眼鏡用測定装置及び三次元測定装置
【課題】 被検者に負荷をかけることなく角膜眼鏡間距離等の測定を行う眼鏡用測定装置を提供する。
【解決手段】 眼鏡用測定装置(10)は、指標マーク(SC)が眼鏡フレーム(23)に取り付けられた眼鏡(20)をかけた被検者を撮影する撮影部(12)と、撮影部で撮影された被検者の眼球の頂点を求めるとともに、指標マーク(SC)に基づいて眼鏡の眼鏡レンズ(21)と被検者の眼球の頂点(KP)との角膜眼鏡間距離(KG)を演算する演算部(14)と、を備える。
【解決手段】 眼鏡用測定装置(10)は、指標マーク(SC)が眼鏡フレーム(23)に取り付けられた眼鏡(20)をかけた被検者を撮影する撮影部(12)と、撮影部で撮影された被検者の眼球の頂点を求めるとともに、指標マーク(SC)に基づいて眼鏡の眼鏡レンズ(21)と被検者の眼球の頂点(KP)との角膜眼鏡間距離(KG)を演算する演算部(14)と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の眼の位置、角度、及び被検者が装着した眼鏡に対する眼位置を測定する眼鏡用測定装置及び三次元測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ玉型(未加工の眼鏡レンズ)の単焦点レンズを用いて近視用眼鏡、または遠視用眼鏡を作成する場合には、瞳孔中心間距離、角膜眼鏡間距離、及び視線角度(アイポジション)等を測定する必要がある。さらに、1枚の眼鏡レンズに近視と遠視を混在させた累進多焦点レンズ、いわゆるプログレッシブレンズを用いる際には、瞳孔中心間距離、角膜眼鏡間距離、及び視線角度などの情報が特に重要となる。すなわち、累進多焦点レンズは被検者の使用環境に応じて遠用及び近用の視線角度を正確に測定することが必要とされている。
【0003】
瞳孔中心間距離及び角膜眼鏡間距離の測定には、測定者が被検者の眼の付近に定規をあてて目視測定を行う方法、または装置を用いて被検者の正面の顔画像または側面の顔画像を取得した後、瞳孔中心間距離及び角膜眼鏡間距離を測定する方法を行っている。特許文献1においては、専用の眼位置測定装置を用いて瞳孔中心間距離、角膜眼鏡間距離、及び視線角度等を測定する方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、測定者による目視による瞳孔中心間距離及び角膜眼鏡間距離の測定は誤差が生じやすい。また、専用の眼位置測定装置を用いる場合は、専用の付属機器を眼鏡フレームに装着する必要がある点や、撮影した画像を解析するための装置を用意する必要あり、設備投資が高くなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−216049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みて、被検者に負荷をかけることなく瞳孔中心間距離、角膜眼鏡間距離、及び視線角度の測定を行う眼鏡用測定装置及び三次元測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点の眼鏡用測定装置は、指標マークが眼鏡フレームに取り付けられた眼鏡をかけた被検者を撮影する撮影部と、撮影部で撮影された被検者の眼球の頂点を求めるとともに、指標マークに基づいて眼鏡の眼鏡レンズと被検者の眼球の頂点との角膜眼鏡間距離を演算する演算部と、を備える。
【0008】
第2の観点の眼鏡用測定装置は、被検者を正面から撮影する撮影部と、虹彩の平均径を記憶する記憶部と、撮影部で撮影された被検者の眼球の虹彩の最大径を求め記憶部に記憶された平均径と求められた虹彩の最大径とに基づいて被検者の両眼の瞳孔の距離である瞳孔中心間距離を演算する演算部と、を備える。
【0009】
第3の観点の眼鏡用測定装置は、遠方を見る被検者を正面から第1撮影し且つ遠方より近い近方を見る被検者を正面から第2撮影する撮影部と、第1撮影及び第2撮影で撮影された被検者の眼球の虹彩の水平方向の第1径及び垂直方向の第2径を求め、第1撮影の際の第1径及び第2径と第2撮影の際の第1径及び第2径とに基づいて、被検者が遠方を見るときと近方を見るときとの視線角度を演算する演算部と、を備える。
【0010】
第4の観点の三次元測定装置は、被検者の眼球の頂点と眼鏡レンズとの角膜眼鏡間距離、又は被検者の両眼の瞳孔の距離である瞳孔中心間距離を測定する。そして三次元測定装置は、光を透さない眼鏡レンズを有する眼鏡を被検者がかけた状態で被検者を撮影する第1撮影と、眼鏡をかけない状態で被検者を撮影する第2撮影とを行う撮影部と、第1撮影と第2撮影との画像の違いに基づいての角膜眼鏡間距離又は瞳孔中心間距離を演算する演算部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の眼鏡用測定装置及び三次元測定装置によれば、瞳孔中心間距離、角膜眼鏡間距離及び視線角度等の測定を取得することができ、適切な眼鏡調整が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】タブレット型端末機10を示した図である。
【図2】眼鏡20の構成を示した図である。
【図3】被検者が眼鏡20を装着した顔面側面像FLである。
【図4】リム22の前傾角θ及び角膜眼鏡間距離KGの測定方法のフローチャートである。
【図5】顔面側面像FL、目盛MK及びテンプル23の位置関係を示した模式図である。
【図6】斜め後方から撮影された場合に角膜眼鏡間距離KGを測定する測定方法を示した模式図である。
【図7】瞳孔中心間距離PDの測定方法のフローチャートである。
【図8】両目近傍の顔面正面像FAを示した図である。
【図9】視線角度ψを取得するフローチャートである。
【図10】(a)は遠方方向FPの視線方向における虹彩KSと瞳孔との位置を示した図である。 (b)は近方方向NPの視線方向における虹彩KSと瞳孔との位置を示した図である。
【図11】ジャイロセンサ部13を用いた視線角度ψのフローチャートを示す。
【図12】ジャイロセンサ部13を用いた視線角度ψの測定概念図である。
【図13】三次元測定装置100で被検者を撮影する図である。
【図14】指標マーカとしてのアライメントシールが貼られた眼鏡の一例である。
【図15】三次元位置測定装置100の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態ではカメラ付き携帯タブレット型端末機(以降、タブレット型端末機と称する)10が用いられる。図1は、一般的なタブレット型端末機10を示した図である。タブレット型端末機10は液晶などの表示部11、カメラ部12、ジャイロセンサ部13、演算部14及び記憶部15が具備されている。カメラ部12は2か所に配置されて、第1カメラ部12aは表示部11の反対側の面に配置され、もう一方の第2カメラ部12bは表示部11の側の面に配置されている。カメラ部12には撮影レンズ121の他に受光素子123(図5、図6を参照)としてCCD又はCMOSが使われている。
【0015】
タブレット型端末機10は携帯可能な大きさであり、電話機能等の複数の機能が搭載されている。また、タブレット型端末機10は複数のアプリケーション・プログラムがインストール可能になっている。アプリケーションはタブレット型端末機10の演算部14で作動し数々の演算処理することができる。なお、第1実施形態で使用するタブレット型端末機10は図1に示されたタブレット型端末機10のみに限定されることなく、アプリケーションがインストール可能なカメラであってもよい。
【0016】
カメラ部12は撮影方向を表示部11の側、または表示部11の反対側の方向に切り替えて撮影可能である。第1カメラ部12aは表示部11の面と反対側の対象物を表示部11で確認しながら撮影することができ、第2カメラ部12bは表示部11の側の対象物(例えば測定者本人)を表示部11で確認しながら撮影することができる。また、カメラ部12は静止画撮影または動画撮影を行うことができる。表示部11は、カメラ部12で撮影した画像を静止画像または動画像で表示することができる。演算部14は撮影した静止画像または動画像のデータを用いて数々の演算処理が可能となっている。記憶部15は、一般的な眼鏡の寸法とか、一般的な被検者の虹彩の直径などが記憶されている。
【0017】
タブレット型端末機10を用いて、瞳孔中心間距離PD、角膜眼鏡間距離KG、及び視線角度ψ等を測定する方法を説明する。
【0018】
図2は、眼鏡20の構成を示した図である。眼鏡20は2枚の眼鏡レンズ21と眼鏡フレーム29とからなる。眼鏡フレーム29は眼鏡レンズ21を支えるリム22、リムから伸びるテンプル23及び耳にかかるモダン24等の部品から構成される。
【0019】
<顔面側面像撮影>
図3は被検者が眼鏡20を装着した顔面側面像FLである。測定者は被検者に眼鏡20をかけてもらう。被検者の顔にフィットするように眼鏡20の掛け具合を調整しておいた上で、測定者はタブレット型端末機10の第1カメラ部12aで顔面側面像FLを撮影する。特に撮影に際しては、眼鏡20とともに被検者の眼球の虹彩KS及び角膜も撮影する。
【0020】
測定者は顔面側面像FLの撮影の際に被検者のテンプル23に指標マーカSCを取り付ける。測定者はテンプル23に指標マーカSCを取り付けた後、被検者に眼鏡20を装着させてもよい。指標マーカSCは、測定部位の近傍で顔面側面像FLの眼鏡20のテンプル23と平行とするよう装着される。タブレット型端末機10の第1カメラ部12aの収差の理由からである。また、指標マーカSCは顔面側面像FLの撮影範囲に入るように配置させる。なお、指標マーカSCはテンプル23と重なるように配置してもよい。
【0021】
指標マーカSCは距離を測定するために取り付けられる。このため、タブレット型端末機10の演算部14による画像処理に好適な高いコントラストを得られればよく、模様のあるシールまたはクリップ等で取り付けられる治具でもよい。例えば、指標マーカSCには20mmの幅で10mm間隔Tで3か所の目盛MKを有している。3か所の目盛MKは眼鏡20フレームが真側面から撮影されたものか、斜めから撮影されたものかを判断するために用いられる。図2では距離10mmごとの目盛MKを用いているが、10mm毎に異なる配色で形成された目盛MKを用いてもよい。演算部14は目盛MK、または指定の配色を認識して指標マーカSCの目盛MKの所在、角度、及び目盛MK間の距離Tを演算する。
【0022】
