説明

真空装置

【課題】
真空負荷に逆電圧を印加するための半導体スイッチ素子のオフ時の電力損失を抑制し、温度上昇を制限すると共に、逆電圧電源の小容量化を実現すること。
【解決手段】
半導体スイッチ素子5がオンするときに直流電源1とは逆極性の出力電圧を逆電圧電源4から真空負荷2に印加する真空装置において、半導体スイッチ素子5がオフするときにそのオン期間に主インダクタ3に蓄えられた磁気エネルギーを吸収して電荷を蓄える第1の回路S1を備えると共に、半導体スイッチ素子5がオンするときに第1の回路S1から放電される電荷を磁気エネルギーとして蓄えるインダクタンス素子9と、半導体スイッチ素子5がオフするときにインダクタンス素子9に蓄えられている磁気エネルギーを逆電圧電源4に帰還するダイオード10からなる第2の回路S2を備えることを特徴とする真空装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空中で発生させたプラズマを利用するスパッタ装置、エッチング装置、PVD装置、電子ビーム蒸着装置などの真空負荷における異常放電の発生を防止又は抑制する異常放電防止装置を備える真空装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空中でプラズマを発生させ、そのプラズマを利用して加工又は処理するスパッタ装置、エッチング装置、PVD装置、電子ビーム蒸着装置などの真空負荷は以前から広い分野で使用されている。そして、このような真空負荷にあっては、何らかの原因で電極間のインピーダンスが低下したり、あるいは導電性の異物で電極間が短絡されることによって、異常放電が発生することが既に知られている。このような異常放電が発生すると、特にスパッタ装置ではスパッタリング中の液晶などの基板材料に欠陥を与え、製品の歩留まりの低下を招くという問題があり、また、電子ビーム蒸着装置では放電エネルギーによってフィラメントが断線してしまうなどの問題がある。このような問題を解決するため、異常放電を防止、又は抑制する異常放電防止回路がすでに種々提案されており、例えば比較的回路構成が簡単で、効果的な異常放電防止回路として、真空負荷に並列接続した半導体スイッチ素子を定期的に又は異常放電が発生したときに短時間オンさせることによって、逆電圧電源から逆極性のパルス状電圧を真空負荷に印加して異常放電を発生させない、あるいは発生した異常放電を速やかに消滅させる技術も提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
このように定期的に又は異常放電が発生したときに半導体スイッチ素子を短時間オンさせる回路構成の場合には、特に半導体スイッチ素子をオフさせるときに、それまで半導体スイッチ素子に流れていた電流を急激に遮断すると、真空負荷に流れる電流を安定化させるための主インダクタを流れている電流によって半導体スイッチ素子にかなり高い電圧が印加され、半導体スイッチ素子の電力損失が大幅に増大して発熱し、破損する危険性があるので、これを防止するための回路も既に提案されている(例えば、特許文献4参照)。特許文献4では、半導体スイッチ素子に並列にコンデンサとダイオードと放電用抵抗器とからなるスナバ回路を接続し、半導体スイッチ素子のターンオフ時に発生するサージエネルギーを前記スナバ回路で吸収している。
【特許文献1】特開平07−197258号公報
【特許文献2】特開平08−311647号公報
【特許文献3】特開2005−151612公報
【特許文献4】特開2004−007885公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように、前記特許文献4に開示された異常放電発生防止機能を備える真空装置にあっては、異常放電の発生を防止するために、又は発生した異常放電を速やかに消滅させるために、半導体スイッチ素子をオンさせて、逆電圧電源から真空負荷に逆電圧を印加しているが、その場合には半導体スイッチ素子のオフ時に大きな電圧が半導体スイッチ素子に加わってしまうので、これを軽減するために半導体スイッチ素子のオフ時に発生するサージエネルギーをスナバ回路に回収した上で、その抵抗器などで消費している。しかしこの場合には、スナバ回路での電力損失が大きくなる。この電力損失による発熱は、ファンなどによる空冷で処理することができるが、環境問題の面からも好ましくなく、真空装置内の温度を上昇させる原因になるので、最小限に抑制することが望ましい。
【0005】
本発明はかかる従来の真空装置の課題を解決するために、半導体スイッチ素子のオフ時に主インダクタからのエネルギーを吸収してコンデンサに蓄え、次に半導体スイッチ素子がオンするときに前記コンデンサからの放電電荷をインダクタンス素子に磁気エネルギーとして一旦蓄え、半導体スイッチ素子のオフ時に前記インダクタンス素子に蓄えられている磁気エネルギーを逆電圧電源と直流電源との一方又は双方に帰還することによって、電力損失を抑制し、温度上昇を制限すると共に、逆電圧電源の小容量化などを実現することを主な課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記第1の発明は、直流電源と、その直流電源の出力端子と真空負荷との間にこれらと直列に接続されている主インダクタと、前記真空負荷に