説明

研磨装置

【課題】 キャリアから発生した切り粉によって非磁性体のワークが傷つけられてしまうことを防止しつつ、非磁性体のワークの厚さを正確に測定可能とする。
【解決手段】 研磨装置は、上面に研磨布が貼り付けられた磁性体からなる下定盤と、非磁性体のワークを保持し、当該ワークとともに下定盤の研磨布上に載置される非磁性体のキャリアと、キャリアにより保持された前記ワークの上面を研磨する研磨布が下面に貼り付けられ、下定盤の上方に昇降自在に配置された上定盤と、上定盤に内蔵されて、下定盤までの距離を測定する渦電流式変位センサと、渦電流式変位センサの測定結果を基にワークの厚みを算出する算出部とを備えている。キャリアは、ワークの硬度よりも小さい素材によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばアルミ板等のワークを研磨する際には、キャリアによってワークを保持した状態で研磨が実行されている。キャリアとワークとは下定盤に載置されていて、ワークの上部がキャリアの上面から突出した状態で研磨が行われる。この研磨装置には、上定盤に内蔵され、ワークの上方に配置された渦電流式変位センサが設けられていて、この渦電流式変位センサが上定盤からワークの上面までの距離を測定することで、研磨時におけるワークの厚みを検出している。
ここで、ガラス板等の非磁性体のワークを研磨する場合もあるが、この場合、測定対象が非磁性体であると渦電流式変位センサでは測定ができない。このため、金属製のキャリアを用いて、上定盤からキャリアの上面までの距離を渦電流式変位センサで測定することで、間接的にワークの厚さを検出する研磨装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−231471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非磁性体のワークを研磨する場合、金属製のキャリアから発生した切り粉がワークを傷つけてしまうおそれがあった。
本発明の課題は、キャリアから発生した切り粉によって非磁性体のワークが傷つけられてしまうことを防止しつつ、非磁性体のワークの厚さを正確に測定可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明に係る研磨装置は、
上面に研磨布が貼り付けられた磁性体からなる下定盤と、
非磁性体のワークを保持し、当該ワークとともに前記下定盤の研磨布上に載置される非磁性体のキャリアと、
前記キャリアにより保持された前記ワークの上面を研磨する研磨布が下面に貼り付けられ、前記下定盤の上方に昇降自在に配置された上定盤と、
前記上定盤に内蔵されて、前記下定盤までの距離を測定する渦電流式変位センサと、
前記渦電流式変位センサの測定結果を基に前記ワークの厚みを算出する算出部とを備え、
前記キャリアは、前記ワークの硬度よりも小さい素材によって形成されていることを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の研磨装置において、
前記渦電流式変位センサの周囲には隙間が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、キャリアから発生した切り粉によって非磁性体のワークが傷つけられてしまうことを防止しつつ、非磁性体のワークの厚さを正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る研磨装置の要部構成を模式的に示す平面図である。
【図2】本実施形態に係る研磨装置の要部構成を模式的に示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る渦電流式変位センサの概略構成を示す拡大図である。
【図4】本実施形態に係る渦電流式変位センサの測定状態を示す説明図であり、(a)は研磨前の状態を示し、(b)は研磨中の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る研磨装置の要部構成を示す平面図であり、図2は断面図である。これら図1及び図2に示すように、研磨装置1には、上定盤2と、下定盤3と、サンギア4と、インターナルギア5とが設けられており、これらが図示しない機台の上に同一軸線の周りに回転自在に支持されている。上定盤2、下定盤3、サンギア4及びインターナルギア5のそれぞれの駆動ギアには図示しない駆動モータが係合しており、駆動モータの駆動によって上定盤2、下定盤3、サンギア4及びインターナルギア5が回転するようになっている。
