説明

研磨方法および研磨装置

【課題】被加工物に対して砥石から大きな押し付け力を加えることなく、短時間で効率的に被加工面の研磨加工を行うことができるようにする。
【解決手段】被加工物Wの被加工面Sにはブラスト加工機14により粉粒体が吹き付けられ、被加工面Sは砥石25の表面よりも粗い凹凸面となった粗面にブラスト加工される。ブラスト加工により粗面に加工された後の被加工面Sは砥石25により研磨加工される。予めブラスト加工機14により被加工面を粗面に加工した後に砥石25により研磨加工することにより、砥石25から被加工物Wに大きな押し付け力を加えることなく、短時間で所定の研磨量で研磨加工することができる。研磨量が大きい場合にはブラスト加工と研磨加工とを複数回繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の表面を研磨加工するための研磨技術に関し、特に平板状の被加工物の肉厚を薄くしつつ表面を鏡面仕上げする場合に適用して好適な研磨技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやLSI等の半導体装置は、シリコン単結晶インゴットを切断機により切断して板状のシリコンウエハを形成し、シリコンウエハを基板(サブストレート)としてその表面に絶縁膜、半導体膜および金属膜等を積層して回路パターンを形成することにより製造されている。切断機においてはダイヤモンドカッターやワイヤソー等によりインゴットを切断しており、切断時にはシリコンウエハが破損しないようにするとともに、切断後のシリコンウエハの表面を鏡面仕上げするための研磨代を含めるため、半導体装置つまり半導体デバイスとして必要な厚み以上の板厚でシリコンウエハをインゴットから切断する必要がある。したがって、インゴットから切り出されたシリコンウエハは、表面を鏡面仕上げするとともに板厚を薄くするために研磨加工されている。
【0003】
また、シリコンウエハの表面に回路パターンを形成するためには、シリコンウエハは酸化膜処理、リソグラフィー処理、およびイオン注入処理等の多数の処理プロセスにおいてシリコンウエハは所定の処理が行われており、これらの処理プロセスにおいてシリコンウエハが熱変形しないようにするために、半導体デバイスとして必要な厚み以上の板厚でシリコンウエハをそれぞれの処理プロセスに搬送するようにしている。したがって、表面に回路パターンが形成された後には、シリコンウエハの板厚を薄くするために裏面を研磨加工している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコンウエハ等のような脆性材料を砥石により回路形成前のシリコンウエハの表面を研磨加工したり、回路形成後のシリコンウエハの裏面を研磨加工したりするには、砥石によるシリコンウエハに対する押し付け力を大きくすると、シリコンウエハが破損することになるとともにシリコンウエハの内部に加工歪みが発生するので、押し付け力を大きくすることができず、押し付け力を大きくすることなく研磨加工を行う必要がある。このため、シリコンウエハを研磨加工するには、加工時間を長くする必要があり、研磨加工効率を向上させることが困難であった。
【0005】
同様に、ガラス製のハードディスクを製造する場合には、ガラス製のサブストレートの表面に磁気記憶層を形成するようにしており、磁気記憶層を形成する前にはガラス製のサブストレートの表面を研磨加工しており、さらに、サファイヤをサブストレートとしてその表面にダイオード等の電子回路を積層形成する場合には、サファイヤ製の板材を研磨加工している。これらの脆性材料からなるサブストレートを研磨加工するには、砥石によりサブストレートに対して大きな押し付け力を加えることなく、研磨加工量を高めることができれば、短時間でサブストレートの加工を行うことができる。
【0006】
本発明の目的は、被加工物の表面を短時間で効率的に研磨加工を行うことができるようにすることにある。
【0007】
