説明

研磨装置、研磨パッドおよび研磨情報管理システム

【課題】作動条件の調整、および研磨の再現性の確保を容易にする。
【解決手段】研磨パッド1内に、センサ7と、前記センサ7により得られる検出情報を記憶するメモリ9と、電源部11の駆動により外部と非接触で通信する通信手段(コントロールIC10)とが埋設されている。上記構成の研磨パッド1と、研磨パッドに備える通信手段10と非接触で通信が可能な通信部6とを含んで研磨情報管理システムが構成される。さらに、研磨装置は、上記構成の研磨パッド1と、該研磨パッドに備える通信手段10と非接触で送受信が可能な通信部6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてシリコンウェハなどの半導体ウェハを研磨する研磨装置、この研磨装置に使用する研磨パッド、および研磨情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の製造分野では、半導体装置の高集積化に伴い、半導体ウェハの平坦化の技術が必要不可欠の技術となっている。その平坦化技術の代表例がCMP(Chemical Mechanical Polishing)の技術である。
【0003】
CMP方式の研磨装置では、ウェハが保持された上定盤を、研磨パッドを装着した下定盤上に置き、ウェハと研磨パッドとを加圧した状態で、その間にスラリーを供給しながら、ウェハと研磨パッドとを相対的に摺動させることで研磨を行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−49448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の研磨装置におけるCMPの研磨工程は、装置の各構成要素の相互作用により研磨中の状況(具体的には、被研磨物の温度、圧力、回転数等の状態)が変化する不安定な工程と言える。
【0006】
例えば、ウェハの研磨では、研磨パッドとスラリー中の砥粒と被研磨物であるウェハとの摩擦熱、およびスラリーの化学反応による発熱等により、ウェハ全体の温度が上昇したり、ウェハの温度分布が不均一になったりする。
【0007】
研磨工程では、上記のような状況をモニターすることで、研磨後の被研磨物の状態を予測して、研磨装置の作動条件をその研磨の目的に合わせて調整し、そうすることで、研磨の再現性を確保する必要がある。
【0008】
しかしながら、研磨動作中に、被研磨物の温度等の状況をモニターするには、研磨装置に、対応した検出手段を付設する必要があり、装置の構成が複雑化するばかりか、コストが嵩む。
【0009】
このうち、被研磨物の温度の検出には、研磨パッドに温度センサを埋設することが試みられており(例えば、上記特許文献1)、この研磨パッドを使用すれば、より直接的に被研磨物の温度を検出しうるが、温度センサの検出信号の取り出しにスリップリングのような機構を設ける必要があり、やはり装置の構成が複雑化する。
【0010】
以上の従来の事情から、本発明の課題は、研磨装置に複雑な構成を新たに付加することなく、研磨中の状況を示す情報を取り出し可能にすることである。
【0011】
次に、研磨装置の作動条件を調整する際、実際には、(a)上記した研磨動作中の状況を示す情報のほか、(b)研磨パッドの素材樹脂、加工温度、物性等の製造履歴(マテリアル・ヒストリー)と、(c)研磨装置において研磨動作の際に設定される回転数や加圧力等の作動条件の情報が必要である。
【0012】
このうち、上記(b)の製造履歴は、例えば、製造物のデータベースにアクセスすることで取り込むことができ、また、上記(c)の作動条件の情報は、研磨装置から取り込むことができるが、研磨装置での作動条件を調整するのに必要な上記(a)(b)(c)の情報は、別々の情報源から取り込むことになるので、作業に手数がかかり、研磨装置の作動条件を調整し再現性を確保するのは容易ではない。
【0013】
そこで、本発明の他の課題は、研磨装置の作動条件を調整するのに必要な情報を一括管理しうるようにして、作動条件の調整、および研磨の再現性の確保を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1は、研磨パッドに着目して上記課題を達成するようにしたもので、センサと、前記センサにより得られる検出情報を記憶するメモリと、電源部と、外部と非接触で通信する通信手段とが設けられている、ことを特徴とする。
【0015】
上記構成の研磨パッドを、研磨装置の所要部に装着して研磨を行うことで、研磨動作中の温度等の状況がセンサにより検出されて、その検出情報がメモリに格納され、通信手段により外部に送信される。外部に上記通信手段に対応する通信部を配置すれば、その通信部を介して研磨中の状況を示す情報がリアルタイムで得られる。
