説明

硬化性シリコーン組成物およびその硬化物

【課題】 取扱作業性が良好で、低弾性率の硬化物を形成する硬化性シリコーン組成物を提供する。
【解決手段】 (A)一般式:X−R2−(R12SiO)m12Si−R2−X{式中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数6以下の一価炭化水素基、R2はアルキレン基、Xは、平均単位式:(YR12SiO1/2)a(SiO4/2)b(式中、R1は前記と同じ、Yは単結合、水素原子、前記R1、エポキシ基含有アルキル基、アルコキシシリルアルキル基、または炭素数7以上のアルキル基、但し、一分子中、少なくとも1個のYは単結合、少なくとも1個のYは炭素数7以上のアルキル基、a、bは正数、かつa/bは0.2〜4.0の数)で表されるオルガノポリシロキサン残基、前記R1、またはアルケニル基、但し、少なくとも1個のXは前記オルガノポリシロキサン残基、mは1以上の整数}で表されるジオルガノポリシロキサンおよび(B)エポキシ樹脂用硬化剤からなる硬化性シリコーン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性シリコーン組成物およびその硬化物に関し、詳しくは、取扱作業性が良好で、低弾性率で低応力の硬化物を形成する硬化性シリコーン組成物、および低弾性率で低応力の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ基含有アルキル基を含有するシリコーンレジンおよび硬化剤からなる硬化性シリコーン組成物は公知である(特許文献1、2参照)。このような硬化性シリコーン組成物は、シリコーンレジン中のエポキシ基が極性基であるため、高粘度で、無機粉体などの充填剤を配合した場合には、その取扱作業性が悪いという問題がある。
【0003】
一方、分子鎖末端に、エポキシ基含有のオルガノポリシロキサン残基を有するジオルガノポリシロキサンは公知である(特許文献3、4参照)。このジオルガノポリシロキサンを硬化性有機樹脂に配合して、得られる硬化物の可撓性を向上させることが検討されているが、このジオルガノポリシロキサンは、エポキシ基が極性基であるために高粘度であり、これを配合して得られる有機樹脂組成物の取扱作業性が悪いという問題がある。
【特許文献1】特開平5−320514号公報
【特許文献2】特開2005−154766号公報
【特許文献3】特開平5−140317号公報
【特許文献4】特開平6−56999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、取扱作業性が良好で、低弾性率で低応力の硬化物を形成する硬化性シリコーン組成物、および低弾性率で低応力の硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、
(A)一般式:
X−R2−(R12SiO)m12Si−R2−X
{式中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数6以下の一価炭化水素基であり、R2はアルキレン基であり、Xは、平均単位式:
(YR12SiO1/2)a(SiO4/2)b
(式中、R1は前記と同じであり、Yは単結合、水素原子、前記R1で表される基、エポキシ基含有アルキル基、アルコキシシリルアルキル基、または炭素数7以上のアルキル基であり、但し、一分子中、少なくとも1個のYは単結合であり、少なくとも1個のYは炭素数7以上のアルキル基であり、aは正数であり、bは正数であり、かつa/bは0.2〜4.0の数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン残基、前記R1で表される基、またはアルケニル基であり、但し、少なくとも1個のXは前記オルガノポリシロキサン残基であり、mは1以上の整数である。}
で表されるジオルガノポリシロキサン、および
(B)エポキシ樹脂用硬化剤
から少なくともなることを特徴とする。
また、本発明の硬化物は、上記の組成物を硬化してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、取扱作業性が良好で、低弾性率で低応力の硬化物を形成することができ、また、本発明の硬化物は、低弾性率で低応力である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
はじめに、本発明の硬化性シリコーン組成物について詳細に説明する。
(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、本組成物の主剤であり、一般式:
X−R2−(R12SiO)m12Si−R2−X
で表される。式中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数6以下の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基;クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、式中、R2はアルキレン基であり、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が例示され、好ましくは、エチレン基である。
【0008】
また、式中、Xは、平均単位式:
(YR12SiO1/2)a(SiO4/2)b
で表されるオルガノポリシロキサン残基、前記R1で表される基、またはアルケニル基である。式中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数6以下の一価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、式中、Yは単結合、水素原子、前記R1で表される基、エポキシ基含有アルキル基、アルコキシシリルアルキル基、または炭素数7以上のアルキル基である。このエポキシ基含有アルキル基としては、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基が例示され、好ましくは、グリシドキシアルキル基であり、特に好ましくは、3−グリシドキシプロピル基である。また、このアルコキシシリルアルキル基としては、トリメトキシシリルエチル基、トリメトキシシリルプロピル基、ジメトキシメチルシリルプロピル基、メトキシジメチルシリルプロピル基、トリエトキシシリルエチル基、トリプロポキシシリルプロピル基が例示される。また、この炭素数7以上のアルキル基としては、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基が例示され、好ましくは、炭素数7〜18のアルキル基であり、特に好ましくは、炭素数10〜18のアルキル基である。なお、一分子中、少なくとも1個のYは単結合であり、この単結合Yを介して、前記R2と結合している。また、一分子中、少なくとも1個のYは炭素数7以上のアルキル基である。さらに、得られるジオルガノポリシロキサンに反応性を付与するため、一分子中、少なくとも1個のYはエポキシ基含有アルキル基および/またはアルコキシシリルアルキル基であることが好ましい。式中、XがR1で表される基である場合、具体的には、前記と同様の基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、式中、Xがアルケニル基である場合、具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。なお、式中の少なくとも1個のXは前記オルガノポリシロキサン残基であり、好ましくは、全てのXは前記オルガノポリシロキサン残基である。また、式中、aは正数であり、bは正数であり、かつa/bは0.2〜4.0の数である。
