説明

破壊されたフラゲリン遺伝子を含むグラム陽性細菌細胞、フラゲリンベースの融合タンパク質及び金属イオンの液体からの除去における使用

本発明は、金属イオンを液体から除去したり、酵素若しくは免疫原を発現するバイオレメディエーションにおける様々な目的に役立つフラゲリンベースの融合タンパク質(FBFP)、FBFPをコードする核酸、核酸を含むベクター及びベクターを含む宿主細胞を提供する。更に、本発明はグラム陽性細菌細胞で、特にバチルス・ハロジュランス(Bacillus halodurans)で異種ポリペプチドの過剰発現及び表面提示を得るための方法を提供する。また、本発明は、組換えFBFPをその表面で発現することに役立つ遺伝子破壊細菌を特徴とする。FBFPの作製に役立つ遺伝子構築物及びFBFPの使用方法もまた、本発明に含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組換えタンパク質に関し、特に、グラム陽性細菌によって産生される組換えタンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌による組換えタンパク質の産生は、最も一般的にはグラム陰性菌、特に大腸菌(Escherichia coli)で実施される。グラム陽性菌中で組換えタンパク質及びペプチドを産生する方法を開発する必要性がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明者らは、それらの表面でフラゲリン及びフラゲリンアミノ酸配列内の様々な異種ポリペプチドのいずれかから構成される融合タンパク質を産生及び発現するように形質転換された、アクセッション番号NCIMB41348で寄託されているグラム陽性バチルス・ハロジュランス(Bacillus halodurans)ALK36細菌の菌株を開発した。これらの組換え細菌は、組換え細菌細胞の表面で、高レベルの安定した可溶性組換えタンパク質を産生する。それらは、フラゲリンをコードするヌクレオチド配列、及び、異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を挿入することができる、フラゲリンをコードするヌクレオチド配列内の部位を含む遺伝子構築物も開発した。本発明は、本発明のフラゲリンに基づく融合タンパク質(FBFP)を産生するために適当な修飾された細菌系統、その融合タンパク質の作製に役立つ構築物、FBFP、FBFPをコードする核酸、核酸を含むベクター、ベクターを含む細胞、FBFPを発現する形質転換された細菌系統、並びにFBFPを作製及び使用する方法を特徴とする。
【0004】
より詳しくは、本発明は細菌細胞の実質的に純粋な培養物を特徴とし、そのかなりの数は破壊されたフラゲリン遺伝子を含み、破壊は機能性フラゲリンの発現を阻止する。本発明は、破壊されたフラゲリン遺伝子を含む単離された細菌細胞も含み、破壊は機能性フラゲリンの発現を阻止する。両方の場合とも、破壊は、ポリペプチドをコードしないか又は非機能性フラゲリンポリペプチドをコードするDNA配列による、かなりの数の細菌細胞内の内因性遺伝子の置換によるものであってよい。細菌細胞は、グラム陽性細菌細胞、例えばB.ハロジュランス細胞などのバチルス細胞でよい。細胞は、菌株BhFC01(hag)のものでよい。非機能性フラゲリンポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸14〜226を欠くことができる。
【0005】
破壊されたフラゲリン遺伝子を含むことに加えて、かなりの数の細菌細胞又は単離された細菌細胞の少なくとも1つの細胞壁プロテアーゼ遺伝子を破壊することができ、破壊は、ポリペプチドをコードしないか又は非機能性細胞壁プロテアーゼポリペプチドをコードするDNA配列による、かなりの数の細菌細胞内の内因性遺伝子の置換によるものでよい。細菌細胞は、上で列記されたものでよい。少なくとも1つの細胞壁プロテアーゼ遺伝子はwrpA遺伝子でよく、破壊としては細胞壁プロテアーゼ遺伝子の全コード配列の欠失を挙げることができる。細胞は、2005年11月23日にNCIMBにアクセション番号__で寄託した、BhFC04(hag、wprA)細胞でよい。
【0006】
本発明の他の態様は、バチルス(Bacillus)属の細菌を遺伝子操作する方法である。この方法は細菌の染色体内のhag遺伝子を破壊することを含み、破壊はその遺伝子による機能性フラゲリンの発現を阻止する。バチルス細菌は、バチルス・ハロジュランス細菌でよい。
【0007】
この方法は1つ又は複数の細胞壁プロテアーゼをコードする1つ又は複数の遺伝子を破壊することを更に含むことができ、破壊はその1つ又は複数の遺伝子による1つ又は複数の機能性細胞壁プロテアーゼの発現を阻止する。1つ又は複数の細胞壁プロテアーゼ遺伝子としては、wrpA遺伝子を挙げることができる。
【0008】
また、本発明は、細菌フラゲリンタンパク質の全部又はフラゲリンタンパク質のN末端及びC末端保存領域を含むその一部と、フラゲリンタンパク質の可変部の中の又はそれを置換する異種ポリペプチドとを含む融合タンパク質を包含する。細菌細胞によって産生される場合、融合タンパク質は細菌細胞の表面で発現される能力を有する。異種ポリペプチドは、金属イオンに結合する能力を有するポリペプチドでよい。金属イオンはニッケル、銅、カドミウム、プラチナ、パラジウム、チタン、銀又は金でよく、異種ポリペプチドはポリヒスチジン配列でよい。ポリヒスチジン配列は、6ヒスチジン残基を含むことができる。
【0009】
更に、異種ポリペプチドは酵素又は酵素の機能性断片であることができる。酵素は、リパーゼ酵素、例えばG.サーモレオボランス(G.thermoleovorans)リパーゼAであることができる。酵素は、加水分解酵素、例えばアミラーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼ又はセルラーゼであることができる。更に、異種ポリペプチドは抗原でよい。
【0010】
融合タンパク質は、異種ポリペプチドのN末端基のN末端の1から15のリンカー残基を、及び/又は異種ポリペプチドのC末端基のC末端の1から15のリンカー残基を更に含むことができる。融合タンパク質は、異種ポリペプチドのN末端基のN末端及び異種ポリペプチドのC末端基のC末端に、切断可能な部位を含むこともできる。
【0011】
本発明は、上記の融合タンパク質をコードする核酸、核酸配列を含むベクター、例えば核酸配列が転写調節エレメント(TRE)に作動可能に結合したベクター、及びベクターを含む単離細胞も提供する。細胞は、細菌細胞などの原核細胞でよい。細菌細胞は、バチルス属の細胞、例えばB.ハロジュランス種の細胞などのグラム陽性細菌細胞でよい。細胞は、2005年11月23日にNCIMBにアクセション番号__で寄託した、BhFC04(hag、wprA)菌株のものでよい。
【0012】
他の態様では、本発明は融合タンパク質を作製する方法を包含する。この方法は、上記の融合タンパク質をコードし、TREに作動可能に結合した核酸を含むベクターを含む細胞を培養すること、及び培養物から融合タンパク質を得ることを含むことができる。
【0013】
また、本発明は、細菌フラゲリンポリペプチドのコード配列の全部又はフラゲリンタンパク質のN末端及びC末端保存領域をコードするヌクレオチドを含むコード配列の一部と、フラゲリンポリペプチドの可変部をコードする配列へ挿入されるか置換する、少なくとも1つの制限酵素部位を含むヌクレオチド配列とを含むDNA構築物を特徴とする。細菌のフラゲリンポリペプチドは、バチルス・フラゲリンポリペプチド、例えばB.ハロジュランスフラゲリン(配列番号1)であることができる。構築物では、ヌクレオチド配列は配列番号1のヌクレオチド162及びヌクレオチド606の間の任意のヌクレオチドの直後に、配列番号1のヌクレオチド441及びヌクレオチド570の間の任意のヌクレオチドの直後に、又は配列番号1のヌクレオチド459及びヌクレオチド540の間の任意のヌクレオチドの直後に挿入することができる。
【0014】
また、本発明は液体から1つ又は複数の金属イオンを除去する方法を提供する。この方法は、1つ又は複数の金属イオンを含む液体を本発明の融合タンパク質と接触させることを含むことができ、融合タンパク質中の異種ポリペプチドは、1つ又は複数の前記金属イオンに結合するポリペプチドである。液体は、融合タンパク質を発現する細菌細胞と接触させることができる。或いは、融合タンパク質は無細胞ポリペプチドであることができる。
【0015】
本発明の他の方法は、1つ又は複数の金属イオンを含む液体から1つ又は複数の金属イオンを単離するためのものである。その方法は、1つ又は複数の金属イオンを含む液体を本発明の融合タンパク質と接触させることであって、融合タンパク質中の異種ポリペプチドは、1つ又は複数の金属イオンに結合するポリペプチドであり、接触はもう1つの金属イオンの融合タンパク質への結合をもたらすこと、及び、1つ又は複数の金属イオンを融合タンパク質から分離することを含むことができる。
【0016】
本発明の他の態様は、基質を生成物に変換する方法であって、酵素基質を本発明の融合タンパク質と接触させることを含み、融合タンパク質中の異種ポリペプチドは酵素基質のための酵素又はその酵素の機能性断片であり、それにより前記基質を前記生成物に変換する方法である。
【0017】
本発明は、哺乳類の対象で免疫応答を起こすための調製物の製造における、本発明の融合タンパク質の使用も包含する。
【0018】
本発明は、哺乳類の対象で免疫応答を起こす方法における使用のための物質又は組成物に更に関し、前記物質又は組成物は本発明の融合タンパク質を含み、前記方法は前記物質又は組成物の有効量を前記哺乳類の対象に投与することを含む。
【0019】
また、本発明は免疫応答を起こす方法も包含する。この方法は、本発明の融合タンパク質を哺乳類の対象に投与することを含むことができ、融合タンパク質中の異種ポリペプチドは免疫原である。哺乳類の対象は、例えば、ヒトであることができる。
【0020】
本発明は、本発明のDNA構築物を含む発現ベクターを含むキットも提供する。このキットは、更に、少なくとも1つの制限酵素、その中でベクターが複製することができる細胞である宿主細胞、及び/又は、異種ポリペプチドをコードする核酸配列をDNA構築物へ挿入するための説明書を含むことができる。
【0021】
長さ又は翻訳後修飾に関係なく、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は互換的に用いられ、アミノ酸の任意のペプチド結合鎖を意味する。
【0022】
本明細書で使用するように、ポリペプチドに適用される用語「単離した」は、天然の対応物を有さないか、それに天然に附属する成分、例えば細菌細胞成分などの微生物細胞成分から分離若しくは精製された、ポリペプチドを指す。一般的に、ポリペプチドは、それが自然界で結合するタンパク質及び他の天然の有機分子の乾燥重量で少なくとも70%が取り除かれている場合、「単離された」とみなされる。好ましくは、本発明のポリペプチド(又はそのペプチド断片)の調製物は、それぞれ乾燥重量で本発明のポリペプチド(又はそのペプチド断片)の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%である。したがって、例えば、ポリペプチドXの調製物は、乾燥重量でポリペプチドXの少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%である。化学合成されるポリペプチドは本来自然界でそれに附属する成分から分離されるので、その合成ポリペプチドは「単離される」。更に、本発明のFBFPなどの融合タンパク質は自然界に存在しないので、それらは常に「単離される」。
【0023】
本発明の単離されたポリペプチドは、例えばポリペプチドをコードする組換え核酸の発現によって、又は化学合成によって得ることができる。それの自然界での発生源と異なる細胞系で産生されるポリペプチドは、自然界でそれに附属する成分を必然的に含まないので、「単離される」。単離又は純度の程度は任意の適当な方法、例えば、カラムクロマトグラフィ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はHPLC分析で測定することができる。
【0024】
単離されたDNAなどの「単離された核酸」は、(1)任意の天然の配列のそれと同一でない配列を含む核酸、又は(2)天然の配列(例えばcDNA又はゲノムDNA)を有する核酸との関連で、関心の核酸を含む遺伝子が自然界で見られる生物のゲノム内で関心の核酸を含む遺伝子に連結する遺伝子の少なくとも1つを含まない核酸である。この用語は、したがって、ベクターに、自律的に複製するプラスミド若しくはウイルスに、又は、原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた組換え核酸を含む。また、この用語は別個の分子、例えば、対応するゲノムDNAがイントロンを含むことができ、したがって異なる配列を有することができるcDNAと、フランキング遺伝子の少なくとも1つが欠けたゲノム断片と、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって産生されてフランキング遺伝子の少なくとも1つが欠けたcDNA又はゲノムDNAの断片と、フランキング遺伝子の少なくとも1つが欠けた制限断片と、非天然のタンパク質、例えば与えられたタンパク質の融合タンパク質、突然変異タンパク質又は断片をコードする核酸と、cDNA又は天然の核酸の変性変異体である核酸とを含む。更に、それは雑種遺伝子、すなわち非天然の融合タンパク質をコードする遺伝子の部分である、組換えヌクレオチド配列を含む。単離されたDNAは、例えば制限酵素消化反応混合物又は電気泳動ゲルスライス中の、例えばcDNA若しくはゲノムDNAライブラリー又はゲノムDNA制限酵素消化物中の、数百から数百万の他のDNA分子に存在するDNAを意味しないことは、前述したことから明らかである。
【0025】
本明細書で使用するように、「作動可能に結合した」は、発現制御配列(転写又は翻訳の調節エレメント)が効果的に関心のコード配列の発現を制御するように、遺伝子構築物に組み込まれることを意味する。
【0026】
核酸又は遺伝子及び特定の細胞に関して本明細書で使用する用語「内因性」は、自然界で見られるような特定の細胞で見られる(及びそれから得られる)任意の核酸又は遺伝子を指す。
【0027】
別に定義されていなければ、本明細書で使われる技術用語及び科学用語の全ては、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。紛争事件では、定義を含めた本明細書が優先するだろう。本発明の実施又は試験においては本明細書で記載されているものと類似又は同等の方法及び物質を使用できるが、以下においては好ましい方法及び物質が記載される。本明細書で言及した全ての出版物、特許出願、特許及び他の参考文献は、その全体において参照により組み込まれる。本明細書で開示される物質、方法及び実施例は、例示のためだけであり、限定することを目的とはしない。
【0028】
バイオレメディエーション又はバイオマイニング(biomining)に役立ち、免疫原としても役立つFBFPなどの本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明、図面及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の様々な態様を以下に記す。
フラゲリンに基づく融合タンパク質(FBFP)
本発明は広範囲の目的に役立つFBFPを特徴とする。FBFPは、細菌のフラゲリンタンパク質の全部又は一部と、そのフラゲリンタンパク質の可変部を置換するか又はその内部にある異種ポリペプチド配列とを含む。FBFPはそれを作る細菌細胞の表面へ輸送され、その上で発現される能力を有する。本明細書で使用するように、「細菌細胞の表面で発現される」タンパク質は、その細菌の細胞壁に直接、又は間接的に結合する(例えば細菌の鞭毛の成分であるタンパク質)か、細胞壁に取り込まれるタンパク質である。いずれにせよ、タンパク質の全部又は一部は細菌細胞の外側に露出して、細菌細胞の外部の適当な物質、例えば金属イオン、酵素基質、又は、免疫系の細胞(例えば、Bリンパ球、Tリンパ球(CD4+及び/若しくはCD8+)、ナチュラルキラー(NK)細胞、若しくは抗原提示細胞(APC)、例えばマクロファージ、単球、かみ合う樹状細胞(本明細書では樹状細胞と称する)及びBリンパ球の上の受容体と相互作用することができる。
【0030】
FBFPのフラゲリン部分は任意の細菌フラゲリンでよいが、好ましくはグラム陽性細菌のフラゲリンである。関心のグラム陽性細菌の属としては、クロストリジウム(Clostridium)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)及びストレプトマイセス(Streptomyces)があるが、これらに限定されるものではない。バチルス属の細菌は、特に興味がある。有用種としては、Bacillus subtilis(枯草菌)、Bacillus alkalophilus、Bacillus amyloliquefaciens,Bacillus brevis、Bacillus circulans、Bacillus clausii、Bacillus coagulans、Bacillus firmus、Bacillus lautus、Bacillus lentus、Bacillus licheniformis、Bacillus megaterium、Bacillus pumilus、Bacillus stearothermophilus若しくはBacillus thuringiensis、又は、ストレプトマイセス菌株、例えばStreptomyces lividans、又はラクトコッカス菌株、例えばLactococcus lactisがある。
【0031】
特に役立つ種はB.ハロジュランスであり、そのフラゲリンは図7で示すアミノ酸配列(配列番号2)及び図3で示すコード配列(配列番号1)を有するものでよい。FBFPのフラゲリン部分は、フラゲリン分子全体又はフラゲリン分子の一部を含むことができる。実施例2で記載されるように、異なる細菌からのフラゲリン分子は、N末端及びC末端保存領域並びに内部可変部を含む、比較的高い相同性の領域を有する。関心の任意の細菌フラゲリンのアミノ酸配列を実施例2で言及するものの1つ若しくは複数と、又は配列番号2と整列させることにより、当業者は関心のフラゲリン内のどこにこれらの3領域が位置するかを決定することができる。
【0032】
FBFPは、例えば、タンパク質の可変部の全部又は一部を欠くことができる。272アミノ酸のポリペプチドであるB.ハロジュランスのフラゲリン(配列番号2)では、可変部はアミノ酸54からアミノ酸202に位置し、それはそのコード配列(配列番号1)のヌクレオチド162から606に対応し、また、N末端及びC末端の保存領域はその可変部のいずれかの側にある(すなわち、それぞれ配列番号2のアミノ酸1〜53及びアミノ酸203〜272であり、配列番号1のヌクレオチド1〜161及び607〜816に対応する)。フラゲリン配列にこれらの修正を加える際に必要である全ては、FBFPが細菌細胞で作製される場合は細菌細胞の表面へ運ばれてそこで発現される能力を有するということである。
【0033】
本発明のFBFPに役立つ異種ポリペプチドは、(a)FBFPのフラゲリン由来部分がそれから得られた特定のフラゲリン、及び(b)その特定のフラゲリンの部分以外の任意のポリペプチドでよい。それは関心のフラゲリンタンパク質の可変部の全て又は一部を置換することができるか、又は、それは無傷の可変部に挿入することができる。可変部の一部を置換する場合は、可変部アミノ酸の最高で148(例えば最高で145、140、135、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3又は2)を削除することができる。異種ポリペプチドは任意の長さでよいが、好ましくは5〜450(例えば5〜450、5〜200、5〜150、5〜100、5〜50、5〜40、5〜30、5〜20、5〜15、5〜10、10〜450、10〜200、10〜150、10〜100、10〜50、10〜40、10〜30、10〜20、10〜15、20〜450、20〜200、20〜150、20〜100、20〜50、20〜40又は20〜30)アミノ酸の長さである。
【0034】
更に、異種ポリペプチドのN末端、C末端のいずれか、又は両端には、異種ポリペプチドをフラゲリン由来の配列から分離する「リンカー」アミノ酸が存在してもよい。これらのアミノ酸は、異種ポリペプチドが適当な三次元構造をとることを可能にする部分として切断可能な部位(下記参照)として挿入することができ、及び/又は、それらはFBFPを組換えで作製するために用いる遺伝子構築物中の適当な制限部位の含有を反映する(下記参照)。そのようなリンカーは、長さが1〜20(例えば、1〜15、1〜12、1〜10、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3又は1〜2)アミノ酸でよい。
【0035】
FBFP内の異種ポリペプチドのいずれかの末端上の切断可能な部位は、任意選択にリンカーからの残基を含む異種ポリペプチドをFBFPから切除して、その切除された形態で用いることを可能にする。FBFPを化学的に作製する場合、多くの切断可能な架橋剤(例えば二官能基の切断可能な架橋剤)が当技術分野で公知であり、それらを含めることができた。或いは、FBFPを組換えで作製する場合、他の切断可能な部位をFBFPに「組み入れる」ことができる。化学的切断法の例では、異種ポリペプチドのいずれかの末端での(N末端及びC末端のすぐ近くで、又は末端から1つ又は複数のリンカー残基によって分離して)単一のメチオニン残基の挿入を利用する。異種ポリペプチドは、次に、臭化シアンを使って容易に切断することができる。第2の例は、異種ポリペプチドのいずれかの末端(メチオニン残基に関して記載した位置)での単一のシステイン残基の使用、及び以降のNTCB(2−ニトロ−5−チオシアノ安息香酸)を用いた切断の使用である。酵素切断は、特定のアミノ酸配列を認識することができる酵素活性のあるエンドプロテアーゼを利用する。一例は、アミノ酸配列Arg−Xを認識するEndo Arg Cシステインプロテアーゼであり、Xは任意のアミノ酸でよい。この方法は、したがって異種ポリペプチドの片側への2つのアミノ酸の付加を必要とする。他の例は、配列Lys−Xを認識するEndo Lys Cセリンプロテアーゼであり、Xは任意のアミノ酸でよい。ここでも、2つのアミノ酸を異種ポリペプチドの片側の末端に加える必要がある。異なる酵素的及び化学的切断の方法の様々な組み合わせを用いて、全ての不要なアミノ酸を確実に除去することができる。
【0036】
異種ポリペプチドは、又は1つ又は2つのリンカーが使用される場合は、異種ポリペプチド及びリンカーは、配列番号2のアミノ酸54〜202の間の任意のアミノ酸の直後に、配列番号2のアミノ酸147〜190の間の任意のアミノ酸の直後に、配列番号2のアミノ酸150〜184の間の任意のアミノ酸の直後に、又は配列番号2のアミノ酸153〜180の間の任意のアミノ酸の直後に挿入することができる。例えば、異種ポリペプチドは配列番号2のアミノ酸153又は180の直後に挿入することができる。関心のフラゲリンが配列番号2(B.ハロジュランスのアミノ酸配列)と異なるアミノ酸配列を有する場合、当業者は関連するアミノ酸配列を配列番号2と整列させることによって、配列番号2に関して上記したそれらに対応するそのフラゲリン中のアミノ酸を予測することができ、したがって、異種ポリペプチドを挿入する適当な位置を、又は1つ又は2つのリンカーを使用する場合は関心の異種ポリペプチド及びリンカーを挿入する適当な位置を予測することができる。更に、フラゲリンコード配列の全体未満が構築物に含まれる場合、配列番号2に関して上記したそれらに対応する位置を、当業者は容易に確認することができる。
【0037】
本発明は、FBFPのフラゲリン部分又は異種ポリペプチド部分で保存的置換を有するFBFPも特徴とする。保存的置換は、一般に下記群内の置換を含む:グリシン及びアラニン、バリン、イソロイシン及びロイシン、アスパラギン酸及びグルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、セリン及びスレオニン、リシン、ヒスチジン及びアルギニン、並びに、フェニルアラニン及びチロシン。各部分は、多くても30(例えば、多くて25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1)の保存的置換しか含まない。
【0038】
上で示したように、配列に上の修正のいずれかを加える際に必要である全ては、FBFPが細菌細胞で作製される場合は細菌細胞の表面へ運ばれてそこで発現される能力を有することである。
【0039】
関心の異種ポリペプチドとしては、それらには限定されないが、バイオレメディエーション、バイオマイニング、酵素媒介基質転換において、様々な哺乳動物のいずれかで免疫応答を活性化するための免疫原として役立つもの、治療又は予防の方法及び治療用途で用いる物質若しくは組成物として免疫原調製物を調製するのに有用なものがある。
【0040】
バイオレメディエーションは、液体(例えば飲用水)を固形基質の上に流して有害物質(例えば重金属のイオン又は原子)をそれに結合させることによって有害物質を液体から除去し、その液体を動物(例えばヒト)が摂取しても安全であるようにする過程である。バイオマイニングは、液体中の有用な及び/又は貴重な金属のイオン又は原子の固形基質への結合、及び以降の固形基質からの金属原子又はイオンの回収を含む。目的がいずれであれ、ある金属結合ポリペプチドを用いることができる。これらの方法は下で更に説明される。本発明のFBFPへ異種ポリペプチドとして組み込むことができる関連するポリペプチドとしては、様々な重金属、有用金属、貴金属及び/又は有害金属のイオンに結合することが知られているものがある。関連する金属としては、ニッケル(Ni)、カドミウム(Cd)、金(Au)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、銅(Cu)及び銀(Ag)などがあるが、これらには限定されない。したがって、例えば、ポリヒスチジン(ポリHis、例えばヘキサヒスチジン)ポリペプチドは、Cd、Ni及びCuと結合することが示された。更に、Agはアミノ酸配列NPSSLFTYLPSD(配列番号20)を有するポリペプチドに結合することが示された。Pdは、アミノ配列CSVTQNKYC(配列番号21)、CSPHPGPYC(配列番号22)及びCHAPTPMLC(配列番号23)を有するポリペプチドと結合することが示された。Ptは、アミノ酸配列CDRTSTWRC(配列番号24)、CQSVTSTKC(配列番号25)及びCSSSHLNKC(配列番号26)を有するポリペプチドと結合することが示された。Tiはアミノ酸配列RKLPDAPGMHTW(配列番号27)を有するポリペプチドに結合することが示された(Kriplani及びKay(2005),Curr Opinion Biotechnol,16:470−475)。したがって、これらの全てのポリペプチドは、本発明のFBFP中の異種ポリペプチドとして用いることができる。
【0041】
所望の生成物へのある基質の(例えば発酵槽内での)大量変換に役立つ様々な酵素(又はそのような酵素の機能性断片)を、異種ポリペプチドとして本発明のFBFPへ挿入することもできる。関連する酵素としては、アミラーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼ及びセルラーゼなどの加水分解酵素があるが、これらに限定されるものではない。特に興味があるのは、実施例8で記載されているようなリパーゼ酵素である。酵素の「機能性断片」は、成熟した完全長酵素より短く、その基質をその関連する生成物に変換する完全長の野生型酵素の能力の少なくとも20%(例えば、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、100%又はそれ以上)の能力を有する酵素断片である。
【0042】