一般に、眼鏡レンズ21は、視線と眼鏡レンズ21の主軸が一致するとき、その屈折系の収差を最もよく補正するように設計されている。遠方視する場合において、視線は水平線に対して5〜10°下方に傾いている。したがって、遠方用眼鏡(近視用眼鏡)の前傾角θは、常用視線と眼鏡レンズ21の光軸を一致させるためにリム22に5〜10°の傾斜角を与える必要があることが知られている。近方用眼鏡(老視用眼鏡)の前傾角θは、リム22を12〜15°の傾斜角にして手元で下方を見やすいようにする必要があることが知られている。累進多焦点レンズを用いる遠近両用タイプの前傾角θは、リム22を10〜12°の傾斜角にする必要があることが知られている。
【0023】
また、眼鏡レンズ21の角膜眼鏡間距離KGは、12mmから15mmぐらいの距離で設計されている。角膜眼鏡間距離KGが設計された距離よりも離れていると、被検者にとり眼鏡レンズ21の屈折度はプラス側にずれて、近視において弱く、遠視において強く感じることが知られている。角膜眼鏡間距離KGが設計された距離より近いと被検者にとり眼鏡レンズ21の屈折度はマイナス側にずれて、近視において強く、遠視において弱く感じることが知られている。
【0024】
<前傾角θ及び角膜眼鏡間距離KGの測定>
図4はリム22の前傾角θ及び角膜眼鏡間距離KGの測定方法のフローチャートである。測定者は、タブレット型端末機10を起動して、リム22の前傾角θ及び角膜眼鏡間距離KGの測定用アプリケーションを選択する。リム22の前傾角θ及び角膜眼鏡間距離KGの測定は次のようにして測定される。
【0025】
ステップS10において、測定者はタブレット型端末機10のカメラ部12を使って被検者の顔面側面像FLを撮影する。測定者はすでにテンプル23と平行に目盛MKを有する指標マーカSCを取り付けている。撮影範囲は被検者の眼の周辺、リム22、指標マーカSC及びテンプル23が入る範囲を撮影する。また、撮影は静止画撮影または動画撮影を行う。
【0026】
ステップS11において、タブレット型端末機10の演算部14はカメラ部12から指標マーカSC(顔面側面像FL)までの距離を演算する。演算部14は撮影された静止画像または動画像の1フレーム画像を解析して指標マーカSCの3点の目盛MKを検知する。そして、目盛MKの間隔に基づいてカメラ部12から指標マーカSCまでの距離を演算する。図5はカメラ部12から指標マーカSCまでの距離を演算する模式図である。なお、図5は真横から撮影される顔面側面像FLのカメラ部12及び眼鏡20等の位置関係を上部から見た模式図である。
【0027】
図5(a)において、タブレット型端末機10のカメラ部12はその撮影倍率などが既知であり、事前にカメラ部12の撮影倍率は設定値としてアプリケーションに登録されている。目盛MKの間隔Tは既知であり、本実施形態では10mmと規定している。演算部14は撮影された画像により、三角形の相似の関係からカメラ部12から指標マーカSCまでの距離yを演算する。
【0028】
ステップS12において、演算部14は撮影された静止画像または動画像の1フレーム画像を解析して、眼鏡20のリム22の前傾角θを演算する。演算部14は、テンプル23及びリム22を認識し、テンプル23とリム22とで形成する前傾角θを演算する。
【0029】
ステップS13において、演算部14は画像から形状から角膜頂点KPを検出する。図3に示されたように、演算部14は虹彩KS及び角膜形状を認識して、虹彩形状及び角膜形状を画像処理して角膜頂点KPを検出する。
【0030】
ステップS14において、演算部14は角膜頂点KPから水平方向に伸びた位置にあるリム22を検出する。演算部14は角膜頂点KPから水平方向に位置するリム22を検出して、その位置情報を取得する。角膜頂点KPからの水平方向の求め方は2通りある。テンプル23の伸びる方向を水平として考えて水平方向を求める方法、もう一つは指標マーカSCの伸びる方向を水平として考えて水平方向を求める方法である。
【0031】
ステップS15において、演算部14はステップS12の角膜頂点KPと、ステップS13の眼鏡レンズ21(又はリム22)の位置から角膜眼鏡間距離KGを測定する。図5(b)は、角膜眼鏡間距離KGの演算方法を示した模式図である。角膜眼鏡間距離KGはステップS11で求められたカメラ部12から指標マーカSCまでの距離yを用いて演算される。眼鏡20はテンプル23からのリム22の中心距離BBが既知の値として取得されている。演算部14は目盛MKの間隔Tの受光素子123のピクセル数、角膜眼鏡間距離KGの受光素子123のピクセル数、カメラ部12から指標マーカSCまでの距離y、及びリムの中心距離BBに基づいて、角膜眼鏡間距離KGを演算する。
【0032】
タブレット型端末機10は1枚の顔面側面像FLから再現性のある正確な角膜眼鏡間距離KGを演算することができる。なお、角膜眼鏡間距離KGは典型的な測定条件であるリムの中心距離BBが40mm程度、またテンプル23とタブレット型端末機10のカメラ部12との距離が500mm程度である場合に、0.9mmの誤差範囲で測定可能である。
【0033】
図6は斜め後方から撮影された場合に角膜眼鏡間距離KGを測定する測定方法を示した模式図である。図6(a)は、斜め後方から撮影された顔面側面像FL及び目盛MKの位置関係を示した模式図である。斜め後方からカメラ部12で撮影する場合には、図5で示された演算方法に加え、カメラ部12から指標マーカSC(顔面側面像FL)までの距離を斜め後方からの傾斜角度で補正する演算が必要である。特に説明しないが、斜め前方から撮影された場合も同様である。
【0034】
目盛MKは3点形成されているため、目盛MK間の距離Tが2つある。演算部14は顔面側面像FLで2つの目盛MK間の距離Tがカメラ部12の受光素子123のピクセル間距離t1及びピクセル間距離t2として認識される。斜め後方から顔面側面像FLが撮影されると、ピクセル間距離t1とピクセル間距離t2とのピクセル数が異なる。演算部14はピクセル間距離t1とピクセル間距離t2との比から傾斜角度αを演算する。
【0035】
図6(b)は、斜め方向からの角膜眼鏡間距離KGの演算方法を示した模式図である。演算部14は図4に示されたフローチャートを用いて、受光素子123の角膜眼鏡間距離のピクセル数から角膜眼鏡間距離kg2を演算し、図6(a)で示された傾斜角度αから角膜眼鏡間距離kg2を角膜眼鏡間距離KGに補正することができる。
【0036】
なお、演算部14が、角膜頂点KP、リム22又は目盛MKの位置を検出できない場合には、タブレット型端末機10の表示部11のタッチパネルを使って測定者が角膜頂点KP、リム22又は目盛MKを指定して所定の測定結果を演算することも可能である。また、タブレット型端末機10の演算部14は動画撮影されている動画像のフレーム画像に対して角膜頂点KP、または目盛MKの位置を検出した後に物体追跡(トラッキング(tracking))を行って、リアルタイムの測定値を表示することが可能である。上述したリム22の前傾角θ及び角膜眼鏡間距離KGは、被検者の左右両側で測定することが好ましい。
【0037】
<瞳孔中心間距離PDの測定>
タブレット型端末機10を用いた瞳孔中心間距離PDの測定方法を説明する。
【0038】
図7は瞳孔中心間距離PDの測定方法のフローチャートである。測定者はタブレット型端末機10の瞳孔中心間距離PDの測定用アプリケーションを選択する。
【0039】
ステップS20において、測定者は両眼近傍の顔面正面像FAを撮影する。測定者は被検者にタブレット型端末機10のカメラ部12を注視してもらい、顔面正面像FAを撮影する。撮影する際に被検者は眼鏡20を外していてもよいし眼鏡20をかけていてもよい。また、測定者は被検者の左右の眼が同時に含まれるように撮影する。撮影は静止画像または動画像で行うことができる。図8は両眼近傍の顔面正面像FAを示した図である。
【0040】
ステップS21において、演算部14は画像を分析して両眼の虹彩KSを検出する。演算部14は撮影された静止画像または動画像の1フレーム画像を解析して両眼の虹彩KSを検出し、瞳孔中心DCを演算する。
【0041】
虹彩KSの検出は、演算部14が顔面正面像FAより白色の眼球を検知し、その中心部分を虹彩KSとして認識させることが可能である。演算部14は虹彩KSと隣接する白色の眼球より、正確な虹彩KSの辺縁の検出が可能となっている。
【0042】
一方の眼の瞳孔中心DCは、演算部14が検出した虹彩KSの辺縁において、虹彩KSの直径KLであるX軸方向の辺縁と辺縁との最大値を検出することで瞳孔中心DCの位置を演算することが可能である。演算部14は、もう一方の眼の瞳孔中心DCの位置も演算する。
【0043】
人間の虹彩KSの直径の平均サイズが11mmであることから、演算部14が検出した虹彩KSの直径である虹彩ピクセル距離KLを11mmとして換算させる。このような虹彩KSの直径は記憶部15に記憶されている。子供用の虹彩KSの直径の平均サイズを瞳孔中心間距離PDの測定用アプリケーションは備えていてもよい。
【0044】
ステップS22において、瞳孔中心間距離PDを演算する。演算部14は演算された、両方の眼の瞳孔中心DCの位置が演算されると、2つの瞳孔中心DCの距離の受光素子123のピクセル数から瞳孔中心間距離PDを演算する。
【0045】
なお、演算部14はタブレット型端末機10の表示部11に検出した虹彩KSを強調表示し、瞳孔中心間距離PDの測定結果、及び2つの瞳孔中心位置を結ぶ直線を表示させることが可能である。また測定者が動画像で瞳孔中心間距離PDの測定を行った場合においては、演算部14が検出した虹彩KS及び瞳孔中心DCの位置を物体追跡して、瞳孔中心間距離PDの測定結果、及び2つの瞳孔中心位置を結ぶ直線をリアルタイムに連続して表示することが可能である。また、本実施形態では虹彩KSのX軸方向の辺縁と辺縁との最大値を検出することで虹彩KSの直径を演算し、その中心を瞳孔中心DCの位置としていたが、虹彩KSの辺縁で形成される円形状または楕円形状から瞳孔中心DCの位置を演算してもよい。また、第1実施形態では測定者が顔面正面像FAを撮影しているが、タブレット型端末機10の表示側の第2カメラ部12b(図1を参照。)を用いることで、被検者が自分で瞳孔中心間距離PDを測定することも可能である。
【0046】
<視線角度ψの測定>
タブレット型端末機10を用いた視線角度ψ(アイポジション)の測定方法を説明する。視線角度ψはタブレット型端末機10により顔の正面方向より撮影する。測定者は撮影する際に、視線角度ψの測定用アプリケーションを選択し、測定者は被検者の左右の眼が同時に含まれるように撮影する。撮影は静止画像での撮影及び動画像での撮影のどちらでも良い。
【0047】
視線角度ψの測定は近方作業または遠方作業における視線方向を知るために行われる。上述されたように累進多焦点レンズは1枚の眼鏡レンズ21の中に近用、遠用、及びその中間用が混在し、被検者の使用環境に適した配置に調整する必要がある。