本発明の他の目的は、被加工物に対して砥石から大きな押し付け力を加えることなく、効率的に研磨加工を行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の研磨方法は、被加工物の被加工面に粉粒体を吹き付けて前記被加工面を微細な凹凸を有する粗面にブラスト加工するブラスト工程と、前記ブラスト工程により粗面に加工された後の被加工面を砥石により研磨加工する研磨工程とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の研磨方法は、前記ブラスト工程と前記研磨工程とを複数回繰り返し前記研磨工程により研磨加工しつつ前記被加工面を鏡面に仕上げることを特徴とする。また、本発明の研磨方法は、回転する被加工物の被加工面の一部を粗面にブラスト加工すると同時に前記被加工面の他の一部を研磨加工し、被加工物の回転により粗面加工と研磨加工とを連続的に繰り返すことを特徴とする。
【0010】
本発明の研磨装置は、被加工物を支持して回転させるワーク支持台と、前記ワーク支持台に対向する加工台に設けられ、前記被加工物の被加工面に粉粒体を吹き付けて前記被加工面を微細な凹凸を有する粗面にブラスト加工するブラスト加工機と、前記加工台に回転自在に設けられた砥石を備え、前記粗面に加工された後の前記被加工面を研磨加工する研磨加工機とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の研磨装置は、前記ワーク支持台を前記ブラスト加工機と前記研磨加工機との間を移動自在とし、前記ワーク支持台を移動させて前記ブラスト加工機により粗面に加工された前記被加工面に連続的に前記研磨加工機により研磨加工することを特徴とする。
【0012】
本発明の研磨装置は、前記ブラスト加工機に対向する位置に前記被加工物を対向させるブラスト加工ステージと、前記研磨加工機に前記被加工物を対向させる研磨加工ステージとを前記ワーク支持台に設け、別々の被加工物に前記ブラスト加工ステージでブラスト加工すると同時に前記研磨加工ステージで研磨加工し、前記ブラストステージで前記ブラスト加工機により粗面に加工された被加工物を前記研磨ステージで前記研磨加工機により連続的に研磨加工することを特徴とする。
【0013】
本発明の研磨装置は、被加工物の一部を粗面にブラスト加工するブラスト加工機と、ブラスト加工と同時に被加工物の他の一部を研磨加工する研磨加工機とを加工台に設け、被加工物の回転に伴って前記ブラスト加工機により粗面に加工された部分を前記研磨加工機により研磨加工し、被加工物の回転により粗面加工と研磨加工とを連続的に繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被加工物の被加工面を、これに粉粒体を吹き付けて砥石加工面の表面荒さよりも粗い粗面にブラスト加工した後に、砥石により研磨加工するので、研磨加工時には被加工物に対して大きな押し付け力を加えることなく、短時間で大きな研磨量で被加工面を研磨加工することができる。研磨量が多い場合には、ブラスト加工と研磨加工とを複数回繰り返すことにより、短時間で所定の研磨加工を行うことができる。
【0015】
本発明によれば、シリコンウエハ等の脆性材料からなる板状の被加工物の厚みを薄く研磨加工するとともに表面を鏡面に仕上げる場合に、被加工物には砥石から大きな押し付け力を加えることがないので、被加工物の内部に歪みを発生させることなく、効率的に研磨加工を行うことができる。
【0016】
本発明によれば、加工台に設けられたブラスト加工機と研磨加工機とにワーク支持台により被加工物を移動させて1つの被加工物に対して連続的にブラスト加工と研磨加工とを行うようにしても良い。また、ブラスト加工機に対応させて被加工物を支持するブラスト加工ステージと、研磨加工機に対応させて被加工物を支持する研磨加工ステージとをワーク支持台に設けることにより、別々の被加工物に対して同時にブラスト加工と研磨加工とを行うことができる。さらに、1つの被加工物の被加工面の一部をブラスト加工し、他の一部を研磨加工することにより、1つの被加工物を同時にブラスト加工と研磨加工とを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である研磨装置を示す側面図であり、図2(A)(B)はそれぞれ図1の研磨装置の正面図であり、図2(A)は被加工物をブラスト加工している状態を示し、図2(B)は被加工物を研磨加工している状態を示す。図3(A)は図2(A)の概略平面図であり、図3(B)は図2(B)の概略平面図である。
