説明

硫化物を含有しない黒液の処理方法

【課題】 パルプの蒸解工程から排出される硫化物を含有しない黒液から、水処理技術により、リグニンを凝集・分取すると共に、濾液に残存する有機物を除去し、水と酸と苛性ソーダとを回収する。
【解決手段】 黒液に鉱酸及び必要に応じて希釈水を加えてpHを1−7に調整し、凝集剤を加えて凝集するリグニンを濾別する。更に、濾液にオゾンを接触させて液中の有機物を酸化分解し、活性炭で残存有機物を吸着除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプの蒸解工程から排出される硫化物を含有しない黒液の処理に関し、同黒液から水処理技術により、リグニンを回収するものである。
【背景技術】
【0002】
クラフト法によるパルプの製造では、蒸解工程から排出される黒液を濃縮して、固形分(全蒸発性残渣物)の割合を70重量%以上に高め、その固形分を焼却し、熱エネルギーと焼却灰から薬品(ソーダ及び硫化ナトリウム)を回収するのが一般的である。
【0003】
ところで、パルプの原料の木質には、樹種により含有する割合は異なるが、シリカ(二酸化珪素)が含まれている。非木質原料のバカス、竹、パーム等には、特に多く含まれている。シリカは水や酸に不溶であるが、アルカリ(カセイソーダ等)に溶解し、アルカリケイ酸塩となる。アルカリケイ酸塩として、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)があるが、金属に付着し、乾いた状態になると金属を腐食させる。これによる腐食は、主にパルプ化プラントの黒液の濃縮装置で起こる。蒸発加熱管等を傷めるため、その防止対策には多大の労力を費やしているし、シリカの含有割合が小さい原料を使うようにすることが採り
得る最良の対策となっている。
【0004】
シリカの含有割合の高い黒液でも処理することが可能であれば、シリカの含有割合の高い木質原料が使用可能となるし、また、シリカの含有割合の高い非木質原料を蒸解して排出される黒液をも処理できれば、これまであまり使用されていなかったものがパルプ原料として使用可能となる。
【0005】
水処理技術を利用して、黒液の処理を行う技術に関連して、次のような技術がある。
本発明者らによる先の出願(特願2007−006159、特許文献1)で、希硝酸で部分酸化した後、希苛性ソーダで蒸解するパルプの製造方法を提案した。
黒液を酸性とし、リグニンを除去するものとして、特許文献2(特開2006−102743)では、黒液に酸を加えてpHを2.5〜3.5になるように調整し、凝集剤を加えてリグニンと上水とに分離し、上水にオゾンガスを接触させて、上水に含まれている有機物を酸化・除去すること、更に中和処理後、活性炭を用いて有機物を吸着・除去している。
また、オゾンを用いてパルプを漂白(有機物を酸化分解)するものとして、特許文献3(特開2006−283213)では、pH2〜4の酸性条件下、オゾンの存在下(オゾン濃度0.5〜100ppm)、波長100〜400nmの紫外線若しくは可視光を照射している。
特許文献4(特開平6−184974)では、pH2〜4の条件下、酸素が85〜95重量%、オゾンが5〜15重量%の混合ガスと接触させている。オゾンは、酸素富化ガスを用いオゾン発生器で生成させている。
特許文献5(特開平8−188976)では、実施例で、硫酸でpH2.0に調整して漂白している。
特許文献6(特表平10−510469)には、漂白に用いたオゾン(濃度6〜14重量%)の反応済みオフガスをアルカリ性媒体と接触して、炭酸ガスと共に分解、吸収することが記載されている。
特許文献7(特開2000−237772)では、水中の溶解性の難分解性有機物をオゾン及び紫外線を用いて酸化分解しているが、中圧又は高圧の紫外線ランプを用い、pH4〜6で処理し、被処理水を活性炭吸着搭で更に処理している。