【0009】
また、式中、mは1以上の整数であり、好ましくは、10以上の整数である。具体的には、式中、mは1〜1,000の整数であり、本組成物の取扱作業性が著しく良好であることから、1〜500の整数であることが好ましく、特に、10〜500の整数であることが好ましい。
【0010】
(A)成分の分子量は限定されないが、(B)成分との配合性が良好であったり、また、本組成物に無機粉末を混合した場合にも、本組成物の取扱作業性が良好であることから、ゲルパーミエーションクロマトグラフによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500〜1,000,000の範囲内であることが好ましい。
【0011】
このような(A)成分を調製する方法としては、例えば、
(a)平均単位式:
(R312SiO1/2)a(SiO4/2)b
(式中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数6以下の一価炭化水素基であり、R3は水素原子または前記R1で表される基であり、但し、一分子中、少なくとも2個のR3は水素原子であり、aは正数であり、bは正数であり、かつa/bは0.2〜4.0の数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、
(b)一般式:
4−(R12SiO)m12Si−R4
(式中、R1は前記と同じであり、R4は、前記R1で表される基、またはアルケニル基であり、但し、少なくとも1個のR4はアルケニル基であり、mは1以上の整数である。)
で表されるジオルガノポリシロキサン、および
(c)炭素数7以上のアルケンを、
(d)白金系触媒の存在下、ヒドロシリル化反応させることにより調製することができる。
【0012】
(a)成分は、ジオルガノポリシロキサンの分子鎖末端に、オルガノポリシロキサン残基を導入するためのオルガノポリシロキサンであり、平均単位式:
(R312SiO1/2)a(SiO4/2)b
で表される。式中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数6以下の一価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、式中、R3は水素原子または前記R1で表される基であり、但し、一分子中、少なくとも2個のR3は水素原子である。また、式中、aは正数であり、bは正数であり、かつa/bは0.2〜4.0の数である。
【0013】
このような(a)成分のオルガノポリシロキサンを調製する方法は特に限定されず、例えば、テトラハロシランとモノハロシランを共加水分解する方法、テトラアルコキシシランとモノアルコキシシランを共加水分解する方法、テトラアルコキシシランとテトラオルガノジシロキサンを加水分解および再平衡化重合する方法が挙げられ、好ましくは、塩酸水溶液中で、ヘキサオルガノジシロキサン、テトラオルガノジシロキサン、トリオルガノハロシランおよびジオルガノハロシランからなる群から選択される有機ケイ素化合物を攪拌しながら、テトラアルコキシシランを滴下する方法(特開昭61−195129号公報参照)である。
【0014】
(b)成分は、ジオルガノポリシロキサンの主骨格を形成するためのジオルガノポリシロキサンであり、一般式:
4−(R12SiO)m12Si−R4
で表される。式中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数6以下の一価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、式中、R4は、前記R1で表される基、またはアルケニル基である。式中、R4が前記R1で表される基である場合、具体的には、前記と同様の基が例示され、好ましくは、メチル基である。また、式中、R4がアルケニル基である場合、具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。なお、式中の少なくとも1個のR4はアルケニル基であり、好ましくは、全てのR4はアルケニル基である。また、式中、mは1以上の整数であり、好ましくは、10以上の整数である。具体的には、式中、mは1〜1,000の整数であり、本組成物の取扱作業性が著しく良好であることから、10〜500の整数であることが好ましい。
【0015】
このような(b)成分のジオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、他の分子鎖末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がジメチルアリルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がジメチルヘキセニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたメチルエチルポリシロキサン、分子鎖両末端がジメチルアリルシロキシ基で封鎖されたメチルエチルポリシロキサン、分子鎖末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、他の分子鎖末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたメチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端がジメチルアリルシロキシ基で封鎖されたメチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端がジメチルヘキセニルシロキシ基で封鎖されたメチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端がジフェニルビニルシロキシ基で封鎖されたメチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端がジメチルアリルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジフェニルポリシロキサンが例示される。
【0016】