哺乳動物(下記参照)で免疫応答を誘導することに役立つ免疫原性ポリペプチドも、異種ポリペプチドとして用いることができる。そのようなポリペプチドは、成熟した完全長ポリペプチド又はそのようなポリペプチドのペプチド断片でよい。免疫原性ポリペプチドは、例えば多種多様な感染性の(例えば、細菌、真菌(酵母を含む)、ウイルス若しくは寄生虫(例えば寄生原虫))微生物又は癌細胞のいずれかに由来するものでよい。関連する微生物の例としては、それらには限定されないが、Mycobacteria tuberculosis、Salmonella enteriditis、Listeria monocytogenes、M.leprae、Staphylococcus aureus、Escherichia coli、Streptococcus pneumoniae、Borrelia burgdorferi、Actinobacillus pleuropneumoniae、Helicobacter pylori、Neisseria meningitidis、Yersinia enterocolitica、Bordetella pertussis、Porphyromonas gingivalis、マイコプラズマ、Histoplasma capsulatum、Cryptococcus neoformans、Chlamydia trachomatis、Candida albicans、Plasmodium falciparum、Entamoeba histolytica、Toxoplasma brucei、Toxoplasma gondii、Leishmania major、ヒト免疫不全ウイルス1及び2、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、狂犬病ウイルス、肝炎ウイルスA、B及びC、ロタウイルス、乳頭腫ウイルス、RSウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコ白血病ウイルス及びサル免疫不全ウイルスがある。関連する微生物タンパク質の例としては、それらには限定されないが、大腸菌の熱不安定性エンテロトキシンのBサブユニット(Koniecznyら(2000)FEMS Immunol.Med.Microbiol,27(4):321−332)、熱ショックタンパク質、例えばY.enterocolitica熱ショックタンパク質60(Koniecznyら(2000)前掲;Mertzら(2000)J.Immunol.164(3):1529−1537)及びM.tuberculosis熱ショックタンパク質hsp60及びhsp70、Chlamydia trachomatis外膜タンパク(Ortizら(2000)Infect.Immun.68(3):1719−1723)、B.burgdorferi外表面タンパク質(Chenら(1999)Arthritis Rheum.42(9):1813−1823)、L.majorGP63(Whiteら(1999)Vaccine 17(17):2150−2161(Vaccine 17(20−21);2755)で誤って出版された))、N.meningitidis髄膜炎菌性血清型15PorBタンパク質(Delvigら(1997)Clin.Immunol.Immunopathol.85(2);134−142)、P.gingivalis 381の線毛タンパク質(Ogawa,(1994)J.Med.Microbiol.41(5):349−358)、大腸菌外膜タンパクF(Williamsら(2000)Infect.Immun.68(5):2535−2545)、インフルエンザウイルス血球凝集素及びノイラミニダーゼ、レトロウイルス(例えばHIV)表面糖タンパク質(例えばHIV gp160/120/41)又はレトロウイルスtat若しくはgagタンパク質などがある。
【0043】
更に、腫瘍関連抗原(TAA)又はTAAのペプチド断片は、異種ポリペプチドとして用いることができる。本明細書で使用するように、「TAA」は腫瘍細胞によって発現される分子(例えばタンパク質分子)であり、(a)正常細胞で発現されるその対応物と質的に異なるか、又は(b)腫瘍細胞で正常細胞よりも高いレベルで発現される。したがって、腫瘍抗原は正常細胞で発現されるその対応物と異なる(例えば、その分子がタンパク質である場合は1つ又は複数のアミノ酸残基が異なる)ことも、同一であることもある。それは、好ましくは正常細胞によって発現されない。或いは、それは腫瘍細胞においてその腫瘍細胞の正常な対応物よりも少なくとも2倍高い(例えば2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、40倍、100倍、500倍、1,000倍、5,000倍又は15,000倍高い)レベルで発現される。関連する癌の例としては、白血病及びリンパ腫などの血液癌、神経膠星状細胞腫又は神経グリア芽細胞腫などの神経腫瘍、黒色腫、乳癌、肺癌、頭頚部癌、胃癌又は結腸癌などの胃腸腫瘍、肝癌、膵臓癌、卵巣癌、膣癌、膀胱癌、精巣癌、前立腺癌又は陰茎癌などの性尿器腫瘍、骨腫瘍並びに血管腫瘍があるが、これらに限定されるものではない。関連するTAAとしては、それらには限定されないが、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)、MAGE(メラノーマ抗原)1〜4、6及び12、MUC(ムチン)(例えば、MUC−1、MUC−2、など)、チロシナーゼ、MART(メラノーマ抗原)、Pmel17(gp100)、GnT−VイントロンV配列(N−アセチルグルコアミニルトランスフェラーゼVイントロンV配列)、前立腺Ca psm、PRAME(メラノーマ抗原)、β−カテニン、MUM−1−B(黒色腫ユビキタス変異遺伝子産物)、GAGE(メラノーマ抗原)1、BAGE(メラノーマ抗原)2〜10、C−ERB2(Her2/neu)、EBNA(エプスタインバーウイルス核抗原)1〜6、gp75、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)E6及びE7、p53、肺抵抗性タンパク質(LRP)、Bc1〜2並びにKi−67がある。
【0044】
本発明のFBFPへ異種ポリペプチドとして組み込むことができる治療用ポリペプチドとしては、それらに限定されないが、ヒト成長ホルモン(HGH)、抗レトロウイルス剤(例えば、FUZEON、NEUPOGEN)、抗菌性ペプチド(例えば、インドリシン、ブフォリン、ナイシン及びトリゴジン)、心臓血管疾患の治療に役立つポリペプチド(例えば、ネシリチド)、並びに糖尿病の治療に役立つポリペプチド(例えば、リラグルチド及びインシュリノトロピン)がある。必ずではないが一般的に、これらの異種ポリペプチドはFBFPから切り出され、状況によっては適当な哺乳動物対象(例えばヒト対象又は患者)への投与の前に調製物に製剤化される。
【0045】
本発明のFBFPは、当業者に公知の標準的化学的手段で合成することができる。更に、FBFPは、適当なFBFPをコードするヌクレオチド配列を用いて、標準的なin vitro組換えDNA技術及びin vivo遺伝子導入(例えば下記実施例で記載される手法)によって産生することができる。当業者に公知の方法を用いて、関連するコード配列及び適切な転写/翻訳調節シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版)[Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.,1989]及びAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology[Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.,1989]で記載されている手法を参照。
【0046】
本発明のFBFPは上で記載されるものを含むこともできるが、関連するFBFPの生存を促進するためにアミノ及び/又はC末端への遮断剤の付加によって修飾される。このことは、ペプチド末端が(例えば哺乳類の対象において)プロテアーゼによって分解する傾向がある状況で役立つことがある。そのような遮断剤としては、投与されるペプチドのアミノ及び/又はカルボキシル末端残基と結合することができる更なる関連した若しくは関連しないペプチド配列が挙げられるが、これに限定されるものではない。これは、ペプチドの合成の間に化学的に、又は、当業者が熟知した方法を用いて組換えDNA技術によって実施することができる。
【0047】
或いは、ピログルタミン酸などの遮断剤又は当技術分野で公知の他の分子をアミノ及び/若しくはカルボキシル末端残基に結合することができ、又は、アミノ末端のアミノ基若しくはカルボキシル末端のカルボキシル基を異なる部分で置換することができる。同様に、ペプチドは投与の前に薬剤として許容される「担体」タンパク質と、共有結合又は非共有結合で結合することができる。
【0048】
FBFPのアミノ酸配列に基づいて設計されるペプチド様化合物も関心の的である。ペプチド様化合物は、選択されたポリペプチドの三次元高次構造と実質的に同じ三次元高次構造を有する合成化合物である(すなわち「ペプチドモチーフ」)。ポリペプチドモチーフは、必要に応じて機能する能力を有するペプチド様化合物を提供する。ペプチド様化合物は、増加した細胞透過性及び生物学的半減期の延長などの、それらの治療的有用性を強化する更なる特性を有することができる。
【0049】
ペプチド様物質は、一般的に、部分的又は完全に非ペプチドであるが、そのペプチド様物質がベースにしたペプチドで見られるアミノ酸残基の側鎖基と同一である側鎖基を有する骨格を有する。数種類の化学結合、例えばエステル、チオエステル、チオアミド、レトロアミド、還元カルボニル、ジメチレン及びケトメチレン結合が、一般的にプロテアーゼ抵抗性のペプチド様物質の構築においてペプチド結合の有用な代替物であることが当技術分野で知られている。
【0050】
核酸分子
本発明は、本発明の上記FBFPをコードする核内分子も特徴とする。これらの核酸分子において、FBFPのフラゲリン由来部分をコードする配列、異種ポリペプチド部分をコードする配列及び任意選択のリンカーをコードする配列は、全ての部分が適当な読み枠内にあり、したがって核酸分子によってコードされるFBFPにおいて、各部分がそれが由来するタンパク質の部分に対応するアミノ酸配列又はそのような配列を有するが任意の修飾を意図的に含むように組み立てられる。当業者は、適当な「インフレーム」核酸分子を構築する方法を知るであろう。
【0051】
本発明の核酸分子は、関心の任意の異種ポリペプチドを有するFBFPを作製するために役立つ遺伝子(DNA)構築物も含む。遺伝子構築物は、上述のフラゲリンのいずれかのコード配列の全部又は一部、及びフラゲリン可変部(本明細書ではフラゲリンコード配列の可変部とも称する)をコードするコード配列の領域に挿入されたリンカー核酸配列を含む。リンカー核酸リンカー配列として特に役立つものは、少なくとも1つの(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、17、20更には30の)連続する及び/又は重なる制限酵素認識/切断部位を含む、多回クローニング部位(MCS)である。制限酵素及びそれらの認識/切断配列は当技術分野で公知であり、下記実施例で記載されるものがある。そのようなMCSは、異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の挿入のために用いる。その「下流」のヌクレオチド配列が適当なフレームで読まれるように、又は読まれないようにMCSを挿入することができると、理解される。必要なことの全ては、異種ポリペプチドをコードする配列の挿入の後、FBFPコード配列全体が正しい読み枠内にあることである。
【0052】
フラゲリン(又はフラゲリンの一部)がB.ハロジュランスのフラゲリンである場合、リンカー核酸配列(MCSを含む)は配列番号1のヌクレオチド162及びヌクレオチド606の間の任意のヌクレオチドの直後に、例えば、配列番号1のヌクレオチド441及びヌクレオチド570の間の任意のヌクレオチドの直後に、配列番号1のヌクレオチド450及びヌクレオチド552の間の任意のヌクレオチドの直後に、又は、配列番号1のヌクレオチド459及びヌクレオチド540の間の任意のヌクレオチドの直後に挿入することができる。リンカー核酸配列(MCSを含む)は、例えば、配列番号1のヌクレオチド459又はヌクレオチド540の直後に挿入することができる。関心のフラゲリンが配列番号2(B.ハロジュランスのアミノ酸配列)と異なるアミノ酸配列を有する場合、当業者は関連するアミノ酸配列を配列番号2と整列させることによって、配列番号1に関して上記したそれらに対応するそのフラゲリンのコード配列中のヌクレオチドを予測することができ、したがって、関心のリンカー核酸配列を挿入する適当な位置を予測することができる。更に、フラゲリンコード配列の全体未満が構築物に含まれる場合、配列番号1に関して上記したそれらに対応する位置を、当業者は容易に確認することができる。
【0053】
本発明は、本発明の遺伝子(DNA)構築物の1つ又は複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)を含むキットも提供する。構築物は、通常、発現ベクターに組み込まれる成分として供給される。キットは、異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を構築物に挿入するために、構築物の消化に役立つ1つ又は複数の制限酵素を更に含むことができる。キットは、緩衝液、塩溶液及び/又は関連する制限酵素消化反応のための他の任意の試薬などの、補助的試薬を含むこともできる。更に、キットは構築物に異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を連結するために、リガーゼ酵素(及び、上記補助剤)を含むことができる。更に、キットは遺伝子構築物の発現に役立つ宿主(本明細書で挙げるもののいずれか)を含むことができる。キットは、構築物を1、2の適当な制限酵素で消化する方法、異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を構築物に連結する方法、及び/又はそのような連結の後に遺伝子構築物で宿主細胞を形質転換する方法についての説明文書を(例えば、包装材又は添付文書上で)含むこともできる。
【0054】
本発明のFBFPをコードする核酸分子は、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA又はRNAでよく、また、二本鎖又は一本鎖(すなわち、センス又はアンチセンス鎖)でもよい。これらの分子の部分も本発明の範囲内とみなされ、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって産生すること、又は1つ又は複数の制限酵素による処理によって生成することができる。リボ核酸(RNA)分子は、in vitro転写によって産生することができる。好ましくは、核酸分子は、長さに関係なく通常の生理的条件下で可溶性であるポリペプチドをコードする。
【0055】
本発明の核酸分子は、天然の配列、又は自然界で見られるものとは異なるが遺伝子コードの変性のために同じポリペプチドをコードする配列を含むことができる。更に、これらの核酸分子はコード配列に限定されず、例えば、それらはコード配列の上流又は下流にある非コード配列の一部又は全てを含むことができる。
【0056】
本発明の核酸分子は、(例えば、ホスホラミダイトをベースにした合成によって)合成することができ、又は、原核生物(例えばバチルス細菌若しくは大腸菌などの細菌)の細胞などの生物細胞から得ることができる。この種の核酸内のヌクレオチドの組み合わせ又は修飾体も包含される。
【0057】
本発明の単離された核酸分子は、自然状態ではそのようではない部分を包含する。したがって、本発明はベクター(例えば、プラスミド又はウイルスのベクター)に、又は異種細胞のゲノム(又は、同種細胞の染色体内の自然界で見られる場所以外の位置のゲノム)に組み込まれる組換え核酸分子を包含する。組換え核酸分子及びその使用は、更に下で議論される。
【0058】
本発明は、(a)前述の配列(コード配列部分を含む)及び/又はそれらの相補体(つまり「アンチセンス」配列)のいずれかを含むベクター(下記参照)、(b)コード配列の発現を指示するのに必要な1つ又は複数の転写及び/又は翻訳調節エレメント(TRE:その例は下で示す)に作動可能に結合した前述の配列(コード配列部分を含む)のいずれかを含む発現ベクター、(c)FBFPに加えて、FBFPとは無関係な配列、例えばFBFPと融合したレポーター、マーカー又はシグナルペプチドをコードする発現ベクター、並びに(d)前述の発現ベクターのいずれかを含むので本発明の核酸分子を発現する遺伝子操作された宿主細胞(下記参照)も包含する。
【0059】
上で言及し更に以下に記すTREとしては、それらには限定されないが、誘導可能な及び誘導可能ではないプロモーター、エンハンサー、オペレーター、及び当業者に公知であり原核生物で遺伝子発現を誘起又はさもなければ調節する他のエレメントがある。そのような調節エレメントとしては、それらには限定されないが、バチルス温度ファージSPO2からクローン化されたプロモーター断片(Schonerら,(1983)Gene 22:47−57)、ショ糖誘導可能なsacBプロモーター(Leeら,(2000),Appl Environ Microbiol 66:476−480)、枯草菌からのveglプロモーター(Lamら,(1998),J Biotechnol 63:167−177)、aprEプロモーター(Olmos Soto及びContreras−Flores,(2003)Appl Microbiol Biotechnol 62:369−373)、Bacillus amyloliquefaciensからのAmyQプロモーター(Widnerら,(2000),J Industrial Microbiol Biotechnol 25:204−212)、及び温度感受性C1調節プロモーター系(Scofieldら,(2003),Appl.Environ.Microbiol.69:3385−3392)がある。特に興味があるのは、B.ハロジュランスフラゲリン(hag)遺伝子の天然のプロモーターであるプロモーターである(Sakamotoら(1992)J.Gen.Microbiol.138:2159−2166)。
【0060】
宿主細菌細胞は、宿主細胞によって発現される又は発現されるべきFBFPのフラゲリン由来の配列が得られた又は得られない種又は属と、同じ種又は属のものでよい。宿主細胞及びフラゲリン由来の配列は、好ましくは同じ属であり、より好ましくは同じ種である。
【0061】
更に、本発明は微生物の実質的に純粋な培養物(例えば細菌細胞などの微生物細胞)を提供する。本明細書で使用するように、微生物の「実質的に純粋な培養物」は、その培養物中の微生物の総生細胞(例えば細菌細胞)数の約40%未満(すなわち約35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2%、1%、0.5%、0.25%、0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%未満、又は更にそれ以下)がその微生物以外の微生物生細胞である、その微生物の培養物である。これに関連する用語「約」は、関連する百分率が特定された百分率の上下15%であってもよいことを意味する。したがって、例えば約20%は、17%から23%であることができる。そのような微生物の培養物は、微生物及び増殖培地、保存培地又は輸送培地を含む。培地は液体、半固体(例えばゼリー状の培地)又は凍結されていてもよい。培養物は、液体培地中で若しくは半固体培地中/上で増殖する細胞、又は、凍結保存培地若しくは輸送培地を含む、保存培地若しくは輸送培地で保存又は輸送される細胞を含む。培養物は、培養容器又は保存容器又は基質中にある(例えば、培養用の皿、フラスコ若しくは管、又は保存用のバイアル若しくは管)。
【0062】
本発明の微生物細胞は、例えば凍結乾燥細胞として、グリセリン又はショ糖などの凍結保護物質を含む緩衝液中で、凍結細胞懸濁液として保存することができる。或いは、それらは例えば、流動床乾燥又は噴霧乾燥、又は他の任意の適当な乾燥方法により得られる乾燥細胞調製物として、保存することができる。同様に、活性を保持するために、酵素製剤は凍結、凍結乾燥又は固定して、適当な条件で保存することができる。
【0063】
本発明は、本発明のFBFPの作製方法も提供する。そのような方法では、その細胞が形質転換される発現ベクターを発現し、コードするヌクレオチド配列が1つ又は複数の転写及び/又は翻訳調節エレメントに作動可能に結合される細胞(本明細書で記載されるもののいずれか)が培養される。FBFPが次に得られる(例えば、培養物から回収される)。培養物からの取得又は回収は、細胞又は培地からのFBFPの単離を含むことができる。本発明のFBFPは、それらを組換えで発現する細胞からフラゲリンチャンネルを通して活発に分泌され、最大で20000モノマーの鎖の状態で細胞表面に付着したままであるが、そこでは、例えば機械的分断によって、それらは細胞表面から培地中に活発に分離されることができる。
【0064】
遺伝子破壊細胞
本発明の細胞のある種の実質的に純粋な培養物の相当数において、また、ある種の単離細胞において、内因性フラゲリン遺伝子はそれがフラゲリンタンパク質をコードしないように、又はそれが非機能性フラゲリンをコードするように破壊されている。本明細書で使用するように、「培養物中の相当数の細胞」は、培養物中の細胞の少なくとも60%(例えば、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、更には100%)である。本明細書で使用するように、「非機能性フラゲリン」は、それを産生する細胞の表面へ輸送することができないフラゲリン、及び/又はそれを産生する細胞の表面上で発現することができないフラゲリンである。非機能性フラゲリンポリペプチドの例は、アミノ酸14〜226が欠けているB.ハロジュランスフラゲリンである(実施例4を参照)。そのような細胞は、FBFPをコードする発現ベクターで形質転換の後に、それらの表面で本発明のFBFPを産生及び発現するための宿主細胞として役立つ。内因性の遺伝子を破壊する方法は当技術分野で公知であり、一般に相同組換えを含む。特に役立つ方法は、実施例4で記載される強制的統合方法又はその変異体である。
【0065】
機能性フラゲリン遺伝子を欠いていることに加えて、上記培養物の細胞の相当数(上記参照)及び単離細胞は、上記方法によって破壊された細胞壁プロテアーゼをコードする1つ又は複数の遺伝子を有することができる。細胞壁プロテアーゼ遺伝子の破壊の結果、関連する細胞壁プロテアーゼが産生されなくなるか、又は非機能性細胞壁プロテアーゼが産生される。本明細書で使用するように、「非機能性細胞壁プロテアーゼ」は、関連する野生型細胞壁プロテアーゼのタンパク分解活性の20%未満(例えば、10%、5%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%、0.01%未満、又は0%)の活性を有するものである。1つ又は複数の細胞壁プロテアーゼ遺伝子を破壊することによって、細胞の形質転換で用いた発現ベクターによってコードされるFBFPの、関連した破壊細胞の表面での発現レベルを増加させることができる。そのような遺伝子の一つは、wrpA遺伝子である(実施例7を参照)。他のプロテアーゼ遺伝子としては、中でもapr、alp、vpr、apr Xが挙げられる。細胞は、本明細書で再引用する属、種及び菌株のいずれかの細菌細胞でよい。機能性フラゲリン遺伝子を欠き、細胞壁プロテアーゼ遺伝子のコード配列を欠く細菌細胞の例は、B.ハロジュランスの菌株BhFC04である(実施例7を参照)。
【0066】
FBFPを使う方法
上で指摘したように、FBFPは、それらには限定されないが、バイオレメディエーション、バイオマイニング、酵素媒介基質転換において、様々な哺乳動物のいずれかで免疫応答を活性化するための免疫原として役立つことができる。したがって本発明は、バイオレメディエーション、バイオマイニング、酵素媒介基質転換を実施する方法、治療法又は予防法において用いる物質又は組成物としての免疫原性調製物の調製での使用、及び哺乳類の対象における免疫応答の活性化における使用を特徴とする。
【0067】
バイオレメディエーション及びバイオマイニング
上で示したように、バイオレメディエーション及びバイオマイニングは、水又は産業有毒廃水又は金及びプラチナ鉱山などの鉱山からの流出水などの流体を、流体中の適当な金属のイオン又は原子に結合するように適応した固形基質へ曝露させることを含む。バイオレメディエーションの場合、それに結合した金属原子又はイオンを有する固形基質は廃棄されるか、又は金属原子又はイオンを溶出及び廃棄することによって再使用のために処理される。バイオマイニングの場合、金属原子又はイオンは固形基質から分離され、適宜、更に処理される。
【0068】
本発明のバイオレメディエーション及びバイオマイニング法では、流体は、それらの表面で金属結合異種ポリペプチドを含むFBFPを発現する細菌(本明細書で列挙したもののいずれか)に曝露させることができる。細菌は生細菌又は死細菌(例えば、加熱殺菌される)でよく、例えば適当な濾過装置に含まれてもよい。或いは、FBFPは適当な組換え細菌から単離して、固形基質(例えば金属、プラスチック、セルロース、アガロース又はナイロンなどの合成ポリマー)に結合する(例えば共有結合で)ことができる。固形基質は、例えば、シート、ビーズ、粒子、繊維又はスレッドの形態であり得る。他の代替手段として、異種ポリペプチドをFBFPから切断、単離して、上に列挙した固形基質の1つに結合することができる。流速を金属原子又はイオンのFBFPへの最適な結合が起こるように調節して、流体を、細菌のカラム若しくはベッド又はそれに結合したFBFP(又は、異種ポリペプチド)を有する基質の上又はその中を通過させる。流体は、金属原子又はイオンのFBFPへの最適な結合のために、FBFP(又は異種ポリペプチド)と一度、又は必要に応じて複数回、接触させることができる。
【0069】
バイオレメディエーションでは、流体はその後、その意図するいかなる目的のために、例えば飲料水として、又は関心の工業プロセスのために用いられる。FBFP源は通常廃棄されるか、又は、金属原子又はイオンの除去によって再生されて、再利用することができる。
【0070】
バイオマイニングの場合、金属原子又はイオンはFBFP源から回収される。このことは、FBFPを発現する細菌又は単離されたFBFPを、酸性若しくはアルカリの条件などの加水分解条件に、又はEDTAなど高濃度の正に荷電したイオンに曝露し、その結果、金属をペプチドから解離し、再単離することによって達成することができる。
【0071】
酵素媒介基質変換
本発明のこれらの方法において、関心の基質は、エステル又は構成カルボン酸及びアルコールでよい。構成分子は脂肪族、それと組み合わせた芳香族でよく、他の官能基を含むことができる。構成分子はより大きいか小さくてもよく、食品(例えば脂肪酸、メントール)で、又は医薬用の化合物若しくは中間体(例えばナプロキセン、イブプロフェン)で見られるものでよい。リパーゼ及びエステラーゼは、食品及び飲料の加工、バイオレメディエーション又は精密化学物質及び医薬品の合成において用いることができる。後者では、酵素を化学選択性、位置選択性又は立体選択性のために用いることができる。詳細には、リパーゼ及びエステラーゼはしばしばエステルの立体選択的合成又は加水分解に適用され、それによってラセミ混合物からの所望のキラル化合物の分解を可能にする。
【0072】
この場合、十分な量の生成物が生成された後、反応を停止させて、生成物を反応混合物から抽出又は単離することができる。
【0073】
この場合、反応の後、例えば酵素を不活性化すること、及び/又は混合物若しくは組成物をFBFP源から分離することを含め、組成物又は混合物を所望に従い処理する。
【0074】
反応は、例えば大容積発酵槽で実行することができる。FBFP(又は、異種ポリペプチド酵素(若しくは、FBFPから切断される)は、バイオレメディエーション及びバイオマイニングのためにしたのと同じ形態で用いることができる。したがって、適当なFBFP、単離されたFBFP又はFBFPから切断された異種ポリペプチド酵素をそれらの表面で発現する生細菌又は死細菌は、酵素基質を含む反応混合物に直接加えることができる。或いは、単離されたFBFP又はFBFPから切断された異種ポリペプチド酵素は、上記固形基質(例えばアガロースビーズ)の1つに結合することができる。任意選択に、また、好ましくは、反応混合物は撹拌されるか、かき混ぜられる。これは例えば、それらの表面にFBFPを発現する組換え細菌又は固形基質と結合した剤をFBFP源として用いる場合に、その細菌又は固形基質を懸濁させておくために実施される。生成物の生成及び/又は基質除去に役立つと予め決められた時間に、生成物及び/又は基質を除去した組成物若しくは混合物はFBFP源から分離されて、所望により処理される。或いは、反応を監視し、所望のレベルの生成物及び/又は基質除去が一旦観察されたならば、生成物及び/又は基質を除去した組成物若しくは混合物はFBFP源から分離されて、所望により処理される。生成物及び/又は組成物若しくは混合物のFBDP源からの分離の前に、任意選択に酵素反応を停止することができる(例えば、熱によって)。
