説明

硬化性エポキシ組成物、異方性導電材料、積層体、接続構造体及び接続構造体の製造方法

【課題】完全に硬化していない半硬化状態で保管された後に接続対象部材の接続に用いられても、接続対象部材を容易に接続できる硬化性エポキシ組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物であるエポキシ成分と、エポキシ基を有するアクリルポリマー及びエポキシ基を有するスチレンポリマーの内の少なくとも一方のポリマーと、硬化剤とを含有する硬化性エポキシ組成物。


上記式(1)中、R1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は特定なエポキシ基をもつ構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全に硬化していない半硬化状態で保管されたときに、硬化が進行し難く、さらに半硬化状態で保管された後に接続対象部材の接続に用いられても、接続対象部材を容易に接続できる硬化性エポキシ組成物、該硬化性エポキシ組成物を用いた異方性導電材料、積層体、接続構造体及び接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等の異方性導電材料が広く知られている。
【0003】
異方性導電材料は、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続や、ICチップとITO電極を有する回路基板との接続等に使用されている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧することにより、これらの電極同士を接続できる。
【0004】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、熱硬化性接着剤と、導電性粒子と、イミダゾール構造を有する潜在性硬化剤と、アミン構造を有する潜在性硬化剤とを含有する異方性導電接着フィルムが開示されている。特許文献1には、この異方性導電接着フィルムを比較的低温で硬化させても、接続信頼性が優れていることが記載されている。
【特許文献1】特開平9−115335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の異方性導電接着フィルムは、保護フィルム上に形成されている。この保護フィルム上に形成された異方性導電接着フィルムを用いて、ICチップを回路基板上に実装する場合、異方性導電接着フィルムは保護フィルムから剥離される。ICチップと回路基板との間に異方性導電接着フィルムが配置され、ICチップと回路基板とが熱圧着される。
【0006】
従って、異方性導電接着フィルムを保護フィルムから剥離する工程が必要であった。さらに、ICチップと回路基板との間に、異方性導電接着フィルムを配置する工程が必要であった。保護フィルムは異方性導電接着フィルムから剥離されるため、大量の保護フィルムが廃棄されるという問題があった。また、ICチップと回路基板との間に、異方性導電接着フィルムを配置するため、製造工程が複雑になるという問題があった。さらに、ICチップと回路基板との間に、異方性導電接着フィルムを精度よく位置合わせすることが困難なことがあった。従って、このような工程を省略することが強く望まれていた。
【0007】
上記工程を省略するために、回路基板上に、異方性導電接着層を予め形成することが検討されてきている。しかしながら、回路基板上に、特許文献1に記載の異方性導電接着フィルムにより異方性導電接着層を形成した場合、該異方性導電接着層の粘着性が高いため、取り扱いが困難であるという問題があった。
【0008】
さらに、異方性導電接着層の粘着性を低下させるために、異方性導電接着層の硬化を進行させ、異方性導電接着層を完全に硬化していない半硬化状態にする場合、異方性導電接着層の硬化反応の制御が困難であった。さらに、半硬化状態とされた異方性導電接着層が保管されると、硬化がさらに進行し、異方性導電接着層の粘着性が低下することがあった。このため、ICチップと回路基板とを確実に接続できないことがあった。
【0009】
本発明の目的は、完全に硬化していない半硬化状態で保管されたときに、硬化が進行し難く、さらに半硬化状態で保管された後に接続対象部材の接続に用いられても、接続対象部材を容易に接続できる硬化性エポキシ組成物、該硬化性エポキシ組成物を用いた異方性導電材料、積層体、接続構造体及び接続構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、下記式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物であるエポキシ成分と、エポキシ基を有するアクリルポリマー及びエポキシ基を有するスチレンポリマーの内の少なくとも一方のポリマーと、硬化剤とを含有することを特徴とする、硬化性エポキシ組成物が提供される。
【0011】
【化1】

【0012】
上記式(1)中、R1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(2)で表される構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0013】
【化2】

【0014】
上記式(2)中、R4は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0015】
