説明

硬化性封止剤組成物、該組成物を含むデバイス及び関連方法

【課題】 現在入手可能な封止剤とは特性の異なる封止剤料の提供。
【解決手段】 電子部品を封止するための封止剤並びにその製造方法及び/又はその封止剤を用いる方法を提供してもよい。封止剤を含む電子デバイスを提供してもよい。硬化封止剤組成物は、官能化ポリマーと1種以上の反応性モノマー組成物の混合物を含んでいてもよい。反応性モノマー組成物は、低温固体であり、反応性モノマー組成物の総重量を基準にして約20重量%超える量で反応性モノマー組成物中に存在してもよい反応性モノマー成分を含んでいてもよい。混合物は低温で固体又は不粘着性であるか、或いは固体でしかも不粘着性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明には、電子部品を封止するための封止剤に関する実施形態が包含される。本発明には、封止剤の製造及び/又は使用方法に関する実施形態が包含される。本発明には、封止剤を含む電子デバイスに関する実施形態が包含される。
【背景技術】
【0002】
集積回路のような電子部品は、環境からの保護並びに構造及び機能的健全性を保つためトランスファー成形によって封止される。封止剤はポリマー組成物である。かかる封止剤は半導体、半導体集積回路、受動機器、受動ネットワーク、マルチチップモジュール、光電子デバイスの封止その他の用途に有用である。
【0003】
現在入手可能な封止剤は成形時に加工処理装置に粘着しかねず、その他の問題も呈しかねない。室温では、封止剤は液体又は半固形パテ状である。
【0004】
米国特許第4632798号、同第4632798号、同第5355016号、同第5998876号及び同第5272377号は、1種以上の封止剤に関するもので、その材料が開示されている。国際公開第03/072628号には、電子部品を封止するためのノボラック型フェノールエポキシ樹脂組成物が開示されている。
【特許文献1】米国特許第4632798号明細書
【特許文献2】米国特許第4785057号明細書
【特許文献3】米国特許第5272377号明細書
【特許文献4】米国特許第5355016号明細書
【特許文献5】米国特許第5998876号明細書
【特許文献6】国際公開第03/072628号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在入手可能な封止剤とは特性の異なる封止剤があれば望ましい。現在利用可能な材料及び/又は方法とは異なる材料及び/又は方法で製造できる硬化性封止剤があれば望ましい。現在入手可能な材料及び/又は方法とは異なる材料及び/又は方法で製造できる封止剤を含む電子デバイスがあれば望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、硬化性封止剤組成物を提供する。本組成物は官能化ポリマーと1種以上の反応性モノマー組成物の混合物を含む。反応性モノマー組成物の1種以上の反応性モノマー又は反応性モノマー成分は室温固体であって、反応性モノマー組成物の総重量を基準にして約20重量%を超える量で反応性モノマー組成物中に存在する。封止剤は低温で固体又は不粘着性であるか、或いは固体でしかも不粘着性である。
【0007】
一実施形態では、電子デバイスを提供する。電子デバイスは封止した回路又はダイを含む。封止剤組成物は官能化ポリマーと反応性モノマー組成物との混合物を含む。反応性モノマー組成物中の1種以上の反応性モノマーは室温固体であって、反応性モノマー組成物の総重量を基準にして約20重量%を超える量で存在する。混合物は低温で固体及び/又は不粘着性である。
【0008】
一実施形態では、封止剤を製造する方法を提供する。本方法は官能化ポリマーと反応性モノマー組成物を混合することを含む。反応性モノマー組成物は低温で固体であって、反応性モノマー組成物の総重量を基準にして約20重量%を超える量で反応性モノマー組成物中に存在する。官能化ポリマーと反応性モノマー組成物を軟化又は液化するのに充分な温度で加熱し、官能化ポリマーと反応性モノマー組成物を混合すればよい。軟化又は液化混合物を冷却して低温で固体及び/又は不粘着性の封止剤組成物を生成せしめる。
【0009】
その他の実施形態では、電子デバイス又は光学デバイスを封止する方法を提供する。本方法は、官能化ポリマーと反応性モノマー組成物との混合物を含むペレット又は粉体の少なくとも一部を溶融する。反応性モノマー組成物は低温固体であって、反応性モノマー組成物の総重量を基準にして約20重量%を超える量で反応性モノマー組成物中に存在する。ペレット又は粉体は室温で固体及び/又は不粘着性である。溶融部分を流動させて電子デバイス又は光学デバイスの一部に接触させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明には、電子部品を封止するための封止剤に関する実施形態が包含される。本発明には、封止剤の製造及び/又は使用方法に関する実施形態が包含される。本発明には、封止剤を含む電子デバイスに関する実施形態が包含される。
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる近似用語は、その基本的機能に変化を起こさずにずに許容範囲内で変動し得る数量的表現の修飾に用いられる。したがって、「約」のような用語で修飾される値は、特定した正確な数値に限定されるものではなく、記載の数値と実質的差のない値も包含する。少なくとも幾つかの例では、近似用語は数値の測定に用いた機器の精度に対応する。不粘着性とは室温付近の温度で感圧接着性をもたない表面をいう。一つの尺度として、不粘着性表面は、約25℃で表面に軽く指を触れても接着も付着もしないが、他の尺度を用いるときは別の温度でもよい。
【0012】
略語の意味を表1に示す。
【0013】
【表1】

第1の態様では、硬化性封止剤組成物について開示する。本組成物は官能化ポリマーと反応性モノマー組成物との混合物を含む。反応性モノマー組成物は室温固体であって、反応性モノマー組成物の総重量を基準にして約20重量%を超える量で反応性モノマー組成物中に存在する。混合物は低温で固体又は不粘着性或いは固体でしかも不粘着性である。
【0014】
好適な官能化ポリマーとしては、ノボラック樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、オレフィンポリマー又はポリ(アリーレンエーテル)の1種以上が挙げられる。
【0015】
一態様では、好適な官能化ポリマーはノボラック樹脂の水酸基を(メタ)アクリレートで封鎖することによって製造し得る。水酸基の一部は(メタ)アクリレートで封鎖してもよく、水酸基の残部は重合に関与しないアルキル基その他の基で封鎖してもよい。
【0016】
好適なノボラックは酸触媒の存在下でフェノール(例えばフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール又はジヒドロキシナフタレン)をアルデヒド(例えばホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド又はサリチルアルデヒド)と共に縮合することによって製造し得る。フェノールとホルマリン(ホルムアルデヒド水溶液)との縮合で形成し得るノボラックは、SHONOL(登録商標)として昭和高分子株式会社から市販されている。好適なノボラックは、2個以上のフェノール性ヒドロキシル基を有するものであればよく、特に限定されないが、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック(メタクリレート化O−クレゾールノボラックなど)、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂、アラルキル系フェノールノボラック(フェノール及び/又はナフトールと例えばジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメタノール)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキルノボラック又はナフトールアラルキルノボラックなど)、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック樹脂、又はこれらの2種以上の組合せが挙げられる。
【0017】
好適な官能化ポリカーボネートとしては、1個以上のメタクリロイルオキシ基を有するビスフェノールAポリカーボネートが挙げられる。一実施形態では、官能化ポリカーボネートとして、ヒドロキシル末端ビスフェノールAポリカーボネートをさらにメタクリロイルクロリドと反応させたものが挙げられる。
【0018】
好適な官能化ポリエステルとしては、末端アクリロイルオキシ基を有するポリ(エチレンテトラフタレート)(PET)が挙げられる。一実施形態では、官能化ポリエステルは対応ヒドロキシル基末端ポリエステルから調製し得る。
【0019】
好適な官能化オレフィンポリマーとしては、1個以上のメタクリロイルオキシ基を有するポリスチレンが挙げられる。一実施形態では、官能化オレフィンポリマーは対応ヒドロキシル末端オレフィンポリマーから調製し得る。
【0020】
好適な官能化ポリ(アリーレンエーテル)としては、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)、環官能化ポリ(アリーレンエーテル)、酸又は酸無水物官能化ポリ(アリーレンエーテル)の1種以上、或いはこれらのポリ(アリーレンエーテル)の組合せが挙げられる。
【0021】
封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は、非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の数に対し、封鎖剤との反応で官能化した遊離ヒドロキシル基を約50%以上を有していてもよい。一実施形態では、封鎖水酸基の割合は約50〜約75%、約75〜約90%、約90〜約95%又は約95〜約99%である。
【0022】
好適な封鎖ポリ(アリーレンエーテル)としては、メタクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)(本明細書ではMACPDMPEと略す。)、或いは以下の構造で表されるものがある。
【0023】
Q(J−K)
式中、Qは一価フェノール、二価フェノール又は多価フェノールの残基であって、好適には一価フェノール又は二価フェノールの残基であり、yは1〜約100であり、Jは次式の繰返し構造単位である。
【0024】
【化1】