非特許文献1(第1章特許から見た技術開発の動向「廃水処理技術」特許庁ホームページ)には、廃水処理技術が記載され、有機性廃水の処理として、(1)凝集・沈殿処理(2)吸着(3)膜分離法および濾過(4)オゾンの利用等が紹介されている。
【特許文献1】:特願2007−006159号公報
【特許文献2】:特開2006−102743号公報
【特許文献3】:特開2006−283213号公報
【特許文献4】:特開平6−184974号公報
【特許文献5】:特開平8−188976号公報
【特許文献6】:特表平10−510469号公報
【特許文献7】:特開2000−237772号公報
【非特許文献1】:第1章特許から見た技術開発の動向「廃水処理技術」(http://www.jpo.go.jp/shiryou/s sonota/map/ippan08/04/4-2.htm)特許庁ホームページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、パルプの蒸解工程から排出される硫化物を含有しない黒液の処理に関し、黒液から、水処理技術により、リグニンを取り出し、更に水、酸及び苛性ソーダ等を回収することを、技術課題とするものである。
また、本発明者らによる先の出願(特願2007−006159、特許文献1)で、希硝酸で部分酸化した後、希苛性ソーダで蒸解するパルプの製造方法を提案したが、その黒液は、硫化物を含有せず、数重量%以下の濃度のリグニンを含有するものであり、本発明の黒液の処理に特に適したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を下記の手段により解決した。
[1] パルプの蒸解工程から排出される硫化物を含有しない黒液からリグニンを凝集し分取する黒液の処理方法において、黒液に鉱酸及び必要に応じて希釈水を加えてpHを1−7に調整し、次いで凝集剤を加えてリグニンを凝集し、分取することを特徴とする黒液の処理方法。
[2] パルプの蒸解工程から排出される硫化物を含有しない黒液からリグニンを凝集し分取する黒液の処理方法において、黒液に鉱酸及び必要に応じて希釈水を加えてpHを1−7に調整し、次いで凝集剤を加えてリグニンを凝集して濾液し、濾液にオゾンを接触させて液中の有機物を酸化分解することを特徴とする黒液の処理方法。
[3] パルプの蒸解工程から排出される硫化物を含有しない黒液からリグニンを凝集し分取する黒液の処理方法において、
(1)黒液に鉱酸及び必要に応じて希釈水を加えてpHを6−9に調整する中和工程と、
(2)中和工程で得られた液に凝集剤を加えてリグニンを凝集する第1凝集工程と、
(3)前記(2)工程で凝集したリグニンを分取する第1分離工程と、
(4)前記(3)工程で得られた濾液に鉱酸及び必要に応じて希釈水を加えて、固形物濃度を1−8重量%、pHを1−3になるように調整するpH調整工程と、
(5)前記(4)工程で得られた液に凝集剤を加えてリグニンを凝集する第2凝集工程と、
(6)前記(5)工程で得られたリグニンを分取する第2分離工程、
を順次行うことを特徴とする黒液の処理方法。
[4] 第2分離工程で分取される濾液に、更にオゾンを接触させて液中の有機物を酸化分解するオゾン酸化工程を施すことを特徴とする前記[3]記載の黒液の処理方法。
[5] 濾液にオゾンを接触させる工程において、紫外線の照射下に行うことを特徴とする前記[2]又は[4]に記載の黒液の処理方法。
[6] オゾンを接触させる工程を終えた濾液に、活性炭を接触させ、液中の有機物を吸着除去する活性炭吸着工程を施すことを特徴とする前記[2]、[4]又は[5]のいずれか1項に記載の黒液の処理方法。
[7] 活性炭吸着工程から排出される処理水に、逆浸透膜法による逆浸透処理工程を施し、濃塩水と塩分が除去された処理水を得ることを特徴とする前記[6]に記載の黒液の処理方法。
[8] 濃塩水として塩分濃度が80g/1000ml以上のものを回収し、それを電気分解する電気分解工程を施すことにより鉱酸と苛性ソーダを回収することを特徴とする前記[7]に記載の黒液の処理方法。
