説明

着色システム

【課題】鮮やかな色合いと強い金属光沢とを呈する着色システムを提供する。
【解決手段】複数のカラー顔料と、複数の被覆基材(たとえばアルミニウムフレーク)とからなり、前記被覆基材のそれぞれは、表面と、前記表面を囲むポリマー被膜とを有する基材を含み、前記ポリマー被膜は、前記基材の前記表面に結合したポリマー鎖を含む被覆基材とを含み、前記カラー顔料は前記被覆基材に付着していることを特徴とする着色システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、該して、被覆基材、および前記被覆基材を含むシステムに関し、特に前記被覆基材を含む着色システム(colored system)の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
メタリック効果をもたらすために、アルミニウム顔料が被覆、インク、プラスチックおよび化粧品において幅広く使用されている。カラーメタリック効果を得るために、アルミニウム顔料はカラー顔料と共に使用されるのが一般的である。
【0003】
被覆用途におけるカラーメタリック効果は、多層法(multilayer approach)によって得ることができる。この手法では、メタリック顔料を含有する塗料/インクの層を先ず基材に適用し、次いでカラー顔料の被膜を適用する。鮮やかなカラーメタリック効果を得ることができるものの、付加的な製造工程に対処するには追加の設備が必要になるため、多層法は製造コストが高くなってしまうことが多い。また、余分な適用処置によって、製品回転時間(product turn-over time)が制限されてしまう。さらに、製造中および製造後の濡れや密着といった層同士の相互作用に対処するために考慮を払わなければならない。
【0004】
多層法にまつわるそのような製造上の複雑さや高コストを克服するために、単層のシステムでカラーメタリック効果を得るための幅広い取り組みが行われている。この手法では、適用前に単一樹脂溶液システム(one resin solution system)中でカラー顔料をメタリック顔料と混ぜ合わせる。しかしながら、この単層法(one layer approach)には様々な課題があり、かつこの手法を用いて所望の効果を得るのは非常に難しい。例えば、アルミニウム顔料には優れた隠蔽力があるため、適度な色の強度を得るには、高濃度のカラー顔料をアルミニウム顔料と併せて使用しなければならない。アルミニウム顔料の密度は、一般的なカラー顔料、樹脂および溶媒の密度よりもはるかに高いため、アルミニウム顔料は、塗料/インク内の残りの成分から素早く分離する傾向がある。さらに、カラー顔料では様々な形状や数ナノメートル〜数百ナノメートルの範囲の大きさが採用されているのに対して、アルミニウム顔料はほとんどの場合が板状であり、大きさの範囲は数マイクロメートルから数百マイクロメートルである。このような物理的なパラメータの違いから、塗料/インクシステムにおける着色剤およびアルミニウム顔料の挙動が大きく異なるため、適用工程時に均一な被覆の形成が妨げられる。
【0005】
単層システムにおけるカラー顔料のアルミニウム基材からの分離を軽減するために、カラー顔料が結合したアルミニウム顔料の開発に対する取り組みが行われている。例えば、米国特許第5037475号(特許文献1)では、少なくとも2個のカルボン酸基を含有する熱重合可能なカルボン酸分子を利用して、アルミニウム基材への有機顔料の吸着(absorption)が促進されている。不飽和カルボン酸と架橋剤とが重合されると、ポリマー被膜がカラーアルミニウム顔料上に形成される。米国特許第5558705号(特許文献1)では、先ず、カラー顔料がアルミニウム基材の表面に物理的に吸着(absorb)する。次に、カップリング試薬を使用してアルミニウム基材の表面を変性し、溶液重合によって後に形成されるポリマー網目構造のために結合部位を提供する。米国特許第5912283号では、特定の表面処理剤を使用してカラー顔料を被覆して、カラー顔料とアルミニウム基材との密着を促進させている。次にポリマー封止を適用して、アルミニウム基材へのカラー顔料の結合を安定させる。これらの事例では、架橋剤の存在下で重合を溶液中で開始させてポリマー網目構造を形成し、アルミニウム基材の表面上にカラー顔料を安定させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5037475号明細書
【特許文献2】米国特許第5558705号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの手法を用いて製造したカラーアルミニウム顔料には、大量の凝集が生じるか、またはアルミニウム基材からカラー顔料が大量に分離するかの欠点がある。その結果、市場の関心が非常に大きいにも関わらず、シルバーライン社のシルバートーン(Silbertone)(登録商標)や昭和のフレンドカラー(商標)等の市販のカラーアルミニウム顔料はわずかな市場価値を得るにとどまっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[発明の概要]
溶媒と、被覆基材と、前記被覆基材に付着するカラー顔料とを含む着色システム、および前記着色システムの製造方法を記載する。開示の方法は、カラー顔料を効果的に被覆基材に結合させることができる。それにより得られる着色システムでは、混合時、貯蔵時、溶媒交換時および適用時におけるカラー顔料と被覆顔料との分離を最小限にとどめることができる。カラーメタリック塗料/インクは、カラー顔料の分散液(dispersion)を被覆基材の分散液と混合することにより調製が可能である。それにより得られるカラー被覆基材は、鮮やかな色合いと強い金属光沢とを呈することができる。このような効果は、これまでに開示されてきた方法を用いて得るのが非常に難しかった効果である。
【0009】
1つの実施形態では、開示の着色システムは、複数の被覆基材と複数のカラー顔料とを含み得る。被覆基材は、アルミナ、マイカおよびガラス等の材料から形成されていてもよい。1つの例では、用いられる被覆基材のそれぞれが、ポリマーまたはポリマー網目構造で被覆された金属基材を含み得る。その場合、ポリマーまたはポリマー網目構造は、カラー顔料に強く付着するために官能基を含んでいてもよく、用いられるカラー顔料は有機または無機である。この例では、カラー顔料は、ブリーディング試験で規定されるように被覆基材に付着可能である。ブリーディング試験には、着色システムを1つ以上の溶媒に分散させること、および沈降分離により基材を沈殿させることが含まれ得る。この場合、被覆基材にカラー顔料が付着していることは、上澄み液には着色が全くないか、あっても少なく、沈降した基材は深く、均一な色合いをしていることを意味する。カラー顔料の流出の度合が定量化される場合には、カラー顔料の吸光度が最大となる波長で上澄み液の吸光度を分析することができる。溶媒中のカラー顔料の濃度は、利用される特定のカラー顔料の吸光度対濃度の検量線から得られる線形回帰方程式を用いて計算することができる。顔料と溶媒の重量が一定に維持される場合、溶媒中のカラー顔料の濃度により、顔料の流出量の相対的尺度がもたらされ得る。
【0010】
1つの具体例では、ポリマー被膜の機能(functionality)には、イオン電荷を提供することが含まれ得る。そのイオン電荷は、それとは反対のイオン電荷を有するカラー顔料と強く結合することができる。1つの実施様式では、被覆基材の被膜が正に帯電し、カラー顔料が負に帯電し得る。1つの具体例では、被覆基材とカラー顔料との間で電荷と電荷との相互作用を高める4級アミンから被膜の正の電荷が生じ得る。
【0011】
開示の方法の1つの実施形態では、先ず、基材がポリマーで封止され得る。1つの例では、ポリマーは、基材の表面に強く結合した開始剤からの重合により合成されてもよい。その結果、得られるポリマー鎖は、基材の表面に強く結合した1つの鎖端を有する。この例では、得られるポリマー鎖/網目構造を基材の表面に強力に結合させることができ、通常の反応条件や処理条件下でポリマー被膜が構造の完全性を維持する。
【0012】
1つの具体例では、ポリマー被膜の組成を重合中または重合後に容易に調整することができ、ポリマー表面とカラー顔料との間の相互作用を最適化することができる。ポリマー被膜は可撓性を有することもでき、被膜表面を再配列させて被膜表面とカラー顔料との相互作用を最大化させることができる。表面上に固定された小さな分子(small molecules)とは異なり、ポリマーは自身を再編成(rearranged)することができる。もしポリマー鎖の可撓性が十分であれば、カラー顔料の表面に追従し、被膜表面とカラー顔料との接触面積を高めることができる。表面からの重合を用いることで、架橋剤を加えることなく厚く安定したポリマー被膜を基材の表面に形成することができる。その結果、長いポリマー鎖には、それらとカラー顔料との接触を最大化させる可撓性を有し、カラー顔料と被覆基材の表面との密着を大いに高めることができる。