式中、mは1〜約200であり、R及びRは各々独立に水素、ハロゲン、第一又は第二C−C12アルキル、C−C12アルケニル、C−C12アルキニル、C−C12アミノアルキル、C−C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C−C12ハロアルキル、C−C12ヒドロカルビルオキシ、ハロゲン原子と酸素原子とが2以上の炭素原子で隔てられたC−C12ハロヒドロカルビルオキシなどであり、R及びRは各々独立にハロゲン、第一又は第二C−C12アルキル、C−C12アルケニル、C−C12アルキニル、C−C12アミノアルキル、C−C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C−C12ハロアルキル、C−C12ヒドロカルビルオキシ、ハロゲン原子と酸素原子とが2以上の炭素原子で隔てられたC−C12ハロヒドロカルビルオキシなどであり、Kはポリ(アリーレンエーテル)のフェノール性ヒドロキシル基と封鎖剤の反応で生成する封鎖基である。得られる封鎖基Kとしては、以下のものが挙げられる。
【0025】
【化2】

式中、Rは1又は2個のカルボン酸基で適宜置換されたC−C12ヒドロカルビルなどであり、R−Rは各々独立に水素、1又は2個のカルボン酸基で適宜置換されたC−C18ヒドロカルビル、C−C18ヒドロカルビルオキシカルボニル、ニトリル、ホルミル、カルボン酸、イミデート、チオカルボン酸などであり、R−R13は各々独立に水素、ハロゲン、C−C12アルキル、ヒドロキシ、アミノ、カルボン酸などであり、Yは以下に挙げるような二価基であり、
【0026】
【化3】

14及びR15は各々独立に水素、C−C12アルキルなどである。
【0027】
ヒドロカルビル基とは、特記しない限り、炭素と水素のみからなる基をいう。ヒドロカルビル基は脂肪族又は芳香族、直鎖、環式、二環式、枝分れ、飽和又は不飽和のいずれでもよい。ヒドロカルビル基は置換基の炭素及び水素上にヘテロ原子を含んでいてもよい。ヒドロカルビル基はカルボニル基、アミノ基、水酸基、カルボン酸基、ハロゲン原子などを含んでいてもよいし、或いはヒドロカルビル基の主鎖にヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0028】
一実施形態では、Qは多官能性フェノールを含むフェノール基であり、以下の構造の基が挙げられる。
【0029】
【化4】

式中、R16〜R19は各々独立にハロゲン、第一又は第二C−C12アルキル、C−C12アルケニル、C−C12アルキニル、C−C12アミノアルキル、C−C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C−C12ハロアルキル、C−C12ヒドロカルビルオキシ、ハロゲン原子と酸素原子とが2以上の炭素原子で隔てられたC−C12ハロヒドロカルビルオキシなどであり、R及びRは各々独立にハロゲン、第一又は第二C−C12アルキル、C−C12アルケニル、C−C12アルキニル、C−C12アミノアルキル、C−C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C−C12ハロアルキル、C−C12ヒドロカルビルオキシ、ハロゲン原子と酸素原子とが2以上の炭素原子で隔てられたC−C12ハロヒドロカルビルオキシなどであり、Xは水素、C−C18ヒドロカルビル又はC−C18ヒドロカルビルであってカルボン酸、アルデヒド、アルコール、アミノ基のような置換基を有するものであり、Xは硫黄、スルホニル、スルフリル、酸素その他の原子価2以上の橋かけ基であってビス又は高次のポリフェノールを生ずるものであり、n(すなわちXに結合したフェニレンエーテル単位の数)は1〜約100、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2である。Qは2,6−キシレノールのような一価フェノールの残基であってもよく、この場合nは1である。Qは2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ジフェノールのようなジフェノールの残基であってもよく、この場合nは2である。
【0030】
一実施形態では、非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は封鎖ポリ(アリーレンエーテル)Q(J−K)を参考にしてQ(J−H)と定義でき、Q、J及びyは上記で定義した通りである。ただし、封鎖基Kの位置を水素原子Hが占める。一実施形態では、非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は以下の構造の1種以上の一価フェノールの重合生成物から実質的になる。
【0031】
【化5】

式中、R20〜R23は各々独立にハロゲン、第一又は第二C−C12アルキル、C−C12アルケニル、C−C12アルキニル、C−C12アミノアルキル、C−C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C−C12ハロアルキル、C−C12ヒドロカルビルオキシ、ハロゲン原子と酸素原子とが2以上の炭素原子で隔てられたC−C12ハロヒドロカルビルオキシなどである。一実施形態では、一価フェノールとして、例えば、2,6−キシレノール、2,3,6トリメチルフェノールなどが挙げられる。
【0032】
ポリ(アリーレンエーテル)は2種以上の一価フェノールの共重合体であってもよい。非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル−コ−2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル)又はそれらの2種以上の混合物が挙げられる。非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は沈殿で単離でき、約400〜約300ppm又は300ppm未満の濃度の有機不純物を有してもよい。有機不純物としては、例えば、2,3−ジヒドロベンゾフラン、2,4,6−トリメチルアニソール、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、7−メチル−2,3−ジヒドロベンゾフランなどが挙げられる。
【0033】
一実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は以下の構造の1以上の封鎖基を含む。
【0034】
【化6】

24〜R26は各々独立に水素、1又は2個のカルボン酸基で適宜置換されたC−C18ヒドロカルビル、C−C18ヒドロカルビルオキシカルボニル、ニトリル、ホルミル、カルボン酸、イミデート、チオカルボン酸などである。他の好適な封鎖基としては、アクリレート(R24〜R26が水素であるもの)とメタクリレート(R24がメチルであり、R25及びR26が水素であるもの)が挙げられる。アクリレートという用語は、アクリレート又はメタクリレートの一方又は両方を指すことがある。
【0035】
別の実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は以下の構造の1以上の封鎖基を含む。
【0036】
【化7】

式中、R27はC−Cアルキルのような、1又は2個のカルボン酸基で置換されたC−C12ヒドロカルビルなどである。
【0037】
さらに別の実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は以下の構造の1以上の封鎖基を含む。
【0038】
【化8】

式中、R28〜R32は各々独立に水素、ハロゲン、C−C12アルキル、ヒドロキシ、アミノ、カルボン酸などであってもよい。この種の封鎖基としては、サリチレート(R29〜R32が水素であり、R28がヒドロキシであるもの)が挙げられる。
【0039】
一実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は以下の構造の1以上の封鎖基を含む。
【0040】
【化9】