上記の製造方法において、(b)成分の添加量は、(a)成分の一分子中のケイ素原子結合水素原子1個と、本成分の一分子中のアルケニル基がおおよそ1個反応するような量であり、具体的には、(a)成分の一分子中のケイ素原子結合水素原子1個に対して、(b)成分の一分子中のアルケニル基が0.7〜1.1個となるような量であり、好ましくは、0.7〜1.0個となるような量であり、特に好ましくは、0.8〜1.0個となるような量である。これは、(b)成分の添加量が上記範囲の下限未満であると、目的の生成物の収率が著しく低下するからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、目的の生成物の収率が著しく低下するばかりか、反応系がゲル化するからである。
【0017】
なお、(a)成分の一分子中のケイ素原子結合水素原子の個数は、そのゲルパーミエーションクロマトグラフにより得られる数平均分子量、1H−、13C−、および29Si−核磁気共鳴分析より求められるシロキサン単位の比率、および官能基当量から求めることができる。同様に、(b)成分の一分子中のアルケニル基の個数も、そのゲルパーミエーションクロマトグラフにより得られる数平均分子量、1H−、13C−、および29Si−核磁気共鳴分析より求められるシロキサン単位の比率、および官能基当量から求めることができる。
【0018】
(c)成分は、オルガノポリシロキサン残基に炭素数7以上のアルキル基を導入するための炭素数7以上のアルケン原料である。このような(c)成分としては、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、ヘプタデセン、オクタデセンが例示され、好ましくは、炭素数7〜18のアルケンであり、特に好ましくは、炭素数10〜18のアルケンである。また、このアルケンにおける炭素−炭素二重結合の位置は特に限定されないが、反応性が良好であることから、分子鎖末端であることが好ましい。
【0019】
上記の製造方法において、(c)成分の添加量は、(a)成分と(b)成分を反応させた場合に得られる生成物に残存する一分子中のケイ素原子結合水素原子1個に対して、(c)成分が1個以上となるような量であり、好ましくは、2個以上となるような量である。なお、後記するその他の成分を添加しない場合には、(c)成分の添加量は、(a)成分と(b)成分を反応させて得られる生成物に残存するケイ素原子結合水素原子に対して当量以上であることが好ましい。これは、(c)成分の添加量が上記範囲の下限未満であると、得られる生成物中のオルガノポリシロキサン残基に炭素数7以上のアルキル基を十分に導入できなくなるためである。
【0020】
(d)成分は、(a)成分中のケイ素原子結合水素原子と(b)成分中のアルケニル基とのヒドロシリル化反応を促進し、また、(c)成分と(a)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するための白金系触媒である。このような(d)成分の白金系触媒は、通常、ヒドロシリル化反応触媒として使用されるものであれば特に限定されず、具体的には、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金と不飽和脂肪族炭化水素との錯体、白金とビニルシロキサンとの錯体、白金黒、白金担持の活性炭が例示される。
【0021】
上記の製造方法において、(d)成分の添加量は特に限定されないが、具体的には、原料の合計量に対して、(d)成分中の白金原子が重量単位で0.01〜500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。これは、(d)成分の添加量が上記範囲の下限未満であると、ヒドロシリル化反応が十分に進行しなくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると不経済であるからである。
【0022】
上記の製造方法において、オルガノポリシロキサン残基にエポキシ基含有アルキル基を導入するため、さらに(e)エポキシ基含有アルケンを反応させてもよい。この(e)成分としては、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル等のアルケニルグリシジルエーテル;1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、2,3−エポキシ−5−ビニルノルボルネン、1,2−エポキシ−1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキサンが例示され、好ましくは、アリルグリシジルエーテルである。
【0023】
上記の製造方法において、(e)成分の添加量は、(a)成分と(b)成分と(c)成分を反応させた場合に得られる生成物に残存する一分子中のケイ素原子結合水素原子1個に対して、(e)成分が1個以上となるような量であり、好ましくは、2個以上となるような量である。なお、その他の成分を反応させない場合には、(e)成分の添加量は、(a)成分と(b)成分と(c)成分を反応させて得られる生成物に残存するケイ素原子結合水素原子に対して当量以上であることが好ましい。これは、(e)成分の添加量が上記範囲の下限未満であると、得られる生成物中のオルガノポリシロキサン残基にエポキシ基含有アルキル基を十分に導入できなくなるためである。
【0024】
また、上記の製造方法において、オルガノポリシロキサン残基にアルコキシシリルアルキル基を導入するため、さらに(f)アルコキシシリルアルケンを反応させてもよい。この(f)成分としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、ジフェニルビニルメトキシシランが例示され、好ましくは、アリルトリメトキシシランである。
【0025】
上記の製造方法において、(f)成分の添加量は、(a)成分と(b)成分と(c)成分を反応させた場合に得られる生成物に残存する一分子中のケイ素原子結合水素原子1個に対して、(f)成分が1個以上となるような量であり、好ましくは、2個以上となるような量である。なお、その他の成分を反応させない場合には、(f)成分の添加量は、(a)成分と(b)成分と(c)成分を反応させて得られる生成物に残存するケイ素原子結合水素原子に対して当量以上であることが好ましい。これは、(f)成分の添加量が上記範囲の下限未満であると、得られる生成物中のオルガノポリシロキサン残基にアルコキシシリルアルキル基を十分に導入できなくなるためである。
【0026】
上記の製造方法における反応手順は特に限定されず、例えば、(a)成分と(b)成分と(c)成分を混合し、次いで、(d)成分を添加して反応させる方法;(a)成分と(b)成分と(c)成分を混合し、次いで、(d)成分を添加して反応させ、さらに(e)成分を添加して反応させる方法;(a)成分と(b)成分と(c)成分を混合し、次いで、(d)成分を添加して反応させ、さらに(f)成分を添加して反応させる方法;(a)成分と(b)成分と(c)成分を混合し、次いで、(d)成分を添加して反応させ、さらに(e)成分と(f)成分を添加して反応させる方法;(a)成分と(b)成分と(c)成分と(e)成分を混合し、次いで、(d)成分を添加して反応させる方法;(a)成分と(b)成分と(c)成分と(e)成分を混合し、次いで、(d)成分を添加して反応させる方法;(a)成分と(b)成分と(c)成分と(e)成分を混合し、次いで、(d)成分を添加して反応させ、さらに(f)成分を添加して反応させる方法;(a)成分と(b)成分と(c)成分と(f)成分を混合し、次いで、(d)成分を添加して反応させ、さらに(e)成分を添加して反応させる方法が挙げられる。
