説明

硬化剤繊維成分

硬化剤繊維成分(10、30、46、44、210、310、410)は、熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂を硬化するのに好適な硬化剤の1以上の繊維又はフィラメントを含む。複数の硬化剤繊維を含む硬化剤繊維成分では、その繊維を、例えば加撚により混繊して糸又はより糸を形成することができる。硬化剤繊維成分は、織布又は不織布硬化剤繊維のシート、織物、層、テキスタイル又はマットの状態の材料を形成するために使用できる。硬化剤繊維成分は、繊維強化樹脂複合材料などの複合材料(12、26、28、29、34、36、43、48、54、58、62)を製造するために使用できる。硬化剤繊維成分は、撚り合わせ、縫合又は他の繊維若しくは繊維材料、例えば繊維強化材(14、114、214、314、414)、繊維質硬化性樹脂、繊維質熱可塑性物質(32、46、52)、他の非強化繊維との層形成を含めて混繊して、複合材料、プレプレグ材、予備形成品及び物品を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化剤繊維成分に関するものであり、特に熱硬化性樹脂を硬化させる際に使用するための硬化剤繊維成分に関するものであるが、これに限定されるわけではない。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂は、繊維強化複合材料の製造の際に硬化性マトリックス又は硬化性マトリックスの主成分として使用されるのが一般的である。この強化用繊維は、通常は樹脂マトリックス内には溶解せず、一般には、いったん硬化したら樹脂マトリックスを硬くし、補強し、それによって強化させるように作用する。このような強化用繊維の好適なものとしては、炭素、ガラス、アラミド、セラミック及び当業者に知られている他のものが挙げられる。
【0003】
複合材料において熱硬化性樹脂及び強化用繊維の物理的特性及び化学的特性を組合せると、通常、この組合せが硬化したときに、得られる複合材料製品はかなりの強度と相対的に軽い重量特性を有するため、このような成分を航空宇宙産業、自動車産業、海洋産業及び土木工学産業を含めた多くの産業で多数応用できるようになる。この(これらの)樹脂及び繊維は、当業者には周知のように、所望の特性を有する複合材料及び複合品を生じさせるように注意深く選択される。
【0004】
繊維強化複合材料及び繊維強化複合材料から作られる複合品を形成させるため方法が多数知られている。硬化させて複合品を形成させるための成形型又は型に設置する前にマトリックス樹脂と強化用繊維とを組み合わせることを含む方法が存在する。プレプレグ材は、一般にはシートやテープの状態で与えられる、予め選択された強化用繊維とマトリックス樹脂との組合せである。既知のプレプレグ材構造の利益及び不利益は、当業者には周知である。
【0005】
繊維強化複合材料を製造するための他の方法は、乾燥強化用繊維を成形型又は型に設置し、続いて樹脂トランスファー成形及び液体樹脂注入などの技術を使用して樹脂を繊維に注入することを含む。
【0006】
一般的に使用されている熱硬化性マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、シアン酸エステル、BMI、ベンズオキサジン又はそれらの組合せが挙げられる。プレプレグ材の製造の際に、通常は既知の方法に従って、熱硬化性樹脂を強化用繊維の層に導入して、該層を完全に又は部分的に含浸させる。マトリックス樹脂を強化繊維層に液体の状態で導入して該繊維上に樹脂の層を形成させ、繊維層に部分的に若しくは完全に含浸させ、又はマトリックス樹脂を繊維層の表面上に位置した予備形成樹脂層として導入することができる。このようなプレプレグ材では、熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂の硬化を促進させるための硬化剤とプレミックスされる場合が多い。結果として、このようなプレプレグ材の品質保持期間が制限されるので、品質保持期間を実現可能なレベルにまで延長するには、冷蔵又は冷凍保管が必要となる場合が多い。
【0007】
樹脂注入技術では、熱硬化性マトリックス樹脂は、通常、硬化中に乾燥繊維層に完全に含浸するように、液体の状態で導入される。また、熱硬化性樹脂は、その中にプレミックスされた硬化剤と共に導入されるのが一般的であり、これは、高温及び/又は高圧の条件と相まって、熱硬化性樹脂の強化繊維構造内での硬化、すなわち繊維強化樹脂マトリックスを有する複合材料成分又は複合品の形成をもたらす。しかしながら、熱硬化性樹脂の完全かつタイムリーな硬化を確保するためには、正確な硬化条件を、所定の系で使用される特定の熱硬化性樹脂及び硬化剤に対して適用することが必要である。これは、多大な時間を必要とし、また達成するのが困難な場合が多い。マトリックス樹脂の注入速度が緩やか過ぎる場合には、熱硬化性樹脂と硬化剤とは、満足のいく含浸が達成できない状態にまで反応する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
繊維強化複合材料物品の製造のための当該既知の技術では、硬化した繊維強化複合材料物品内部に望ましくない空洞部分や間隙が形成するのを防ぐ又は最低限に抑えることが一般的に目的とされている。というのは、これらの間隙は、最終製品の内部に弱点を付与するからである。未硬化のプレプレグ材を型又は成形型に置いて物品を成形する場合には、部材を一つ一つ積み重ねることが望ましいと思われる。これらの層間には空気が閉じ込められる場合が多いので、硬化プロセス中にこれらの空洞部分を取り除くのに役立つ様々な技術が存在する。しかし、これらは、複雑でしかも高価なプロセス及び装置、例えば、これらの樹脂層間から外に空気を追い出すのに必要な条件を創り出すためのオートクレーブを伴う場合がある。
【0009】
樹脂注入技術により、注入と硬化の速度及びタイミングが最適化されることを条件に望ましくない空域をほぼ追い払うことができるが、これは、これを達成すべき条件が樹脂系から樹脂系、硬化剤から硬化剤、繊維から繊維などまで様々であるため、達成するのが困難であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤を含む硬化剤繊維成分を提供する。
【0011】
硬化剤繊維成分は、硬化剤の単繊維を含むことができる。或いは、硬化剤繊維成分は、複数の硬化剤繊維を含むことができる。硬化剤繊維成分内の繊維は、連続及び/又は不連続、一方向、撚り及び/又は撚り合わせであることができる。
【0012】
硬化剤繊維成分は、好ましくは触媒及び/又はハードナー及び/又は硬化促進剤の1種以上を含む。硬化剤繊維成分は、好ましくは、熱硬化性樹脂を硬化させるのに好適である。好適な硬化剤の例としては、ジシアンイミド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−メチレンビス(2,6’−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、3,5’−ジエチルトルエン−2,4/2,6−ジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、N,N’−(メチル−1,3−フェニレン)ビス[N,N’−ジメチル尿素]、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、他のイミダゾール誘導体、三フッ化硼素錯体、三塩化硼素錯体、ビスフェノールA、ビスフェノールF、チオジフェノール、フタル酸無水物、マレイン酸無水物、ナジン酸無水物、メチルナジン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、ノネセニル(nonecenyl)コハク酸無水物及びドデセニルコハク酸無水物が挙げられる。繊維成分中の繊維又は繊維の少なくとも1種は、多数の硬化剤のブレンドを含むことができ、及び/又は該成分は、異なる硬化剤及び/又はそれらのブレンドを含む複数の異なる繊維を有することができる。
【0013】
硬化剤繊維成分は、1種以上の添加剤、例えば、特に硬化したときに熱可塑性樹脂を強くするように作用し得る1種以上の熱可塑性物質及び/又はゴム、及び/又は硬化剤の繊維の状態での形成及び保持を容易にし得る、熱可塑性物質、ゴム、カーボンナノチューブなどのナノ粒子などを含むことができる。該添加剤又は該添加剤の少なくとも1種は、硬化剤内部に溶解できる。
【0014】
硬化剤繊維成分の硬化剤は、硬化の対象となる樹脂を硬化させるのに必要な硬化剤系の一部のみを含むことができる。該一部は、硬化剤繊維成分及び/又はそれを用いて作られる製品の所望の特性に応じて選択できる。興味のある特性の一つは、硬化剤繊維成分及び/又はそれを用いて作られた未硬化材料の保存期間又は品質保持期間である。硬化剤繊維成分及びそれを用いて作られた未硬化材料が可能な限り長い品質保持期間を有すること、特に周囲温度(18℃〜23℃)で保存したときに良好な品質保持期間を有することが一般に有益である。特定の熱硬化性樹脂における硬化用の硬化剤系の多くが、多数の要素又は成分を有し、そのうちの一つは、特定の硬化段階で他のものよりも活性なものであることができる。1種以上の要素は、初期の硬化段階では比較的活性であり(樹脂の硬化を促進するように)、また、1種以上は、後期の段階でより活性である。硬化剤系は、一般に、それによって硬化する樹脂にとって所望の硬化特性を付与する要素又は成分を含むように、当業者によって処方される。硬化剤は、硬化の初期段階で、特に目的の保存条件では比較的活性な硬化剤系の一部を含むことができる。硬化剤繊維成分の固体繊維形態は、材料中における硬化剤と任意の硬化性樹脂とのいかなる相互作用をも制限し、かつ、その相互作用が一般に液状の硬化剤の場合よりも有意に少ないという効果を有する。この相互作用の有意な制限により、硬化性樹脂及び硬化剤繊維成分を、硬化剤繊維成分周辺の材料に含浸される液状又は樹脂状の硬化性樹脂と共に保存する実施形態であっても、本発明の材料に良好な保存特性が付与される。硬化剤繊維成分と硬化性樹脂との接触が制限される又はその接触がない他の実施形態では、保存特性はさらに改善されるであろう。例えば、硬化性樹脂は液状又は樹脂状であるが硬化剤繊維が硬化性樹脂に完全には包埋されていない実施形態では、相互作用のレベルはさらに制限される。硬化性樹脂自体を全体として又は繊維その他の固体の状態で与える実施形態では、それらの相互作用を、たとえそれらが接触した状態にあったとしてもさらに制限することができ、又はそれらを接触しないように材料に与えた場合には実質的になくし、当該材料に特に良好な保存特性を付与することができる。
【0015】
或いは、硬化剤は、硬化の初期の段階では、特に目的の保存条件で比較的不活性な成分を含むことができる。これは、硬化剤繊維成分が硬化サイクルの間に溶融しかつ複合材料の全体にわたって分散するのに十分な時間があることを確保するために有益であると考えられる。
【0016】
好ましくは、硬化剤繊維成分は、23℃の温度で、50,000Pa.sを超える、より好ましくは、200,000Pa.sを超える粘度を有する。好ましくは、粘度は、硬化中には20,000Pa.sよりも下まで低下する。
【0017】