測定者は被検者が眼鏡20を必要とする使用状況で、被検者の視線角度ψを取得する。
【0048】
図9は視線角度ψを取得するフローチャートである。
ステップS30において、測定者は遠方及び近方の顔面正面像FAを撮影する。測定者はタブレット型端末機10のカメラ部12を被検者の遠方の視線方向に配置して、被検者に注視してもらい、顔面正面像FAを撮影する(FP)。また、測定者はブレット型端末機10のカメラ部12を被検者の近方の視線方向に配置して、被検者に近方の目標物に視線を動かしてもらい、顔面正面像FAを撮影する(NP)。撮影する際に被検者は眼鏡20を外して撮影することが望ましい。また、測定者は被検者の左右の眼が同時に含まれるように撮影することが望ましい。
【0049】
ステップS31において、演算部14は画像を分析して両眼の虹彩KSを検出する。演算部14は撮影された静止画像または動画像の1フレーム画像を解析して両眼の虹彩KSの検出及び瞳孔中心DCを演算する。演算部14は、両眼の虹彩KSの辺縁を検出し、瞳孔中心DCを演算する。演算部14は瞳孔中心DCを中心とした虹彩KSの形状を演算する。眼球内の虹彩KSは視線方向によりその辺縁形状が異なる。図10(a)は遠方方向FPの視線方向における虹彩KSと瞳孔との位置を示した図である。図10(b)は近方方向NPの視線方向における虹彩KSと瞳孔との位置を示した図である。
【0050】
ステップS32において、演算部14は視線角度ψを演算する。図10(a)に示されるように、遠方方向FPの視線角度ψの場合の虹彩KSは球状の眼球の中心部分にあり、瞳孔中心DCも眼の中心部分にある。この場合のカメラで撮影された顔面正面像FAの虹彩KSは、虹彩KSの水平方向の直径HAと垂直方向の直径VAはほぼ等しく真円である。一方、図10(b)に図示されるように、近方方向NPの視線角度ψの場合の虹彩KSは球状の眼球の下方部分にあり、瞳孔中心DCも眼の下方部分に配置される。この場合のカメラ部12で撮影された顔面正面像FAの虹彩KSは、虹彩KSの垂直方向の直径である縦径VAが水平方向の直径である横径HAより短い横長の楕円になる。演算部14は、遠方を見ているときの虹彩KSの水平方向の直径HAと垂直方向の直径VAとに基づいて第1楕円の離心率を演算し、且つ近方を見ているときの虹彩KSの水平方向の直径HAと垂直方向の直径VAとに基づいて第2楕円の離心率を演算する。そして演算部14は第1楕円の離心率と第2楕円の離心率との楕円比を演算する。そして演算部14は記憶部15に記憶された虹彩KSの楕円比と視線角度ψとのデータベースとから視線角度ψを演算する。
【0051】
なお、虹彩KSは上瞼または下瞼などの障害物により、必ずしも虹彩KSの辺縁の全周が演算部14によって検出できるわけではない。演算部14は瞳孔中心DCを中心とした虹彩KSの辺形形状をアプリケーションに内蔵されたデータベースを参照して、最も適合する円または楕円を演算することができる。
【0052】
演算部14は取得した視線角度ψと第1実施形態で取得した角膜眼鏡間距離KGとから、被検者の遠方方向FPにおける視線と眼鏡レンズ21の面との交点が演算できる。また、被検者の近方方向NPにおける視線とレンズ面との交点も演算できる。これにより、測定者は被検者に最適な眼鏡20のセッティングを行うことが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態では測定者が顔面正面像FAを撮影しているが、タブレット型端末機10の表示側の第2カメラ部12bを用いることで、被検者が自分で視線角度ψを測定することも可能である。
【0054】
<変形例>
視線角度ψを測定する方法として、本変形例はタブレット型端末機10のジャイロセンサ部13(図1を参照。)のジャイロセンサ機能を用いた方法を示す。ジャイロセンサ機能はタブレット型端末機10の角度を検知することが可能である。演算部14はタブレット型端末機10の角度を取得することができるため、視線角度ψの測定用アプリケーションにタブレット型端末機10の角度を用いることが可能である。本変形例も測定者及び被検者が視線角度ψを測定可能である。次に被検者本人が視線角度ψを測定する方法を示す。この場合の被検者は眼鏡20を装着して視線角度ψを測定可能である。
【0055】
図11はジャイロセンサ部13を用いた視線角度ψのフローチャートを示す。図12はジャイロセンサ部13を用いた視線角度ψの測定方法を示した図である。
【0056】
ステップS40において、被検者はタブレット型端末機10を近用眼鏡が必要な状態に配置させる。タブレット型端末機10の表示部11には文字情報などを表示させ、被検者がタブレット端末を保持する。被検者は表示部11の文字情報を見るために近方方向NP(図12を参照)に視線を向ける。被検者は近用眼鏡が必要な状態で表示部11の文字情報を見て、手で保持したタブレット型端末機10の角度を視線と鉛直な角度に調節する。一般に、液晶パネルを用いたタブレット型端末機10の表示部11を観察するには、被検者の視線を液晶パネルに対して鉛直にした状態が最もコントラストが付き、明瞭に観察可能な状態であるため、被検者はタブレット端末機10を鉛直に保持しているかを理解できる。
【0057】
ステップS41において、演算部14は第1角度情報βを取得する。被検者は文字情報の観察に最適な角度である第1角度情報βを演算部14に保存する。第1角度情報βの保存は、被検者がタブレット型端末機10の表示部11のタッチパネルにタッチする等の行為で、保存させる。
【0058】
ステップS42において、被検者はタブレット型端末機10を遠用眼鏡が必要な状態に配置させる。タブレット型端末機10の表示部11には風景画像などを表示させ、被検者が普段見る風景画像の位置にタブレット端末を保持する。被検者は表示部11の風景画像を見るために遠方方向FP(図12を参照)に視線を向ける。被検者は遠用眼鏡が必要な状態で表示部11の風景画像を見て、手で保持したタブレット型端末機10の角度を視線と鉛直な角度に調節する。
【0059】
ステップS43において、演算部14は第2角度情報γを取得する。被検者は、遠方方向FPの視線である第2角度情報γを演算部14に保存する。第2角度情報γの保存は、被検者がタブレット型端末機10の表示部11にタッチする等の行為で、保存させる。
【0060】
ステップS44において、演算部14は視線角度ψを演算する。演算部14は、ステップS41の第1角度情報βとステップS43の第2角度情報γの差から視線角度ψを演算することができる。
【0061】
なお、本変形例は表示部11に文字情報、風景を表示させているが、第2カメラ部12bで被検者を静止画像、又は動画像で撮影しながら第1角度情報β及び第2角度情報γを取得してもよい。また、角度情報、または測定結果をリアルタイムに表示させることも可能である。また、本変形例は、図10で示された虹彩KSの形状で求められる遠方方向FPの視線角度ψと近方方向NPの視線角度ψの情報を用いて、より正確な第1角度情報β及び第2角度情報γを求めることも可能である。
【0062】
(第2実施形態)
第2実施形態は三次元位置測定装置を用いた角膜眼鏡間距離KG、瞳孔中心DC及び瞳孔中心間距離PDの測定方法を示す。図13は三次元位置測定装置100の概念図である。
【0063】
三次元位置測定装置100は被検者の顔面近傍を撮影し、顔面の三次元位置を取得することが可能である。三次元位置測定装置100はカメラ部112、演算部114及び記憶部115で構成されている。また、三次元位置測定装置100はマルチビューステレオ(MVS(Multi View Stereo))撮影装置又はステレオ撮影装置等がある。次にマルチビューステレオ撮影装置及びステレオ撮影装置における三次元位置の測定方法をそれぞれ示す。第2実施形態では三次元位置情報から眼鏡の位置及び瞳孔の位置が測定可能となる。
【0064】
三次元位置測定装置100において、カメラ部112は、被検者に眼鏡を装着しない場合の第1の三次元顔面像と眼鏡を装着した場合の第2の三次元顔面像とを取得し、記憶部115にそれらの画像を記憶する。そして演算部114が、第2の三次元顔面像から第1の三次元顔面像を引くことで、眼鏡の三次元位置を演算する。演算部114は、第2の三次元顔面像と第1の三次元顔面像との差分には眼鏡部分を除いた領域で位置のマッチングを行う。マッチングを行う部位には下記に記載のように眼鏡20に指標等を配置することで正確な三次元測定を行うことが可能となる。
【0065】
三次元位置測定装置100は指標の他に縞パターン光を投影してから三次元画像を取得してもよい。縞パターン光は三次元位置測定装置がテクスチャの少ない顔領域で良好な三次元位置の測定をし易くさせるために投影する。その縞パターン光は、赤外波長光等を用いて被検者が眩しさを感じない波長の光を使用すると好適である。また、三次元位置測定装置100は縞パターン光だけでなくテクスチャ(Texture)パターン光等を用いて三次元画像を取得してもよい。
【0066】
第2の三次元顔面像で用いる眼鏡の2枚の眼鏡レンズの三次元位置を測定するには、光を通さない眼鏡レンズで測定する方法や、眼鏡レンズに指標パターンを描画したアライメントシールを貼り付ける方法等がある。
【0067】
光を通さない眼鏡レンズは、2枚の眼鏡レンズ21に赤外線光を通さない素材の眼鏡レンズを用いる。そして三次元位置測定装置100のカメラ部112は赤外線光で第2の三次元顔面像を取得する。これにより、三次元位置測定装置100の演算部114は被検者の顔形状と眼鏡との違いを演算する。また、光を通さない眼鏡レンズは可視光を通さない金属等の素材で形成した眼鏡レンズ21を用いてもよい。さらに、光を通さない眼鏡レンズ21は光を通す通常の眼鏡レンズ21の面に光を遮光する遮光シール等を貼ってもよい。三次元位置測定装置100のカメラ部112は可視光で第2の三次元顔面像を取得する。これにより、三次元位置測定装置100の演算部114は被検者の顔形状と眼鏡20との違いを演算する。
【0068】
図14は、遮光シールの一例であり、指標マーカとしてのアライメントシール210が貼られた眼鏡の一例である。アライメントシールは、位置情報測定用のパターンが印刷されている。アライメントシールは三次元位置の測定に適したパターンを形成している。アライメントシール210は寸法線が入っていたり特徴ある図形が描かれたりする。そのアライメントシール210が眼鏡レンズ21に貼り付けられる。
【0069】
図14では縦横の方眼寸法線の下地に上向き三角形210A、下向き三角形210B及び星形210Cが所定の位置に描かれている。アライメントシール201は、取り付け取り外しが自由に行うことができる。
