数の放出口102aが設けられている。
このシャワープレート102は、本体部100に取り付けられ、本体部100と同電位にされている。
【0058】
さらに、本実施の形態においては、処理ガス供給源107の配管部分、供給管6B、ガス放出器10Bの配管部分に冷却装置15Bが設けられ、ガス放出器10Bに供給される処理ガスを所定の温度に冷却するようになっている。
【0059】
このような構成を有する本実施の形態において、基板5表面に成膜を行う場合には、真空槽2内を所定の圧力にした状態で、処理ガス供給源107から供給管6Bを介して反応ガスと放電補助ガスを、ガス放出器10Bの第1の分岐配管群110の第1の分岐配管ユニット11内に導入し、第2及び第3の分岐配管群120、130を介して第3の分岐配管ユニット13の各ガス放出口14から処理ガスを放出し、シャワープレート102の放出口102aを介して基板5とシャワープレート102との間の空間に処理ガスを導入する。
【0060】
そして、電源104からガス放出器10Bに対して高周波電力を印加することにより、基板5とシャワープレート102との間の空間において、処理ガスを放電させて当該処理ガスをプラズマ化する。
【0061】
ここで、反応ガスのプラズマを含む処理ガスのプラズマは、シャワープレート102の存在によって均一な状態で形成され、これにより基板5表面において反応ガスが反応して、基板5全表面においてCVDによる成膜が行われる。
【0062】
以上述べたように本実施の形態によれば、ガス放出器10Bの複数の蒸気放出口14から面状に処理ガスを放出することができ、これにより、特に大型基板の表面に分布が均一のCVD成膜を行うことができる。その他の構成及び作用効果については上述の実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
【0063】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上記実施の形態においては、隣接する蒸気放出口又はガス放出口の距離が等しくなるようにしたが、本発明はこれに限られず、第3の分岐配管ユニットの配管長さを変えることにより、例えば、蒸気又はガス放出口が長方形の頂点の位置に配置することもできる。
【0064】
ただし、より均一な成膜及び真空処理を行う観点からは、上記実施の形態のように、蒸気又はガス放出口が正方形の頂点の位置に配置することにより、隣接する蒸気又はガス放出口の距離が等しくなるように構成することが好ましい。
【0065】
また、上記実施の形態においては、ガス放出口を上方に向けて蒸気又は処理ガスを上方に放出するようにしたが、本発明はこれに限られず、水平方向又は下方向に向けて蒸気又は処理ガスを放出することもできる。
【0066】
一方、ガス放出器の分岐配管群の数は上記実施の形態には限られず、二つ又は四つ以上設けることもできる。
ただし、大型基板に対応する観点からは、上記実施の形態のように、第1〜第3の分岐配管群110〜130を設け、64個以上の蒸気放出口又はガス放出口を設けることが好ましい。
【0067】
さらにまた、本発明は、有機EL製造装置の有機層を形成する場合のみならず、有機EL製造装置の電極層を形成する場合にも適用することができる。
加えて、本発明は、複数の原料モノマーを用いて蒸着重合を行う装置にも適用することができる。
【0068】
さらにまた、本発明は、酸素(O2)やフッ素(F)ガスを含む処理ガスを用いて処理対象物の前処理やクリーニング、及びエッチングを行う装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…有機蒸着装置(蒸着装置)
2…真空槽
4…加熱冷却手段
5…基板(処理対象物)
7…蒸気供給源(処理ガス供給源)
10…蒸気放出器(ガス放出器)
11…第1の分岐配管ユニット
12…第2の分岐配管ユニット
13…第3の分岐配管ユニット
14a〜14d…蒸気放出口(ガス放出口)
15…加熱冷却手段
110…第1の分岐配管群
120…第2の分岐配管群
130…第3の分岐配管群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物が配置される真空槽と、
前記真空槽の外部に設けられ処理ガスを供給する処理ガス供給源と、
配管を用いて構成され、前記処理ガス供給源から供給された処理ガスを前記処理対象物に向って放出するガス放出器とを備え、
前記ガス放出器は、前記処理ガスの導入側から放出側に向って4n-1(nは自然数)の等比級数で段階的に分岐する分岐配管ユニットを有する複数の分岐配管群を備え、当該分岐配管群のうち最終段の分岐配管群における分岐配管ユニットのガス放出側端部に、前記処理ガスを放出するガス放出口がそれぞれ設けられ、これら複数のガス放出口から前記処理対象物に向って当該処理ガスを放出するように構成されている真空処理装置。
【請求項2】
前記ガス放出器は、前記複数のガス放出口が同一の平面内に配置されている請求項1記載の真空処理装置。
【請求項3】
前記ガス放出器は、同一の段の分岐配管群における分岐配管ユニットの配管長さが等しい請求項1又は2のいずれか1項記載の真空処理装置。
【請求項4】
前記ガス放出器の各分岐配管ユニットは、それぞれのガス放出側の端部が正方形の頂点に位置するように構成されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の真空処理装置。
【請求項5】
前記ガス放出器の前記複数のガス放出口は、隣接するガス放出口の間の距離が等しくなるように配置されている請求項4記載の真空処理装置。
【請求項6】
前記処理ガス供給源は、異なる処理ガスを発生させる複数のガス発生源を有し、当該複数のガス発生源がガス混合器を介して前記ガス放出器に接続されている請求項1乃至5のいずれか1項記載の真空処理装置。
【請求項7】
前記ガス放出器の配管を加熱冷却するための加熱冷却手段を有する請求項1乃至6のいずれか1項記載の真空処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載の真空処理装置を備え、
前記処理ガス供給源として、有機蒸発材料を蒸発させる蒸発源を有する蒸着装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項記載の真空処理装置を備え、
前記処理ガス供給源として、所定の反応ガスを供給するガス源と、
前記ガス放出器内の反応ガスを放電させるための電源とを有するプラズマCVD装置。
【請求項10】
請求項8記載の蒸着装置を用い、真空中で基板表面に有機膜を形成する方法であって、
前記有機蒸発材料として、有機EL装置の有機薄膜層を形成するためのホスト材料とドーパント材料を用いる有機蒸着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−82445(P2012−82445A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227006(P2010−227006)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】