式中、Aは飽和又は不飽和C−C12二価炭化水素基、例えばエチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、2−メチル−1,3−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、1,2−ブチレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、2−メチル−1,4−ブチレン、2,2−ジメチル−1,4−ブチレン、2,3−ジメチル−1,4−ブチレン、ビニレン(−CH=CH−)、1,2−フェニレンなどである。これらの封鎖ポリ(アリーレンエーテル)樹脂は、例えば、非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を環状無水物の封鎖剤と反応させることによって調製し得る。かかる環状無水物の封鎖剤としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水フタル酸などが挙げられる。
【0041】
他の好適な封鎖剤としては、フェノール基と反応性の化合物が挙げられる。かかる化合物としては、例えば、酸無水物、酸クロライド、エポキシ、カーボネート、エステル、イソシアネート、シアネートエステル又はハロゲン化アルキル基を有するモノマー及びポリマーが挙げられる。また、リン系封鎖剤及び硫黄系封鎖剤も挙げられる。封鎖剤の例としては、例えば、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水サリチル酸、サリチル酸単位を含むポリエステル、サリチル酸のホモポリエステル、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、塩化アセチル、塩化ベンゾイル、ジ(4−ニトロフェニル)カーボネートのような炭酸ジフェニル、アクリロイルエステル、メタクリロイルエステル、アセチルエステル、フェニルイソシアネート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルフェニルイソシアネート、シアナトベンゼン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、3−(α−クロロメチル)スチレン、4−(α−クロロメチル)スチレン、臭化アリルなど、並びにこれらの置換誘導体及び混合物が挙げられる。
【0042】
様々な実施形態では、好適な官能化ポリマーは、1種類のポリ(アリーレンエーテル)と2種以上の異なる官能化剤との反応で調製し得る。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)を2種類の異なる封鎖剤、3種類の異なる封鎖剤又は4種以上の異なる封鎖剤と反応させてもよい。他の例では、ポリ(アリーレンエーテル)を金属化し、2種類の異なる不飽和アルキル化剤と反応させてもよい。他の実施形態では、モノマー組成及び/又は分子量の異なる2種以上のポリ(アリーレンエーテル)樹脂の混合物を、1種類の官能化剤と反応させてもよい。組成物は官能化ポリ(アリーレンエーテル)樹脂と非官能化ポリ(アリーレンエーテル)樹脂との混合物を適宜含んでいてもよく、このような2種類の成分の固有粘度は異なっていてもよい。様々な実施形態では、官能化ポリ(アリーレンエーテル)は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)又は2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体の一方又は両方を含んでいてもよい。一実施形態では、官能化ポリ(アリーレンエーテル)は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテルから実質的になる。一実施形態では、官能化ポリ(アリーレンエーテル)は実質的に2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体からなる。
【0043】
封鎖触媒で、非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)と封鎖剤の反応を促進してもよい。かかる封鎖触媒の例としては、フェノールと封鎖剤との縮合を触媒し得るものが挙げられる。様々な実施形態では、封鎖触媒は塩基性化合物であってもよく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラアルキルアンモニウムのような水酸化物塩、トリブチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルブチルアミンのような第三アルキルアミン、N,N−ジメチルアニリンのような第三混成アルキルアリールアミン及びその置換誘導体、2−メチルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン、4−(1−ピロリノ)ピリジン、4−(1−ピペリジノ)ピリジン、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンのようなイミダゾール、ピリジンのような複素環式アミン及びその置換誘導体が挙げられる。また、例えば、イソシアネート又はシアン酸エステルとフェノールとの縮合を触媒し得るスズ塩と亜鉛塩のような有機金属塩も有用である。
【0044】
好適な環官能化ポリ(アリーレンエーテル)としては、次式の繰返し構造単位を含むポリ(アリーレンエーテル)が挙げられる。
【0045】
【化10】

式中、各L−Lは独立に水素、C−C12アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基であり、アルケニル基は次式で表される。
【0046】
【化11】

