説明

硬化性樹脂組成物およびプリプレグならびに銅張積層板

【課題】 銅箔との接着力に優れ、低い誘電率、誘電正接、高いカガラス転移温度を有する硬化物を与える硬化性樹脂組成物、およびこれを用いたプリプレグ、銅張積層板を提供する。
【解決手段】 分子内にポリフェニレンエーテル骨格を有する2官能性フェニレンエーテルオリゴマーの末端をビニル化した特定のビニル合物と、特定の構造のシラン化合物を含有する硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電特性、耐熱性に優れ、銅箔との接着力に優れる硬化物が得られる硬化性樹脂組成物に関するものであり、該樹脂組成物を硬化させた硬化物、該樹脂組成物を用いたプリプレグ、銅張積層板に関する。本発明の硬化性樹脂組成物はプリント配線板用樹脂、半導体用封止樹脂、半導体用層間絶縁材料、電子部品の絶縁材料等の電子材料分野で好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
従来、硬化性樹脂は、接着、注型、コーティング、含浸、積層、成形コンパウンドなど幅広く利用されている。しかしながら、その用途は多岐にわたり、使用環境や使用条件によっては、従来から知られている硬化性樹脂では満足できない場合がある。
情報通信・計算機の分野においては、例えば、PHS、携帯電話等の情報通信機器の信号帯域、コンピューターのCPUクロック周波数はGHz帯に達し、絶縁体による電気信号の減衰を抑制するために絶縁体には誘電率及び誘電正接の小さな材料が求められている。これらの材料としては、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂等が提案されている。(例えば特許文献1、2、3、4参照)。
しかしながら、これらの材料は低誘電特性には優れるものの、誘電特性以外の耐熱性、耐薬品性、機械特性等の電子材料として必要な諸物性についてはかならずしもすべての要求を満たしているわけではない。
例えば、プリント配線板、半導体パッケージの分野においては、近年の鉛フリー半田の導入により半田実装時の温度が上昇し、より高い実装信頼性を確保するためにプリント配線板、半導体パッケージ、電子部品の構成材料に対して高耐熱性、低吸水特性、低熱膨張性、等が要求されている。また、高密度化によりプリント配線板の配線幅は減少傾向にあり、信頼性確保の観点より銅箔と樹脂との高い接着性が要望されている。高周波対応プリント配線板においては、電気信号の減衰を抑制するために粗化面(マット面)の表面凹凸が小さい銅箔が使用される傾向にあり、表面凹凸が小さくなると銅箔と樹脂との密着性は低下する。銅箔の表面処理による接着性改善検討もなされている(特許文献5、6参照)が、さらなる接着力向上の要求により、樹脂側にも改善が求められている。
本発明者等は、絶縁材料用樹脂としての上記低誘電特性、耐熱性、耐薬品性、低吸水特性等の要求に応えるべく、2官能性フェニレンエーテルオリゴマーのビニル化合物誘導体ならびに該誘導体を用いた硬化性樹脂組成物を開発してきた(例えば特許文献7、8、9参照)。しかしながら、該誘導体の硬化物は低誘電特性と耐熱性には優れるものの、高周波用プリント配線板で用いられる表面凹凸の小さな銅箔を用いた場合に接着力が低いという問題があり、改善が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開平7-188362号公報
【特許文献2】特開2004-83680号公報
【特許文献3】特許3414556号公報
【特許文献4】特開2003-306591号公報
【特許文献5】特開2006-210689号公報
【特許文献6】特開2007-30326号公報
【特許文献7】特開2004-59644号公報
【特許文献8】特開2006-83364号公報
【特許文献9】特開2005-60635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低誘電率、低誘電正接で、耐熱性に優れた硬化物を与え、粗化面の表面凹凸が小さい銅箔との接着力が高い硬化性樹脂組成物、およびこれを用いたプリプレグ、およびこれらを硬化してなる硬化物、銅張積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、分子内にポリフェニレンエーテル骨格を有する2官能性フェニレンエーテルオリゴマーの末端ビニル化合物と、特定の構造を有するシラン化合物を組み合わせることで、低誘電率、低誘電正接、高Tg(ガラス転移温度)であり、かつ銅箔との接着性に優れる硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は一般式(1)で表されるビニル化合物(イ)および一般式(5)〜(9)で表されるシラン化合物(ロ)の1種又は2種以上を含有し、ビニル化合物(イ)100重量部に対してシラン化合物(ロ)が0.1〜10重量部の配合比である硬化性樹脂組成物に関する。
【化1】