[9] 黒液が、以下の方法によって得られたもの、すなわち木質チップを親水化処理工程で希苛性ソーダに浸漬して親水化する処理をし、洗浄工程に導入してアルカリ分を除去し、酸化処理工程で常温又は加温下において希硝酸で酸化処理してチップに含まれるリグニンを選択的に部分酸化し、洗浄工程に導入して洗浄し、蒸解工程で希苛性ソーダを用いて大気圧下で加温して蒸解し、次いで、洗浄工程において蒸解パルプとリグニンを含有する黒液とに分離する方法、によって得られたものであることを特徴とする前記[1]〜[8]のいずれか1項記載の黒液の処理方法。
【発明の効果】
【0008】
(1)黒液からリグニンを除去するに際し、中性ないし酸性にpH調整すると、溶解しているリグニンが容易に懸濁物質化し、凝集・分離するためにその除去率が向上し、黒液の処理が容易となる。
(2)パルプの蒸解工程から排出される硫化物を含有しない黒液から、リグニン、水と酸と苛性ソーダとを回収することができる。
(3)シリカの含有割合の高い黒液でも処理することが可能であり、クラフト法ではシリカの含有割合が高く使用されていなかった、木質、非木質原料がパルプ原料として使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
特許文献2(特開2006−102743)記載の黒液の処理方法では、黒液に酸を加えてpHを2.5〜3.5になるように調整し、凝集剤を加えてリグニンと上水とに分離しているが、リグニンの除去率は必ずしも満足するものではなかった。
【0010】
黒液として、パルプの蒸解工程から排出される硫化物を含有しないものを用いて本発明の実験を以下のように行った。使用した黒液は、本発明者らによる先の出願(特願2007−006159、特許文献1)で、「木質チップを親水化処理工程で希カセイソーダに浸漬して親水化する処理をし、洗浄工程に導入してアルカリ分を除去し、酸化処理工程で常温又は加温下において希硝酸で酸化処理してチップに含まれるリグニンを選択的に部分酸化し、洗浄工程に導入して洗浄し、蒸解工程で希苛性ソーダを用いて大気圧下で加温して蒸解し、次いで、洗浄工程において蒸解パルプとリグニンを含有する黒液とに分離する方法」において、排出される黒液であるが、硫化物を含有せず、数重量%以下の濃度のリグニンを含有するものである。
【0011】
その木質チップを用いて蒸解パルプとリグニンを含有する黒液とを取得する具体的な処理例を以下に説明する。
【0012】
その処理工程を図3のフローチャートに沿って説明する。
建設発生木材(合板)を回転爪を内臓する破砕機(図示せず)により粗破砕し、更に二次的に破砕して、50mm以下の木質チップを分級した。更に3〜15mmになるように破砕・分級を繰り返して、木質チップを調製した。
親水化処理工程では、5重量%の希苛性ソーダに浸漬した。液温は常温で50時間処理した。
以降に述べるプロセスでは、適切な工程間洗浄が必要であるが、以下は洗浄については省略した。
酸化処理槽は密閉可能な容器であるが、親水化処理したチップを5重量%の希硝酸と共に常温で酸化処理槽に投入し、下方から蒸気を吹き込んで、徐々に加熱・撹拌し酸化処理を施した。処理槽内は40分後に80℃に達した。高温になるにつれて、発泡が激しくなるが、激しい時は、一時加熱を中止する。酸化処理層の上部から、NOを含むガスを回収した。リグニンは選択的に部分酸化されるが、溶出量は少なかった。
更に、熱湯を加え、加熱して、酸化処理を続行したが、処理は98℃に達したところで発泡が治まり、反応の終点に達した。
酸化処理して洗浄したチップを5重量%の苛性ソーダと共に蒸解槽に投入し、下方から蒸気を吹き込んで煮沸・撹拌した。処理時間は、発砲が激しくなってから1時間とした。
処理後、蒸解したパルプと黒液を分離した。黒液からリグニンを凝集・分取したが、チップに含まれるリグニンの95%以上が溶出されていた。
蒸解したパルプを洗浄後、漂白工程で次亜塩素酸ソーダを使ってパルプを漂白し、洗浄後精選工程でパルプに含まれるゴミなどの異物を分離して除去した。