−Lは独立に水素又はメチルであり、aは0、1、2、3又は4であり、アルキニル基は次式で表される。
【0047】
【化12】

は水素、メチル又はエチルであり、bは0、1、2、3又は4であり、環官能化ポリ(アリーレンエーテル)の全L−L置換基の約0.02モル%〜約25モル%は、アルケニル基及び/又はアルキニル基である。様々な実施形態では、置換基はアルケニル及び/又はアルキニル基の約0.02〜約0.1モル%、約0.1〜約0.5モル%、約0.5〜約10モル%、約10〜約15モル%又は約15〜約25モル%の量ので存在し得る。
【0048】
環官能化ポリ(アリーレンエーテル)の調製は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテルのような非官能化ポリ(アリーレンエーテル)を得た後、n−ブチルリチウムのような試薬を用いた金属化によってもなし得る。その後、金属化した物質を、臭化アリル及び/又はアルキニルハロゲン化物(例えば臭化プロパルギル)のようなアルケニルハロゲン化物)と反応させればよい。
【0049】
好適な酸官能化ポリ(アリーレンエーテル)又は酸無水物官能化ポリ(アリーレンエーテル)は、ポリ(アリーレンエーテル)とα,β−不飽和カルボニル化合物又はβ−ヒドロキシカルボニル化合物との溶融反応の生成物を含んでいてもよく、酸又は酸無水物官能化ポリ(アリーレンエーテル)を生ずる。様々な実施形態では、酸官能基と酸無水物官能基の一方又は両方が存在していてもよい。α,β−不飽和カルボニル化合物としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物の1種以上、或いはこれらの誘導体及び類似化合物が挙げられる。β−ヒドロキシカルボニル化合物の例としては、クエン酸、リンゴ酸などが挙げられる。かかる官能化は、ポリ(アリーレンエーテル)と所望のカルボニル化合物との約150℃〜約300℃の温度での溶融混合によって実施し得る。
【0050】
官能化ポリマーは、約24℃を超えるガラス転移温度(Tg)を有し、反応性モノマー組成物中の反応性モノマーと反応し得る官能基を含んでいればよい。好適な官能基には、アルケニル基、アリル基、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、ビニルエーテル基、ビニルケトン基及びシンナミル基の1以上が挙げられる。様々な実施形態では、官能基はメタクリロイルオキシとアクリロイルオキシの少なくともいずれかを含む。
【0051】
組成物は、数平均分子量約1000〜約25000原子質量単位(AMU)の官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含んでいてもよい。様々な実施形態では、官能化ポリ(アリーレンエーテル)の数平均分子量は約1000〜約2000AMU、約2000〜約4000AMU又は約4000〜約100000AMUである。
【0052】
官能化ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は、25℃のクロロホルム中で測定して、約0.05〜約0.6dl/gである。様々な実施形態では、官能化ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は、25℃のクロロホルム中で測定して、約0.05〜約0.08dl/g、約0.08〜約0.1dl/g、約0.1〜約0.3dl/g、約0.3〜約0.4dl/g、約0.4〜約0.5dl/g又は約0.5〜約10dl/gである。別の実施形態では、官能化ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は約0.15dl/g以下、約0.15〜約0.25dl/g又は約0.25〜約10dl/gである。固有粘度の異なる官能化ポリマーの混合物を用いてもよい。様々な実施形態では、MACPDMPEの固有粘度は約0.12〜約0.2dl/g、約0.2〜約0.25dl/g、約0.25〜約0.3dl/g又は約0.3〜約10dl/gである。一実施形態では、この混合物は固有粘度約0.12のMACPDMPE約50重量%と固有粘度約0.30のMACPDMPE約50重量%を含む。
【0053】
比較的低い固有粘度を選択すると、組成物のトランスファー成形時の流れ特性が増大する。固有粘度の比較的高い材料を選択すると、組成物の不粘着性を維持する温度閾値が高くなる。材料の量を調節し、それらの材料に固有粘度を選択すると、封止剤組成物の流れ特性及び温度閾値を調節できる。
【0054】
一実施形態では、官能化ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は非官能化ポリ(アリーレンエーテル)の約10%以内である。分子量、固有粘度又はその両者が比較的異なる2種以上の官能化ポリ(アリーレンエーテル)の混合物を用いてもよい。かかる混合物は別個に調製・単離した官能化ポリ(アリーレンエーテル)から調製し得る。
【0055】
反応性モノマー組成物での使用に適した反応性モノマーは結晶性で、低い温度で融点を呈するものであってもよい。一実施形態では、融点は約24℃を超える。様々な実施形態では、反応性モノマー組成物に用いる反応性モノマーは結晶性で、24℃未満乃至約30℃、約30〜約40℃、約40〜約50℃、約50〜約60℃又は約60〜約100℃の融点を呈する。
【0056】
一実施形態では、反応性モノマー組成物は複数の異なる反応性モノマーを含んでいてもよいが、反応性モノマー組成物の約20%の反応性モノマーが低温固体である。他の実施形態では、反応性モノマー組成物の1種以上の反応性モノマーの重量%は、低温固体であって、反応性モノマー組成物の総重量を基準にして約20重量%超である。
【0057】
各種の実施形態では、反応性モノマーは、本発明の一実施形態に係る全封止剤組成物中の反応性モノマーの総重量を基準にして、約10〜約20重量%、約20〜約30重量%、約30〜約40重量%、約40〜約50重量%、約50〜約60重量%、約60〜約70重量%、約70〜約80重量%である。
【0058】
反応性モノマー組成物は低温固体である。一実施形態では、低温は室温未満でも、室温でも、或いは約室温〜約100℃でもよい。他の実施形態では、低温は約25〜約35℃、約35〜約50℃又は約50〜約100℃の温度である。例えば、35℃で固体である反応性モノマーは25℃以下の温度(約室温)で固体であると考えられる。したがって、かかる高い融点又は軟化点の反応性モノマー組成物は低温固体の範疇に属するが、成分の配合及び比率は、用途に特有の基準に基づいて調整及び決定し得る。
【0059】
一実施形態では、反応性モノマー組成物はトリアリルオキシトリアジンを含んでもよく、単独で或いは反応性モノマー組成物の他の1種以上の反応性モノマーとの組合せで使用できる。他の好適な反応性モノマーは、アクリレート及び/又はメタクリレートがある。様々な実施形態では、反応性モノマー組成物はアリルエステル、アリルシアヌレート、アリルイソシアヌレート、ビニルベンゼン、ビニルエーテル、ビニルエステル、アクリレート、メタクリレート又はこれらの2種以上の組合せから選択される基を有する1種以上の反応性モノマーを含んでいてもよい。様々な実施形態では、反応性モノマー組成物は、MorflexからVECTOMER(Allied Signal社の登録商標)4051という商品名で市販されているビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]テレフタレート(BVM)、ビフェノールジメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート(BPA)、ビスフェノールジアクリレート、4−ビフェニルメタクリレート(4−BiPh)、Sartomer Technology社(米国デラウェア州ウィルミントン)からSARTOMER(登録商標)CD 406として市販されているシクロヘキサンジメタノールジアクリレート、1,5−ジメタクリロイルナフタレン(1,5−NP)、エトキシル化(2)ビスフェノールAジメタクリレート(E2BPA)、スルホニルジフェノールジメタクリレート、テトラメチルビスフェノールAジメタクリレート(TMBPA)、テトラメチルビフェノールジメタクリレート(TMBiPh)など及びこれらの2種以上の組合せを含んでいてもよい。
【0060】
反応性モノマー組成物の各反応性モノマーは融点温度又は軟化点温度を有する。軟化点は組成物のある温度域におよぶ融「点」の温度域の限界を示し、軟化点は融点温度範囲の最も低い温度を示す。例えば、市販のシクロヘキサンジメタノールジアクリレートは約77〜約78℃の融点を有する。また、4−メタクリロイルオキシビフェニルとして知られる4−ビフェニルメタクリレートは約105〜108℃の融点を有する。ビスフェノールAジメタクリレートは約65〜71℃の融点を有する。テトラメチルのビスフェノールAジメタクリレートとしても知られるトリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンのトリメタクリレートは約126〜約135℃の融点を有する。ビスフェノールジメタクリレートは約145〜約148℃の融点を有する。テトラメチルビスフェノールジメタクリレートは約160〜約170℃の融点を有する。スルホニルジフェノールジメタクリレートは約147〜約151℃の融点を有する。1,5−ジメタクリロイルナフタレンは約97〜約100℃の融点を有する。
【0061】
硬化時に、アクリレートを有する反応性モノマー組成物及び/又はメタクリレート官能性反応性モノマーは、それ自体で及び/又は官能化ポリマーの官能基と反応し得る。反応は開始剤などの硬化剤の存在下加熱時に起こり得る。開始剤存在下で加熱するまで、反応性モノマー組成物に安定性を与えるため反応性モノマー組成物をヒドロキノンのような阻害剤と共に供給してもよい。
【0062】
様々な実施形態では、官能化ポリマーと反応性モノマー組成物の総重量を基準にして、本発明の一実施形態に係る組成物は、約5〜約10重量%、約10〜約30重量%、約30〜約45重量%、約45〜約55重量%、約55〜約70重量%又は約70〜約80重量%の量の官能化ポリマーを含有し得る。様々な実施形態では、官能化ポリマーの量は、反応性モノマー組成物と官能化ポリマーを含む樹脂の総量に対して、80重量%超、約80〜約90重量%又は約90重量%超でもよい。各種の実施形態では、反応性モノマーの量は、反応性モノマー組成物と官能化ポリマーを含む樹脂の総量に対して、10重量%超、約10〜約20重量%、約20〜約30重量%、約30〜約40重量%、約40〜約50重量%、約50〜約60重量%、約60〜約70重量%、約70〜約80重量%又は約80重量%超でもよい。
【0063】
官能化ポリマーは封止剤組成物の総重量を基準にして、約1重量%超又は約10重量%超で存在し得る。各種の実施形態では、官能化ポリマーは、すべての成分を含めた組成物全体を基準にして、約1〜約1.5重量%、約1.5〜約3.5重量%、約3.5〜約6重量%、約6〜約7重量%、約7〜約10重量%、約10〜約20重量%又は約20〜約80重量%の量で存在し得る。
【0064】
一実施形態では、不粘着性組成物は官能化ポリ(アリーレンエーテル)と反応性モノマー組成物の全100重量部に対して約5重量部を超える量の官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含有し得る。特に、官能化ポリ(アリーレンエーテル)樹脂の量は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)と反応性モノマー組成物の総重量を基準にして、約5部未満、約5〜約10部、約10〜約20部、約20〜約50部、約50〜約60部、約60〜約80部又は約80〜約90部である。
【0065】
不粘着性組成物は、1種以上の重合阻害剤を含んでいてもよい。様々な実施形態では、不粘着性組成物は総重量を基準にして約0.01〜約0.05重量%、約0.05〜約0.2重量%、約0.2〜約0.3重量%、約0.3〜約0.5重量%又は約0.5〜約5重量%の重合阻害剤を含んでいてもよい。
【0066】
重合阻害剤は販売業者から供給される反応性モノマー組成物中の1種以上の反応性モノマーに元々存在していることがある。これとは別に或いはこれに加えて、重合阻害剤を反応性モノマー組成物に添加してもよい。好適な重合阻害剤としては、1種以上のフェノール系化合物、例えばカテコールとメチルカテコール、エチルカテコール、プロピルカテコール、イソプロピルカテコール、ブチルカテコール、t−ブチルカテコールのようなC〜Cアルキルカテコールが挙げられる。幾つかの例では、C〜Cアルキルカテコールの混合物を用いてもよい。その他の好適な重合阻害剤としては、t−ブチルカテコール、ヒンダードアミンなどが挙げられる。
【0067】
重合阻害剤は総重量を基準にして約0.02重量%を超える量で存在し得る。様々な実施形態では、重合阻害剤は、すべての成分を含めた組成物全体を基準にして、約0.02〜約0.04重量%、約0.04〜約0.06重量%、約0.06〜約0.15重量%又は約0.15〜約5重量%の量で存在し得る。組成物は反応性モノマー組成物の量に対して、約0.01〜約0.05重量%、約0.05〜約0.2重量%、約0.2〜約0.3重量%又は約0.3〜約5重量%の量の重合阻害剤を含有し得る。
【0068】
硬化剤は総重量を基準にして約0.2重量%を超える量で存在し得る。様々な実施形態では、硬化剤は、すべての成分を含めた組成物全体を基準にして、約0.2〜約0.3重量%、約0.3〜約0.4重量%、約0.4〜約1重量%又は約1〜約5重量%の範囲の量で存在し得る。
【0069】
好適な硬化剤としては、特に限定されないが、アゾ化合物、有機過酸化物又はこれらの2種以上の組合せが挙げられる。好適なアゾ化合物としては、特に限定されないが、アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。有機過酸化物としては、特に限定されないが、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート又はこれらの2種以上の組合せが挙げられる。硬化剤が有機過酸化物系硬化剤である場合、部分硬化時間は約80〜約100秒である。部分硬化時間は、Dynamic Cure Monitor(誘電スペクトロメーター組込型加熱盤プレスを用いて硬化プロファイルを測定する装置)で求めることができる。部分硬化時間は重合阻害剤の存在によって増大することもある。
【0070】
離型剤は任意成分であるが、総重量を基準にして約0.2重量%を超える量で存在し得る。様々な実施形態では、離型剤は、すべての成分を含めた組成物全体を基準にして、約0.2〜約0.3重量%、約0.3〜約0.4重量%、約0.4〜約0.6重量%又は約0.6〜約5重量%の量で存在し得る。
【0071】
好適な離型剤としては、特に限定されないが、ステアリン酸、ステアリン酸の金属塩、モンタン酸、カルナバワックスのような脂肪酸エステル又はこれらの2種以上の組合せが挙げられる。好適なステアリン酸の金属塩はステアリン酸亜鉛である。好適なモンタン酸離型剤には、Clariant社からLICOWAX(登録商標)OPという商品名で市販されている部分鹸化エステル化モンタン酸がある。
【0072】