(-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。硬化性樹脂組成物には、構造の異なる2種類以上のビニル化合物(イ)が混合されていてもよい。)
【化2】


(R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化3】


(R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化4】


(R17,R18は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化5】


(R21,R22,R23はメトキシ基またはエトキシ基を示す。)
【化6】


(R24,R25,R26はメトキシ基またはエトキシ基を示す。)
【化7】


(R27,R28,R29はメトキシ基またはエトキシ基を示す。)
【化8】


(R30,R31,R32はメトキシ基またはエトキシ基を示す。)
【化9】


(R33,R34,R35はメトキシ基またはエトキシ基を示す。)
【0006】
さらに本発明は、該樹脂組成物の溶液に関し、該樹脂組成物を基材に含浸させたプリプレグに関し、該プリプレグから得られる銅張積層板に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の硬化性樹脂組成物は低誘電特性、高耐熱性を有する硬化物が得られ、粗化面の表面凹凸が小さい銅箔との接着性に優れることから、高周波用プリント配線板の絶縁材料、ビルドアップ配線板材料、銅張積層板用材料、フレキシブル配線板用材料、半導体用絶縁材料、高周波部品用絶縁材料、接着剤、導電性ペースト、ソルダーレジスト、等の電子材料、電子部品を中心とした分野への応用が期待され、その工業上の意義は極めて大きいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の硬化性樹脂組成物に使用される一般式(1)で表されるビニル化合物(イ)とは、一般式(1)において、-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなり、R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、R4,R5,R6,R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基であり、-(Y-O)-は、一般式(4)で定義され、一般式(1)において1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列するものであり、R17,R18は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示すビニル化合物であれば、特に限定されない。また、硬化性樹脂組成物には、構造の異なる2種類以上のビニル化合物(イ)が混合されていてもよい。
【0009】
一般式(3)における-A-としては、例えば、メチレン、エチリデン、1-メチルエチリデン、1,1-プロピリデン、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1-フェニルエチリデン、等の2価の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
本発明におけるビニル化合物(イ)のなかでは、R1,R2,R3,R7,R8,R17,R18が炭素数3以下のアルキル基であり、R4,R5,R6,R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16,R19,R20が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であるビニル化合物が好ましく、特に一般式(2)または一般式(3)で表される-(O-X-O)-が、一般式(10)あるいは一般式(11)または一般式(12)であり、一般式(4)で表される-(Y-O)-が一般式(13)または一般式(14)あるいは一般式(13)と一般式(14)がランダムに配列した構造を有するビニル化合物であることがより好ましい。
【化10】


【化11】


(式中、R11,R12,R13,R14は、水素原子またはメチル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である)
【化12】