硬化剤繊維成分の繊維又はその少なくともいくらかは、1〜200ミクロンの直径を有することができる。好ましくは、硬化剤繊維成分の繊維又はその少なくともいくらかは、10〜100ミクロンの直径、最も好ましくは10〜50ミクロンの直径を有する。
【0018】
好ましくは、硬化剤繊維成分は、冷凍保存したときに12ヶ月を超える品質保持期間、好ましくは、周囲温度(18℃〜23℃)で保存したときに3ヶ月を超える品質保持期間を有する。
【0019】
本発明のさらなる態様によれば、複数の硬化剤繊維成分を含む硬化剤繊維材料を提供する。
【0020】
該材料は、硬化剤繊維成分であって、そのうちのいくらかが繊維質硬化剤織物、テキスタイル、シート又はマットを形成するように織られたものを含むことができる。
【0021】
代わりに又は加えて、硬化剤繊維成分の少なくともいくらかは、織ったものではなく、かつ、例えばランダムストランドマット又はチョップドストランドマットの状態でランダムに配置できる。
【0022】
硬化剤繊維材料は、硬化剤繊維成分のいくらか又は全てが、織られ、縫われ、連続的に、非連続的に、一方向に又はランダムに配置された層を備えることができる。
【0023】
好ましくは、硬化剤繊維材料は、上記硬化剤繊維成分を含む。
【0024】
好ましくは、1種以上の硬化剤繊維成分は、本発明のさらなる態様に従う樹脂系の一部を含み、該系は、該硬化剤によって硬化する硬化性樹脂をさらに含む。
【0025】
硬化性樹脂は、硬化の開始時又は開始直後に硬化剤繊維成分に、おそらくは樹脂注入技術又は同様の技術を使用して導入できる。
【0026】
代わりに又は加えて、硬化剤繊維成分を、硬化性樹脂の硬化が進まない状態で硬化性樹脂と関わらせることができる。例えば、硬化性樹脂は、硬化剤繊維成分との接触及び相互作用を、これらの間の硬化剤の相互作用が冷蔵及び冷凍などの好適な保存条件下で比較的緩やかになる又は実質的に回避されるように低減させるために、粒子状若しくは繊維状などの固体又は他の非常に粘稠な状態であることができる。
【0027】
代わりに又は加えて、硬化剤繊維成分は、上で議論したように、硬化性樹脂を硬化させるのに必要な全硬化剤系の一部のみを含むことができる。
【0028】
硬化性樹脂は熱硬化性樹脂を含むことができる。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、硬化剤繊維成分と強化用繊維成分とを含む複合材料を提供する。
【0030】
硬化剤繊維成分は、好ましくは上記のとおりである。硬化剤繊維成分及び強化用繊維成分における各繊維の外径は、実質的に同一であってよく、好ましくは強化用炭素繊維成分については5〜7ミクロン、強化用ガラス繊維成分については15〜20ミクロンであることができる。
【0031】
強化用繊維成分は、炭素、ガラス、アラミド、セラミックの1種以上を含むことができる。硬化剤繊維成分対強化用繊維成分の比は、50:50〜5:95v/v、最も好ましくは30:70〜10:90v/vの範囲内にあることができる。
【0032】
硬化剤繊維成分は、上記のとおりであることができる。
【0033】
強化用繊維成分は、上記のとおりであることができる。
【0034】
硬化性樹脂成分は、上記のような樹脂を含むことができる。
【0035】
硬化剤繊維成分は、複合材料系の一部を含むことができ、本発明に従うこの系は、6段落前に記載した複合材料と硬化性樹脂成分とを含む。硬化剤繊維成分は、硬化性樹脂を硬化させようとするまで、硬化性樹脂成分との接触を避けて配置できる。
【0036】
硬化性樹脂成分は繊維又は粒子などの固体であることができ、この場合には、硬化性樹脂成分及び硬化剤繊維成分のいくらか又は全ては接触した状態にあることができるが、ただし、それらの物理的性質、化学的性質、組成及び/又は貯蔵条件は、好ましくはそれらとの硬化剤相互作用が比較的緩やかである又は実質的に阻害されるというものである。
【0037】
硬化剤繊維成分は、前の段落のいずれかに記載したとおりのものであることができる。
【0038】
複合材料系は、熱可塑性物質、ゴムといった1種以上の他の添加剤をさらに含むことができる。
【0039】
強化用繊維成分中における繊維又は強化用繊維のいくらか若しくは全ては、編まれた状態、縫われた状態、連続的な状態、不連続的な状態、一方向に若しくはランダムに配向された状態、切断された状態、撚られた状態、撚り合わされた状態又は複合品の製造に好適な任意の形態にあることができる。
【0040】
硬化剤繊維成分は、例えば前述の強化用繊維成分及び硬化性樹脂成分のうちの一つ又は両方と共に織り、縫い、撚り及び/又は撚り合わせることなどによって、混繊できる。1種以上の硬化剤繊維成分を1種以上の強化用繊維及び/又は硬化性樹脂成分の周囲にその長さに沿って撚ることができ、及び/又は1種以上の強化用繊維及び/又は硬化性樹脂成分を1種以上の強化剤繊維成分の周囲にその長さに沿って撚ることができる。代わりに又は加えて、硬化剤繊維成分と、強化用繊維成分及び/又は硬化性樹脂成分とを略平行の配置で互いに並んで走らせることができる。
【0041】
或いは又はさらに、複合材料又は複合材料系は、各表面の少なくとも一つに位置した硬化剤繊維成分の層と強化用繊維及び/又は硬化性樹脂成分の層とを備えることができる。繊維の各層は、織られた状態、縫われた状態、連続的な状態又は不連続的な状態、一方向に又はランダムに配置された状態であることができ、かつ、シート、テキスタイル又はマットの状態であることができる。
【0042】
硬化剤繊維成分を編み、縫い又はそうでなければ強化用繊維成分及び/又は硬化性樹脂成分に通して、強化用成分及び/又は硬化性樹脂成分の内部におそらくは全体にわたって略均一に分布させ、又はその1以上の所定のかつ選択された領域で略均一に分布させることができる。
【0043】
代わりに又は加えて、強化用繊維成分及び/又は硬化性樹脂成分を織り、編み又はさもなくば硬化剤繊維成分に通して、硬化剤繊維成分の内部、好ましくは全体に又は硬化剤繊維成分内の1以上の所定の選択された領域で略均一に分布させることができる。
【0044】
本発明のさらなる態様によれば、硬化剤繊維成分と、強化用繊維成分と、硬化性樹脂成分とを含む複合材料を提供する。
【0045】
これらの成分は、好ましくは上記の通りである。
【0046】
本発明のさらなる態様によれば、硬化剤繊維成分と、さらに非強化用繊維成分とを含む複合材料を提供する。
【0047】
硬化剤繊維成分は、好ましくは上記のとおりである。
【0048】
非強化用繊維成分は熱可塑性繊維成分を含むことができ、さらには、一つの又は複数の熱可塑性繊維を含むことができる.
【0049】
熱可塑性繊維成分は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテル−エーテル−ケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリールスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリシロキサン及び様々なタイプのゴムといった熱可塑性重合体の1種以上を含むことができる。熱可塑性繊維又は熱可塑性繊維のいくらかは、半晶質であることができる。
【0050】
好ましくは、熱可塑性繊維成分は、特に硬化したときに複合材料を強くするように作用する。
【0051】
代わりに又は加えて、非強化用繊維成分は、硬化性樹脂繊維成分を含むことができる。硬化性樹脂繊維成分は、好ましくは硬化型熱硬化性樹脂を含む。硬化性樹脂繊維成分は、少なくとも1種の熱硬化性樹脂繊維と、望ましくは、好ましくは概して一方向の複数の当該繊維とを含む。硬化性樹脂繊維成分内の繊維は、概して相互に平行であり、撚られ又はそうでなければ互いに混繊できる。
【0052】
硬化性樹脂繊維成分内の繊維又は該繊維の少なくともいくらかは連続的である。代わりに又は加えて、硬化性樹脂繊維成分内の繊維又は該繊維の少なくともいくらかは非連続的である。
【0053】
硬化性樹脂繊維成分は、エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、BMI(ビスマレイミド)、ポリベンズオキサジン、ポリイミド、フェノール樹脂及びポリエステルの1種以上を含むことができる。硬化性樹脂繊維成分内の繊維又は該繊維の少なくともいくらかは、多数の熱硬化性樹脂のブレンドを含む。
【0054】
硬化性樹脂繊維成分は、異なる熱硬化性樹脂及び/又はそれらのブレンドを含む複数の異なる繊維を有することができる。好ましくは、熱硬化性樹脂繊維成分の粘度は、23℃の温度で5×104Pasを超える、望ましくは 23℃で2×105Pasを超える。
【0055】
硬化性樹脂繊維成分は、N,N,N,N−テトラグリシジル−4,‘4−ジアミノジフェニルメタン及びポリエーテルスルホンを含むことができる。
【0056】
硬化性樹脂繊維成分は、国際公開第WO2009/013458A2号パンフレットに開示されるような硬化型熱硬化性樹脂繊維成分を含むことができる。その開示を引用によりここに含める。
【0057】
好ましくは、硬化剤繊維成分対非強化用繊維成分の比は、90:10〜70:30v/vの範囲、最も好ましくは80:20v/vである。
【0058】
硬化剤繊維成分及び非強化用繊維成分を、上の段落のいずれかで説明したような方法で互いに混繊して複合材料を形成させることができる。
【0059】
本発明によれば、硬化剤繊維成分と、硬化性樹脂成分、強化用繊維成分及び非強化用繊維成分のうちの一つとを含む複合材料を提供する。
【0060】
好ましくは、硬化剤繊維成分は上記のとおりである。
【0061】
好ましくは、硬化性樹脂成分は上記のとおりである。
【0062】
好ましくは、非強化用繊維成分は上記のとおりであり、かつ、上記の硬化性樹脂を含むことができる。
【0063】
好ましくは強化用繊維成分は上記のとおりである。
【0064】
好ましくは、繊維成分は、製織、加撚、縫合、撚り合わせ、スレッディングその他の任意の好適な方法などにより混繊され、かつ、一緒になってシート、テープその他の予備成形物を形成することができる。該材料内の各繊維成分は、複合材料内に望ましくは全体にわたって実質的に均一に分布できる。代わりに又はさらに、それぞれの繊維成分の位置及び量は、比較的高い樹脂靱性の領域、比較的高い及び/又は低いVfの領域などの所望の特性を有する材料及びそれから作られた硬化物品を与えるように選択でき、そして予め決定できる。
【0065】
3種類の繊維のうちの2種類を、ある方法で互いに混繊し、例えば互いに撚り、次いでこれら2種を第3及び/又は第4のタイプの繊維成分を同じ方法又は異なる方法で混繊、例えば織り、通し、縫うことができる。
【0066】
本発明のさらなる態様によれば、硬化性樹脂及び硬化剤繊維成分を導入することを含む複合品の製造方法を提供する。
【0067】
使用する硬化性樹脂は、上記の硬化性樹脂成分又は硬化性樹脂繊維成分を含むことができる。
【0068】
使用する硬化剤繊維成分は、上記のとおりであることができる。
【0069】
使用する硬化剤繊維成分は、上記複合材料の一部を含むことができる。
【0070】
硬化性樹脂は、液体又は半液体の状態で導入でき、かつ、液体樹脂注入又は同様の条件(高温及び高圧又は真空条件)及び技術の下で導入できる。
【0071】
好ましくは、硬化性樹脂は、硬化時に硬化剤繊維成分を完全に若しくは実質的に完全に湿らせ及び/又は複合材料に完全に含浸する。
【0072】
