説明

真空処理装置

【課題】 圧力を支配している排気速度を小さくしてオイルバック防止ガスの流量を節減できる真空処理装置を提供する。
【解決手段】 CVD装置に用いられる真空チャンバ10に真空配管11を接続し、その真空配管11に二段油回転ポンプ12を接続し、その二段油回転ポンプ12の吸込側の真空配管11に不活性ガスを供給するオイルバック防止ガス供給配管15を接続し、上記二段油回転ポンプ12をインバータ装置16で駆動し、スタンバイ状態のとき、オイルバック防止ガス供給配管15から不活性ガスを供給しつつインバータ装置16で二段油回転ポンプ12の能力を下げて運転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置に使用される真空処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造においては、真空チャンバ内を真空排気するために油回転ポンプ等の、油を使用した真空ポンプが使用される。
【0003】
従来、油回転ポンプ等を使用する場合、特許文献1に示されるように、吸込側の圧力を13Pa以上に維持するために、吸込側配管に窒素などのパージガス(オイルバック防止ガス)を僅かに流して吸込側圧力が13Pa以上になるようにして、真空チャンバ内の油汚染を防止している。
【0004】
一般にオイルバック防止ガスとしては、安価な窒素ガスが用いられることが多い。窒素は、水素やヘリウムに比べて質量が大きいためにオイルバック防止の効果が高いばかりでなく、安価なために、多くの場合、この用途のための適当な選択肢となる。
【0005】
【特許文献1】特公平7−32133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、大流量システムでは、ガス量を多く必要とするため単価が低い窒素とはいえ、そのコストが問題となる。さらに、窒素は、ウェハにとっては不活性ガスではないため、真空内で行われる処理工程に悪影響を及ぼすことがある。例えば、スパッタリング装置で反応系内に多量の窒素が残留していると、得られる薄膜が窒化することがある。このように真空処理が残留ガスの影響を受けやすい場合、Ar等の不活性ガスを使用することになる。
【0007】
真空チャンバ内へ各種の動作ガスが供給されるときには、これら動作ガスによって圧力が上昇するためにオイルバックの問題は生じないが、真空チャンバを大気圧から到達圧力まで真空排気するとき、或いは到達圧力のまま動作ガスが導入されていないとき、すなわち、工程(プロセッシング)前後のスタンバイ状態に保つときなどには、Ar等の高価な不活性ガスを大量に使用しなければならない。
【0008】
オイルバック量は、流速によってその程度が変化するものの、上述のように圧力に対する依存性の方がずっと大きいため、スタンバイ状態が長く続くとそれだけ高価な不活性ガスを大量に使用しなければならないという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、圧力を支配している排気速度を小さくしてオイルバック防止ガスの流量を節減できる真空処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために請求項1の発明は、真空処理装置において、真空チャンバに、油を用いた機械的真空ポンプを接続し、その機械的真空ポンプの吸込側に気体を供給するオイルバック防止ガス供給配管を接続し、上記機械的真空ポンプをインバータ装置で駆動し、スタンバイ状態のとき、オイルバック防止ガス供給配管から気体を供給しつつインバータ装置で油を用いた機械的真空ポンプの能力を下げて運転するようにした真空処理装置である。
【0011】
請求項2の発明は、CVD装置に用いられる真空チャンバに真空配管を介して油回転ポンプ等を接続して真空排気する真空処理装置において、真空チャンバに一段目ルーツブロワを接続し、二段目ルーツブロアと一段油回転ポンプを接続し、一段目ルーツブロワの上流側に、アルゴンガス等の不活性ガスを供給するオイルバック防止ガス供給配管を接続し、上記一段目と二段目ルーツブロワをそれぞれインバータ装置で駆動し、スタンバイ状態のとき、オイルバック防止ガス供給配管から不活性ガスを供給しつつインバータ装置で上記一段目と二段目ルーツブロワの能力を下げて運転するようにした真空処理装置である。
【0012】