(-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である)
【化13】


【化14】

【0011】
ビニル化合物(イ)の数平均分子量は500〜3,000の範囲が好ましい。数平均分子量が500未満では、塗膜状にした際にべたつきが出やすく、また、3000を超えると、溶剤への溶解性が低下する。ビニル化合物(イ)の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、2官能フェノール化合物と1官能フェノール化合物を酸化カップリングさせて得られる2官能フェニレンエーテルオリゴマーの末端フェノール性水酸基をビニルベンジルエーテル化することで製造することができる。
【0012】
2官能フェニレンエーテルオリゴマーは、例えば、2官能フェノール化合物、1官能フェノール化合物、触媒を溶剤に溶解させた後、加熱攪拌下で酸素を吹き込むことで製造することができる。2官能フェノール化合物としては、例えば、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシ-2,2’-ジフェニルプロパン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。1官能フェノールとしては、2,6ジメチルフェノール、2,3,6トリメチルフェノール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。触媒としては、例えば、CuCl、CuBr、CuI、CuCl2、CuBr2等の銅塩類とジn-ブチルアミン、n-ブチルジメチルアミン、N,N’-ジt-ブチルエチレンジアミン、ピリジン、N,N,N'N’-テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール等のアミン類を組合せたものが使用できるが、これらに限定されるものではない。溶剤としては、例えば、トルエン、メタノール、メチルエチルケトン、キシレン、等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
2官能フェニレンエーテルオリゴマーの末端フェノール水酸基をビニルベンジルエーテル化する方法としては、例えば、2官能フェニレンエーテルオリゴマーとビニルベンジルクロライドを溶剤に溶解させ、加熱攪拌下で塩基を添加して反応させた後、樹脂を固形化することで製造できる。ビニルベンジルクロライドとしては、o-ビニルベンジルクロライド、m-ビニルベンジルクロライド、p-ビニルベンジルクロライド、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。反応後に余った塩基を中和するために酸を使用することもできる。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、りん酸、ホウ酸、硝酸、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。反応溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、塩化メチレン、クロロホルム等が使用できるが、これらに限定されるものではない。固形化の方法としては、溶剤をエバポレーションし乾固させる方法、反応液を貧溶剤と混合し再沈殿させる方法、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の硬化性樹脂組成物で使用される一般式(5)〜(9)で表されるシラン化合物(ロ)とは、一般式(5)〜(9)において、R21,R22,R23,R24,R25,R26,R27,R28,R29,R30,R31,R32,R33,R34,R35はメトキシ基またはエトキシ基を示す化合物である。例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、等が挙げられる。これらのなかでもR21〜R35はエトキシ基である化合物がより高い接着性が得られるため好ましい。
【0015】
本発明の硬化性樹脂組成物において、ビニル化合物(イ)とシラン化合物(ロ)の配合比は、好ましくはビニル化合物(イ)100重量部に対してシラン化合物(ロ)が0.1〜10重量部であり、さらに好ましくは、0.5〜5重量部である。シラン化合物(ロ)の配合量が多くなると硬化物の誘電正接が増大する傾向があり、配合量が少ないと所望の接着力が得られないことがある。
【0016】
本発明の硬化性樹脂組成物の配合方法には特に制限はないが、例えば、ビニル化合物(イ)、シラン化合物(ロ)を溶剤に溶解分散させ混合した後、溶剤を乾燥除去する方法、ビニル化合物(イ)、シラン化合物(ロ)をラボプラストミル等の混練機を用いて混合する方法、等が挙げられる。
【0017】
本発明の硬化性樹脂組成物は、それ自体を加熱することにより硬化させることが可能である。加熱条件としては、100〜250℃で0.1〜5時間加熱するのが好ましい。必要に応じて、雰囲気を窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気や減圧雰囲気にしたり、樹脂組成物を加圧したりすることもできる。さらに硬化速度を速くして作業性、経済性などを改善する目的で熱硬化触媒を添加することもできる。熱硬化触媒としては、ビニル基の重合を開始しうるカチオンまたはラジカル活性種を、熱または光によって生成するものが使用できる。例えば、カチオン重合開始剤としては、BF4、PF6、AsF6、SbF6を対アニオンとするジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩および脂肪族スルホニウム塩などが挙げられ、株式会社ADEKA製SP70、SP172、CP66、日本曹達株式会社製CI2855、CI2823、三新化学工業株式会社製SI100L、SI150L等の市販品を使用することができる。またラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチル等のベンゾイン系化合物、アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物、チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物、4,4’-ジアジドカルコン、2,6-ビス(4’-アジドベンザル)シクロヘキサノン、4,4’-ジアジドベンゾフェノン等のビスアジド化合物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビスプロパン、ヒドラゾン等のアゾ化合物、2,5-ジメチル-2.5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2.5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。これらの硬化触媒は単独または2種類以上を混合して用いることができる。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物には、保存安定性を増すために重合禁止剤を添加することもできる。重合禁止剤は一般に公知のものが使用でき、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、クロラニル、トリメチルキノン等のキノン類および芳香族ジオール類が挙げられる。これらは単独または2種類以上混合して用いることができる。