【0070】
三次元位置測定装置100は、眼鏡フレーム29のリム22、テンプル23、モダン24等の特徴点から眼鏡の三次元位置を測定することができる。また、三次元位置測定装置100の演算部112は眼鏡フレーム29の三次元位置から眼鏡レンズ20の面の三次元位置も演算することができる。また、眼鏡レンズ面はオブジェクトトラッキングアルゴリズム等、その他の方法を用いて三次元位置を求めることができる。
【0071】
(ステレオ撮影装置)
ステレオ撮影は2台の三次元位置測定装置100のカメラ部112で顔面正面像が撮影される。2台のカメラ部112は水平方向(X軸方向)に平行な2つの位置に配置され、それぞれの位置から被検者の顔面を撮影する。2台のカメラ部112は所定の間隔だけ離れて配置されている。2台のカメラを用いる場合は、被検者を同時に撮影することができるため、被検者のぶれが生じにくい利点がある。1台のカメラ部112で撮影した後一定距離動かして再度撮影してもよい。また、2台のカメラ部112の間隔が離れているほど、三次元位置の測定精度が向上する。1台のカメラ部を用いる場合は、モーションステレオ法(SFM(structure from motion))等の方法を用いてもよい。モーションステレオ法は1台のカメラを移動させながら、移動前後の撮影画像から三次元位置を測定する方法である。
【0072】
図15は、ステレオ撮影による三次元位置の取得方法を示した図である。
ステレオ撮影は、被検者の顔面を第1カメラ部112A及び第2カメラ部112Bの2台のカメラで撮影する。第1カメラ部112Aで撮影した画像は第1顔面像G1として取得でき、第2カメラ部112Bで撮影した画像は第2顔面像G2として取得できる。顔面の測定点P(X,Y,Z)は第1顔面像G1において第1顔面位置G1(X1,Y1)に位置し、第2顔面像G2において第2顔面位置G2(X2,Y2)に位置する。第1カメラ部112A及び第2カメラ部112Bの焦点距離をFとし、第1カメラ部112Aと第2カメラ部112BとのX軸方向の距離をカメラ間距離CDとして設定されている。なお、第1カメラ部112Aの撮影レンズの中心をレンズ中心O1、及び第2カメラ部112Bの撮影レンズの中心をレンズ中心O2とする。
【0073】
ステレオ撮影において、演算部114はレンズ中心O1とレンズ中心O2と測定点P(X,Y,Z)とでなす三角形と、第1顔面位置G1(X1,Y1)と第2顔面位置G2(X2,Y2)と測定点P(X,Y,Z)とでなす三角形とが相似であることから、測定点P(X,Y,Z)を演算することができる。
【0074】
ステレオ撮影において、被検者の顔面の眼の近傍が撮影されていれば良い。第1カメラ部112A及び第2カメラ部112Bは、眼鏡20をかけていない第1の三次元顔面像及び眼鏡をかけた第2の三次元顔面像から眼鏡20の三次元位置及び瞳孔の三次元位置を取得する。そして、演算部114は角膜眼鏡間距離KG、瞳孔中心DC及び瞳孔中心間距離PDを演算する。
【0075】
(マルチビューステレオ撮影)
マルチビューステレオ撮影は、複数枚の撮影画像から三次元位置の測定を行うことができる。マルチビューステレオ撮影は1台のカメラ、または複数台のカメラで行われる。なお、マルチビューステレオ撮影では撮影した画像におけるカメラ位置を取得する必要がある。1台のカメラで複数の画像を撮影する際のカメラ位置は、撮影画像の中に同じ指標マーカを配置することによってカメラ部112の位置を求める。また、複数のカメラ部112の位置はあらかじめカメラ部112の位置が既知の設定値として記憶部115に登録されている。
【0076】
1つのカメラ部112でマルチビューステレオ撮影する際には、使用する複数の撮影画像に配置する同じ指標マーカが複数の撮影画像のマッチングに使用される。このため、図14に示したようなアライメントシール210を使うことが望ましい。その三角形210A、下向き三角形210B及び星形210Cを使用して複数の撮影画像をマッチングすることもできる。マルチビューステレオ撮影においては、指標マーカを用いて第1の三次元顔面像及び第2の三次元顔面像を取得することができる。さらに、縞パターン、テクスチャパターンを被検者の顔に投影して指標マーカの代わりとしてもよい。
【0077】
複数個のカメラ部112でマルチビューステレオ撮影を行う際には、カメラ部112の位置が既知であるため、カメラ部112ごとの撮影画像から被検者の顔面の三次元位置測定を行うことができる。指標マーカは上述したように、平面板縞パターン、テクスチャパターン、または眼鏡レンズ21に貼り付けたアライメントシール210を用いることができる。
【0078】
マルチビューステレオ撮影において、取得した三次元顔面像の画像全体ではなく測定したい顔面領域を画像強調処理(コントラスト強調、ヒストグラム調整、及びエッジ強調等)することにより、良好な顔の三次元形状を取得することができる。また、マルチビューステレオ撮影では、顔面領域以外の領域を画像処理しないマスク領域として設定することで、三次元位置の高精度化及び画像処理を高速化することができる。
【0079】
マルチビューステレオ撮影においては第1の三次元顔面像及び第2の三次元顔面像を演算処理し、角膜眼鏡間距離KG、瞳孔中心DC及び瞳孔中心間距離PDを演算する。なお、瞳孔中心DC及び瞳孔中心間距離PDは眼鏡をかけていない第1の三次元顔面像で演算する。
【0080】
以上に三次元位置測定装置でステレオ撮影及びマルチビューステレオ撮影による角膜眼鏡間距離KG、瞳孔中心DC及び瞳孔中心間距離PDの演算方法を示した。また、第2実施形態で示されたステレオ撮影及びマルチビューステレオ撮影は1台のカメラ部で撮影可能であるため、第1実施形態で示されたタブレット型端末機10においても撮影可能である。例えば、タブレット型端末機10はマルチビューステレオ撮影のためのアプリケーションを用い、複数の場所から顔面を撮影して、指標マーカから撮影位置を演算して、顔面の三次元顔面像を取得可能である。また、タブレット型端末機10は、ステレオ撮影のためのアプリケーションを用いて、水平方向に移動させたカメラ部12の配置間隔を入力または設定することで、三次元顔面像を取得可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 … タブレット型端末機、100 … 三次元位置測定装置
11 … 表示部
12、112 … カメラ部
13 … ジャイロセンサ部
14、114 … 演算部
15 … 記憶部
20 … 眼鏡
21 … 眼鏡レンズ
29 … 眼鏡フレーム(22 … リム、23 … テンプル、24 … モダン)
210 … アライメントシール
DC … 瞳孔中心
KG … 角膜眼鏡間距離
KP … 角膜頂点
KS … 虹彩
MK … 目盛
PD … 瞳孔中心間距離
SC … 指標マーカ
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の眼の位置、角度、及び被検者が装着した眼鏡に対する眼位置を測定する眼鏡用測定装置及び三次元測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ玉型(未加工の眼鏡レンズ)の単焦点レンズを用いて近視用眼鏡、または遠視用眼鏡を作成する場合には、瞳孔中心間距離、角膜眼鏡間距離、及び視線角度(アイポジション)等を測定する必要がある。さらに、1枚の眼鏡レンズに近視と遠視を混在させた累進多焦点レンズ、いわゆるプログレッシブレンズを用いる際には、瞳孔中心間距離、角膜眼鏡間距離、及び視線角度などの情報が特に重要となる。すなわち、累進多焦点レンズは被検者の使用環境に応じて遠用及び近用の視線角度を正確に測定することが必要とされている。
【0003】
瞳孔中心間距離及び角膜眼鏡間距離の測定には、測定者が被検者の眼の付近に定規をあてて目視測定を行う方法、または装置を用いて被検者の正面の顔画像または側面の顔画像を取得した後、瞳孔中心間距離及び角膜眼鏡間距離を測定する方法を行っている。特許文献1においては、専用の眼位置測定装置を用いて瞳孔中心間距離、角膜眼鏡間距離、及び視線角度等を測定する方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、測定者による目視による瞳孔中心間距離及び角膜眼鏡間距離の測定は誤差が生じやすい。また、専用の眼位置測定装置を用いる場合は、専用の付属機器を眼鏡フレームに装着する必要がある点や、撮影した画像を解析するための装置を用意する必要あり、設備投資が高くなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−216049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みて、被検者に負荷をかけることなく瞳孔中心間距離、角膜眼鏡間距離、及び視線角度の測定を行う眼鏡用測定装置及び三次元測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点の眼鏡用測定装置は、指標マークが眼鏡フレームに取り付けられた眼鏡をかけた被検者を撮影する撮影部と、撮影部で撮影された被検者の眼球の頂点を求めるとともに、指標マークに基づいて眼鏡の眼鏡レンズと被検者の眼球の頂点との角膜眼鏡間距離を演算する演算部と、を備える。
【0008】
第2の観点の眼鏡用測定装置は、被検者を正面から撮影する撮影部と、虹彩の平均径を記憶する記憶部と、撮影部で撮影された被検者の眼球の虹彩の最大径を求め記憶部に記憶された平均径と求められた虹彩の最大径とに基づいて被検者の両眼の瞳孔の距離である瞳孔中心間距離を演算する演算部と、を備える。
【0009】
第3の観点の眼鏡用測定装置は、遠方を見る被検者を正面から第1撮影し且つ遠方より近い近方を見る被検者を正面から第2撮影する撮影部と、第1撮影及び第2撮影で撮影された被検者の眼球の虹彩の水平方向の第1径及び垂直方向の第2径を求め、第1撮影の際の第1径及び第2径と第2撮影の際の第1径及び第2径とに基づいて、被検者が遠方を見るときと近方を見るときとの視線角度を演算する演算部と、を備える。
【0010】
第4の観点の三次元測定装置は、被検者の眼球の頂点と眼鏡レンズとの角膜眼鏡間距離、又は被検者の両眼の瞳孔の距離である瞳孔中心間距離を測定する。そして三次元測定装置は、光を透さない眼鏡レンズを有する眼鏡を被検者がかけた状態で被検者を撮影する第1撮影と、眼鏡をかけない状態で被検者を撮影する第2撮影とを行う撮影部と、第1撮影と第2撮影との画像の違いに基づいての角膜眼鏡間距離又は瞳孔中心間距離を演算する演算部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の眼鏡用測定装置及び三次元測定装置によれば、瞳孔中心間距離、角膜眼鏡間距離及び視線角度等の測定を取得することができ、適切な眼鏡調整が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】タブレット型端末機10を示した図である。