本発明に係る異方性導電材料は、本発明に従って構成された硬化性エポキシ組成物と、導電性粒子とを含有する。
【0016】
本発明に係る積層体は、第1の接続対象部材と、該第1の接続対象部材上に積層された半硬化物層とを備え、前記半硬化物層が、前記第1の接続対象部材上に本発明の硬化性エポキシ組成物又は該硬化性エポキシ組成物と導電性粒子とを含有する異方性導電材料を塗工した後、該硬化性エポキシ組成物又は該異方性導電材料を予備硬化させることにより形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、前記接続部が、本発明の硬化性エポキシ組成物又は該硬化性エポキシ組成物と導電性粒子とを含有する異方性導電材料により形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、本発明に従って構成された積層体の半硬化物層上に、第2の接続対象部材を積層する工程と、前記第2の接続対象部材を積層した後、前記半硬化物層を加熱し、硬化させることにより前記半硬化物層が硬化された接続部を形成し、該接続部により第1,第2の接続対象部材を接続する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る硬化性エポキシ組成物は、上記特定の構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物であるエポキシ成分と、エポキシ基を有するアクリルポリマー及びエポキシ基を有するスチレンポリマーの内の少なくとも一方のポリマーと、硬化剤とを含有するため、完全に硬化していない半硬化状態とされ、半硬化状態で保管されたときに、硬化が進行し難い。さらに、本発明に係る硬化性エポキシ組成物を半硬化状態で保管した後に、接続対象部材を接続するのに用いた場合に、接続対象部材を容易に接続できる。
【0020】
また、本発明に係る異方性導電材料を半硬化状態で保管した後に、電子部品の電極間の接続に用いた場合に、電子部品の電極間を容易に接続できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0022】
(硬化性エポキシ組成物)
本発明に係る硬化性エポキシ組成物は、下記式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物であるエポキシ成分(以下、エポキシ成分Aともいう。)と、エポキシ基を有するアクリルポリマー及びエポキシ基を有するスチレンポリマーの内の少なくとも一方のポリマー(以下、ポリマーBともいう。)と、硬化剤とを含有する。上記エポキシ成分Aは、下記式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物の内のいずれかである。
【0023】
【化3】

【0024】
上記式(1)中、R1は水素原子もしくは炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(2)で表される構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0025】
【化4】

【0026】
上記式(2)中、R4は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0027】
上記アルキル基の炭素数が5を超えると、硬化性エポキシ組成物の硬化速度が低下することがある。また、上記アルキレン基の炭素数が5を超えると、硬化性エポキシ組成物の硬化速度が低下することがある。
【0028】
上記式(1)中のR1は、炭素数1〜3のアルキル基又は上記式(2)で表される構造であることが好ましく、上記式(2)で表される構造であることがより好ましい。上記アルキル基は直鎖構造を有するアルキル基であってもよく、分岐構造を有するアルキル基であってもよい。
【0029】
上記式(1)中のR2は、炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基であることがより好ましい。上記式(1)中のR3は、炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基であることがより好ましい。上記アルキレン基は直鎖構造を有するアルキレン基であってもよく、分岐構造を有するアルキレン基であってもよい。上記R2と上記R3とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
上記式(2)中のR4は、炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基であることがより好ましい。上記アルキレン基は直鎖構造を有するアルキレン基であってもよく、分岐構造を有するアルキレン基であってもよい。
【0031】
上記式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物は、フルオレン構造と、少なくとも2個のエポキシ基とを有することを特徴とする。本発明の硬化性エポキシ組成物は、上記エポキシ成分Aと、後述するエポキシ基を有するアクリルポリマー及びエポキシ基を有するスチレンポリマーの内の少なくとも一方のポリマーとを含有するため、完全に硬化していない半硬化状態とされたときに適度な粘着性を有する。さらに、硬化性エポキシ組成物が半硬化状態で保管されても、硬化が進行し難い。硬化性エポキシ組成物を半硬化状態で保管した後に接続対象部材の接続に用いた場合、接続対象部材を容易に接続できる。