【0013】
他の実施形態では、開示の着色システムを塗料またはインクとして直接使用することができる。従来より使用されている塗料およびインクは、複数の成分から構成され得る。この場合、条件にあった特性を得るために塗料/インクの調合に多大な努力を払わなければならない。1つの例では、使用される基材はアルミニウムの板状物またはフレークであり得る。被覆されたアルミニウムの板状物とそれに付着したカラー顔料とを溶媒に分散させて、基材に直接適用することができる。この例では、被覆された板状物の配向が改善されるため、最終的な被膜は向上した金属光沢を呈することができる。
【0014】
さらに他の実施形態では、開示の着色システムを、塗料、インクまたはプラスチックといった他のシステムに加えることができる。この実施形態では、得られるシステムは、従来より使用されている塗料やインク等の従来のシステムの特性と同様のまたはそれよりも優れた特性を有し得る。
【0015】
開示の方法は、着色システムの適用工程時におけるカラー顔料と被覆基材との分離を解消することができる。開示のシステムでは、メタリック基材上に堅牢なポリマー封止を設計して、カラー顔料がメタリック基材に強く吸着するのを促進したり、過酷な処理条件下や攻撃的な溶媒の存在下でカラー顔料がメタリック基材から分離するのを防止したりすることができる。開示のシステムは安定であり、かつ調合上の自由度が大きい。貯蔵/運送用のスペース、危険性、およびコストを低減するために、それらを濃縮するかまたは溶媒交換することができる。適用の直前に、消費者の側でさらなる溶媒または他の成分を加えることができる。この手法では、カラー顔料およびメタリック基材の双方を含む顔料と他の塗料/インクの成分との間の副反応を解消できるため、開示のシステムの貯蔵寿命を伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、a)ポリ(メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル)封止Silberline Sparkle Silver(登録商標)Premium695を含有する塗料、およびb)元のSilberline Sparkle Silver(登録商標)Premium695を含有する塗料の沈降試験の結果を示す。(a)および(b)の双方において、分散液の残りの成分は、N−メチルピロリドンおよびフタロシアニンピグメントグリーン7である。
【図2】図2は、ポリ(メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル)封止Silberline Sparkle Silver(登録商標)Premium695およびフタロシアニンピグメントグリーン7を含有する塗料から分離したカラー顔料被覆アルミニウムフレークの走査電子顕微鏡画像である。
【図3】図3は、昭和のフレンドカラーのインク、およびポリ(メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル)封止Silberline Sparkle Silver(登録商標)Premium695およびフタロシアニンピグメントグリーン7の無樹脂(resin-less)インクからのドローダウンの美麗性の比較を示す。無樹脂インクからのドローダウンは強い金属光沢を呈している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
被覆基材と、前記被覆基材に付着可能なカラー顔料とを含み得る着色システム、および前記着色システムの製造方法を記載する。本明細書では「基材」という用語は、物理的(physiological)媒体に不溶性であり、インク組成物、塗料組成物およびプラスチック組成物での使用に適した、任意の形態の、透明、メタリック、白色または有色の鉱物粒子または有機粒子を意味し得る。「カラー顔料」という用語は、色を付与する無機粒子または有機粒子を意味し得る。開示の方法は、カラー顔料を効果的に被覆基材に付着させることができる。それによって得られる着色システムは、被覆適用時におけるそれらの分離を防ぐことができる。
【0018】
1つの実施形態では、開示の着色システムは、カラー顔料と、ポリマー被覆基材とを含み得る。他の実施形態では、開示の着色システムは溶媒をさらに含み得る。
【0019】
本着色システムで利用されるカラー顔料粒子は、無機または有機であってもよい(ピグメントハンドブック、ワイリーインターサイエンス、第2版、1988年1月)。いくつかの例では、カラー顔料は、フタロシアニンピグメントグリーン7、フタロシアニンピグメントブルー15:4、キナクリドンピグメントレッド122、ペリレンピグメントレッド179、イソインドリノンピグメントイエロー110、イソインドリノンピグメントイエロー139、キナクリドンピグメントバイオレット19、キナクリドンピグメントレッド122等であり得るが、それらに限定されるものではない。
【0020】
カラー顔料の大きさは、1nm〜200nmであり得る。1つの例では、カラー顔料の大きさは、1nm〜100nmの範囲であり得る。
【0021】
開示のシステムで用いられるポリマー被覆基材は、無機基材であり得る。無機基材は、アルミニウム、マイカおよびガラスであり得るが、それらに限定されるものではない。基材の形状は、球状または円板状であり得るが、それらに限定されるものではない。1つの実施形態では、基材の大きさは、100nm〜1000μmの範囲である。他の例では、基材の大きさは、500nm〜100μmの範囲であり得る。さらに他の例では、基材の大きさは、1μm〜50μmの範囲であり得る。
【0022】
1つの例では、基材が無機層で封止され得る。無機層としては、酸化アルミニウム、酸化チタンおよび酸化鉄等の金属酸化物、シリカならびにガラスを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
【0023】
開示の着色システムの1つの例では、被覆基材は、カラー顔料に対する親和性が向上し得る。1つの具体例では、被覆基材の表面が正に帯電し、カラー顔料が負に帯電し得る。1つの実施様式では、被覆基材とカラー顔料との間で電荷と電荷との相互作用を向上させる4級アミンを被覆基材の表面が含み得る。この場合では、3級アミン基のポリマーまたはポリマー網目構造が反応性の4級化剤で4級化されるポリマーまたはポリマー網目構造を被覆基材が含み得る。3級アミン基を含む好適なポリマーまたはポリマー網目構造の例としては、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、2−(ジエチルアミノ)エチルスチレン、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アクリル酸3−ジメチルアミノネオペンチル、メタクリル酸3−ジメチルアミノネオペンチルおよびメタクリル酸2−ジイソプロピルアミノエチルのホモポリマーまたはコポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本明細書では「4級化」という用語は、低分子反応物(small molecular reactant)の4級化剤が3級アミン基に化学結合して4級アミンを生成することを意味し得る。本明細書では「4級アミン」という用語は、窒素原子に4個の基が結合しているために正の電荷を持つカチオン性アミン塩を意味し得る。4級化剤は、ハロゲン化アルキルおよびハロゲン化アリールアルキルであり得るが、それらに限定されるものではない。
【0025】
他の例では、ポリマー被膜には可撓性があり、被膜表面を再編成させてカラー顔料と被膜表面との相互作用を最大化させることができる。本明細書では「可撓性」という用語は、ポリマー被膜のポリマー鎖がカラー顔料の表面に追従することができ、それによって被膜表面とカラー顔料との接触面積を増加させることができるように、ポリマー鎖がそれらの構成を容易に再配列できることを意味し得る。1つの具体例では、ポリマー被膜の乾燥時の膜厚を、被膜表面の厚さを測定する標準的な非破壊法を用いて測定した場合、それは5nmよりも大きい。他の具体例では、ポリマー鎖は、被膜に堅牢性と安定性とをもたらすために、基材の表面に強く結合し得る。本明細書では「堅牢性と安定性」という用語は、循環試験、度重なる溶媒洗浄および一般的な反応条件下での被覆基材の残存力を意味し得る。さらに他の具体例では、ポリマー鎖が基材の表面に共有結合していてもよい。これらの具体例では、ポリマー鎖は、それらとカラー顔料との接触を最大化させ、カラー顔料と被覆基材の表面との密着を大きく向上させる可撓性を有し得る。
【0026】
開示の着色システムで利用される溶媒は、被覆基材またはカラー顔料を分散させるのに適した材料または混合物であれば、どのようなものであってもよい。いくつかの例では、溶媒または溶媒の混合物は、水、アルコール、炭化水素、エーテル、エステル、ケトン、グリコールエーテル、ピロリドンおよびスルホキシドであり得るが、それらに限定されるものではない。