【0016】
前記通信手段は、電波方式、電磁誘導方式等、非接触で通信を行えるものであればよい。
【0017】
上記構成の研磨パッドにおいて、当該研磨パッドに埋め込まれる情報記憶モジュールを備え、前記情報記憶モジュールには、前記メモリと前記電源部と前記通信手段とが設けられているのが好ましい。
【0018】
上記のようにメモリや通信手段、電源部がモジュール化されることで、埋設されるセンサ以外の構成要素が一個所にまとまり、センサ配置の自由度が増す。
【0019】
また、上記構成の研磨パッドにおいて、前記センサを少なくとも一種類備え、温度、圧力および回転数のうちの少なくともいずれか一つを検出対象とするものである。なお、センサの検出対象は上記のものに限定されず、摩擦や摩耗量を検出するセンサであってもよい。
【0020】
さらに、上記研磨パッドにおいて、前記メモリは、当該研磨パッドが研磨装置に装着されてその研磨動作中に前記センサにより得られる検出情報のほか、当該研磨パッドの製造履歴と、前記研磨装置の作動条件とが格納されるのが好ましい。
【0021】
上記したデータのうち、製造履歴は、例えば研磨パッドの製造出荷の段階でメモリに格納しておくことができる。また、研磨装置の作動条件は、研磨パッドの研磨装置へのセット時に、外部から送信し、通信手段を介してメモリに格納することができる。
【0022】
上記のように情報が格納されると、研磨装置の作動条件の調整に必要な情報がすべて研磨パッドのメモリに集約蓄積されることになり、メモリの記憶内容を確認することで、作動条件の調整だけでなく、研磨不良が生じたような場合の解析を容易に行える。
【0023】
なお、本発明の研磨パッドは、
寿命表示器をさらに備え、
前記情報記憶モジュールは、前記メモリに記憶している前記検出情報に基づいて、前記研磨パッドの寿命判定を行い、その寿命判定結果を前記寿命表示器に表示する、
のがさらに好ましい。そうすれば、研磨パッドの寿命を精度高くユーザに報知することが可能になる。
【0024】
本発明の第2は、研磨情報管理システムに関し、本発明の第1に記載した研磨パッドと、前記研磨パッドに備える通信手段と非接触で通信が可能な通信部とを含んで研磨情報管理システムを構成したものである。
【0025】
上記構成の研磨情報管理システムでは、研磨動作中の研磨パッドから直接的に研磨の状況を示す情報が取り出せるだけでなく、外部の送受信部から研磨パッドの通信手段への送信により、研磨装置の作動条件の調整に必要なデータをすべて研磨パッドのメモリに集約し蓄積させることができ、作動条件の調整等の作業を容易に行える。
【0026】
本発明の第3は、研磨装置に関するもので、上定盤の下面に保持された被研磨物と、下定盤上に装着された研磨パッドとを接触加圧した状態で、前記被研磨物と前記研磨パッドとを相対的に摺動させて研磨を行う研磨装置において、前記研磨パッドが、本発明の第1に記載した研磨パッドであり、前記研磨パッドに備える通信手段と非接触で通信が可能な通信部を有することを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、研磨装置の側では、研磨パッドに備える通信手段に対応する通信部を設けるだけで、研磨動作中の状況を示す情報をリアルタイムで取り出すことができ、また、研磨パッドに備えるメモリには、研磨装置の作動条件の調整に必要な情報をすべて集約し蓄積させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、研磨装置に複雑な構成を新たに付加することなく、研磨中の状況を示す情報をリアルタイムで取得することができ、そのため、研磨装置の作動条件の調整、研磨の再現性の確保を容易にできる。
【0029】
また、研磨パッドのメモリには、研磨装置の作動条件の調整に必要な情報をすべて集約し蓄積させることで、情報の一元管理が可能となり、作動条件の調整や、研磨不良が生じたような場合の解析等の作業が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る研磨装置の構成図である。
【図2】上記研磨装置において研磨パッドに設けられる情報記憶モジュールの構成図である。
【図3】上記研磨パッドの部品配置を示す配置図である。
【図4】上記研磨パッドの他の部品配置を示す配置図である。
【図5】上記研磨パッドのさらに他の部品配置を示す配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1ないし図5に基づいて本発明の一実施形態に係る研磨装置を説明すると、本実施形態の研磨装置は、図1に示すように、上面に研磨パッド1が装着される下定盤2と、下面に被研磨物であるウェハWが保持される上定盤3と、スラリーの供給ノズル4と、制御部5とを備えている。