この方法は、硬化性樹脂、硬化剤繊維成分及び/又は複合材料を硬化条件に付すことを伴うことができる。
【0073】
本発明のさらなる態様によれば、上記複合材料又は複合材料系を硬化条件に付すことをを含む複合品の製造方法を提供する。
【0074】
本発明のさらなる態様によれば、硬化剤繊維成分を使用して硬化性樹脂を硬化させて製造された複合品を提供する。
【0075】
ここで、本発明の実施形態を、添付図面を参照しつつ、単なる例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1a】図1aは、本発明に従う硬化剤繊維成分の図表示である。
【図1b】図1bは、図1aの硬化剤繊維成分の断面図である。
【図1c】図1cは、本発明の硬化剤繊維成分の製造に好適な装置の断面図表示である。
【図1d】図1dは、本発明に従う硬化剤繊維材料の平面図である。
【図1e】図1eは、本発明に従う別の硬化剤繊維材料の平面図である。
【図2】図2は、本発明に従う硬化剤繊維成分と強化用繊維成分とを含む複合材料の縦方向断面図である。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態に従う硬化剤繊維成分と強化用繊維成分とを含む複合材料の縦方向断面図である。
【図4a】図4aは、本発明のさらなる実施形態に従う硬化剤繊維成分と強化用繊維成分とを含む複合材料の縦方向断面図である。
【図4b】図4bは、さらに本発明に従う複合材料の縦方向断面図である。
【図4c】図4cは、図4bの複合材料の一実施形態の横方向断面図である。
【図4d】図4dは、図4bの複合材料の別の実施形態の横方向断面図である。
【図5a】図5aは、硬化型硬化剤繊維成分とさらなる繊維成分とを含む複合材料の図表示である。
【図5b】図5bは、硬化剤繊維成分とさらなる成分とを含むさらなる複合材料を図示するものである。
【図6】図6は、本発明に従う硬化剤繊維成分とさらなる繊維成分とを含む複合材料のさらなる実施形態である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に従う硬化剤繊維成分とさらなる繊維成分とを含む複合材料の図表示である。
【図8】図8は、本発明のさらなる実施形態に従う硬化剤繊維成分と熱可塑性繊維成分と強化用繊維成分とを含む複合材料の縦方向断面図である。
【図9】図9は、本発明のさらなる実施形態に従う硬化剤繊維成分と熱可塑性繊維成分と強化用繊維成分とを含む複合材料の断面図である。
【図10】図10は、本発明のさらなる実施形態に従う複合材料の縦方向断面図である。
【図11】図11は、本発明のさらなる実施形態に従う複合材料の縦方向断面図である。
【図12】図12は、本発明の別の実施形態に従う複合材料の縦方向断面図である。
【図13】図13は、本発明の複合材料の製造方法の概略図である。
【図14】図14は、本発明に従う複合材料の別の製造方法の概略図である。
【図15】図15は、硬化用成形装置内に設置された、本発明に従う多層複合材料又は予備成形物の図表示である。
【図16】図16は、樹脂溶融方法で使用される本発明を図示するものである。
【図17】図17は、トウ設置で使用される本発明の図表示である。
【図18】図18は、本発明の硬化剤繊維成分の製造に好適な装置をさらに図示するものである。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明は、硬化剤繊維成分、硬化剤繊維成分を含む複合材料及び複合材料系、このような複合材料を使用して製造された複合品及び当該複合品の製造方法に関するものである。
【0078】
図1aは、硬化性樹脂、特に熱硬化性樹脂を硬化させる際に使用するための硬化剤繊維成分10の一部を図示するものである。
【0079】
硬化剤繊維成分10は細長く、かつ、本発明の一態様では、硬化剤の単繊維又はフィラメントを含む。この繊維又はフィラメントの直径範囲は1〜200ミクロンであるが、10〜100ミクロンの範囲の直径を有する繊維により有用な用途が見出される可能性が高い。10ミクロン〜50ミクロンの範囲内にある直径の繊維が最も好ましい。
【0080】
或いは、硬化剤繊維成分10は、糸又はより糸を形成するように混繊された複数の繊維を含む。繊維成分10の寸法は、所望の複合材料の製造に適するように設計できる。使用するそれぞれの繊維の直径(これは、すべてほぼ同一であってよく、又は異なるサイズで選択してもよい)、所望の全体寸法及び成分10の特性にある程度応じて、50,000本まで又はそれよりもさらに多い繊維を使用して繊維成分10を形成させることができる。
【0081】
本発明の硬化剤繊維成分は連続的でも不連続的でもよく、その種類は、当業者が硬化剤繊維成分及び/又はそれから作られた材料と物品の所望の特性に応じて選択できる。不連続繊維成分について、その中の繊維の長さは、上記のとおりに与えることができ、例えば20mm〜100mmの長さを有することができる。
【0082】
図1bは、このような多繊維硬化剤繊維成分10の図1aの方向での断面を示すものである。これらの繊維は、例えばこれらを互いに加撚することにより、或いは繊維糸又はより糸を形成させるための他の任意の方法により混繊できる。使用する硬化剤の特性及び特徴は、例えば、それによって硬化する樹脂、硬化剤が形成すべき材料、該材料の物理的状態などに応じて選択される。硬化剤繊維成分10内の繊維又は該繊維の1つ以上は、硬化剤のブレンドであることができる。代わりに又はさらに、硬化剤繊維成分10内の異なる繊維は、異なる硬化剤を含むことができ、それにより、例えば、ある成分は、他のものとは異なる組合せとなるようにそれぞれ硬化剤の1種又はブレンドから構成される2つの異なる種類の繊維を含むことができる。さらに別の選択肢では、硬化剤繊維成分10は、同じ硬化剤のブレンドを含むが、各繊維内の硬化剤が異なる量で存在する点で各組成が異なる2種類以上の繊維を含むことができる。成分10における任意の添加剤の性質は、その中の様々な種類の繊維間で同一であっても異なっていてもよい。
【0083】
さらなる実施形態では、硬化剤繊維成分10の硬化剤は、目的の硬化性樹脂を硬化させるのに必要な全硬化剤系の一部のみを含む。異なる硬化剤系を処方して硬化性樹脂を硬化させることができる。硬化性樹脂そのものの性質及び/又は硬化条件とそれから形成される製品の特徴といった他の要因が、硬化剤系を処方する際に当業者により考慮される。多くの硬化剤系は、多数の異なる要素又は成分であって、そのうちのいくつかが特定の硬化段階で他のものよりも活性であることができるものを含む。いくつかの成分は、硬化の初期段階では硬化を促進させる点で比較的活性であり、他のものは、より後の段階でより活性であることができる。
【0084】
したがって、所定の実施形態では、初期の硬化段階で比較的活性な硬化剤系の成分をのみを含むように硬化剤繊維成分を与える。このような硬化剤を保存する温度は、活性度に影響を与えることができる。
【0085】
このような実施形態は、例えば、ここで議論したように硬化剤繊維成分を使用して、硬化剤繊維成分が保存条件下で著しく反応し得る樹脂のない又は実質的にない複合材料を形成させることに応用できるであろう。例えば、強化繊維を硬化剤繊維と組合せて含む複合材料は、本実施形態を応用できる当該材料の明らかな例である。このような材料に含まれる硬化剤系の比較的活性な成分を有することの利益は、該硬化剤系の残りの比較的不活性な成分が、硬化する樹脂、例えば樹脂注入技術に従って導入される液体樹脂と共に、該樹脂が硬化剤繊維成分と遭遇するまでいかなる有意な相互作用なしに材料に導入できることである。この硬化剤系の比較的不活性な成分は、液体樹脂と予め混合できるところ、この成分は、さらに、それと混合される成分によって硬化が制限された又は硬化しない比較的安定な樹脂を与えることができ、それによって比較的良好な品質保持期間特性を与えることができる。
【0086】
硬化剤繊維成分中における硬化剤が硬化剤系の比較的活性な成分を有する材料の別の例は、硬化剤繊維成分を該材料中又は材料上の硬化性樹脂から離れた位置で該材料内に与えることである。さらなる例では、材料は、硬化性成分が接触した状態にある固体の又は実質的に固体の硬化性樹脂を含むことができる。このような接触は、一般に制限されるため、硬化剤と樹脂との相互作用も制限されるであろう。
【0087】
硬化剤繊維成分が液状又は樹脂状硬化性樹脂中に埋め込まれる実施形態、例えば、材料が含浸硬化性樹脂で完全に満たされている実施形態であっても、繊維成分の物理的状態は、該材料が良好な保存特性を享受するように、従来のプレプレグ材と比較して硬化剤と硬化性樹脂との保存条件下での相互作用が比較的制限されることを示している。
【0088】
別の実施形態では、硬化剤繊維成分は、初期の硬化段階では硬化を促進させる点で比較的不活性な硬化剤系の成分の1種以上を含む。これは、硬化剤繊維成分が硬化サイクル中に複合材料全体にわたって完全に溶融及び分散させるのに十分な時間を確保するのを保証するために有益だと考えられる。このような実施形態は、該材料の硬化性樹脂を硬化剤繊維成分にさらすプレプレグ材などの材料の製造に応用できる。繊維成分中の硬化剤が保存条件では比較的不活性であるという事実は、硬化剤系の他のより活性な初期段階硬化成分を硬化プロセス中に導入するまで、硬化及び/又は硬化の発現を防止又は制限する。また、繊維質の形態は、それ自体が相互作用を制限するため、良好な保存特性に寄与する。硬化剤系の比較的不活性な初期段階硬化部分を含む硬化剤繊維成分を与えて、製品を形成するように硬化される液状又は樹脂状樹脂が予め含浸された複合材料の製造に適用することができる(おそらくは、特に硬化に必要な硬化性樹脂の全量のいくらかのみを該材料に予め含浸するときに適用できる)。このような材料は保存特性が良好であり、しかも、硬化剤のより活性な部分は、材料に含浸されたときに硬化可能な残部と共に導入されるであろう。
【0089】
このような複合材料の硬化剤繊維成分に含まれる硬化剤系の部分を選択することにより、特に保存条件での硬化特性を巧みに設計して製品を比較的安定なものにし、それによって品質保持期間を比較的長くすることが可能である。
【0090】
本発明は、当業者が硬化剤系を処方し、そして繊維の形態のこれらの一部又は全てを本発明の硬化剤繊維成分に取り入れることを可能にする。特に硬化性繊維成分が複数の繊維を含む実施形態において高度な硬化系を設計できることが分かるであろう。例えば、該成分内における異なる繊維は、様々な硬化剤系の部分を含むことができ、該成分内のこれらの部分の相対位置により、例えば、所望の硬化及び保存特性を有する材料を与えることができる。一例では、硬化剤系の比較的活性な部分を含む繊維は、保存条件で比較的不活性な部分の他の繊維の真下にある成分内に埋められるため、材料内にある周囲の硬化性樹脂のいずれとも接触しないと考えられる。
【0091】