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物には、物性を調整するために、必要に応じて公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0020】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシ、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルベンゼン重合物、ジビニルナフタレン重合物、ヘキサメチルビフェノールのビニルベンジルエーテル等のビニル化合物、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、アリル化ビスフェノールA、アリル化ポリフェニレンエーテル、等のアリル化合物、ビスフェノールAジシアネート、テトラメチルビスフェノールFジシアネート、ビスフェノールMジシアネート、フェノールノボラックのシアネート化物等のシアネート樹脂、1,1’-(メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、2,2’-ビス-[4-(4-マレミドフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3'-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4'-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、N,N’-4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’-4,4-ジシクロヘキシルメタンビスマレイミド、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ブチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’-ジフェニルシクロヘキサンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、1,11-ビスマレイミドジエチレングリコール、1,4-ビス(4-マレイミドフェノキシ)エタン、1,4-ビス(4-マレイミドフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ブタン、1,4-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ヘキサン、トリス(4-マレイミドフェニル)アミン、ビス(4-マレイミドフェニル)メチルアミン、ビス(4-マレイミドフェニル)フェニルアミン、N,N’-4,4’-ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルスルフィドビスマレイミド、アニリン、ホルムアルデヒドおよび無水マレイン酸の重縮合物、ポリ(オキシ-1,4-ブタンジイル),α-[4-(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル)ベンゾイル]オキシ-ω-[[4-(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル)ベンゾイル]オキシ]-、等のマレイミド樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。これらは単独または2種類以上混合して用いることができる。
【0021】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリイソプレン、ポリエステル、ポリビニルブチラール、ポリブタジエン、スチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)、水添スチレンブタジエンスチレン共重合体(SEBS)、スチレンイソプレンスチレン共重合体(SIS)、水添スチレンイソプレンスチレン共重合体、スチレン(ブタジエン/イソプレン)スチレン共重合体、水添スチレン(ブタジエン/イソプレン)スチレン共重合体、等が挙げられる。
【0022】
本発明の硬化性樹脂組成物溶液について説明する。本発明の硬化性樹脂組成物溶液は本発明の硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解分散することで得ることができる。溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、等が挙げられるが、これらに限定されることはない。また、これらの溶剤は単独もしくは2種以上を混合して使用することができる。溶解する方法としては、例えば、攪拌装置を備えた容器に硬化性樹脂組成物と溶剤を配合し、加熱、攪拌する方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。加熱温度としては、30℃〜100℃が好ましい。
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物溶液は溶剤を乾燥して硬化性樹脂組成物を得るためのみならず、レジスト、プリプレグ等に用いることができ有用である。例えば、プリプレグは本発明の硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリエステル不織布等に含浸させて溶剤を乾燥除去することで得ることができる。該プリプレグは銅張積層板用材料とすることができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液は回路を作製した基板に塗布することでソルダーレジストやビルドアップ配線板の層間絶縁層として用いることもできる。
【0024】
次に、本発明の銅箔付き硬化性樹脂組成物について説明する。本発明の銅箔付き硬化性樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物を銅箔に塗布することで得られる。塗布する方法としては、例えば、硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等で銅箔上に塗布し、溶剤を乾燥する方法が挙げられる。
【0025】
溶剤を乾燥する際の乾燥条件は特に制限はないが、低温であると基材付き硬化性樹脂組成物中に溶剤が残り易く、高温で長時間乾燥すると樹脂組成物の硬化が一部進行することから、20℃〜170℃の温度で1〜60分間乾燥するのが好ましい。樹脂層の厚みは樹脂組成物溶液の濃度と塗布厚みにより調整することができるが、塗布厚みが厚くなると乾燥時に溶剤が残り易くなることから、0.1〜500μmが好ましい。
【0026】
本発明のプリプレグは、本発明の硬化性樹脂組成物を基材に含浸することで得られる。基材としては、ガラスクロス、アラミド織布、アラミド不織布、液晶ポリエステル不織布、炭素繊維織布、紙、等が挙げられる。プリプレグを作製する方法としては、硬化性樹脂組成物溶液を基材に含浸させた後、溶剤を乾燥する方法、硬化性樹脂組成物を溶融させて液状にした状態で基材に含浸させる方法、等が挙げられる。溶液を用いる場合は、20〜170℃の温度で1〜60分乾燥することが好ましい。
【0027】
本発明の銅張積層板は、本発明のプリプレグを1枚または複数枚重ね、その上下面または片面に銅箔を配置して、加圧加熱することで得られる。加熱加圧条件は、重合開始剤の使用の有無、他の熱硬化性樹脂の併用の有無によって異なるが、温度100〜250℃、0.1〜5時間加熱し、面圧0.1〜10MPaで加圧するのが好ましい。また、必要に応じて、加熱加圧時の雰囲気を窒素、アルゴン等の不活性ガスにしたり、減圧にしたりすることもできる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、測定方法は以下による。
1)数平均分子量及び重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。試料のGPC曲線と分子量校正曲線よりデータ処理を行った。分子量校正曲線は、標準ポリスチレンの分子量と溶出時間の関係を次の式に近似して得た。 LogM = A0X3+ A1X2 + A2X + A3 + A4/X2(ここでM:分子量、X:溶出時間−19(分)、A:係数である。)
2)水酸基当量は、2,6-ジメチルフェノールを標準物質とし、溶媒に乾燥ジクロロメタンを使用してIR分析(液セル法;セル長=1mm)を行い、3,600cm-1の吸収強度より求めた。
3)ビニル基当量は、1-オクテンを標準物質とし、溶剤に二硫化炭素を使用してIR分析(液セル法:セル長=1mm)を行い、910 cm-1の吸収強度より求めた。
4)銅箔剥離強度は、JIS C-6481に基づき測定した。25mm巾の試験片上に10mmX100mmの銅箔パターンを作製し、50mm/分の速度で角度90°の剥離強度を測定した。
5)ガラス転移温度(Tg)は、DMA法により、周波数10Hz、振幅10μm、昇温5℃/分の条件で測定し、tanδのピークトップを算出した。
6)誘電率、誘電正接は、空胴共振摂動法により2GHzでの値を測定した。
7)耐ミーズリング性は、50mmX50mmの大きさで銅箔をエッチングにより除去した銅張積層板を、プレッシャークッカーを用いて121℃2気圧の条件で3時間処理した後、260℃の半田浴に1分間浸漬し、膨れ、ミーズリング、層間剥離の有無を目視にて観察した。(○:膨れ、ミーズリング、層間剥離なし、×:膨れ、ミーズリング、層間剥離あり)
【0029】
合成例1
(2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体の合成)