【0075】
免疫応答活性化法
本発明は、異種ポリペプチドが免疫原性ポリペプチド(上記参照)である本発明の1つ又は複数のFBFPに、又は、FBFPから切断された免疫原性異種ポリペプチドに免疫系の細胞が曝露させられる、哺乳類の免疫応答を活性化する方法を特徴とする。FBFPの場合、免疫系の細胞は単離されたFBFP、又はそれらの表面でFBFPを発現する組換え細菌と接触させることができる。そのような細菌は、生菌、死菌又は弱毒菌でよい。これらの剤によって活性化することができる免疫応答は、例えば、抗体産生(Bリンパ球)応答でよい。FBFP(単離されたものか、又は細菌の表面の)は、MHC(主要組織適合複合体)クラスI又はクラスII制御T細胞応答を起こすためにペプチドエピトープを抗原提示細胞(APC)に導入することにも役立つ。そのような応答は、一般に、適当なAPC内で合成されるポリペプチドの処理によって産生されるペプチドエピトープの認識によってのみ起こる。更に、本発明のFBFPは、FBFPが含むペプチドエピトープ(異種ポリペプチドとして)に対する特異性を有する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)による溶解のために、標的細胞を感作することにも役立つ。
【0076】
本発明の方法は、in vitro、in vivo、又はex vivoで実施することができる。FBFP又は切断された免疫原性異種ポリペプチドのin vitroでの適用は、例えば、免疫機構の科学的基礎研究に、又は、T細胞の機能若しくは例えば受動免疫療法の研究のために用いる活性化T細胞の産生のために役立つ。
【0077】
本発明のin vitroでの方法において、哺乳類の対象から得られたT細胞(CD4+及び/又はCD8+)は、FBFP(単離されたもの、又は細菌、好ましくは死細菌の表面で発現されるもの)及び、必ずしもその必要はないが好ましくは、T細胞と同じ個体から得られたAPCと一緒に培養される。APCが異なる個体から得られた場合は、T細胞の供与体及びAPCの供与体は、好ましくは、少なくとも1つの主要組織適合複合体(MHC)分子(例えばMHCクラスI分子)を共通して発現する。APCは、基本的に任意のMHC分子発現細胞でよい。MHCクラスI制御免疫応答を導き出したい場合は、APCはMHCクラスI分子(及び、任意選択にMHCクラスII分子)を発現し、MHCクラスII制御免疫応答を導き出したい場合は、APCはMHCクラスII分子(及び、任意選択にMHCクラスI分子)を発現する。APCは、最適には1つ又は複数の副刺激分子、例えばB7ファミリーの分子も発現する。したがって、APCは、例えば、樹状細胞(DC)、マクロファージ、単球、B細胞又はこれらの細胞のいずれかに由来する細胞系(クローン若しくは非クローン性)でよい。それらは、適当なMHC分子をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクション又は形質導入され、それを発現する任意の細胞型(例えば線維芽細胞)でもよい。そのような培養物は、1つ又は複数のサイトカイン又は成長因子、例えば、それらには限定されないが、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6、IL−7、IL−12、IL−13、IL−15、IFN−、腫瘍壊死因子−(TNF−)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)又は顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)を補うこともできる。培養物は、FBFP又は切断された免疫原性異種ポリペプチドで必要なだけ「再刺激する」ことができる。培養物は、所望レベルの免疫応答性(例えばCTL活性)が達成されたかどうかを確かめるために、様々な時間に監視することもできる。
【0078】
FBFP(及び、FBFPから切断された免疫原性異種ポリペプチド)は、通常、予防ワクチン又は免疫応答刺激治療法として、治療又は予防の方法における使用のための物質又は組成物として免疫応答を起こすことに、及び、治療又は予防の方法における使用のための免疫原性調製物を調製するために役立つ。したがって、それらは、例えば本明細書で列挙した病原体のいずれかによる感染症に対する免疫原性調製物、ワクチン又は治療剤として用いることができる。免疫原性ペプチドをフラゲリンタンパク質との融合物として投与することも可能である。フラゲリンはアジュバント(処方薬又は溶液におけるような、主成分の作用を促進又は修飾する成分)と同じ効果を示すので、これにより標的生物の免疫原性応答が強化される。アジュバントは、先天性免疫を刺激して、次に適応免疫応答を活性化する能力を有する。フラゲリンはAPC(上記参照)の活性化を通して炎症性反応を誘導することは、すでに証明されている。一例は、フラゲリンによって強化された緑色蛍光タンパク質(EGFP)融合タンパク質の生成及び提示の成功例である。フラゲリン−EGFP融合物は、APCの、更にはAPC特異的抗EGFPT細胞応答を刺激することができた。EGFPだけでは、APCの及びAPC特異的T細胞応答を刺激することができなかった(Cuadrosら,2004,Inf.Immun.Vol 72,2810−2816、McSorleyら,2002,J.Immunol.Vol 169,3914−3919)。免疫応答を誘導するフラゲリンに挿入された他のペプチドとしては、コレラ毒素サブユニットB、B型肝炎エピトープ、化膿連鎖球菌Mタンパク質エピトープ、HIVエピトープ(gp41及びgp120)、インフルエンザA赤血球凝集素エピトープ、及びPlasmodium sp.、ロタウイルス、Corynebacterium diphtheriae(ジフテリア菌)及びMiningococcal外膜タンパク質からの様々な細胞表面抗原がある(Stocker及びNewton,1994,Intern.Rev.Immunol.Vol2,167−178)。
【0079】
更に、FBFP(及び、FBFPから切断された免疫原性異種ポリペプチド)は、癌(例えば、上で引用したもののいずれか)のための有用な治療法となることができ、対象が比較的高い癌のリスクを有する場合(例えばタバコ喫煙者の肺癌又は複数の母斑を有する対象の黒色腫)、適当な融合剤をワクチンとして用いることができる。
【0080】
本明細書で使用するように、「予防」は疾患の症状の完全な予防、疾患の症状の開始の遅延、又は、後に発達する病徴の重症度の低減を意味する。本明細書で使用するように、「治療」は疾患の症状の完全な消失又は疾患の症状の重症度の減少を意味する。
【0081】
FBFP(及びFBFPから切断された免疫原性異種ポリペプチド)によって生成される免疫応答は予防的及び/又は治療的であるのが好ましいが、そうである必要はないと理解されている。例えば、FBFP(及び、FBFPから切断された免疫原性異種ポリペプチド)は、例えば本明細書で引用されているものなどの微生物の抗原又はTAAなどの様々な抗原のいずれかを検出又は精製するために役立つ抗体を生成するための、予防的でも治療的でもない免疫応答に関する科学的基礎研究において用いることができる。
【0082】
本発明の方法は、広範囲にわたる種、例えばヒト、ヒト以外の霊長類(例えばサル)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラット及びマウスに適用することができる。
【0083】
in vivo手法
in vivoの1手法において、FBFP自体、それらの表面でFBFPを発現する細菌(例えば共生細菌)、又はFBFPから切断された免疫原性異種ポリペプチドが対象に投与される。通常、本発明の融合剤は、薬剤として許容される担体(例えば生理的食塩水)で懸濁されて、経口的若しくは経皮的に投与されるか、又は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、直腸、膣、鼻腔、胃、気管若しくは肺の内部に注射(又は、注入)される。それらは適当なリンパ系組織(例えば脾臓、リンパ節又は粘膜関連リンパ系組織(MALT))に直接送達することができる。必要な投薬量は、投与経路、製剤の性質、患者の病気の性質、対象の大きさ、体重、表面積、年齢及び性別、他の投与剤並びに主治医の判断によって決まる。単離されたFBFP又はFBFPから切断された免疫原性異種ポリペプチドの適当な投薬量は、0.001〜10.0mg/kgの範囲にある。利用できるFBFP(及び、FBFPから切断された免疫原性異種ポリペプチド)の多様性及び様々な投与経路の異なる効率を考慮すると、広範囲にまたがる必要投薬量が予想される。例えば、経口投与は静脈内注射による投与よりも高い投薬量を必要とすると予想される。当技術分野で理解されるように、これらの投薬量の変更は、最適化のための標準の経験的なルーチンを使用して調節することができる。投与は単回でも多回(例えば2回又は3回、4回、6回、8回、10回、20回、50回、100回、150回、又はそれ以上)でも構わない。適当な送達媒体(例えばポリマー微小粒子又は植込型装置)へのポリペプチドのカプセル化は、送達の効率、特に経口送達の効率を増加させることができる。
【0084】
或いは、関心のFBFPをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドは、動物の適当な細胞に送達することができる。コード配列の発現は、好ましくは、例えばリンパ系組織へのポリヌクレオチドの送達によって、対象のリンパ系組織に向けられる。このことは、例えば、マクロファージなどの食細胞による食作用を最適化するための大きさに調製された、ポリマーの生物分解性微小粒子又はマイクロカプセル送達媒体の使用によって達成することができる。例えば、約1〜10mの直径のPLGA(ポリ−ラクト共グリコリド)微小粒子を用いることができる。ポリヌクレオチドはこれらの微小粒子に封入され、それらはマクロファージによって取り込まれて細胞内で徐々に生物分解され、それによりポリヌクレオチドが放出される。一旦放出されると、DNAが細胞内で発現される。微小粒子の第2の型は、細胞によって直接取り込まれるのではなく、むしろ生分解を通して微小粒子から放出されて初めて細胞に取り込まれる、徐放性核酸貯蔵所の役目を主に果たすためのものである。これらのポリマー粒子は、したがって、食作用を排除するのに十分な大きさでなければならない(すなわち、5mより大きく、好ましくは20mより大きい)。
【0085】
核酸の取り込みを達成する他の方法は、標準の方法によって調製されたリポソームを使う方法である。ベクターは単独でこれらの送達媒体に組み込むことができ、又は、組織特異抗体と一緒に組み込むことができる。或いは、静電気又は共有結合の力によってポリ−L−リジンに結合したプラスミド又は他のベクターから構成される、分子コンジュゲート体を調製することができる。ポリ−L−リジンは、標的細胞上の受容体に結合することができるリガンドと結合する(Cristianoら(1995),J.Mol.Med.73,479)。或いは、Bリンパ球、Tリンパ球又は樹状細胞特異TREなどのリンパ球系組織特異転写調節エレメント(TRE)を用いて、リンパ系組織特異的ターゲッティングを達成することができる。リンパ系組織特異TREは公知である(Thompsonら(1992),Mol.Cell.Biol.12,1043−1053、Toddら(1993),J.Exp.Med.177,1663−1674、Penixら(1993),J.Exp.Med.178,1483−1496)。筋肉内、皮内又は皮下の部位への「裸のDNA」(すなわち、送達媒体のないDNA)の送達は、in vivo発現を達成する他の手段である。
【0086】
関連したポリヌクレオチド(例えば発現ベクター)では、イニシエータメチオニン及び任意選択にターゲッティング配列を有する関心のFBFPをコードする核酸配列は、プロモーター又はエンハンサー−プロモーターの組み合わせに動作可能に結合される。
【0087】
ポリヌクレオチドは、薬剤として許容される担体で投与することができる。薬剤として許容される担体は、生理的食塩水などの、ヒト又は他の哺乳類の対象への投与に適当な生体適合性媒体である。治療的有効量は、治療した動物で医学的に望ましい結果(例えばT細胞応答)を生むことができる、ポリヌクレオチドの量である。医学分野において周知のように、任意の1患者のための投薬量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与する特定の化合物、性別、投与の時間及び経路、健康状態、及び並行投与され他剤を含む、多くの因子によって決まる。投薬量は変動するが、ポリヌクレオチドの投与のための好ましい投薬量は約10から1012のポリヌクレオチド分子である。必要に応じて、この用量を繰り返して投与することができる。投与経路は、上で列挙したもののいずれかで構わない。
【0088】
ex vivo手法
ex vivoの1手法において、T細胞(CD4+及び/又はCD8+T細胞)を含むリンパ系細胞を対象から単離して、in vitroでFBFPに曝露させる(上記参照)。リンパ系細胞は一度、又は複数回(例えば、2、3、4、6、8又は10回)曝露させることができる。リンパ系細胞における免疫活性(例えばCTL活性)のレベルは、1回又は複数回の曝露の後に試験することができる。所望の活性及びその活性のレベルが一旦達成されたならば、本明細書で列挙した経路のいずれかにより、それらの細胞を対象に再導入する。このex vivo手法の治療的又は予防的効力は、ex vivoで活性化されたリンパ球の、例えば感染性微生物、微生物に感染した宿主細胞又は腫瘍細胞に対する中和性又は細胞傷害性影響を直接に、又は間接的に及ぼす能力によって決まる。
【0089】
代わりのex vivo戦略は、FBFPをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドで、対象から得られた細胞をトランスフェクション又は形質導入することを含むことができる。トランスフェクション又は形質導入された細胞は、次に対象に戻される。そのような細胞は好ましくはリンパ系細胞であるが、それらには限定されないが、それらが対象内で生存する間は融合タンパク質の供給源の働きをする線維芽細胞、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト又は筋細胞を含めた様々な種類の任意の細胞であってよい。癌の対象では、細胞は癌細胞でよく、例えばそれら自身の癌細胞、又は同じ癌型の細胞であるが他の個体、好ましくは1つ又は複数(例えば1、2、3、4、5若しくは6)のMHC分子を対象と共有する個体からの細胞でよい。リンパ系細胞の使用は、そのような細胞はリンパ系組織(例えばリンパ節又は脾臓)に戻り、したがってFBFPが、それらがそれらの影響、すなわち免疫応答の活性化を及ぼす部位で高濃度で生じると予想される点で、特に有利である。この手法を用いて、融合剤をコードするポリヌクレオチドを用いる上記のin vivo手法の場合のように、FBFPによる活性in vivo免疫化が達成される。in vivo手法のために記載されるのと同じ遺伝子構築物及びシグナル配列を、このex vivo戦略でも用いることができる。
【0090】
ex vivoの方法は、対象から細胞を収集し、細胞を培養し、発現ベクターでそれらを形質導入して、細胞をFBFPの発現に適当な条件に保つ工程を含む。このような方法は、分子生物学の技術分野において公知である。形質導入工程は、リン酸カルシウム、リポフェクション、エレクトロポレーション、ウイルス感染及び微粒子銃遺伝子導入を含め、ex vivo遺伝子治療のために用いる任意の標準的な手段によって達成される。或いは、リポソーム又はポリマー微小粒子を用いることができる。形質導入に成功した細胞は、次に、例えば、FBFP又は薬剤耐性遺伝子の発現について選択される。所望により、細胞は細胞増殖を抑制する剤(例えば、X線又は照射又はマイトマイシンC)で処理することができ、一般に細胞が癌細胞である場合、(特に対象又は対象とMHCが同一の個体からの癌細胞である)そのように処理される。細胞は、次に患者に注入されるか植え込まれる。
【0091】
本発明のこれらの方法は、本明細書で列挙される疾患及び種のいずれかに適用することができる。FBFP又はFBFPから切断された免疫原性異種ポリペプチドが、特定の疾患に治療的であるか又は予防的であるかを試験する方法が、当技術分野で公知である。治療効果を試験する場合、疾患の症状を示す試験集団(例えば癌患者)は、上記戦略のいずれかを用いて、試験FBFP又はFBFPから切断された免疫原性異種ポリペプチドで処理される。同じく疾患の症状を示す対照群は、同じ方法を用いてプラセボで処理される。被験者の病徴の消失又は減少は、FBFP又はFBFPから切断された免疫原性異種ポリペプチドが有効な治療剤であることを示す。
【0092】
病徴の開始の前に同じ戦略を対象に適用することによって、FBFP又はFBFPから切断された免疫原性異種ポリペプチドは、予防剤、すなわちワクチンとしての効力を試験することができる。この状況で、病徴の開始の予防が試験される。類似の戦略は、上で列挙した微生物のいずれかが関係するものなど、多種多様な感染症の予防におけるFBFP及びFBFPから切断された免疫原性異種ポリペプチドの効力を試験するのに用いることができる。
【0093】
以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、限定するものではない。
【実施例】
【0094】
(実施例1)
B.ハロジュランスAlk36フラゲリンの単離及び配列決定
アクセッション番号NCIMB41348のもとでNCIMB Culture Collection(NCIMB社、Ferguson Building、Craibstone Estate、Bucksburn、Aberdeen、AB21 9YA)に寄託されているB.ハロジュランスAlk36細菌の一定量を、42℃のLuria培地(トリプトン10g/l、酵母抽出物5g/l、NaCl10g/l)pH8.5で、最高72時間までの様々な時間で増殖させた。全ての試料の細胞表面タンパク分画は、細胞(30ml)をSS34管に入れ、7,000rpm(毎分回転数)で10分間の遠心分離によりペレット化することによって調製した。上清(細胞外分画)の6mlを10%(w/v)トリクロロ酢酸(TCA、6ml)と混合して、1時間撹拌した。タンパク質はガラスCorex管に入れて7,000rpmで20分間の遠心分離によってペレット化し、100μl試料緩衝液(1×)中で再懸濁し、2分間沸騰させ、10%SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)ゲルへ加えた。
【0095】
細胞ペレットは蒸留水(3ml)及び0.2NのNaOH(3ml)で再懸濁して、室温で30分間撹拌した。細胞は7,000rpmで10分間の遠心分離によってペレット化し、上清(6ml)を10%(w/v)トリクロロ酢酸(TCA、6ml)と混合して、1時間撹拌した。沈殿した細胞表面タンパク質はガラスCorex管に入れて7,000rpmで20分間の遠心分離によってペレット化し、100μl試料緩衝液(1×)中で再懸濁し、2分間沸騰させ、10%SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)ゲルへ加え(1ウェルにつき50gのタンパク質)て、標準の方法を用いて分解した。
【0096】
高度に発現されたタンパク質は、約34kDaに対応するバンドに分解した。このタンパク質は、少なくとも72時間安定して存在していた(図1)。分解したタンパク質分画は次にImmobilon−P膜(Millipore Corporation、Billerica、MA)上へブロッティングし、クーマシーブルー(50%(v/v)メタノール中に0.1%のR250)で2分間染色し、脱色溶液(50%(v/v)メタノール、10%(v/v)酢酸)中で5分間脱色した。図1レーン4からの約34kDaのタンパク質バンドを切り出し、ブロッティングされたタンパク質のアミノ酸配列は、Perkin Elmer Applied Biosystems(Foster City、CA、USA)Procise(登録商標)491シーケンサをメーカーの説明書に従って用いて、N末端シークエンシングで決定した。初めの22のアミノ酸の配列が得られた(図2)。
【0097】
(実施例2)
B.ハロジュランスAlk36フラゲリンの生物情報科学的分析
B.ハロジュランスAlk36フラゲリンのN末端から得られた22のアミノ酸ペプチド配列を用いて、相同タンパク質についてSwiss−Proteinデータベースをスクリーニングした。このペプチド配列は、現在、B.ハロジュランスC−125(Takamiら(1999),Biosci.Biotechnol.Biochem.5:943−945)と改名されている好アルカリ性バチルスsp.C−125(Sakamotoら(1992),J.Gen.Microbiol.138:2159−2166)からのhag生成物フラゲリンタンパク質のN末端とかなりの相同性を示した(図3)。B.ハロジュランスAlk36フラゲリンのN末端の最初の12アミノ酸は、B.ハロジュランスC−125フラゲリンのN末端と92%の同一性を示した(Sakamotoら、前掲)。大腸菌、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)及び枯草菌(Bacillus subtilis)168からのフラゲリンタンパク質のアミノ酸配列の更なる比較(LaVallieら(1989)J.Bacteriol.171:3085−3094)は、この一群のフラゲリンタンパク質のN末端及びC末端の領域は配列のかなりの保存を示したので、約34kDaのB.ハロジュランスAlk36タンパク質はフラゲリンタンパク質であり、したがってhag遺伝子の生成物であると結論された。
【0098】
(実施例3)
B.ハロジュランスAlk36遺伝子のPCR増幅及びクローニング
hag遺伝子読取り枠(ORF)のクローニング
hag遺伝子のORFは、B.ハロジュランスC−125のhag遺伝子のN末端及びC末端の領域の保存配列に基づいて、順方向プライマー(F−flag、5’CTC CTG CAG AAT CAC AAT TTA CCA GCA 3’Tm=58.1℃)及び逆方向プライマー(R−flag、5’GGT TCG AAC ATC GCT TGA GAC GCT TC 3’Tm=61℃)を用いて、染色体DNAからポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した(Sakamotoら,1992)。PCR反応は、100μlの最終容積となるように、MgCl(2.0mM)を含む1×PCR緩衝液中の、テンプレート染色体DNA(100μg/μl)、F−flag(0.5μm/10μl)、R−flag(0.5μl/10μl)、dNTP(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、0.8μl/10μl)及び1μlのPwo DNAポリメラーゼ(5μ/μl、Roche)の最終濃度を含んでいた。PCR反応は、適当な最適化を行った標準手順に従ってインキュベートした。PCR生成物は低融点アガロースを使って標準のアガロース(1.0%)電気泳動によって分解し、800bp(塩基対)に対応するバンドに分解する断片を得た。800bpバンドを長波UVの下で切除し、DNAはBIO 101(Irvine、CA、U.S.A.)Geneclean(商標)システムを用いてゲルから抽出し、メーカーの説明書に従ってpMOSBlueのEcoRV部位(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ、U.S.A.からの平滑末端クローニングキット)にクローン化してpMOSBlue(Flg)を作製した。
【0099】
pMOSBlue(Flg)を、メーカーの説明書に従ってBio−Rad(Hercules、CA、U.S.A.)Gene Pulser(商標)(1.8kv、25F、200オーム)を用いて大腸菌JM83細胞にエレクトロポレーションして、アンピシリン(50μg/ml)及びテトラサイクリン(15μg/ml)を含むLuria寒天プレート上で平板培養した。青/白の選択のために、35lのX−gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−−D−ガラクトピラノシド)(50mg/mL)及び20lのIPTG(イソプロピル−−D−チオガラクトピラノシド)(100mM)をプレート上に広げた。37℃で一晩、プレートをインキュベートした。テトラサイクリンは、LacZ M15を含む選択可能な表現型が維持され、したがって、表現型を失った非組換え白色コロニーのバックグラウンドが排除されることを確認する。形質転換コロニーを選択してアンピシリン(50μg/ml)及びテトラサイクリン(15μg/ml)を含むL培地に入れ、37℃で一晩、振盪させながらインキュベートした。プラスミドDNAはQiagen(Hilden、Germany)プラスミド精製キットを使用して抽出し、標準のT7及びU−19塩基長プライマーを使ってケープタウン大学(Microbiology Department、Cape Town、South Africa)DNA配列決定サービスによって両方向で配列決定された。比較すると、B.ハロジュランスAlk36 hag ORFは、B.ハロジュランスC−125のhag ORFとヌクレオチド配列で100%の同一性を示した(図4)。
【0100】
逆PCRを用いるhag遺伝子断片のフランキング領域のクローニング
その上流側及び下流側の調節領域を含めて、B.ハロジュランスAlk36 hagのクローニングを完成させるため、ORFフランキング領域を逆PCR(iPCR)で増幅した。iPCRのために用いた方法は、Ochmanら((1990)Amplification of flanking sequences by inverse PCR.In PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis M.A.ら編),p.219−227.Academic Press.Inc.)による方法を応用した。コア領域を一度だけ「制限」して容易に増幅することが可能な既知の800bp断片に連結する約1kbの断片を生成する制限酵素を特定するために、B.ハロジュランスAlk36の染色体DNAを様々な制限酵素で消化した。消化した染色体DNAは、1%アガロースゲル上で分離し、Reedら((1985)Nucleic Acids Res.13:7207−7221)が記載しているようにImmobulon−P膜(Millipore)の上へブロッティングし、メーカーの仕様書(Boehringer Mannheim、Mannheim、Germany)に従ってDIG標識800bp断片で探索した。DIG標識バンドは、化学発光反応(Boehringer Mannheim)を使って検出した。ブロット(図5)から、最も有望な消化物はHindIII(下流領域については)及びAccI(上流領域については)消化物であると結論された。
【0101】
逆PCR(iPCR)のためのプロトコル
B.ハロジュランスAlk36の染色体消化物(HindIII及びAccI)を、1%低融点アガロースゲル上で分離した。電気泳動の後、適当な大きさの断片を含むゲルの領域を、かみそりの刃で切り取った。ゲルスライスは68℃で20分間加熱して、アガロースを融解した。DNA断片は、10lの融解アガロース、5lの10×ライゲーション緩衝液、34lの蒸留水及び1Weiss単位のT4DNAリガーゼを含む50lの総反応量中で、単量体環の形成を有利にする条件で再連結した。反応物を15℃で一晩インキュベートし、68℃で15分間加熱することによって終了させた。以下のプライマーを用いて100lのPCR反応体中で10lのライゲーション混合物を用いた:
【化1】