【0032】
さらに、本発明の硬化性エポキシ組成物に導電性粒子が添加された異方性導電材料を半硬化状態で保管した後に、電子部品の電極間の接続に用いた場合、電極間を容易に接続できる。さらに、電極間の電気的接続の信頼性を高めることができる。
【0033】
上記式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物の具体例として、下記の式(3)で表されるエポキシ化合物等が挙げられる。下記式(3)で表されるエポキシ化合物は、上記式(1)におけるR2がメチレン基であり、R3がメチレン基であり、かつR1が上記式(2)で表される構造を有し、上記式(2)におけるR4がメチレン基であるエポキシ化合物である。
【0034】
【化5】

【0035】
前述した式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物は、単量体である。本発明では、上記式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体に代えて、あるいは該エポキシ化合物の単量体とともに、上記式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体を用いてもよい。上記エポキシ成分Aは、上記式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が2〜10個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物であることが好ましく、上記エポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が2個又は3個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物であることがより好ましく、さらに上記エポキシ化合物の単量体であることがより好ましい。上記式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物が10個を超えて結合された多量体を用いると、硬化性エポキシ組成物の粘度が高くなりすぎることがある。なお、上記式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体を合成すると、副生成物として、上記単量体が2個又は3個結合された多量体が含まれることがある。
【0036】
上記エポキシ成分Aと上記ポリマーBとの合計100重量%中に、上記エポキシ成分Aは40〜80重量%の範囲内で含有されることが好ましく、50〜70重量%の範囲内で含有されることがより好ましい。上記エポキシ成分Aの含有量が少なすぎると、線膨張率が充分に低い硬化物が得られないことがある。上記エポキシ成分Aの含有量が多すぎると、硬化性エポキシ組成物が半硬化されて、半硬化状態で保管されたときに、硬化が進行しやすくなることがある。
【0037】
本発明の硬化性エポキシ組成物は、エポキシ基を有するアクリルポリマー及びエポキシ基を有するスチレンポリマーの内の少なくとも一方のポリマーを含む。該エポキシ基を有するスチレンポリマーは、ポリスチレンのベンゼン環の一部がエポキシ基に置換された構造を有する。
【0038】
本発明の硬化性エポキシ組成物は、上記エポキシ成分Aとともに、上記ポリマーBを含有するため、半硬化状態で保管された後に接続対象部材を接続しても、接続対象部材を容易に接続できる。
【0039】
上記エポキシ基を有するスチレンポリマーは、下記式(4)で表される骨格を有することが好ましい。この場合には、硬化性エポキシ組成物が半硬化されて、半硬化状態で保管されたときに、硬化がより一層進行し難くなる。
【0040】
【化6】

【0041】
上記エポキシ成分Aと上記ポリマーBとの合計100重量%中に、上記ポリマーBは20〜60重量%の範囲内で含有されることが好ましく、30〜50重量%の範囲内で含有されることがより好ましい。上記ポリマーBの含有量が少なすぎると、硬化性エポキシ組成物が半硬化されて、半硬化状態で保管されたときに、硬化が進行しやすくなることがある。上記ポリマーBの含有量が多すぎると、線膨張率が充分に低い硬化物が得られないことがある。
【0042】
上記エポキシ基を有するアクリルポリマーの重量平均分子量は、100000〜300000の範囲内にあることが好ましく、200000〜250000の範囲内にあることがより好ましい。上記エポキシ基を有するスチレンポリマーの重量平均分子量は、10000〜100000の範囲内にあることが好ましく、15000〜50000の範囲内にあることがより好ましい。上記重量平均分子量が上記範囲内にあることにより、硬化性エポキシ組成物を半硬化状態で保管した後に接続対象部材を接続しても、接続対象部材を容易に接続できる。
【0043】
また、上記ポリマーBのエポキシ当量は、200g/eq〜5000g/eqの範囲内にあることが好ましく、300g/eq〜1000g/eqの範囲内にあることがより好ましい。
【0044】