【0018】
図示する研磨装置10は、図1に示すように、加工台11とこの加工台11に支持コラム12を介して取り付けられるワーク支持台13とを有している。図2に示すように、加工台11にはブラスト加工機14と研磨加工機15とが隣り合って設けられている。ワーク支持台13にはワーク回転シャフト16が上下方向(Z方向)に移動自在に装着され、ワーク回転シャフト16は図示しないモータに連結されて符号R1で示すように回転自在となっている。ワーク回転シャフト16には被加工物Wを支持するチャック17が設けられており、被加工物Wはチャック17により支持されてワーク回転シャフト16により回転駆動される。チャック17は被加工物Wを吸着して保持するバキュームチャックとなっている。
【0019】
ワーク支持台13は支持コラム12に水平方向に固定されたガイドレール18に沿って水平方向(X方向)に移動自在に装着されており、図2(A)に示すように、ワーク支持台13をブラスト加工機14に対向させる位置に移動させると、被加工物Wの被加工面Sはブラスト加工機14に対向し、図2(B)に示すように、ワーク支持台13を研磨加工機15に対向させると被加工物Wの被加工面Sは研磨加工機15に対向する。このように、ブラスト加工機14と研磨加工機15はワーク支持台13の移動によりそれぞれワーク支持台13に対向するようになっている。
【0020】
ブラスト加工機14は、図3に示すように、被加工物Wの直径にほぼ対応した長さのスリット状の噴出口21が設けられたノズル22を有し、このノズル22の噴出口21からは粉粒体が空気とともに被加工物Wに向けて噴出され、被加工物Wの被加工面Sは粉粒体によりブラスト加工され、被加工面は凹凸を有する粗面に加工される。
【0021】
一方、研磨加工機15は、図2に示すように、加工台11には、符号R2で示すように、回転自在に砥石回転シャフト23が取り付けられ、この砥石回転シャフト23の先端に設けられた砥石ホルダー24には円板形状の砥石25が取り付けられるようになっている。砥石25の一方の端面は被加工面Sを研磨加工する加工面26になり、反対面は砥石ホルダー24に固定される基端面27になっており、ブラスト加工機14により粗面に加工された被加工面Sは砥石25により研磨加工される。
【0022】
図1〜図3に示す研磨装置による被加工物Wの研磨加工手順について説明すると以下の通りである。
【0023】
例えば、表面側に回路パターンが形成されたシリコンウエハを被加工物Wとしてこれの裏面側を研磨加工してウエハの厚みを薄くするために裏面側を研磨加工する場合には、図示しないワークローディング装置により被加工物Wは裏面側が加工台11を向くようにチャック17に装着される。被加工物Wがチャック17に装着されると、図2(A)および図3(A)に示すように、被加工物Wがブラスト加工機14に対向するようにワーク支持台13はブラスト加工機14に対向する位置に移動される。この状態のもとで、ワーク回転シャフト16を回転させながら、ブラスト加工機14の噴出口21から粉粒体を空気とともに被加工物Wに向けて噴出し、被加工物Wの被加工面Sを粉粒体によりブラスト加工する。これにより、被加工面Sはブラスト加工されて砥石25の加工面26の平坦度よりも粗い凹凸を有する粗面に加工される。
【0024】
次いで、ワーク支持台13を被加工物Wが研磨加工機15に対向するように水平方向に移動するとともに被加工物Wの被加工面Sが砥石25の加工面26に接触するまでワーク支持台13を下降移動させる。この状態のもとで、ワーク回転シャフト16を回転させながら、砥石25を回転させることにより、ブラスト加工機14によりブラスト加工された被加工面Sは砥石25により研磨加工される。研磨加工時には砥石25と被加工物Wとの間には研磨液が供給される。このように、まずブラスト工程により粗面となった被加工面Sを砥石25により研磨加工すると、砥石25による被加工物Wに対する押し付け力を小さくしても、砥石25の加工面26の凹凸よりも粗い凹凸面にブラスト加工された被加工面Sを研磨加工するので、短時間で迅速に所定の研磨量で研磨加工することができる。しかも、押し付け力を小さくしても研磨加工することができるので、被加工物Wの内部に歪みを発生させることなく無歪みの研磨加工を行うことができる。