なお、製造されたパルプは、クラフト法パルプと同等のものであった。
【0013】
まず、図1に示すフローチャート(実施例1)にしたがい、前記具体的な処理例で得られた黒液のpHを一度にpH2にして凝集・分離した。その場合の有機物の除去率を[表1]に示した。
また、図2に示すフローチャート(実施例2)にしたがい、黒液を中和してpH8で凝集・分離し、更にpHを2にして凝集・分離した。その場合の有機物の除去率を[表2]に示した。
酸は塩酸、凝集剤はPAC(ポリ塩化アルミ)を用いた。黒液A、B、Cは、同一成分の黒液を希釈して調整した。なお、上記有機物はその75%以上がリグニンであることを確認している。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
[表1]と[表2]の対比から、黒液からの有機物除去率は、黒液のpHを一度にpH2にして凝集・分離した場合よりも、中和してpH8で凝集・分離し、更にpHを2にして凝集・分離した時のほうが向上していることが判る。
その原因として、黒液には、リグニン以外にも糖化した分解物、脂肪酸、樹脂酸等が含まれているが、酸性下で、溶解あるいは安定コロイドとなり、残留有機物となるもののうち、中性下で、凝集・分離される有機物があるからと考えられる。
【実施例】
【0017】
実施例1:
以下、本発明を、図1の本発明のフローチャートに基づいて説明する。
黒液として、パルプの蒸解工程から排出される硫化物を含有しないものを用いる。本発明の処理に適した黒液は、本発明者らによる先の出願(特願2007−006159、特許文献1)で、希硝酸で部分酸化した後、希苛性ソーダで蒸解するパルプの製造方法から排出される黒液であるが、硫化物を含有せず、数重量%以下の濃度のリグニンを含有するものである。
なお、硫化物の含有が必然であるクラフト法の黒液は、硫化物が硫黄に酸化され、処理装置に付着し操業が困難となるので、本発明には適用できない。
pH調整工程では、黒液に鉱酸及び必要に応じて希釈水を加えてpHを1−7に調整する。鉱酸として、塩酸、硫酸が挙げられる。
凝集工程では、凝集剤を添加して、撹拌し、凝集物を沈殿(あるいは浮上)させる。凝集剤としては、硫酸バンド、塩化アルミ、PAC(ポリ塩化アルミ)等の無機系のものと、ポリアミン、DADMAC、メラミン酸コロイド、ジンアンジアジド等の有機凝集剤が挙げられる。
凝集剤には、それぞれ最適なpH範囲があるので、pHに応じて凝集剤を選択すべきものであるし、無機系の凝集剤と有機系の凝集剤を併用すると効果が増大することもある。
この工程では、PAC(ポリ塩化アルミ)は広いpH範囲で用いることができるので、適している。使用量は、数十〜数百ppmが適量である。
【0018】
分離工程では、凝集剤を添加して、撹拌して沈殿(あるいは浮上)する凝集物(殆どがリグニンである)を分離し脱水する。
脱水手段は限定されないが、濾過、遠心脱水、ベルトプレス脱水、スクリュープレス脱水等が適用できる。
【0019】
さらに幾つかの処理工程を追加することができる。
追加工程としてのオゾン酸化工程では、分離工程から排出される濾液を酸化し液中の有機物を除去するものである。
オゾンは、強力な酸化力を有しているので、有機物の酸化に用いられるが、二酸化炭素まで進むのではなく、途中の段階で止まることがある。このために、紫外線や二酸化チタン光触媒のような固体触媒を用いる促進酸化処理が行われており、オゾンより強い酸化能力を持つ活性酸素が発生する。
鉱酸として塩酸を用い、処理容器中に紫外線を照射することにより、次亜塩素酸(ClO-)、亜塩素酸(ClO2-)等の塩素酸が発生し、活性酸素放出し、更に酸化力を強くする。
オゾン発生装置は、高いオゾン濃度及び供給圧力の大きいものが望ましいが、空気の代わりにPSA酸素発生装置からの純度約90%の高濃度酸素を原料とし、発生オゾン濃度が15重量%、供給圧力が約12気圧程度であるものが上市されており(特許文献4、6も参照)、本発明に好適に使用できる。