上記エポキシ基を有するアクリルポリマーの市販品として、マープルーフG2050M等が挙げられる。上記エポキシ基を有するスチレンポリマーの市販品として、マープルーフG−0250S、マープルーフG−1005S、マープルーフG−1005SA及びマープルーフG−1010S(以上、いずれも日油社製)等が挙げられる。上記エポキシ基を有するアクリルポリマーと上記エポキシ基を有するスチレンポリマーとは単独で用いられてもよく、併用されてもよい。なかでも、回路基板に対する接着力が高いことから、上記エポキシ基を有するアクリルポリマーを用いることが好ましい。
【0045】
本発明に係る硬化性エポキシ組成物は、上記エポキシ成分A、上記ポリマーB以外の他のエポキシ樹脂や、エポキシ化合物を含有してもよい。
【0046】
なお、「エポキシ樹脂」とは、一般的には、1分子中にエポキシ基を2個以上有し、かつ分子量10000以下の低分子量のポリマーもしくはプレポリマー、又は該ポリマーもしくはプレポリマーのエポキシ基の開環反応によって生じた硬化性樹脂である。硬化性樹脂は熱硬化性樹脂であってもよいし、光硬化性樹脂であってもよい。
【0047】
上記エポキシ樹脂の具体例として、ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、又はナフタレン構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0048】
上記エポキシ化合物の市販品として、例えば、アデカレジンEP−3300S及びアデカレジンEP−3300E(以上、いずれもADEKA社製)等が挙げられる。硬化性エポキシ組成物は、アデカレジンEP−3300S及びアデカレジンEP−3300Eの内の少なくとも一方を含むことが好ましく、アデカレジンEP−3300Sを含むことがより好ましい。これらの好ましい市販品を用いることにより、硬化性エポキシ組成物の粘度を調整できる。
【0049】
硬化性エポキシ組成物の塩素濃度は、500ppm以下であることが好ましい。上記塩素濃度が高すぎると、硬化性エポキシ組成物の硬化速度が遅くなることがある。上記塩素濃度は、例えば、ICP発光分析により測定できる。
【0050】
上記硬化剤は特に限定されない。上記硬化剤として、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤又は酸無水物硬化剤等が挙げられる。なかでも、硬化性エポキシ組成物を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤が好ましい。また、上記エポキシ成分A、上記ポリマーB及び上記硬化剤の混合物の保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることがより好ましい。これらの硬化剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記硬化剤は、ポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0051】
上記硬化剤の含有量は特に限定されない。全てのエポキシ成分の合計100重量部に対して、上記硬化剤は1〜40重量部の範囲内で含有されることが好ましい。上記硬化剤の量が1重量部未満であると、硬化性エポキシ組成物が充分に硬化しないことがある。上記硬化剤の量が40重量部を超えると、硬化性エポキシ組成物の硬化速度が制御できないことがある。なお、「全てのエポキシ成分の合計100重量部」とは、上記エポキシ成分A及び上記ポリマーB以外のエポキシ成分が含まれない場合には、上記エポキシ成分Aと、上記ポリマーBとの合計100重量部を意味し、上記エポキシ成分A及び上記ポリマーB以外の他のエポキシ成分が含まれる場合には、上記エポキシ成分Aと、上記ポリマーBと、他のエポキシ成分の合計100重量部を意味する。
【0052】
上記硬化剤がイミダゾール硬化剤である場合、上記全てのエポキシ成分の合計100重量部に対して、イミダゾール硬化剤は1〜15重量部の範囲内で含有されることが好ましい。上記硬化剤がアミン硬化剤である場合、上記全てのエポキシ成分の合計100重量部に対して、アミン硬化剤は15〜40重量部の範囲内で含有されることが好ましい。
【0053】
本発明に係る硬化性エポキシ組成物は、溶剤を含有することが好ましい。
【0054】
上記溶剤は特に限定されない。例えば、上記エポキシ成分A又は上記ポリマーBが固形である場合に、固形の上記エポキシ成分A又は上記ポリマーB(以下、固形分ともいう)に溶剤を添加すると、上記固形分は溶剤に溶解する。このため、溶剤を用いた場合、硬化性エポキシ組成物中における上記固形分の分散性を高めることができる。上記溶剤は、有機溶剤であることが好ましい。有機溶剤として、例えば、メチルセロソルブ、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、トルエン又はエチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
【0055】
上記溶剤の含有量は特に限定されない。全てのエポキシ成分の合計100重量部に対して、上記溶剤は10〜65重量部の範囲内で含有されることが好ましく、15〜60重量部の範囲内で含有されることがより好ましい。溶剤をこの範囲内で用いた場合、より一層均一な硬化性エポキシ組成物を得ることができる。
【0056】