【0025】
被加工物Wの被加工面Sを研磨加工により加工する量が多い場合には、ブラスト工程と研磨工程とを複数回繰り返すことにより、短時間で所望の厚みまで被加工物Wの厚みを薄くすることができる。繰り返す回数は研磨加工により除去する寸法によって任意に設定される。
【0026】
砥石25は砥粒と砥粒相互を連結する結合材とにより形成され、内部には微細な気孔が形成された多孔質体となっている。このように、砥石は硬質の粒子つまり砥粒を結合材で固めて形成される工具であり、砥石を用いた加工には、研削加工と研磨加工とがあり、習慣的には荒加工は研削加工と言われ、仕上げ加工は研磨加工と言われている。これらの加工は、砥石を被加工物に押し付けた状態のもとで砥石と被加工物とを相対的に移動させることによって被加工面を砥粒により多数の切りくずとして削り取る加工であって、両者は機能的には同義でありこの明細書では両者を含めて研磨加工と言い、研磨加工には砥石と被加工物との間に研磨液を供給する場合と研磨液を供給しない場合があるが、図示する場合には研磨液を供給するようにしている。
【0027】
図4は図1〜図3に示された砥石25の断面図であり、図5は図4の一部拡大断面図であり、図6は図4における6−6線に沿う断面図である。
【0028】
砥石25は、図5に示すように、加工面26から所定の厚みtの部分が研磨層31であり、その下側の部分が砥石基部32であり、砥石基部32の厚み寸法はTとなっている。砥石基部32には図6に示すように同心円状に複数の流体流路33が形成され、それぞれの流体流路33を相互に連通させるためにそれぞれの流体流路33に対して厚み方向に基端面27側にずらして放射状に複数の流体流路34が形成されている。さらにそれぞれの流体流路34に連通する給排口35が砥石基部32の径方向中央部に外部に開口して形成されており、砥石25を砥石ホルダー24に取り付けると、砥石ホルダー24に形成された流体流路36に給排口35が対向して連通するようになっている。したがって、それぞれの流体流路33は流体流路34および給排口35を介して流体流路36に連通する。
【0029】
研磨層31の厚みtの部分と砥石基部32のうち流体流路33が形成された厚みt1の部分は、気孔が連通した開気孔(open pore)構造の多孔質体となっており、他の部分は気孔が閉じられた閉気孔(close pore)構造の多孔質体となっている。開気孔構造の多孔質体における気孔率は20%以下であり、開気孔構造の多孔質体における気孔率は20〜60%となっている。このように、砥石基部32の基端面27側は閉気孔構造となっているので、流体流路36から研磨液等の加圧流体を供給すると、閉気孔構造の砥石基部32の外周面からは加圧流体は漏出することなく、開気孔構造の研磨層31を加圧流体が透過して加圧流体は加工面26に供給される。一方、流体流路36に負圧供給源を連通させると、砥石基部32の外周面からは外部の流体が浸入することなく、加工面26に供給された研磨液は開気孔構造の研磨層31を透過して給排口35から排出される。ただし、砥石25全体を開気孔構造の多孔質体により形成し、砥石25のうち加工面26以外の外面つまり基端面27と外周面とを封孔処理し、これらの面からの流体の漏出と流入とを防止するようにしても良い。
【0030】
図4に示すように、砥石25は砥石ホルダー24を介して研磨装置の砥石回転シャフト23に取り付けられるようになっており、砥石回転シャフト23を駆動する図示しないモータにより砥石25は砥石ホルダー24を介して回転駆動される。砥石回転シャフト23に形成された流体案内流路37は、ロータリジョイント38を介して真空ポンプ41に接続され、真空ポンプ41とロータリジョイント38とを接続する流体案内流路42aには流路開閉弁43aと圧力調整弁44aとが取り付けられている。したがって、流路開閉弁43aを開いた状態のもとで真空ポンプ41を作動させると、研磨層31の気孔は、流体案内流路37を介して真空ポンプ41に連通して大気圧よりも低い真空状態つまり負圧状態となり、砥石25の加工面26には外部から気孔内に周囲空気や液体が流入することになる。