好適な硬化剤としては、ジシアンイミド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−メチレンビス(2,6’−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、3,5’−ジエチルトルエン−2,4/2,6−ジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、N,N’−(メチル−1,3−フェニレン)ビス[N,N’−ジメチル尿素]、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、他のイミダゾール誘導体、三フッ化硼素錯体、三塩化硼素錯体、ビスフェノールA、ビスフェノールF、チオジフェノール、フタル酸無水物、マレイン酸無水物、ナジン酸無水物、メチルナジン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、ノネセニル(nonecenyl)コハク酸無水物及びドデセニルコハク酸無水物の1種以上が挙げられる。繊維成分中の繊維又は繊維の少なくとも1種は、多数の硬化剤のブレンドを含むことができ、及び/又は該成分は、異なる硬化剤及び/又はそれらのブレンドを含む複数の異なる繊維を含むことができる。
【0092】
繊維の形成を可能にする又は促進する添加剤を与えることができる。これらは、熱可塑性物質、ゴム、カーボンナノチューブを含めたナノ粒子を包含することができる。
【0093】
本発明の硬化剤繊維成分は、熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、BMI(ビスマレイミド)、ベンズオキサジン、ポリベンズオキサジン、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリエステル及び当業者に知られている他のものを硬化させるのに好適である。
【0094】
硬化剤繊維成分10は、それから作られる複合品の靱性特性を向上させるために与えることができる熱可塑性重合体などの添加剤を含むことができる。熱可塑性物質の種類と量は、該成分内の様々な種類の繊維間で異なっていてよい。繊維成分10及び/又はそれにより製造された材料/製品に所望の特性を付与するために、触媒、ハ−ドナ−及び/又は硬化促進剤などの他の添加剤を与えることができる。
【0095】
図1cは、本発明に従う硬化剤繊維成分10を製造するのに好適な簡単な装置Aを示している。この装置は本体Bを備え、該本体はチャンバーCを画定し、該チャンバーを通して回転シャフトSが延在し、該シャフトはスクリュー構造Fを保持している。シャフトSは、各末端で支持され、かつ、その軸の周辺での回転運動のための駆動手段(図示しない)によって駆動する。本体Bの一方の端部の上部には、硬化剤材料を装置AのチャンバーCに充填することができる充填用ホッパーHがある。該装置の他方の端部では、チャンバーCが出口構造Oに向けて下方に開口している。出口構造Oの内径を規制するように作用する規制用カラーRが出口構造Oにわたってその出口に向かって部分的に延びている。この規制用カラーRは略環状である。
【0096】
出口OにわたってダイDが設置されている。ダイDは、所望の数及びサイズの開口APを備え、以下説明するように、これを介して硬化剤材料が押し出されて繊維となる。
【0097】
硬化剤材料はホッパーHに充填される。硬化剤材料は、液体又は固体の状態で充填できる。液体の状態で充填される場合には、チャンバーC内の温度は、該材料の流動性を所望の粘度に保持するように設定される。硬化剤材料を固体の状態で充填する場合には、チャンバーC内の温度は、硬化剤材料を所望の粘度にまで溶融させるように設定される。
【0098】
チャンバーCの長さにわたる温度は、硬化剤の最良の粘度がダイDを介して出口Oで該材料を適切に押し出すために望ましい値であることを確保するように、該長さに沿った様々な箇所で調節され、かつ、変更できる。該材料がホッパーHに充填されると、シャフトSは、スクリュー構造Fが硬化剤材料をホッパーから離れて出口Oの方に移動させるように回転する。該材料を充填すると、装置A内、特に出口構造内にある硬化剤材料の圧力が増える。材料が出口構造Oに規制用カラーRを介して押しやられると、圧力は、液状の硬化剤材料をダイDを介して十分に押し出すためのレベルにまでさらに増大する。
【0099】
図では、4種の硬化剤繊維成分10を生じさせる4個の開口APが示されている。開口の数、すなわち、ダイDを介して形成される硬化剤繊維の数は、望み通りに制御できる。
【0100】
硬化剤繊維成分10がダイDから出たときに、これらは、冷却空気流により冷却され、その後、巻き取り又は巻き取りホイール(図示しない)などの慣用技術に従って集められる。
【0101】
この方法で製造された硬化剤繊維成分10は、硬化剤の単繊維又はストランドを含む。それぞれの繊維は、一般に、1〜200ミクロン、好ましくは10〜100ミクロン、最も好ましくは10〜50ミクロンの直径を有する。これらの繊維のサイズは、製造される成分のサイズ及び他の特性、成分10内の繊維の数、成分内の様々な繊維の相対的直径などを基準にして設計できる。
【0102】
複数の硬化剤繊維を加撚などにより混繊して、多数の硬化剤繊維を含む硬化剤繊維成分10を形成させることも本発明の範囲内である。このような繊維のさらなる処理加工は、従来技術に従って行うことができる。
【0103】
硬化剤繊維成分10は、通常、非粘着質な手触りなので、手作業が容易である。硬化剤繊維成分10は、通常、約23℃の温度で50,000Pa.sを超える粘度、より好ましくは200,000Pa.sを超える粘度を有する。以下で説明するように、硬化の間に、粘度は20,000Pa.s以下に降下し、周辺の熱硬化性樹脂の硬化を促進する。
【0104】
本発明に従う硬化剤繊維成分10は、多くの技術及び産業で応用されると考えられ、特に興味深いのは、このような繊維10を硬化型複合材料及びそれから作られた複合品の製造に使用することである。
【0105】
図1d及び図1eは、専ら又は主として硬化剤繊維成分から形成される繊維材料の2つの形態を図示するものである。図1dは、織物、シート、テキスタイル又はマットの形態の織物硬化剤繊維材料11を示している。上記の硬化剤繊維成分は、好ましくは、織物などを形成するために複合材用の繊維強化材の製造に使用される従来技術を使用して織られる。
【0106】
図1eは、織物、シート、テキスタイル又はマットの形態の別の非織物硬化剤繊維材料13を示している。この材料は、ランダム又は細断ストランド層又はシートの形態であり、かつ、好ましくは、ランダム又は細断マット繊維強化材料の製造に採用されている従来技術を使用して形成される.
【0107】
硬化剤繊維材料11、13は、例えば樹脂注入成形プロセスなどの成形プロセスの間に、複合材製品の形成に使用するためのプレプレグ材、硬化性樹脂、繊維強化材、さらには硬化剤などと共に層形成又は重ねることができる。
【0108】
代わりに又はさらに、硬化剤繊維材料11、13は、多層プレプレグ材又は積層内の層又はプライとして、プレプレグ材、繊維強化材、硬化性樹脂、さらなる硬化剤などを含む積層内の他の層と共に含まれ得る。
【0109】
硬化剤を別個の層又はプライとすることで、硬化性樹脂の層に隣接していても、比較的安定でかつ品質保持期間が良好なプレプレグ材又は積層体を得るのに役立つ。
【0110】
これらの材料は、良好な取扱適性、一般には非粘着質の手触り、及び比較的良好な安定性と品質保持期間を有することが分かった。
【0111】
図2は、強化繊維成分14に織り込まれる上記硬化剤繊維成分10を含む複合材料12断面図である。図の全てにおいて、硬化剤繊維成分は、誇大な直径で示されている。これは、説明を明確にするためである。一般に、硬化剤繊維成分の直径は、繊維の詰め込みを容易にするために複合材料内の他の繊維成分の直径と同一又は類似であることが好ましい。
【0112】
強化用繊維成分14は、炭素、ガラス、アラミド、セラミック又は当業者に知られている他の材料など、任意の既知のタイプのものであることができる。
【0113】
強化用繊維成分14は、織られ、縫われ、連続的、非連続的、一方向、細断され、ランダムマット又は当業者に知られている該材料の他の任意の配置であることができる。図2の強化用繊維成分は、層の形態である。
【0114】
このような複合材料12には、多数の利点がある。
【0115】
第一に、該材料は安定であり、周囲保存条件で品質保持期間が良好である。
【0116】
第二に、繊維層14の厚み(T)を介しかつその長さ(Lで示す方向)に沿った硬化剤繊維成分10のスレッディングにより、硬化剤成分10が繊維層14全体にわたり良好でかつ概して均一に分布することを確保する。これにより、該材料に含浸される硬化性樹脂との均一な組合せが得られ、それによって硬化性樹脂の均質な硬化が得られる。
【0117】
第三に、硬化性樹脂を硬化剤に徐々に導入して均一でかつ緩やかな硬化を助長し、しかも、繊維強化材成分への導入及び含浸前に液状樹脂に硬化剤を混合する従来技術と比較して硬化プロセスの制御及び柔軟性の程度を大きくすることを可能にすることができる。
【0118】
第四に、成分10の繊維形状は、繊維10が硬化中における空気の移動、すなわち除去を大きくは損なわないため、空気の流れ及び排気の特性も改善し、さらに、硬化性樹脂が、完全な含浸を妨げかつ硬化プロセス中に空気を閉じ込めるように硬化が早すぎたり粘性が大きくなったりするリスクが相当に低い。言い換えれば、繊維の形態の硬化剤を与えると、硬化性樹脂が長時間にわたって液体の状態を保持するため、繊維強化材が硬化性樹脂で完全に湿潤するのを促進させるのを可能にする。
【0119】
硬化剤繊維成分対強化用繊維成分の比は、50:50〜5:95v/vであり、また、30:30〜10:90v/vであることができる。
【0120】
図2の複合材料12を使用して硬化複合品を製造する方法の一つは、硬化性樹脂を導入すること、例えば熱硬化性樹脂を材料12に導入し、そしてその混合物を一般的に知られている技術に従って硬化することである。
【0121】
図16は、本発明に従う複合材料から複合品を製造するのに使用することのできる単純な成形装置15の図表示である。装置15は、型又は成形型16を備え、該成形型は、成形型表面18を有し、その上には、複合材料12a、12b、12c(それぞれ図2に示す複合材料12に相当する)の3層を備えるスタック17が付設されている。しかし、積み重ねられた本発明の複合材料の性質、数及び方向は、成形物品の所望の特性及び一般に既知の技術に従って当業者が変更及び選択できることが分かるであろう。実際に、スタックは、樹脂の層、乾燥繊維、ベール、接着剤、コア、シンタクチックフォーム並びに硬化複合品の製造に従来から使用されている他の任意の好適な材料及び構造をふくむことができる。
【0122】
装置15は、従来の方法でスタック17の外側周辺がシール22により密閉された不浸透性重合体バッグ20を備える樹脂注入配置を示している。
【0123】
所望の複合スタック17が形成されかつ膜20のおよそ真下でシールされたら、硬化性樹脂を導入する。これは、樹脂トランスファー成形、液体樹脂注入及び当業者に知られている他の技術といった従来の樹脂注入技術を使用して行うことができる。
【0124】
硬化性樹脂は、理想的には、スタック17を迅速に湿らせる低粘度の液体として導入される。次いで、湿潤したスタック17を、温度上昇及び/又は真空条件を包含し得る好適な硬化条件に付す。図16では、空気を膜20の下から引き出す、空気の除去を容易にしかつボイド形成を防ぐための出口24が示されている。。
【0125】