跨って並列に接続されていて、かつ互いに直列接続されている半導体スイッチ素子と逆電圧電源と、前記半導体スイッチ素子をオン、オフ駆動する制御回路とを備え、前記半導体スイッチ素子がオンするときに前記直流電源の出力電圧とは逆極性の電圧を前記逆電圧電源から前記真空負荷に印加する真空装置において、前記半導体スイッチ素子がオフするときに前記半導体スイッチ素子のオン期間に前記主インダクタに蓄えられた磁気エネルギーを吸収して電荷を蓄えるコンデンサと前記磁気エネルギーを前記コンデンサに通流する第1のダイオードとを直列接続してなる第1の回路を前記主インダクタに並列に接続し、前記半導体スイッチ素子がオンするときに前記コンデンサから放電される電荷を磁気エネルギーとして蓄えるインダクタンス素子と、前記半導体スイッチ素子がオフするときに前記インダクタンス素子に蓄えられている磁気エネルギーを前記逆電圧電源に帰還する第2のダイオードとを直列接続してなる第2の回路を、前記コンデンサと前記第1のダイオードとの接続側と、前記半導体スイッチ素子と前記逆電圧電源との接続側との間に接続することを特徴とする真空装置を提供する。
【0007】
前記第2の発明は、前記第1の発明において、前記第1の回路の前記コンデンサと前記第2の回路の前記インダクタンス素子とは共振し、その共振周期Trの1/4が前記半導体スイッチ素子のオン時間幅以下になるように、前記コンデンサのキャパシタンス及び前記インダクタンス素子のインダクタンスが選定されていることを特徴とする真空装置を提供する。
【0008】
前記第3の発明は、直流電源と、その直流電源の出力端子と真空負荷との間にこれらと直列に接続されている主インダクタと、前記真空負荷に跨って並列に接続されていて、かつ互いに直列接続されている半導体スイッチ素子と逆電圧電源と、前記半導体スイッチ素子をオン、オフ駆動する制御回路とを備え、前記半導体スイッチ素子がオンするときに前記直流電源の出力電圧とは逆極性の電圧を前記逆電圧電源から前記真空負荷に印加する真空装置において、前記半導体スイッチ素子がオフするときに前記半導体スイッチ素子のオン期間に前記主インダクタに蓄えられた磁気エネルギーを吸収して電荷を蓄えるコンデンサと前記磁気エネルギーを前記コンデンサに通流する第1のダイオードとを直列接続してなる第1の回路を前記主インダクタに対して並列に備え、前記半導体スイッチ素子がオンするときに前記コンデンサから放電される電荷を磁気エネルギーとして蓄えるフライバックトランスと、そのフライバックトランスの1次巻線に直列接続されて前記半導体スイッチ素子がオンするときに前記コンデンサからの電荷を前記1次巻線を通して前記半導体スイッチ素子に通流する第2のダイオードと、前記フライバックトランスの2次巻線に直列接続されて前記半導体スイッチ素子がオフするときに前記フライバックトランスに蓄えられている磁気エネルギーを前記逆電圧電源に帰還する第3のダイオードとからなる第2の回路を備えることを特徴とする真空装置を提供する。
【0009】
前記第4の発明は、前記第3の発明において、前記フライバックトランスの1次巻線の巻数をn1、2次巻線の巻数をn2とするとき、n1/n2≦1となるように、巻数n1と巻数n2とを選定することを特徴とする真空装置を提供する。
【0010】
前記第5の発明は、前記第3の発明において、前記直流電源の出力電圧をVm、前記逆電圧電源の出力電圧をVr、前記フライバックトランスの1次巻線の巻数をn1、2次巻線の巻数をn2とするとき、n1/n2≒Vm/Vrになるように、電圧Vm、電圧Vr、巻数n1、巻数n2を選定することを特徴とする真空装置を提供する。
【0011】
前記第6の発明は、前記第5の発明において、前記第2の回路は、前記フライバックトランスに備えられた別の2次巻線と、該別の2次巻線に直列に接続されている第4のダイオードとを有し、前記半導体スイッチ素子がオフするときに前記フライバックトランスに蓄えられている磁気エネルギーを前記別の2次巻線と前記第4のダイオードとを介して前記直流電源に帰還することを特徴とする真空装置を提供する。
【0012】
前記第7の発明は、前記第6の発明において、前記直流電源の出力電圧をVm、前記逆電圧電源の出力電圧をVr、前記フライバックトランスの前記2次巻線の巻数をn2、前記別の2次巻線の巻数をn3とするとき、n2/n3≦Vm/Vrになるように、電圧Vm、電圧Vr、巻数n1、巻数n2を選定することを特徴とする真空装置を提供する。
【0013】
前記第8の発明は、前記第3の発明ないし前記第7の発明のいずれかにおいて、前記コンデンサと前記フライバックトランスとが共振し、その共振周期Trの1/4が前記半導体スイッチ素子のオン時間幅以下になるように、前記コンデンサのキャパシタンス及び前記フライバックトランスの1次巻線のインダクタンスが選定されていることを特徴とする真空装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
前記第1の発明によれば、主インダクタを流れる電流のエネルギーをコンデンサに蓄え、そのエネルギーを半導体スイッチ素子のオン時にインダクタンス素子に一旦蓄え、半導体スイッチ素子のオフ時に逆電圧電源に帰還しているので、電力損失を低減することができ、環境の改善、真空装置の温度上昇の抑制、及び逆電圧電源の小型化などを達成することができる。
