説明

硬化性樹脂組成物および回路基板用絶縁膜

【課題】配線埋め込み性と接続信頼性に優れる回路基板用絶縁膜を与えることができる、流動性と応力の緩和作用に優れる硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】重合体組成物および硬化剤を含んでなる硬化性樹脂組成物であって、重合体組成物が、全繰り返し単位中に、3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を51モル%以上含有し、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位を1〜60モル%含有するノルボルネン系開環重合体またはその水素添加物である重合体(A)と、全繰り返し単位中に、2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を51モル%以上含有し、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位を1〜60モル%含有するノルボルネン系開環重合体またはその水素添加物である重合体(B)と、からなるものである硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、流動性と応力の緩和作用に優れ、特に回路基板の絶縁膜用として好適に用いられる硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、多機能化、通信高速化などの追求に伴い、電子機器に用いられる回路基板には高密度化が要求されており、そのため回路基板の多層化が図られている。多層回路基板は、通常、電気絶縁層とその表面に形成された導体層とからなる内層基板の上に、電気絶縁層を積層し、この電気絶縁層の上に導体層を形成させ、さらにその上に電気絶縁層の積層および導体層の形成を繰り返して形成される。また、配線層間の接続は通常ビアホールを介して行われる。
【0003】
このような多層回路基板の導体層が高密度のパターンである場合、電気絶縁層を形成するために用いられる絶縁膜には、低吸湿性や誘電特性に優れることが求められる。また、絶縁膜があまりに剛直なものであると、絶縁膜にストレスがかかることに起因して、絶縁膜上の配線やビアホールが破損してしまう場合がある。そのため、適度な弾性率を有することによる応力の緩和作用に優れ、配線やビアホールが破損しにくい、接続信頼性の高い絶縁膜が求められている。
【0004】
また、導体層に絶縁膜を積層する場合において、絶縁膜の導体層に対する配線埋め込み性が不十分であると、例えば導体層の配線間に気泡が残ることなどに起因して、加熱工程で導体層にフクレが生じたり、イオンマイグレーションによる故障が生じたりするおそれがあるため、それを防止すべく、絶縁膜には高い配線埋め込み性が求められている。
【0005】
このような要求に対し、例えば、特許文献1には、基材の配線パターン上に、ゴム系接着フィルムの低弾性率層と、片面銅箔付ポリイミドフィルムの高弾性率層とを積層した多層配線板が開示されている。また、特許文献2には、環状オレフィン系重合体などの環構造を有する重合体と、ポリイミド樹脂などの縮合型重合体とを夫々フィルムにして組み合わせる複合フィルムが開示されている。しかしながら、前者の絶縁膜では、応力の緩和作用に優れるが、低吸湿性や誘電特性が十分ではなかった。後者の絶縁膜については、低吸湿性や誘電特性に優れるが、配線埋め込み性が十分ではなく、また、更により高度な信頼性が求められてきている。
【0006】
特許文献3には、耐マイグレーション性があり、絶縁信頼性、接続信頼性が高く電気特性に優れた多層回路基板を製造する方法として、脂環式オレフィン重合体などの絶縁性重合体と硬化剤とを含有する硬化性組成物を硬化した電気絶縁層を形成して多層回路基板を製造する方法が、開示されている。特許文献4には、配線埋め込み性および表面平滑性に優れた電気絶縁層を形成する方法として、脂環式オレフィン重合体などの絶縁性重合体と硬化剤とを含有する硬化性組成物を硬化して電気絶縁層を形成する方法が開示されている。しかしながら、これらの電気絶縁層(絶縁膜)でも、接続信頼性と配線埋め込み性の両立という観点では、十分な性能を有するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−204169号公報
【特許文献2】特開平11−129399号公報
【特許文献3】特開2003−101231号公報
【特許文献4】特開2003−142825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、配線埋め込み性と接続信頼性に優れる回路基板用絶縁膜を与えることができる、流動性と応力の緩和作用に優れる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、それぞれ特定の割合で硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する、3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を主たる繰り返し単位とする比較的な剛直な重合体、および2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を主たる繰り返し単位とする比較的な柔軟な重合体を混合して、さらに硬化剤を配合して得られる硬化性樹脂組成物が、低吸湿性や誘電特性に優れ、さらには、流動性と応力の緩和作用に優れることを見出した。そして、その硬化性樹脂組成物から回路基板用絶縁膜を得ることにより、配線埋め込み性と接続信頼性に高い回路基板用絶縁膜が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0010】
かくして、本発明によれば、重合体組成物および硬化剤を含んでなる硬化性樹脂組成物であって、重合体組成物が、全繰り返し単位中に、3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を51モル%以上含有し、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位を1〜60モル%含有するノルボルネン系開環重合体またはその水素添加物である重合体(A)と、全繰り返し単位中に、2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を51モル%以上含有し、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位を1〜60モル%含有するノルボルネン系開環重合体またはその水素添加物である重合体(B)と、からなるものである硬化性樹脂組成物が提供される。
【0011】
上記の硬化性樹脂組成物は、重合体組成物における重合体(A)と重合体(B)との重量比(A/B)が、10/90〜90/10の範囲であることが好ましい。
【0012】
上記の硬化性樹脂組成物は、重合体(A)および重合体(B)の硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基が、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、およびヒドロキシフェニル基から選択されるものであることが好ましい。
【0013】
上記の硬化性樹脂組成物は、回路基板の絶縁膜用であることが好ましい。
【0014】
また、本発明によれば、上記の硬化性樹脂組成物を硬化してなる回路基板用絶縁膜が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配線埋め込み性と接続信頼性に優れる回路基板用絶縁膜を与えることができる、流動性と応力の緩和作用に優れる硬化性樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合体(A)と重合体(B)とからなる重合体組成物および硬化剤を含んでなる硬化性樹脂組成物である。本発明の硬化性樹脂組成物で用いられる重合体組成物を構成する重合体(A)は、3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を51モル%以上含有し、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位を1〜60モル%含有するノルボルネン系開環重合体またはその水素添加物である。
【0017】
本発明で用いる重合体(A)は、3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を主たる繰り返し単位として含有する比較的剛直なノルボルネン系開環重合体またはその水素添加物であり、後述する硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位特定量含有するものである。重合体(A)を構成する3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位は、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有さない3環以上のノルボルネン系単量体と硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する3環以上のノルボルネン系単量体とのいずれを用いたものであってよく、これらを組み合わせて用いても良い。