請求項3の発明は、真空チャンバに複数の一段目ルーツブロワが接続されると共に排気側が合流されて二段目ルーツブロアに接続される請求項2記載の真空処理装置である。
【0013】
請求項4の発明は、真空チャンバに、窒素を定量供給する定量供給機構を接続し、二段目ルーツブロワと一段油回転ポンプ間の真空配管に補助バルブを接続し、緊急時に補助バルブを閉じると共に一段油回転ポンプを大気圧まで復圧すると共に定量供給機構から真空チャンバに窒素ガスを供給して一段目ルーツブロワの吸込側圧力を100Pa以上になるようにした請求項2記載の真空処理装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、スタンバイ状態のときに、気体(不活性ガス)を供給してオイルバックを防止する際に、機械的真空ポンプの回転数を下げて排気速度を遅くすることにより、オイルバック防止が行え、オイルバック防止のためのガス代を節約できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の実施形態を添付図面により説明する。
【0016】
図1は本発明の第1実施の形態を示し、図において10はウェハを収容し、そのウェハにプラズマCVDにて成膜するなどの工程を行うことによって半導体装置を製造するための真空チャンバで、その真空チャンバ10に、真空配管11を介して或いは真空チャンバ10に直接、機械的真空ポンプとしての二段油回転ポンプ12が接続され、その二段油回転ポンプ12の排気側に排気用配管13が接続される。
【0017】
真空配管11にはメインバルブ14が接続され、またメインバルブ14と二段油回転ポンプ12間の真空配管11には、アルゴンやヘリウムなどのオイルバック防止ガス(気体)を供給するオイルバック防止ガス供給管15が接続される。
【0018】
二段油回転ポンプ12は、翼型回転ポンプを2段直列に接続したもので、1段目の排気口を二段目の吸気口に接続して構成される。
【0019】
この二段油回転ポンプ12は、到達圧力が低いので対策を打たない場合、容易に大量の油で汚染される。
【0020】
この第1実施の形態では、従来と同様にオイルバック防止ガス供給管15からオイルバック防止ガスを導入することによって、油汚染を防止している。
【0021】
しかし、真空チャンバ10がスタンバイ状態のときには、オイルバック防止ガスを多量に必要とする。
【0022】
このため、第1実施の形態では、二段油回転ポンプ12をインバータ装置16で能力可変に駆動する。インバータ装置16は制御装置17の指令周波数に基づいて二段油回転ポンプ12を駆動する。
【0023】
また、メインバルブ14の上流側の真空配管11には圧力センサ18aが設けられ、さらに二段油回転ポンプ12の吸込側には圧力センサ18bが設けられ、これら圧力センサ18a、18bの検出圧力が制御装置17に入力される。
【0024】
制御装置17は、圧力センサ18a、18bからの検出圧力を基に、オイルバック防止ガス供給管15に接続した流量調整弁19を制御し、インバータ装置16の運転周波数を決定して、二段油回転ポンプ12の能力を調整するようになっている。
【0025】
このように、制御装置17は、スタンバイ状態のとき、真空配管11内の圧力を適正に保つように、インバータ装置16で二段油回転ポンプ12の能力を決定すると共に、その吸込圧力がオイルバックしないように、例えば13Pa程度になるよう流量調整弁19にてオイルバック防止ガス量を制御することで、オイルバック防止ガスを最少にしつつ、真空配管11内の圧力を適正に保つことができる。
【0026】
すなわちオイルバック量は、流量によってその程度が変化するものの、圧力に対する依存性の方がずっと大きい。このため、圧力を支配している二段油回転ポンプ12の排気速度(能力)を小さくすれば、オイルバック防止ガスの流量を節減しつつ真空配管11の圧力も適正に保つことが可能となる。
【0027】
図2は本発明の第2実施の形態を示したものである。
【0028】
この第2実施例においては、真空チャンバ10の真空配管11に主ポンプとなるルーツブロア20と一段油回転ポンプ21とを接続したものである。
【0029】
一段油回転ポンプ21は、機種によっては到達圧力が高く、それ単独で使用する場合には、オイルバックを問題視する必要が無いものもある。しかし、この実施の形態では、補助ポンプである一段油回転ポンプ21のほかに主ポンプとなるルーツブロア20を使用して排気速度を高めるようにしている。