【0027】
上記の製造方法において、その反応温度は特に限定されず、反応を速やかに完結させるためには、室温〜150℃の範囲で反応させることが好ましい。また、上記の製造方法において、有機溶剤を使用することができる。使用できる有機溶剤として、具体的には、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤が例示される。このようにして製造された(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、反応混合物として得られるが、静置あるいは遠心分離することにより分離精製したり、有機溶媒に対する溶解度の差を利用して分離精製したり、また、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより分離精製することができる。
【0028】
(B)成分は、(A)成分中のエポキシ基と反応して、本組成物を硬化させるためのエポキシ樹脂用硬化剤であり、エポキシ基と反応する官能基を一分子中に好ましくは2個以上有する化合物である。この官能基として、具体的には、1級アミノ基、2級アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、カルボン酸基、酸無水物基、メルカプト基、シラノール基が例示される。(B)成分としては、この官能基が異なる化合物を2種以上用いてもよく、また、この官能基が同じ化合物を2種以上用いてもよい。特に、この官能基は、、反応性とポットライフの観点から、フェノール性水酸基であることが好ましい。すなわち、(B)成分はフェノール性水酸基を有する化合物であることが好ましく、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA系化合物等のフェノール樹脂;フェノール性水酸基を有するオルガノシロキサンが例示され、好ましくは、フェノール性水酸基を一分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサンである。このフェノール性水酸基当量(本成分の重量平均分子量を一分子中のフェノール性水酸基の数で割った値)としては、1,000以下であることが好ましくは、反応性が高いことから、特に、500以下であることが好ましい。
【0029】
(B)成分の内、フェノール性水酸基を有するオルガノシロキサンは、得られるシリコーン硬化物の可撓性を向上させることができることから、一般式:
53SiO(R52SiO)nSiR53
で表されるオルガノシロキサンであることが好ましい。上式中、R5は同じか、または異なる、置換もしくは非置換の一価炭化水素基またはフェノール性水酸基含有一価有機基である。この一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロピロピル基等のハロゲン置換アルキル基が例示され、好ましくは、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、このフェノール性水酸基含有有機基としては、次のような基が例示される。なお、式中のR6は二価有機基であり、具体的には、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等のアルキレン基;エチレンオキシエチレン基、エチレンオキシプロピレン基、エチレンオキシブチレン基、プロピレンオキシプロピレン基等のアルキレンオキシアルキレン基が例示され、好ましくは、アルキレン基であり、特に好ましくは、プロピレン基である。
【0030】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0031】
また、上式中、nは0〜1,000の範囲内の整数であり、好ましくは、0〜100の範囲内の整数であり、特に好ましくは、0〜20の範囲内の整数である。これは、nが上記範囲の上限を超えると、(A)成分への配合性や取扱作業性が低下する傾向があるからである。
【0032】
このような(B)成分としては、次のようなオルガノシロキサンが例示される。なお、式中のxは1〜20の整数であり、yは2〜10の整数である。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【0033】
このような(B)成分を調製する方法は特に限定されないが、例えば、アルケニル基含有フェノール化合物とケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンとをヒドロシリル化反応する方法が挙げられる。
【0034】
(B)成分の25℃における性状は特に限定されず、液状、固体状のいずれでもよいが、取扱いの容易さから、液状であることが好ましい。(B)成分が25℃において液体である場合、その粘度は1〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、10〜5,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。これは、25℃における粘度が上記範囲の下限未満であると、得られる硬化物の機械的強度が低下する傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる硬化性シリコーン組成物の取扱作業性が低下する傾向があるからである。
【0035】
上記組成物において、(B)成分の含有量は特に限定されないが、好ましくは、(A)成分100重量部に対して0.1〜500重量部の範囲内であり、特に好ましくは、0.1〜200重量部の範囲内である。また、(B)成分がフェノール性水酸基を有する場合には、本組成物中の全エポキシ基に対する(B)成分中のフェノール性水酸基がモル比で0.2〜5の範囲内となる量であることが好ましく、さらには、0.3〜2.5の範囲内となる量であることが好ましく、特には、0.8〜1.5の範囲内となる量であることが好ましい。これは、上記組成物中の全エポキシ基に対する(B)成分中のフェノール性水酸基のモル比が上記範囲の下限未満であると、得られる硬化性シリコーン組成物が十分に硬化しにくくなる傾向があり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる硬化物の機械的特性が著しく低下する傾向があるからである。
【0036】
上記組成物には、任意の成分として(C)硬化促進剤を含有してもよい。この(C)成分としては、三級アミン化合物、アルミニウムやジルコニウム等の有機金属化合物;ホスフィン等の有機リン化合物;その他、異環型アミン化合物、ホウ素錯化合物、有機アンモニウム塩、有機スルホニウム塩、有機過酸化物、これらの反応物が例示される。例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフイン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート等のリン系化合物;トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等の第3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物が例示される。なお、上記組成物の可使時間を延ばすことができるので、カプセル化された硬化促進剤が好ましい。カプセル化された硬化促進剤としては、アミン系硬化促進剤を含有するビスフェノールA型エポキシ樹脂からなるカプセル型アミン系硬化促進剤(例えば、旭化成株式会社製のHX-3088)が入手可能である。