【0015】
前記第2の発明によれば、前記第1の発明による効果の他に、より効率的に主インダクタを流れる電流によるエネルギーを逆電圧電源に帰還することができる。
【0016】
前記第3の発明によれば、前記第1の発明によって得られる効果の他に、1次巻線と2次巻線とを有するフライバックトランスによって主インダクタを流れる電流によるエネルギーを逆電圧電源だけに帰還することができるので、より逆電圧電源を小型化することが可能である。
【0017】
前記第4の発明によれば、前記第3の発明で得られる効果の他に、前記第4のダイオードを備えることにより、逆電圧電源からフライバックトランスの1次巻線を通して電流を流さず、2次巻線を通して帰還しているので、逆電圧電源の電圧を有効に上昇させることができ、逆電圧電源のより小容量化が可能である。
【0018】
前記第5の発明によれば、前記第1の発明ないし前記第4の発明で得られる効果の他に、より効率的に直流電源又は逆電圧電源に前記エネルギーを帰還できるので、より一層電力効率の向上、環境の改善、真空装置の温度上昇の抑制などを達成することができる。
【0019】
前記第6の発明によれば、前記第1の発明ないし前記第5の発明で得られる効果の他に、主インダクタを流れる電流によるエネルギーを逆電圧電源と直流電源とに帰還することができ、電力損失を生じることなく、有効に前記吸収エネルギーを使うことができる。
【0020】
前記第7の発明によれば、前記第6の発明で得られる効果の他に、逆電圧電源の出力電圧を直流電源の出力電圧に対応する電圧値にクランプできるので、逆電圧電源が過電圧になることがない。
【0021】
前記第8の発明によれば、前記第3の発明ないし前記第7の発明で得られる効果の他に、主インダクタを流れる電流によるエネルギーを、より一層効率的に逆電圧電源と直流電源とに帰還することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔実施形態1〕
先ず、図1によって本発明を実施するための実施形態1の真空装置100について説明する。図1は真空装置100の回路構成を示し、図2は真空装置100の各部の動作波形を示す図である。直流電源1は、図示しない商用三相交流電源又は単相交流電源の交流電力を整流する整流器及び平滑化するフィルタ回路などからなる電源である。直流電源1とスパッタ装置、エッチング装置、PVD装置、電子ビーム蒸着装置などの真空負荷2との間には負荷電流を安定化するための主インダクタ3が直列に接続されている。互いに直列になるように接続された逆電圧電源4と半導体スイッチ素子5とが真空負荷2と並列に接続されている。
【0023】
逆電圧電源4は、半導体スイッチ素子5がオンするときに真空負荷2に適したパルス状の逆電圧を印加する直流電源であり、コンデンサ4Aとコンデンサ4Aを図示の極性で充電するための充電回路4Bとコンデンサ4Aに並列に接続されたダイオード4Cとからなる簡単な回路構成のものである。ダイオード4Cは、事故などによってコンデンサ4Aがほぼゼロの電荷になるまで放電した場合に、コンデンサ4Aが図示極性と逆の極性に充電されるのを防止する働きを行う。半導体スイッチ素子5は、電圧駆動型の半導体素子であるIGBT又はMOSFET、あるいはサイリスタなどの半導体素子5Aと、寄生ダイオード又は個別のダイオード5Bとからなる。以下ではダイオード5Bという。半導体スイッチ素子5は制御回路6からの駆動信号によってオン、オフされる。この実施形態1では制御回路6は、予め決められた一定の周波数、一定のオン幅の駆動パルスを半導体スイッチ素子5に与えて駆動するが、図示しない異常放電検出回路又は異常放電発生予知回路などからの検出信号を受けるときに、駆動信号を出力するものでも勿論よい。
【0024】
互いに直列に接続されたコンデンサ7と第1のダイオード8とからなる第1の回路S1が主インダクタ3と並列に接続されている。第1のダイオード8は主インダクタ3に流れる電流Ipがコンデンサ7を通して直流電源1にバイパスされるのを防ぐ働きを行う。コンデンサ7と第1のダイオード8とが接続された接続側を示す点Aと、逆電圧電源4と半導体スイッチ素子5とが接続された接続側を示す点Bとの間に第2の回路S2が接続されている。第2の回路S2は互いに直列に接続されているインダクタンス素子9と第2のダイオード10とからなる。第2のダイオード10は、点B側から点A側に電流が逆流するのを防ぐ働きを行う。コンデンサ7が逆に充電されるのを防止する逆充電防止用ダイオード11がコンデンサ7と並列に接続されている。ここで、コンデンサ7はキャパシタンスCを有し、インダクタンス素子9はインダクタンスLを有するものとする。半導体スイッチ素子5がオンするとき、コンデンサ7とインダクタンス素子9とはLCで共振現象を生じるものとする。
【0025】
次に、図1と図2によってこの回路の動作について説明する。真空負荷2、及び逆電圧電源4と半導体スイッチ素子5の動作は従来と同様であるので、半導体スイッチ素子5のスイッチング動作に伴う第1の回路S1と第2の回路S2の動作及び効果について主に説明する。半導体スイッチ素子5がオンすると、逆電圧電源4の出力電圧Vrによって、真空負荷2の負荷電圧、負荷電流はそれぞれ図2(A)、図2(B)に示すようになる。また、図2(C)に示すように半導体スイッチ素子5がオンするときには、それまで直流電源1から真空負荷2を通して主インダクタ3に流れていた電流Ipに、逆電圧電源4の出力電圧Vrによる電流を加算した電流が逆電圧電源4から半導体スイッチ素子5を通して主インダクタ3に流れる。