【0102】
PCR反応は先に述べたように設定し、94℃で2分間インキュベートし、次に、94℃で1分間、50℃で1分間及び72℃で2分間の3工程サイクルを、合計35サイクル反復した。72℃で5分の最終伸長工程が含まれた。
【0103】
iPCRの完了後、反応生成物を1%アガロースゲル上で分解して、臭化エチジウム染色により可視化した。ゲル(図6)から、約1.15kb及び0.925kbのPCR生成物がそれぞれAccI及びHindIII消化物で増幅されたことがわかる。PCR生成物の大きさは、サザンブロット法から得られた結果とよく相関した。
【0104】
PCR反応物は、High Pure(商標)PCR精製キット(Boehringer Mannheim)を使用して精製した。得られたDNAは、PCR反応のためのプライマーと同じ2つのプライマーによる配列決定のために用いた。DNA塩基配列決定は、両方のPCR断片が正しい上流及び下流領域を含むことを確認した。2つの断片はpMOSBlueベクターにクローン化して、T7及びU19量体プライマーを使って再び配列決定をした。これにより、iPCR配列決定をされた試料の初期配列が確認された。2つのクローンは、800bpのコア領域及び下流796bpの上流の、977bpの新しい配列データを生成した(図7)。これらの配列は、上流側及び下流側両方の調節領域を含むのに十分である。これらの調節領域配列をB.ハロジュランスC−125のそれらと比較して、それらが4つの異なる塩基対だけとかなりの同一性(99.9%を超える)を示すことがわかった。調節領域を含む完全なhag遺伝子を図8に示す。
【0105】
(実施例4)
内因性B.ハロジュランスAlk36染色体フラゲリン遺伝子の不活性化
プラスミドpE194(DSMZ 4554)を、ドイツ菌株保存機関DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen Gmbh、Mascheroder weg 1b、38124 Braunschweig、Germany)から得た。プラスミドpE194は、黄色ブドウ球菌細菌から単離され、枯草菌細菌に形質転換され、34℃までの温度で安定して維持されることがわかった。しかし、37℃より高温では、コピー数は分離によるプラスミド消失で減少する(Weisblumら(1979)J.Bacteriol.137:635−643)。42℃より上ではプラスミドは複製することができず、細胞がクロラムフェニコール上で生存することができる唯一の方法は、プラスミドを染色体に組み込むことによるものである。pE194からの複製起点、pC194からのクロラムフェニコール遺伝子、及び大腸菌複製起点、並びにStratagene(La Jolla、CA、U.S.A.)からのBluescript(登録商標)pSKベクターからの(−ラクタマーゼ)遺伝子だけを用いて、シャトルベクター(pSEC194)を作製した。pE194は37℃より上の温度で不安定で、43℃を超えると複製することができないので、この特徴を利用してB.ハロジュランスAlk36への組込みを推進した。
【0106】
全てのB.ハロジュランスAlk36菌株は、Chang及びCohen((1979)Mol.Gen.Genet.168:111−115)によるプロトプラスト形質転換方法を使って形質転換した。
【0107】
シャトルベクターpSEC194の構築
Bacillus/大腸菌シャトルベクター(pSEC194)は、pE194のエリスロマイシン耐性遺伝子をクロラムフェニコール耐性遺伝子で置換して、pSK oriをpE194 oriの上へ連結することによって構築した。プラスミドpE194は、TaqIで消化した。oriを含む1.35kbバンドはClaI(2.959kb)で消化したpSKに連結し、大腸菌DH10Bへ形質転換してpSE194を作製した(図9A)。プラスミドpJM103は、元のpC194からクロラムフェニコール遺伝子(1.2kb)を得るために、BglII/PvuIIで消化した(Iordanescuら(1980)Plasmid 4:256−260)。この遺伝子を含む断片は、BamHI/SmaIで消化したpSE194へ連結し、大腸菌DH10Bへ形質転換してpSEC194を作製した(図9B)。クロラムフェニコールによるスクリーニングは構築物内の欠失をもたらすので、アンピシリンを含むプレート上で大腸菌の形質転換体をスクリーニングすることが重要であった。しかし、pSEC194をB.ハロジュランスに形質転換し、クロラムフェニコールをマーカーとして用いたとき、得られたクローンは30℃〜34℃で安定して維持された。このベクターは、大腸菌/B.ハロジュランスAlk36及び枯草菌の間のシャトルベクターとして、また、B.ハロジュランスAlk36染色体への関心の遺伝子の組込みのために用いた。
【0108】
組込み型ベクターpSEC194Flg−の構築
不完全な(内因性の遺伝子が破壊される)hag遺伝子を、N末端及びC末端のORF領域、並びに上流側及び下流側の調節領域の一部だけを用いて構築し、pSEC194に連結し、B.ハロジュランスAlk36に形質転換した。pSECFlg−の構築において、hag遺伝子の大部分の内部領域(図10A)は削除されている。Flg−断片の構築のために必要とされる2つのPCR生成物を得るために、以下のプライマーを用いた:
【化2】