【0027】
最終生成物中の被覆基材の量は、10重量%〜70重量%であり得る。最終生成物中のカラー顔料の量は、2重量%〜25重量%の範囲であり得る。最終生成物中の溶媒の量は、25重量%〜85重量%の範囲であり得る。
【0028】
開示の方法の1つの実施形態では、先ず、基材がポリマー層で被覆され得る。1つの例では、利用する基材はアルミニウムフレークであり得る。アルミニウムフレークの表面に固定された開始剤部分からの重合により、アルミニウムフレーク上のポリマー被膜につながり得る。この例では、利用される材料がアルミニウムであり得るが、開始剤部分を他の材料の表面に固定する方法が存在する限り、適切な状況下では本明細書に記載の概念を他の材料にも適用可能なことが分かる。
【0029】
1つの実施様式では、少なくとも1つの表面活性基および少なくとも1つの開始剤部分を含有するカップリング試薬でアルミニウムフレークの表面が変性され得る。1つの具体例では、開始剤は、X-R-Yという化学構造を有し、ここで、Xは表面活性基を表し、Yは開始剤部分を表し、Rはスペーサーを表す。表面活性基とフレークの表面に存在する官能基とが反応することで、開始剤部分を基材に固定することができる。
【0030】
あるいは、開始剤は、複数の工程を有する方法を通じてアルミニウムフレークの表面に固定することができる。1つの例では、複数の工程を有する方法は、二工程法であり得る。この場合では、表面活性分子であるX-R-Aが、先ずフレークの表面に適用され得る。官能基Xが、その分子を表面に固定化する一方で、官能基Aによってフレークの表面上でさらなる化学反応が可能になり、開始剤部分Yがフレークの表面に存在することになる。
【0031】
1つの実施様式では、利用する基材は、アルミニウムフレークであり得る。使用するアルミニウムフレークは、従来からある、ボールミルで粉砕されたフレーク、真空蒸着フレーク(VFM)、シリカ封止フレーク、および金属酸化物封止フレークであり得るが、これらに限定されるものではない。空気中に曝露されると、アルミニウムの表面は、酸素と反応して酸化アルミニウムと水酸化アルミニウムとを形成し、かつカップリング反応に必要なヒドロキシル基を表面にもたらし得る。
【0032】
表面活性基Xは、モノ−、ジ−およびトリ−アルコキシシラン(alkoxylsilane)、モノ−、ジ−およびトリ−クロロシラン、カルボン酸、有機リン化合物、ならびに金属表面、金属酸化物表面、またはシリカ表面に強い親和性を有する他の化学基であり得るが、これらに限定されるものではない。トリアルコキシシランおよびトリクロロシランの場合には、オルガノシラン分子の間での分子間縮合によって、このような分子の高密度で堅牢な被膜が形成されることになり得る。
【0033】
基材の表面の開始剤の密度は、開始剤を有する分子を他の表面活性分子で希釈することにより調整することができる。希釈分子はまた、表面にさらなる官能基をもたらしてもよい。
【0034】
同じ原理を適用することによって、主に二酸化ケイ素と表面上の多少のシラノール基とからできているガラスフレークを、類似のカップリング試薬で容易に官能化することができる。基材表面と基材に固定化された開始材部分とに強い親和性を有する官能基が存在する限り、アルミニウムやシリカ以外の基材に開示の方法をさらに適用してもよい。
【0035】
他の基材も、シリカまたは金属酸化物の封止を介して開始剤により官能化されてもよい。例えば、酸化チタンで封止されたマイカであるイリオジン100を、上記の手法を用いてポリマーで被覆することができる。
【0036】
開始剤部分Yは、遊離ラジカル重合、制御ラジカル重合、および/または他の連鎖重合を開始する任意の官能基であり得る。開始剤部分Yは、活性ハロゲン原子、アルコキシアミン、ジチオエステル、ジチオカルバメート、トリチオカルボネート、キサンテート有機過酸化物、およびアゾ化合物であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0037】
1つの例では、開始剤を基材の表面に固定した後、基材をろ過により精製して未結合のカップリング試薬をすべて除去してから、重合反応に進む。溶液中の遊離カップリング試薬の存在が溶液粘度を著しく高めないか、または続いて行われる重合における他の作業条件に悪影響を及ぼさない他の例では、反応溶液は、さらなる精製をしないで直接使用され得る。
【0038】
開始剤が固定化された基材は、次に、モノマー溶液中に分散され得る。モノマー溶液は、1種類のモノマーまたは異なる種類のモノマーの混合物を含み得る。使用することができるモノマーの例としては、スチレン、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、ビニルピリジン、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデンおよびイソプレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。モノマー溶液への開始剤が固定化された基材の分散に続いて、表面からの重合が、基材に結合したポリマー鎖の形成をもたらし得る。開始剤分子は寸法が小さいので、高い面密度で基材の表面に固定化することができる。したがって、この手法によれば、高いグラフト密度を有するポリマー被膜の合成が可能になる。
【0039】
基材の表面からの重合は、溶液重合と同じメカニズムに従うので、溶液重合において重合することができるモノマーを、開示の方法に直接適用することができる。
【0040】
原子移動ラジカル重合、ニトロキシド媒介重合、および可逆的付加開裂連鎖移動重合などのリビングラジカル重合または制御ラジカル重合によれば、制御された分子量、多分散性、および様々な種類のモノマーからの構造を有するポリマーの合成が可能になる。リビング重合を使用することによって、開示の方法によれば、被膜の厚さを数ナノメートルから数百ナノメートルまで制御することが可能になり、さらに、基材上のポリマー被膜の構造を制御することが可能になる。粒子または基材表面上の膜厚および均一性を直接観察するために、透過電子顕微鏡法を用いることができる。1つの例では、被覆基材のそれぞれは、実質的に均一な膜厚を有し得る。この場合、膜厚の平均および標準偏差は、10個を超える異なる被覆基材からの、20,000倍〜100,000倍の倍率の透過電子顕微鏡画像から計算することができる。目盛が100nmである場合、基材上の膜厚の標準偏差は、平均膜厚の15%未満であり得る。
【0041】
開示の方法において使用する制御ラジカル重合のリビング的な性質は、基材上の多層被膜の合成も可能にすることができる。1つの例では、第2のモノマーまたは第2のモノマー群を、所定の反応時間後に反応フラスコに加えることができる。他の例では、1回目の重合が終わった後に、基材を反応混合物から分離し、精製し、その後、第2のモノマーまたは第2のモノマー群と共に2回目の重合に供することができる。いずれの場合も、第1の層の組成とは異なる組成を有する第2の層を形成することができる。後者の手法では、本方法により、完全に異なる組成を有する第2の層の合成が可能になる。上記の工程は、任意の回数、任意の異なる組み合わせで繰り返すことができ、多層被膜が提供される。
【0042】
開示の方法で使用することができるモノマーの例としては、アクリロニトリル、スチレン、ジビニルベンゼン、4−メチルスチレン、3−メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−ビニルアニソール、4−フルオロスチレン、2−フルオロスチレン、3−フルオロスチレン、4−クロロメチルスチレン、4−(tert−ブチル)スチレン、3−クロロスチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−アミル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−デシル、アクリル酸イソデシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ウンデシル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸1−ヘキサデシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸ペンタブロモフェニル、メタクリル酸ペンタブロモフェニル、アクリル酸ペンタフルオロフェニル、メタクリル酸ペンタフルオロフェニル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル、アクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル、メタクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル、アクリル酸1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル、メタクリル酸1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル、メタクリル酸1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル、アクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル、メタクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル、メタクリル酸1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル、アクリル酸1H,1H−ヘプタフルオロブチル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘキサフルオロ−イソプロピル、アクリル酸ペンタフルオロフェニル、メタクリル酸ペンタフルオロフェニル、メタクリル酸パーフルオロシクロヘキシルメチル、メタクリルアミド、アクリルアミド、4−ビニルピリジン、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、4−ビニルアニリン、3−ビニルアニリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ポリ(エチレングリコール)、アクリル酸ポリ(エチレングリコール)、メタクリル酸ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、メタクリル酸ポリ(エチレングリコール)エチルエーテル、アクリル酸ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル、ジメタクリル酸1,10−デカンジオール、ジメタクリル酸1,3−ブタンジオール、ジアクリル酸1,4−ブタンジオール、ジメタクリル酸1,4−ブタンジオール、1,4−ジアクリロイルピペラジン、ジアクリル酸1,4−フェニレン、ジメタクリル酸1,5−ペンタンジオール、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジメタクリル酸1,9−ノナンジオール、2,2−ビス(4−メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−アクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ジメタクリル酸2,2−ジメチルプロパンジオール、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸ジプロピレングリコール、ジアクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸エチレングリコール、N,N’エチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、N,N−ジアリルアクリルアミド、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸トランス−1,4−シクロヘキサンジオール、ジアクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、トリアクリル酸1,1,1−トリメチロールプロパン、トリメタクリル酸1,1,1−トリメチロールプロパン、ペンタアクリル酸ジペンタエリトリトール、テトラアクリル酸ペンタエリトリトール、トリアクリル酸ペンタエリトリトール、ジアクリル酸ポリ(エチレングリコール)、およびジメタクリル酸ポリ(エチレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
あるいは、開始剤部分(Y)は、少なくとも1種類の重合を開始可能な任意の官能基であり得る。そのような重合の例としては、原子移動ラジカル重合(米国特許第5763548号)、ニトロキシド媒介重合(米国特許第6353107号)、および可逆的付加開裂連鎖移動重合(米国特許第7205362号)等の遊離ラジカル重合や制御ラジカル重合を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
反応時間、反応温度、モノマー濃度、触媒濃度および溶媒の選択等の重合条件を調整することで、ポリマー被膜の厚さを制御することができる。透過電子顕微鏡法により直接観察して測定することができるポリマー被膜の平均膜厚は、数ナノメートルから100nmより大きい範囲である。
【0045】
ポリマー被膜は、一端が基材に固定されたポリマー鎖であり得る。ポリマーはホモポリマーまたはコポリマーであり得る。
【0046】
重合中にコモノマーの組成を調整することにより、ポリマー被膜の化学組成を変更することができる。それに加えて、重合後に、化学修飾を用いて被膜の化学的性質を調整することができる。被膜組成物の汎用性により、カラー顔料とポリマー被膜との密着を最適化することが容易にできる。
【0047】
1つの例では、被覆基材の分散液とカラー顔料の分散液とを混合することで着色システムを調製することができる。
【0048】
1つの例示的な実施形態では、低分子反応物を加えて、カラー顔料と被覆基材との相互作用を向上させるかまたは調整することができる。用いることのできる低分子反応物としては、臭化アルキル(alklyl)または臭化アルキルアリールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。1つの例では、臭化アルキルまたは臭化アルキルアリールが、ポリ(メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル)(PDMAEMA)を含む被膜と共に用いられる。この例では、被覆基材の3級アミン基を臭化物によって4級化することができるため、ポリマーに正の電荷がもたらされる。その結果、被覆基材の被膜と、負に帯電されたカラー顔料との密着を向上させることができる。被覆基材の被膜内におけるアルキル鎖等の物質の選択は、被覆基材の吸着動態や最終性能に大きな影響を及ぼし得ることが分かる。例えば、臭化アルキルまたは臭化アルキルアリールにおいてより長い鎖を用いることで疎水性が高まり、ヒドロキシル基等の極性基を臭化アルキルまたは臭化アルキルアリールに含めることで親水性等が高まり得る等である。
【0049】
基材が、例えばアルミニウムを含む場合において、被覆基材の寸法や密度は、一般的なカラー顔料、樹脂、および溶媒の寸法や密度よりもはるかに大きくなり得る。そのため、沈降分離または遠心分離により被覆基材を溶媒から容易に分離することができる。この場合、上澄み液の色の強度により、カラー顔料と被覆基材との分離が明確に示される。1つの例では、開示の着色システムの沈降分離または遠心分離により、澄んだ上層(溶媒)と、カラー顔料および被覆基材の双方を含む有色の下層とが得られ得る(図1参照)。それとは対照的に、被覆されていない基材とカラー顔料とを含む溶液は、カラー顔料と基材との明確な分離を示し得る。この場合、上澄み液にはカラー顔料が豊富に含まれる。
【0050】
1つの具体例では、カラー顔料は、顔料の流出の試験である沈降試験で規定されるように被覆基材に付着可能である。「付着」という用語は、物理的な環境において、一般的な塗料/インクシステム内でポリマー被覆基材からカラー顔料を分離する難度を意味し得る。沈降試験には、着色システムを1つ以上の溶媒中に分散させること、および沈降分離により基材を沈殿させることが含まれ得る。この場合、被覆基材にカラー顔料が付着していることは、上澄み液には着色が全くないか、あっても少なく、沈降した基材は深く、均一な色合いをしていることを意味し得る。1つの例では、15mlのN−メチルピロリドン(NMP)に開示の着色システムの固形物を0.300g分散させて、沈降分離により基材を沈殿させる沈降試験において、上澄み液中のカラー顔料の濃度が100ppm未満となるようにカラー顔料が基材に付着し得る。
【0051】
他の具体例では、沈降試験における被覆基材に対するカラー顔料の付着量を吸光度分析を用いて測定することができる。この分析では、カラー顔料の吸光度が最大となる波長で上澄み液の吸光度が分析され得る。溶媒中のカラー顔料の濃度は、利用される特定のカラー顔料の吸光度対濃度の検量線から得られる線形回帰方程式を用いて計算することができる。もし遠心分離後の上澄み液の量を定量的に測定するのであれば、被覆基材に付着していないカラー顔料の全量を測定した濃度から計算し、カラー顔料の元の量、または即ち、反応の開始時に加えられたカラー顔料の全量と比較することができる。1つの例では、被覆基材に付着しているカラー顔料の量が、元の顔料の量の90%よりも大きくなり得るようにカラー顔料が被覆基材に付着している。例示的な実施形態では、被覆基材に付着しているカラー顔料の量が、元の顔料の量の99%よりも大きくなるようにカラー顔料が被覆基材に安定して付着し得る。この場合、カラー顔料とポリマー被膜との間の強い相互作用によって、カラー顔料と被覆基材との密着が安定したものとなり得る。