【0026】
図2において、時刻t0で半導体スイッチ素子5がターンオフすると、それまで主インダクタ3に流れていた電流Ipはインダクタンス作用によってそのまま流れ続けようとするので、その電流は主インダクタ3から第1の回路S1のダイオード8及びコンデンサ7を通して流れ、コンデンサ7を図示極性で充電する。例えば、逆電圧電源4の出力電圧Vrが100Vであるとして、コンデンサ7の充電電圧はほぼ100Vとなる。第1の回路S1の働きによって、半導体スイッチ素子5のターンオフ時に半導体スイッチ素子5の両端に大きなサージ電圧が発生しない。このときコンデンサ7の充電電圧によってダイオード8は逆バイアス状態にあり、かつ第2の回路S2のダイオード10も直流電源1の電圧Vmと逆電圧電源4の出力電圧Vrとの和によって逆バイアスされているので非導通であることから、コンデンサ7の充電電荷は放電されずに維持される。
【0027】
次に時刻t1で半導体スイッチ素子5がターンオンすると、それまで直流電源1から真空負荷2を通して主インダクタ3に流れていた電流Ipは、逆電圧電源4と半導体スイッチ素子5との経路に転流され、つまり前述したように逆電圧電源4が電流Ipを担持する。このとき同時に、第1の回路S1のコンデンサ7の電荷は第2の回路S2のインダクタンス素子9、ダイオード10及び半導体スイッチ素子5を通して循環し、インダクタンス素子9に磁気エネルギーを蓄える。ここでは、インダクタンスに蓄えられるエネルギーを磁気エネルギーと言う。このとき、インダクタンス素子9のインダクタンスLが適切に選定されていれば、半導体スイッチ素子5のオン期間中に、コンデンサ7はその電圧がほぼゼロになるまで放電され、コンデンサ7の充電電荷はほとんどすべてインダクタンス素子9に磁気エネルギーとして蓄えられる。
【0028】
第1の回路S1のコンデンサ7の電荷が第2の回路S2のインダクタンス素子9、ダイオード10及び半導体スイッチ素子5を通して循環される動作は、コンデンサ7のキャパシタンスCとインダクタンス素子9のインダクタンスLとの共振現象を伴うから、インダクタンス素子9を流れる電流は図2(D)に示すような共振電流となる。その共振電流のピーク値が半導体スイッチ素子5のオン期間中にあれば、コンデンサ7の充電電荷を効率よくインダクタンス素子9に磁気エネルギーとして蓄えることができる。したがって、コンデンサ7のキャパシタンスCとインダクタンス素子9のインダクタンスLとの共振の共振周期Tr(共振周波数をFrとするとき、Tr=1/Fr)の1/4が半導体スイッチ素子5のオン期間(例えば、5μs)以下になるように、コンデンサ7のキャパシタンスCとインダクタンス素子9のインダクタンスLとを選定することが望ましい。
【0029】
このようにコンデンサ7のキャパシタンスCとインダクタンス素子9のインダクタンスLとを選定することによって、半導体スイッチ素子5のオン期間中にコンデンサ7の放電電流、つまり図2(D)に示すインダクタンス素子9の共振電流は時刻t2でピーク値に達し、同時に時刻t2でコンデンサ7の電圧はほぼゼロになり、その共振電流は時刻t3までコンデンサ7を逆極性に充電することなくダイオード10とダイオード11とを通して循環される。時刻t3で半導体スイッチ素子5がターンオフすると、インダクタンス素子9に蓄えられていた磁気エネルギーは、ダイオード8と10を通して逆電圧電源4及び直流電源1に放出され、図2(D)に示すように、インダクタンス素子9の電流は減少し、時刻t4でインダクタンス素子9に蓄えられた磁気エネルギーはすべて逆電圧電源4及び直流電源1に帰還され、逆電圧電源4のコンデンサ4Aは充電され、その電圧は上昇する。
【0030】
したがって、半導体スイッチ素子5のターンオフ時に発生するサージはコンデンサ7によって吸収され、そしてインダクタンス素子9に一旦磁気エネルギーとして蓄えられ、その磁気エネルギーはすべて逆電圧電源4及び直流電源1に帰還されるので、半導体スイッチ素子5のターンオフ時の電力損失は低減される。実施形態1の真空負荷100によれば、半導体スイッチ素子5のターンオフ時に大きなサージ電圧が半導体スイッチ素子5の両端に印加されることがないので、半導体スイッチ素子の電力損失を小さくできるばかりでなく、スナバエネルギーをすべて逆電圧電源4及び直流電源1に帰還しているので、発熱は小さく、環境に与える悪影響を小さくできると同時に、逆電圧電源4、特に充電回路4Bを小型化することができる。
【0031】
〔実施形態2〕
次に図3により本発明の実施形態2に係る第2の真空装置200について説明する。図3において、図1で示した記号と同一の記号は同じ名称の部材を示すものとする。この第2の真空装置200が第1の真空装置100と異なるところは、主にインダクタンス素子に代えてフライバックトランス30を第2の回路S2に用いた点であり、他はほぼ同じであるので、第2の回路S2に関連する部分の構成及び動作などについて説明する。第2の回路S2において、フライバックトランス30の1次巻線N1は点Aと点Bとの間にダイオード10と直列になるように接続されている。2次巻線N2はダイオード31を通して逆電圧電源4の両端に跨って接続されている。1次巻線N1と2次巻線N2とは、それぞれ黒点で示されている極性を有すると共に、巻数n1、n2を有するものとする。