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr23.88g(17.4mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.75g(4.4mmol)、n-ブチルジメチルアミン28.04g(277.6mmol)、トルエン 2,600gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ2,300gのメタノールに溶解させた2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール 129.32g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール292.19g(2.40mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.51g(2.9mmol)、n-ブチルジメチルアミン10.90g(108.0mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2 L/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、攪拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム19.89g(52.3mmol)を溶解した水1,500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50wt%に濃縮し、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(樹脂「A」)のトルエン溶液を833.40g得た。樹脂「A」の数平均分子量は930、重量平均分子量は1,460、水酸基当量が465であった。
(ビニル化合物の合成)
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に樹脂「A」のトルエン溶液833.40g、ビニルベンジルクロライド(商品名CMS-P;セイミケミカル株式会社製)160.80g、塩化メチレン1600g、ベンジルジメチルアミン12.95g、純水420g、30.5wt% NaOH水溶液175.9gを仕込み、反応温度40℃で攪拌を行った。24時間攪拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥してビニル化合物「B」501.43gを得た。ビニル化合物「B」の数平均分子量は1165、重量平均分子量は1630、ビニル基当量は595g/ビニル基であった。
【0030】
合成例2
(2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体の合成)
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr29.36g(42.1mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン1.81g(10.5mmol)、n-ブチルジメチルアミン67.77g(671.0mmol)、トルエン 2,600gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ2,300gのメタノールに溶解させた2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール 129.32g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール878.4g(7.2mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン1.22g(7.2mmol)、n-ブチルジメチルアミン26.35g(260.9mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2 L/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、攪拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム48.06g(126.4mmol)を溶解した水1,500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50wt%に濃縮し、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(樹脂「C」)のトルエン溶液を1981g得た。樹脂「C」の数平均分子量は1975、重量平均分子量は3514、水酸基当量が990であった。
(ビニル化合物の合成)
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に樹脂「C」のトルエン溶液833.40g、ビニルベンジルクロライド(CMS-P)76.7g、塩化メチレン1600g、ベンジルジメチルアミン6.2g、純水199.5g、30.5wt% NaOH水溶液83.6gを仕込み、反応温度40℃で攪拌を行った。24時間攪拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥してビニル化合物「D」450.1gを得た。ビニル化合物「D」の数平均分子量は2250、重量平均分子量は3920、ビニル基当量は1189g/ビニル基であった。
【0031】
合成例3
(2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体の合成)
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuCl13.1g(0.12mol)、ジ-n-ブチルアミン707.0g(5.5mol)、メチルエチルケトン4000gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ8000gのメチルエチルケトンに溶解させた4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)410.2g(1.6mol)と2,6-ジメチルフェノール586.5g(4.8mol)を2 L/minの空気のバブリングを続けながら撹拌を行った。これに、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した。その後、1Nの塩酸水溶液で3回洗浄を行った後、イオン交換水で洗浄を行った。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行い、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(樹脂「E」)を946.6g得た。樹脂「E」の数平均分子量は801、重量平均分子量は1081、水酸基当量が455であった。
(ビニル化合物の合成)
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に樹脂「E」480.0g、ビニルベンジルクロライド(CMS-P)260.2g、テトラヒドロフラン2000g、炭酸カリウム240.1g、18-クラウン-6-エーテル60.0gをし込み、反応温度30℃で攪拌を行った。6時間攪拌を行った後、エバポレーターで濃縮し、トルエン2000gで希釈、水洗を行った。有機層を濃縮しメタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥してビニル化合物「F」392.2gを得た。ビニル化合物「F」の数平均分子量は988、重量平均分子量は1420、ビニル基当量は588g/ビニル基であった。
【0032】
合成例4
(2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体の合成)
