説明

研磨パッドの製造方法

【課題】クッション性を確保しつつ長期にわたり研磨性能を発揮することができる研磨パッドの製造方法を提供する。
【解決手段】研磨パッドは、湿式成膜法で一体形成されたウレタン発泡体を備えている。湿式成膜法では、塗布工程で、ポリウレタン樹脂溶液を帯状の成膜基材にシート状に略均一に塗布する。成膜基材には表面平滑性を有するPET製フィルムを用いる。浸漬工程で、成膜基材に塗布されたポリウレタン樹脂溶液を、水を主成分とする凝固液に浸漬する。剥離工程で、ポリウレタン樹脂の凝固再生が完了する前に凝固液中で凝固再生中のポリウレタン樹脂を成膜基材から剥離した後、ポリウレタン樹脂の凝固再生を完了させる。厚み方向両側でシームレスに発泡構造の異なるウレタン発泡体が一体形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッドの製造方法に係り、特に、発泡構造を有する樹脂製シートを備えた研磨パッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造や液晶ディスプレイ用ガラス基板等の材料(被研磨物)の表面(加工面)では、平坦性が求められるため、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。半導体デバイスでは、半導体回路の集積度が急激に増大するにつれて高密度化を目的とした微細化や多層配線化が進み、加工面を一層高度に平坦化する技術が重要となっている。一方、液晶ディスプレイでは、大型化に伴いガラス基板が薄く脆くなる傾向にあり、加工面のより高度な平坦性が要求されている。
【0003】
一般に、研磨加工に用いられる研磨パッドは、発泡構造を有する樹脂製で、被研磨物を研磨加工するための研磨面を有する研磨層(樹脂製シート)を備えている。研磨加工時には、研磨面と加工面との間に砥粒を含む研磨液(スラリ)が供給され、被研磨物に研磨圧(押圧力)がかけられる。また、被研磨物のグローバル平坦化とローカル平坦化との両方を同時に達成するために、クッション層を含む多層構造の研磨パッドが使用されている。このクッション層には、不織布が多用されてきたが、高弾性の不織布に代えて、ウレタン発泡フィルムのような柔軟なクッション層が求められている。多層構造の研磨パッドでは、貼り合わされて一体化されているため、製造工程が煩雑なうえ、貼り合わせた部分で剥離を招くことがある。
【0004】
一方、被研磨物としては、パターニングされたウエハ類、例えば層間絶縁膜、バリア膜除去、シャロウトレンチ分離法(STI)、軟質なCu配線や、薄く多孔質なlow−k膜のように、機械的強度が極めて低く研磨キズが発生しやすいものや、薄板ガラスのような硬く脆いために割れが発生しやすいものが増加する傾向にある。これらの被研磨物では、キズの発生数やキズサイズが厳しく制限されており、高精度な研磨加工が要求されている。被研磨物に対するダメージを低減する目的で、研磨表面が軟質で圧縮性を有するスウェード調の研磨パッドが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−243445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的なスウェード調の研磨パッドは湿式凝固法により製造されている。湿式凝固法では、ポリエステルフィルムや不織布等の基材上にポリウレタン樹脂溶液を塗布した後、水溶液中でポリウレタン樹脂の溶剤と水とを置換させることで3次元網目状のポリウレタン発泡体が形成される。この発泡体では、ポリウレタン樹脂溶液と水溶液との界面で瞬時に溶剤と水との置換が生じることで、界面部分に緻密な微多孔で構成される表皮層が形成され、表皮層から離れるに従い肥大する孔径が約10μmから数百μmの発泡が形成される。特許文献1の技術では、従来のスウェード調の研磨パッドにおいて除去されていた表面皮膜付近に存在する孔径が10μmから60μmの小さな発泡部を使用することで研磨特性を向上させている。この場合、小さな発泡部の領域が広くなるほど良好な研磨特性で使用できる期間が長くなり、製品寿命も長くなる。しかし、研磨パッドの寿命を延長するために小さな発泡部を厚く製造しようとすると、全体の発泡形状を小さくしなければならず、弾性が小さくなるためにクッション性を損なうこととなる。反対に、クッション性を重視すると発泡を大きくする必要があり、小さな発泡部の領域が小さくなる、または、小さな発泡部が形成されなくなってしまう。つまり、従来の湿式凝固法による研磨パッドでは、クッション機能と製品寿命とのどちらかが犠牲となり、両者の機能を兼ね備えた研磨パッドが得られていないのが現状である。発泡構造の異なるシートを一体成型した研磨パッドの例もあるが満足できるものは得られていない。
【0007】