【0032】
下定盤2および上定盤3は、それぞれの軸部に連動連結されたモータ(いずれも図示せず)の駆動により縦軸周りに回転する。また、上定盤3は上下に変位可能で、下方に変位することで、下面に保持したウェハWを下定盤2上の研磨パッド1に加圧状態で接触させる。
【0033】
供給ノズル4は、下定盤2上に位置して、下定盤2に装着された研磨パッド1上にスラリーを供給する。
【0034】
制御部5は、上記した下定盤2、上定盤3および供給ノズル4等、装置の各構成要素の動作を制御するものである。
【0035】
本実施形態では、後述する研磨パッド1の構成に対応して、電波による通信が可能な通信部6を備えており、この通信部6は制御部5に接続されている。通信部6は、具体的には例えば、研磨パッド1側のRF−ID(無線認証)チップに対応するRF−IDリーダライタで構成される。
【0036】
また、本実施形態では、研磨パッド1に特徴があり、研磨パッド1は、図面上、上面を研磨面として、その厚さ内にセンサ7と、センサ7の検出出力を入力する情報記憶モジュール8とが埋設されている。
【0037】
センサ7は、研磨中の状況を検出するもので、例えば温度センサであり、圧力センサであり、回転を検出するための加速度センサであって、検出対象別の種類は特に問わない。また、一種類のセンサのみであってもよいし、検出対象が異なる複数種類のセンサであってもよい。センサ7の検出出力は、リード線を通じて情報記憶モジュール8に入力する。
【0038】
情報記憶モジュール8は、図2に示すように、メモリ9と、コントロールIC10と、電源部としてのバッテリー11と、センサ7aとを内蔵したものであり、具体的には例えばRF−ID(無線認証)チップで構成される。
【0039】
メモリ9は、書き込み読み出しが可能で、情報記憶モジュール8内部のセンサ7aや情報記憶モジュール8外部のセンサ7の検出情報を記憶する。また、メモリ9は、情報記憶モジュール8が設けられている研磨パッド1の製造もしくは出荷の段階で、その研磨パッド1の製造履歴(製造物名、ロットナンバー、製造日等)が予め書き込まれているのが好ましい。さらに、メモリ9は、通信部6からの送信情報を格納可能で、通信部6から研磨装置の作動条件のデータが送信されてくれば、これを記憶する。
【0040】
上記の記憶情報のうち、研磨動作毎の検出データと、作動条件のデータとは、具体的には、以下に示す表1のようにメモリ9に記憶される。
【0041】
【表1】

なお、情報記憶モジュール8内のセンサ7aは、情報記憶モジュール8外のセンサ7と同じものでよい。また、情報記憶モジュール8では、内部のセンサ7aを省略し、外部にのみセンサ7を設けるようにしてもよい。
【0042】
コントロールIC10は、メモリ9への情報の書き込み読み出しを行うほか、研磨装置の通信部6とアンテナ12により電波で送受信を行うもので、非接触の通信を行う通信手段として機能する。したがって、このコントロールIC10は、メモリ9に記憶されたセンサ7の検出情報を読み出して通信部6に送信し、また、通信部6からの送信を受けることで、例えば、研磨装置の作動条件のデータをメモリ9に格納する。
【0043】
図3および図4は、研磨パッド1におけるセンサ7と情報記憶モジュール8との配置形態を示しており、図3の例では、情報記憶モジュール8を円形の中心に配して、その中心からの等角の複数(4本)の放射線と、中心から広がる螺旋との交叉位置に複数(4個)のセンサ7,…を配置している。
【0044】
この配置形態では、比較的少ない数のセンサ7で、研磨パッド1全体の回転バランスを崩すことなく、研磨パッド1表面の研磨領域をカバーできる。
【0045】
図4の例では、円形の中心に配した情報記憶モジュール8に対して、等角の複数(4本)の放射線上で、それぞれ径方向一定間隔毎に複数のセンサ7,…を配置している。この配置形態では、多数のセンサ7で、研磨パッド1全体の回転バランスを崩すことなく、研磨領域をカバーできる。
【0046】
なお、図4において、円形の中心に存在するセンサは、情報記憶モジュール8の内部に設けられるもの7aであってもよいし、情報記憶モジュール8とは別体で、情報記憶モジュール8と重なる位置に設けられるもの7であってもよい。
【0047】
情報記憶モジュール8は、研磨パッド1の中心に配置することが望ましいが、中心部位以外では、回転バランスに影響を与えないことを条件に、研磨パッド1の周辺部等、研磨に直接関与しない部位に配置することが考えられる。
【0048】