【0052】
開示のシステムにおけるカラー顔料と被覆基材との強い密着により、本システムの組成を調整することも可能となり、調合に自由度がもたらされる。例えば、カラー顔料と被覆基材との分離が顕著になることなく、さらなる溶媒、樹脂、および添加剤を着色システムに加えることができる。着色システムを濃縮、希釈、および溶媒交換することができる。得られる着色システムは、濃縮物の形態であり得るため、貯蔵スペースが低減され、発送諸経費が削減され、危険性が限定され、貯蔵安定性が改善する。
【0053】
他の実施形態では、開示の着色システムは、カラー顔料が結合した被覆基材および溶媒または溶媒の混合物のみを含み得る。この実施形態では、本システムを他の任意の分散剤および/または樹脂を加えることなく、または換言すれば無樹脂塗料/インクシステムとして直接用いることができる。本明細書では「無樹脂」という用語は、基材の表面に結合した分散剤および/または樹脂以外にさらなる分散剤および/または樹脂をその調合物に有さない塗料/インクシステムと定義することができる。本明細書では「さらなる分散剤および/または樹脂」という用語は、基材の表面に結合したポリマー鎖とは別のポリマーであって、当該技術分野で、分散剤、膜形成剤、および/または接着剤などとして、インクおよび塗料等の被覆調合物に一般的に加えられるポリマーを意味し得る。上記さらなる樹脂は、例えば、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、およびポリアクリル酸樹脂であり得る。上記さらなる分散剤の例は、「有機塗料:科学と技術(Organic coatings: science and technology)」、第3版(ニューヨーク:ジョンワイリー&サンズ,2007年)440および446ページに見出すことができる。
【0054】
そのような無樹脂システムでは、被覆基材上のポリマー被膜が膜形成能力をもたらし、溶媒が乾燥した際に無樹脂システムで被覆された表面への付着が促進され得る。乾燥の最終段階において被覆基材の配向を妨げる外部の樹脂が存在しないため、無樹脂塗料/インクシステムは、配向が向上し、メタリック効果が改善された被覆をもたらすことができる。必要のない樹脂が存在しないため、無樹脂塗料/インクシステムの粘度を低減することもできる。この例では、無樹脂塗料/インクシステムは、カラー顔料が結合した高濃度の被覆基材を有し得る。その結果、無樹脂顔料/インクシステムは、揮発性有機化合物(VOC)の排出を低減することができ、最終的な被膜は向上した不透明度を有し得る。
【0055】
さらに他の実施形態では、開示の着色システムを従来の塗料/インク/プラスチックシステムと組み合わせることができる。この場合、得られる塗料は、被覆基材上のポリマー被膜の自己分散能力と膜形成能力とにより、高い顔料/バインダ(pigment-to-binder)比で用いることができる。1つの例では、混合システムの顔料/バインダ比は1〜10であり得る。
【0056】
開示の着色システムの利点の1つは、本システムを短期間で調製することができ、その製造には加熱および混合用の機器以外には多くの機器を要しないことである。また、カラー顔料とポリマー被覆基材との間の強い親和性により、得られるシステムは、必要な成分を加えた後にすぐ適用可能である場合がほとんどである。
【0057】
さらに他の実施形態では、物品は本開示の着色システムを含有する被膜を含む。
【実施例1】
【0058】
ATRPによるポリマー被覆アルミニウム基材の調製
20リットルの反応フラスコに、11.64kgのグリコールエーテルPMアセテートと共にシルバーラインマニュファクチュアリング社の固形分が75.68%のレンズ状アルミニウム顔料(lenticular aluminum pigment)であるSSP−695を4.8kg加えた。混合物を均一になるまで攪拌し、次に80℃まで加熱した。その後、ATRP開始剤である3−(トリメチルシリルプロピル)−2−ブロモ−2−メチルプロピオネートを16ml加えた。反応を80℃で6時間続け、次にスラリーを室温に冷却し、固形分をろ過により分離した。最終生成物の固形分は64.56重量%であった。
【0059】
500mlの反応フラスコに入った310mlのグリコールエーテルPMアセテート中に、固定化開始剤と結合した上記生成物を30.8g分散させた。適度に攪拌しながら、そこに、80mlのメタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル(DMAEMA)を加えた。前記フラスコを密閉し、前記フラスコの底部に高純度の窒素を導入してシステムを不活化させた。30分後に0.423gのCuBrを加え、窒素導入ラインを液体の水位よりも上にあげ、速度を750〜800回転/分に上げた。攪拌および窒素の流れを維持しつつ、温度を1時間に渡ってゆっくりと60℃に上げた。
【0060】
別のフラスコ中で、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)を30分間窒素で脱気した。上記の1時間の混合の最後に、窒素パージした注射器を用いて、0.62mlのPMDETAを前記反応フラスコに移して、重合反応を開始させた。
【0061】
温度を60℃に維持しつつ、反応を5時間続けた。反応の最後に、空気中で容器を開け、約150gのPMアセテートを加えて温度を急速に下げ反応を停止させた。遠心分離によりスラリーから固形分を分離し、次にPMアセテート中に再度分散させ、再び遠心分離にかけて残りの反応物を除去した。生成物をN−メチルピロリドン(NMP)に分散させ、溶媒を交換するために再度遠心分離にかけた。最終生成物の固形分を測定したところ46.02重量%であった。アルミニウムフレークに結合したポリマーの量をTGAにより測定したところ、固形分の重量の9.54%であった。
【実施例2】
【0062】
緑色のアルミニウム着色システムの調製
40mlのバイアルに入った15.0gのNMPに、実施例1のポリマー被覆アルミニウム顔料を4.35g分散させた。それとは別に、5.0gのNMPに、フタロシアニンピグメントグリーン7の固形物分散液(ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニルコポリマーに40重量%の顔料を分散させたもの)を0.40g分散させた。ピグメントグリーン7の分散液をアルミニウム顔料の分散液に加え、次にNMP中の臭化アリルの4%溶液を4.0g加えた。混合物を室温で15分間攪拌し、次に約30分間に渡って温度を90℃に上げた。混合物を90℃でさらに15分間攪拌し、その後室温に冷却した。遠心分離により固形分を分離して、次にNMP中に二度再分散させ、再度遠心分離にかけた。各遠心分離からの上澄み液は非常に薄い緑色であったにすぎないが、固形の沈降物は明るく深い緑色であった。
【実施例3】
【0063】
青色のアルミニウム着色システムの調製
40mlのバイアルに入った15.0gのNMPに、実施例1のポリマー被覆アルミニウム顔料を4.35g分散させた。それとは別に、5.0gのNMPに、フタロシアニンピグメントブルー15:4の固形物分散液(ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニルコポリマーに40重量%の顔料を分散させたもの)を0.40g分散させた。ピグメントブルー15:4の分散液をアルミニウム顔料の分散液に加え、次にNMP中の臭化アリルの4%溶液を4.0g加えた。混合物を室温で15分間攪拌し、次に約30分間に渡って温度を90℃に上げた。混合物を90℃でさらに15分間攪拌し、その後室温に冷却した。遠心分離により固形分を分離して、次にNMP中に二度再分散させ、再度遠心分離にかけた。各遠心分離からの上澄み液は非常に薄い青色であったにすぎないが、固形の沈降物は明るく深い青色であった。
【実施例4】
【0064】
赤色のアルミニウム着色システムの調製
40mlのバイアルに入った15.0gのNMPに、実施例1のポリマー被覆アルミニウム顔料を4.35g分散させた。それとは別に、5.0gのNMPに、キナクリドンピグメントレッド122の固形物分散液(ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニルコポリマーに40重量%の顔料を分散させたもの)を0.40g分散させた。ピグメントレッド122の分散液をアルミニウム顔料の分散液に加え、次にNMP中の臭化アリルの4%溶液を4.0g加えた。混合物を室温で15分間攪拌し、次に約30分間に渡って温度を90℃に上げた。混合物を90℃でさらに15分間攪拌し、その後室温に冷却した。遠心分離により固形分を分離して、次にNMP中に二度再分散させ、再度遠心分離にかけた。各遠心分離からの上澄み液は非常に薄い赤色であったにすぎないが、固形の沈降物は明るく深い赤色であった。