【0030】
ルーツブロア20は、上流側の気体を圧縮して一段油回転ポンプ21ヘ送り込む働きをもつため、ルーツブロア20上流側の圧力は一段油回転ポンプ21の到達圧力よりも低くなる。
【0031】
通常のルーツブロア20には、真空シールと潤滑を目的として油が用いられている。従って、ルーツブロア20部分の圧力が低下すると、ルーツブロア20に使用されている油のオイルバックにより真空チャンバ10が汚染されることになる。
【0032】
そこで、ルーツブロア20の上流側とメインバルブ14間の真空配管11にオイルバック防止ガス供給管15を接続し、ルーツブロア20にオイルバック防止ガスを導入することで、この油汚染を防ぐ。
【0033】
この第2実施の形態でも第1実施の形態と同様な理由で、排気速度を低下させることが望ましい。しかし、この第2実施の形態では、オイルバックが問題となるような圧力領域における排気速度は、主としてルーツブロア20の排気速度が支配している。従って、この場合、一段油回転ポンプ21の排気速度ではなく、ルーツブロア20の排気速度を抑制するために、ルーツブロア20をインバータ装置16で能力可変に制御する。
【0034】
この第2実施の形態では、第1実施の形態と同様に、圧力センサ18a、18bの検出圧力を基に制御装置17が、流量調整弁19とインバータ装置16の運転周波数を設定することで、オイルバック防止ガス(気体)を最少にしつつ真空チャンバ10内を適正圧力に保持することができる。
【0035】
図3は、本発明の第3実施の形態を示したものであり、本実施の形態では、大流量の、しかも毒性を持つガス(NF3 ,ホスフィン等)を使用するプラズマCVD装置に用いられる真空チャンバ10に適用した例を示したものである。
【0036】
本実施の形態においては、大排気量システムを構築する例を示しており、大きな排気速度を得るために、主ポンプとして複数の一段目ルーツブロア30、30が、メインバルブを介することなく真空チャンバ10に真空配管31、31を介して直接取り付けられている。一段目ルーツブロア30、30の背圧側の真空配管32は、合流され、その真空配管32に、二段目ルーツブロア33と一段油回転ポンプ34とが接続され、一段油回転ポンプ34の排気側に排気管46が接続され、また二段目ルーツブロア33と一段油回転ポンプ34間の真空配管32に補助バルブ35が接続されて、補助排気系37が構成されている。なお、ルーツブロア30は、一台であってもよい。
【0037】
そして各ルーツブロア30、30、33は、インバータ装置36、36、38で駆動され、それぞれルーツブロア30、30、33の吸込側に設けた圧力センサ39、39、40によりインバータ装置36、36、38の運転周波数がフィードバック制御されるようになっている。
【0038】
プラズマCVD処理が実施されるときには、真空チャンバ10内の圧力が一定になるように、インバータ装置36、36、38が、一段目ルーツブロア30、30と二段目ルーツブロア33の排気速度をフィードバック制御する。
【0039】
スタンバイ状態になり、真空チャンバ10に材料ガスが導入されないときには、インバータ装置36、36、38がポンプの回転速度を下げると共に間歇運転の状態(省エネモード)となり、また、真空チャンバ10に接続したオイルバック防止ガス配管41よりオイルバック防止ガスが導入される。
【0040】
これにより、少ないガス量で効果的にオイルバックを防止することが可能となる。また、このような大排気量システムでは、インバータ装置36、36、38の使用による省エネ効果と電力料金削減効果も大きい。
【0041】
次に、例えば停電時などの緊急時について説明する。
【0042】
この緊急停止には、図1〜図3の実施の形態では、全てのポンプを停止する必要がある。図1、図2のようにメインバルブ14が搭載されている排気システムでは、ポンプの緊急停止時にはメインバルブ14を閉鎖し、これと同時に、図には示していないがメインバルブ14の下流側真空配管11を大気開放して全てのポンプ12,21やブロワ20を大気圧まで復圧する。これは油回転ポンプ12,21の油が圧力差によって真空配管11内に侵入したり、油回転ポンプ12,21やルーツブロア20に使用されている油によって真空チャンバ10や真空配管11が汚染することを防ぐことを目的としている。