【0037】
上記組成物において、(C)成分の含有量は特に限定されないが、(A)成分100重量部に対して50重量部以下であることが好ましく、さらには、0.01〜50重量部の範囲内であることが好ましく、特には、0.1〜5重量部の範囲内であることが好ましい。
【0038】
また、上記組成物には、得られる硬化物の機械的強度やその他の物性を向上させるために(D)充填剤を含有してもよい。この(D)成分としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、アルミナとシリカを成分とするセラミック繊維、ボロン繊維、ジルコニア繊維、炭化ケイ素繊維、金属繊維等の繊維状充填剤;溶融シリカ、結晶性シリカ、沈澱シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化亜鉛、焼成クレイ、カーボンブラック、ガラスビーズ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、クレイ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、マグネシア、チタニア、酸化ベリリウム、カオリン、雲母、ジルコニア等の無機系充填剤;金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、これらの合金や真鍮、形状記憶合金、半田等の金属微粉末;セラミック、ガラス、石英、有機樹脂等の微粉末表面に金、銀、ニッケル、銅等の金属を蒸着またはメッキした微粉末;およびこれらの2種以上の混合物が例示され、得られる硬化物に熱伝導性を付与することができることから、好ましくは、アルミナ、酸化亜鉛、マグネシア、チタニア、結晶性シリカ等の金属酸化物;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の金属窒化物;炭化ケイ素等の金属炭化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;カーボンナノチューブ、カーボンマイクロファイバー、ダイヤモンド、グラファイト等の炭素系材料が例示され、好ましくは、金属酸化物、金属窒化物、および金属炭化物からなる群より選択される少なくとも一種の熱伝導性非金属粉末であり、特に好ましくは、アルミナ、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、および炭化ケイ素からなる群より選択される少なくとも一種の熱伝導性非金属粉末である。また、この(D)成分の形状としては、破砕状、球状、繊維状、柱状、フレーク状、鱗状、板状、コイル状が例示される。その粒径は特に限定されないが、通常、最大粒径が200μm以下であり、平均粒子径が0.001〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0039】
本組成物において、(D)成分の含有量は特に限定されないが、(A)成分100重量部に対して5,000重量部以下であることが好ましく、さらには、10〜4,000重量部の範囲内であることが好ましく、特には、50〜4,000重量部の範囲内であることが好ましい。また、(D)成分として、上記の金属微粉末や熱伝導性粉末以外の充填剤を用いる場合には、(D)成分の含有量は、(A)成分100重量部に対して2,000重量部以下であることが好ましく、さらには、10〜2,000重量部の範囲内であることが好ましく、特には、50〜1,000重量部の範囲内であることが好ましい。
【0040】
また、上記組成物には、得られる硬化性シリコーン組成物の硬化性、作業性などを改善し、得られる硬化物の接着性を向上させたり、弾性率を調整するために(E)有機エポキシ化合物を含有しても良い。この(E)成分としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が例示される。この(E)成分の25℃における性状は限定されず、液体あるいは固体であるが、好ましくは、液状である。上記組成物において、この(E)成分の含有量は限定されないが、(A)成分100重量部に対して500重量部以下であることが好ましく、特に、0.1〜500重量部の範囲内であることが好ましい。
【0041】
さらに、上記組成物には、(A)成分中に(D)成分を良好に分散させるため、あるいは得られるシリコーン硬化物の半導体チップや回路基板等への接着性を向上させるために(F)カップリング剤を含有してもよい。この(F)成分としては、チタネートカップリング剤、シランカップリング剤等のカップリング剤が例示される。このチタネートカップリング剤としては、i−プロポキシチタントリ(i−イソステアレート)が例示される。また、このシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有アルコキシシランが例示される。上記組成物において、この(F)成分の含有量は特に限定されないが、(A)成分100重量部に対して10重量部以下であることが好ましく、特に、0.01〜10重量部の範囲内であることが好ましい。
【0042】
また、上記組成物には、その他任意の成分として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアルコキシシランを含有してもよい。
【0043】
上記組成物は、(A)成分、(B)成分、および必要によりその他の成分を混合することにより調製される。これらの成分を混合する方法は特に限定されないが、(A)成分、(B)成分、およびその他の任意の成分を同時に配合する方法;(A)成分と(B)成分をプレミックスした後、その他任意の成分を配合する方法が例示される。これらの成分を混合する混合装置は特に限定されず、例えば、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、三本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサーが挙げられる。
【0044】
次に、本発明の硬化物について詳細に説明する。
本発明の硬化物は、低弾性率で低応力であるので、半導体チップやその結線部の保護材という用途の他に、シリコーン硬化物を半導体チップや回路基板の絶縁層、あるいは半導体チップや回路基板の緩衝層として利用することができる。特に、チップや発熱部と放熱部材との接着材、チップとリードフレームとの接着材、チップの保護材などにも利用できる。本発明の硬化物の性状は限定されず、例えば、ゴム状、硬質ゴム状、レジン状が挙げられ、特に、その複素弾性率が2GPa以下であることが好ましい。