本発明の複合材料を使用して形成された複合品は、間隙が皆無かそれに近いことが分かった。複合材料の繊維の性質は、排気を促進させる。構造内の空気は、通常は熱硬化性樹脂がスタック17に移動する前、多くの場合は熱硬化性樹脂のかなりが硬化する前に、繊維を通過させて引き出すことができる。繊維強化材全体にわたって硬化剤繊維成分を層の形態であるか又はそうでないかを問わず全体的かつ均一に分布させることができることは、構造全体にわたる均質な硬化を確保し、特に複合材領域での早い段階での硬化を防ぐことに役立つ(これは、空気の閉じ込めを防ぐことにも役立つ)。
【0126】
硬化剤繊維成分が硬化性樹脂を硬化させるのに必要な硬化剤系の一部分しか含まない場合には、上で議論したように、この系を完全にするための他の部分を硬化性樹脂と共に導入することができ、また該樹脂と予備混合することができる。
【0127】
硬化剤繊維成分に含まれる全硬化剤系の部分を当業者が決定する任意の望ましい基準に従って選択することは、本発明の範囲内であることが分かるであろう。例えば、系内の複数の部分が硬化を誘導及び/又は促進するように連携する系では、選択された部分は、これらを選択的に導入するまで他の部分から遠ざけておくことができる。
【0128】
また、硬化剤繊維成分の部分及び樹脂と共に導入される部分は、上記のように、硬化プロセスの特定の段階でのそれらの相対的な活性及び不活性に従って選択できる。これは、材料に相対的な安定性と良好な品質保持期間とを付与する。
【0129】
図3は、本発明のさらなる実施形態に従う複合材料26の断面図表示である。この実施形態では、硬化剤繊維成分10a、bは、2つの方法で強化用繊維成分14と混繊される。繊維成分10aは、図2に関して説明した実施形態と同様に、成分14の厚みにわたって織られ又は縫われる。繊維成分10bは、強化用繊維成分14内部にその長さに沿って通され又は織られるが、ただし厚みTには及ばない。
【0130】
この構成は、より多くの硬化剤を強化用繊維成分14内に分布させて、硬化剤の密集した又は密な充填を助長するのを可能にすることができる。
【0131】
硬化剤繊維成分の多くの組合せを強化用繊維成分14と混繊して(その逆も同様)、それから作られる、所望の特性を有する複合材料及び複合品を製造することができることが分かるであろう。
【0132】
図4aは、硬化剤繊維成分10bを全て強化繊維層14内にその長さに沿って通した本発明のさらなる実施形態に従う複合材料28を示している。硬化剤繊維成分10bは、同一であってよく、或いはそれらのいくつか又は全てが異なっていてもよい。
【0133】
硬化剤繊維成分を、スレッディング、製織、縫合などを含む任意の好適な技術を使用して強化用繊維成分と混繊することができることが分かるであろう。
【0134】
また、硬化剤繊維10を繊維層14の1以上の表面に設置すること、すなわちその上に置くこと又はその表面に浅く織り込むことも本発明の範囲である。しかし、このような構成は、特に、繊維層14の厚みを通して混繊されたものは、通常、上記の利点の全てを享受するわけではない。
【0135】
図4bは、硬化剤繊維成分10dが縦に概して一方向に延びる一方向強化用繊維成分31を備える複合材料29を示している。図4cは、材料29の断面であり、硬化剤繊維成分10dが材料29全体にわたって大体均一に分布していることを示している。図4dは、硬化剤10dと共に層の状態にあり、その中に大体均一に分布した成分31を強化している別の構成を示している。
【0136】
図5aは、一実施形態では熱可塑性物質を含む非強化用繊維成分32が一般的なヘリックス配置で巻き付けられた硬化剤繊維成分30を備える複合材料34の図表示である。樹脂接着剤などの熱可塑性重合体は、熱硬化性樹脂の靱性を改善させることが知られており、硬化剤及び熱可塑性物質の混繊維を含む複合材料34を与えると、後に熱硬化性樹脂を補強及び硬化させて硬質の繊維強化複合品や非繊維強化複合材料及び複合品を製造するために使用できる安定な材料となる。
【0137】
また、一般的な繊維又はスレッド様配置を有する材料34は、上記実施形態で説明したのと同様の態様で、織られ、通され、縫われ又はそうでなければ繊維強化材、特に繊維材料の層と混繊できる。
【0138】
熱可塑性繊維成分32は、当該技術分野において知られている、繊維構成に形成可能な熱可塑性重合体のいずれか1種又は多数を含むことができる。このような重合体の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテル−エーテル−ケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリールスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリシロキサン及び他の様々なタイプのゴムが挙げられる。一般に、熱可塑性繊維は半晶質であることが好ましい。
【0139】
本発明の熱可塑性繊維成分は、1種以上の熱可塑性物質繊維を含むことができる。
【0140】
硬化剤繊維成分対熱可塑性繊維成分の比率は、複合材料、最終的にはそれによって硬化及び強化される熱硬化性樹脂並びにそれから製造される複合品の所望の特性に従って変更及び決定できる。
【0141】
大部分の用途について、硬化剤繊維複合材対熱可塑性繊維成分10の比は、90:10〜70:30の範囲、最も好ましくは約80:20v/vであろう。
【0142】
熱可塑性成分32は、図5bに示すように、硬化剤繊維成分30上に飛散できる。
【0143】
また、硬化剤繊維成分を熱可塑性成分の周りに巻き付けること、及び硬化剤と熱可塑性繊維成分30、32とを図6に概略的に示されるように撚り合わせることも本発明の範囲内である。
【0144】
別の実施形態では、非強化用繊維成分32は硬化性樹脂繊維成分である。硬化性樹脂繊維成分は所定の実施形態では硬化型熱硬化性樹脂の単繊維を含み、別の実施形態では複数の硬化型熱硬化性樹脂繊維を含む。このような実施形態では、繊維成分内の硬化型熱硬化性樹脂繊維は、相互に平行であり、撚られており又はそうでなければ互いに混繊されていてよい。該繊維又は該繊維の少なくともいくらかは、所定の実施形態では連続的であり、他の実施形態では該繊維又は該繊維の少なくともいくらかは不連続である。さらなる実施形態では、連続繊維と不連続繊維との混合が存在することができる。
【0145】
硬化性樹脂繊維成分は、任意の好適な硬化性樹脂又は硬化性樹脂系を含むことができ、エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、BMI(ビスマレイミド)、ポリベンズオキサジン、ポリイミド、フェノール樹脂及びポリエステルの1種以上を挙げることができる。
【0146】
所定の実施形態では、繊維又は該繊維の少なくともいくらかは、多数の熱硬化性樹脂のブレンドを含む。
【0147】
硬化性樹脂繊維成分は、異なる熱硬化性樹脂及び/又はそれらのブレンドを含む複数の異なる繊維を備えることができる。
【0148】
所定の実施形態では 熱硬化性樹脂繊維成分の粘度は、23℃の温度で5×104Pas を超え、好ましくは23℃で2×105Pasを超える。
【0149】
所定の実施形態では、硬化性樹脂繊維成分は、N,N,N,N−テトラグリシジル−4,‘4−ジアミノジフェニルメタン及びポリエーテルスルホンを含む。
【0150】
硬化性樹脂繊維成分は、国際公開WO2009/013458A2号に記載されるような硬化型熱硬化性樹脂繊維成分を含むことができる。その開示を引用によりここに含める。
【0151】
これらの実施形態では、一般的な繊維又はスレッド様配置を有する樹脂34又は樹脂系を、上記実施形態で説明したのと同様の態様で織り、通し、縫い又はさもなければ繊維強化材、特に繊維材料の層と混繊することもできる。
【0152】
硬化剤繊維成分対硬化性樹脂繊維成分の比率は、複合材料のデザイン特性に従って変更及び決定できる。この比率は、事実上複合材料34が完全な樹脂及び硬化剤系を含むように硬化性樹脂繊維成分の全てを硬化するのに十分な硬化剤が存在するようなものであることができる。
【0153】
別の実施形態では、硬化剤繊維成分は、硬化性樹脂繊維成分の硬化用の追加の硬化剤及び/又はさらに材料34に導入される硬化性樹脂により補完できる。
【0154】
硬化剤繊維成分を硬化性樹脂繊維成分の周囲に巻き付けることができ、また、硬化剤と硬化性樹脂繊維成分とを図6に概略的に示すように相互に撚り合わせることができる。
【0155】
このような実施形態では、硬化剤は、硬化剤と硬化性樹脂の相互作用が全くない又はほとんどないように設置できる。これは、2種の概して固体の繊維成分間の物理的接触を制限することにより及び/又は温度感性でありかつ材料が一般的に保存される所定の温度よりも下ではいかなる顕著な硬化剤特性も示さない硬化剤により達成できる。
【0156】
上記のように、硬化剤繊維成分は、樹脂を硬化させるのに要する完全な硬化剤系の一部のみを含むことができる。このような実施形態では、この硬化剤繊維成分に含まれる硬化剤系の一部は、例えば、それにより製造される材料、該材料が受ける硬化方法、該材料の所望の品質保持期間などに従って選択できる。該部分は、主として該成分が硬化性樹脂と接触した状態で保存されるかどうかに応じて、及び硬化性樹脂の物理的条件にある程度応じて、硬化の初期段階では比較的活性又は不活性であることができる。この実施形態では、硬化剤繊維成分は、特に目的の保存条件では比較的不活性な硬化剤系の1以上の部分を含み、それにより成分34に良好な品質保持期間を与えるであろう。
【0157】
図示してはいないが、硬化剤を強化用繊維成分及び/又は硬化性樹脂成分(その説明は図5a及び6ど同様であり、符号30は、強化用繊維成分又は硬化性樹脂繊維成分を表し、32は硬化剤成分を表す)の周囲に巻き付けることも本発明の範囲内である。
【0158】
強化用繊維の糸又は紡糸の周囲に硬化剤繊維成分を巻くことにより、特に、全長に沿って破断する点までわざわざ延伸された、本質的に炭素繊維を含む延伸−破断強化繊維に応用できるようになる。これは、格別のドレープ及び適合性の利点を与えるが、炭素繊維材料の構造を本来的に脆弱にする。延伸破断強化材の周囲に本発明の硬化剤の繊維を巻き付けると、延伸破断糸を安定にし、かつ、強化することが分かった。
【0159】
また、非強化用成分32が熱硬化性樹脂、熱可塑性物質及び/又は他の添加剤のブレンドであることができることも本発明の範囲内である。
【0160】
また、本発明は、硬化剤繊維成分と、非強化用繊維成分と、強化用繊維成分とを含む複合材料も提供する。
【0161】
図7は、二重螺旋型配置を形成するように硬化剤繊維成分40及びそれに対して間隔を開けてさらに非強化用繊維成分42が巻き付けられた中心強化用繊維成分38を含む複合材料36の図表示である。このような配置は、非強化用繊維成分が硬化性樹脂を含む場合であっても、その後複合品及び複合部品を形成することのできる安定な複合材料を与える。材料36には、強化用繊維成分38の周囲にその長さに沿って硬化剤とさらなる非強化用繊維成分との両方が大体均一に分布している。
【0162】
別の構成では、中心成分38は、硬化剤又はさらなる非強化用繊維成分であって、その他のもの及び強化用繊維成分が略二重螺旋配置で巻き付けられたものであることができるであろう。さらなる非強化用繊維成分は、上記のとおりであることができ、又はこの方法に含まれる他の硬化剤繊維成分36と同一でも異なっていてもよい第2硬化剤繊維成分を含むことができる。繊維成分40、42の間隔の開いた配置は、硬化剤及び他の熱硬化性樹脂であるものに適しており、そのため材料36は、完全なプレプレグ材のための全ての成分を含むが、該熱硬化性樹脂と硬化剤との相互作用がないため依然として安定である。