【0031】
ロータリジョイント38には加圧ポンプ45が接続され、加圧ポンプ45とロータリジョイント38とを接続する流体案内流路42bには流路開閉弁43bと圧力調整弁44bとが取り付けられている。加圧ポンプ45は容器46内に収容された研磨液等の液体を加圧して吐出し、流路開閉弁43bを開いた状態のもとで加圧ポンプ45を作動させると、液体が流体案内流路37を介して研磨層31の気孔内に入り込んで加工面26から流出することになる。
【0032】
ワーク回転シャフト16に設けられたチャック17は、複数の吸気孔47形成されたチャック板48を有し、バキュームチャックとなっている。それぞれの吸気孔47に連通する真空流路49がワーク回転シャフト16に形成されており、真空流路49はロータリジョイント50を介して真空ポンプ51に接続され、真空ポンプ51とロータリジョイント50とを接続する真空供給路52には流路開閉弁53が取り付けられている。したがって、真空ポンプ51を作動させて真空流路49を大気圧よりも低い圧力にすると、吸気孔47内に外部空気が流入して被加工物Wはチャック17に真空吸着されて保持される。
【0033】
図6に示すように、それぞれの流体流路33は、径方向に等ピッチとなって形成され、加工面26に沿う平面に分散して形成されているので、給排口35から研磨液等の加圧流体を供給すると加工面26全体から加圧流体が流出し、被加工物Wの被加工面Sと砥石25の加工面26との間には研磨液等の流体の流れが生成される。一方、給排口35から負圧流体を供給すると加工面26全体から外部の流体が研磨層31内に浸入することになり、被加工物Wの被加工面Sと砥石25の加工面26との間には外部空気や研磨液等の流体の流れが生成される。
【0034】
なお、流体流路33の形状としては、図6に示すような同心円状に限られず、渦巻き状に連なった形状としても良く、格子状としても良い。渦巻き状ないし格子状に流体流路33を形成すると、流体流路33は全体的に連なった形状となるので、流体流路34を設けることなく、流体流路33に直接給排口35を連通させることができる。
【0035】
砥石25を構成する砥粒としては、ダイヤモンドつまりダイヤモンド砥粒が使用されており、その平均粒径は0.1〜300μmとなっている。ただし、ダイヤモンドに代えて、立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒つまりCBNを使用するようにしても良く、ダイヤモンドとCBNとの混合物を使用するようにしても良く、さらには、炭化ケイ素SiCつまりGC、ムライト(3Al2O3-2SiO2)、または溶融アルミナAl2O3つまりWAの単体或いはこれらの混合体を使用するようにしても良い。砥石25を構成する結合材としては、ビトリファイドボンドが使用されているが、それぞれの結合材としてはビトリファイドボンド以外に、レジノイドボンド、メタルボンド、電着ボンドなど種々のボンド材を使用することができる。
【0036】
図7は本発明の他の実施の形態である研磨装置10aを示す側面図であり、図8は図7に示された加工台を示す平面図である。なお、図7および図8においては、上記研磨装置10を構成する部材と共通する機能を有する部材には同一の符号が付されている。
【0037】
図7に示すように、この研磨装置10aは、図1〜図3に示した研磨装置10では加工台11の上側にワーク支持台13が設けられているのに対し、ワーク支持台13の上側に加工台11が設けられている。加工台11には上述した研磨装置10と同様に、ブラスト加工機14と研磨加工機15とが隣り合って設けられており、図7に示す場合にはブラスト加工機14と研磨加工機15とが加工台11の下側に設けられている。
【0038】