【実施例】
【0045】
本発明の硬化性シリコーン組成物およびその硬化物を実施例・比較例により詳細に説明する。なお、実施例中の重量平均分子量は、トルエンを溶媒としてゲルパーミェーションクロマトグラフィーで測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0046】
[粘度の測定]
ジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度を、E型粘度計(株式会社トキメック製のDIGITAL VISCOMETER DV−U−E II型)を用いて、回転数20rpmの条件で測定した。同様に硬化性シリコーン組成物の25℃における粘度を前記のE型粘度計を用いて、回転数2.5rpmの条件で測定した。
【0047】
[複素弾性率]
硬化性シリコーン組成物を70mmHgで脱泡した後、幅10mm、長さ50mm、深さ2mmのキャビティを有する金型に充填し、150℃、2.5MPaの条件で60分間プレス硬化させた後、180℃のオーブン中で2時間2次加熱して硬化物の試験片を作製した。この試験片をARES粘弾性測定装置(Reometric Scientific社製のRDA700)を使用し、ねじれ0.05%、振動数1Hzの条件で、25℃における複素粘弾性率を測定した。
【0048】
[熱伝導率]
硬化性シリコーン組成物を厚さ3mmとなるようにすペーサーを入れた上下金型にはさみ、150℃で15分間プレス成形したのち、取り出して150℃で45分間加熱して硬化物の試験片を作製した。この試験片を京都電子社製熱伝導率計(QTM500)で測定した。
【0049】
[参考例1]
攪拌装置、還流冷却管、Dean−Stark管、および温度計付き1Lの四つ口フラスコに、平均単位式:
[(CH3)2HSiO1/2]1.6(SiO4/2)1.0
で表され、一分子中に平均10個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン50.01g、平均式:
(CH3)2(CH2=CH)SiO[(CH3)2SiO]97Si(CH3)2(CH=CH2)
で表されるジメチルポリシロキサン144.84g、1−デセン12.65g、アリルグリシジルエーテル19.03g、およびトルエン101.96gを仕込み、加熱して系中の水分を共沸物として取り除き、窒素雰囲気下で冷却した。次に、この系中に白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の10重量%−イソプロパノール溶液20μLを室温にて滴下し、99℃まで加熱した後、アリルグリシジルエーテル38.15gを添加した。5分後に114℃まで発熱し、約40分間この温度を維持した。赤外分光分析(以下、IR)により反応液にSi−H結合による特性吸収が観察されないことを確認した後、室温まで冷却した。その後、130℃、1mmHgの加熱減圧下でトルエンおよび未反応のアリルグリシジルエーテルを留去し、やや褐色の半透明液体238.8g(収率98.0%)を得た。
【0050】
この液体は、エポキシ当量が831であり、粘度が7,300mPa・sであった。また、この液体を室温で1ヶ月放置したが、分離は観察されなかった。また、この液体をゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPC)により分析したところ、主成分は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が57,900、分散度(Mw/Mn)が2.4である生成物であり、その含有量は95.2重量%であった。
【0051】
この主成分をGPCにより分取し、1H−核磁気共鳴分析(以下、1H−NMR)、13C−核磁気共鳴分析(以下、13C−NMR)、および29Si−核磁気共鳴分析(以下、29Si−NMR)による構造解析を行ったところ、平均式:
X−CH2CH2(CH3)2SiO[(CH3)2SiO]97Si(CH3)2CH2CH2−X
{式中、Xは、平均単位式:
[Y(CH3)2SiO1/2]1.6(SiO4/2)1.0
(式中、Yは単結合、n−デシル基、および3−グリシドキシプロピル基からなり、一分子中、1個のYは単結合であり、残りのYはn−デシル基および3−グリシドキシプロピル基であり、そのモル比はほぼ1:4である。)
で表されるジオルガノポリシロキサンであることがわかった。
【0052】
[参考例2]
攪拌装置、還流冷却管、Dean−Stark管、および温度計付き1Lの四つ口フラスコに、平均単位式:
[(CH3)2HSiO1/2]1.6(SiO4/2)1.0
で表され、一分子中に平均10個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン50.00g、平均式:
(CH3)2(CH2=CH)SiO[(CH3)2SiO]97Si(CH3)2(CH=CH2)
で表されるジメチルポリシロキサン144.84g、1−デセン31.85g、およびトルエン104.60gを仕込み、加熱して系中の水分を共沸物として取り除き、窒素雰囲気下で冷却した。次に、この系中に白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の10重量%イソプロパノール溶液30μLを滴下したところ、66℃まで発熱した。87℃まで加熱して、アリルグリシジルエーテル32.34gを添加したところ、109℃まで発熱した。109℃〜117℃で2時間45分加熱攪拌した。IRにより反応液にSi−H結合による特性吸収が観察されないことを確認した後、室温まで冷却した。その後語、130℃、1mmHgの加熱減圧下でトルエンおよび未反応のアリルグリシジルエーテルを留去し、やや褐色の半透明液体243.7g(収率98.0%)を得た。
【0053】
この液体は、エポキシ当量が1,169であり、粘度が3,770mPa・sであった。また、この液体を室温で1ヶ月放置したが、分離は観察されなかった。また、この液体をGPCにより分析したところ、主成分は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が73,700、分散度(Mw/Mn)が2.7である生成物であり、その含有量は91.5重量%であった。
【0054】
この主成分をGPCにより分取し、1H−NMR、13C−NMR、および29Si−NMRによる構造解析を行ったところ、平均式:
X−CH2CH2(CH3)2SiO[(CH3)2SiO]97Si(CH3)2CH2CH2−X
{式中、Xは、平均単位式:
[Y(CH3)2SiO1/2]1.6(SiO4/2)1.0
(式中、Yは単結合、n−デシル基、および3−グリシドキシプロピル基からなり、一分子中、1個のYは単結合であり、残りのYはn−デシル基および3−グリシドキシプロピル基であり、そのモル比はほぼ1:1である。)
で表されるジオルガノポリシロキサンであることがわかった。
【0055】
[参考例3]
攪拌装置、還流冷却管、Dean−Stark管、および温度計付き1Lの四つ口フラスコに、平均単位式:
[(CH3)2HSiO1/2]1.6(SiO4/2)1.0
で表され、一分子中に平均10個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン100.00g、平均式:
(CH3)2(CH2=CH)SiO[(CH3)2SiO]97Si(CH3)2(CH=CH2)
で表されるジメチルポリシロキサン289.29g、アリルグリシジリエーテル54.69g、およびトルエン120.66gを仕込み、加熱して系中の水分を共沸物として取り除き、窒素雰囲気下で冷却した。次に、この系中に白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の10重量%イソプロパノール溶液35μLをスポイトにて滴下したところ、63℃まで発熱した。94℃まで加熱して、アリルグリシジルエーテル68.15gを添加したところ、106℃まで発熱した。100℃〜123℃で1時間40分間加熱攪拌した。IRにより反応液にSi−H結合による特性吸収が観察されないことを確認した後、室温まで冷却した。その後、140℃、4mmHgの加熱減圧下で、トルエンおよび未反応のアリルグリシジルエーテルを留去し、やや褐色の半透明液体482.1g(収率97.9%)を得た。
【0056】
この液体は、エポキシ当量が760であり、粘度が19,900mPa・sであった。また、この液体を室温で1ヶ月放置したが、分離は観察されなかった。また、この液体をGPCにより分析したところ、主成分は標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が70,000、分散度(Mw/Mn)が2.8である生成物であり、その含有量は97.0重量%であった。
【0057】
この主成分をGPCにより分取し、1H−NMR、13C−NMR、および29Si−NMRによる構造解析を行ったところ、平均式:
X−CH2CH2(CH3)2SiO[(CH3)2SiO]97Si(CH3)2CH2CH2−X
{式中、Xは、平均単位式:
[Y(CH3)2SiO1/2]1.6(SiO4/2)1.0
(式中、Yは単結合、および3−グリシドキシプロピル基からなり、一分子中、1個のYは単結合であり、残りのYは3−グリシドキシプロピル基である。)
で表されるジオルガノポリシロキサンであることがわかった。
【0058】
[参考例4]
攪拌装置、還流冷却管、Dean−Stark管、および温度計付き1Lの四つ口フラスコに、平均単位式:
[(CH3)2HSiO1/2]1.6(SiO4/2)1.0
で表され、一分子中に平均10個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン50.00g、平均式:
(CH3)2(CH2=CH)SiO[(CH3)2SiO]97Si(CH3)2(CH=CH2)
で表されるジメチルポリシロキサン145.50g、α−オクタデセン56.86g、およびトルエン93.00gを仕込み、加熱して系中の水分を共沸物として取り除き、窒素雰囲気下で冷却した。次に、この系中に白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の10重量%イソプロパノール溶液30μLをスポイトにて滴下したところ、49℃まで発熱した。96℃まで加熱し、アリルグリシジルエーテル36.59gを添加したところ、125℃まで発熱した。空冷し、IRにより反応液にSi−H結合による特性吸収が観察されないことを確認した後、室温まで冷却した。その後、130℃、2mmHgの加熱減圧下で、トルエンおよび未反応のアリルグリシジルエーテルを除去し、やや褐色の半透明液体275.2g(収率99%)を得た。
【0059】
この液体は、エポキシ当量が1,300であり、粘度が2,450mPa・sであった。また、この液体を室温で1ヶ月放置したが、分離は観察されなかった。また、この液体をGPCにより分析したところ、主成分は標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が61,700、分散度(Mw/Mn)が2.1である生成物であり、その含有量は85.1重量%であった。
【0060】
この主成分をGPCにより分取し、1H−NMR、13C−NMR、および29Si−NMRによる構造解析を行ったところ、平均式:
X−CH2CH2(CH3)2SiO[(CH3)2SiO]97Si(CH3)2CH2CH2−X
{式中、Xは、平均単位式:
[Y(CH3)2SiO1/2]1.6(SiO4/2)1.0
(式中、Yは単結合、n−オクタデシル基、および3−グリシドキシプロピル基からなり、一分子中、1個のYは単結合であり、残りのYはn−オクタデシル基および3−グリシドキシプロピル基であり、そのモル比はほぼ1:1である。)
で表されるジオルガノポリシロキサンであることがわかった。
【0061】
[参考例5]
攪拌装置、還流冷却管、Dean−Stark管、および温度計付き1Lの四つ口フラスコに、平均単位式:
[(CH3)2HSiO1/2]1.6(SiO4/2)1.0
で表され、一分子中に平均10個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン100.27g、平均式:
(CH3)2(CH2=CH)SiO[(CH3)2SiO]97Si(CH3)2(CH=CH2)
で表されるジメチルポリシロキサン289.63g、アリルグリシジルエーテル43.84g、アリルトリメトキシシラン29.50g、およびトルエン106.10gを仕込み、加熱して系中の水分を共沸物として取り除き、窒素雰囲気下で冷却した。次に、この系中に白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の10重量%イソプロパノール溶液39μLを室温にて滴下したところ、76℃まで発熱した。アリルグリシジルエーテル55.56gを添加し、126〜132℃で2時間加熱攪拌した。IRにより反応液にSi−H結合による特性吸収が観察されないことを確認した後、室温まで冷却した。その後、125℃、1mmHgの加熱減圧下でトルエンおよび未反応のアリルグリシジルエーテルを留去し、やや褐色の半透明液体487.0g(収率97%)を得た。
【0062】
この液体は、エポキシ当量が793であり、粘度が9,500mPa・sであった。また、この液体を室温で1ヶ月放置したが、分離は観察されなかった。また、この液体をGPCにより分析したところ、主成分は標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が60,600、分散度(Mw/Mn)が2.5である生成物であり、その含有量は95.0重量%であった。
【0063】
この主成分をGPCにより分取し、1H−NMR、13C−NMR、および29Si−NMRによる構造解析を行ったところ、平均式:
X−CH2CH2(CH3)2SiO[(CH3)2SiO]97Si(CH3)2CH2CH2−X
{式中、Xは、平均単位式:
[Y(CH3)2SiO1/2]1.6(SiO4/2)1.0