【0011】
上定盤2は、金属等の磁性体から形成されていて、その下面が平坦な面に形成されている。下定盤3は、金属等の磁性体から形成されていて、その上面が平坦な面に形成されている。上定盤2は、その下面が、下定盤3の上面に対向するように下定盤3の上方に配置されている。上定盤2は、下定盤3との間隔を調整できるように図示しない昇降装置によって昇降自在となっている。
また、上定盤2の下面及び下定盤3の上面には、不織布、硬質発泡ウレタン等で形成された研磨布21,31が貼り付けられている。
【0012】
上定盤2と下定盤3との間には、図示しない研磨剤供給装置によって研磨剤が供給されるようになっている。また、上定盤2と下定盤3との間には、ワーク6を保持するための円板上のキャリア7が配置されている。キャリア7の中心部には、サンギア4の外歯41に噛合する内歯71が形成されている。また、キャリア7の外周縁には、インターナルギア5の内歯51に噛合する外歯72が形成されている。キャリア7には、複数のワーク6を個別に保持するためのワーク保持孔73も複数形成されている。これらのワーク保持孔73内に円板状のワーク6が嵌装されるようになっている。
【0013】
また、キャリア7は、ワーク6よりも硬度の小さい非磁性体から形成されている。キャリア7の素材は単一の素材で形成されていても、複数の素材から形成されていても良い。キャリア7が複数の素材から形成されている場合は、全ての素材がワーク6の硬度よりも低いことが好ましい。キャリア7の素材には特に限定はなく、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネイト、布ベークライト、カーボンキャリア、テフロン(登録商標)などが挙げられる。複数の素材から形成されたキャリアとしては、繊維質のシート体に樹脂を含浸させたものが好ましく、繊維質のシートとしては炭素繊維やガラス繊維やアラミド繊維が挙げられ、含浸する樹脂としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂又はビスマレイミド樹脂などが挙げられる。例えばワーク6が非磁性体であるガラスやシリコンから形成されている場合においては、キャリア7は上に挙げた素材の中で、ガラスやシリコンより硬度の小さい素材によって形成されている。これらの中でも、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、布ベークライト及びガラスエポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。
【0014】
上定盤2には、ワーク6の厚みを検出するため、下定盤3までの距離を測定する渦電流式変位センサ8が内蔵されている。渦電流式変位センサ8は、上定盤2における中心部及び外周縁部の間に配置されている。具体的には、上定盤2の中心から所定距離だけ離れた領域内に配置されている。この領域は、上定盤2の中心から半径rの40%〜60%の範囲に収まる領域Rであることが好ましい。
【0015】
図3は渦電流式変位センサ8の概略構成を示す拡大図である。図3に示すように、渦電流式変位センサ8は、上定盤2に形成された貫通孔23内に配置されていて、その上部がセンサ支持部81によって上定盤2の上面に支持されている。貫通孔23は、渦電流式変位センサ8から全周にわたって隙間が空くように形成されている。また、渦電流式変位センサ8の下端面は、上定盤2の下面よりも上方に配置されている。この渦電流式変位センサ8の下端面が、距離測定時に測定対象に渦電流を放出する渦電流放出面82となっている。渦電流放出面82は、距離測定時における基準面でもある。
【0016】
渦電流式変位センサ8には、測定結果を基にワーク6の厚みを算出する算出部9が電気的に接続されている。この算出部9には、上定盤2側の研磨布21の厚みt1と、下定盤3側の研磨布31の厚みt2と、渦電流放出面82から上定盤2の下面までの距離h1とが記憶されている(図4(a)参照)。これらの値は研磨時においても一定であり、研磨によって変動するのは、ワーク6の厚みのみである。具体的に図4(a)では厚みT1であったワーク6が、研磨が進行すると図4(b)に示すように厚みT2となる。算出部9は、研磨時に取得する渦電流式変位センサ8の測定結果S1,S2から厚みt1、厚みt2、距離h1を引くことでワーク6の厚みを算出するようになっている。