本発明は上記事案に鑑み、クッション性を確保しつつ長期にわたり研磨性能を発揮することができる研磨パッドの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、発泡構造を有する樹脂製シートを備えた研磨パッドの製造方法であって、有機溶媒に樹脂を溶解させた樹脂溶液を準備する準備ステップと、前記準備ステップで準備された樹脂溶液を基材にシート状に塗布する塗布ステップと、前記塗布ステップで基材に塗布された樹脂溶液を主成分が水の凝固液中に案内し、前記樹脂溶液の凝固完了前に前記凝固液中で前記基材から剥離した後、前記樹脂溶液の凝固を完了させる凝固ステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明では、凝固ステップで、基材に塗布された樹脂溶液を凝固液中に案内することで表面側から有機溶媒と凝固液との置換が生じて樹脂溶液の凝固が進行することに加えて、樹脂溶液の凝固完了前に基材から剥離することで基材が剥離された面側からも凝固が進行する。当初基材に塗布された樹脂溶液の表面側からと、基材が剥離された面側からとで凝固の進行に差異が生じるため、厚み方向両側で発泡構造の異なるシート状の樹脂が一体形成される。本発明によれば、樹脂溶液の凝固中に基材から剥離することで、厚み方向で発泡構造の異なる発泡体が1種類の樹脂で形成されるため、研磨加工時にクッション性を確保しつつ長期にわたり研磨性能を発揮することができる。
【0010】
この場合において、凝固ステップで少なくとも基材近傍の樹脂溶液がゲル状態のときに基材から剥離されるようにすることができる。塗布ステップで、基材に、樹脂溶液の塗布前に、剥離性を良化する剥離剤が塗布されていることが好ましい。また、凝固ステップで樹脂中に、厚み方向中央部より基材が剥離される面と反対の面側に多数の第1の発泡を連続発泡状に形成し、中央部より基材が剥離される面側に多数の第2の発泡を連続発泡状に形成することができる。このとき、凝固ステップで基材に塗布された樹脂溶液の表面側および基材が剥離された面側に緻密な微多孔構造を有する表面層を形成することができる。凝固ステップで第1および第2の発泡の少なくとも一部が網目状に連通してもよい。凝固ステップで第1の発泡を第2の発泡の平均容積より小さい平均容積に形成することができる。凝固ステップで第1の発泡を縦長円錐状に形成し、第2の発泡を球状に形成することができる。塗布ステップで有機溶媒に溶解させる樹脂をポリウレタン樹脂としてもよい。準備ステップで、樹脂溶液が、樹脂溶液全量に対して0.2〜5重量パーセントの親水性界面活性剤を含むようにしてもよい。また、凝固ステップで凝固した樹脂の基材が剥離された面側ないし基材が剥離された面と反対の面側をバフ処理またはスライス処理で研削する研削ステップを更に含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂溶液の凝固中に基材から剥離することで、厚み方向で発泡構造の異なる発泡体が1種類の樹脂で形成されるため、研磨加工時にクッション性を確保しつつ長期にわたり研磨性能を発揮することができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した実施形態の研磨パッドを模式的に示す断面図である。
【図2】実施形態の研磨パッドの製造工程の概略を示す工程図である。
【図3】研磨パッドの断面を示す走査型電子顕微鏡写真であり、(A)は実施形態の研磨パッド、(B)は従来の研磨パッドをそれぞれ示す。
【図4】研磨パッドの発泡形状を示す走査型電子顕微鏡写真であり、(A)はウレタン発泡体のクッション部と中間部とを研削除去したときの研磨部の中間部側の面を示し、(B)はウレタン発泡体の研磨部と中間部とを研削除去したときのクッション部の中間部側の面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を適用し製造した研磨パッドの実施の形態について説明する。
【0014】
(研磨パッド)
図1に示すように、本実施形態の研磨パッド10は、湿式成膜法で一体形成されたポリウレタン樹脂製のウレタン発泡体(樹脂製シート)2を備えている。ウレタン発泡体2は、被研磨物を研磨加工するための研磨面Pを有し発泡4が形成された研磨部2aと、発泡5が形成されたクッション部2bと、発泡4および発泡5が非形成の中間部2cとを有している。
【0015】
研磨部2aは、研磨面Pの近傍で厚さ数μmにわたり緻密な微多孔が形成されたスキン層(表面層)21を有している。すなわち、スキン層21は微多孔構造を有している。研磨部2aのスキン層21より内側(内部)には、多数の発泡(第1の発泡)4が略均等に分散した状態で形成されている。発泡4は、丸みを帯びた縦長円錐状(断面縦長三角状)に形成されており、研磨面P側の孔径が研磨面Pと反対の面(以下、裏面Qという。)側より小さく形成されている。すなわち、発泡4は研磨面P側で縮径されている。発泡4の縦長方向の大きさは、研磨部2aの厚さの範囲でバラツキを有している。発泡4同士の間のポリウレタン樹脂中には、発泡4より小さい図示を省略した発泡が形成されている。研磨部2aでは、スキン層21の微多孔、発泡4および図示を省略した発泡が網目状に連通しており、発泡が連続発泡状に形成された連続発泡構造を有している。