オゾンは、ノズルからマイクロバブル状に噴射すると、オゾンと液との気液接触を促し、酸化反応が促進される。未反応のオゾンを含む排ガスは、圧力弁を通してオゾン分解装置でオゾンを分解後放出される。放出されるガスは、一部炭酸ガス、窒素、アルゴンを含有するが、大部分は酸素であるから、曝気用酸素として利用することができる。
【0020】
追加工程としての活性炭吸着工程では、残存する微量の有機物を活性炭を用いて吸着除去するものである。
この吸着処理は、中性のほうが効率がよいので、オゾン酸化工程から排出される処理水を苛性ソーダで中和した後、粒状活性炭を充填した槽(固定床)に通水することにより行うとことが望ましい。
粉末活性炭と処理水とを混合撹拌して、吸着後粉末活性炭を濾過又は沈降により分離してもよい。
吸着能が低下した活性炭は、熱や薬品等によって再生することができる。
【0021】
追加工程としての逆浸透処理工程では、活性炭吸着工程から排出される処理水を水と濃塩水とに分けるものである。
処理水側を加圧すると、逆浸透膜を通して水が透過し、処理水側に溶質(塩分)が残り、濃縮される。
透過した処理水は、不純物の含有量は少ないので、プロセス水として回収される。一方の濃塩水は、電気分解工程に送水される。
【0022】
追加工程としての電気分解工程では、イオン交換膜法と隔膜法、水銀法があるが、イオン交換法により、高純度の苛性ソーダと水素と塩素ガスを得ることができる。ただし、イオン交換法は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、硫酸イオンが障害となるので、濃塩水から予め除去しておくことが肝要である。
回収される水素と塩素ガスから高純度の塩酸が製造できる。
【0023】
実施例2:
以下、本発明の他の例を、図2の本発明のフローチャートに基づいて説明する。
黒液として、パルプの蒸解工程から排出される硫化物を含有しないものを用いる点は、実施例1の場合と同じである。
【0024】
中和工程では、黒液に鉱酸及び必要に応じて希釈水を加えてpHを6−9に調整する。鉱酸として、塩酸、硫酸が挙げられる。なお、硝酸は、後の工程でNOxが生成する虞があり好ましくない。固形分(全蒸発残留物)濃度は低い方が凝集の際に有機物の捕集率が大きくなるが、低すぎると液量が増大し、処理の効率が落ちる。後のpH調整工程で固形分が1−8重量%に保てる範囲で希釈すべきである。
【0025】
第1凝集工程では、凝集剤を添加して、撹拌し、凝集物を沈殿(あるいは浮上)させる。凝集剤等は実施例1と同様である。
【0026】
第1分離工程では、凝集剤を添加して、撹拌して沈殿(あるいは浮上)する凝集物を分離し脱水する。脱水手段は実施例1と同様である。
【0027】
pH調整工程では、第1分離工程から排出される濾液を鉱酸(塩酸、硫酸等)及び希釈水を用いて、pH1−3、固形分1−8重量%に調製する。pHが1未満では、酸の消費量が急激に増大するが、効果の向上が望めない。pHが3を超えると、凝集率が低下する。固形分が1重量%未満では、凝集率は向上するものの液の処理量が多くなり過ぎ効率が落ちる。固形分が8重量%を超えると凝集操作が不能となる。温度については、格別に加熱も冷却も必要ではなく、室温で行われる。
【0028】
第2凝集工程では、第1凝集工程と同じようなことがいえる。pHが低いので、凝集剤としては、硫酸バンド、塩化アルミ、PAC(ポリ塩化アルミ)等の無機系が適している。
【0029】
第2分離工程では、第1分離工程と同じようなことがいえる。
【0030】
オゾン酸化工程では、第2分離工程から排出される濾液を酸化し有機物を除去するものである。
【0031】
活性炭吸着工程では、残存する微量の有機物を活性炭を用いて吸着除去するものである。
【0032】
逆浸透処理工程では、活性炭吸着工程から排出される処理水を水と濃塩水とに分けるものである。
【0033】