【0163】
二重螺旋配置は、ほぼ等置の配置であることができ、又はその繊維成分は、より接近しかつより延伸された配置若しくはこれらの成分が好ましくは互いに撚り合わされ若しくは巻き付けられる任意の他の好適な配置で走ることができるであろう。
【0164】
図13は、図7に関連して説明した複合材料を製造する装置及び方法の概略図である。
【0165】
単一容器V1、V2の2個の別個の容器又はチャンバーに液体が装填される。例えばV1には硬化剤を装填することができ、容器V2にはさらなる(同じ組成又は異なる組成であることができる)硬化剤及び/又は熱可塑性物質、熱硬化性樹脂又はこれらの組合せを装填することができる。容器V1及びV2は加熱できる。圧力を通常は矢印Pの方向に加える。容器V1及びV2の基部に又はそれに向かって、液体材料を押し込む穴又はスリットの形状であることができる開口部が存在する(図示しない)。容器V1とV2との間には、主として強化用繊維Yの繊維又は糸が延びており、これは、該材料源(図示しない)9から巻き取りホイール又はボビンBにまで延びている。容器V1及びV2は強化用繊維Yの周りを回転し、その結果として、各容器V1及びV2から出る糸又は繊維が糸Yの周りに巻き付けられる。容器V1及びV2の相対的な回転速度及びボビンBへの繊維Yの巻き取り速度は、中心糸上の繊維の配置が要求通りになるように調整される。
【0166】
図8は、硬化剤、熱可塑性物質及び強化用繊維成分を含む複合材料43のさらなる実施形態を例示するものである。複合材料43は、大体上記のような繊維材料114の層を備える。硬化剤繊維成分44の糸を繊維層114の厚みTを介してその長さに沿って織り又は縫い(矢印Lの方向に)、そして熱可塑性繊維成分46をこの層内に通す。硬化剤繊維44及び熱可塑性繊維46を入れ替えることができることが分かるであろう。
【0167】
図9は、硬化剤50及び熱可塑性物質52の両方を、望ましくは概して均一に間隔を開けた配置で繊維層114の厚みにわたって織り又は通し又は縫ったさらなる複合材料48を示している。
【0168】
熱可塑性繊維成分46は、硬化性樹脂繊維成分と交換できる。
【0169】
これらの配置の全てにおいて、排気特性は良好であるところ、これは、硬化の間に、それに導入される硬化性樹脂が繊維層114内部で全体にわたり均一に硬化して、間隙のない、均質で、しかも均一に強化された硬化複合品を与えることを示している。
【0170】
図10は、硬化剤繊維成分210が通された強化用繊維成分214を含む複合材料54の断面図であり、材料54の一方の側には、強化用繊維成分214の表面に連結された又はその中に部分的に含浸された硬化型熱硬化性樹脂の層を含むことができる追加材料層56がある。
【0171】
層56は、この実施形態では、硬化プロセスの間に強化用繊維成分214に含浸しかつこれを「湿潤」させる熱硬化性樹脂を含む。
【0172】
層56は、硬化中及び硬化後に繊維成分214を完全に湿潤させ、かつ、それに含浸するように正確な量の熱硬化性樹脂を含む。複合材料54は、プレプレグ材の形態である。さらなる実施形態では、層56は、繊維成分214を部分的にのみ湿潤させるのに十分な樹脂を有し、そして、追加の樹脂が、繊維成分の下への液体注入及び/又は同様の層(図示しない)などによって、他の場所から与えられる。層56内の熱硬化性樹脂と硬化剤繊維成分210との接触がほとんどないことにより、材料54に良好な安定性と品質保持期間特性とが与えられる。図10の例示では、硬化剤と熱硬化性樹脂とにはわずかな接触が示されているが、必要なら、繊維層214の表面直下にある硬化剤を縫うことによってこれを避けることができる
【0173】
図11は、硬化剤繊維成分310が城郭風の配置で縫い付けられた強化用繊維成分314を含む複合材料58を示す別の実施形態である。材料58の一方側には、乾燥繊維を含むことができる又は部分的に若しくは完全に含浸された繊維補強プレプレグ材を含むことができる、さらには適当な条件に付されたときに繊維成分314に含浸しかつこれを潜在的に湿潤させるのに十分な樹脂を含むことができる繊維強化材料60のさらなる層がある。
【0174】
図12は、複数の硬化剤繊維成分410が図4aの実施形態とほぼ同様の態様で通された強化用繊維成分414を有する複合材料62を含むさらなる実施形態を示す。
【0175】
強化用繊維成分414の一方の表面上には、硬化性樹脂64の小塊又はストライプなどの他のより均一なパターンがある。これらは、硬化中に強化繊維成分414に含浸しこれを湿潤させるために様々な量で与えることができる。また、樹脂小塊又はパターン64(図10の実施形態の層56と同様の態様で)は、ほぼ乾燥した複合材料に表面粘着も与え、それによって硬化にわたる又は硬化中における複合材料の設置を容易にする。
【0176】
図10、11及び12に関する上記複合材料の全ては、繊維強化複合材料物品を従来の硬化技術に従って製造するために使用できるが、ただし、良好な安定性と品質保持期間特性と良好な湿潤及び硬化特性との有意な利点を享受し、それによりほぼ空隙のない均一に硬化した複合品が得られるプレプレグ材である。
【0177】
図15は、図10の材料の第1積層体54と、図12の第2積層体62とを備える複合材料のスタック117が装填され、真空バッグ120の下にあるツール116のツール表面118上で密閉された単純な真空バッグ成形型115を示している。シール122は、バッグ120をツール116にシールする。
【0178】
スタック117は、層56、64内の熱硬化性樹脂を液化させ、そしてそれぞれの繊維層214、414に流入させて繊維成分214、414に完全に含浸させ、そしてこれを湿潤させるための条件に付される。熱を加えることにより、樹脂の液化と移動を促進させ、そしてこの実施形態では、真空バッグの下(出口24参照)から空気を引き出すことにより圧力条件を適用して樹脂の移動、含浸及び湿潤を促進させる。
【0179】
樹脂用の硬化剤を各繊維層内にある繊維の形態のそれぞれの層56、64に与えると、繊維層内の樹脂の完全な含浸が促進される。硬化剤の樹脂特性は、樹脂や至る所にある空気の移動を妨げず、さらに、熱硬化性樹脂は、通常、長時間にわたって液体のままである。というのは、硬化剤と熱硬化性物質との相互作用は、硬化剤と熱硬化性物質とが樹脂層内で予備混合される従来技術と比較して遅れるからである。
【0180】
図14は、本発明に従う複合材料を形成するのに好適なさらなる装置の概略図である。この装置は、従来のプレプレグ材の形成に知られている装置と非常によく似ている。進歩した点は、複合材料に導入される繊維がこれまでには知られていない硬化剤繊維を含むことである。
【0181】
図14には、繊維1、2、3の3つの供給源が示されており、そのそれぞれから、本発明に従う複合材料の形成に使用するための繊維材料が供給される。
【0182】
例えば、供給源1は、本発明に従う硬化剤繊維成分源を含むことができる。また、供給源2及び3は、強化用繊維成分、他の非強化用繊維成分、熱硬化性樹脂繊維成分又は他の様々な組み合わせを含むことができる。
【0183】
基本的に、各供給源1、2、3からの繊維成分は、一緒に集められるようにドラムD1、D2に周りに、そしてローラーR1、R2を通して供給されて複合材料となり、その後、基材を支持するさらなる樹脂層を適用するなどの従来技術に従ってさらに処理加工される。
【0184】
図14の装置は、例えば、図4a、4b、4c、4d、図12に関して説明した複合材料を形成するのに好適である。装置14によって製造される複合材料のさらなる処理加工は、例えば図3及び図8に示されるような複合材料を製造するための縫い合わせを含むことができるであろう。
【0185】
また、本発明の材料は、トウ配置方法でも使用できる。図17は、トウ配置で使用される本発明の硬化剤繊維成分の使用の概略図である。
【0186】
この装置は、一般に、従来のトウ配置用装置である。しかし、硬化剤繊維が強化繊維及び硬化性樹脂繊維と共に配置ヘッドHに供給される。続いて、ヘッドHに供給される3種の繊維成分がマンドレルM上に置かれ、そしてその周りに巻き付けられる。マンドレルMは、その軸の周りを回転して巻き取りを達成する。ヘッドHは、マンドレルMの全長の上方及び下方に移動して繊維が均一に巻き付けられるようにする。
【0187】
このヘッドに供給される繊維の数と性質は、マンドレルMに巻き付けられる繊維の性質と数に従って変更できることが分かるであろう。例えば、1種類を超える硬化剤成分をヘッドHに供給することができる。この複数の硬化剤繊維成分は、互いに同一であっても異なっていてもよい。強化繊維の数と性質は変更できる。硬化性樹脂は、繊維形態で与えなくてもよく、また、他の方法で適用してもよい。さらに非強化用繊維成分を使用することができる。
【0188】
当業者には、トウ配置技術を使用して採用できるかなりの数の選択肢とバリエーション及びこのような技術において硬化剤繊維成分を使用する本発明の利点は明白であろう。
【0189】
本発明の精神又は範囲を逸脱することなく様々な変更が可能である。
【0190】
図18は、本発明に従う硬化剤繊維成分10を製造するためのさらに単純な方法を示している。液体硬化剤(溶融物)を、貯蔵タンクTの基部Bにある開口部Hからなるダイ又は紡糸口金を介して放出する。圧力を加えて硬化剤をダイに押しやることができる。硬化剤繊維Fが該タンクの基部から出てきたときに、通常はこれらを冷却して固化させてから、巻き取りホイールW上に集める。
【0191】
タンクTが静的な場合には、硬化剤繊維Fは硬化剤の単繊維又はストランドを含み、それぞれ本発明の硬化剤繊維成分10に相当する。
【0192】
これらの繊維を、これらを別々な状態に維持するような方法で集めることができるが、ただし、これらに加撚などのさらなる処理加工を施して、個々の繊維を一緒にして撚り大きな繊維成分とする。
【0193】
タンクTが垂直軸の周りを回転する場合には、繊維Fがダイから出てきたときに、互いに撚り合わせる。続いて、この撚り糸又は硬化剤繊維成分10を以後の処理加工のために巻き取りホイール上に集める。
【0194】
図18の装置は、硬化剤の4種のストランド又は繊維Fがそこから出てくることしか示していない。しかし、開口部Hの数が1個の開口から1000個の開口までの範囲にわたることができることが分かるであろう。
【0195】
この製造方法は、タンクTに単一型の硬化剤処方物を充填する場合には、単一処方の硬化剤繊維成分を生じさせることができる。
【0196】
しかし、タンクTは、個別のチャンバーに分割され、そのぞれぞれに異なる硬化剤処方物が充填できる。これにより、異なる組成及び/又は配合を有する複数の繊維を含む本発明に従う硬化剤繊維成分10を製造するのが可能になる。
【0197】
上記実施形態では、例示した硬化剤及び非強化用繊維成分の数は格別に少ないことが分かるであろう。単繊維及び単繊維成分を含む成分を使用することは本発明の範囲内にあるが、多くの、おそらくは100又は1000の繊維成分を本発明の複合材料に与える方がより普通であろう。
【0198】
さらに、本発明の硬化剤繊維成分を使用して製造できる複合材料の非常の多くの構成が存在すること、並びに、上記実施形態は、本発明に従って製造できる材料の大きな利点と広範囲の用途及び構成とを例示するために選択された選択肢に過ぎないことが分かるであろう。本発明の範囲は、硬化性樹脂、強化成分及び/又は非強化成分と本発明に従う1種以上の硬化剤繊維成分との可能な組み合わせの全てにわたる。