【0016】
クッション部2bは、研磨部2aより裏面Q側に形成されており、裏面Qの近傍で厚さ数μmにわたり緻密な微多孔が形成されたスキン層22を有している。すなわち、スキン層22は微多孔構造を有している。クッション部2bのスキン層22より内側(内部)には、多数の発泡(第2の発泡)5が略均等に分散した状態で形成されている。発泡5は、球状(断面円形状)に形成されている。発泡5同士の間のポリウレタン樹脂中には、発泡5より小さい図示しない発泡が形成されている。クッション部2bでは、スキン層22の微多孔、発泡5および図示しない発泡が網目状に連通しており、発泡が連続発泡状に形成された連続発泡構造を有している。
【0017】
中間部2cは、研磨部2aとクッション部2bとの間に形成されている。ウレタン発泡体2が1つのウレタン樹脂のみで形成されたことから、研磨部2aとクッション部2bとが中間部2cでつながれている。中間部2cには、発泡4および発泡5が形成されておらず、発泡4および発泡5より小さい径の連通孔(不図示)が形成されている。発泡4および発泡5の一部は、中間部2cに形成された連通孔で連通している。本例では、ウレタン発泡体2の厚みが0.3〜2.0mmの範囲に調整されており、湿式成膜時の条件にもよるが、中間部2cの厚みが20〜200μmの範囲で形成されている。このため、研磨部2a、クッション部2bの厚みがいずれも概ね100〜800μmの範囲となる。ウレタン発泡体2では、研磨部2a、クッション部2bがそれぞれ連続発泡構造を有しており、中間部2cに発泡4および発泡5の一部を連通する連通孔が形成されている。このため、ウレタン発泡体2は、全体として連続発泡体である。
【0018】
クッション部2bに形成された発泡5は、発泡径が研磨部2aに形成された発泡4の発泡径より大きくなる。発泡4が発泡5の平均容積より小さい平均容積を有するため、クッション部2bで発泡5の占める空隙割合が研磨部2aで発泡4の占める空隙割合より大きくなり、クッション部2bの密度が研磨部2aの密度より小さくなる。
【0019】
また、研磨パッド10は、ウレタン発泡体2の裏面Q側に、研磨機に研磨パッド10を装着するための両面テープ7が貼り合わされている。両面テープ7は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製フィルム等の可撓性フィルムの基材を有しており、基材の両面にアクリル系接着剤等の感圧型接着剤層(不図示)がそれぞれ形成されている。両面テープ7は、基材の一面側の接着剤層でウレタン発泡体2と貼り合わされており、他面側(ウレタン発泡体2と反対側)の接着剤層が剥離紙8で覆われている。なお、この両面テープ7の基材は、研磨パッド10の基材を兼ねている。
【0020】
(研磨パッドの製造)
図2に示すように、研磨パッド10は、湿式成膜法により1枚のシート状のウレタン発泡体2を一体形成し、ウレタン発泡体2と両面テープ7とを貼り合わせることで製造される。湿式成膜法では、ポリウレタン樹脂溶液を準備する準備工程(準備ステップ)、成膜基材にポリウレタン樹脂溶液を塗布する塗布工程(塗布ステップ)、成膜基材に塗布したポリウレタン樹脂溶液を凝固液中に案内し浸漬させる浸漬工程(凝固ステップの一部)、凝固液中で成膜基材から剥離しポリウレタン樹脂を凝固再生させる剥離工程(凝固ステップの一部)、シート状のポリウレタン樹脂を洗浄し乾燥させる洗浄・乾燥工程を経てウレタン発泡体2が作製される。以下、ウレタン発泡体2の作製、ウレタン発泡体2と両面テープ7との貼り合わせの順に説明する。
【0021】
ウレタン発泡体2の作製では、準備工程で、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)および添加剤を混合してポリウレタン樹脂を溶解させる。ポリウレタン樹脂は、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から選択して用い、例えば、ポリウレタン樹脂が30%となるようにDMFに溶解させる。添加剤としては、発泡4、発泡5の大きさや量(個数)を制御するため、カーボンブラック等の顔料、発泡を促進させる親水性界面活性剤、ポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性界面活性剤等を用いることができる。親水性界面活性剤は、ポリウレタン樹脂溶液の全量に対して、0.2〜5重量%の範囲で混合することが好ましい。親水性界面活性剤の量が0.2重量%未満では、凝固液とDMFとの置換がスムーズに進行せず、気泡が小さくなる。反対に、親水性界面活性剤の量が5重量%を超えると、凝固液とDMFとの置換の進行が速くなりすぎるため、半凝固の状態が短くなり、上述したウレタン発泡体2の構造を得ることが難しくなる。得られた溶液を濾過することで凝集塊等を除去した後、真空下で脱泡してポリウレタン樹脂溶液を得る。