硬化性エポキシ組成物の粘度を調整するために、又は塗布した硬化性エポキシ組成物が濡れ広がらないようにするために、本発明の硬化性エポキシ組成物は、重合性化合物をさらに含有してもよい。上記重合性化合物は特に限定されない。上記重合性化合物として、例えば、架橋性化合物又は非架橋性化合物が挙げられる。上記重合性化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
上記架橋性化合物は特に限定されない。上記架橋性化合物の具体例として、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
上記非架橋性化合物は特に限定されない。上記非架橋性化合物の具体例として、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート又はテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
上記全てのエポキシ成分の合計100重量部に対して、上記重合性化合物は10〜60重量部の範囲内で含有されることが好ましい。上記重合性化合物の含有量が10重量部未満であると、硬化性エポキシ組成物の粘度が調整できないことがある。上記重合性化合物の含有量が60重量部を超えると、硬化性エポキシ組成物の粘度が高くなりすぎることがある。
【0060】
本発明の硬化性エポキシ組成物は、接着力調整剤を含有することが好ましい。接着力調整剤を用いた場合、硬化性エポキシ組成物の硬化物の接着力を高めることができる。上記接着力調整剤は、シランカップリング剤であることが好ましい。
【0061】
上記シランカップリング剤は特に限定されない。上記シランカップリング剤として、例えば、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、イソブチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン又はメチルフェニルジメトキシシラン等が挙げられる。上記シランカップリング剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
上記全てのエポキシ成分の合計100重量部に対して、上記シランカップリング剤は4〜20重量部の範囲内で含有されることが好ましい。上記シランカップリング剤の含有量が4重量部未満であると、硬化性エポキシ組成物の硬化物の接着力が低下することがある。上記シランカップリング剤の含有量が20重量部を超えると、硬化性エポキシ組成物が硬化しにくくなることがある。
【0063】
本発明の硬化性エポキシ組成物は、無機粒子を含有することが好ましい。上記無機粒子を用いることにより、硬化性エポキシ組成物の硬化物の熱膨張を抑制できる。上記無機粒子は特に限定されない。上記無機粒子として、シリカ、窒化アルミニウム又はアルミナ等が挙げられる。無機粒子は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
上記全てのエポキシ成分の合計100重量部に対して、上記無機粒子は3〜900重量部の範囲内で含有されることが好ましい。無機粒子をこの範囲内で用いた場合、硬化性エポキシ組成物の硬化物の熱膨張をより一層抑制できる。
【0065】
本発明の硬化性エポキシ組成物は、光照射又は加熱により反応活性種を生じさせる重合開始剤を含有してもよい。上記重合開始剤を用いることにより、硬化性エポキシ組成物の硬化速度を高めることができる。
【0066】
上記重合開始剤は特に限定されない。上記重合開始剤として、例えば、アセトフェノン重合開始剤、ケタール重合開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、又はアシルホスフォナート等が挙げられる。上記アセトフェノン重合開始剤は特に限定されない。上記アセトフェノン重合開始剤の具体例として、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。また、上記ケタール重合開始剤は特に限定されない。上記ケタール重合開始剤の具体例として、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0067】
上記全てのエポキシ成分の合計100重量部に対して、上記重合開始剤は2〜10重量部の範囲内で含有されることが好ましい。上記重合開始剤の含有量が2重量部未満であると、重合開始剤を添加した効果が充分に得られないことがある。上記重合開始剤の含有量が10重量部を超えると、硬化性エポキシ組成物の硬化物の接着力が低下することがある。
【0068】
本発明の硬化性エポキシ組成物の製造方法は特に限定されない。硬化性エポキシ組成物の製造方法の具体例として、上記エポキシ成分Aと、上記ポリマーBと、上記溶剤とを混合し、エポキシ組成物を作製した後、該エポキシ組成物に、上記硬化剤と、必要に応じて添加される他の成分とを配合し、遊星式攪拌機等を用いて混合する製造方法が挙げられる。
【0069】
本発明の硬化性エポキシ組成物は、一液型接着剤として、液晶パネルや半導体チップ等の接着に用いることができる。本発明の硬化性エポキシ組成物は、ペースト状の接着剤であってもよく、フィルム状の接着剤であってもよい。
【0070】
本発明の硬化性エポキシ組成物をフィルム状の接着剤に加工する方法は特に限定されない。例えば、本発明の硬化性エポキシ組成物を離型紙等の基材に塗布し、フィルム状の接着剤に加工する方法、又は溶剤を含む本発明の硬化性エポキシ組成物を離型紙等の基材に塗布した後、上記硬化剤の活性温度よりも低い温度で溶剤を揮発させ、フィルム状の接着剤に加工する方法等が挙げられる。