【0032】
半導体スイッチ素子5がターンオンするときに、コンデンサ7の電圧がダイオード10を順方向にバイアスして導通させ、第2の回路S2のフライバックトランス30の1次巻線N1に黒点側を正とする電圧が印加され、前述したように、半導体スイッチ素子5のターンオフの際に第1の回路S1のコンデンサ7に充電された電荷は、第2の回路S2の1次巻線N1、ダイオード10及び半導体スイッチ素子5を通して放電され、1次巻線N1のインダクタンスL1に磁気エネルギーが蓄えられる。ここまでの動作は第1の真空装置100の場合とほぼ同様である。このとき、2次巻き線N2の電圧は黒点側が正極性なので、ダイオード31は逆バイアスでオンしない。
【0033】
次に半導体スイッチ素子5がターンオンすると、フライバックトランス30の2次巻線N2に黒点側を負とし、非黒点側を正とする電圧が誘起され、1次巻線N1のインダクタンスL1に蓄えられた磁気エネルギーが2次巻線N2からダイオード31を通して逆電圧電源4に放出され、そのコンデンサ4Aを充電する。この第2の真空装置200においても、半導体スイッチ素子5のターンオフ時にサージエネルギーになる主インダクタ3の電流エネルギーをコンデンサ7で吸収し、その充電電荷をフライバックトランス30の1次巻線N1のインダクタンスL1に磁気エネルギーとして一旦蓄え、更にその磁気エネルギーを2次巻線N2から逆電圧電源4に帰還しているので、電力損失とはならず、発熱を生じないばかりでなく、充電回路4Bを小型化できるなどの効果を奏する。また、この実施形態2においても実施形態1と同様に、コンデンサ7のキャパシタンスCとフライバックトランス30の1次巻線N1のインダクタンスL1との共振の共振周期Trの1/4が半導体スイッチ素子5のオン期間以下になるように、コンデンサ7のキャパシタンスCとフライバックトランス30の1次巻線N1のインダクタンスL1とを選定することにより、コンデンサ7に吸収したエネルギーをフライバックトランス30の1次巻線N1のインダクタンスL1効率的に蓄えることができるから、第1の回路S1に吸収したエネルギーを逆電圧電源4に効率的に帰還することができる。
【0034】
なお、第2の真空装置200ではフライバックトランス30の1次巻線N1と2次巻線N2との巻数比(n1/n2)が1になるように通常は選定される。半導体スイッチ素子5がオフしたとき、フライバックトランス30の2次巻線N2の電圧は非黒点側を正として逆電圧電源4の電圧Vr(例えば、100V)にクランプされる。したがって、n1/n2≦1のときには、フライバックトランス30の1次巻線N1の電圧は逆電圧電源4の出力電圧Vrに等しい電圧値又はそれ以下の電圧値となる。このとき、ダイオード10のカソードの電圧は直流電源1の出力電圧Vmと逆電圧電源4の出力電圧Vrとの和に等しい電圧値であるので、ダイオード10は導通しない。したがって、1次巻線N1のインダクタンスL1に蓄えられた磁気エネルギーはダイオード10を通して帰還されることはなく、2次巻線N2を通して逆電圧電源4に帰還され、コンデンサ4Aの電圧を有効に上昇させる。
【0035】
一般に、第2の真空装置200の構成にあっては、真空負荷2を流れる負荷電流が少ないとき、つまり軽負荷のとき、直流電源1からの出力電流が小さくなるばかりでなく、逆電圧電源4からの出力電流も小さくなる。しかしながら、第1の回路S1のコンデンサ7に充電されるエネルギー(電荷)は、半導体スイッチ素子5のスイッチング周波数に依存し、そのスイッチング周波数は一定であるから、軽負荷のときにも減少しない。そして軽負荷のときには、主インダクタ3の磁気エネルギーは真空負荷2にはほとんど吸収されないから、コンデンサ7にその多くが吸収される。したがって、コンデンサ7に吸収されたエネルギーをすべて逆電圧電源4に帰還すると、逆電圧電源4から出力された電力よりも大きな電力が帰還されるので、直流電源1よりも容量がかなり小さな逆電圧電源4の出力電圧は必要以上に上昇する、つまり過充電状態になる危険性がある。
【0036】
前述した軽負荷のときの問題点を解決するためには、フライバックトランス30の1次巻線N1と2次巻線N2との巻数比(n1/n2)を下記のように設定すればよい。直流電源1の出力電圧Vmと逆電圧電源4の出力電圧Vrとの和の電圧(Vm+Vr)/Vr=n1/n2となるように、巻数比(n1/n2)を設定する。例えば、出力電圧Vmを500Vとし、出力電圧Vrを100Vとすると、n1/n2=6となる。分かり易いので、以下の説明では具体例として出力電圧Vmを500Vとし、出力電圧Vrを100Vとして説明する。前述したように、第1の回路S1のコンデンサ7の電荷は次に半導体スイッチ素子5がオンするときに第2の回路S2のフライバックトランス30に磁気エネルギーとして蓄えられる。そして、半導体スイッチ素子5がオフするとき、フライバックトランス30の磁気エネルギーは2次巻線N2を通して逆電圧電源4に帰還され、そのコンデンサ4Aを充電する。
【0037】