【0022】
塗布工程では、準備工程で得られたポリウレタン樹脂溶液を常温下でナイフコータ等により帯状の成膜基材にシート状に略均一に塗布する。このとき、ナイフコータ等と成膜基材との間隙(クリアランス)を調整することで、ポリウレタン樹脂溶液の塗布厚さ(塗布量)が調整される。成膜基材としては、布帛や不織布等を用いることもできるが、次工程の凝固再生工程で成膜基材を剥離することを考慮すれば、表面が平滑に形成された樹脂製フィルムを用いることが望ましい。成膜基材には、本例では、表面平滑性を有するPET製フィルムが用いられる。また、成膜基材にポリウレタン樹脂溶液を塗布する前に、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCと略記する。)等の剥離剤を塗布しておくことで、次工程における剥離性を良化することができる。本例では、PET製フィルムの成膜基材が、予め、CMCでコーティングされている。
【0023】
浸漬工程では、成膜基材に塗布されたポリウレタン樹脂溶液を、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液中に案内し浸漬させる。凝固液には、ポリウレタン樹脂の凝固再生速度を調整するために、DMFやDMF以外の極性溶媒等の有機溶媒を添加してもよい。本例では、凝固液として水が使用される。凝固液中でポリウレタン樹脂溶液が凝固し、連続発泡構造を有するポリウレタン樹脂が凝固再生する。凝固液中では、まず、ポリウレタン樹脂溶液と凝固液との界面に皮膜が形成され、被膜の直近のポリウレタン樹脂中にスキン層21を構成する無数の微多孔が形成される。その後、ポリウレタン樹脂溶液中のDMFの凝固液中への拡散と、ウレタン樹脂への水の浸入の協調現象とによりポリウレタン樹脂の凝固再生が進行する。ポリウレタン樹脂は凝集力が大きいために皮膜表面で急速に凝固が起こり、内部のウレタン樹脂含量が減少する。そして、表面に形成した緻密気孔の皮膜により凝固液中への溶剤の拡散が抑制されて、巨大な気孔が内部に形成される。DMFがポリウレタン樹脂溶液から脱溶媒し、DMFと凝固液とが置換することで、スキン層21より内側のポリウレタン樹脂中に発泡4および図示を省略した発泡が形成され、スキン層21の微多孔、発泡4および図示を省略した発泡が網目状に連通する。このとき、成膜基材のPET製フィルムが水を浸透させないため、ポリウレタン樹脂溶液の表面側(スキン層21側)で脱溶媒が生じて成膜基材側が表面側より大きな発泡4が形成される。
【0024】
剥離工程では、ポリウレタン樹脂の凝固再生が完了する前、すなわち、成膜基材に塗布したポリウレタン樹脂溶液中のDMFの全量が凝固液の水と置換される前に、凝固液中で凝固再生中のポリウレタン樹脂を成膜基材から剥離する。換言すれば、ポリウレタン樹脂の凝固再生が不完全の状態、すなわち、スキン層21側で塗布厚さのおよそ1/2程度のポリウレタン樹脂が凝固再生し、成膜基材側にDMFを含む状態で成膜基材から剥離される。このとき、少なくとも成膜基材近傍のポリウレタン樹脂溶液がゲル状態である。ここでいう「ゲル状態」は、凝固液中では成膜基材から剥離可能であるものの、剥離面同士が接着性を有しており、また、大気中では成膜基材に樹脂が残る粘着質な(タック性を有する)状態のことである。成膜基材から剥離するタイミングは、凝固液の組成や温度、上述した塗布工程での塗布厚さ、用いたポリウレタン樹脂の種類、配合した添加剤等により調整される。例えば、凝固液を温度20℃の水としてポリウレタン樹脂溶液を成膜基材に2mmの塗布厚さで塗布した場合、3分後には剥離可能な半凝固(ゲル)状態となるが、10分後では凝固再生がほぼ完了した状態となる。成膜基材には、表面平滑性を有するPET製フィルムが用いられており、剥離剤のCMCが塗布されているため、ポリウレタン樹脂の凝固再生が不完全な状態でも容易に成膜基材から剥離することができる。成膜基材から剥離した後は、スキン層21側から凝固再生が進行することに加えて、成膜基材が剥離された面、すなわち、溶媒置換が進行していない面側からも凝固再生が進行する。このため、両面からDMFと水との置換が生じ、シート状のポリウレタン樹脂の凝固再生が完了する。
【0025】