(式中、Yは単結合、トリメトキシプロピル基、および3−グリシドキシプロピル基からなり、一分子中、1個のYは単結合であり、残りのYはトリメトキシプロピル基および3−グリシドキシプロピル基であり、そのモル比はほぼ1:4である。)
で表されるジオルガノポリシロキサンであることがわかった。
【0064】
[実施例1〜3、比較例1〜2]
下記の成分を表1に示す重量部で混合して硬化性シリコーン組成物を調製した。得られた組成物の粘度、それを硬化して得られる硬化物の複素弾性率、熱伝導率を表1に示した。
(A−1)成分:参考例1で調製したジオルガノポリシロキサン
(A−2)成分:参考例2で調製したジオルガノポリシロキサン
(A−3)成分:参考例3で調製したジオルガノポリシロキサン
(A−4)成分:参考例4で調製したジオルガノポリシロキサン
(A−5)成分:参考例5で調製したジオルガノポリシロキサン
(B−1)成分:平均単位式:
【化17】

で表されるオルガノトリシロキサン(粘度=2,600mPa・s、フェノール性水酸基当量=330)
(B−2)成分:平均単位式:
【化18】

で表されるポリジメチルシロキサン(粘度=77mPa・s、水酸基当量=700)
(C−1)成分:35重量%−カプセル型アミン触媒のビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物(旭化成株式会社製のHX−3941HP)
(D−1)成分:平均8.6μmの球状アルミナ粒子
(D−2)成分:平均3μmの不定形アルミナ粒子
(E−1)成分:ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物として配合{但し、上記(C−1)成分中のビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物として配合する。}
(F−1)成分:オクタデシルトリメトキシシラン
【0065】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、取扱作業性が優れ、低弾性率で低応力の硬化物を形成するので、半導体素子の封止用樹脂等に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式:
X−R2−(R12SiO)m12Si−R2−X
{式中、R1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素数6以下の一価炭化水素基であり、R2はアルキレン基であり、Xは、平均単位式:
(YR12SiO1/2)a(SiO4/2)b
(式中、R1は前記と同じであり、Yは単結合、水素原子、前記R1で表される基、エポキシ基含有アルキル基、アルコキシシリルアルキル基、または炭素数7以上のアルキル基であり、但し、一分子中、少なくとも1個のYは単結合であり、少なくとも1個のYは炭素数7以上のアルキル基であり、aは正数であり、bは正数であり、かつa/bは0.2〜4.0の数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン残基、前記R1で表される基、またはアルケニル基であり、但し、少なくとも1個のXは前記オルガノポリシロキサン残基であり、mは1以上の整数である。}
で表されるジオルガノポリシロキサン、および
(B)エポキシ樹脂用硬化剤
から少なくともなる硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(A)成分中のmが10以上の整数である、請求項1記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
(B)成分がフェノール性水酸基を有する化合物である、請求項1記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
(B)成分がフェノール性水酸基を一分子中に少なくとも2個有するオルガノシロキサンである、請求項3記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
(B)成分が、一般式:
53SiO(R52SiO)nSiR53
(式中、R5は置換もしくは非置換の一価炭化水素基またはフェノール性水酸基含有一価有機基、但し、一分子中、少なくとも2個のR5は前記フェノール性水酸基含有一価有機基であり、nは0〜1,000の整数である。)
で表されるオルガノシロキサンである、請求項4記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
(B)成分の含有量が、(A)成分100重量部に対して0.1〜500重量部である、請求項1記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
さらに、(C)硬化促進剤を含有する、請求項1記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項8】
(C)成分がカプセル型アミン系硬化促進剤である、請求項7記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項9】
(C)成分の含有量が、(A)成分100重量部に対して50重量部以下である、請求項7記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項10】
さらに、(D)充填剤を含有する、請求項1記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項11】
(D)成分が熱伝導性の充填剤である、請求項10記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項12】
(D)成分の含有量が、(A)成分100重量部に対して5,000重量部以下である、請求項10記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項13】
さらに、(E)有機エポキシ化合物を含有する、請求項1記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項14】
(E)成分の含有量が、(A)成分100重量部に対して500重量部以下であることを特徴とする、請求項13記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項15】
さらに、(F)カップリング剤を含有する、請求項1記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項16】
(F)成分の含有量が、(A)成分100重量部に対して10重量部以下である、請求項15記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物を硬化してなる硬化物。

【公開番号】特開2008−81676(P2008−81676A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265955(P2006−265955)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】