【0109】
PCR生成物は適当に最適化した標準手順を用いて得、一緒に連結してpBCKS(Stratagene)とし、スリーウェイライゲーションによりBamHI/PstIで消化してFlg−断片を得た。次にpBCFlg−をEcoRIで消化し、EcoRIで消化したpSEC194へクローニングしてpSECFlg−を得た(図10B)。
【0110】
組込みのために用いたプロトコルは、Biswasら((1993)J.Bacteriol.175:3628−3635)及びPoncetら((1997)Appl.and Environ.Microbiol.63:4413−4420)によって記載されている2つの異なる方法の組み合わせであった。第1のクロスオーバー(単一のクロスオーバー(sco))事象は、クロラムフェニコール(10μg/ml)を含む25mlのLB(pH8.5)内に選択したpSEC194Flg−を含むB.ハロジュランスAlk36形質転換体を、52℃で16〜24時間インキュベートすることによって促進した。得られた細胞懸濁液の連続希釈液を作製して、LA Luria寒天(pH8.5、10μl/mlクロラムフェニコール)及びLA(pH8.5)プレート上に塗布し、52℃で一晩インキュベートした。LA(pH8.5、10μl/mlクロラムフェニコール)及びLA(pH8.5)プレート上の増殖を比較して、組込み効率を判定した。sco事象はコロニーPCRで判断した(図11)。2つのクロラムフェニコール抵抗性クローン49及び50を特定し、次にクローン49を用いて第2のクロスオーバー(二重クロスオーバー(dco))事象を形成した。これは、その後、クロラムフェニコールの非存在下で、25mlのLB Luria培地(pH8.5)に入れたクローン49を30℃で2〜2.5時間(対数期)インキュベートすることによって達成された。培養物を希釈してLA(pH8.5)プレート上へ塗布し、30℃で一晩インキュベートした。コロニーを2連で拾い、LA(pH8.5、10μl/mlクロラムフェニコール)及びLA(pH8.5)プレート上へ移植した。遺伝子置換が起こったコロニー(dco)はクロラムフェニコール感受性であり、非運動性であった。クロラムフェニコール感受性のコロニーは、非運動性突然変異体についてスクリーニングを行うために、運動性評価プレート(Luriaプレート、pH8.5、0.4%寒天+0.8%ゼラチン)の上へ移植した。非運動性のdco突然変異体は、コロニーPCRによりdco事象のスクリーニングを行った(図10)。この変異した非運動性の培養物は、菌株BhFC01と改名した。二重クロスオーバーはクロラムフェニコール遺伝子の消失を確実にするために必須であって、このことはプラスミド配列の消失も示し、それによって不完全なhag遺伝子を有し非運動性の表現型(運動性プレート、図15A)を示すB.ハロジュランスAlk36突然変異株BhFC01(hag)が産生される。
【0111】
dco事象を示すために、異なるプライマーセットを用いた:
【0112】
SigF/InvRプライマーの組み合わせは、無傷のhag遺伝子が染色体上に存在するならば、342bpのPCR生成物を与えると予測された。
【0113】
SigF/FliCRプライマーセットは、染色体上に存在する不完全(400bp)及び無傷のhag(1.150)kb遺伝子を増幅すると予測された。Sig/InvRプライマーセットを用いると無傷のコピーが存在することが示された(図11、プライマーセットB、レーン1)が、2つのsco事象において不完全なバンドだけが存在することがわかった(図11、プライマーセットB、レーン1及び2)。プライマーは不完全なコピーを優先して増幅するようであった。類似した結果がAquino de Muroら((2000)Res.Microbiol.151:547−555)によって報告され、その研究では非常に顕著なバンドが1コピーで観察され、他のコピーでは非常にかすかなバンドが観察された。
【0114】
SigF/M13Rプライマーセットは、sco事象から得られたプラスミドDNAが染色体上に存在するならば、hag遺伝子だけを増幅すると予測された。dcoの後、全てのプラスミドDNAは環から排除され、いかなるPCR生成物も得られてはならない。これは、観察されたことである(図11、プライマーセットC、レーン3及び4)。PCR生成物(sco)の大きさは、N末端又はC末端のクロスオーバーがあったかどうかによって、2.507kb(不完全なhag)又は3.178(無傷のhag)であると予想された。適当な大きさのバンドが観察された。
【0115】
UpFor/DownRevプライマーセットは、クロスオーバーの位置によって不完全又は完全なhag遺伝子を増幅すると予想された。予測されたように、N末端クロスオーバー(不完全なhag)は1.735kbのPCR生成物を与え(図11、プライマーセットD、レーン1〜3)、C末端クロスオーバー(無傷のhag)は2.406kbの生成物を与えた(図11、プライマーセットD、レーン4)。dcoの後、より小さなバンドだけが増幅された。
【0116】
PCRプロファイルから得られた成績は、dco事象が得られる結果フラゲリン突然変異体BhFC01が得られることを示した。次の工程は、pSEC194上のhag遺伝子の無傷のコピーによる変異の補完により、変異がhag遺伝子内のものであることを確認することであった。
【0117】
(実施例5)
補完研究は、菌株BhFC01におけるフラゲリン発現の回復を示した
これらの実験で用いたプライマーは、以下のものである:
【化3】