ここで、成膜基材剥離後のポリウレタン樹脂の凝固再生に伴う発泡形成について説明する。凝固液中で成膜基材が剥離されると、成膜基材と接触していたポリウレタン樹脂溶液(実際にはゲル状態)の表面が凝固液に接触する。このとき、凝固液中ではスキン層21側からポリウレタン樹脂の凝固再生が進行中のため、ポリウレタン樹脂の厚み方向で密度勾配が形成されている。すなわち、凝固再生の進行に伴いスキン層21側にポリウレタン樹脂が凝集するため、成膜基材が剥離された面側の固形分濃度が小さくなっている。このため、成膜基材が剥離された面側に形成されるスキン層22では、スキン層21より緻密に微多孔が形成される。スキン層22に形成された緻密気孔の皮膜により凝固液中への溶剤(DMF)の拡散が抑制されて、巨大な空孔が内部に形成される。このとき、成膜基材が剥離された面側の固形分濃度が小さくなっているので、発泡5が発泡4より大きくなり、縦長円錐状より球状に近い形状に形成される。すなわち、図3(A)に示すように、研磨部2a(図の上側)では縦長円錐状の発泡4が形成され、クッション部2b(図の下側)では球状で発泡4より大きい発泡5が形成される。また、ポリウレタン樹脂の凝固再生が両面側(厚み方向両側)から進行するため、研磨部2aとクッション部2bとの間の部分では、発泡が非形成で、発泡4および発泡5の一部を連通する連通孔が形成された中間部2cが形成される。つまり、ウレタン発泡体2では、厚み方向中央部の中間部2cよりスキン層21側に研磨部2aの発泡4が形成され、中間部2cよりスキン層22側にクッション部2bの発泡5が形成される。このような凝固再生により得られるウレタン発泡体2は、全体として連続発泡構造を有しており、研磨部2a、中間部2c、クッション部2bがシームレスにつながれ一体形成されたものである。
【0026】
図2に示すように、洗浄・乾燥工程では、浸漬工程、剥離工程を経て凝固再生したポリウレタン樹脂を水等の洗浄液中で洗浄してポリウレタン樹脂中に残留するDMFを除去した後、乾燥させる。ポリウレタン樹脂の乾燥には、本例では、内部に熱源を有するシリンダを備えたシリンダ乾燥機が用いられる。ポリウレタン樹脂がシリンダの周面に沿って通過することで乾燥する。得られたウレタン発泡体2はロール状に巻き取られる。
【0027】
湿式成膜法で作製されたウレタン発泡体2と、両面テープ7とが貼り合わされる。このとき、ウレタン発泡体2の裏面Qと両面テープ7とが貼り合わされる。そして、円形や角形等の所望の形状に裁断した後、汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を行い、研磨パッド10を完成させる。
【0028】
(作用等)
次に、本実施形態の研磨パッド10の作用等について製造方法を中心に説明する。
【0029】
本実施形態では、剥離工程において、凝固再生中のポリウレタン樹脂溶液が凝固液中で成膜基材から剥離される。このため、スキン層21側から進行していたポリウレタン樹脂の凝固再生に加えて、成膜基材を剥離した面側からも凝固再生が進行する。スキン層21側から進行する凝固再生により成膜基材側の樹脂(固形分)濃度が低下しているため、研磨部2a(中間部2cより研磨面P側)とクッション部2b(中間部2cより裏面Q側)とで異なる発泡構造を有するウレタン発泡体2を一体形成することができる。つまり、ウレタン発泡体2を、厚み方向両側でシームレスに発泡構造の異なるシート状に形成することができる。
【0030】
また、本実施形態では、スキン層21側からとスキン層22側からとで凝固再生時の樹脂濃度が異なるため、クッション部2bに形成された発泡5の平均容積が研磨部2aに形成された発泡4の平均容積より大きくなる。このため、研磨加工時にかけられる研磨圧でクッション部2bが研磨部2aより変形しやすくなる。これにより、得られたウレタン発泡体2を用いた研磨パッド10では、クッション部2bのクッション性が研磨部2aより大きくなるので、クッション部2bでクッション性を確保することができ、研磨加工時にかけられる研磨圧をウレタン発泡体2の全体に均等化することができる。
【0031】
更に、本実施形態では、塗布工程においてポリウレタン樹脂溶液が塗布される成膜基材が、ゲル状態のポリウレタン樹脂を剥離しやすいように予め剥離剤のCMCでコーティングされている。このため、剥離工程でポリウレタン樹脂の凝固再生が不完全な状態で成膜基材から容易に剥離することができる。これにより、表裏面(厚み方向両側)で発泡構造の異なるウレタン発泡体2を得ることができる。また、剥離工程で成膜基材から剥離する操作を除けば、従来の湿式成膜法を適用することができるため、繁雑な工程を経ることなく、ウレタン発泡体2ひいては研磨パッド10を製造することができる。更には、1層のウレタン発泡体2が研磨部2aとクッション部2bとを有するので、従来のように研磨層およびクッション層の2層を貼り合わせて構成される研磨パッドでは粘着剤や両面テープによる貼り合わせを要するのに比べて、製造工程を簡略化することができる。
【0032】
本実施形態の製造方法で得られた研磨パッド10では、ウレタン発泡体2の研磨部2a、中間部2c、クッション部2bが1つの樹脂のみで形成されるため、研磨安定性を高めることができ、製品寿命を向上させることができる。すなわち、図3(B)に示すように、クッション部の大きな発泡から研磨面側に縮径しながら伸びる雫状の発泡が形成された従来のスウェード調研磨パッドでは、クッション部の発泡と研磨部の発泡とが明確に分かれて形成されていないため、研磨面での発泡径が研磨パッドの摩耗に伴い(厚みが変わるにつれて)バラツキを生じ、研磨安定性を損なうこととなる。また、研磨面に研磨加工に有効な発泡径の開孔を形成する研磨部の厚み領域が狭くなるため、安定した研磨加工が行える時間が短くなり、製品寿命が短くなる。これに対して、本実施形態の研磨パッド10では、研磨部2aとクッション部2bとが中間部2cにより明確に分けられているため、研磨部2aの研磨面Pに形成される孔のサイズのバラツキが小さくなり、安定した研磨加工を長時間行うことができる。