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuCl13.1g(0.12mol)、ジ-n-ブチルアミン707.0g(5.5mol)、メチルエチルケトン4000gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ8000gのメチルエチルケトンに溶解させた4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)82.1g(0.32mol)と2,6-ジメチルフェノール586.5g(4.8mol)を2 L/minの空気のバブリングを続けながら撹拌を行った。これに、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した。その後、1Nの塩酸水溶液で3回洗浄を行った後、イオン交換水で洗浄を行った。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行い、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(樹脂「G」)を632.5g得た。樹脂「G」の数平均分子量は1884、重量平均分子量は3763、水酸基当量が840であった。
(ビニル化合物の合成)
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に樹脂「G」480.0g、ビニルベンジルクロライド(CMS-P)140.5g、テトラヒドロフラン2000g、炭酸カリウム129.6g、18-クラウン-6-エーテル32.4gをし込み、反応温度30℃で攪拌を行った。6時間攪拌を行った後、エバポレーターで濃縮し、トルエン2000gで希釈、水洗を行った。有機層を濃縮しメタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥してビニル化合物「H」415.3gを得た。ビニル化合物「H」の数平均分子量は2128、重量平均分子量は4021、ビニル基当量は1205g/ビニル基であった。
【0033】
合成例5
(2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体の合成)
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた2Lの縦長反応器に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA )18.0g(78.8mmol)、CuBr2 0.172g(0.77mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.199g(1.15mmol)、n-ブチルジメチルアミン2.10g(2.07mmol)、メタノール139g、トルエン 279gを仕込み、液温を40℃にして攪拌した状態の反応器の中へ、メタノール133gとトルエン266gに溶解させた2,6-ジメチルフェノール48.17g(0.394mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.245g(1.44mmol)、n-ブチルジメチルアミン2.628g(25.9mmol)の混合溶液を、空気を0.5 L/minの流速でバブリングを行いながら132分かけて滴下し、滴下終了後さらに120分攪拌を行った。反応終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム2.40gを溶解した水400gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、さらに120℃で3時間真空乾燥して、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(樹脂「I」)を54.8gを得た。樹脂「I」の数平均分子量は1348、重量平均分子量は3267、水酸基当量が503であった。
(ビニル化合物の合成)
攪拌装置、温度計、還流管、滴下ロートを備えた1Lセパラブルフラスコに樹脂「I」25.0g、ビニルベンジルクロライド(商品名CMS-P;セイミケミカル株式会社製)8.69g、ジメチルホルムアミド100.0gを仕込み、50℃に加温して攪拌した状態で、28wt%ナトリウムメトキサイド(メタノール溶液)10.91gを滴下ロートより20分かけて滴下した。滴下終了後、50℃でさらに1時間攪拌した。反応器に28wt%ナトリムメトキサイド(メタノール溶液)1.99gを加え、60℃に加温して3時間攪拌した。さらに、85wt%燐酸1.11gを反応器に加え、10分攪拌した後、40℃まで冷却し、反応液を純水150g中に滴下して固形化した。固体を吸引濾過した後、純水200gで2回、メタノール200gで3回洗浄し、60℃30時間真空乾燥してビニル化合物「J」28.25gを得た。ビニル化合物「J」の数平均分子量は1435、重量平均分子量は3158、ビニル基当量は612g/ビニル基であった。
【0034】
合成例6
(2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体の合成)
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr23.88g(17.4mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.75g(4.4mmol)、n-ブチルジメチルアミン28.04g(277.6mmol)、トルエン 2,600gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ2,300gのメタノールに溶解させた2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール 129.3g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール233.7g(1.92mol)、2,3,6-トリメチルフェノール 64.9g(0.48mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.51g(2.9mmol)、n-ブチルジメチルアミン10.90g(108.0mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2 L/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、攪拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム19.89g(52.3mmol)を溶解した水1,500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50wt%に濃縮し、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(樹脂「K」)のトルエン溶液を836.5g得た。樹脂「K」の数平均分子量は986、重量平均分子量は1,530、水酸基当量が471であった。
(ビニル化合物の合成)
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に樹脂「K」のトルエン溶液836.5g、ビニルベンジルクロライド(商品名CMS-P;セイミケミカル株式会社製)162.6g、塩化メチレン1600g、ベンジルジメチルアミン12.95g、純水420g、30.5wt% NaOH水溶液178.0gを仕込み、反応温度40℃で攪拌を行った。24時間攪拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥してビニル化合物「L」503.5gを得た。ビニル化合物「L」の数平均分子量は1187、重量平均分子量は1675、ビニル基当量は590g/ビニル基であった。
【0035】
実施例1〜9および比較例1〜6
合成例1で得られたビニル化合物「B」を、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに秤量し、固形分濃度が50wt%となるようにトルエンを加えて60℃に加熱して1時間攪拌し、室温まで冷却した後、各種シラン化合物をビニル化合物100重量部に対して表1の割合で添加、攪拌混合して硬化性樹脂組成物の溶液を調整した。調整した溶液をドクターブレード(隙間200μm)で、12μm厚の電解銅箔(3EC-VLP:三井金属鉱業株式会社製)のマット面(粗化面)上に塗布、室温で10分風乾後、送風乾燥機で80℃、5分乾燥して、樹脂層の厚み約30μmの銅箔付き硬化性樹脂組成物を得た。次に、銅箔付き硬化性樹脂組成物を、両面にライン/スペース=100μm/100μmのパターンを施したコア材(EL190、銅箔厚み18μm、三菱ガス化学(株)製)の両面に重ね、昇温3℃/分、200℃90分保持、面圧2MPa、減圧度50mmHgの条件で加圧加熱して4層板を作製した。得られた4層板の最外層の銅箔剥離強度を測定した結果を表1に示す。
【0036】
【表1】