電気分解工程では、イオン交換膜法と隔膜法、水銀法があるが、イオン交換法により、高純度の苛性ソーダと水素と塩素ガスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明方法のフローチャートである。
【図2】本発明方法の他のフローチャートである。
【図3】本発明方法で使用される黒液の製造のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプの蒸解工程から排出される硫化物を含有しない黒液からリグニンを凝集し分取する黒液の処理方法において、黒液に鉱酸及び必要に応じて希釈水を加えてpHを1−7に調整し、次いで凝集剤を加えてリグニンを凝集し、分取することを特徴とする黒液の処理方法。
【請求項2】
パルプの蒸解工程から排出される硫化物を含有しない黒液からリグニンを凝集し分取する黒液の処理方法において、黒液に鉱酸及び必要に応じて希釈水を加えてpHを1−7に調整し、次いで凝集剤を加えてリグニンを凝集して濾液し、濾液にオゾンを接触させて液中の有機物を酸化分解することを特徴とする黒液の処理方法。
【請求項3】
パルプの蒸解工程から排出される硫化物を含有しない黒液からリグニンを凝集し分取する黒液の処理方法において、
(1)黒液に鉱酸及び必要に応じて希釈水を加えてpHを6−9に調整する中和工程と、
(2)中和工程で得られた液に凝集剤を加えてリグニンを凝集する第1凝集工程と、
(3)前記(2)工程で凝集したリグニンを分取する第1分離工程と、
(4)前記(3)工程で得られた濾液に鉱酸及び必要に応じて希釈水を加えて、固形物濃度を1−8重量%、pHを1−3になるように調整するpH調整工程と、
(5)前記(4)工程で得られた液に凝集剤を加えてリグニンを凝集する第2凝集工程と、
(6)前記(5)工程で得られたリグニンを分取する第2分離工程、
を順次行うことを特徴とする黒液の処理方法。
【請求項4】
第2分離工程で分取される濾液に、更にオゾンを接触させて液中の有機物を酸化分解するオゾン酸化工程を施すことを特徴とする請求項3記載の黒液の処理方法。
【請求項5】
濾液にオゾンを接触させる工程において、紫外線の照射下に行うことを特徴とする請求項2又は4に記載の黒液の処理方法。
【請求項6】
オゾンを接触させる工程を終えた濾液に、活性炭を接触させ、液中の有機物を吸着除去する活性炭吸着工程を施すことを特徴とする請求項2、4又は5のいずれか1項に記載の黒液の処理方法。
【請求項7】
活性炭吸着工程から排出される処理水に、逆浸透膜法による逆浸透処理工程を施し、濃塩水と塩分が除去された処理水を得ることを特徴とする請求項6に記載の黒液の処理方法。
【請求項8】
濃塩水として塩分濃度が80g/1000ml以上のものを回収し、それを電気分解する電気分解工程を施すことにより鉱酸と苛性ソーダを回収することを特徴とする請求項7に記載の黒液の処理方法。
【請求項9】
黒液が、以下の方法によって得られたもの、すなわち木質チップを親水化処理工程で希苛性ソーダに浸漬して親水化する処理をし、洗浄工程に導入してアルカリ分を除去し、酸化処理工程で常温又は加温下において希硝酸で酸化処理してチップに含まれるリグニンを選択的に部分酸化し、洗浄工程に導入して洗浄し、蒸解工程で希苛性ソーダを用いて大気圧下で加温して蒸解し、次いで、洗浄工程において蒸解パルプとリグニンを含有する黒液とに分離する方法、によって得られたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の黒液の処理方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−213959(P2009−213959A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57814(P2008−57814)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(507014715)日本セルロース株式会社 (3)
【Fターム(参考)】