着色剤は任意成分であるが、総重量を基準にして約0.1重量%を超える量で存在し得る。様々な実施形態では、着色剤は、すべての成分を含めた組成物全体を基準にして、約0.1〜約0.2重量%、約0.2〜約0.4重量%、約0.4〜約1重量%又は約1〜約5重量%の量で存在する。
【0073】
好適な着色剤としては、特に限定されないが、カーボンブラックが挙げられる。市販カーボンブラックとしては、Printex社からXE2という商品名で入手できるものがある。
【0074】
難燃剤は任意成分であるが、総重量を基準にして約0.5重量%を超える量で存在し得る。様々な実施形態では、難燃剤は、すべての成分を含めた組成物全体を基準にして、約0.5〜約0.8重量%、約0.8〜約1.7重量%、約1.7〜約5重量%又は約5〜約50重量%の量で存在し得る。
【0075】
好適な難燃剤としては、特に限定されないが、メラミンポリホスフェート(Ciba Specialty Chemicals社からMELAPUR(登録商標)200として市販)、アルミニウムジエチルホスフィネート(Clariant社からOP 930という商品名で市販)、メラミンポリホスフェートとアルミニウムジエチルホスフィネートの混合物(Clariant社から商品名OP 1311という商品名で市販)又はその2種以上の組合せが挙げられる。さらなる好適な難燃剤としては、メラミンホスフェート、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。さらに、好適な有機難燃剤としては、ハロゲン化芳香族化合物(例えばジブロモスチレンとそのポリマー、テトラブロモビスフェノールA及びそのポリマー)などが挙げられる。
【0076】
任意成分の接着促進剤が存在する場合、総重量を基準にして約0.7〜約1.5重量%の量で存在し得る。様々な実施形態では、接着促進剤は、すべての成分を含めた組成物全体を基準にして、約0.7〜約1.3重量%又は約1.3〜約1.5重量%の量で存在し得る。
【0077】
好適な接着促進剤としては、特に限定されないが、スチレン無水マレイン酸、亜鉛アクリレート(Sartomer社から市販)、部分アクリル化ビスフェノールAエポキシ(Surface Specialties社からEBECRYLq 3605という商標で市販)、ビスフェノールAエポキシとジアミノジフェニルメタンの混合物又はその2種以上の組合せが挙げられる。一実施形態では、封止剤は実質的に粘着剤を含まない。
【0078】
補強充填材は任意成分であるが、総重量を基準にして約1重量%を超える量で存在し得る。様々な実施形態では、補強充填材は、すべての成分を含めた組成物全体を基準にして、約40重量%、約40〜約60重量%、約60〜約86重量%、約86〜約92重量%又は約92〜約99重量%の量で存在し得る。
【0079】
好適な充填材としては、特に限定されないが、1種以上のアルミナ、酸化亜鉛、シリカ(例えば溶融シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカなど)、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、二酸化チタン、二ホウ化チタン、タルク、フライアッシュ、炭酸カルシウム、カーボンブラック又はグラファイトなどが挙げられる。
【0080】
充填材は1以上の形態及び物理的寸法の粒子を含んでいてもよい。様々な実施形態では、補強充填材は球状粒子、半球状粒子、回転楕円体、扁球、無定形粒子、中空球体、多孔質材料などの1種以上を含む。様々な実施形態では、補強充填材としては、ロッド、ウィスカー、ある寸法(長さ、高さ又は幅)が他の寸法よりも長い幾何学的形状、チューブ及び/又は繊維がある。充填材の平均粒度分布は約75μm以下、約50μm以下、約35μm以下、約25μm以下でもよいし、サブミクロンであってよい。補強充填材は二峰性粒度分布又は三峰性もしくはそれ以上の粒度分布を有する粒子からなる。様々な実施形態では、補強充填材は二峰性粒度分布を有する粒子からなり、実質的に全粒子が球状である。
【0081】
好適なシリカとしては、溶融シリカが挙げられる。溶融シリカは例えばシランカップリング剤で処理してもよい。好適なカップリング剤としては、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤のアルコール溶液(Dow Corning社製Z−6030)が挙げられる。処理は、少量の水と酢酸を触媒とするカップリング剤を、シリカ(90:10比のFB 570シリカとSFP 30Mシリカ)上に噴霧して、シラノール基を残し、次いで約95℃で加熱してシラノール基を縮合させる。FB 570シリカ及びSFP 30Mシリカは、デンカグループとして事業を行っている電気化学工業株式会社から市販されている。
【0082】
好適なシリカとしては、コロイダルシリカが挙げられる。コロイダルシリカは約ミクロン単位以下の平均粒径を有するものでもよい。様々な実施形態では、コロイダルシリカの平均粒径は、5nm未満、約5〜約10nm、約10〜約20nm、約20〜約40nm又は約40〜約500nmのナノ単位のものであってもよい。コロイダルシリカは球状、半球状、無定形、幾何学的形状に賦形したものであってもよい。コロイダルシリカはアルコキシシラン材料などで処理してもよい。一実施形態では、好適な処理は、本来親水性のシリカと少なくともある程度非極性の有機相マトリックスとの相溶性を増大させる。この処理でシリカに活性末端部位(例えばシラノール)が残り、安定性が低下しかねないので、シリカを封鎖剤又は不動態化剤で二次処理してもよい。好適な不動態化剤としては、シリザン(例えばヘキサメチルジシリザン)が挙げられる。この二段階処理によって、安定性又は保存寿命を損ねたり、粘性を大きく増大させたり、或いは経時的に架橋を開始しかねないシリカの末端部位がほとんど或いは全く残らなくなる。
【0083】
他の任意成分の添加剤を組成物に配合してもよい。好適な他の添加剤としては、官能化液体ゴム、微粉砕ゴム、金属接着促進剤、ソルダーマスク接着促進剤、イオン交換添加剤、酸化防止剤、重合促進剤又は樹脂硬化剤などの1種以上が挙げられる。
【0084】
組成物は官能化ポリマーと反応性モノマー組成物を含んでおり、反応性充填材の総重量を基準にして20重量%以上の反応性充填材は室温固体である。さらに、組成物は開始剤又は硬化剤、及び充填材を含んでいてもよい。組成物は、さらに、重合阻害剤、離型剤、着色剤、難燃剤又は接着促進剤の1種以上を含んでいてもよい。一実施形態では、官能化ポリマーと反応性モノマー組成物と重合阻害剤を加熱して溶融液を生成せしめ、これに任意成分を添加してもよい。一実施形態では、CPAEと反応性モノマー組成物と開始剤と重合阻害剤の混合物を加熱混合し、溶融液を生じさせる。液体を冷却して結晶化して、脆い組成物を得る。この脆い組成物を充填材とコンパウンディングすればよい。
【0085】
組成物はトランスファー成形プロセスに使用できる。一実施形態では、組成物をペレットに形成する。ペレットは、例えば電子デバイス(例えば回路)の封止剤としてトランスファー成形プロセスに使用できる。ペレットは、周囲温度の金型内での組成物の圧縮のような従来技術で容易に形成できる。
【0086】
トランスファー成形装置はポットを備えたものがあり、ポットは格納式プランジャを備えた円筒形のキャビティであってもよい。本発明のペレット形態の組成物とポットはほぼ同じ径であってもよい。ポットは成形具と同じ温度の高温に維持すればよい。ペレットをポットに挿入した後、プランジャでペレットをプレスしてポットの底の開口部から成形具の高温ランナー系に流し込む。成形時間は約1〜約4分である。
【0087】
ポットと成形具は独立に、50℃超、約50〜約100℃、約100〜約130℃、約130〜約140℃又は約140〜約175℃又は約175℃を超える温度に維持してもよい。例えば、150℃を超える温度は無鉛はんだ用途に有用である。
【0088】
約7g未満のペレットは、トランスファーポットに挿入してから数秒以内に軟化し得る。大型ペレット(約7g以上)は例えば赤外高温計を備えた高周波プレヒータを用いて予熱してからトランスファーポットに挿入してもよい。
【0089】
ペレットの軟化温度が低いと、ペレットが軟化するまでのポットからの組成物の流出が防がれる。例えば、ペレットを他のペレットに変形又は焼結させてもよい。軟化ペレットは互いに及び/又は容器側面に凝集することがあり、易流動性のペレットとして注入できないことがある。軟化温度が高すぎると、使用前にペレットの不都合な硬化が起こりかねない。
【0090】
トランスファー成形の適性はスパイラルフロー長と相関させることができる。スパイラルフロー長は、SEMI G11−88で熱硬化性モールディングコンパウンドのラムフォロワー装置によるゲル化時間及びスパイラルフローの測定について推奨される方法、或いはEMMI 1−66の方法で測定し得る。スパイラルフロー長は約1MPa及び約150℃で測定し得る。様々な実施形態では、組成物のスパイラルフロー長は約11インチ超、約11〜約30インチ、約30〜約50インチ、約50〜約61インチ又は約61〜約100インチである。
【0091】
スパイラルフロー長は、例えば反応性希釈剤の種類及び量の選択によって制御し得る。或いは又はさらに、スパイラルフロー長は重合阻害剤の存在下で増大させることができ、充填材、着色剤及び/又は難燃剤の存在下で減少させることができる。スパイラルフロー長はCPAE(特にMACPDMPE)の使用量を増やすことによって減少させることもできる。また、固有粘度0.12のMACPDMPEと固有粘度0.30のMACPDMPEの混合物を用いる場合、混合物中の固有粘度0.12のMACPDMPEの相対量を増加させることによってスパイラルフロー長を増大させることもできる。一実施形態では、封止剤は約125℃〜約175℃の温度範囲で高いフローレート(比較的長いスパイラルフロー長として測定される)と低い粘性を呈する。
【0092】
硬化性封止剤は約20〜約30ショアD、約30〜約50ショアD、約50〜約60ショアD又は約60ショアDを超える硬度を呈する。好適なモールディング組成物は硬化後に、約65〜約70MPa、約70〜約150MPa、約150〜約160MPa又は約160〜約200MPaの曲げ強さを呈する。
【0093】
ショアD硬度値については、ASTM D2240に準拠した軟質材料、通常プラスチック又はゴムの相対的な硬度の測定にデュロメータ(例えばZwick Durometer Hardness Tester)を使用し得る。デュロメータは所定の圧力及び時間条件下での所定のインデンタの材料内への侵入度を測定する。試験手順は以下の段階からなる。まず標本を固い平坦面に配置する。計器のインデンタが面と平行になるようにインデンタを標本に押圧する。硬さは標本にしっかりと接触してから1秒以内に読取られる。試験片の厚さは6.4mm(1/4インチ)である。
【0094】
図1及び図2では、同様の構成要素には同様の符号を付す。図示した様々な特徴の縮尺は異なることもある。以下は例示にすぎず、限定的なものではない。
【0095】
図1に電子アセンブリ10を示し、図2に、図1の電子アセンブリ10の矢視2−2断面図を示す。電子アセンブリ10は基板12を備えていてもよい。基板12はエレクトロニクス産業で広く使用されている多くの材料のいずれであってもよく、特に限定されないが、ポリマー、ガラス、金属及び/又はセラミックが挙げられ、可撓性のものでも剛性のものでもよい。基板12はプリント基板、エポキシ回路カード又は銅リードフレームである。
【0096】
基板12はメタライゼーションパターン用の担体であってもよく、相互接続パッド14と取付領域16(図2)を含んでいてもよく、そこに例えば電子部品18を接着剤20(図2)で取り付けてもよい。電子部品18は取付領域16にはんだ付けしてもよい。
【0097】
代表的な電子部品18は封止してもよく、1以上のトランジスタ、コンデンサ、リレー、半導体、レジスタ、レジスタのネットワーク、集積回路などを備えていてもよい。
【0098】
電子部品18は導線Wで様々なパッド14に接続できる。導線Wは金属線であり、金、アルミニウム又は両方を含んでいてもよい。
【0099】
電子部品18及び導線Wはポリマー組成物22で封止される。ポリマー組成物22の厚さは約0.1ミリメートル(mm)〜約0.5mm、約0.5〜約3mm、約3〜約3.5mm又は約3.5mm超である。
【0100】
ポリマー組成物22はトランスファー成形によって施工できる。電子部品18を備えた基板12のアセンブリ10は金型(図示せず)を有するトランスファー成形装置(図示せず)に配置し得る。ポリマー組成物22を予熱してもよく、ポットに挿入して、ポットから高温金型キャビティに圧入すればよい。ポリマー組成物22は電子部品18及び付随する導線Wの周辺及びパッド14、取付領域16及び基板12の少なくとも一部の周辺に流動して成形される。凝固したら、成形部材を金型から取り出せばよい。
【実施例】
【0101】
以下の実施例は、本発明に係る方法及び実施形態を例示するものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。特記しない限り、すべての成分は、Alpha Aesar社(米国マサチューセッツ州ワードヒル)、 Spectrum Chemical Mfg社(カリフォルニア州ガーデナ)のような化学薬品業者から市販されている。
【0102】
実施例1〜10:無充填組成物の調製
実施例1〜10は、官能化ポリマー(例えば封鎖ポリアリーレンエーテル(CPAE))、室温固体反応性モノマー組成物(すなわち、室温よりも高い融点又は軟化点を有する)、開始剤と補強充填材を含む。実施例1〜10は以下の通り調製し評価する。
【0103】
封鎖ポリアリーレンエーテル(CPAE)は、メタクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)(MACPDMPE)であり、実施例に応じて約0.12又は約0.30の固有粘度を有する。実施例1及び実施例2では、固有粘度0.12のMACPDMPEと固有粘度0.30のMACPDMPEの50/50混合物を用いた。
【0104】
実施例1〜10では、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(Sartomer社からSARTOMER(登録商標)CD 406として市販)を適宜他の1種以上の反応性モノマー組成物と共に用いた。例えば、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(CDD)とエトキシル化(2)ビスフェノールAジメタクリレート(EBAM社からSR−348という商品名で市販され、本明細書ではE2BPAと略す)又は1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(EBAM社からSR−248という商品名で市販され、本明細書では1,6−HDDと略す)の混合物を用いた。
【0105】
組成物の早期重合のおそれを低減すべく重合阻害剤t−ブチルカテコール(本明細書ではTBCと略す)を約1000ppmの濃度で組成物に配合した。
【0106】
実施例1〜10の組成物の成分及び量を表2にまとめた。量は組成物全体の重量百分率として示す。固有粘度はdl/gで示す。
【0107】
【表2】