【0199】
本発明の多くの用途については、複合材料であって、均一な特性、特に硬化特性を示す複合品を製造するために硬化剤繊維成分が均一に分散したもの提供することが一般に優先される。
【0200】
しかしながら、所定の用途について、異なる繊維成分の分布は、意図的に不均一であり、かつ、内部の成分が不均一に分布した材料を形成させるように選択することができるため、所定の領域又は区域が他の領域又は区域とは異なる具体的に調整された特性を有する物品を製造することが可能である。本発明の成分、具体的には本発明の硬化剤成分は、このような材料及び物品の製造を容易にする。
【0201】
例えば、硬化剤及び/又は非強化用成分を図面を参照して厚みTにわたり長さLに沿って延びると説明及び例示した場合には、これらは、該長さの一部のみ、長さの多くの部分、厚みの途中のみなどに延びるように設けることができる。また、当然ながら、このような材料は、一般に、所定の幅を有し、層又はシートの形態である場合が多く、しかも、この幅にわたる所定の位置又は領域にのみこれらの成分を与えることができるであろう。
【0202】
該成分の繊維形状は、該成分がこのような選択的な態様で容易に提供されるように与えられる。これらは、強化用繊維を所定の位置で単に縫い付けることができ、及び/又は織ることができ、そうでなければ強化用繊維のマトリックスに通されることができる。さらに、図5及び7に関して特に例示した成分を、所定の間隔の開いた領域に中心成分の長さに沿って設けることができる。
【0203】
また、本発明に従う複合材料は、接着剤及び他の非繊維強化材料としても応用できる。前記の実施形態、特にいかなる強化用繊維成分も存在しない実施形態がこのような用途に適している。
【0204】
本明細書においては、特に重要だと思われる本発明の特徴に注意を払うよう努めたが、本出願人は、図面で言及された及び/又は示された(特に強調したか否かを問わない)いずれの特許性のある特徴又は特徴の組み合わせに関する保護を請求するものと解すべきである。
【符号の説明】
【0205】
10 硬化剤繊維成分
A 装置
B 本体
C チャンバー
D ダイ
H 充填用ホッパー
O 出口構造
R 規制用カラー
S 回転シャフト
AP 開口
11 織物硬化剤繊維材料
12 複合材料
13 非織物硬化剤繊維材料
14 強化繊維成分
15 成形装置
16 型
17 スタック
18 成形型表面
20 膜
22 シール
24 出口
26 複合材料
28 複合材料
29 複合材料
30 硬化剤繊維成分
31 一方向強化用繊維成分
32 非強化用繊維成分
34 複合材料
36 複合材料
38 中心強化用繊維成分
40 硬化剤繊維成分
42 非強化用繊維成分
V1 容器
V2 容器
Y 強化用繊維
B 巻き取りホイール
43 複合材料
44 硬化剤繊維成分
46 熱可塑性繊維成分
48 複合材料
50 硬化剤
52 熱可塑性物質
54 複合材料
56 追加材料層
58 複合材料
60 繊維強化材料
62 複合材料
64 硬化性樹脂パターン
114 繊維材料
115 真空バック成形型
116 ツール
118 ツール表面
117 スタック
120 真空バッグ
122 シール
210 硬化剤繊維成分
214 強化用繊維成分
310 硬化剤繊維成分
314 強化用繊維成分
410 硬化剤繊維成分
414 強化用繊維成分
D ドラム
R ローラー
M マンドレル
T 貯蔵タンク
B 基部
H 開口部
W 巻き取りホイール
F 硬化剤繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤を含む硬化剤繊維成分。
【請求項2】
前記硬化剤繊維成分が硬化剤の単繊維を含む、請求項1に記載の硬化剤繊維成分。
【請求項3】
前記硬化剤繊維成分が複数の硬化剤繊維を含む、請求項1に記載の硬化剤繊維成分。
【請求項4】
前記硬化剤繊維成分内の前記繊維が連続的及び/又は不連続的であり、一方向であり、撚られ及び/又は撚り合わされている、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項5】
前記硬化剤繊維成分が触媒及び/又はハ−ドナ−及び/又は硬化促進剤の1種以上を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項6】
前記硬化剤繊維成分が熱硬化性樹脂を硬化するのに好適なものである、請求項1〜5のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項7】
前記好適な硬化剤がジシアンイミド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−メチレンビス(2,6’−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、3,5’−ジエチルトルエン−2,4/2,6−ジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、N,N’−(メチル−1,3−フェニレン)ビス[N,N’−ジメチル尿素]、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、他のイミダゾール誘導体、三フッ化硼素錯体、三塩化硼素錯体、ビスフェノールA、ビスフェノールF、チオジフェノール、フタル酸無水物、マレイン酸無水物、ナジン酸無水物、メチルナジン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、ノネセニル(nonecenyl)コハク酸無水物及びドデセニルコハク酸無水物を包含する、請求項1〜6のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項8】
前記繊維成分中の繊維又は繊維の少なくとも1種が多数の硬化剤のブレンドを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項9】
前記成分が異なる硬化剤及び/又はそれらのブレンドを含む複数の異なる繊維を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項10】
前記硬化剤繊維成分が1種以上の添加剤を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項11】
前記添加剤が、前記硬化性樹脂を特に硬化したときに強化するように作用する、請求項10に記載の硬化剤繊維成分。
【請求項12】
前記添加剤が熱可塑性物質、ゴム、カーボンナノチューブなどのナノ粒子といった、硬化剤を繊維の状態で形成し保持するのを促すものである、請求項10又は11に記載の硬化剤繊維成分。
【請求項13】
前記添加剤又は該添加剤の少なくとも1種が硬化剤内に溶解されている、請求項10〜12のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項14】
前記硬化剤繊維成分の硬化剤が硬化の対象となる樹脂を硬化させるのに必要な硬化剤系の一部のみを含む、請求項2〜13のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項15】
前記部分が硬化剤繊維成分及び/又はそれを用いて作られる製品の所望の特性に応じて選択される、請求項14に記載の硬化剤繊維成分。
【請求項16】
前記硬化剤が、硬化の初期段階では、特に目的の保存条件で比較的活性な硬化剤系の一部を含む、請求項14又は15に記載の硬化剤繊維成分。
【請求項17】
前記硬化剤が、硬化の初期段階では、特に目的の保存条件で比較的不活性な成分を含む、請求項14又は15に記載の硬化剤繊維成分。
【請求項18】
前記硬化剤繊維成分が23℃の温度で50,000Pa.sを超える粘度を有する、請求項1〜17のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項19】
前記粘度が23℃で200,000Pasを超える、請求項17に記載の硬化剤繊維成分。
【請求項20】
前記粘度が硬化中には20,000Pa.sよりも下まで降下する、請求項1〜19のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項21】
前記硬化剤繊維成分の繊維又はその少なくともいくらかが1〜200ミクロンの直径を有する、請求項1〜20のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項22】
前記硬化剤繊維成分の繊維又はその少なくともいくらかが10〜100ミクロンの直径を有する、請求項1〜21のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項23】
前記硬化剤繊維成分の繊維又はその少なくともいくらかが10〜50ミクロンの直径を有する、請求項1〜22のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項24】
前記硬化剤繊維成分が冷凍保存したときに12ヶ月を超える品質保持期間を有する、請求項1〜23のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項25】
前記硬化剤繊維成分が周囲温度(18℃〜23℃)で保存したときに3ヶ月を超える品質保持期間を有する、請求項1〜24のいずれかに記載の硬化剤繊維成分。
【請求項26】
複数の硬化剤繊維成分を含む硬化剤繊維材料。
【請求項27】
前記硬化剤繊維成分の少なくともいくらかを織って繊維質硬化剤織物、シート、テキスタイル又はマットを形成させた、請求項26に記載の硬化剤繊維材料。
【請求項28】
前記硬化剤繊維成分の少なくともいくらかがランダムに配置された、請求項26又は27に記載の硬化剤繊維材料。
【請求項29】
前記材料は、前記硬化剤繊維成分が織られ、縫われ、連続的に、不連続的に、一方向に又はランダムに配置された層を形成する、請求項26〜28のいずれかに記載の硬化剤繊維材料。
【請求項30】
前記硬化剤繊維成分が請求項1〜25のいずれかに記載の硬化剤繊維成分を含む、請求項26〜29のいずれかに記載の硬化剤繊維材料。
【請求項31】
請求項1〜25のいずれかに記載の硬化剤繊維成分又は請求項26〜30のいずれかに記載の硬化剤繊維材料と、該硬化剤によって硬化される硬化性樹脂とを備える樹脂系。
【請求項32】
前記硬化性樹脂が硬化の発現時又は発現直後に前記硬化剤繊維成分又は硬化剤繊維材料に導入された、請求項31に記載の樹脂系。
【請求項33】
前記硬化性樹脂が、前記硬化剤繊維成分又は硬化剤繊維材料との接触及び相互作用を、該樹脂と硬化剤との相互作用が冷蔵及び冷凍などの好適な保存条件下では比較的緩やか又は実質的に回避される程度に低減させるように、粒状若しくは繊維形状などの固体又は他の非常に粘稠な形態である、請求項31又は32に記載の樹脂系。
【請求項34】
前記硬化剤繊維成分又は前記硬化剤繊維材料が硬化性樹脂を硬化させるのに必要な全硬化剤系の一部のみを含む、請求項31〜33のいずれかに記載の樹脂系。
【請求項35】
前記硬化性樹脂が熱硬化性樹脂を含む、請求項31〜34のいずれかに記載の樹脂系。
【請求項36】
硬化剤繊維成分と強化用繊維成分とを含む複合材料。