【0033】
ここで、1つの樹脂で形成された研磨部2a、中間部2c、クッション部2bを有する3層構造に類似のウレタン発泡体2の作用について、コイルバネを用い、(A)、(B)の2つの等価モデルを考えると、次のように説明することもできる。すなわち、(A)巻径が大きく高弾性を有する複数個のコイルバネAを平面状に並べたクッション材の場合は、一面側の全体にかかる圧力では他面側に略均等に伝達されるものの、局部的な圧力では個々のコイルバネAにかかる圧力が偏重するうえ、コイルバネAの大きな巻径の単位での応答となり略均等に伝達され難くなる。これに対して、(B)巻径を小さくして弾性を低くしたコイルバネBを用いコイルバネAより多くの個数を平面状に並べたクッション材の場合は、全体にかかる圧力が略均等に伝達されることはもちろん、巻径を小さくしたことで即応性に優れるため、局部的な圧力でもコイルバネBの小さな巻径の単位で応答でき伝達される。(A)が研磨層およびクッション層を粘着剤を介して貼り合わせた従来の研磨パッドに対応し、(B)が1つの樹脂のみで形成された3層構造を有する本実施形態の研磨パッド10に対応する。従って、本実施形態のウレタン発泡体2のように、シームレスに一体形成されたことで、被研磨物の微小な凹凸に対応してクッション部2bのクッション応答性が高められることが説明できる。
【0034】
また、研磨パッド10では、クッション部2bに形成された発泡5が研磨部2aに形成された発泡4の平均容積より大きい平均容積を有している。このため、クッション部2b中で発泡5の占める空隙割合が研磨部2a中で発泡4の占める空隙割合より大きくなり、研磨圧でクッション部2bが研磨部2aより変形しやすくなる。これにより、研磨パッド10の全体としてクッション性が確保され、被研磨物にかかる研磨圧が均等化されるため、被研磨物の平坦性を向上させることができる。換言すれば、研磨パッド10では、同一成分で一体形成されたウレタン発泡体2が厚さ方向で擬似的な3層構造を有するため、研磨加工時に剥離の心配がなく、クッション性を十分兼ね備えることとなる。
【0035】
更に、研磨パッド10では、中間部2cがウレタン発泡体2の厚み方向略中央部に形成されている。このため、研磨部2aとクッション部2bとがほぼ同じ厚さに形成される。研磨部2aの厚さがクッション部2bの厚さより小さいと、クッション性を高めることができるものの、研磨加工に有効な研磨部2aの厚さが小さくなる分で研磨パッド10の寿命が短くなる。反対に、研磨部2aの厚さがクッション部2bの厚さより大きくなると、長寿命化にはなるもののクッション性が不十分となり、被研磨物の平坦性を損なうこととなる。従って、研磨部2aとクッション部2bとをほぼ同じ厚さとすることで、クッション性および寿命性能をバランスよく確保することができる。このような研磨パッド10では、例えば、高精度な平坦性を要求される半導体デバイスの研磨加工に好適に使用することができる。
【0036】
また更に、研磨パッド10では、ウレタン発泡体2が湿式成膜法で形成されることから発泡4および発泡5が網目状に連通している。このため、研磨層とクッション層とを貼り合わせて形成した従来の研磨パッドと比べて、研磨加工時に供給される研磨液がウレタン発泡体2の内部で移動しやすくなり、研磨加工で生じた研磨屑を発泡4、発泡5を通じて排出しやすくなる。これにより、研磨面Pおよび被研磨物間に略均等に研磨液が供給されると共に、研磨屑が効率よく排出されるため、研磨効率を向上させ被研磨物の平坦性向上を図ることができる。
【0037】
従来湿式成膜法で形成された研磨層を有する研磨パッドには、例えば、クッション層を有していない研磨パッドや、クッション性が不十分な研磨パッドがある。これらのクッション性を有していない、または、クッション性が不十分な研磨パッドを研磨加工に使用した場合、研磨パッドの変形が不十分なため、研磨パッド表面(研磨面)、ひいては、被研磨物に研磨装置から受ける研磨圧(押圧力)が均等化されず、被研磨物の加工面全体を略均一に平坦化することが難しくなる。一方、ウレタン発泡体の研磨層とクッション層とを貼り合わせて形成した研磨パッドでは、貼り合わせに使用する粘着剤等の層がクッション層の即応性を阻害するおそれがあり、研磨加工時に研磨層とクッション層とが剥離することがある。この剥離の問題を解消するためにクッション性を有する1枚の発泡シートで形成した研磨パッドも知られているが、発泡分布の差が不十分でクッション性を発揮させることが難しくなる。このため、被研磨物に対する研磨圧を均等化できず被研磨物の平坦性の均一性を達成することが難しくなる。本実施形態は、これらの問題を解決することができる研磨パッドである。