ワーク支持台13には、割り出し回転体55が回転自在に設けられており、この割り出し回転体55には回転方向90度毎に4つのワーク回転シャフト16が設けられ、それぞれのワーク回転シャフト16の先端には被加工物Wをそれぞれ支持するチャック17が設けられている。この割り出し回転体55を図8において矢印R3で示す方向に回転させるとすると、割り出し回転体55のうち、ブラスト加工機14に被加工物Wを対向させる位置がブラスト加工ステージ56になり、研磨加工機15に被加工物Wを対向させる位置が研磨加工ステージ57になり、他の2つはアイドルステージ58,59になる。このように、ワーク支持台13にはブラスト加工ステージ56と研磨加工ステージ57とが設けられているので、別々の被加工物Wにブラスト加工ステージ56でのブラスト加工と、研磨加工ステージ57での研磨加工とを同時に行うことができる。さらに、割り出し回転体55を矢印R3方向に割り出し回転させると、ブラスト加工ステージ56で粗面に加工された被加工物Wは研磨加工ステージ57で粗面が研磨加工される。
【0039】
それぞれのステージ56〜59に被加工物Wを配置した状態で割り出し回転体55を一方向に回転させると、4枚の被加工物Wのうち2枚を同時に加工することができるとともに、ブラスト加工と研磨加工とをそれぞれの被加工物Wに対して所定回数繰り返すことができる。所定回数それぞれの加工を繰り返して所定の厚みとなった被加工物Wを例えばステージ59から外部に搬出(アンローディング)し、全ての被加工物Wが外部に搬出されたら、ステージ58から順次それぞれのチャック17に新たな被加工物Wを搬入(ローディング)することができる。
【0040】
図9(A)は本発明の更に他の実施の形態である研磨装置10bを示す正面図であり、図9(B)は図9(A)の加工台11を示す平面図である。なお、図9においては、上記研磨装置10,10aを構成する部材と共通する機能を有する部材には同一の符号が付されている。この研磨装置10bは、上述した研磨装置10と同様に、加工台11には支持コラム12を介して加工台11の上方に位置させてワーク支持台13が配置されている。加工台11にはブラスト加工機14と研磨加工機15とが上記研磨装置10に示す場合よりも接近して設けられており、ワーク支持台13のチャック17に支持された被加工物Wはその一部がブラスト加工機14により粗面にブラスト加工されると同時に被加工物Wの他の部分が研磨加工機15により研磨加工される。したがって、被加工物Wをワーク回転シャフト16により回転させると、ブラスト加工機14により粗面に加工された被加工面は砥石25により連続的に研磨加工されることになる。
【0041】
上述のように、加工台11とワーク支持台13のいずれを上側としても良く、図1および図2に示すように1つの被加工物Wをブラスト加工機14と研磨加工機15との間で直線往復動させるようにしても良く、図7および図8に示すように複数の被加工物Wをワーク支持台13に支持するようにしてブラスト加工ステージ56と研磨加工ステージ57とで同時に別々の被加工物Wを加工するようにしても良い。また、図9に示すように、1枚の被加工物Wに同時にブラスト加工と研磨加工とを行うようにしても良く、この場合には表裏両面を同時に加工するようにしても良い。さらに、一台の研磨加工機によりブラスト加工と研磨加工とを行うことなく、別々の加工機によりブラスト加工と研磨加工とを行うようにしても良い。
【0042】
本発明は前記実施の形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図示する砥石25は平坦な加工面26が設けられて平面を研磨加工するためのディスク状の砥石であるが、ディスク状に代えてカップ状ないしリング状に砥石を形成し、その端面を加工面として平面研磨加工を行うようにしても良い。また、被加工物の円筒形状の外周面を加工する円筒研磨加工や、被加工物の円筒形状の内周面を加工する内面研磨加工を行うための砥石にも本発明を適用して、被加工物を研磨加工するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態である研磨装置を示す側面図である。
【図2】(A)(B)はそれぞれ図1の研磨装置の正面図であり、(A)は被加工物をブラスト加工している状態を示し、(B)は被加工物を研磨加工している状態を示す。