【実施例5】
【0065】
赤色のアルミニウム着色システムの調製
40mlのバイアルに入った15.0gのNMPに、実施例1のポリマー被覆アルミニウム顔料を4.35g分散させた。それとは別に、5.0gのNMPに、ペリレンピグメントレッド179の固形物分散液(ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニルコポリマーに40重量%の顔料を分散させたもの)を0.40g分散させた。ピグメントレッド179の分散液をアルミニウム顔料の分散液に加え、次にNMP中の臭化アリルの4%溶液を4.0g加えた。混合物を室温で15分間攪拌し、次に約30分間に渡って温度を90℃に上げた。混合物を90℃でさらに15分間攪拌し、その後室温に冷却した。遠心分離により固形分を分離して、次にNMP中に二度再分散させ、再度遠心分離にかけた。各遠心分離からの上澄み液は非常に薄い赤色であったにすぎないが、固形の沈降物は明るく深い赤色であった。
【実施例6】
【0066】
黄色のアルミニウム着色システムの調製
40mlのバイアルに入った15.0gのNMPに、実施例1のポリマー被覆アルミニウム顔料を4.35g分散させた。それとは別に、5.0gのNMPに、イソインドリノンピグメントイエロー110の固形物分散液(ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニルコポリマーに40重量%の顔料を分散させたもの)を0.40g分散させた。ピグメントイエロー110の分散液をアルミニウム顔料の分散液に加え、次にNMP中の臭化アリルの4%溶液を4.0g加えた。混合物を室温で15分間攪拌し、次に約30分間に渡って温度を90℃に上げた。混合物を90℃でさらに15分間攪拌し、その後室温に冷却した。遠心分離により固形分を分離して、次にNMP中に二度再分散させ、再度遠心分離にかけた。各遠心分離からの上澄み液は非常に薄い黄色であったにすぎないが、固形の沈降物は明るく深い黄色であった。
【実施例7】
【0067】
黄色のアルミニウム着色システムの調製
40mlのバイアルに入った15.0gのNMPに、実施例1のポリマー被覆アルミニウム顔料を4.35g分散させた。それとは別に、5.0gのNMPに、イソインドリノンピグメントイエロー139の固形物分散液(ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニルコポリマーに40重量%の顔料を分散させたもの)を0.40g分散させた。ピグメントイエロー139の分散液をアルミニウム顔料の分散液に加え、次にNMP中の臭化アリルの4%溶液を4.0g加えた。混合物を室温で15分間攪拌し、次に約30分間に渡って温度を90℃に上げた。混合物を90℃でさらに15分間攪拌し、その後室温に冷却した。遠心分離により固形分を分離して、次にNMP中に二度再分散させ、再度遠心分離にかけた。各遠心分離からの上澄み液は非常に薄い黄色であったにすぎないが、固形の沈降物は明るく深い黄色であった。
【実施例8】
【0068】
青紫色のアルミニウム着色システムの調製
40mlのバイアルに入った15.0gのNMPに、実施例1のポリマー被覆アルミニウム顔料を4.35g分散させた。それとは別に、5.0gのNMPに、キナクリドンピグメントバイオレット19の固形物分散液(ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニルコポリマーに40重量%の顔料を分散させたもの)を0.40g分散させた。ピグメントバイオレット19の分散液をアルミニウム顔料の分散液に加え、次にNMP中の臭化アリルの4%溶液を4.0g加えた。混合物を室温で15分間攪拌し、次に約30分間に渡って温度を90℃に上げた。混合物を90℃でさらに15分間攪拌し、その後室温に冷却した。遠心分離により固形分を分離して、次にNMP中に二度再分散させ、再度遠心分離にかけた。各遠心分離からの上澄み液は非常に薄い青紫色であったにすぎないが、固形の沈降物は明るく深い青紫色であった。
【実施例9】
【0069】
赤色のアルミニウム着色システムの調製
40mlのバイアルに入った15.0gのNMPに、実施例1のポリマー被覆アルミニウム顔料を4.35g分散させた。それとは別に、5.0gのNMPに、キナクリドンピグメントレッド122の固形物分散液(ポリアクリレートポリマーに40重量%の顔料を分散させたもの)を0.40g分散させた。ピグメントレッド122の分散液をアルミニウム顔料の分散液に加え、次にNMP中の臭化アリルの4%溶液を4.0g加えた。混合物を室温で15分間攪拌し、次に約30分間に渡って温度を90℃に上げた。混合物を90℃でさらに15分間攪拌し、その後室温に冷却した。遠心分離により固形分を分離して、次にNMP中に二度再分散させ、再度遠心分離にかけた。各遠心分離からの上澄み液は非常に薄い赤色であったにすぎないが、固形の沈降物は明るく深い赤色であった。
【実施例10】
【0070】
青色のアルミニウム着色システムの調製
40mlのバイアルに入った15.0gのNMPに、実施例1のポリマー被覆アルミニウム顔料を4.35g分散させた。それとは別に、5.0gのNMPに、フタロシアニンピグメントブルー15:4の固形物分散液(ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニルコポリマーに40重量%の顔料を分散させたもの)を0.40g分散させた。ピグメントグリーン7の分散液をアルミニウム顔料の分散液に加え、次にNMP中の臭化ベンジルの4%溶液を5.2g加えた。混合物を室温で15分間攪拌し、次に約30分間に渡って温度を90℃に上げた。混合物を90℃でさらに15分間攪拌し、その後室温に冷却した。遠心分離により固形分を分離して、次にNMP中に二度再分散させ、再度遠心分離にかけた。各遠心分離からの上澄み液は非常に薄い緑色であったにすぎないが、固形の沈降物は明るく深い緑色であった。
【実施例11】
【0071】
青色のアルミニウム着色システムの調製
40mlのバイアルに入った15.0gのNMPに、実施例1のポリマー被覆アルミニウム顔料を4.35g分散させた。それとは別に、5.0gのNMPに、フタロシアニンピグメントブルー15:4の固形物分散液(ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニルコポリマーに40重量%の顔料を分散させたもの)を0.40g分散させた。ピグメントグリーン7の分散液をアルミニウム顔料の分散液に加え、次にNMP中の臭化ヘキシルの4%溶液を5.5g加えた。混合物を室温で15分間攪拌し、次に約30分間に渡って温度を90℃に上げた。混合物を90℃でさらに15分間攪拌し、その後室温に冷却した。遠心分離により固形分を分離して、次にNMP中に二度再分散させ、再度遠心分離にかけた。各遠心分離からの上澄み液は非常に薄い緑色であったにすぎないが、固形の沈降物は明るく深い緑色であった。
【0072】
美麗性の評価
実施例2〜11の各顔料を、全量が20mlになるようにNMPで希釈して再分散し、ポリマー被覆アルミニウムフレークが10重量%の無樹脂塗料を作製した。これらの塗料を14番の巻線ロッドで不透明チャート(opacity chart)上に引き伸ばし、残存溶媒を蒸発させるために60℃で短時間焼成した。
【0073】
比較用に、昭和の市販のカラーアルミニウム顔料(D554REレッド、DE529YEイエロー、D551BLブルーおよびD507GRグリーン)の4種類を評価した。これらの製品から無樹脂塗料を作製することができないので、それらを10重量%の固形分で市販の自動車用再仕上げ塗料システムに分散させ、その後14番の巻線ロッドで不透明チャート上に引き伸ばし、残存溶媒を蒸発させるために60℃で短時間焼成した。図3は、昭和のフレンドカラーのインクおよび実施例2の無樹脂インク(ポリ(メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル)封止Silberline Sparkle Silver(登録商標)Premium695およびフタロシアニンピグメントグリーン7)からのドローダウンの美麗性の比較を示す。
【0074】
無樹脂インクからのドローダウンは強い金属光沢を呈する。エックスライト(X−Rite)MA68ゴニオ分光光度計を用いて、上記ドローダウンの比色を評価した。下記の表1に、5つの角度における実施例2〜11および市販のカラーアルミニウム製品の比色の比較を示す。表1から明らかなように、実施例2〜11の顔料の呈色は、市販の製品よりも明るく滑らかであることが分かる。
【0075】
【表1】

【0076】
顔料の結合