コンデンサ4Aの充電が進み、コンデンサ4Aの電圧が100Vを幾分越えると、当然に2次巻線N2の電圧は100Vを幾分越えた電圧となるので、1次巻線N1の電圧は直流電源1の出力電圧500Vと逆電圧電源4の出力電圧100Vとを合わせた電圧である600Vを越える。したがって、ダイオード8と第2の回路S2のダイオード10が順バイアスされて導通し、実施形態1と同様にフライバックトランス30の磁気エネルギーを逆電圧電源4に直接帰還するようになる。この結果、軽負荷時における逆電圧電源4の出力電圧が設定値以上に上昇するのを防ぐことができる。なお、軽負荷以外の通常の負荷状態では逆電圧電源4からの電力の放出が大きく、コンデンサ4Aの電圧が低下するので、前記帰還エネルギーによってコンデンサ4Aが100Vに達することはなく、したがって、フライバックトランス30に蓄えられた磁気エネルギーは2次巻線N2を通して逆電圧電源4にすべて帰還されても、コンデンサ4Aが過充電になることはない。
【0038】
前述から分かるように、(Vm+Vr)/Vr=n1/n2となるように、フライバックトランス30の1次巻線N1と2次巻線N2との巻数比を設定すれば、軽負荷のときには逆電圧電源4のコンデンサ4Aの電圧の過上昇を防ぐことができるが、負荷電流が大きい、つまり重負荷のときにはフライバックトランス30に蓄えられた磁気エネルギーの帰還によって思うように逆電圧電源4の電圧を上昇させることはできない。したがって、図示しないが、必要に応じて、n1/n2≦1となる巻数n2を有する第1の2次巻線と、(Vm+Vr)/Vr=n1/n2となる巻数n2を有する第2の2次巻線とをフライバックトランスに備えてもよい。そして、図示しない切替素子によって負荷の重さに応じていずれかの前記2次巻線に切り替えればよい。なおこの場合、前記第1、第2の2次巻線に並列に抵抗を接続する。
【0039】
〔実施形態3〕
次に図4により本発明の実施形態3にかかる第3の真空装置300について説明する。図4において、図1、図3で示した記号と同一の記号は同じ名称の部材を示すものとする。この第3の真空装置300が第1の真空装置100又は第2の真空装置200と異なるところは、前述のようにしてフライバックトランス40の1次巻線N1のインダクタンスに蓄えた磁気エネルギーを別々の2次巻線を通して逆電圧電源4と直流電源1とにそれぞれ帰還するところが異なる。真空装置100、200と異なる点について主に説明する。第2の回路S2のフライバックトランス40が第1の2次巻線N2、第2の2次巻線N3を有し、第1の2次巻線N2はダイオード31を通して逆電圧電源4の両端に跨って接続され、第2の2次巻線N3はダイオード41を通して直流電源1の両端に跨って接続されている。1次巻線N1、第1の2次巻線N2及び第2の2次巻線N3は、それぞれ黒点で示されている極性を有する。
【0040】
真空装置200で説明したように、負荷電流が少ないときには直流電源1の出力電流が少なくなるばかりでなく、逆電圧電源4の出力電流も少なくなる。しかし、コンデンサ7に充電されるエネルギーは半導体スイッチ素子のスイッチング周波数に依存し、軽負荷のときにも減少しないので、軽負荷時にコンデンサ7に充電されるエネルギーを逆電圧電源4にすべて帰還すると、逆電圧電源4の出力電圧が必要以上に上昇する危険性があることについては既に述べた。この真空装置300では、前述したように第1の回路S1のコンデンサ7に充電された電荷を逆電圧電源4に優先的にエネルギーとして帰還し、帰還エネルギーが過剰の場合には直流電源1にもその過剰分を帰還して逆電圧電源4の出力電圧が必要以上に上昇するのを防ぐところに特徴がある。
【0041】
フライバックトランス40の第1の2次巻線N2の巻数をn2、第2の2次巻線N3の巻数をn3とし、例えば直流電源1の出力電圧Vmを500V、逆電圧電源4の出力電圧Vrを100Vとする。この真空装置300では、巻数比(n2/n3)を直流電源1と逆電圧電源4との電圧比率(Vm/Vr)とほぼ同じ値又はそれよりも幾分小さな値に設定している。前述の電圧値からVm/Vr=5であるので、巻数比(n2/n3)を例えば5程度に設定すると、逆電圧電源4の出力電圧Vrの上昇を直流電源1の出力電圧Vmの1/5に制限することができるので、この点について説明する。前述したようにフライバックトランス40の1次巻線N1に蓄えられた磁気エネルギーが2次巻線N2、次巻線N3を通して放出される段階において、ダイオード10は出力電圧(Vm+Vr)によって逆バイアスされているから導通せず、逆電圧電源4のコンデンサ4Aの電圧は逆電力の放出により低下しているからダイオード31が導通することによって、前記磁気エネルギーは逆電圧電源4に帰還され、コンデンサ4Aを充電する。
【0042】
このとき、フライバックトランス40の1次巻線N1に蓄えられた磁気エネルギーがさ程大きくなく、例えば第1の2次巻線N2の電圧が100V以下ならば、巻数比(n2/n3)から第2の2次巻線N3の電圧は500Vよりも低いために、ダイオード41は直流電源1の出力電圧(500V)によって逆バイアスされているので、導通しない。したがって、フライバックトランス40の磁気エネルギーは直流電源1には帰還されない。しかし、フライバックトランス40の磁気エネルギーが大きく、第2の2次巻線N3の電圧が500Vを越える電圧であると、ダイオード41も導通してフライバックトランス40の磁気エネルギーを逆電圧電源4だけでなく、第2の2次巻線N3を通して直流電源1にも帰還する。