【0118】
プロモーター並びにコード配列を含む完全なhag遺伝子をpSEC194にクローニングして、菌株BhFC01へ形質転換した。ゲノムのhag欠失を遺伝子の複数コピーで補完する能力を評価するために、プラスミドpSEC194FliC(無傷のフラゲリンプロモーター及び構造遺伝子を含む)をプロトプラスト形質転換によってBhFC01に導入した。形質転換体を運動性評価プレート上へ楊枝で移すと、それらはpSEC194FliCを含む菌株BhFC01の明白な運動を示した(図15)。実施例1の場合のように菌株BhFC01から細胞表面タンパク質抽出物を得て、SDS−PAGEによって分解した。約34kDaに対応するバンドに分解したタンパク質は、菌株BhFC01形質転換体においてフラゲリンタンパク質発現の回復を示した(図14A、レーン6)。
【0119】
(実施例6)
B.ハロジュランスAlk36フラゲリンの可変部のタンパク質モデリング及び融合タンパク質発現ベクターの構築
3D−PSSM(三次元の、位置特異スコアリングマトリックス)は、一次元及び三次元の配列プロファイルを二次構造及び溶媒和能力情報と組み合わせて用いる、タンパク質折りたたみを認識するための迅速な、ウェブベースの方法である。プロトコルの概要は、雑誌Molecular Biology,299:501−522(Kelleyら、2000)で見られ、その開示は本明細書でその全体が参照により組み込まれている。B.ハロジュランスAlk36フラゲリンの推定上の可変部は、3D−PSSMソフトウェアを使用してモデル化した。タンパク質モデルから、可変部の中でペプチド挿入が可能な5部位を選択した。これらの全部位は、B.ハロジュランスFliCタンパク質の可変部の外部に露出した伸長した鎖及びコイルに位置するか、又はその操作を含む(図12)。ベクターpSEC194 KpnI/HincIIを骨格として用いて、5構築物を作製した。
【0120】
NC1構築物はフラゲリン可変部の欠失及び9アミノ酸ペプチドの挿入を含んでいたが、NC2、NC3、NC5及びNC6構築物は様々な大きさのペプチドの挿入を含んでいた。
【0121】
pSEC194NC1の構築
トランケーションをしたhag遺伝子(pSEC194NC1)の構築のために、適当な最適化を行った標準手順によるPCR増幅によりN末端及びC末端の領域を得るために、pSEC194FliCをテンプレートとして用いた。pSECFliCをKpnI/EcoRIで消化して、N末端断片(566bp)を得た。FliCR及びCterFプライマーを用いたPCR増幅を用いて、C末端断片(232bp)を得た。
【化4】

【0122】
C末端のPCR断片はEcoRI/DraIで消化して、N末端断片(KpnI/EcoRI)と、スリーウェイライゲーションによりKpnI/DraIで消化したpSEC194へ連結した。得られたトランケーションされたフラゲリン(FliC)タンパク質は、アミノ酸114〜202で89アミノ酸の欠失を有する。この欠失は、FliCタンパク質の可変部の大きな領域にわたる。
【0123】
pSEC194NC2の構築
pSEC194NC2(NC2)は、読取り枠のヌクレオチド(nt)606の後ろに、15bp(5アミノ酸に対応する)多回クローニング部位(MCS)インサートを挿入することによって得られた(図13A)。適当な最適化を行った標準手順を用いて、N末端領域はプライマーSigKpn及びFliN−terRev(下記参照)を使ってPCR増幅し、C末端領域はプライマーCterF2及びDownRev(下記参照)を使ってPCR増幅した。全てのPCR反応のために、B.ハロジュランスAlk36ゲノムDNAをテンプレートとして用いた。
【化5】

【0124】
N末端断片は、XhoI/KpnIで、C末端断片はXhoI/SspIで消化した。pSEC194はKpnI/HincIIで消化し、スリーウェイライゲーションの結果pSEC194NC2が得られた。
【0125】
pSEC194NC3の構築
pSEC194NC3は、インサートの位置(nt606ではなくnt459の後)及びインサートの大きさ(9アミノ酸に対応する27bp)においてpSEC194NC2と異なった(図13B)。適当な最適化を行った標準手順に従って、N末端領域はプライマーSigKpn及びVNR2(下記参照)を使ってPCR増幅し、C末端領域はプライマーVCF及びDownRev(下記参照)を使って増幅した。両反応のためのテンプレートは、B.ハロジュランスAlk36ゲノムDNAであった。
【化6】

【0126】
C末端のPCR断片はSalI及びPstIで消化し、同じ2つの制限酵素で消化したpSKベクターに連結してpSKCterを作製した。N末端断片はKpnIだけで消化し(反対側は平滑のまま)、HincII及びKpnIで消化したpSKCterへ連結してpSKNC3を作製した。この構築物はKpnI及びSspIで消化してNC3断片を遊離し、これを次にKpnI及びHincIIで消化したpSEC194と連結してpSEC194NC3を得た。
【0127】
pSEC194NC5の構築
21のヌクレオチド(図13Cのnt387の後の7アミノ酸に対応する)を挿入して、pSEC194NC5を作製した。適当な最適化を行った標準手順を用いて、N末端領域はプライマーNC5R及びSigKpn(下記参照)を使ってPCR増幅し、C末端はプライマーNC5F及びDownRev(下記参照)を使って増幅した。全てのPCR反応のために、B.ハロジュランスのゲノムDNAをテンプレートとして用いた。
【化7】

【0128】
N末端PCR断片は、KpnI及びXhoIで消化した。C末端はpwo DNAポリメラーゼ(Roche Diagnostics、Basel、Switzerland)を使って作製し、この結果、平滑末端のPCR生成物が得られた。C末端のPCR断片は、次にXhoIで制限消化してスリーウェイライゲーションで用い、その結果pSEC194NC5が得られた。
【0129】
pSEC194NC6の構築
27bp(図13Dのnt540の後の9アミノ酸に対応する)を挿入して、pSEC194NC6を作製した。N末端(767bp)領域はプライマーSigDKpn及びVNR6を使ってPCR増幅し、C末端(349bp)はプライマーVCF6及びDownRevを使って増幅した。C末端の生成物はSalI/PstIで制限消化し、SalI/PstIで制限したpSKへ連結してpSKCter2を得た。プラスミドpSKCter2並びにN末端PCR生成物をKpnI/SalIで制限し、連結してプラスミドpSKNC6を作製した。pSKNC6からのNC6断片は、プライマーSigDKpn及びFliCRを使ってPWO taqでPCR増幅して平滑末端のPCR生成物を得、これを次にKpnIで制限し、pSEC194(KpnI/HincII)に連結してpSEC194NC6を得た。
【化8】

【0130】
全ての場合、インサートは異種ペプチド及びタンパク質をコードする配列の追加のために、多回クローニング部位(MCS)を持つように設計されていた。全てのNC構築物は、FliCタンパク質中の機能性挿入部位を識別し、発現レベルを決定し、形質転換後の表現型(B.ハロジュランスBhFC01における運動性の回復)特性を観察するように作製された。細胞表面タンパク質(CS)抽出物は、それぞれNC1、NC2、NC3、NC5及びNC6で形質転換したB.ハロジュランスAlk36の培養物から生成し、タンパク質抽出物は前の通りSDS−PAGEによって分解した。NC3及びNC6構築物を含むBhFC01は、FliCタンパク質のそれに対応するバンドに分解するタンパク質を過剰発現することがわかった(図14A、レーン1〜5及び図14B、レーン2〜3)。電気泳動ゲルから、BhFC04(NC6)菌株によって産生される修飾されたFliCタンパク質のレベルは、WT(野生型)細菌のそれと対等であったことが明らかである。NC6は、B.ハロジュランスの非運動性変異体に運動性を回復させた唯一の構築物であった(図15)。
【0131】
細胞表面(CS)分画中の約34kDaのタンパク質バンドは、FliC特異抗体によるウェスタンブロット分析によって、フラゲリン又は修飾フラゲリンであることが確認された(図14C)。
【0132】
(実施例7)
pSEC194組込み型ベクターを用いるB.ハロジュランス菌株BhFC01の染色体上の細胞壁プロテアーゼをコードするwprA遺伝子の誘導不活化
wprA遺伝子は、関連する組換え細菌の表面で発現される融合タンパク質のレベルを低下させることができた細胞壁プロテアーゼをコードする。BhFC01細菌でwprA遺伝子を削除するために、ある戦略が考案された。
【0133】
プラスミドpSECwprA−は、wprA遺伝子の1056bpの内部領域を削除することによって構築した(図16A)。この領域は、全てのwprAコード配列を含んでいた。図16Bは、wprAタンパク質のアミノ酸配列を示す。wprA−断片の構築のために必要とされるN末端及びC末端のPCR生成物を得るために、以下のプライマーを用いた。
【化9】

【0134】
PCR生成物を消化し、SacI/XbaIで制限したpSEC194に連結してpSEC194wprA−を得た(図16B)。プラスミドpSEC194wprA−を、前の通り菌株BhFC01へ形質転換した。実施例4で記載されているように、scoを含む形質転換体を用いてdco事象を促進した。得られた菌株は、BhFC04(hag、ΔwprA)と命名した。B.ハロジュランス菌株BhFC01及びBhFC04の細胞外及び細胞表面のタンパク質を抽出し、タンパク質及びプロテアーゼのプロファイルをSDS−PAGE及びゼラチン−SDS−PAGEゲル上で得た(図17)。
【0135】
両菌株のレポーター遺伝子から得られた結果は、タンパク質産生の改善及びBhFC04の異なる分画における安定性を示した(結果は示さない)。プラスミドpSEC194NC3及びpSEC194NC6は、次に、表面の修飾されたFliCタンパク質の産生及び安定性を改善するために、菌株BhFC04へ形質転換した。
【0136】
出願人は、2006年11月23日にブダペスト条約の下、BhFC04(hag、ΔwprA)B.ハロジュランス菌株をアクセッション番号NCIMBの下、NCIMB菌株保存機構(NCIMB社、Ferguson Building、Craibstone Estate、Bucksburn、Aberdeen、AB21 9YA)に寄託した。BhFC04菌株は、NCIMBアクセション番号__を割り当てられた。NCIMB菌株保存機構に寄託した菌株は、本出願の優先権主張日の前からCouncil for Industrial and Scientific Research(CSIR)によって維持されていた寄託菌から取られた。菌株の寄託菌は、30年間、又は最も最近の要請から5年間、又は特許の有効期間のうちより長い期間、NCIMB保管所で規制なしに維持され、その期間の間に寄託菌が生育不能になる場合は交換される。
【0137】
(実施例8)
融合タンパク質の表面提示
バイオレメディエーション及びバイオマイニング:ポリHisタグペプチドの表面提示
pSEC194NHisC6の構築
pSEC194NHisC6は、NC6挿入部位を用いた、菌株BhFC04の表面での金属結合ペプチド(ポリHisタグ)の提示の例として構築した。ポリHisタグ(6ヒスチジン残基を含む)は、以前、カドミウム、ニッケル及び銅と結合することが示された(Sousaら(1996)Nature Biotech.14:1017−1020)。タグは、したがって、鉱業における貴金属のバイオレメディエーション又はバイオマイニングのためのフラゲリン提示システムの使用を示すために適当であった。
【0138】
pSEC194NHisC6は、3g pSEC194NC6をXhoI及びBamHIで制限することによって構築した。ポリHisタグは、IDT(Integrated DNA Technologies、Coralville、IA、U.S.A.)によって記載される方法を用いて、2つの相補性オリゴヌクレオチド(HisF3及びHisR3、下記参照)をアニールすることによって生成した。
【化10】

【0139】
要約すると、2つのオリゴヌクレオチド(オリゴ)を、50Mの最終濃度になるようにSTE緩衝液(10mMトリスpH8、50mM NaCl、1mM EDTA)で別々に希釈した。各オリゴ溶液の等量を混合して、5Mの最終濃度に希釈した。オリゴ混合物は沸騰水浴中で100℃に加熱し、次に、水浴のスイッチを切ることによって室温まで徐々に放冷させた。アニールしたオリゴは、Geneclean(商標)IIIキット(BIO 101)を用いて精製した。アニールしたオリゴは、5’及3’末端にそれぞれXhoI及びBamHI部位を含んでいた。
【化11】

【0140】
制限したpSEC194NC6へのアニールしたポリHisタグの連結をFast−Link(商標)DNAライゲーションキット(Epicentre、Madison、WI)によって行い、pSEC194NHisC6を得た。20ngのpSEC194NC6及び30ngのアニールしたHisオリゴを、ライゲーション反応で用いた。反応は、70℃で15分間の熱不活性化によって止めた。ライゲーション混合物の2lをエレクトロポレーション(25F、200オーム、1.6KV)によって大腸菌DH10B細胞に形質転換した。クローンは、プライマーHisF3及びFliCR(5’CAA CAA AGT AAC GGT TGA GCG 3’)を用いたコロニーPCR分析(25l)によってスクリーニングした。クローンを拾って50l滅菌水に移し、5分間沸騰させた。沸騰させたコロニーは、細胞片をペレット化するために、30秒の間12,000rpmで遠心分離した。5lの沸騰させた溶解物を、各PCR反応で用いた。反応混合物は、以下の通りであった。2.5lの10×緩衝液、2.5lの8mM dNTP、0.75lの50mMMgCl、5Mの各プライマーを1.25l、0.2lのTaqポリメラーゼ(1単位)及び滅菌PCR水を25lの総容積まで。PCRパラメータは以下のようであった:94℃で4分間を1サイクル、94℃で1分間、56℃で1分間及び72℃で1.5分間のサイクルを35サイクル、72℃で4分間の1サイクルの最終伸長。単一の陽性クローンを増殖させて、得られた培養物からプラスミドDNAを単離した。ポリHisペプチドのアミノ酸配列(及びそのコードヌクレオチド配列)並びに挿入された異種ポリペプチドを形成するMCSの一部によってコードされるアミノ酸を、図18に示す。完全な挿入ペプチドの長さは、13アミノ酸であった。
【0141】
菌株BhFC04は、その構築物の金属結合能力を測定するために、先に述べたようにpSEC194NhisC6で形質転換した。形質転換体は、コロニーPCRによってpSEC194NhisC6を持つと確認された。pSEC194NhisC6構築物を持つBhFC04クローンは、ペプチドの良好な提示、並びにMagneHis Ni粒子に結合するその能力を判定するために、25mlのLB培地pH8.5で増殖させた。
【0142】
NHisC6タンパク質の産生及び機能性
細菌細胞内で提示されたペプチドの位置は、細胞外(Ex)、細胞表面(CS)、細胞壁(CW)及び細胞内(IC)のタンパク分画を単離して、10%SDS−PAGEゲル上でタンパク質試料を分離することで決定した。分画は、以下の通りに単離した。
【0143】
細胞は、安定期(16時間)まで、25mlのL培地(LB)pH8.5により30℃で増殖させた。細胞をペレット化して2.5mlの滅菌リン酸緩衝液pH7.5中で再懸濁し、この細胞ペレットはCS分画のために用いた(次の段落を参照)。上清は等量の5%トリクロロ酢酸(TCA)を加えることによって沈殿させ、室温で30分間インキュベートした。沈殿したタンパク質は17,000×gで30分間の遠心分離によってペレット化し、37℃で30分間乾燥させた。タンパク質ペレットは、EXタンパク分画を生成するために、300μlのリン酸緩衝液pH7.5の中で再懸濁した。
【0144】
等量の0.2M NaOHを再懸濁した細胞ペレットに加え、氷上で30分間スターラー棒で激しく撹拌した。細胞物質を除去して上清を得るために、8,000×gで10分間の遠心分離によって細胞をペレット化した。等量の5%TCA(トリクロロ酢酸)を上清に加え、生じた混合物を振盪しながら室温で30分間インキュベートした。細胞表面(CS)タンパク質は17,000×gで30分間の遠心分離によってペレット化した。ペレットは滅菌水で洗浄して、37℃で30分間乾燥した。CSタンパク質は、次に300μlリン酸緩衝液pH7.5の中で再懸濁した。NaOHによる「ストリッピング」の後に得られた細胞ペレットは、5mlリン酸緩衝液の中で再懸濁し、Sonopuls超音波ホモジナイザ(Bandelin、Berlin、Germany)を用いて最大強度で30分間超音波処理した。溶解した細胞は、10,000×gで10分間遠心分離してCW分画を沈殿させた。上清(IC)を取り出して、2mlエッペンドルフチューブに入れた。CWペレットは37℃で30分間乾燥し、500lのリン酸緩衝液pH7.5の中で再懸濁した。タンパク質濃度は、ブラッドフォード法(Bradford、1976、Anal Biochem 72:248〜259)で測定した。CS分画は10%SDS−PAGEゲルの上で分離して、クーマシー染色液で染色した(図19)。
【0145】
提示されたポリHisタグの金属結合能を測定するために、MagneHis(商標)タンパク質精製システム(Promega、Madison、WI、U.S.A.)を用いた。このキットは、磁石を使ってその後単離することができるニッケル粒子に結合する、Hisタグの能力を利用する。タンパク質は、次にイミダゾールを使ってニッケル粒子から切断することができる。未精製の細胞抽出物は、pSEC194NHisC6及びpSEC194NC6の形質転換細菌(−ve対照)の一晩培養物の6mlをペレット化して、ペレットを5mlのリン酸緩衝液の中で再懸濁することによって得た。上記のIC抽出のために記載されているように、各試料を超音波処理した。タンパク質は等量の5%TCAで沈殿させて、600lの溶解緩衝液(MagneHisキット)の中で再懸濁した。以降の全工程は、メーカーの説明書に従って非変性条件下で実施した。タンパク質は、100lの最終量で溶出させた。
【0146】
MagneHisビーズ(ニッケル)へのHisタグの結合が成功したものは、10%SDS−PAGEゲルで試料を分離してクーマシーブルーで染色することによって視覚化した(図20)。未結合のタンパク質(レーン6及び7)、溶出しなかったビーズ結合タンパク質(レーン4及び5)並びにビーズ結合して溶出したタンパク質(レーン2及び3)を含む3分画が含まれた。フラゲリンとのポリHisタグの融合は、機能形態のこのペプチドの提示の成功をもたらした。また、調製が非変性条件下で実行されたことは、配列アラインメント研究が予測するように、ペプチドがフラゲリンの露出ドメイン上で提示されることを証明する。
【0147】
抗原の表面発現:HIV(ヒト免疫不全ウイルス)ペプチド
pSEC194NHivC6の構築
B.ハロジュランス菌株BhFC04の表面で外来の抗原エピトープを提示するために、pSEC194NHivC6を構築した。これらのような組換え生物は、多種多様な起源からの抗原に対して様々な型の免疫応答を起こすための免疫原として用いることができる。HIV単離株HIV−1のVループ部分を、例として選択した。gp120(V3ループ)の抗原性モチーフは保存される(Gly−Pro−Gly−Arg−Ala−Phe)ことがわかり、それは中和抗体の産生を誘導する。このエピトープは、T−ヘルパー及び細胞傷害性Tリンパ球の応答を活性化することも示された(Goudsmitら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.85:4478−4482;Javaherianら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6788−6772)。
【0148】
pSEC194NHivC6は、pSEC194NC6をXhoI及びBamHIで切断することによって構築した。HIVgp120抗原エピトープは、先に述べたように2つの相補性オリゴヌクレオチド(下記の配列)をアニールすることによって生成した。
【化12】