【図2】眼鏡20の構成を示した図である。
【図3】被検者が眼鏡20を装着した顔面側面像FLである。
【図4】リム22の前傾角θ及び角膜眼鏡間距離KGの測定方法のフローチャートである。
【図5】顔面側面像FL、目盛MK及びテンプル23の位置関係を示した模式図である。
【図6】斜め後方から撮影された場合に角膜眼鏡間距離KGを測定する測定方法を示した模式図である。
【図7】瞳孔中心間距離PDの測定方法のフローチャートである。
【図8】両目近傍の顔面正面像FAを示した図である。
【図9】視線角度ψを取得するフローチャートである。
【図10】(a)は遠方方向FPの視線方向における虹彩KSと瞳孔との位置を示した図である。 (b)は近方方向NPの視線方向における虹彩KSと瞳孔との位置を示した図である。
【図11】ジャイロセンサ部13を用いた視線角度ψのフローチャートを示す。
【図12】ジャイロセンサ部13を用いた視線角度ψの測定概念図である。
【図13】三次元測定装置100で被検者を撮影する図である。
【図14】指標マーカとしてのアライメントシールが貼られた眼鏡の一例である。
【図15】三次元位置測定装置100の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態ではカメラ付き携帯タブレット型端末機(以降、タブレット型端末機と称する)10が用いられる。図1は、一般的なタブレット型端末機10を示した図である。タブレット型端末機10は液晶などの表示部11、カメラ部12、ジャイロセンサ部13、演算部14及び記憶部15が具備されている。カメラ部12は2か所に配置されて、第1カメラ部12aは表示部11の反対側の面に配置され、もう一方の第2カメラ部12bは表示部11の側の面に配置されている。カメラ部12には撮影レンズ121の他に受光素子123(図5、図6を参照)としてCCD又はCMOSが使われている。
【0015】
タブレット型端末機10は携帯可能な大きさであり、電話機能等の複数の機能が搭載されている。また、タブレット型端末機10は複数のアプリケーション・プログラムがインストール可能になっている。アプリケーションはタブレット型端末機10の演算部14で作動し数々の演算処理することができる。なお、第1実施形態で使用するタブレット型端末機10は図1に示されたタブレット型端末機10のみに限定されることなく、アプリケーションがインストール可能なカメラであってもよい。
【0016】
カメラ部12は撮影方向を表示部11の側、または表示部11の反対側の方向に切り替えて撮影可能である。第1カメラ部12aは表示部11の面と反対側の対象物を表示部11で確認しながら撮影することができ、第2カメラ部12bは表示部11の側の対象物(例えば測定者本人)を表示部11で確認しながら撮影することができる。また、カメラ部12は静止画撮影または動画撮影を行うことができる。表示部11は、カメラ部12で撮影した画像を静止画像または動画像で表示することができる。演算部14は撮影した静止画像または動画像のデータを用いて数々の演算処理が可能となっている。記憶部15は、一般的な眼鏡の寸法とか、一般的な被検者の虹彩の直径などが記憶されている。
【0017】
タブレット型端末機10を用いて、瞳孔中心間距離PD、角膜眼鏡間距離KG、及び視線角度ψ等を測定する方法を説明する。
【0018】
図2は、眼鏡20の構成を示した図である。眼鏡20は2枚の眼鏡レンズ21と眼鏡フレーム29とからなる。眼鏡フレーム29は眼鏡レンズ21を支えるリム22、リムから伸びるテンプル23及び耳にかかるモダン24等の部品から構成される。
【0019】
<顔面側面像撮影>
図3は被検者が眼鏡20を装着した顔面側面像FLである。測定者は被検者に眼鏡20をかけてもらう。被検者の顔にフィットするように眼鏡20の掛け具合を調整しておいた上で、測定者はタブレット型端末機10の第1カメラ部12aで顔面側面像FLを撮影する。特に撮影に際しては、眼鏡20とともに被検者の眼球の虹彩KS及び角膜も撮影する。
【0020】
測定者は顔面側面像FLの撮影の際に被検者のテンプル23に指標マーカSCを取り付ける。測定者はテンプル23に指標マーカSCを取り付けた後、被検者に眼鏡20を装着させてもよい。指標マーカSCは、測定部位の近傍で顔面側面像FLの眼鏡20のテンプル23と平行とするよう装着される。タブレット型端末機10の第1カメラ部12aの収差の理由からである。また、指標マーカSCは顔面側面像FLの撮影範囲に入るように配置させる。なお、指標マーカSCはテンプル23と重なるように配置してもよい。
【0021】
指標マーカSCは距離を測定するために取り付けられる。このため、タブレット型端末機10の演算部14による画像処理に好適な高いコントラストを得られればよく、模様のあるシールまたはクリップ等で取り付けられる治具でもよい。例えば、指標マーカSCには20mmの幅で10mm間隔Tで3か所の目盛MKを有している。3か所の目盛MKは眼鏡20フレームが真側面から撮影されたものか、斜めから撮影されたものかを判断するために用いられる。図2では距離10mmごとの目盛MKを用いているが、10mm毎に異なる配色で形成された目盛MKを用いてもよい。演算部14は目盛MK、または指定の配色を認識して指標マーカSCの目盛MKの所在、角度、及び目盛MK間の距離Tを演算する。
【0022】
一般に、眼鏡レンズ21は、視線と眼鏡レンズ21の主軸が一致するとき、その屈折系の収差を最もよく補正するように設計されている。遠方視する場合において、視線は水平線に対して5〜10°下方に傾いている。したがって、遠方用眼鏡(近視用眼鏡)の前傾角θは、常用視線と眼鏡レンズ21の光軸を一致させるためにリム22に5〜10°の傾斜角を与える必要があることが知られている。近方用眼鏡(老視用眼鏡)の前傾角θは、リム22を12〜15°の傾斜角にして手元で下方を見やすいようにする必要があることが知られている。累進多焦点レンズを用いる遠近両用タイプの前傾角θは、リム22を10〜12°の傾斜角にする必要があることが知られている。
【0023】
また、眼鏡レンズ21の角膜眼鏡間距離KGは、12mmから15mmぐらいの距離で設計されている。角膜眼鏡間距離KGが設計された距離よりも離れていると、被検者にとり眼鏡レンズ21の屈折度はプラス側にずれて、近視において弱く、遠視において強く感じることが知られている。角膜眼鏡間距離KGが設計された距離より近いと被検者にとり眼鏡レンズ21の屈折度はマイナス側にずれて、近視において強く、遠視において弱く感じることが知られている。
【0024】
<前傾角θ及び角膜眼鏡間距離KGの測定>
図4はリム22の前傾角θ及び角膜眼鏡間距離KGの測定方法のフローチャートである。測定者は、タブレット型端末機10を起動して、リム22の前傾角θ及び角膜眼鏡間距離KGの測定用アプリケーションを選択する。リム22の前傾角θ及び角膜眼鏡間距離KGの測定は次のようにして測定される。
【0025】
ステップS10において、測定者はタブレット型端末機10のカメラ部12を使って被検者の顔面側面像FLを撮影する。測定者はすでにテンプル23と平行に目盛MKを有する指標マーカSCを取り付けている。撮影範囲は被検者の眼の周辺、リム22、指標マーカSC及びテンプル23が入る範囲を撮影する。また、撮影は静止画撮影または動画撮影を行う。
【0026】
ステップS11において、タブレット型端末機10の演算部14はカメラ部12から指標マーカSC(顔面側面像FL)までの距離を演算する。演算部14は撮影された静止画像または動画像の1フレーム画像を解析して指標マーカSCの3点の目盛MKを検知する。そして、目盛MKの間隔に基づいてカメラ部12から指標マーカSCまでの距離を演算する。図5はカメラ部12から指標マーカSCまでの距離を演算する模式図である。なお、図5は真横から撮影される顔面側面像FLのカメラ部12及び眼鏡20等の位置関係を上部から見た模式図である。
【0027】
図5(a)において、タブレット型端末機10のカメラ部12はその撮影倍率などが既知であり、事前にカメラ部12の撮影倍率は設定値としてアプリケーションに登録されている。目盛MKの間隔Tは既知であり、本実施形態では10mmと規定している。演算部14は撮影された画像により、三角形の相似の関係からカメラ部12から指標マーカSCまでの距離yを演算する。
【0028】
ステップS12において、演算部14は撮影された静止画像または動画像の1フレーム画像を解析して、眼鏡20のリム22の前傾角θを演算する。演算部14は、テンプル23及びリム22を認識し、テンプル23とリム22とで形成する前傾角θを演算する。
【0029】
ステップS13において、演算部14は画像から形状から角膜頂点KPを検出する。図3に示されたように、演算部14は虹彩KS及び角膜形状を認識して、虹彩形状及び角膜形状を画像処理して角膜頂点KPを検出する。
【0030】
ステップS14において、演算部14は角膜頂点KPから水平方向に伸びた位置にあるリム22を検出する。演算部14は角膜頂点KPから水平方向に位置するリム22を検出して、その位置情報を取得する。角膜頂点KPからの水平方向の求め方は2通りある。テンプル23の伸びる方向を水平として考えて水平方向を求める方法、もう一つは指標マーカSCの伸びる方向を水平として考えて水平方向を求める方法である。
【0031】
ステップS15において、演算部14はステップS12の角膜頂点KPと、ステップS13の眼鏡レンズ21(又はリム22)の位置から角膜眼鏡間距離KGを測定する。図5(b)は、角膜眼鏡間距離KGの演算方法を示した模式図である。角膜眼鏡間距離KGはステップS11で求められたカメラ部12から指標マーカSCまでの距離yを用いて演算される。眼鏡20はテンプル23からのリム22の中心距離BBが既知の値として取得されている。演算部14は目盛MKの間隔Tの受光素子123のピクセル数、角膜眼鏡間距離KGの受光素子123のピクセル数、カメラ部12から指標マーカSCまでの距離y、及びリムの中心距離BBに基づいて、角膜眼鏡間距離KGを演算する。
【0032】
タブレット型端末機10は1枚の顔面側面像FLから再現性のある正確な角膜眼鏡間距離KGを演算することができる。なお、角膜眼鏡間距離KGは典型的な測定条件であるリムの中心距離BBが40mm程度、またテンプル23とタブレット型端末機10のカメラ部12との距離が500mm程度である場合に、0.9mmの誤差範囲で測定可能である。