【0043】
つまり、第2の2次巻線N3の電圧が500V以下である場合には、フライバックトランス40の磁気エネルギーは第1の2次巻線N2を通して逆電圧電源4だけに帰還され、第2の2次巻線N3の電圧が500Vを越える場合には、フライバックトランス40の磁気エネルギーは第1の2次巻線N2、第2の2次巻線N3を通して逆電圧電源4、直流電源1の双方に帰還される。この状態では、第2の2次巻線N3の電圧は直流電源1の出力電圧Vmにクランプされる。直流電源1は逆電圧電源4に比べてかなり容量が大きいので、フライバックトランス40の磁気エネルギーが帰還されてもその出力電圧Vmはほとんど変化せず、常にほぼ500Vである。したがって、第2の2次巻線N3の電圧が500Vにクランプされるから、第1の2次巻線N2は巻数比(n2/n3=5)に対応する電圧、100Vにクランプされる。以上述べたように、フライバックトランス40の磁気エネルギーによって逆電圧電源4の電圧が100Vに達すると、フライバックトランス40の磁気エネルギーの余剰分は直流電源1に帰還されるので、逆電圧電源4が過充電されることはない。
【0044】
前記例では、Vm/Vrと巻数比(n2/n3)との割合を等しく設定したが、Vm/Vrと巻数比(n2/n3)との割合は逆電圧電源4の過充電の範囲に従って決めればよい。例えば、巻数比(n2/n3)がVm/Vrの0.9の場合には、第1の2次巻線N2の電圧はほぼ111Vにクランプされてほぼ111Vを越えないことになる。また、Vm/Vrと巻数比(n2/n3)との割合が0.8の場合には、第1の2次巻線N2の電圧はほぼ125Vにクランプされることになり、ほぼ125Vを越えないことになる。この電圧が、逆電圧電源4に許容される電圧範囲であるならば、巻数比(n2/n3)をVm/Vrの数値より小さく設定してもよい。
【0045】
図示しないが、真空装置300の変形例として、図4において、第1の2次巻線N2を除去し、フライバックトランス40の磁気エネルギーを第2の2次巻線N3を通して直流電源1だけに帰還してもよい。この場合には、フライバックトランス40の磁気エネルギーが逆電圧電源4に帰還されないので、逆電圧電源1の小型化には寄与しないが、電力損失の低減は真空装置100〜300と同様に行われる。
【0046】
以上説明した実施形態では、いずれも制御回路6は半導体スイッチ素子5を予め決めた周波数で、予め決めたパルス幅に従ってオン、オフ動作させたが、このような異常放電の予防法は電力損失が大きいために、異常放電の発生を検出し、異常放電が検出されたときだけ、半導体スイッチ素子5を予め決めたパルス幅だけオンさせる異常放電抑制方法が既に提案されており、このような異常放電抑制方法を本発明に適用できることは明らかである。更に、異常放電の発生を予知して、異常放電が発生する直前に半導体スイッチ素子5を予め決めたパルス幅だけオンさせることにより、異常放電を発生させない異常放電発生防止方法も提案されており、このような異常放電発生防止方法も本発明に適用することができる。
【0047】
また以上の実施形態では、半導体スイッチ素子5を1個の半導体素子として説明したが、スパッタ装置は負荷電圧が数100Vであるために、半導体スイッチ素子5としてIGBT又はMOSFETなどを使用する場合は、例えば1200Vの耐圧を有する半導体素子1個で実現できるが、電子ビーム装置の場合には負荷電圧が10kV程度であるため、1200Vの耐圧を有するIGBT又はMOSFETなどを複数個直列接続することにより実現できる。この場合にはそれぞれのIGBT又はMOSFETなどに電圧分担均等用のコンデンサが並列接続される場合が多いが、IGBT又はMOSFETなどがオンするときにこれらコンデンサに充電されたエネルギーをフライバックトランスの1次巻線を通して放電するように構成しておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態1に係る第1の真空装置100の回路構成を示す図である。
【図2】本発明に係る第1の真空装置100を説明するための波形図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る第2の真空装置200の回路構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態3に係る第3の真空装置300の回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・直流電源
2・・・真空負荷
3・・・主インダクタ
4・・・逆電圧電源
4A・・・コンデンサ
4B・・・充電回路
4C・・・ダイオード
5・・・半導体スイッチ素子
6・・・制御回路
7・・・コンデンサ
8・・・ダイオード
9・・・インダクタンス素子
10・・・ダイオード
11・・・逆充電防止用ダイオード
30・・・フライバックトランス
31・・・ダイオード
40・・・フライバックトランス
41・・・ダイオード
S1・・・第1の回路