【0149】
アニールしたオリゴは、先に述べたようにXhoI及びBamHIで切断して精製した。
【化13】

【0150】
切断したpSEC194NC6へのHIVペプチドの連結をFast−Link DNAライゲーションキット(Epicentre)によって行い、pSEC194NHivC6を得た。20ngのpSEC194NC6及び30ngのアニールしたHIVオリゴを、連結反応で用いた。連結反応は、70℃で15分間の加熱により不活性化した。
【0151】
連結混合物の2lをエレクトロポレーション(25F、200オーム、1.6KV)によって大腸菌DH10B細胞に形質転換した。クローンは、プライマーNC5F及びFliN−terRevを用いてコロニーPCR分析法(25l)でスクリーニングした。PCRは、アニール時間を1.5分から1分に短縮して、先に述べたように実施した。全ての試料は、1.5%TAEアガロースゲル上で分析した。単一の陽性クローンが成長し、得られた培養物からプラスミドDNAを単離した。HIV V3ループペプチドのアミノ酸配列(及びそのコードヌクレオチド配列)並びに挿入された異種ポリペプチドを形成するMCSの一部によってコードされるアミノ酸を、図21に示す。配列は正しいことが確認され、その後B.ハロジュランスBhFC04(hag、wprA)に形質転換した。
【化14】

【0152】
菌株BhFC04は、先に述べたように形質転換した。陽性の形質転換体は、プライマーFliN−terRev及びNC5Fを用いてコロニーPCRで確認した。先に述べたようにタンパク分画を単離するために、単一の陽性クローンを選択した。10gのCS、20gのEX、40gのCW及び40gのIC分画を10%SDS−PAGEゲル上に加え、クーマシーブルー染色剤で染色した。
【0153】
SDS−PAGEゲル上では、CS分画だけが鞭毛−Hivペプチド融合の正しい大きさに近いバンドを与えた(図22)。ペプチドの含有は、FliCタンパク質内の21aaペプチドの挿入、及びゲル上で明瞭に見ることができる約2.3KDaの鞭毛キメラの大きさの増加をもたらした。
【0154】
FliC特異抗体を使うウェスタンブロット分析は、SDS−PAGEゲル上で得られたバンドはFliC又は機能性FliCの融合タンパク質であることを示した(図23)。
【0155】
生体内変換
pSEC194NMLipCの構築
生体内変換のためのFliC提示システムの使用を実証するために、pSEC194NMLipC3を構築した。上述の実施例は、バイオレメディエーション又はワクチン開発における抗原決定基のために用いることができる小さなペプチドに注目した。Ezakiら((1998)J.Ferm.Bioeng.86:500−503)及びTanskanen((2000)Appl.Environ.Micro.66:4152−4156)は、長さが471及び302のアミノ酸の大きなポリペプチドも大腸菌フラゲリンを使って良好に提示することができることを示した。リパーゼはよく特徴づけられており、いくつかの組成物及び方法で、例えば、それらに限定されないが、デタージェント、油脂のグリセロール分解、直接的エステル化、キラル分解及びアシレート合成で役割を果たす(Litthauerら(2002)Enz.Micro.Tech.30:209−215)。Staphylococcus carnosusの細胞表面で固定されたリパーゼの使用が、Staphylococcus hyicusリパーゼに融合したフィブロネクチン結合タンパク質Bを使って実証された(Straussら(1996)Mol.Microbiol.21:491−500)。
【0156】
pSEC194NLipCは、BamHI及びXhoIでpSEC194NC3を切断することによって構築した。成熟リパーゼは、シグナル配列が存在しないようにG thermoleovorans染色体DNA(LipA)からPCR増幅した(図24)。用いたプライマーは、LipFSD及びLipRであった(下記参照)。PCR生成物を精製して、BamHI及びXhoIで切断した。
【化15】