3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:KBM403、信越化学工業株式会社製
3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン:KBE403、信越化学工業株式会社製
3-アミノプロピルトリメトキシシラン:KBM903、信越化学工業株式会社製
3-アミノプロピルトリエトキシシラン:KBE903、信越化学工業株式会社製
3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン:KBE9103、信越化学工業株式会社製
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン:KBM603、信越化学工業株式会社製
3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン:KBM5103、信越化学工業株式会社製
ビニルトリメトキシシラン:KBM1003、信越化学工業株式会社製
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン:KBM303、信越化学工業株式会社製
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:KBM503、信越化学工業株式会社製
3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン:KBM9007、信越化学工業株式会社製
N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン:KBM573、信越化学工業株式会社製
【0037】
実施例1〜9、比較例1〜6により、フェニレンエーテル骨格を有するビニル化合物と特定の構造を有するシラン化合物を組み合わせることにより、銅箔との接着力が格段に向上することが分かる。
【0038】
実施例10〜34、比較例7〜11
合成例2〜6で得られたビニル化合物「D」、「F」、「H」、「J」、「L」を、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに秤量し、固形分濃度が50wt%となるようにトルエンを加えて60℃に加熱して1時間攪拌し、室温まで冷却した後、各種シラン化合物をビニル化合物100重量部に対して表2の割合で添加、攪拌混合して硬化性樹脂組成物の溶液を調整した。調整した溶液をバーコーター(隙間200μm)で、両面にライン/スペース=100μm/100μmのパターンを施したコア材(EL190、銅箔厚み18μm、三菱ガス化学(株)製)上に塗布、室温で10分風乾後、送風乾燥機で80℃、5分乾燥して、両面に12μm厚の電解銅箔(3EC-VLP:三井金属鉱業株式会社製)をマット面(粗化面)が内側になるように重ね、昇温3℃/分、200℃90分保持、面圧2MPa、減圧度50mmHgの条件で加圧加熱して4層板を作製した。得られた4層板の最外層の銅箔剥離強度を測定した結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
実施例10〜34、比較例7〜11より、フェニレンエーテル骨格を有するビニル化合物の分子量、骨格を変更しても、特定のシラン化合物を組み合わせた場合に銅箔との接着力が格段に向上することが分かる。
【0041】
実施例35〜44、比較例12、13
合成例で得られたビニル化合物「B」、「D」を、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに秤量し、固形分濃度が45wt%となるようにトルエンを加えて60℃に加熱して1時間攪拌し、室温まで冷却した後、ビニル化合物100重量部に対して各種シラン化合物を表3の割合で添加、攪拌混合して硬化性樹脂組成物の溶液を調整した。この溶液をEガラスクロス(1031NT:株式会社有沢製作所製)を含浸させ、室温で5分間、150℃で3分間乾燥してプリプレグを作製した。得られたプリプレグの樹脂量は40〜42wt%であった。得られたプリプレグを4枚重ね、上下面に12μm厚の電解銅箔(3EC-VLP:三井金属鉱業株式会社製)をマット面(粗化面)がプリプレグ側になるように重ね、3℃/分で昇温し、温度200℃、圧力2MPaの条件で1.5時間加熱加圧硬化し両面銅張積層板を作成した。得られた銅張積層板の銅箔剥離強度、ガラス転移温度、誘電率、誘電正接、耐ミーズリング性を評価した結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
実施例35〜44、比較例12、13より、フェニレンエーテル骨格を有するビニル化合物と特定の構造を有するシラン化合物を組み合わせることで、銅箔ピール強度、耐熱性、低誘電特性、耐ミーズリング性に優れる銅張積層板が得られることが分かる。
【0044】
実施例45〜47および比較例14〜16
合成例1で得られたビニル化合物「B」を、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに秤量し、固形分濃度が50wt%となるようにトルエンを加えて60℃に加熱して1時間攪拌し、室温まで冷却した後、各種シラン化合物をビニル化合物100重量部に対して表4の割合で添加、攪拌混合して硬化性樹脂組成物の溶液を調整した。調整した溶液をドクターブレード(隙間200μm)で、銅箔をエッチングにより除去した積層板(HL830、銅箔厚み12μm、三菱ガス化学(株)製)上に塗布、室温で10分風乾後、送風乾燥機で80℃、5分乾燥して、両面に12μm厚の電解銅箔をマット面(粗化面)が内側になるように重ね、昇温3℃/分、200℃90分保持、面圧2MPa、減圧度50mmHgの条件で加圧加熱して4層板を作製した。得られた4層板の最外層の銅箔剥離強度を測定した結果を表4に示す。
【0045】
【表4】