【0071】
本発明の硬化性エポキシ組成物を硬化させる方法として、硬化性エポキシ組成物を加熱する方法、硬化性エポキシ組成物に光を照射し、次いで、硬化性エポキシ組成物を加熱する方法、又は硬化性エポキシ組成物に光を照射すると同時に、硬化性エポキシ組成物を加熱する方法等が挙げられる。
【0072】
本発明の硬化性エポキシ組成物を硬化させる際の加熱温度は、100〜250℃の範囲内にあることが好ましく、160〜200℃の範囲内にあることがより好ましい。本発明の硬化性エポキシ組成物は低温で硬化させることができるので、加熱に要するエネルギー量を低減できる。
【0073】
本発明の硬化性エポキシ組成物を硬化させる方法の内、硬化性エポキシ組成物に光を照射し、次いで、硬化性エポキシ組成物を加熱する方法によれば、加熱のみを用いる方法よりも、硬化性エポキシ組成物を短時間で硬化させることができる。
【0074】
本発明の硬化性エポキシ組成物に光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源として、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。光源の具体例として、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯又はメタルハライドランプ等が挙げられる。なかでも、ケミカルランプが好ましい。ケミカルランプは、重合開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光するとともに、重合開始剤以外の組成物成分の光吸収波長領域の発光量が少ない。さらに、ケミカルランプを用いた場合には、組成物の内部に存在する重合開始剤まで効率よく光を到達させることができる。
【0075】
例えば、アセトフェノン基を有する開裂型の重合開始剤が含有されている場合、365nm〜420nmの波長領域での光照射強度は、0.1〜100mW/cmの範囲内にあることが好ましい。
【0076】
(異方性導電材料)
本発明の硬化性エポキシ組成物に導電性粒子を含有させることにより、異方性導電材料を得ることができる。
【0077】
上記導電性粒子は、例えば電子部品の電極間等を電気的に接続する。上記導電性粒子は、少なくとも表面が導電性を有する粒子であれば特に限定されない。上記導電性粒子として、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層として、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0078】
上記全てのエポキシ成分の合計100重量部に対して、上記導電性粒子は0.5〜5重量部の範囲内で含有されることが好ましい。上記導電性粒子の量が0.5重量部未満であると、電極同士等を確実に導通させることができないことがある。上記導電性粒子の含有量が5重量部を超えると、隣接する電極間の短絡が生じることがある。
【0079】
異方性導電材料の塩素濃度は、500ppm以下であることが好ましい。上記塩素濃度が高すぎると、異方性導電材料に含まれている硬化性エポキシ組成物の硬化速度が遅くなることがある。
【0080】
本発明に係る異方性導電材料は、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム又は異方性導電シート等として使用され得る。異方性導電材料が、異方性導電フィルムや異方性導電シート等のフィルム状の接着剤として使用される場合、該導電性粒子を含有するフィルム状の接着剤と、導電性粒子を含有しないフィルム状の接着剤とが積層されていてもよい。
【0081】
(積層体)
図1に、本発明の一実施形態に係る積層体の断面図を示す。
【0082】
図1に示す積層体1は、第1の接続対象部材2と、第1の接続対象部材2の上面2aに積層された半硬化物層3とを備える。第1の接続対象部材2の上面2aには、電極2bが形成されている。半硬化物層3は、導電性粒子4を含有する。半硬化物層3は、第1の接続対象部材2の上面2aに、硬化性エポキシ組成物と導電性粒子4とを含有する異方性導電材料を塗工した後、異方性導電材料を予備硬化させることにより形成されている。上記硬化性エポキシ組成物と導電性粒子4とを含有する異方性導電材料に代えて、導電性粒子4を含有しない上記硬化性エポキシ組成物を用いてもよい。
【0083】
「予備硬化」とは、硬化性エポキシ組成物を完全に硬化させずに、半硬化させることをいう。半硬化状態は、Bステージ状態と呼ばれることがある。上記半硬化物層の硬化をさらに進行させることにより、硬化物層を形成できる。半硬化物層は、完全に硬化していない層である。半硬化物層は、硬化がさらに進行され得る層である。
【0084】
(接続構造体)
図2に、本発明の一実施形態に係る接続構造体の断面図を示す。
【0085】
図2に示す接続構造体11は、上記積層体1を用いて形成され得る。
【0086】
図2に示す接続構造体11は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材12と、第1,第2の接続対象部材2,12を接続している接続部3Aとを備える。接続部3Aが、半硬化物層3を硬化させることにより形成されている。第2の接続対象部材12の下面12aには、電極12bが形成されている。第1,第2の接続対象部材2,12の電極2b,12b同士が、導電性粒子4により接続されている。