【0017】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、ワーク6のセット時においては、上定盤2を上昇させて、キャリア7の各ワーク保持孔73内にワーク6を嵌装させてから、上定盤2を下降させ、上定盤2と下定盤3とでワーク6を挟む。ワーク6の上面及び下面は、研磨布21,31により覆われた状態となる。
【0018】
ワーク6のセットが完了すると、上定盤2と下定盤3との間に、研磨剤供給装置によって研磨剤を供給させながら、上定盤2、下定盤3、サンギア4及びインターナルギア5を回転させる。これにより、ワーク6の上面及び下面と、キャリア7の下面が研磨布21,31によって研磨される。ここで、研磨が進行しても、自重によって上定盤2が下降して常に上定盤2の研磨布21がワーク6の上面に当接している。つまり、渦電流式変位センサ8も上定盤2の下降に追従して下降している。
研磨時においては、渦電流式変位センサ8が渦電流放出面82から下定盤3までの距離Hを常に測定している。算出部9は、渦電流式変位センサ8により測定された距離Hから厚みt1、厚みt2、距離h1を引くことでワーク6の厚みを算出する。ワーク6の厚みが目的値となると研磨を終了する。
【0019】
以上のように本実施形態によれば、キャリア7がワーク6の硬度よりも小さい素材から形成されているので、キャリア7から発生した切り粉がワーク6を傷つけてしまうことを防止することができる。また、キャリア7が非磁性体であるために、渦電流式変位センサ8による測定に影響を及ぼすことが防止されている。つまり、渦電流式変位センサ8は、キャリア7の影響を受けずに、渦電流放出面82から下定盤3までの距離を正確に測定することが可能となっている。そして、渦電流式変位センサ8の測定結果に基づいて算出部9がワーク6の厚みを算出しているので、非磁性体からなるワーク6の厚みを正確に算出検出することができる。
なお、従来のようにキャリアまでの距離を測定することでワークの厚みを検出する場合に比べて、本実施形態では測定距離が長くなっている。このため、従来よりも大型な渦電流式変位センサ8を用いることが好ましい。具体的には、直径が15mm以上の渦電流式変位センサ8を用いることが好ましい。
【0020】
また、渦電流式変位センサ8の周囲に隙間が形成されているので、研磨による摩擦熱が上定盤2を介して渦電流式変位センサ8に熱伝導してしまうことを隙間によって抑制することができる。したがって、温度上昇による渦電流式変位センサ8の誤作動を防止することができる。
また、渦電流式変位センサ8は、上定盤2における中心部及び外周縁部の間に配置されている。この箇所は上定盤2の熱変形の影響が小さい箇所であるために、渦電流式変位センサ8がより正確に測定を行うことができる。
【0021】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。以下の説明において、上記実施形態と同一部分は同一符号を付してその説明を省略する。
【符号の説明】
【0022】
1 研磨装置
2 上定盤
3 下定盤
4 サンギア
5 インターナルギア
6 ワーク
7 キャリア
8 渦電流式変位センサ
9 算出部
21 研磨布
23 貫通孔
31 研磨布
41 外歯
51 内歯
71 内歯
72 外歯
73 ワーク保持孔
81 センサ支持部
82 渦電流放出面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に研磨布が貼り付けられた磁性体からなる下定盤と、
非磁性体のワークを保持し、当該ワークとともに前記下定盤の研磨布上に載置される非磁性体のキャリアと、
前記キャリアにより保持された前記ワークの上面を研磨する研磨布が下面に貼り付けられ、前記下定盤の上方に昇降自在に配置された上定盤と、
前記上定盤に内蔵されて、前記下定盤までの距離を測定する渦電流式変位センサと、
前記渦電流式変位センサの測定結果を基に前記ワークの厚みを算出する算出部とを備え、
前記キャリアは、前記ワークの硬度よりも小さい素材によって形成されていることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
請求項1記載の研磨装置において、
前記渦電流式変位センサの周囲には隙間が形成されていることを特徴とする研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−152849(P2012−152849A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13545(P2011−13545)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】