3EC-VLP:三井金属鉱業株式会社製、Rz=3.6μm
LP:株式会社日鉱マテリアルズ製、Rz=3.5μm
F3-WS:古河サーキットフォイル株式会社製、Rz=2.4μm
【0046】
実施例45〜47、比較例14〜16より、銅箔種を変更しても、フェニレンエーテル骨格を有するビニル化合物と特定のシラン化合物を組み合わせた樹脂組成物は銅箔との接着力が格段に向上することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるビニル化合物(イ)および一般式(5)〜(9)で表されるシラン化合物(ロ)の1種又は2種以上を含有し、ビニル化合物(イ)100重量部に対してシラン化合物(ロ)が0.1〜10重量部の配合比である硬化性樹脂組成物。
【化1】


(-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。硬化性樹脂組成物には、構造の異なる2種類以上のビニル化合物(イ)が混合されていてもよい。)
【化2】


(R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化3】


(R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化4】


(R17,R18は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化5】


(R21,R22,R23はメトキシ基またはエトキシ基を示す。)
【化6】


(R24,R25,R26はメトキシ基またはエトキシ基を示す。)
【化7】


(R27,R28,R29はメトキシ基またはエトキシ基を示す。)
【化8】


(R30,R31,R32はメトキシ基またはエトキシ基を示す。)
【化9】


(R33,R34,R35はメトキシ基またはエトキシ基を示す。)
【請求項2】
ビニル化合物(イ)が、-(O-X-O)-が一般式(10)、一般式(11)または一般式(12)であり、-(Y-O)-が一般式(13)または一般式(14)あるいは一般式(13)と一般式(14)がランダムに配列した構造を有するビニル化合物である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【化10】


【化11】


(R11,R12,R13,R14は、水素原子またはメチル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である)
【化12】


(-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である)
【化13】


【化14】

【請求項3】
ビニル化合物(イ)の数平均分子量が500〜3000である請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解分散させた硬化性樹脂組成物溶液。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を基材に含浸して、または請求項4記載の硬化性樹脂組成物溶液を基材に含浸後、溶剤を乾燥して得られるプリプレグ。
【請求項6】
請求項5記載のプリプレグを1枚または複数枚重ね、さらにその上下面または片面に銅箔を積層し、加熱加圧して得られる銅張積層板。

【公開番号】特開2009−179730(P2009−179730A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20568(P2008−20568)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】