【0087】
接続構造体11として、具体的には、回路基板上に、半導体チップ、コンデンサチップ又はダイオードチップ等の電子部品チップが搭載されており、該電子部品チップの電極が、回路基板上の電極と電気的に接続されている接続構造体等が挙げられる。回路基板として、フレキシブルプリント基板等の様々なプリント基板、ガラス基板、又は金属箔が積層された基板等の様々な回路基板が挙げられる。
【0088】
接続構造体11の製造方法は特に限定されない。接続構造体11の製造方法の具体例として、下記の第1,第2の製造方法が挙げられる。
【0089】
第1の製造方法として、第1の接続対象部材2の上面2aに、本発明の硬化性エポキシ組成物又は該硬化性エポキシ組成物により形成された半硬化物層3が積層された積層体1の半硬化物層3の上面3aに、第2の接続対象部材12を積層する工程と、第2の接続対象部材12を積層した後、半硬化物層3を加熱し、硬化させる工程とを備える製造方法が挙げられる。半硬化物層3を硬化させることにより、半硬化物層3が硬化された接続部3Aが形成される。接続部3Aは、半硬化物層3が硬化された硬化物層である。接続部3Aにより、第1,第2の接続対象部材2,12が接続される。
【0090】
第2の製造方法として、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材12との間に、本発明の硬化性エポキシ組成物又は該硬化性エポキシ組成物と導電性粒子とを含む異方性導電材料を配置する工程と、該硬化性エポキシ組成物又は該異方性導電材料を硬化させる工程とを備える製造方法等が挙げられる。第2の製造方法では、硬化性エポキシ組成物又は異方性導電材料は、好ましくは半硬化されずに一段階で硬化され、接続部3Aが形成される。接続部3Aにより、第1,第2の接続対象部材2,12が接続される。
【0091】
接続構造体11の上記第1,第2の製造方法の内、第1の製造方法が好ましい。
【0092】
上記第1の製造方法は、第1の接続対象部材2の上面2aに、本発明の硬化性エポキシ組成物又は該硬化性エポキシ組成物と導電性粒子とを含む異方性導電材料を塗工する工程と、該硬化性エポキシ組成物又は異方性導電材料を予備硬化させることにより、第1の接続対象部材2の上面2aに、半硬化物層3を形成する工程とを備えていてもよい。
【0093】
上記第1の製造方法において、第1の接続対象部材2の上面2aに、硬化性エポキシ組成物又は異方性導電材料を塗工する方法として、第1の接続対象部材2の電極が形成された面に、ペースト状の硬化性エポキシ組成物又は異方性導電材料を塗布する方法や、第1の接続対象部材2の電極が形成された面に、フィルム状の硬化性エポキシ組成物又は異方性導電材料を貼り付ける方法等が挙げられる。
【0094】
上記第1の製造方法において、半硬化物層3を予備加熱する際の温度は特に限定されない。予備加熱の温度は、硬化性エポキシ組成物又は異方性導電材料が完全に硬化しない温度に設定される。予備加熱の際に、溶剤は完全に除去されないことが好ましい。
【0095】
従来の異方性導電材料は、完全に硬化していない半硬化状態で保管されると、短時間で硬化反応が進行しやすかった。このため、従来の異方性導電材料を完全に硬化していない半硬化状態で保管した後に接続対象部材の接続に用いると、接続対象部材を確実に接続できないことがあった。
【0096】
本発明の硬化性エポキシ組成物又は異方性導電材料は、従来の硬化性エポキシ組成物又は異方性導電材料と比較して、完全に硬化していない半硬化状態で保管されたときに、硬化が進行し難い。このため、本発明の硬化性エポキシ組成物又は異方性導電材料を半硬化状態で保管した後に接続対象部材の接続に用いた場合、接続対象部材を容易に接続できる。
【0097】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0098】
(実施例1)
上記エポキシ成分Aとしての上記式(3)で表されるエポキシ化合物40重量部、上記エポキシ基を有するスチレンポリマー(重量平均分子量20000、エポキシ当量310g/eq、日油社製「マープルーフG−0250S」)60重量部、上記溶剤としてのエチレングリコールジアセテート60重量部を含有する混合物160重量部を、160℃にて還流しながら溶解し、樹脂組成物を得た。
【0099】
得られた樹脂組成物に、硬化剤としてのアミンアダクト型硬化剤(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)15重量部と、シランカップリング剤としてのN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン6重量部と、平均粒子径3μmの導電性粒子2重量部とを添加し、遊星式攪拌機を用いて、2000rpmで8分間攪拌し、硬化性組成物を得た。なお、用いた上記導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子であった。
【0100】
得られた硬化性組成物を、ナイロン製濾紙(孔径10μm)により濾過し、異方性導電材料を作製した。
【0101】
(実施例2)