【0043】
第3実施の形態では、毒性を持つガスを使用するため、ポンプ等を大気圧まで復圧する方法をとることができない。また、緊急停止時に真空チャンバ10と排気系37全体を大気開放して大気圧まで復圧すると、多量の毒性のガスが作業室内に漏洩するおそれがある。
【0044】
そこで、油回転ポンプの上流側に補助バルブ35が取り付けられ、真空チャンバ10には、定量吐出機構42が付加されている。
【0045】
この定量吐出機構42は、通常運転時に開、緊急停止時に閉となるノーマルクローズ型のバルブ43と、窒素ガスを一定量溜め込んでおくためのシリンダ(ボンベ)44と、通常運転時に閉、緊急停止時に開となるノーマルオープン型のバルブ45とを直列につないで、緊急時にシリンダ44に溜め込まれた窒素を真空チャンバ10に定量供給し、真空チャンバ10とルーツブロア30、30内の圧力が粘性流領域、典型的には100Pa以上になるようにシリンダ44内の圧力と容量が選定されている。
【0046】
緊急停止時には、補助バルブ35が閉鎖されて、油回転ポンプ34の上流側は大気圧に復圧される。これによって、油回転ポンプ34の油が圧力差により真空配管32内に侵入することを防ぐことができる。
【0047】
補助バルブ35よりも上流側は、定量吐出機構42により、すなわちノーマルクローズ型のバルブ43が閉じ、ノーマルオープン型のバルブ45が開くことにより、シリンダ44内に溜め込まれた窒素が真空チャンバ10内に導入され、圧力が粘性流領域の真空(10Pa程度以上)に維持される。これによりルーツブロワ30,30,33の油がオイルバックすることを防ぐことが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施の形態を示す図である。
【図2】本発明の第2実施の形態を示す図である。
【図3】本発明の第3実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10 真空チャンバ
11 真空配管
12 二段油回転ポンプ
15 オイルバック防止ガス供給配管
16 インバータ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空処理装置において、真空チャンバに、油を用いた機械的真空ポンプを接続し、その機械的真空ポンプの吸込側に気体を供給するオイルバック防止ガス供給配管を接続し、上記機械的真空ポンプをインバータ装置で駆動し、スタンバイ状態のとき、オイルバック防止ガス供給配管から気体を供給しつつインバータ装置で油を用いた機械的真空ポンプの能力を下げて運転することを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
CVD装置に用いられる真空チャンバに真空配管を介して油回転ポンプ等を接続して真空排気する真空処理装置において、真空チャンバに一段目ルーツブロワを接続し、二段目ルーツブロアと一段油回転ポンプを接続し、一段目ルーツブロワの上流側に、アルゴンガス等の不活性ガスを供給するオイルバック防止ガス供給配管を接続し、上記一段目と二段目ルーツブロワをそれぞれインバータ装置で駆動し、スタンバイ状態のとき、オイルバック防止ガス供給配管から不活性ガスを供給しつつインバータ装置で上記一段目と二段目ルーツブロワの能力を下げて運転することを特徴とする真空処理装置。
【請求項3】
真空チャンバに複数の一段目ルーツブロワが接続されると共に排気側が合流されて二段目ルーツブロアに接続される請求項2記載の真空処理装置。
【請求項4】
真空チャンバに、窒素を定量供給する定量供給機構を接続し、二段目ルーツブロワと一段油回転ポンプ間の真空配管に補助バルブを接続し、緊急時に補助バルブを閉じると共に一段油回転ポンプを大気圧まで復圧すると共に定量供給機構から真空チャンバに窒素ガスを供給して一段目ルーツブロワの吸込側圧力を100Pa以上になるようにした請求項2記載の真空処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−49028(P2007−49028A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233378(P2005−233378)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】