【0033】
図6は斜め後方から撮影された場合に角膜眼鏡間距離KGを測定する測定方法を示した模式図である。図6(a)は、斜め後方から撮影された顔面側面像FL及び目盛MKの位置関係を示した模式図である。斜め後方からカメラ部12で撮影する場合には、図5で示された演算方法に加え、カメラ部12から指標マーカSC(顔面側面像FL)までの距離を斜め後方からの傾斜角度で補正する演算が必要である。特に説明しないが、斜め前方から撮影された場合も同様である。
【0034】
目盛MKは3点形成されているため、目盛MK間の距離Tが2つある。演算部14は顔面側面像FLで2つの目盛MK間の距離Tがカメラ部12の受光素子123のピクセル間距離t1及びピクセル間距離t2として認識される。斜め後方から顔面側面像FLが撮影されると、ピクセル間距離t1とピクセル間距離t2とのピクセル数が異なる。演算部14はピクセル間距離t1とピクセル間距離t2との比から傾斜角度αを演算する。
【0035】
図6(b)は、斜め方向からの角膜眼鏡間距離KGの演算方法を示した模式図である。演算部14は図4に示されたフローチャートを用いて、受光素子123の角膜眼鏡間距離のピクセル数から角膜眼鏡間距離kg2を演算し、図6(a)で示された傾斜角度αから角膜眼鏡間距離kg2を角膜眼鏡間距離KGに補正することができる。
【0036】
なお、演算部14が、角膜頂点KP、リム22又は目盛MKの位置を検出できない場合には、タブレット型端末機10の表示部11のタッチパネルを使って測定者が角膜頂点KP、リム22又は目盛MKを指定して所定の測定結果を演算することも可能である。また、タブレット型端末機10の演算部14は動画撮影されている動画像のフレーム画像に対して角膜頂点KP、または目盛MKの位置を検出した後に物体追跡(トラッキング(tracking))を行って、リアルタイムの測定値を表示することが可能である。上述したリム22の前傾角θ及び角膜眼鏡間距離KGは、被検者の左右両側で測定することが好ましい。
【0037】
<瞳孔中心間距離PDの測定>
タブレット型端末機10を用いた瞳孔中心間距離PDの測定方法を説明する。
【0038】
図7は瞳孔中心間距離PDの測定方法のフローチャートである。測定者はタブレット型端末機10の瞳孔中心間距離PDの測定用アプリケーションを選択する。
【0039】
ステップS20において、測定者は両眼近傍の顔面正面像FAを撮影する。測定者は被検者にタブレット型端末機10のカメラ部12を注視してもらい、顔面正面像FAを撮影する。撮影する際に被検者は眼鏡20を外していてもよいし眼鏡20をかけていてもよい。また、測定者は被検者の左右の眼が同時に含まれるように撮影する。撮影は静止画像または動画像で行うことができる。図8は両眼近傍の顔面正面像FAを示した図である。
【0040】
ステップS21において、演算部14は画像を分析して両眼の虹彩KSを検出する。演算部14は撮影された静止画像または動画像の1フレーム画像を解析して両眼の虹彩KSを検出し、瞳孔中心DCを演算する。
【0041】
虹彩KSの検出は、演算部14が顔面正面像FAより白色の眼球を検知し、その中心部分を虹彩KSとして認識させることが可能である。演算部14は虹彩KSと隣接する白色の眼球より、正確な虹彩KSの辺縁の検出が可能となっている。
【0042】
一方の眼の瞳孔中心DCは、演算部14が検出した虹彩KSの辺縁において、虹彩KSの直径KLであるX軸方向の辺縁と辺縁との最大値を検出することで瞳孔中心DCの位置を演算することが可能である。演算部14は、もう一方の眼の瞳孔中心DCの位置も演算する。
【0043】
人間の虹彩KSの直径の平均サイズが11mmであることから、演算部14が検出した虹彩KSの直径である虹彩ピクセル距離KLを11mmとして換算させる。このような虹彩KSの直径は記憶部15に記憶されている。子供用の虹彩KSの直径の平均サイズを瞳孔中心間距離PDの測定用アプリケーションは備えていてもよい。
【0044】
ステップS22において、瞳孔中心間距離PDを演算する。演算部14は演算された、両方の眼の瞳孔中心DCの位置が演算されると、2つの瞳孔中心DCの距離の受光素子123のピクセル数から瞳孔中心間距離PDを演算する。
【0045】
なお、演算部14はタブレット型端末機10の表示部11に検出した虹彩KSを強調表示し、瞳孔中心間距離PDの測定結果、及び2つの瞳孔中心位置を結ぶ直線を表示させることが可能である。また測定者が動画像で瞳孔中心間距離PDの測定を行った場合においては、演算部14が検出した虹彩KS及び瞳孔中心DCの位置を物体追跡して、瞳孔中心間距離PDの測定結果、及び2つの瞳孔中心位置を結ぶ直線をリアルタイムに連続して表示することが可能である。また、本実施形態では虹彩KSのX軸方向の辺縁と辺縁との最大値を検出することで虹彩KSの直径を演算し、その中心を瞳孔中心DCの位置としていたが、虹彩KSの辺縁で形成される円形状または楕円形状から瞳孔中心DCの位置を演算してもよい。また、第1実施形態では測定者が顔面正面像FAを撮影しているが、タブレット型端末機10の表示側の第2カメラ部12b(図1を参照。)を用いることで、被検者が自分で瞳孔中心間距離PDを測定することも可能である。
【0046】
<視線角度ψの測定>
タブレット型端末機10を用いた視線角度ψ(アイポジション)の測定方法を説明する。視線角度ψはタブレット型端末機10により顔の正面方向より撮影する。測定者は撮影する際に、視線角度ψの測定用アプリケーションを選択し、測定者は被検者の左右の眼が同時に含まれるように撮影する。撮影は静止画像での撮影及び動画像での撮影のどちらでも良い。
【0047】
視線角度ψの測定は近方作業または遠方作業における視線方向を知るために行われる。上述されたように累進多焦点レンズは1枚の眼鏡レンズ21の中に近用、遠用、及びその中間用が混在し、被検者の使用環境に適した配置に調整する必要がある。
測定者は被検者が眼鏡20を必要とする使用状況で、被検者の視線角度ψを取得する。
【0048】
図9は視線角度ψを取得するフローチャートである。
ステップS30において、測定者は遠方及び近方の顔面正面像FAを撮影する。測定者はタブレット型端末機10のカメラ部12を被検者の遠方の視線方向に配置して、被検者に注視してもらい、顔面正面像FAを撮影する(FP)。また、測定者はブレット型端末機10のカメラ部12を被検者の近方の視線方向に配置して、被検者に近方の目標物に視線を動かしてもらい、顔面正面像FAを撮影する(NP)。撮影する際に被検者は眼鏡20を外して撮影することが望ましい。また、測定者は被検者の左右の眼が同時に含まれるように撮影することが望ましい。
【0049】
ステップS31において、演算部14は画像を分析して両眼の虹彩KSを検出する。演算部14は撮影された静止画像または動画像の1フレーム画像を解析して両眼の虹彩KSの検出及び瞳孔中心DCを演算する。演算部14は、両眼の虹彩KSの辺縁を検出し、瞳孔中心DCを演算する。演算部14は瞳孔中心DCを中心とした虹彩KSの形状を演算する。眼球内の虹彩KSは視線方向によりその辺縁形状が異なる。図10(a)は遠方方向FPの視線方向における虹彩KSと瞳孔との位置を示した図である。図10(b)は近方方向NPの視線方向における虹彩KSと瞳孔との位置を示した図である。
【0050】
ステップS32において、演算部14は視線角度ψを演算する。図10(a)に示されるように、遠方方向FPの視線角度ψの場合の虹彩KSは球状の眼球の中心部分にあり、瞳孔中心DCも眼の中心部分にある。この場合のカメラで撮影された顔面正面像FAの虹彩KSは、虹彩KSの水平方向の直径HAと垂直方向の直径VAはほぼ等しく真円である。一方、図10(b)に図示されるように、近方方向NPの視線角度ψの場合の虹彩KSは球状の眼球の下方部分にあり、瞳孔中心DCも眼の下方部分に配置される。この場合のカメラ部12で撮影された顔面正面像FAの虹彩KSは、虹彩KSの垂直方向の直径である縦径VAが水平方向の直径である横径HAより短い横長の楕円になる。演算部14は、遠方を見ているときの虹彩KSの水平方向の直径HAと垂直方向の直径VAとに基づいて第1楕円の離心率を演算し、且つ近方を見ているときの虹彩KSの水平方向の直径HAと垂直方向の直径VAとに基づいて第2楕円の離心率を演算する。そして演算部14は第1楕円の離心率と第2楕円の離心率との楕円比を演算する。そして演算部14は記憶部15に記憶された虹彩KSの楕円比と視線角度ψとのデータベースとから視線角度ψを演算する。
【0051】
なお、虹彩KSは上瞼または下瞼などの障害物により、必ずしも虹彩KSの辺縁の全周が演算部14によって検出できるわけではない。演算部14は瞳孔中心DCを中心とした虹彩KSの辺形形状をアプリケーションに内蔵されたデータベースを参照して、最も適合する円または楕円を演算することができる。
【0052】
演算部14は取得した視線角度ψと第1実施形態で取得した角膜眼鏡間距離KGとから、被検者の遠方方向FPにおける視線と眼鏡レンズ21の面との交点が演算できる。また、被検者の近方方向NPにおける視線とレンズ面との交点も演算できる。これにより、測定者は被検者に最適な眼鏡20のセッティングを行うことが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態では測定者が顔面正面像FAを撮影しているが、タブレット型端末機10の表示側の第2カメラ部12bを用いることで、被検者が自分で視線角度ψを測定することも可能である。
【0054】
<変形例>
視線角度ψを測定する方法として、本変形例はタブレット型端末機10のジャイロセンサ部13(図1を参照。)のジャイロセンサ機能を用いた方法を示す。ジャイロセンサ機能はタブレット型端末機10の角度を検知することが可能である。演算部14はタブレット型端末機10の角度を取得することができるため、視線角度ψの測定用アプリケーションにタブレット型端末機10の角度を用いることが可能である。本変形例も測定者及び被検者が視線角度ψを測定可能である。次に被検者本人が視線角度ψを測定する方法を示す。この場合の被検者は眼鏡20を装着して視線角度ψを測定可能である。
【0055】
図11はジャイロセンサ部13を用いた視線角度ψのフローチャートを示す。図12はジャイロセンサ部13を用いた視線角度ψの測定方法を示した図である。
【0056】