S2・・・第2の回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、該直流電源の出力端子と真空負荷との間にこれらと直列に接続されている主インダクタと、前記真空負荷に跨って並列に接続されていて、かつ互いに直列接続されている半導体スイッチ素子と逆電圧電源と、前記半導体スイッチ素子をオン、オフ駆動する制御回路とを備え、前記半導体スイッチ素子がオンするときに前記直流電源の出力電圧とは逆極性の電圧を前記逆電圧電源から前記真空負荷に印加する真空装置において、
前記半導体スイッチ素子がオフするときに前記半導体スイッチ素子のオン期間に前記主インダクタに蓄えられた磁気エネルギーを吸収して電荷を蓄えるコンデンサと前記磁気エネルギーを前記コンデンサに通流する第1のダイオードとを直列接続してなる第1の回路を前記主インダクタに並列に接続し、
前記半導体スイッチ素子がオンするときに前記コンデンサから放電される電荷を磁気エネルギーとして蓄えるインダクタンス素子と、前記半導体スイッチ素子がオフするときに前記インダクタンス素子に蓄えられている磁気エネルギーを前記逆電圧電源に帰還する第2のダイオードとを直列接続してなる第2の回路を、前記コンデンサと前記第1のダイオードとの接続側と、前記半導体スイッチ素子と前記逆電圧電源との接続側との間に接続することを特徴とする真空装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の回路の前記コンデンサと前記第2の回路の前記インダクタンス素子とは共振し、その共振周期Trの1/4が前記半導体スイッチ素子のオン時間幅以下になるように、前記コンデンサのキャパシタンス及び前記インダクタンス素子のインダクタンスが選定されていることを特徴とする真空装置。
【請求項3】
直流電源と、該直流電源の出力端子と真空負荷との間にこれらと直列に接続されている主インダクタと、前記真空負荷に跨って並列に接続されていて、かつ互いに直列接続されている半導体スイッチ素子と逆電圧電源と、前記半導体スイッチ素子をオン、オフ駆動する制御回路とを備え、前記半導体スイッチ素子がオンするときに前記直流電源の出力電圧とは逆極性の電圧を前記逆電圧電源から前記真空負荷に印加する真空装置において、
前記半導体スイッチ素子がオフするときに前記半導体スイッチ素子のオン期間に前記主インダクタに蓄えられた磁気エネルギーを吸収して電荷を蓄えるコンデンサと前記磁気エネルギーを前記コンデンサに通流する第1のダイオードとを直列接続してなる第1の回路を前記主インダクタに対して並列に備え、
前記半導体スイッチ素子がオンするときに前記コンデンサから放電される電荷を磁気エネルギーとして蓄えるフライバックトランスと、該フライバックトランスの1次巻線に直列接続されて前記半導体スイッチ素子がオンするときに前記コンデンサからの電荷を前記1次巻線を通して前記半導体スイッチ素子に通流する第2のダイオードと、前記フライバックトランスの2次巻線に直列接続されて前記半導体スイッチ素子がオフするときに前記フライバックトランスに蓄えられている磁気エネルギーを前記逆電圧電源に帰還する第3のダイオードとからなる第2の回路を備えることを特徴とする真空装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記フライバックトランスの1次巻線の巻数をn1、2次巻線の巻数をn2とするとき、n1/n2≦1となるように、巻数n1と巻数n2とを選定することを特徴とする真空装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記直流電源の出力電圧をVm、前記逆電圧電源の出力電圧をVr、前記フライバックトランスの1次巻線の巻数をn1、2次巻線の巻数をn2とするとき、n1/n2≒Vm/Vrになるように、電圧Vm、電圧Vr、巻数n1、巻数n2を選定することを特徴とする真空装置。
【請求項6】
請求項3において、
前記第2の回路は、前記フライバックトランスに備えられた別の2次巻線と、該別の2次巻線に直列に接続されている第4のダイオードとを有し、前記半導体スイッチ素子がオフするときに前記フライバックトランスに蓄えられている磁気エネルギーを前記別の2次巻線と前記第4のダイオードとを介して前記直流電源に帰還することを特徴とする真空装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記直流電源の出力電圧をVm、前記逆電圧電源の出力電圧をVr、前記フライバックトランスの前記2次巻線の巻数をn2、前記別の2次巻線の巻数をn3とするとき、n2/n3≦Vm/Vrになるように、電圧Vm、電圧Vr、巻数n1、巻数n2を選定することを特徴とする真空装置。
【請求項8】
請求項3ないし請求項7のいずれかにおいて、
前記コンデンサと前記フライバックトランスとが共振し、その共振周期Trの1/4が前記半導体スイッチ素子のオン時間幅以下になるように、前記コンデンサのキャパシタンス及び前記フライバックトランスの1次巻線のインダクタンスが選定されていることを特徴とする真空装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−123772(P2008−123772A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304849(P2006−304849)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【Fターム(参考)】