【0038】
なお、本実施形態の製造方法では、塗布工程でポリウレタン樹脂溶液を塗布する成膜基材を予めコーティングする剥離剤として、CMCを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、CMC以外に、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール等の水溶性の剥離剤を用いてもよい。また、ポリウレタン樹脂溶液を塗布する成膜基材として、PET製フィルムを例示したが、剥離工程で凝固再生中のポリウレタン樹脂を成膜基材から剥離することを考慮すれば、表面平滑性を有する樹脂製であることが好ましい。本実施形態以外の成膜基材としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンを挙げることができる。成膜基材の表面平滑性の程度については、特に制限されるものではなく、ポリウレタン樹脂溶液がゲル状態のときに剥離することができる程度であればよい。
【0039】
また、本実施形態の製造方法では、特に言及していないが、洗浄・乾燥工程後に、得られたウレタン発泡体2の研磨面P側ないし裏面Q側をバフ処理またはスライス処理で研削する研削工程を経るようにしてもよい。バフ処理やスライス処理によりウレタン発泡体2の厚さの均一化を図ることができるため、被研磨物に対する押圧力を一層均等化し、被研磨物の平坦性を向上させることができる。
【0040】
更に、本実施形態では、中間部2cがウレタン発泡体2の厚み方向中央部に形成された例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。凝固再生工程で、ポリウレタン樹脂の種類、凝固液の組成や温度等により成膜基材から剥離するタイミングを調整することで、ウレタン発泡体2の厚み方向で中間部2cの形成位置を調整することができる。これにより、被研磨物にあわせてクッション性を適正化した研磨パッド10を得ることができるが、クッション性および寿命のバランスを考慮すれば、中間部2cが厚み方向中央部に形成されることが好ましい。
【0041】
また更に、本実施形態では、樹脂シートとしてポリウレタン樹脂の湿式成膜法によるウレタン発泡体2を用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリウレタン樹脂に代えてポリエチレンやポリエステル等の樹脂を用いてもよく、湿式成膜法で連続発泡構造が形成されるようにすればよい。
【0042】
更にまた、本実施形態では、ウレタン発泡体2の裏面Qに基材を有する両面テープ7を貼り合わせ、両面テープの基材が研磨パッド10の基材を兼ねる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、基材を用いることなく接着剤のみをウレタン発泡体2の裏面Qに配しておくことで、研磨機の定盤への装着を行うことができる。また、両面テープ7の基材に代えて別の基材を貼り合わせるようにしてもよい。ウレタン発泡体2が柔軟性を有していることを考慮すれば、研磨パッド10の搬送時や定盤への装着時の取扱いを容易にするため、基材を有していることが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、本実施形態に従い製造した研磨パッド10の実施例について説明する。なお、比較のために製造した比較例の研磨パッドについても併記する。
【0044】
(実施例1)
実施例1では、ウレタン発泡体2の作製にポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ポリウレタン樹脂を用いた。得られたウレタン発泡体2とPET製の基材を有する両面テープ7とを貼り合わせ研磨パッド10を製造した。
【0045】
(比較例1)
比較例1では、凝固再生工程において成膜基材を剥離しないこと以外は実施例1と同様にして研磨パッドを製造した。すなわち、比較例1の研磨パッドは、従来の研磨パッドである。
【0046】
(評価)