ステップS40において、被検者はタブレット型端末機10を近用眼鏡が必要な状態に配置させる。タブレット型端末機10の表示部11には文字情報などを表示させ、被検者がタブレット端末を保持する。被検者は表示部11の文字情報を見るために近方方向NP(図12を参照)に視線を向ける。被検者は近用眼鏡が必要な状態で表示部11の文字情報を見て、手で保持したタブレット型端末機10の角度を視線と鉛直な角度に調節する。一般に、液晶パネルを用いたタブレット型端末機10の表示部11を観察するには、被検者の視線を液晶パネルに対して鉛直にした状態が最もコントラストが付き、明瞭に観察可能な状態であるため、被検者はタブレット端末機10を鉛直に保持しているかを理解できる。
【0057】
ステップS41において、演算部14は第1角度情報βを取得する。被検者は文字情報の観察に最適な角度である第1角度情報βを演算部14に保存する。第1角度情報βの保存は、被検者がタブレット型端末機10の表示部11のタッチパネルにタッチする等の行為で、保存させる。
【0058】
ステップS42において、被検者はタブレット型端末機10を遠用眼鏡が必要な状態に配置させる。タブレット型端末機10の表示部11には風景画像などを表示させ、被検者が普段見る風景画像の位置にタブレット端末を保持する。被検者は表示部11の風景画像を見るために遠方方向FP(図12を参照)に視線を向ける。被検者は遠用眼鏡が必要な状態で表示部11の風景画像を見て、手で保持したタブレット型端末機10の角度を視線と鉛直な角度に調節する。
【0059】
ステップS43において、演算部14は第2角度情報γを取得する。被検者は、遠方方向FPの視線である第2角度情報γを演算部14に保存する。第2角度情報γの保存は、被検者がタブレット型端末機10の表示部11にタッチする等の行為で、保存させる。
【0060】
ステップS44において、演算部14は視線角度ψを演算する。演算部14は、ステップS41の第1角度情報βとステップS43の第2角度情報γの差から視線角度ψを演算することができる。
【0061】
なお、本変形例は表示部11に文字情報、風景を表示させているが、第2カメラ部12bで被検者を静止画像、又は動画像で撮影しながら第1角度情報β及び第2角度情報γを取得してもよい。また、角度情報、または測定結果をリアルタイムに表示させることも可能である。また、本変形例は、図10で示された虹彩KSの形状で求められる遠方方向FPの視線角度ψと近方方向NPの視線角度ψの情報を用いて、より正確な第1角度情報β及び第2角度情報γを求めることも可能である。
【0062】
(第2実施形態)
第2実施形態は三次元位置測定装置を用いた角膜眼鏡間距離KG、瞳孔中心DC及び瞳孔中心間距離PDの測定方法を示す。図13は三次元位置測定装置100の概念図である。
【0063】
三次元位置測定装置100は被検者の顔面近傍を撮影し、顔面の三次元位置を取得することが可能である。三次元位置測定装置100はカメラ部112、演算部114及び記憶部115で構成されている。また、三次元位置測定装置100はマルチビューステレオ(MVS(Multi View Stereo))撮影装置又はステレオ撮影装置等がある。次にマルチビューステレオ撮影装置及びステレオ撮影装置における三次元位置の測定方法をそれぞれ示す。第2実施形態では三次元位置情報から眼鏡の位置及び瞳孔の位置が測定可能となる。
【0064】
三次元位置測定装置100において、カメラ部112は、被検者に眼鏡を装着しない場合の第1の三次元顔面像と眼鏡を装着した場合の第2の三次元顔面像とを取得し、記憶部115にそれらの画像を記憶する。そして演算部114が、第2の三次元顔面像から第1の三次元顔面像を引くことで、眼鏡の三次元位置を演算する。演算部114は、第2の三次元顔面像と第1の三次元顔面像との差分には眼鏡部分を除いた領域で位置のマッチングを行う。マッチングを行う部位には下記に記載のように眼鏡20に指標等を配置することで正確な三次元測定を行うことが可能となる。
【0065】
三次元位置測定装置100は指標の他に縞パターン光を投影してから三次元画像を取得してもよい。縞パターン光は三次元位置測定装置がテクスチャの少ない顔領域で良好な三次元位置の測定をし易くさせるために投影する。その縞パターン光は、赤外波長光等を用いて被検者が眩しさを感じない波長の光を使用すると好適である。また、三次元位置測定装置100は縞パターン光だけでなくテクスチャ(Texture)パターン光等を用いて三次元画像を取得してもよい。
【0066】
第2の三次元顔面像で用いる眼鏡の2枚の眼鏡レンズの三次元位置を測定するには、光を通さない眼鏡レンズで測定する方法や、眼鏡レンズに指標パターンを描画したアライメントシールを貼り付ける方法等がある。
【0067】
光を通さない眼鏡レンズは、2枚の眼鏡レンズ21に赤外線光を通さない素材の眼鏡レンズを用いる。そして三次元位置測定装置100のカメラ部112は赤外線光で第2の三次元顔面像を取得する。これにより、三次元位置測定装置100の演算部114は被検者の顔形状と眼鏡との違いを演算する。また、光を通さない眼鏡レンズは可視光を通さない金属等の素材で形成した眼鏡レンズ21を用いてもよい。さらに、光を通さない眼鏡レンズ21は光を通す通常の眼鏡レンズ21の面に光を遮光する遮光シール等を貼ってもよい。三次元位置測定装置100のカメラ部112は可視光で第2の三次元顔面像を取得する。これにより、三次元位置測定装置100の演算部114は被検者の顔形状と眼鏡20との違いを演算する。
【0068】
図14は、遮光シールの一例であり、指標マーカとしてのアライメントシール210が貼られた眼鏡の一例である。アライメントシールは、位置情報測定用のパターンが印刷されている。アライメントシールは三次元位置の測定に適したパターンを形成している。アライメントシール210は寸法線が入っていたり特徴ある図形が描かれたりする。そのアライメントシール210が眼鏡レンズ21に貼り付けられる。
【0069】
図14では縦横の方眼寸法線の下地に上向き三角形210A、下向き三角形210B及び星形210Cが所定の位置に描かれている。アライメントシール201は、取り付け取り外しが自由に行うことができる。
【0070】
三次元位置測定装置100は、眼鏡フレーム29のリム22、テンプル23、モダン24等の特徴点から眼鏡の三次元位置を測定することができる。また、三次元位置測定装置100の演算部112は眼鏡フレーム29の三次元位置から眼鏡レンズ20の面の三次元位置も演算することができる。また、眼鏡レンズ面はオブジェクトトラッキングアルゴリズム等、その他の方法を用いて三次元位置を求めることができる。
【0071】
(ステレオ撮影装置)
ステレオ撮影は2台の三次元位置測定装置100のカメラ部112で顔面正面像が撮影される。2台のカメラ部112は水平方向(X軸方向)に平行な2つの位置に配置され、それぞれの位置から被検者の顔面を撮影する。2台のカメラ部112は所定の間隔だけ離れて配置されている。2台のカメラを用いる場合は、被検者を同時に撮影することができるため、被検者のぶれが生じにくい利点がある。1台のカメラ部112で撮影した後一定距離動かして再度撮影してもよい。また、2台のカメラ部112の間隔が離れているほど、三次元位置の測定精度が向上する。1台のカメラ部を用いる場合は、モーションステレオ法(SFM(structure from motion))等の方法を用いてもよい。モーションステレオ法は1台のカメラを移動させながら、移動前後の撮影画像から三次元位置を測定する方法である。
【0072】
図15は、ステレオ撮影による三次元位置の取得方法を示した図である。
ステレオ撮影は、被検者の顔面を第1カメラ部112A及び第2カメラ部112Bの2台のカメラで撮影する。第1カメラ部112Aで撮影した画像は第1顔面像G1として取得でき、第2カメラ部112Bで撮影した画像は第2顔面像G2として取得できる。顔面の測定点P(X,Y,Z)は第1顔面像G1において第1顔面位置G1(X1,Y1)に位置し、第2顔面像G2において第2顔面位置G2(X2,Y2)に位置する。第1カメラ部112A及び第2カメラ部112Bの焦点距離をFとし、第1カメラ部112Aと第2カメラ部112BとのX軸方向の距離をカメラ間距離CDとして設定されている。なお、第1カメラ部112Aの撮影レンズの中心をレンズ中心O1、及び第2カメラ部112Bの撮影レンズの中心をレンズ中心O2とする。
【0073】
ステレオ撮影において、演算部114はレンズ中心O1とレンズ中心O2と測定点P(X,Y,Z)とでなす三角形と、第1顔面位置G1(X1,Y1)と第2顔面位置G2(X2,Y2)と測定点P(X,Y,Z)とでなす三角形とが相似であることから、測定点P(X,Y,Z)を演算することができる。
【0074】
ステレオ撮影において、被検者の顔面の眼の近傍が撮影されていれば良い。第1カメラ部112A及び第2カメラ部112Bは、眼鏡20をかけていない第1の三次元顔面像及び眼鏡をかけた第2の三次元顔面像から眼鏡20の三次元位置及び瞳孔の三次元位置を取得する。そして、演算部114は角膜眼鏡間距離KG、瞳孔中心DC及び瞳孔中心間距離PDを演算する。
【0075】
(マルチビューステレオ撮影)
マルチビューステレオ撮影は、複数枚の撮影画像から三次元位置の測定を行うことができる。マルチビューステレオ撮影は1台のカメラ、または複数台のカメラで行われる。なお、マルチビューステレオ撮影では撮影した画像におけるカメラ位置を取得する必要がある。1台のカメラで複数の画像を撮影する際のカメラ位置は、撮影画像の中に同じ指標マーカを配置することによってカメラ部112の位置を求める。また、複数のカメラ部112の位置はあらかじめカメラ部112の位置が既知の設定値として記憶部115に登録されている。
【0076】
1つのカメラ部112でマルチビューステレオ撮影する際には、使用する複数の撮影画像に配置する同じ指標マーカが複数の撮影画像のマッチングに使用される。このため、図14に示したようなアライメントシール210を使うことが望ましい。その三角形210A、下向き三角形210B及び星形210Cを使用して複数の撮影画像をマッチングすることもできる。マルチビューステレオ撮影においては、指標マーカを用いて第1の三次元顔面像及び第2の三次元顔面像を取得することができる。さらに、縞パターン、テクスチャパターンを被検者の顔に投影して指標マーカの代わりとしてもよい。
【0077】
複数個のカメラ部112でマルチビューステレオ撮影を行う際には、カメラ部112の位置が既知であるため、カメラ部112ごとの撮影画像から被検者の顔面の三次元位置測定を行うことができる。指標マーカは上述したように、平面板縞パターン、テクスチャパターン、または眼鏡レンズ21に貼り付けたアライメントシール210を用いることができる。
【0078】