アルミニウムフレークへの顔料の結合の強度を測定するために、実施例2の緑色アルミニウム顔料および市販の緑色アルミニウム顔料である昭和のD507GRに対して顔料流出試験を行った。0.3000gの固形材をもたらすのに十分な量だけ各製品を量り分け、それぞれに15.0mlのメチルエチルケトン(MEK)を加えた。顔料をMEKに完全に分散させ、得られたスラリーを試験管に移してそれに栓をし、そのまま一晩沈殿させた。次の日、実施例2の上澄み液は透明であり、非常にわずかな緑色の着色があったにすぎないが、昭和のD507GRの上澄み液は深い緑色で、かつ不透明に近かった。Spec20分光光度計を用いて、2つの上澄み液の吸光度を540nmの波長で測定した。本発明の製品におけるアルミニウムフレークからの顔料の抽出が市販の顔料よりも大幅に少ないことを、下記の結果が明確に示している。図1は沈降試験の結果を示す。
【0077】
MEK上澄み液中の緑色顔料の濃度
実施例1 46.4ppm
昭和のD507GR 917.3ppm。
【0078】
カラー顔料とアルミニウムフレークとの間の強い密着を、走査電子顕微鏡法によりさらに確認する。図2に示すように、複数回の溶媒洗浄後でもアルミニウムフレークの表面はカラー顔料で均一に被覆されている。
【実施例12】
【0079】
ATRPによるポリマー被覆アルミニウム基材の調製
20リットルの反応フラスコに、11.64kgのグリコールエーテルPMアセテートと共にシルバーラインマニュファクチュアリング社の固形分が75.68%のレンズ状アルミニウム顔料であるSSP−695を4.8kg加えた。混合物を均一になるまで攪拌し、次に80℃まで加熱した。その後、ATRP開始剤である3−(トリメチルシリルプロピル)−2−ブロモ−2−メチルプロピオネートを16ml加えた。反応を80℃で6時間続け、次にスラリーを室温に冷却し、固形分をろ過により分離した。最終生成物の固形分は55.75重量%であった。
【0080】
20リットルの反応フラスコに入った9675mlのグリコールエーテルPMアセテート中に、固定化開始剤と結合した上記生成物を1291.5g分散させた。適度に攪拌しながら、そこに、4320mlのメタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル(DMAEMA)を加えた。前記フラスコを密閉し、前記フラスコの底部に高純度の窒素を導入してシステムを不活化させた。30分後に15.23gのCuBrを加え、速度を550〜600回転/分に上げた。攪拌および窒素の流れを維持しつつ、温度を1時間に渡ってゆっくりと60℃に上げた。
【0081】
別のフラスコ中で、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)を30分間窒素で脱気した。上記の1時間の混合の最後に、窒素パージした注射器を用いて、22.5mlのPMDETAを前記反応フラスコに移して、重合反応を開始させた。
【0082】
温度を60℃に維持しつつ、反応を5時間続けた。反応の最後に、スラリーを華氏100度に冷却して反応を止めた。遠心分離によりスラリーから固形分を分離し、次にN−メチルピロリドン(NMP)中に再度分散させ、再び遠心分離にかけて残りの反応物を除去した。生成物を再度NMPに分散させ、遠心分離にかけた。最終生成物の固形分を測定したところ40.74重量%であった。アルミニウムフレークに結合したポリマーの量をTGAにより測定したところ、固形分の重量の17.68%であった。
【実施例13】
【0083】
緑色のアルミニウム着色システムの調製
40mlのバイアルに入った15.0gのNMPに、実施例12のポリマー被覆アルミニウム顔料を3.44g分散させた。それとは別に、5.0gのNMPに、フタロシアニンピグメントグリーン7の固形物分散液(ポリ塩化ビニル/ポリ酢酸ビニルコポリマーに40重量%の顔料を分散させたもの)を0.90g分散させた。ピグメントグリーン7の分散液をアルミニウム顔料の分散液に加え、次にNMP中の臭化ヘキシルの4%溶液を7.45g加えた。混合物を室温で15分間攪拌し、次に約30分間に渡って温度を90℃に上げた。混合物を90℃でさらに15分間攪拌し、その後室温に冷却した。遠心分離により固形分を分離して、次にNMP中に二度再分散させ、再度遠心分離にかけた。各遠心分離からの上澄み液は非常に薄い緑色であったにすぎないが、固形の沈降物は明るく深い緑色であった。
【0084】
比較例1
臭化ヘキシルを加えずに実施例13の工程を繰り返した。遠心分離により固形分を分離し、次にNMP中に二度再分散させ、再び遠心分離にかけた。各遠心分離からの上澄み液は、暗く不透明な緑色であったのに対して、固形の沈降物は非常に薄い緑色であった。
【0085】
美麗性の評価
実施例13および比較例1の顔料を、全量が17.5mlになるようにNMPで希釈して再度分散し、ポリマー被覆アルミニウムフレークが10重量%の無樹脂塗料を作製した。これらの塗料を14番の巻線ロッドで不透明チャート上に引き伸ばし、残存溶媒を蒸発させるために60℃で短時間焼成した。エックスライトMA68ゴニオ分光光度計を用いて、上記ドローダウンの比色を評価した。下記の表2に、5つの角度における実施例13および比較例1の比色の比較を示す。表2から明らかなように、実施例13の顔料の彩度は、比較例1の彩度よりもかなり強いことが分かる。
【0086】
【表2】

【0087】
顔料の結合
顔料の結合の度合を測定するために、実施例13および比較例1の1回目の遠心分離からの上澄み液を定量的に回収し、吸光度を上記のようにして調べた。計算した緑色顔料の濃度と分かっている量から上澄み液中の緑色顔料の全量を求め、アルミニウムフレークへの顔料の結合を、反応バイアルに加えた緑色顔料の量に対するパーセントとして計算した。以下がその結果である。
【0088】
緑色顔料の結合(%)
実施例13 99.80%
比較例1 26.70%。
【実施例14】
【0089】
実施例1のポリマー被覆アルミニウム基材の無樹脂塗料
湿性ペーストをPMアセテートで希釈して実施例1のポリマー被覆アルミニウム基材の無樹脂塗料を調製した。最終塗料の顔料の重量濃度は10.1%である。ポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)およびアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)のプラスチックパネルに、塗料をサイホン噴霧した。噴霧したパネルをオーブン内でさらに乾燥させた。
【0090】
態様
1.複数のカラー顔料と、
複数の被覆基材であって、前記被覆基材のそれぞれは、表面と、前記表面を覆うポリマー被膜とを有する基材を含み、前記ポリマー被膜は、前記基材の前記表面に結合したポリマー鎖を含む被覆基材とを含む着色システムであって、
前記カラー顔料は前記被覆基材に付着している着色システム。
2.沈降試験後の吸光度分析において、前記被覆基材に付着している前記カラー顔料の量が、前記カラー顔料の元の量の90%よりも大きくなるように、前記カラー顔料が前記被覆基材に付着しているいずれかの態様に記載の着色システム。
3.前記ポリマー鎖の密度は、0.001〜2鎖/nm2の範囲であるいずれかの態様に記載の着色システム。
4.前記ポリマー鎖は、実質的に均質な構造をしているいずれかの態様に記載の着色システム。
5.前記ポリマー被膜は、前記カラー顔料を前記ポリマー被膜に付着させる少なくとも1つの官能基を含むいずれかの態様に記載の着色システム。
6.前記ポリマー被膜の前記官能基はイオン電荷を含むいずれかの態様に記載の着色システム。
7.前記少なくとも1つの官能基は4級アミンを含むいずれかの態様に記載の着色システム。
8.前記基材はアルミニウムを含むいずれかの態様に記載の着色システム。
9.溶媒をさらに含むいずれかの態様に記載の着色システム。
10.前記溶媒は、水、低級アルコール、エーテル、エステル、ケトン、グリコールエーテル、ピロリドン、スルホキシドおよび/またはそれらの混合物からなる群より選択されるいずれかの態様に記載の着色システム。
11.前記着色システムは、前記基材の前記表面に結合した分散剤および/または樹脂以外にさらなる分散剤および/または樹脂を全く含まないいずれかの態様に記載の着色システム。
12.前記システムは、カラーメタリックインクシステムまたはカラーメタリック塗料システムであるいずれかの態様に記載の着色システム。
13.前記カラー顔料は、フタロシアニンピグメントグリーン7、フタロシアニンピグメントブルー15:4、キナクリドンピグメントレッド122、ペリレンピグメントレッド179、イソインドリノンピグメントイエロー110、イソインドリノンピグメントイエロー139、キナクリドンピグメントバイオレット19およびキナクリドンピグメントレッド122からなる群より選択される少なくとも1つであるいずれかの態様に記載の着色システム。
14.前記カラー顔料のそれぞれの大きさは、1nm〜200nmであるいずれかの態様に記載の着色システム。
15.前記カラー顔料のそれぞれの大きさは、1nm〜100nmであるいずれかの態様に記載の着色システム。
16.前記基材の大きさは、100nm〜1ミクロンであるいずれかの態様に記載の着色システム。