ホットプレート上の容器内で、成分を約170℃で約15分間激しく撹拌して透明な液体が生じるまで混合することによって組成物を調製した。この高温の液体を容器の内容物を浅いアルミニウム製パンに室温で注いで急冷した。数分以内に、急冷組成物中で結晶性スフェルライトが生成し、成長した。
【0108】
実施例1〜10の各々の急冷組成物は、不粘着性で脆く固い固体であった。粘着性は室温及び35℃での指触試験で調べた。この場合の不粘着性を考慮すると、実施例1〜10は、室温のみで不粘着性である必要がある。実施例1〜10の各々は、室温及び約35℃のいずれでも不粘着性であった。脆さは、ハンマーで固体組成物の一部を衝打し、離散粒子を含む粉体の生成の観察によって調べた。実施例1〜10の各材料から形成したペレットは、少なくとも約35℃までの温度で比較的自由流動性であった。さらに、ペレットの各々は約50℃〜約150℃の温度域に軟化点又は融点を有していた。
【0109】
実施例11:封止剤の調製
(上述の)実施例3の組成物を溶融シリカと混合した。シリカはγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで処理した30MシリカFB 570とSFPの混合物である。シリカ充填混合物を硬化剤、離型剤、着色剤及び難燃剤と混合した。硬化剤はジクミルペルオキシドである。離型剤はCERIDUST(登録商標)(CLARIANT社)である。着色剤は緑色着色剤SANDOPLAST(登録商標) Green GSB (CLARIANT)と赤色着色剤SANDOPLAST(登録商標) Red Gの混合物である。難燃剤はアルミニウムジエチルホスフィネート(OP 930,CLARIANT社)である。
【0110】
混合は、ローラー撹拌翼を装着し約80rpmで作動させたBRABENDERミキシングボウルで実施した。ボウル温度は約80℃に維持した。混合時間は約5分である。得られた充填組成物の成分及び量を表3にまとめた。
【0111】
比較例1〜4及び実施例12〜24
【0112】
【表3】