【図3】(A)は図2(A)の概略平面図であり、(B)は図2(B)の概略平面図である。
【図4】図1〜図3に示された砥石の断面図である。
【図5】図4の一部拡大断面図である。
【図6】図4における6−6線に沿う断面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態である研磨装置を示す側面図である。
【図8】図7に示された加工台を示す平面図である。
【図9】(A)は本発明の更に他の実施の形態である研磨装置を示す正面図であり、(B)は(A)の加工台を示す平面図である。
【符号の説明】
【0044】
10〜10b 研磨装置
11 加工台
13 ワーク支持台
14 ブラスト加工機
15 研磨加工機
16 ワーク回転シャフト
17 チャック
21 噴出口
22 ノズル
23 砥石回転シャフト
24 砥石ホルダー
25 砥石
26 加工面
27 基端面
31 研磨層
32 砥石基部
33 流体流路
55 割り出し回転体
56 ブラスト加工ステージ
57 研磨加工ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の被加工面に粉粒体を吹き付けて前記被加工面を凹凸を有する粗面にブラスト加工するブラスト工程と、
前記ブラスト工程により粗面に加工された後の被加工面を砥石により研磨加工する研磨工程とを有することを特徴とする研磨方法。
【請求項2】
請求項1記載の研磨方法において、前記ブラスト工程と前記研磨工程とを複数回繰り返し前記研磨工程により研磨加工しつつ前記被加工面を鏡面に仕上げることを特徴とする研磨方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の研磨方法において、回転する被加工物の被加工面の一部を粗面にブラスト加工すると同時に前記被加工面の他の一部を研磨加工し、被加工物の回転により粗面加工と研磨加工とを連続的に繰り返すことを特徴とする研磨方法。
【請求項4】
被加工物を支持して回転させるワーク支持台と、
前記ワーク支持台に対向する加工台に設けられ、前記被加工物の被加工面に粉粒体を吹き付けて前記被加工面を凹凸を有する粗面にブラスト加工するブラスト加工機と、
前記加工台に回転自在に設けられた砥石を備え、前記粗面に加工された後の前記被加工面を研磨加工する研磨加工機とを有することを特徴とする研磨装置。
【請求項5】
請求項4記載の研磨装置において、前記ワーク支持台を前記ブラスト加工機と前記研磨加工機との間を移動自在とし、前記ワーク支持台を移動させて前記ブラスト加工機により粗面に加工された前記被加工面に連続的に前記研磨加工機により研磨加工することを特徴とする研磨装置。
【請求項6】
請求項4記載の研磨装置において、前記ブラスト加工機に対向する位置に前記被加工物を対向させるブラスト加工ステージと、前記研磨加工機に前記被加工物を対向させる研磨加工ステージとを前記ワーク支持台に設け、別々の被加工物に前記ブラスト加工ステージでブラスト加工すると同時に前記研磨加工ステージで研磨加工し、前記ブラストステージで前記ブラスト加工機により粗面に加工された被加工物を前記研磨ステージで前記研磨加工機により連続的に研磨加工することを特徴とする研磨装置。
【請求項7】
請求項4記載の研磨装置において、被加工物の一部を粗面にブラスト加工するブラスト加工機と、ブラスト加工と同時に被加工物の他の一部を研磨加工する研磨加工機とを加工台に設け、被加工物の回転に伴って前記ブラスト加工機により粗面に加工された部分を前記研磨加工機により研磨加工し、前記被加工物の回転により粗面加工と研磨加工とを連続的に繰り返すことを特徴とする研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−118120(P2007−118120A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312335(P2005−312335)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(398046921)株式会社ナノテム (11)
【Fターム(参考)】