上記エポキシ基を有するスチレンポリマー(重量平均分子量20000、エポキシ当量310g/eq、日油社製「マープルーフG−0250S」)を、エポキシ基を有するアクリルポリマー(重量平均分子量200000、エポキシ当量340g/eq、日油社製「マープルーフG−2050M」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電材料を作製した。
【0102】
(比較例1)
上記エポキシ成分Aとしての上記式(3)で表されるエポキシ化合物40重量部及び上記エポキシ基を有するスチレンポリマー(重量平均分子量20000、エポキシ当量310g/eq、日油社製「マープルーフG−0250S」)60重量部を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電材料を作製した。
【0103】
(評価)
銅電極(ライン/スペース=10μm/10μm)が上面に形成されているガラス基板(縦3cm×横4cm)を用意した。
【0104】
実施例1、2及び比較例1で得られた異方性導電材料を、厚み50μmとなるように上記ガラス基板上に塗工し、ガラス基板上に異方性導電材料層を形成した。
【0105】
異方性導電材料層が上面に形成されたガラス基板を、110℃で20分間予備加熱し、ガラス基板上の異方性導電材料層を半硬化させ、ガラス基板上に半硬化状態の異方性導電材料層を形成した。その後、半硬化状態の異方性導電材料層が上面に形成されたガラス基板を、室温25℃及び湿度50%の環境下で、3日間保管した。
【0106】
実施例1及び2の異方性導電材料により形成された異方性導電材料層は、3日間保管された後、半硬化状態のままであった。比較例1の異方性導電材料により形成された異方性導電材料層は、3日間保管された後、硬化が進行していた。
【0107】
ITO電極(ライン/スペース=10μm/10μm)が下面に形成されているICチップ(縦2mm×横2cm)を用意した。ガラス基板上の異方性導電材料層にICチップを電極同士が対向するように積層した後、190℃で10秒間加熱することにより、接続構造体を作製した。
【0108】
実施例1及び2の異方性導電材料を用いた場合、予備加熱の後、半硬化状態で3日間保管された後でも、190℃で10秒間加熱するだけで、ガラス基板とICチップとを容易に接続できた。
【0109】
比較例1の異方性導電材料を用いた場合、予備加熱の後、3日間保管した後に、半硬化物層の硬化が進行していたため、回路基板とICチップとを接続できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る積層体の断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の断面図である。
【符号の説明】
【0111】
1…積層体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…電極
3…半硬化物層
3a…上面
3A…接続部
4…導電性粒子
11…接続構造体
12…第2の接続対象部材
12a…下面
12b…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物であるエポキシ成分と、
エポキシ基を有するアクリルポリマー及びエポキシ基を有するスチレンポリマーの内の少なくとも一方のポリマーと、
硬化剤とを含有することを特徴とする、硬化性エポキシ組成物。
【化1】


上記式(1)中、R1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(2)で表される構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【化2】


上記式(2)中、R4は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性エポキシ組成物と、導電性粒子とを含有する異方性導電材料。
【請求項3】
第1の接続対象部材と、該第1の接続対象部材上に積層された半硬化物層とを備え、
前記半硬化物層が、前記第1の接続対象部材上に請求項1に記載の硬化性エポキシ組成物又は該硬化性エポキシ組成物と導電性粒子とを含有する異方性導電材料を塗工した後、該硬化性エポキシ組成物又は該異方性導電材料を予備硬化させることにより形成されていることを特徴とする、積層体。
【請求項4】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1に記載の硬化性エポキシ組成物又は該硬化性エポキシ組成物と導電性粒子とを含有する異方性導電材料により形成されていることを特徴とする、接続構造体。
【請求項5】
請求項3に記載の積層体の半硬化物層上に、第2の接続対象部材を積層する工程と、
前記第2の接続対象部材を積層した後、前記半硬化物層を加熱し、硬化させることにより前記半硬化物層が硬化された接続部を形成し、該接続部により第1,第2の接続対象部材を接続する工程とを備えることを特徴とする、接続構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−65121(P2010−65121A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232276(P2008−232276)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】