比較例1〜4及び実施例12〜24の組成物は、以下の通り調製した。
【0113】
比較例1及び比較例2では、室温固体反応性モノマー組成物は配合しなかった。比較例1及び比較例2で使用した反応性モノマー組成物(E2BPA)は室温で液体であって、硬化前は粘着度又は粘着性が比較的高く、比較的低いスパイラルフロー長に寄与し、硬化すると比較的低い硬さ(ショアD)に寄与する。比較例3及び比較例4は、官能化ポリマー成分を含まない充填系である。比較例3及び比較例4で用いた反応性モノマー組成物は単量体型ビフェノールエポキシ樹脂であり、充填材配合量は75重量%超であった。
【0114】
実施例12〜24では、官能化ポリマーと反応性モノマー組成物との混合物を配合した。官能化ポリマーはメタクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチルフェニレン)エーテル(MACPDMPE)を含んでいた。反応性モノマー組成物は室温で固体の1種以上の反応性モノマー組成物を含んでいた。
【0115】
比較例1〜4及び実施例12〜14及び17〜24には接着促進剤(SMA)及び難燃剤を配合した。すべての比較例及び実施例12〜24には離型剤(ステアリン酸)、重合阻害剤(t−ブチルカテコール)、着色剤及び硬化剤(t−ブチルペルオキシベンゾエート)を配合した。表4に示す通り、官能化ポリマー(MACPDMPE)の固有粘度は0.30又は0.12であった。
【0116】
反応性モノマー組成物はエトキシル化(2)ビスフェノールAジメタクリレート(E2BPA)、ビスフェノールAジメタクリレート(BPA)、1,5−ジメタクリロイルナフタレン(1,5−NP)、ビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]テレフタレート(BVM)、テトラメチルビスフェノールAジメタクリレート(TMBPA)、テトラメチルビフェノールジメタクリレート(TMBiPh)及び4−ビフェニルメタクリレート(4−BiPh)並びにそれらの混合物から選択される反応性モノマーを含む。比較例1〜2の組成物及び実施例12〜24の各々は、重合阻害剤としてt−ブチルカテコールを含んでいた。実施例15及び実施例16の組成物を除いて、スチレン無水マレイン酸(SMA)を含む接着促進剤を用いた。SMAは最終組成物と基板との接着力を高める。
【0117】
官能化ポリマー及び反応性モノマー組成物を、約170℃の4Lの油浴に浸漬した200mlビーカー中で混合した。オーバーヘッドスターラーを用いて、ビーカーの内容物を約15分間撹拌した。その後、ビーカーの内容物が透明な液体となった。ビーカーを油浴から取り出して、実験台上で冷却しながら、内容物の温度が約100℃となるまでガラス温度計でモニターした。100℃に達した後、着色剤及び離型剤、さらに接着促進剤のような任意成分を手作業で撹拌しながら添加した。温度が80℃に下がったところで、硬化剤を手作業で撹拌しながら添加した。
【0118】
容器の内容物を室温の浅いアルミニウム製パンに注いで高温の液体を急冷した。数分以内に、急冷組成物中で結晶性スフェルライトが生成し、成長した。比較例1−2及び実施例12−24の各々で約80gの組成物が生成した。各組成物の約71.2gを細かく砕いて、以下の通り充填材及び難燃剤をコンパウンディングした。実施例15及び実施例16は難燃剤を含んでいなかった。
【0119】
充填材は溶融シリカ(上述のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで処理したFB 570とSFP 30Mの混合物)である。充填材をヘンシェルミキサ中で難燃剤OP 1311(メラミンポリホスフェートとアルミニウムジエチルホスフィネートの混合物、CLARIANT社)と室温で混合した。次に、充填材混合物を約2等分した。
【0120】
充填材混合物の第1の部分を、ローラー撹拌翼を装着し80rpmで作動させたBrabenderミキシングボウルに注いだ。ボウル温度は約80℃である。次に、メタクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチルフェニレン)エーテル、反応性モノマー組成物、任意成分の接着促進剤(SMA)及びt−ブチルカテコール成分の粉砕混合物約71.2gをBrabenderミキサーに仕込み、直後に充填材混合物の第2の部分を仕込んだ。合計混合時間は約5分である。得られた充填材組成物の量は約540gであった。
【0121】
比較例1〜2及び実施例12〜24で用いた成分を表4にまとめた。
【0122】
【表4】

反応性モノマー組成物は、2種以上の反応性モノマーが存在する場合は、各サンプル中に存在するすべての反応性モノマーの合計重量である。比較例1〜4及び実施例12〜24の組成物について、反応性モノマー組成物の総量に対する様々な反応性モノマーの各重量%量を以下の表5にまとめた。
【0123】
【表5】

比較例1〜4及び実施例12〜24の組成物の様々な特性を測定し、以下の表6にまとめた。
【0124】
【表6】

表6に示す結果の対比に際して、ショアD硬度が約20ショアD超の室温ペレットは固体とみなす。表に示す通り、実施例13〜14、18及び24はすべてショアD硬度値が30を超えた。したがって、実施例13〜14、18及び24は室温付近で固体であるとみなされる。
【0125】
このように、すべてのサンプルは室温で液体の材料を少なくとも若干含んでいるが、サンプルの少なくとも幾つかは室温固体とすることができる。さらに、実施例の少なくとも幾つかは室温で不粘着性である。
【0126】
実施例25〜30:室温固体反応性モノマー組成物
実施例25〜30では、用いた反応性モノマー組成物がすべて室温固体材料であることを実証する。実施例12〜24の記載と同様に組成物を調製した。以下のそれぞれの表に成分及び量を示す。
【0127】
実施例25
【0128】
【表7】

実施例26
【0129】
【表8】

実施例27
【0130】
【表9】

実施例28
【0131】
【表10】

実施例29
【0132】
【表11】

実施例30
実施例30は、ガラス状固形メタクリレートを室温結晶質の材料と併用した例である。この組成物は、以下の成分を実施例12〜24と同様に混合して調製した。
【0133】
【表12】