17.前記基材の大きさは、500nm〜100ミクロンであるいずれかの態様に記載の着色システム。
18.前記基材の大きさは、1ミクロン〜50ミクロンであるいずれかの態様に記載の着色システム。
19.前記ポリマー鎖は、反応性の4級化剤で4級化される3級アミン基を含むいずれかの態様に記載の着色システム。
20.3級アミン基を含む前記ポリマー鎖は、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、2−(ジエチルアミノ)エチルスチレン、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アクリル酸3−ジメチルアミノネオペンチル、メタクリル酸3−ジメチルアミノネオペンチルおよびメタクリル酸2−ジイソプロピルアミノエチルのホモポリマーまたはコポリマーからなる群より選択されるいずれかの態様に記載の着色システム。
21.前記4級アミンは、窒素原子に4個の基が結合しているために正の電荷を持つカチオン性アミン塩であるいずれかの態様に記載の着色システム。
22.前記4級化剤は、ハロゲン化アルキルおよびハロゲン化アリールアルキルからなる群より選択され得るいずれかの態様に記載の着色システム。
23.前記着色システムは、10〜70重量%の前記被覆基材を含むいずれかの態様に記載の着色システム。
24.前記着色システムは、2〜25重量%の前記カラー顔料を含むいずれかの態様に記載の着色システム。
25.前記着色システムは、25〜85重量%の前記溶媒を含むいずれかの態様に記載の着色システム。
26.前記被覆基材のそれぞれは、前記基材のそれぞれの前記表面に開始剤が固定化されるように前記基材のそれぞれの前記表面を変性することにより得られるいずれかの態様に記載の着色システム。
27.前記固定化された開始剤は、表面活性基と、スペーサーと開始剤部分とを含むいずれかの態様に記載の着色システム。
28.前記表面活性基は、モノ−、ジ−およびトリ−アルコキシシラン(alkoxylsilane)、モノ−、ジ−およびトリ−クロロシラン、カルボン酸、有機リン化合物、ならびに金属表面、金属酸化物表面、またはシリカ表面に強い親和性を有する他の化学基から選択されるいずれかの態様に記載の着色システム。
29.前記開始剤部分は、ハロゲン原子、アルコキシアミン、ジチオエステル、ジチオカルバメート、トリチオカルボネート、キサンテート有機過酸化物、およびアゾ化合物から選択されるいずれかの態様に記載の着色システム。
30.前記基材のそれぞれは、シリカまたは金属酸化物の封止により官能化されているいずれかの態様に記載の着色システム。
31.前記被覆基材のそれぞれの膜厚は、10個を超える異なる被覆基材からの、20,000倍〜100,000倍の倍率の透過電子顕微鏡画像から膜厚の平均および標準偏差が計算され、目盛が100nmの場合に、前記基材上の前記膜厚の標準偏差が前記平均膜厚の15%未満となるような実質的に均一な膜厚であるいずれかの態様に記載の着色システム。
32.前記被覆基材のそれぞれの膜厚は、数ナノメートルから100nmより大き範囲であるいずれかの態様に記載の着色システム。
33.低分子反応物をさらに含むいずれかの態様に記載の着色システム。
34.前記低分子反応物は、臭化アルキル(alklyl)および臭化アルキルアリール、ならびにヒドロキシル基等の極性基を含めた臭化アルキル(alklyl)および臭化アルキルアリール、任意でポリ(メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル)(PDMAEMA)を含む被膜と共に用いられる臭化アルキルまたは臭化アルキルアリールから選択されるいずれかの態様に記載の着色システム。
35.15mlのN−メチルピロリドン(NMP)に前記着色システムの固形分を0.300g分散させ、前記基材を沈降分離により沈殿させる沈降試験において、上澄み液中の前記カラー顔料の濃度が100ppm未満になるように前記カラー顔料が前記被覆基材に付着しているいずれかの態様に記載の着色システム。
36.前記着色システムは、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂およびポリアクリル酸樹脂を含まないいずれかの態様に記載の着色システム。
37.前記着色システムの顔料/バインダ比は1〜10であるいずれかの態様に記載の着色システム。
38.いずれかの態様に記載の着色システムの製造方法であって、
前記被覆基材の分散液と前記カラー顔料の分散液とを混合する工程を含む方法。
39.低分子反応物を加えて、前記被覆基材の前記ポリマー被膜に含まれる3級アミン基を4級化させる工程をさらに含む請求項38に記載の方法。
40.いずれかの態様に記載の着色システムを含む被膜を含む物品。
41.前記ポリマー鎖は、前記基材の前記表面に共有結合しているいずれかの態様に記載の着色システム。
42.前記着色システムを1つ以上の溶媒に分散させ、沈降分離により前記被覆基材を沈殿させる沈降試験後の吸光度分析において、前記被覆基材に付着している前記カラー顔料の量が、前記カラー顔料の元の量の90%より大きくなるように、前記カラー顔料が前記被覆基材に付着しているいずれかの態様に記載の着色システム。
【0091】
開示の着色システムおよび方法を好適な実施形態と共に説明してきたが、開示の視野および範囲内において開示の着色システムおよび方法の他の目的や改良が行われてもよいことは当業者には明らかである。
【0092】
本開示は、その種々の態様および開示の形態において、言及した以外の目的および利点を達成するために適宜変更される。開示の詳細は、請求項に対する限定と見なされるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカラー顔料と、
複数の被覆基材であって、前記被覆基材のそれぞれは、表面と、前記表面を囲むポリマー被膜とを有する基材を含み、前記ポリマー被膜は、前記基材の前記表面に結合したポリマー鎖を含む被覆基材とを含む着色システムであって、
前記カラー顔料は前記被覆基材に付着している着色システム。
【請求項2】
前記被覆基材に付着している前記カラー顔料の量が、沈降試験において前記カラー顔料の元の量の90%よりも大きくなるように、前記カラー顔料が前記被覆基材に付着している請求項1に記載の着色システム。
【請求項3】
前記ポリマー鎖の密度は、0.001〜2鎖/nm2の範囲である請求項1および2のいずれかに記載の着色システム。
【請求項4】
前記ポリマー鎖は、実質的に均質な構造をしている請求項1〜3のいずれかに記載の着色システム。
【請求項5】
前記ポリマー被膜は、前記カラー顔料を前記ポリマー被膜に付着させる少なくとも1つの官能基を含む請求項1〜4のいずれかに記載の着色システム。
【請求項6】
前記ポリマー被膜の前記官能基はイオン電荷を含む請求項1〜5のいずれかに記載の着色システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの官能基は4級アミンを含む請求項1〜6のいずれかに記載の着色システム。
【請求項8】
前記基材はアルミニウムを含む請求項1〜7のいずれかに記載の着色システム。
【請求項9】
溶媒をさらに含む請求項1〜8のいずれかに記載の着色システム。
【請求項10】
前記溶媒は、水、低級アルコール、エーテル、エステル、ケトン、グリコールエーテル、ピロリドン、スルホキシドおよび/またはそれらの混合物からなる群より選択される請求項1〜9のいずれかに記載の着色システム。
【請求項11】
前記着色システムは、前記基材の前記表面に結合した分散剤および/または樹脂以外にさらなる分散剤および/または樹脂を全く含まない請求項1〜10のいずれかに記載の着色システム。
【請求項12】
前記システムは、カラーメタリックインクシステムまたはカラーメタリック塗料システムである請求項1〜11のいずれかに記載の着色システム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の着色システムの製造方法であって、
前記被覆基材の分散液と前記カラー顔料の分散液とを混合する工程を含む方法。
【請求項14】
低分子反応物を加えて、前記被覆基材の前記ポリマー被膜に含まれる3級アミン基を4級化させる工程をさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれかに記載の着色システムを含む被膜を含む物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−31408(P2012−31408A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−157427(P2011−157427)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(511034594)シルバーライン マニュファクチュアリング カンパニー,インク. (7)
【Fターム(参考)】