【0157】
切断したpSEC194NC3へのリパーゼポリペプチドの連結をFast−Link(商標)DNAライゲーションキット(Epicentre)によって行い、pSEC194NLipC3を得た。20ngのベクターDNA及び60ngのリパーゼを、連結反応のために用いた。連結反応は、70℃で15分間の加熱により不活性化した。連結混合物の2lを上述したように大腸菌DH10B細胞に形質転換した。更なる分析のために単一の陽性クローンを選択した。
【0158】
pSECNLipCによるB.ハロジュランスBhFC04の形質転換及びリパーゼ活性の測定
B.ハロジュランス菌株BhFC04の形質転換は、先に述べたように実施した。クローンは、プライマーM13F(5’−GTA AAA CGA CGG CCA GT−3’)及びLipRを用いてコロニーPCRによりスクリーニングした。クロラムフェニコール(10g/ml)を含む50mlのLBに、一晩培養した培養物を接種して、OD540が1.2〜1.6になるまで増殖させた。細胞表面からCSタンパク質を剥がすためにNaOHではなく5mlのLiCl(5M)を用いたことを除き、タンパク分画を上記のように単離した。NaOHはリパーゼ酵素を不活性化したので、このことは最大のリパーゼ活性を可能にした。この方法はリパーゼ活性を低下させたものの、EX及びCS分画はTCAで沈殿させた。ザイモグラム(活性ゲル)の上で画像化するのに十分な活性が残されていた(図25)。しかし、この方法は、当然、EX及びCS分画中の活性を正確に定量するのに用いることはできなかった。それにもかかわらず、活性ゲルは融合タンパク質の実際の大きさ及び安定性を測定するのに役立つ手段であり、Takahashiら((1998)J.Ferm.Bioeng.86:164−168)によって記載されているように実施される。試料は、非変性ローディング色素を加えて37℃で30分間のインキュベーションによって調製した。SDS−PAGEゲルは、色素先端がゲル末端に到達するまで、30mAの定電流で流した。ゲルはSDSを除去するために25mMトリスpH7.5及び2.5%トリトンX−100の中で一晩インキュベートし、30分間平衡化緩衝液(25mMトリスpH7.5)へ移し、次に、0.1%ナフチルアセタート及び0.2%Fast Red TR Saltを含む平衡化緩衝液を用いてリパーゼ活性のために染色した。一旦バンドが明らかに見られたならば、TE緩衝液(10mMトリス、pH8、1mM EDTA)で2回洗浄して反応を停止させた。
【0159】
リパーゼ活性は、CS、CW及び細胞内分画で観察されたが、細胞外分画では観察されなかった。これらの知見は、FliC−リパーゼ融合はCW及びCS分画に固く結合したまま細胞表面に露出することを示した。CS分画における活性低下は、リパーゼを不活性化するTCAによるものかもしれない。これらの結果も、融合タンパク質が非常に安定していることを示す。
【0160】
次の工程は、液体培養物中に生成したリパーゼ活性を定量化することであった(図26)。pSEC194NC6(対照)又はpSEC194NLipC構築物で形質転換したBhFC04の一晩培養した培養物を、30℃のL培地pH8.5、クロラムフェニコール10μg/ml中で増殖させた。クロラムフェニコール10μg/mlを含むL培地pH8.5(60ml)を含む2つのフラスコにON培養物を接種して、0.1の出発OD540を得た。フラスコを30℃でインキュベートして、8、24及び48時間後に試料を採取した。全細胞及び細胞外の試料は、リパーゼアッセイのために用いた。脂肪分解活性は、基本的にVorderwulbeckeら((1992)Enzym Microb.Technol.14:631−639)に従ってp−ニトロフェニル−パルミタートを基質として用いて、分光光度アッセイによって測定した。アッセイ溶液1は、90mgのp−ニトロフェニル−パルミタートを30mlのプロパン−2−オルに溶かすことによって調製した。アッセイ溶液2は、450mlのトリス−HCl緩衝液pH8に溶解したNa−デオキシコール酸(2g)及びアラビアゴム(0.5g)を含んでいた。アッセイ溶液1の1mlをアッセイ溶液2の9mlに加えることによって、乳濁溶液を調製した。600μlの乳濁溶液及び25μlの酵素製剤をインキュベートすることによって、アッセイを標準条件下で実施した。
【0161】
反応は65℃で実施し、吸光度は410nmで測定した。リパーゼ活性は、U/ml(μmol脂肪酸/分/ml酵素)として計算した。410nmにおけるp−ニトロフェノールの吸光係数(pH8)は15である(1×nmol−1×cm−1=ml×cm−1)。酵素試料のタンパク質濃度は、標準としてウシ血清アルブミン希釈溶液を使ってBradford(1976)の方法で測定した。図26で示すように、最終的な活性はU/mg総タンパクとして表した。このデータは、FliCサンドイッチへ酵素を挿入して、活性を保持することが可能であることを示す。FliC/リパーゼ融合タンパク質は、B.ハロジュランス細胞壁の中で非常に安定した複合体を形成し、リパーゼ活性は細胞表面で利用できる。酵素活性は比較的強く、長期間持続することが示された。上清では酵素活性はほとんど検出されず、いずれも生体内変換のためには好ましい特性である。
【0162】
(実施例9)
フラゲリンタンパク質との融合物としての免疫原性ペプチド
アジュバントは先天性免疫を刺激して、次に適応免疫応答を活性化する能力を有する。フラゲリンはAPC(上記参照)の活性化を通して炎症性反応を誘導することは、すでに証明されている。一例は、フラゲリンによって強化された緑色蛍光タンパク質(EGFP)融合タンパク質の生成及び提示の成功例である。フラゲリン−EGFP融合物は、APCの、更には特異的抗EGFP T細胞応答を刺激することができた。EGFPだけでは、APCの及び特異的T細胞応答を刺激することができなかった(Cuadrosら,2004,Inf.Immun.Vol 72,2810−2816、McSorleyら,2002,J.Immunol.Vol 169,3914−3919)。フラゲリンに挿入された免疫応答を誘導する他のペプチドとしては、コレラ毒素サブユニットB、B型肝炎エピトープ、化膿連鎖球菌Mタンパク質エピトープ、HIVエピトープ(gp41及びgp120)、インフルエンザA赤血球凝集素エピトープ、並びにPlasmodium sp.、ロタウイルス、Corynebacterium diphtheriae(ジフテリア菌)及びMiningococcal外膜タンパクからの様々な細胞表面抗原がある(Stocker及びNewton,1994,Intern.Rev.Immunol.Vol 2,167−178)。Newtonら,(1995)Res,Microbiol.146:203−216。
【0163】
本発明のいくつかの実施形態を説明した。しかしながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を加えることができるのは言うまでもない。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】図1は、異なる増殖段階の間に採取された、B.ハロジュランスAlk36によって産生された細胞外(EX)及び細胞結合性(CB)のタンパク質のタンパク質プロファイルを示す、クーマシーブルーで染色したSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド電気泳動)ゲルの写真である。レーン1、CB(6時間)、レーン2、CB(24時間)、レーン3、CB(48時間)、レーン4、(72時間)、レーン5、分子量マーカー、レーン6、EX(24時間)、レーン7、EX(72時間)。様々な分子量マーカー(kDa)の位置は、写真の右側に示す。写真の左側の矢印は、過剰発現された34kDaタンパク質の位置を示す。
【図2】図2は、好アルカリ性バチルス種C−125(配列番号4)からのフラゲリンタンパク質の対応する最初の22のアミノ酸と整列させた、約34kDaのB.ハロジュランスAlk36タンパク質(配列番号3)の最初の22のN−末端アミノ酸を示す図である。同一の位置は、+記号並びに関連するアミノ酸に対応する文字で示す。
【図3】図3は、B.ハロジュランスAlk36(配列番号1)からクローン化した推定上のhagコード領域とバチルス種C−125(配列番号1)からのhag遺伝子の対応するコード領域とのヌクレオチド配列整列を示す図である。
【図4】図4は、様々な制限酵素で消化したB.ハロジュランスAlk36染色体DNAのDIG標識サザンブロットの写真である。ブロットは、DIGで標識した800bpのB.ハロジュランスAlk36 hagコーディング断片で探索した。レーン1、XbaI/BamHIで消化した800bpのB.ハロジュランスAlk36 hag遺伝子断片、レーン2〜7、異なる制限酵素で消化したB.ハロジュランスAlk36染色体DNA:レーン2、AccI、レーン3、EcoRI、レーン4、HindIII、レーン5、PstI、レーン6、ClaI、レーン7、PvuI。レーン8、分子量マーカー。サイズマーカーの位置(Kb)は写真の右側に示し、1.70Kb及び1.47Kbの断片のブロット上の位置は写真の左側の矢印で示す。
【図5】図5は、B.ハロジュランスAlk36染色体消化物から得た逆PCR生成物を示す、臭化エチジウム染色アガロース(1%)電気泳動ゲルの写真である。レーン1、サイズマーカー、レーン2、AccI消化物(10 I)、レーン3、HindIII消化物(10 I)、レーン4、陽性対照(ScaIで消化したフラゲリンDNA断片を含むプラスミド)。サイズマーカー(Kb)の位置は写真の左側に示し、1.157Kb及び0.925Kbの断片のブロット上の位置は写真の右側の矢印で示す。
【図6】図6は、コード配列(配列番号5)に連結する領域を含むB.ハロジュランスAlk36 hag遺伝子の、完全ヌクレオチド配列を示す図である。ボックス内のヌクレオチドは、推定上のプロモーター領域及び潜在的リボソーム結合部位を表す。白色のヌクレオチドは、バチルス・ハロジュランスC125からのhag遺伝子のそれらとは異なる。影付きのヌクレオチドは、iPCRから得られた全ての新しい配列を示す。遺伝子(配列番号1)のコード領域は、太字体で示す。
【図7−1】図7は、上流及び下流の領域(配列番号5)を含むB.ハロジュランスAlk36 hag遺伝子のヌクレオチド配列を示す図である。ボックス内のヌクレオチドは、推定上のプロモーター領域を表す。下線付きヌクレオチドは、潜在的リボソーム結合(Shine−Dalgarno)部位を表す。また、B.ハロジュランスAlk36フラゲリンの完全アミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図7−2】図7−1から続く。
【図8】図8Aは、pSE194(4.313kb)プラスミドマップを示す図である。図8Bは、pSEC194(5.496kb)プラスミドマップを示す図である。
【図9A】図9Aは、欠陥hag遺伝子がどのように構築されたかを示す、その上流及び下流の領域(配列番号6)を有するB.ハロジュランスAlk36 hag遺伝子のヌクレオチド配列を示す図である。黒い配列はhag読取り枠の欠失領域を示し、灰色の影付き配列は、PCR反応から得られて、pSECFIg−の構築で用いた欠陥hag遺伝子を作製するために連結した2つの断片、N末端及びC末端(コード領域の一部並びに上流及び下流配列を含む)を示す。PCRプライマーに対応する配列は、白色である。 配列はhag読取り枠の欠失領域を示し、pSECFIg−の構築において読取り枠の残りを配列決定する。用いるプライマーは下線付きである。
【図9B】図9Bは、pSEC194F1g−プラスミドマップを示す図である。
【図10】図10は、B.ハロジュランスAlk36染色体におけるpSEC194F1g−の組込み事象のPCR測定結果を示す、臭化エチジウム染色アガロース(0.8%)電気泳動ゲルの写真である。異なるプライマーセット(A、B、C及びD)を用いて、異なる組込み事象を試験した。レーン1、sco、突然変異体49、レーン2、sco、突然変異体50、レーン3、dco、非運動性突然変異体−BhFC01(49に由来する)、及び、レーン4、B.ハロジュランスAlk36染色体DNA。プライマーセットB及びCの間のレーンは、サイズマーカーを含む。サイズマーカー(Kb)の位置は、写真の右側に示す。
【図11】図11は、PSI−Predソフトウェアによって予測される、NC1、NC2、NC3、NC5及びNC6によってコードされるタンパク質の二次構造の比較を示す図である。このプログラムは、各タンパク質のために3状態の予測を作成するのに用いた。二次構造のα−ヘリックス(H)、伸長したβ−鎖(E)及びコイル(C)を示す。アミノ酸挿入は、太字体及び灰色のブロックで示す。
【図12】図12Aは、NC2ペプチドのアミノ酸配列(配列番号7)及びそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号8)を示す図である。図12Bは、NC3ペプチドのアミノ酸配列(配列番号9)及びそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号10)を示す図である。図12Cは、NC5ペプチドのアミノ酸配列(配列番号11)及びそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号12)を示す図である。図12Dは、NC6ペプチドのアミノ酸配列(配列番号13)及びそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号14)を示す図である。
【図13A】図13Aは、細胞表面タンパク分画を含むクーマシーブルー染色SDS−PAGEゲルの写真である。レーン1〜7、様々な遺伝子構築物で形質転換されたB.ハロジュランス菌株BhFC01。レーン1、NC1、レーン2、NC2、レーン3、NC3、レーン4、NC3sco、レーン5、NC5、レーン6、FliC、レーン7、BhFC01、レーン8、B.ハロジュランスAlk3 WT(野生型)、レーン9、分子量マーカー。様々な分子量(kDa)マーカーの位置は、写真の右側に示す。写真の右側の矢印は、過剰発現された34kDaタンパク質の位置を示す。
【図13B】図13Bは、レーン1、B.ハロジュランスAlk36、レーン2、菌株BhFC01 pSEC194NC3、レーン3、菌株BhFC01 pSEC194NC6、及びレーン4、分子量マーカーから抽出したCSタンパク質を含む、クーマシーブルー染色SDS−PAGEゲルの写真である。様々な分子量(kDa)マーカーの位置は、写真の右側に示す。
【図13C】図13Cは、図13Aに記載されているタンパク分画のSDS−PAGEゲルのウェスタンブロットの写真である。ウェスタンブロットは、ポリクローナルフラゲリン特異抗体で染色した。様々な分子量(kDa)マーカーの位置は、写真の左側に示す。写真の左側の矢印は、過剰発現された34kDaタンパク質の位置を示す。
【図14】図14は、様々なB.ハロジュランスAlk36菌株の運動性プレートの写真である。A:コロニー(1)、B.ハロジュランスAlk36 WT、コロニー(2)BhFC01(hag)、コロニー(3)、BhFC01(hag)+pSEC194FliC。B:コロニー(1)、B.ハロジュランスAlk36 WT、コロニー2〜6、(2)pSECNC1、(3)pSECNC2、(4)pSECNC3、(5)pSECNC5、(6)pSECNC6で形質転換したBhFC01。
【図15】図15Aは、完全なwprA−コード領域の概略図である。Aの白色の領域は、Bで示すpSECwprA−の構築において削除されたコード領域の領域を示す。この構築物は、次に、B.ハロジュランスBhFC01の染色体上のwprA遺伝子のノックアウトのために用いた。図15Bは、pSEC194wprA−プラスミドマップを示す図である。
【図16】図16は、菌株BhFC01及びBhFC04の細胞外(EX)及び細胞表面(CS)分画中のプロテアーゼを分析する、クーマシーブルー染色SDS−PAGEゲルの写真である。タンパク質バンド(レーン2〜5)を可視化するために、又は復元処理後のプロテアーゼ活性(レーン7〜10)のために、EX及びCS分画の一定量をSDS−PAGEゲル電気泳動によって分離してクーマシーブルーで染色した。レーン1及び6、分子量マーカー、レーン2及び7、BhFC04細胞外分画、レーン3及び8、BhFC01細胞外分画、レーン4及び9、BhFC04細胞表面分画、レーン5及び10、BhFC01細胞表面分画。様々な分子量(kDa)マーカーの位置は、写真の左側に示す。矢印は、BhFC04細胞壁分画レーン4中の欠失したWprAタンパク質バンドを示す。同じ分画中のプロテアーゼ活性の除去に成功した例を、レーン9で示す。
【図17】図17は、ポリHisペプチドのアミノ酸配列及びそれをコードするヌクレオチド配列を示す図である。ヌクレオチド配列は、pSEC194NHisC6構築物中に残存するMCSの部分を含み、フルサイズの組込みペプチドを与える。挿入されたペプチド全体の大きさは、13アミノ酸であった。
【図18】図18は、以下の菌株のCS分画のクーマシーブルー染色SDS−PAGEゲルの写真である。レーン1、B.ハロジュランスAlk36 WT、レーン2、pSEC194NC6を含むBhFC04、レーン3、pSEC194NHisC6を含むBhFC04、及び、レーン4、分子量マーカー。様々な分子量マーカー(kDa)の位置は、写真の右側に示す。
【図19】図19は、pSEC194NhisC6を含む菌株BhFC04のCS分画上で提示されたポリHisタグの金属結合を示す、クーマシーブルー染色SDS−PAGEゲルの写真である。レーン1、分子量マーカー、レーン2、pSEC194NHisC6(溶出した)、レーン3、pSEC194NC6(溶出した)、レーン4、pSEC194NC6(ビーズ)、レーン5、pSEC194NHisC6(ビーズ)、レーン6、pSEC194NHisC6(フロースルー)、レーン7、pSEC194NC6(フロースルー)。分子量マーカー(kDa)の位置は、写真の左側に示す。矢印は、フラゲリン融合タンパク質の位置を示す。ポリHisタグの存在のためにpSEC194NHisC6融合タンパク質(レーン2)の結合が成功したことに注意する。
【図20】図20は、HIV gp120ペプチドのアミノ酸配列(配列番号15)及びそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号16)を示す図である。ヌクレオチド配列は、pSEC194NHivC6構築物中に残存するMCSの部分を含む。
【図21】図21は、様々な菌株のCS分画のクーマシーブルー染色10%SDS−PAGEゲルの写真であり、HIV gp120抗原ペプチドを運ぶフラゲリン融合タンパク質を示す写真である。レーン1、pSEC194HivNC6を含むBhFC04、レーン2、WT(野生型)B.ハロジュランスAlk36、及び、レーン3、分子量マーカー。様々な分子量マーカー(kDa)の位置は、写真の右側に示す。
【図22】図22は、フラゲリン特異ポリクローナル抗体で染色したウェスタンブロットの写真である。レーン1、BhFC04+pSECNHivC6、レーン2、BhFC04+pSECNHisC6、レーン3、BhFC04+pSECNC6、レーン4、BhFC04、レーン5、B.ハロジュランスAlk36、レーン6、分子量マーカー。分子量(kDa)マーカーの位置は、写真の右側に示す。写真の右側の矢印は、過剰発現されたフラゲリン(34kDa)タンパク質の位置を示す。
【図23】図23は、ジオバチルス・サーモレオボランス(Geobacillus thermoleovorans)のlipA遺伝子の成熟リパーゼをコードする領域のヌクレオチド配列(配列番号17)及び成熟リパーゼのアミノ酸配列(配列番号18)を示す図である。
【図24】図24は、pSEC194NLipC3構築物を運ぶBhFC04から単離された様々なタンパク分画のリパーゼ活性のザイモグラムを示す写真である。EX(レーン1)、CS(レーン2と3)、CW(レーン4)及びIC(レーン5)分画を示す。EX分画はリパーゼ活性を示さない点に注意する。レーン6、分子量マーカー。様々な分子量(kDa)マーカーの位置は、写真の右側に示す。写真の左側の矢印は、約76kDaの分子量を有するフラゲリン(FliC):リパーゼ(Lip)融合タンパク質の位置を示す。
【図25】図25は、8、24及び48時間の増殖後のpSEC194NC6(リパーゼ陰性対照)又はpSEC194NLipCを含むBhFC04細胞の細胞外及び全細胞リパーゼ活性(1mgタンパク質あたりの単位(U))を示す棒グラフである。
【図26】図26は、B.ハロジュランスwprA細胞壁プロテアーゼのアミノ酸配列(配列番号19)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌フラゲリンタンパク質の全部又は一部であって、該フラゲリンタンパク質のN末端及びC末端保存領域を含むその一部と、
該フラゲリンタンパク質の可変部の中の又はそれを置換する異種ポリペプチド配列とを含む、融合タンパク質であって、
グラム陽性細菌細胞によって産生される場合、グラム陽性細菌細胞の表面で過剰発現される能力を有する、上記融合タンパク質。
【請求項2】
前記異種ポリペプチドは金属イオンに結合する能力を有するポリペプチドである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記金属イオンはニッケル、銅、カドミウム、プラチナ、パラジウム、チタン、銀及び金からなる群から選択される、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記異種ポリペプチドはポリヒスチジン配列である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記ポリヒスチジン配列は6ヒスチジン残基を含む、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記異種ポリペプチドは酵素又は酵素の機能性断片である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記酵素はリパーゼ酵素である、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記リパーゼ酵素はG.サーモレオボランス(G.thermoleovorans)リパーゼAである、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記酵素は加水分解酵素である、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記酵素はアミラーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼ及びセルラーゼからなる群から選択される、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記異種ポリペプチドは免疫原である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記異種ポリペプチドのN末端基の1から15のリンカー残基N末端を更に含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記異種ポリペプチドのC末端基の1から15のリンカー残基C末端を更に含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記異種ポリペプチドのN末端基の切断可能な部位N末端及び異種ポリペプチドのC末端基の切断可能な部位C末端を更に含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
請求項1に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項17】
前記核酸配列は転写調節エレメント(TRE)に作動可能に結合される、請求項16に記載のベクター。
【請求項18】
請求項17に記載のベクターを含む単離細胞。
【請求項19】
原核細胞である、請求項18に記載の細胞。
【請求項20】
細菌細胞である、請求項19に記載の細胞。
【請求項21】
グラム陽性細菌細胞である、請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
バチルス(Bacillus)属である、請求項21に記載の細胞。
【請求項23】
B.ハロジュランス(B.halodurans)種のものである、請求項22に記載の細胞。
【請求項24】
2005年11月23日にNCIMBにアクセション番号__で寄託した菌株BhFC04のものである、請求項23に記載の細胞。
【請求項25】
請求項18に記載の細胞を培養すること、及び培養物から融合タンパク質を得ることを含む、融合タンパク質の作製方法。
【請求項26】
細菌フラゲリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部であって、該フラゲリンタンパク質のN末端及びC末端保存領域をコードするヌクレオチドを含むそのコード配列の一部と、
該フラゲリンポリペプチドの可変部をコードする配列へ挿入されるかそれを置換する、少なくとも1つの制限酵素部位を含むヌクレオチド配列とを含む、DNA構築物。
【請求項27】
前記細菌フラゲリンはバチルスのフラゲリンである、請求項26に記載の構築物。
【請求項28】
前記バチルスフラゲリンはB.ハロジュランスフラゲリン(配列番号1)である、請求項26に記載の構築物。
【請求項29】
前記ヌクレオチド配列は配列番号1のヌクレオチド162及びヌクレオチド606の間のいずれかのヌクレオチドの直後に挿入される、請求項26から28までのいずれか一項に記載の構築物。
【請求項30】
前記ヌクレオチド配列は配列番号1のヌクレオチド441及びヌクレオチド570の間のいずれかのヌクレオチドの直後に挿入される、請求項26から28までのいずれか一項に記載の構築物。
【請求項31】
前記ヌクレオチド配列は配列番号1のヌクレオチド459及びヌクレオチド540の間のいずれかのヌクレオチドの直後に挿入される、請求項26から28までのいずれか一項に記載の構築物。
【請求項32】
前記ヌクレオチド配列は配列番号1のヌクレオチド459の直後に挿入される、請求項26から28までのいずれか一項に記載の構築物。
【請求項33】
前記ヌクレオチド配列は配列番号1のヌクレオチド540の直後に挿入される、請求項26から28までのいずれか一項に記載の構築物。
【請求項34】
グラム陽性細菌細胞の実質的に純粋な培養物であって、かなりの数の該グラム陽性細菌細胞は破壊されたフラゲリン遺伝子を含み、該破壊は機能性フラゲリンの発現を阻止する、上記培養物。
【請求項35】
前記破壊はポリペプチドをコードしないか又は非機能性フラゲリンポリペプチドをコードするDNA配列による、かなりの数の細菌細胞内の内因性遺伝子の置換によるものである、請求項34に記載の培養物。
【請求項36】
前記細菌細胞はグラム陽性細菌細胞である、請求項34又は請求項35に記載の培養物。
【請求項37】
前記グラム陽性細菌細胞はバチルス細胞である、請求項36に記載の培養物。
【請求項38】
前記バチルス細胞はB.ハロジュランス細胞である、請求項37に記載の培養物。
【請求項39】
前記B.ハロジュランス細胞は2005年11月23日にアクセション番号__でNCIMBに寄託されたBhFC04(hag、wprA)細胞及びBhFC01(hag)細胞から選択される、請求項38に記載の培養物。
【請求項40】
前記非機能性フラゲリンポリペプチドは配列番号2のアミノ酸14〜226が欠けている、請求項35から39までのいずれか一項に記載の培養物。
【請求項41】
破壊されたフラゲリン遺伝子を含むことに加えて、かなりの数の前記細菌細胞の少なくとも1つの細胞壁プロテアーゼ遺伝子が破壊される、請求項34から40までのいずれか一項に記載の培養物。
【請求項42】
前記少なくとも1つの細胞壁プロテアーゼ遺伝子の破壊はポリペプチドをコードしないか又は非機能性細胞壁プロテアーゼポリペプチドをコードするDNA配列による、かなりの数の細菌細胞内の内因性遺伝子の置換によるものである、請求項41に記載の培養物。
【請求項43】
前記少なくとも1つの細胞壁プロテアーゼ遺伝子はwrpA遺伝子である、請求項41に記載の培養物。
【請求項44】
前記破壊は細胞壁プロテアーゼ遺伝子の全てのコード配列の欠失を含む、請求項41又は請求項43に記載の培養物。
【請求項45】
破壊されたフラゲリン遺伝子を含む単離されたグラム陽性細菌細胞であって、該破壊は機能性フラゲリンの発現を阻止する、上記グラム陽性細菌細胞。
【請求項46】
バチルス属の細菌を遺伝子操作する方法であって、該細菌の染色体内のhag遺伝子を破壊することを含み、該破壊はその遺伝子による機能性フラゲリンの発現を阻止する、上記方法。
【請求項47】
細菌はバチルス・ハロジュランス細菌菌株BhFC04(hag、wprA)である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
1つ又は複数のプロテアーゼをコードする1つ又は複数の遺伝子を破壊することを更に含み、該破壊はその1つ又は複数の遺伝子による1つ又は複数の機能性プロテアーゼの発現を阻止する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記1つ又は複数の細胞壁プロテアーゼ遺伝子はwrpA遺伝子を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
液体から1つ又は複数の金属イオンを除去する方法であって、
1つ又は複数の金属イオンを含む液体を請求項1に記載の融合タンパク質と接触させることを含み、前記異種ポリペプチドは該1つより多い金属イオンと結合するポリペプチドである、上記方法。
【請求項51】
前記液体は融合タンパク質をその表面で発現する細菌細胞と接触させる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記融合タンパク質は細胞表面ポリペプチドである、請求項50又は請求項51に記載の方法。
【請求項53】
1つ又は複数の金属イオンを該1つ又は複数の金属イオンを含む液体から単離する方法であって、
1つ又は複数の金属イオンを含む液体を請求項1に記載の融合タンパク質と接触させることであって、前記異種ポリペプチドは該1つ又は複数の金属イオンと結合するポリペプチドであり、該接触は該1つより多い金属イオンの融合タンパク質への結合をもたらすこと、及び
該1つ又は複数の金属イオンを融合タンパク質から分離することを含む、上記方法。
【請求項54】
基質を生成物に変換する方法であって、
酵素基質を請求項1に記載の融合タンパク質と接触させることを含み、前記異種ポリペプチドは該酵素又は該酵素の機能性断片である、上記方法。
【請求項55】
前記異種ポリペプチドは免疫原である、哺乳類の対象で免疫応答を起こすための調製物の製造における請求項1に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項56】
請求項1に記載の融合タンパク質を含み、哺乳類の対象で免疫応答を起こす方法における使用のための物質又は組成物であって、前記異種ポリペプチドは免疫原であり、該方法は該物質又は組成物の有効量を該哺乳類の対象に投与することを含む、物質又は組成物。
【請求項57】
請求項1に記載の融合タンパク質を哺乳類の対象に投与することを含み、前記異種ポリペプチドは免疫原である、免疫応答を起こす方法。
【請求項58】
前記哺乳類の対象はヒトである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
請求項26に記載のDNA構築物を含む発現ベクターを含むキット。
【請求項60】
少なくとも1つの制限酵素を更に含む、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
前記発現ベクターが複製することができる細胞である宿主細胞を更に含む、請求項59又は請求項60に記載のキット。
【請求項62】
異種ポリペプチドをコードする核酸配列を前記DNA構築物へ挿入するための説明書を更に含む、請求項59から61までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項63】
グラム陽性菌の細胞表面に結合したポリペプチドの産生方法であって、請求項1に記載の融合タンパク質をコードする核酸を有する宿主細胞を増殖させ、それによって該ポリペプチドの産生を実現させることを含む、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9A】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図26】
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【図8】
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【図9B】
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【図15】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2008−521431(P2008−521431A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543990(P2007−543990)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際出願番号】PCT/IB2005/054022
【国際公開番号】WO2006/072845
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(506257272)
【氏名又は名称原語表記】CSIR
【住所又は居所原語表記】Scientia,0002 PRETORIA(ZA)
【Fターム(参考)】