各実施例および比較例の研磨パッドについて、断面を走査型電子顕微鏡で観察した。この結果、実施例1の研磨パッド10では、図3(A)に示すように、小さな発泡径を維持した縦長の発泡4が形成された研磨部2a、球状の発泡5が形成されたクッション部2b、中間部2cが形成されていることが確認された。これに対して、従来の湿式凝固法により作製された比較例1の研磨パッドでは、図3(B)に示すように、研磨部とクッション部との境となる中間部が形成されず、厚み全体にわたる連続発泡が形成されていた。また、実施例1のウレタン発泡体2から、裏面Q側を研削処理しクッション部2bと中間部2cとを除去することで得られた研磨部2aの試料、研磨面P側を研削処理し研磨部2aと中間部2cとを除去することで得られたクッション部2bの試料について、研削処理した面、すなわち、中間部2c側の面での発泡形状を観察した。この結果、研磨部2aの中間部2c側の面では、図4(A)に示すように、発泡が比較的細かく整然と形成されていることが判った。これに対して、クッション部2bの中間部2c側の面では、図4(B)に示すように、研磨部2aと比べて発泡が大きく比較的乱れた状態で形成されていることが判った。実施例1および比較例1の研磨パッドで、一般的な研磨条件でハードディスク用アルミニウム基板の研磨加工を繰り返し行った結果、比較例1の研磨パッドでは比較的早期に研磨性能が低下したのに対して、実施例1の研磨パッド10では長期にわたり安定した研磨性能の得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明はクッション性を確保しつつ長期にわたり研磨性能を発揮することができる研磨パッドの製造方法を提供するものであるため、研磨パッドの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0048】
P 研磨面
2 ウレタン発泡体(樹脂シート)
2a 研磨部
2b クッション部
2c 中間部
4 発泡
5 発泡
10 研磨パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡構造を有する樹脂製シートを備えた研磨パッドの製造方法であって、
有機溶媒に樹脂を溶解させた樹脂溶液を準備する準備ステップと、
前記準備ステップで準備された樹脂溶液を基材にシート状に塗布する塗布ステップと、
前記塗布ステップで基材に塗布された樹脂溶液を主成分が水の凝固液中に案内し、前記樹脂溶液の凝固完了前に前記凝固液中で前記基材から剥離した後、前記樹脂溶液の凝固を完了させる凝固ステップと、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記凝固ステップにおいて、少なくとも前記基材近傍の樹脂溶液がゲル状態のときに前記基材から剥離されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記塗布ステップにおいて、前記基材には、前記樹脂溶液の塗布前に、剥離性を良化する剥離剤が塗布されていることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記凝固ステップにおいて、前記樹脂中には、厚み方向中央部より前記基材が剥離される面と反対の面側に多数の第1の発泡が連続発泡状に形成され、前記中央部より前記基材が剥離される面側に多数の第2の発泡が連続発泡状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記凝固ステップにおいて、前記基材に塗布された樹脂溶液の表面側および前記基材が剥離された面側に、緻密な微多孔構造を有する表面層が形成されることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記凝固ステップにおいて、前記第1および第2の発泡の少なくとも一部が網目状に連通することを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記凝固ステップにおいて、前記第1の発泡が前記第2の発泡の平均容積より小さい平均容積に形成されることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
前記凝固ステップにおいて、前記第1の発泡が縦長円錐状に形成され、前記第2の発泡が球状に形成されることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記塗布ステップにおいて、前記有機溶媒に溶解させる樹脂がポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記準備ステップにおいて、前記樹脂溶液には、前記樹脂溶液全量に対して0.2〜5重量パーセントの親水性界面活性剤が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記凝固ステップで凝固した樹脂の前記基材が剥離された面側ないし前記基材が剥離された面と反対の面側をバフ処理またはスライス処理で研削する研削ステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−179422(P2010−179422A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26098(P2009−26098)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000005359)富士紡ホールディングス株式会社 (180)
【Fターム(参考)】