実施例25〜30をプレスしてペレットとし、それらの硬度を測定した。また、それらを150℃でトランスファー成形し、スパイラルフロー値を測定した。表13に結果を示す。
【0134】
【表13】

室温での硬度が約20ショアD超のペレットは固体であるとみなした。表に示す通り、実施例25〜30すべてでショアD硬度は30又は50を超えた。したがって、実施例25〜30は室温固体であった。
【0135】
以上の実施例は単に例示にすぎず、本発明の特徴の幾つかを説明するためのものにすぎない。特許請求の範囲は、想到した範囲の本発明を請求することであって、本明細書で示す実施例は、可能なあらゆる実施形態から選んだ実施形態を例示したものである。したがって、特許請求の範囲は本発明の特徴の説明に用いた実施例の選択によって限定されるものではない。本願の特許請求の範囲で用いる「含む」という用語及びその文法的変形は、例えば、特に限定されないが「から実質的になる」及び「からなる」のような範囲の種々異なる用語も包含する。必要に応じて範囲を記載したが、これらの範囲はあらゆる部分範囲を包含する。このような範囲内での変更は、当業者には明らかであり、既に公知でない限り、特許請求の範囲に属する。また、科学技術の進歩によって、現時点での用語が定まっていないために記載していないものの均等及び置換も可能であると予想され、かかる変更も本願の特許請求の範囲に包含されるものと解される。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子アセンブリの部分切断斜視図。
【図2】図1の矢視2−2断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性封止剤組成物であって、
1種以上の反応性モノマーを含む反応性モノマー組成物と官能化ポリマーとの混合物を含んでいて、
反応性モノマーが室温固体であって反応性モノマー組成物の総重量を基準にして約20重量%を超える量で反応性モノマー組成物中に存在し、
混合物が低温付近で固体又は不粘着性或いは固体でしかも不粘着性である組成物。
【請求項2】
前記官能化ポリマーがポリ(アリーレン)エーテルを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリ(アリーレン)エーテルが1種以上の封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を含む、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリ(アリーレン)エーテルが1種以上の環官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含む、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリ(アリーレン)エーテルが1種以上の酸又は酸無水物官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含む、請求項2記載の組成物。
【請求項6】
前記官能化ポリマーが官能化ポリマーと反応性モノマー組成物の組合せの総重量を基準にして、約10重量%〜約90重量%の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記官能化ポリマーが官能化ポリマーと反応性モノマー組成物の組合せの総重量を基準にして、約10重量%〜約50重量%の量で存在する、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記官能化ポリマーが官能化ポリマーと反応性モノマー組成物の組合せの総重量を基準にして、約15重量%〜約25重量%の量で存在する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記反応性モノマー組成物が1以上のアルケニル基、アリル基、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、ビニルエーテル基、ビニルケトン基又はシンナミル基を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記反応性モノマー組成物がトリアリルオキシトリアジン、ビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]テレフタレート、ビフェノールジメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールジアクリレート、4−ビフェニルメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、1,5−ジメタクリロイルナフタレン、エトキシル化(2)ビスフェノールAジメタクリレート、スルホニルジフェノールジメタクリレート、テトラメチルビスフェノールAジメタクリレート、又はテトラメチルビフェノールジメタクリレートの1種以上を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記反応性モノマー組成物が約24℃〜約175℃の範囲内に融点又は軟化点の少なくともいずれかを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
重合阻害剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
開始剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記開始剤がラジカル開始剤を含む、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記混合物が約25℃〜約50℃の温度で固体又は不粘着性或いは固体でしかも不粘着性である、請求項1に載の組成物。
【請求項16】
溶融シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、二酸化チタン、二ホウ化チタン、タルク、フライアッシュ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、酸化亜鉛又はグラファイトの1種以上を含む充填材を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
前記充填材がシラザン又はシラン又はシラザンとシランで処理されている、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記充填材が球状粒子を含む、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
当該硬化性封止剤組成物が約1MPa及び約150℃で約40.5インチを超えるスパイラルフロー長を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
前記官能化ポリマーが、分子量の異なる複数の官能化ポリマー部分を含んでいて、各官能化ポリマー部分が独立に充分量で存在し、しかもかかる官能化ポリマーを含まない組成物に比して、当該組成物のトランスファー成形時の流動性を高めるのに充分低い固有粘度、又は当該組成物が不粘着性を保持し得る温度閾値を高めるのに充分低い固有粘度の少なくともいずれかの固有粘度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
請求項1記載の硬化性封止剤組成物を含む、硬化封止剤。
【請求項22】
硬化封止剤がASTM D2240に準拠して1秒で測定して約20ショアD硬度を超える硬さを有する、請求項21記載の硬化封止剤。
【請求項23】
硬化封止剤がASTM D2240に準拠して1秒で測定して約43〜約25ショアD硬度の硬度を有する、請求項22記載の硬化封止剤。
【請求項24】
請求項22記載の硬化封止剤を含んでなるペレット。
【請求項25】
ASTM D2240に準拠して1秒で測定して約50を超えるショアD硬度を有する、請求項24記載のペレット。
【請求項26】
回路又はダイを封止する組成物を含んでなる電子デバイスであって、組成物が官能化ポリマーと反応性モノマー組成物との混合物を含んでいて、反応性モノマー組成物が室温固体であって反応性モノマー組成物の総重量を基準にして約20重量%を超える量で反応性モノマー組成物中に存在する反応性モノマーを含んでいて、混合物が室温付近で固体又は不粘着性或いは固体でしかも不粘着性である電子デバイス。
【請求項27】
封止剤の製造方法であって、
低温で固体であって反応性モノマー組成物の総重量を基準にして約20重量%を超える量で反応性モノマー組成物中に存在する1種以上の反応性モノマー成分を含む反応性モノマー組成物と官能化ポリマーとを混合し、
官能化ポリマーと反応性モノマー組成物との混合物を軟化又は液化させるのに充分な温度に加熱し、
軟化又は液化混合物を冷却して、室温付近で固体又は不粘着性或いは固体でしかも不粘着性である封止剤組成物を形成する
ことを含んでなる方法。
【請求項28】
冷却前に充填材、重合阻害剤、開始剤、熱伝導性材料又は難燃剤の1種以上を軟化又は液化混合物に混合する工程、又は冷却後に充填材、重合阻害剤、開始剤、熱伝導材又は難燃剤の1種以上を封止剤組成物に混合する工程の少なくともいずれかの工程を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記官能化ポリマーが官能化ポリマーと反応性モノマー組成物との混合物の総重量を基準にして、約15重量%〜約25重量%の量で存在する、請求項27記載の方法。
【請求項30】
加熱工程が約50℃〜約110℃の温度となるまで組成物に熱エネルギーを加えることを含む、請求項27記載の方法。
【請求項31】
電子デバイス又は光学デバイスの少なくとも一部を封止する方法であって、
低温で固体であって反応性モノマー組成物の総重量を基準にして約20重量%を超える量で反応性モノマー組成物中に存在する反応性モノマーを含む反応性モノマー組成物と官能化ポリマーとの混合物を含んでいて、低温で固体又は不粘着性或いは固体でしかも不粘着性のペレット又は粉体の少なくとも一部を溶融し、
溶融部分を流動させて電子デバイス又は光学デバイスの一部と接触させる
ことを含んでなる方法。
【請求項32】
溶融部分を硬化して、電子デバイス又は光学デバイスの少なくとも一部を封止することを含む、請求項31記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−524867(P2008−524867A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548225(P2007−548225)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/041095
【国際公開番号】WO2006/068728
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【復代理人】
【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫
【復代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
【復代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
【復代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
【復代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
【復代理人】
【識別番号】100075236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 忠彦
【復代理人】
【識別番号】100094008
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本 一暁
【復代理人】
【識別番号】100147577
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏志
【復代理人】
【識別番号】100153187
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 由美子
【Fターム(参考)】