上記の構成では、研磨パッド1に設けられた情報記憶モジュール8のコントロールIC10と、通信部6とは、電波により送受信を行うが、両者は電磁誘導方式で送受信を行うものであってもよく、要するに、情報記憶モジュール8の通信手段と通信部6とは、非接触で通信をできるものであればよい。
【0049】
上記構成において、研磨の際には、研磨パッド1を下定盤2に装着し、上定盤3には被研磨物である半導体ウェハWを装着する。
【0050】
研磨動作中、研磨パッド1に埋設されているセンサ7は、温度等の研磨中の状況を検出し、その情報は一旦、メモリ9に格納され、通信部6からの要求、もしくはコントロールIC10の自発動作により、メモリ9に格納されている研磨中の状況を示す情報が通信部6に送信される。これにより、研磨装置の制御部5では、リアルタイムで研磨中の状況をモニターできる。
【0051】
なお、研磨パッド1の情報記憶モジュール8のメモリ9には、予め、研磨パッド1の製造履歴を格納しておき、また、研磨を開始する際には、制御部5で設定される、下定盤2や上定盤3の回転数、ウェハW・研磨パッド1間に加える圧力等の作動条件のデータを、送受信部6から研磨パッド1の情報記憶モジュール8側に送信するようにすれば、研磨パッド1のメモリ9には、研磨中の状況を示す情報のほか、研磨装置の作動条件の調整に必要な情報がすべて集約、蓄積されることになる。そのため、メモリ9の記憶内容を読み出すことで、作動条件の調整作業を容易に行える。
【0052】
上記のように、研磨パッド1では、その情報記憶モジュール8により、研磨装置の作動条件の調整に必要な情報を一括管理しうるようになるから、例えば、研磨装置を新規に導入した場合や、被研磨物の種類を変更する場合に、上記の研磨パッド1を用い、研磨装置の作動条件の調整を行えばよい。これで、実際の研磨に即した設定ができ、そののちは、上記研磨パッド1を、センサ7や情報記憶モジュール8を有せず、本体部分は研磨パッド1と同質である研磨パッドと取り換えて研磨を行う。
【0053】
上記実施形態では、研磨装置の一部として通信部6を設けたが、通信部6は必ずしも研磨装置に付設する必要はなく、研磨装置とは独立したコンピュータ、その他のデータ処理装置に付設してもよく、通信部6と、センサ7および情報記憶モジュール8とを備えた研磨パッド1とは、研磨情報を一括管理するシステムを構成する。
【0054】
なお、情報記憶モジュール8においてコントロールIC10は、メモリ9に記憶する情報に基づいて研磨パッド1の寿命を算出し、その算出結果(寿命到達の有無)を寿命表示器(LEDランプ等)13を介してユーザ等に報知する。コントロールIC10は、センサ7、7aの種類に応じて、次のようにして研磨パッド1の寿命算出/報知を実施する。なお、寿命表示器13は、図1に示すように研磨パッド1の側面等に配置してもよいし、研磨パッド1以外(例えば制御部5)に設けてもよい。
【0055】
(センサ7、7aを加速度センサから構成する場合)
この構成は、研磨パッド1の使用期間では研磨パッド1に加速度が生じている、という知見に基づいて、研磨パッド1の寿命を判断する。すなわち、コントロールIC10は、加速度センサ7、7aが所定値以上の加速度を検知している時間長の総量をカウントアップすることで、研磨パッド1の総使用時間を計測してメモリ9に記憶したうえで、記憶している総使用時間が予め設定しておいた時間長(研磨パッド1の寿命に相当する)に達するか否かを判断し、達したと判断すると、研磨パッド1は寿命に到達したと判定する。
【0056】
(センサ7、7aを圧力センサから構成する場合)
この構成は、研磨パッド1の使用期間では研磨パッド1に圧力が生じている、という知見に基づいて研磨パッド1の寿命を判断する。すなわち、コントロールIC10は、圧力センサ7、7aが所定値以上の圧力を検知している時間長の総量をカウントアップすることで、研磨パッド1の総使用時間を計測してメモリ9に記憶する。メモリ9に記憶している総使用時間に基づいた寿命判定は加速度センサと同様である。
【0057】
(センサ7、7aを温度センサから構成する場合)
この構成は、研磨パッド1の使用期間では研磨パッド1に温度上昇が生じている、という知見に基づいて研磨パッド1の寿命を判断する。すなわち、コントロールIC10は、温度センサ7、7aが所定値以上の温度上昇を検知している時間長の総量をカウントアップすることで、研磨パッド1の総使用時間を計測してメモリ9に記憶する。メモリ9に記憶している総使用時間に基づいた寿命判定は加速度センサと同様である。
【0058】
この他、研磨パッド1の使用期間では、下定盤2や上定盤3は回転しているという知見に基づいて研磨パッド1の寿命を判断することもできる。この場合、下定盤2の回転制御部(図示省略)または上定盤3の回転制御部(図示省略)に無線送信部を設け、コントロールIC10に無線受信部(図示省略)を設ける。そのうえでコントロールIC10は、下定盤2または上定盤3から受信する回転駆動情報に基づいて研磨パッド1の研磨動作を検知し、さらに研磨動作を検知している時間長をカウントアップすることで、研磨パッド1の総使用時間を計測してメモリ9に記憶する。メモリ9に記憶している総使用時間に基づいた寿命判定は加速度センサと同様である。
【0059】
上述した実施の形態においてセンサ7、7aは、研磨パッド1の一部分の状況(温度、圧力、加速度等)を検出していたが、この他、センサ7a、またはセンサ7として、研磨パッド1の全面の状況を検出する構成であってもよい。このようなセンサとしては、圧力センシングシートを例として挙げることができる。圧力センシングシートは、例えばピエゾ特性を備えたポリマーセルから構成することができる。研磨パッド1全面を覆う大きさを備えた圧力センシングシートを研磨パッド1に設けることで、研磨パッド1全面における圧力分布の変化をリアルタイムに検出することが可能となる。
【0060】
また、複数のセンサ7、7aを設ける構成において、各センサを同一種のセンサから構成する他、各センサを異種センサ(例えば、加速度センサと圧力センサ)を組み合わせて構成することもできる。そうすれば、異種情報における相互関係に基づいて、研磨状況をさらに精度高くモニターすることができる。
【0061】
また、複数のセンサ7、7aを設ける構成における各センサの配置は、図3、図4に示す構成のみならず、図5に示すように、直線状(図5では、研磨パッド1の接線方向に沿った直線状)に配置してもよいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0062】
1 研磨パッド
2 下定盤
3 上定盤
5 制御部
6 通信部
7 センサ
8 情報記憶モジュール
9 メモリ
10 コントロールIC(通信手段)
11 バッテリー
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと、前記センサにより得られる検出情報を記憶するメモリと、電源部と、外部と非接触で通信する通信手段とが設けられている、ことを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
当該研磨パッドに埋め込まれる情報記憶モジュールを備え、
前記情報記憶モジュールには、前記メモリと前記電源部と前記通信手段とが設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記センサを少なくとも一種類備え、温度、圧力および回転数のうちの少なくともいずれか一つを検出対象とする、ことを特徴とする請求項1または2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記メモリは、当該研磨パッドが研磨装置に装着されてその研磨動作中に前記センサにより得られる検出情報のほか、当該研磨パッドの製造履歴と、前記研磨装置の作動条件とが格納される、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の研磨パッド。
【請求項5】
寿命表示器をさらに備え、
前記情報記憶モジュールは、前記メモリに記憶している前記検出情報に基づいて、前記研磨パッドの寿命判定を行い、その寿命判定結果を前記寿命表示器に表示する、
請求項1の研磨パッド。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の研磨パッドと、
前記研磨パッドに備える通信手段と非接触で通信が可能な通信部と、
を含むことを特徴とする研磨情報管理システム。
【請求項7】
上定盤の下面に保持された被研磨物と、下定盤上に装着された研磨パッドとを接触加圧した状態で、前記被研磨物と前記研磨パッドとを相対的に摺動させて研磨を行う研磨装置において、
前記研磨パッドが、請求項1ないし5のいずれかに記載の研磨パッドであり、
前記研磨パッドに備える通信手段と非接触で通信が可能な通信部を有する、ことを特徴とする研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−194509(P2011−194509A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63699(P2010−63699)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000116127)ニッタ・ハース株式会社 (150)
【Fターム(参考)】