【請求項37】
前記硬化剤繊維成分が請求項1〜25のいずれかに記載されるものである、請求項36に記載の複合材料。
【請求項38】
前記強化用繊維成分が炭素、ガラス、アラミド、セラミックの1種以上を含む、請求項36又は37に記載の複合材料。
【請求項39】
前記硬化剤繊維成分及び前記強化用繊維成分内におけるそれぞれの繊維の外径が実質的に同一である、請求項36〜38のいずれかに記載の複合材料。
【請求項40】
前記外径が、強化用炭素繊維成分については5〜7ミクロンであり、強化用ガラス繊維成分については15〜20ミクロンである、請求項39に記載の複合材料。
【請求項41】
前記硬化剤繊維成分対前記強化用繊維成分の比が50:50〜5:95v/vの範囲内にある、請求項36〜40のいずれかに記載の複合材料。
【請求項42】
前記硬化剤繊維成分対前記強化用繊維成分の比が30:70〜10:90v/vの範囲内にある、請求項36〜41のいずれかに記載の複合材料。
【請求項43】
請求項36〜42のいずれかに記載の複合材料と硬化性樹脂成分とを含む複合材料系。
【請求項44】
前記硬化剤樹脂繊維成分が、前記硬化性樹脂を硬化するのが望まれるまで該硬化性樹脂成分との接触を避けて配置されている、請求項43に記載の複合材料系。
【請求項45】
前記硬化性樹脂成分が繊維又は粒子などの固体である、請求項43又は44に記載の複合材料系。
【請求項46】
前記硬化性樹脂と前記硬化剤繊維成分とのいくらか又は全てが接触しているが、ただし、それらの物理的性質、化学的性質、組成及び/又は貯蔵条件は、該樹脂と該硬化剤との相互作用が比較的緩やかである又は実質的に阻害されるというものである、請求項45に記載の複合材料系。
【請求項47】
前記硬化剤繊維成分が請求項1〜25のいずれかに記載のものである、請求項43〜46のいずれかに記載の複合材料系。
【請求項48】
前記複合材料系が熱可塑性物質、ゴムといった1種以上の他の添加剤をさらに含む、請求項43〜47のいずれかに記載の複合材料系。
【請求項49】
前記繊維又は前記強化用繊維成分内の強化用繊維のいくらか若しくは全てが織られ、縫われ、連続的に、不連続的に、一方向に又はランダムに配置され、切断され、撚られ又は撚り合わされている、請求項43〜48のいずれかに記載の複合材料系。
【請求項50】
前記硬化剤繊維成分が前記強化用繊維成分及び硬化性樹脂成分の一方又は両方と混繊されている、請求項43〜49のいずれかに記載の複合材料系。
【請求項51】
1種以上の硬化剤繊維成分が1種以上の強化用繊維及び/又は硬化性樹脂成分の周囲にその長さに沿って撚られ、及び/又はその逆に撚られている、請求項50に記載の複合材料系。
【請求項52】
前記硬化剤繊維成分と前記強化用繊維成分及び/又は硬化性樹脂成分とがほぼ平行な配置で平行して走っている、請求項43〜51のいずれかに記載の複合材料系。
【請求項53】
前記複合材料が、請求項26〜30のいずれかに記載の硬化剤繊維材料と、少なくとも一つの各表面上に位置した強化用繊維及び/又は硬化性樹脂成分の層とを含む、請求項43〜52のいずれかに記載の複合材料系。
【請求項54】
繊維の各層が織られ、縫われ、連続的に若しくは不連続的に、一方向に又はランダムに配置されている、請求項53に記載の複合材料系。
【請求項55】
各層がシート、テキスタイル又はマットの形態である、請求項53又は54に記載の複合材料系。
【請求項56】
前記硬化剤繊維成分が織られ、縫われ、又はそうでなければ前記強化用繊維成分及び/又は硬化性樹脂成分の層に通されて、その1以上の所定の選択された領域内又はその領域でほぼ均一に分布している、請求項43〜55のいずれかに記載の複合材料系。
【請求項57】
前記強化用繊維成分及び/又は硬化性樹脂成分が織られ、縫われ、又はそうでなければ、前記硬化剤繊維材料に通され若しくは該硬化剤繊維材料内の1以上の所定の選択領域で通されている、請求項53〜55のいずれかに記載の複合材料系。
【請求項58】
硬化剤繊維成分と、強化用繊維成分と、硬化性樹脂成分とを含む複合材料。
【請求項59】
硬化剤繊維成分と、さらに非強化用繊維成分とを含む複合材料。
【請求項60】
前記非強化用繊維成分が熱可塑性繊維成分を含む、請求項59に記載の複合材料。
【請求項61】
前記熱可塑性繊維成分が熱可塑性単繊維を含む、請求項60に記載の複合材料。
【請求項62】
前記熱可塑性繊維成分が複数の熱可塑性繊維を含む、請求項60に記載の複合材料。
【請求項63】
前記熱可塑性繊維成分がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテル−エーテル−ケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリールスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリシロキサン及び様々なタイプのゴムといった熱可塑性重合体の1種以上を含む、請求項60〜62のいずれかに記載の複合材料。
【請求項64】
前記熱可塑性繊維又は該熱可塑性繊維の少なくともいくらかが半晶質である、請求項60〜63のいずれかに記載の複合材料。
【請求項65】
前記熱可塑性繊維成分が、特に硬化したときに複合材料を強くするように作用する、請求項60〜64のいずれかに記載の複合材料。
【請求項66】
前記非強化用繊維成分が硬化性樹脂繊維成分を含む、請求項59に記載の複合材料。
【請求項67】
前記硬化性樹脂繊維成分が硬化型熱硬化性樹脂を含む、請求項66に記載の複合材料。
【請求項68】
前記硬化性樹脂繊維成分が少なくとも1種の熱硬化性樹脂繊維を含む、請求項66又は67に記載の複合材料。
【請求項69】
前記繊維又は該繊維の少なくともいくらかが連続的である、請求項68に記載の複合材料。
【請求項70】
前記繊維又は該繊維の少なくともいくらかが不連続である、請求項68に記載の複合材料。
【請求項71】
前記硬化性樹脂繊維成分がエポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、BMI(ビスマレイミド)、ポリベンズオキサジン、ポリイミド、フェノール樹脂及びポリエステルの1種以上を含む、請求項66〜70のいずれかに記載の複合材料。
【請求項72】
前記繊維又は該繊維の少なくともいくらかが多数の熱硬化性樹脂のブレンドを含む、請求項68〜71のいずれかに記載の複合材料。
【請求項73】
前記硬化性樹脂繊維成分が異なる熱硬化性樹脂及び/又はそれらのブレンドを含む複数の異なる繊維を含む、請求項68〜72のいずれかに記載の複合材料。
【請求項74】
前記成分の粘度が23℃の温度で5×104Pa.sを超える、請求項66〜73のいずれかに記載の複合材料。
【請求項75】
前記成分の粘度が23℃で2×105Pa.sを超える、請求項66〜74のいずれかに記載の複合材料。
【請求項76】
前記硬化性樹脂繊維成分がN,N,N,N−テトラグリシジル−4,‘4−ジアミノジフェニルメタン及びポリエーテルスルホンである、請求項66〜75のいずれかに記載の複合材料。
【請求項77】
前記硬化剤繊維成分対前記非強化用繊維成分の比が90:10〜70:30v/vの範囲にある、請求項59〜76のいずれかに記載の複合材料。
【請求項78】
前記硬化剤繊維成分対前記非強化用繊維成分の比が80:20v/vである、請求項59〜77のいずれかに記載の複合材料。
【請求項79】
前記硬化剤繊維成分と前記非強化用繊維成分とを混繊して複合材料とした、請求項59〜78のいずれかに記載の複合材料。
【請求項80】
硬化剤繊維成分と、硬化性樹脂成分、強化用繊維成分及び非強化用繊維成分のうちの一つとを含む複合材料。
【請求項81】
前記繊維成分が、製織、加撚、縫合、撚り合わせ、スレッディングなどにより混繊されている、請求項80に記載の複合材料。
【請求項82】
前記材料内におけるそれぞれの繊維成分が前記複合材料内において実質的に均一に分布している、請求項80又は81に記載の複合材料。
【請求項83】
それぞれの繊維成分の位置及び量が、所望の特性を有する材料及びそれから作られた物品を与えるように選択され、予め決定される、請求項80〜82のいずれかに記載の複合材料。
【請求項84】
3種の繊維のうちの2種が一方の方法で互いに混繊され、例えば撚り合わされ、続いてこれら2種と第3及び/又は第4の種類の繊維成分とが、同じ方法又は異なる方法で織られ、通され、縫われるなど混繊されている、請求項80〜83のいずれかに記載の複合材料。
【請求項85】
硬化性樹脂及び硬化剤繊維成分を導入することを含む複合品の製造方法。
【請求項86】
使用する硬化剤繊維成分が請求項1〜25のいずれかに記載のものである、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
使用する硬化剤繊維成分が請求項36〜42又は58〜73のいずれかに記載の複合材料の一部を含む、請求項85又は86のいずれかに記載の方法。
【請求項88】
前記硬化性樹脂を液体又は半液体の状態で導入する、請求項85〜87のいずれかに記載の方法。
【請求項89】
前記硬化性樹脂を液体樹脂注入又は同様の条件及び技術で導入する、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記硬化性樹脂が、硬化時に硬化剤繊維成分を完全に若しくは実質的に完全に湿らせ及び/又は複合材料に完全に含浸する、請求項88又は89のいずれかに記載の方法。
【請求項91】
前記硬化性樹脂、前記硬化剤繊維成分及び/又は前記複合材料を硬化条件に付す、請求項85〜90のいずれかに記載の方法。
【請求項92】
請求項36〜42又は58〜84のいずれかに記載の複合材を硬化条件に付すことを含む複合品の製造方法。
【請求項93】
硬化剤繊維成分を使用して硬化性樹脂を硬化させて製造した複合品。
【請求項94】
添付図面に関連して実質的に明細書に記載されたとおりの硬化剤繊維成分。
【請求項95】
添付図面に関連して実質的に明細書に記載されたとおりの樹脂系。
【請求項96】
添付図面に関連して実質的に明細書に記載されたとおりの複合材料。
【請求項97】
添付図面に関連して実質的に明細書に記載されたとおりの複合材料系。
【請求項98】
添付図面に関連して実質的に明細書に記載されたとおりの方法。
【請求項99】
添付図面に関連して実質的に明細書に記載されたとおりの複合品。
【請求項100】
請求項1〜99のいずれかに記載された発明と同じ発明の範囲内にあるか又はそれに関連するかを問わず、明細書に開示された新規な主題又は新規な主題を含む組み合わせ。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2012−513519(P2012−513519A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542890(P2011−542890)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002729
【国際公開番号】WO2010/072990
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(500471032)アドバンスト コンポジッツ グループ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】