マルチビューステレオ撮影において、取得した三次元顔面像の画像全体ではなく測定したい顔面領域を画像強調処理(コントラスト強調、ヒストグラム調整、及びエッジ強調等)することにより、良好な顔の三次元形状を取得することができる。また、マルチビューステレオ撮影では、顔面領域以外の領域を画像処理しないマスク領域として設定することで、三次元位置の高精度化及び画像処理を高速化することができる。
【0079】
マルチビューステレオ撮影においては第1の三次元顔面像及び第2の三次元顔面像を演算処理し、角膜眼鏡間距離KG、瞳孔中心DC及び瞳孔中心間距離PDを演算する。なお、瞳孔中心DC及び瞳孔中心間距離PDは眼鏡をかけていない第1の三次元顔面像で演算する。
【0080】
以上に三次元位置測定装置でステレオ撮影及びマルチビューステレオ撮影による角膜眼鏡間距離KG、瞳孔中心DC及び瞳孔中心間距離PDの演算方法を示した。また、第2実施形態で示されたステレオ撮影及びマルチビューステレオ撮影は1台のカメラ部で撮影可能であるため、第1実施形態で示されたタブレット型端末機10においても撮影可能である。例えば、タブレット型端末機10はマルチビューステレオ撮影のためのアプリケーションを用い、複数の場所から顔面を撮影して、指標マーカから撮影位置を演算して、顔面の三次元顔面像を取得可能である。また、タブレット型端末機10は、ステレオ撮影のためのアプリケーションを用いて、水平方向に移動させたカメラ部12の配置間隔を入力または設定することで、三次元顔面像を取得可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 … タブレット型端末機、100 … 三次元位置測定装置
11 … 表示部
12、112 … カメラ部
13 … ジャイロセンサ部
14、114 … 演算部
15 … 記憶部
20 … 眼鏡
21 … 眼鏡レンズ
29 … 眼鏡フレーム(22 … リム、23 … テンプル、24 … モダン)
210 … アライメントシール
DC … 瞳孔中心
KG … 角膜眼鏡間距離
KP … 角膜頂点
KS … 虹彩
MK … 目盛
PD … 瞳孔中心間距離
SC … 指標マーカ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指標マークが眼鏡フレームに取り付けられた眼鏡をかけた被検者を撮影する撮影部と、
前記撮影部で撮影された前記被検者の眼球の頂点を求めるとともに、前記指標マークに基づいて前記眼鏡の眼鏡レンズと前記被検者の前記眼球の頂点との角膜眼鏡間距離を演算する演算部と、
を備えた眼鏡用測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眼鏡用測定装置において、
前記眼鏡フレームはテンプル及びリムを含み、
前記指標マークは所定寸法の目盛を含み、前記指標マークは前記テンプルに取り付けられ、
前記演算部は前記目盛及び前記テンプル又は前記指標マークの方向に基づいて前記リムと前記眼球の頂点との角膜眼鏡間距離を演算する眼鏡用測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の眼鏡用測定装置において、
前記撮影部は前記被検者の真横から外れた斜め前方又は斜め後方から前記被検者を撮影し、
前記所定寸法の目盛は第1距離と第2距離とを示し、
前記演算部は、前記第1距離と前記第2距離とに基づいて前記撮影部と前記眼鏡フレームとの傾きを補正し、前記角膜眼鏡間距離を演算する眼鏡用測定装置。
【請求項4】
被検者を正面から撮影する撮影部と、
前記虹彩の平均径を記憶する記憶部と、
前記撮影部で撮影された前記被検者の眼球の虹彩の最大径を求め、前記記憶部に記憶された平均径と求められた前記虹彩の最大径とに基づいて、前記被検者の両眼の瞳孔の距離である瞳孔中心間距離を演算する演算部と、
を備えた眼鏡用測定装置。
【請求項5】
遠方を見る被検者を正面から第1撮影し、且つ前記遠方より近い近方を見る被検者を正面から第2撮影する撮影部と、
前記第1撮影及び前記第2撮影で撮影された前記被検者の眼球の虹彩の水平方向の第1径及び垂直方向の第2径を求め、前記第1撮影の際の前記第1径及び前記第2径と前記第2撮影の際の前記第1径及び前記第2径とに基づいて、前記被検者が前記遠方を見るときと前記近方を見るときとの視線角度を演算する演算部と、
を備えた眼鏡用測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の眼鏡用測定装置において、
前記演算部は、前記第1撮影の際の前記第1径及び前記第2径に基づいて前記虹彩の第1楕円の離心率を求め、前記第2撮影の際の前記第1径及び前記第2径に基づいて前記虹彩の第2楕円の離心率を求め、前記第1楕円の離心率と前記第2楕円の離心率との比である楕円比に基づいて、前記演算する眼鏡用測定装置。
【請求項7】
被検者の眼球の頂点と眼鏡レンズとの角膜眼鏡間距離、又は前記被検者の両眼の瞳孔の距離である瞳孔中心間距離を測定する三次元測定装置において、
光を透さない眼鏡レンズを有する眼鏡を前記被検者がかけた状態で前記被検者を撮影する第1撮影と、前記眼鏡をかけない状態で前記被検者を撮影する第2撮影とを行う撮影部と、
前記第1撮影と前記第2撮影との画像の違いに基づいての前記角膜眼鏡間距離又は前記瞳孔中心間距離を演算する演算部と、
を備える三次元測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の三次元測定装置において、
前記光を透さない眼鏡レンズは、赤外線光を透さない眼鏡レンズであり、
前記撮影部は赤外線光で前記第2撮影を行う三次元測定装置。
【請求項9】
請求項7に記載の三次元測定装置において、
前記光を透さない眼鏡レンズは、遮光部が形成されるとともに指標マークが形成された眼鏡レンズであり、
前記撮影部は前記指標マークを撮影する三次元測定装置。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の三次元測定装置において、
複数の方向から前記被検者を撮影する複数の前記撮影部を備える三次元測定装置。
【請求項1】
指標マークが眼鏡フレームに取り付けられた眼鏡をかけた被検者を撮影する撮影部と、
前記撮影部で撮影された前記被検者の眼球の頂点を求めるとともに、前記指標マークに基づいて前記眼鏡の眼鏡レンズと前記被検者の前記眼球の頂点との角膜眼鏡間距離を演算する演算部と、
を備えた眼鏡用測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眼鏡用測定装置において、
前記眼鏡フレームはテンプル及びリムを含み、
前記指標マークは所定寸法の目盛を含み、前記指標マークは前記テンプルに取り付けられ、
前記演算部は前記目盛及び前記テンプル又は前記指標マークの方向に基づいて前記リムと前記眼球の頂点との角膜眼鏡間距離を演算する眼鏡用測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の眼鏡用測定装置において、
前記撮影部は前記被検者の真横から外れた斜め前方又は斜め後方から前記被検者を撮影し、
前記所定寸法の目盛は第1距離と第2距離とを示し、
前記演算部は、前記第1距離と前記第2距離とに基づいて前記撮影部と前記眼鏡フレームとの傾きを補正し、前記角膜眼鏡間距離を演算する眼鏡用測定装置。
【請求項4】
被検者を正面から撮影する撮影部と、
前記虹彩の平均径を記憶する記憶部と、
前記撮影部で撮影された前記被検者の眼球の虹彩の最大径を求め、前記記憶部に記憶された平均径と求められた前記虹彩の最大径とに基づいて、前記被検者の両眼の瞳孔の距離である瞳孔中心間距離を演算する演算部と、
を備えた眼鏡用測定装置。
【請求項5】
遠方を見る被検者を正面から第1撮影し、且つ前記遠方より近い近方を見る被検者を正面から第2撮影する撮影部と、
前記第1撮影及び前記第2撮影で撮影された前記被検者の眼球の虹彩の水平方向の第1径及び垂直方向の第2径を求め、前記第1撮影の際の前記第1径及び前記第2径と前記第2撮影の際の前記第1径及び前記第2径とに基づいて、前記被検者が前記遠方を見るときと前記近方を見るときとの視線角度を演算する演算部と、
を備えた眼鏡用測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の眼鏡用測定装置において、
前記演算部は、前記第1撮影の際の前記第1径及び前記第2径に基づいて前記虹彩の第1楕円の離心率を求め、前記第2撮影の際の前記第1径及び前記第2径に基づいて前記虹彩の第2楕円の離心率を求め、前記第1楕円の離心率と前記第2楕円の離心率との比である楕円比に基づいて、前記演算する眼鏡用測定装置。
【請求項7】
被検者の眼球の頂点と眼鏡レンズとの角膜眼鏡間距離、又は前記被検者の両眼の瞳孔の距離である瞳孔中心間距離を測定する三次元測定装置において、
光を透さない眼鏡レンズを有する眼鏡を前記被検者がかけた状態で前記被検者を撮影する第1撮影と、前記眼鏡をかけない状態で前記被検者を撮影する第2撮影とを行う撮影部と、
前記第1撮影と前記第2撮影との画像の違いに基づいての前記角膜眼鏡間距離又は前記瞳孔中心間距離を演算する演算部と、
を備える三次元測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の三次元測定装置において、
前記光を透さない眼鏡レンズは、赤外線光を透さない眼鏡レンズであり、
前記撮影部は赤外線光で前記第2撮影を行う三次元測定装置。
【請求項9】
請求項7に記載の三次元測定装置において、
前記光を透さない眼鏡レンズは、遮光部が形成されるとともに指標マークが形成された眼鏡レンズであり、
前記撮影部は前記指標マークを撮影する三次元測定装置。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の三次元測定装置において、
複数の方向から前記被検者を撮影する複数の前記撮影部を備える三次元測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
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【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−239566(P2012−239566A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111031(P2011−111031)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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