【0018】
3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を構成するために用いられる3環以上のノルボルネン系単量体としては、ジシクロペンタジエン、トリシクロ[4.3.12,5.0]デカ−3−エン、トリシクロ[4.4.12,5.0]ウンダ−3−エン、テトラシクロ[6.5.12,5.01,6.08,13]トリデカ−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[6.6.12,5.01,6.08,13]テトラデカ−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンともいう)、テトラシクロドデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセン、8−メチリデンテトラシクロドデセン、8−エチリデンテトラシクロドデセン、8−ビニルテトラシクロドデセン、8−プロペニルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8−シクロペンテニルテトラシクロドデセン、8−フェニルテトラシクロドデセン、8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸無水物、8−シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミド、8−トリメトキシシリルテトラシクロドデセン、ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチルヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−エチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−ビニルヘキサシクロヘプタデセン、12−プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセン、12−フェニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル−12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセン、12−カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸無水物、12−シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸イミド、12−クロロヘキサシクロヘプタデセン、12−トリメトキシシリルヘキサシクロヘプタデセンなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0019】
重合体(A)の全繰り返し単位における、3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位の含有率は、51モル%以上であれば特に限定されないが、55〜100モル%であることが好ましく、65〜90モル%であることが特に好ましい。重合体(A)の全繰り返し単位における、3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位の含有率が低すぎると、得られる絶縁膜の電気絶縁性が低下するおそれがあり、また、強度が不足するおそれがある。
【0020】
また、本発明で用いる重合体(A)は、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位を特定量含有するものである。硬化剤と反応して結合を形成しうる基は、用いる硬化剤の種類に応じて選択すれば良いが、その具体例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基、ヒドロキシフェニル基、シアノ基などが挙げられる。これらのなかでも、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、ヒドロキシフェニル基が好適であり、特に、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基が好適である。なお、重合体(A)は、2種以上の官能基を有するものであっても良い。また、重合体(A)の官能基は、重合体の主鎖を構成する原子に直接結合していても、メチレン基、オキシ基、オキシカルボニルオキシアルキレン基、フェニレン基などの他の二価の基を介して結合していてもよい。
【0021】
重合体(A)を構成する硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位は、官能基を有するものであれば、前述の3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位に該当するものであってもよく、また、官能基を有する2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位やそれ以外の官能基を有する繰り返し単位であっても良い。
【0022】
官能基を有する繰り返し単位を構成し得る単量体としては、官能基を有する2環のノルボルネン系単量体として、5−カルボキシノルボルネン、5−メチル−5−カルボキシノルボルネン、5−メトキシカルボニル−6−カルボキシノルボルネン、5,6−ジカルボキシノルボルネンなどのカルボキシル基を有するノルボルネン類;ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水物などの酸無水物基を有するノルボルネン類;5−フェニルノルボルネンなどのヒドロキシフェニル基を有するノルボルネン類;5−ヒドロキシメチルノルボルネン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5−ヒドロキシ−i−プロピルノルボルネンなどのヒドロキシル基を有するノルボルネン類;5−シアノノルボルネンなどのシアノ基を有するノルボルネン類;ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸イミドなどのアミノ基を有するノルボルネン類;などが挙げられる。
【0023】
また、官能基を有する3環以上のノルボルネン系単量体として、8−カルボキシテトラシクロドデセン、8−メチル−8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸、12−カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸などのカルボキシル基を有するノルボルネン類;テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸無水物などの酸無水物基を有するノルボルネン類;8−フェニルテトラシクロドデセン、12−フェニルヘキサシクロヘプタデセンなどのヒドロキシフェニル基を有するノルボルネン類;8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、12−ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセンなどのヒドロキシル基を有するノルボルネン類;8−シアノテトラシクロドデセン、12−シアノヘキサシクロヘプタデセンなどのシアノ基を有するノルボルネン類;テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミド、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸イミドなどのアミノ基を有するノルボルネン類;などが挙げられる。
【0024】
また、上記以外の官能基を有する単量体として、環状オレフィン以外の、官能基を有する化合物としては、官能基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられ、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;などが挙げられる。
【0025】
重合体(A)の全繰り返し単位における、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位の含有率は、1〜60モル%の範囲であれば特に限定されないが、10〜50モル%であることが好ましく、20〜40モル%であることが特に好ましい。硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位の含有率が低すぎると得られる絶縁膜のめっき密着性や耐熱性が低下するおそれがあり、高すぎると得られる絶縁膜の電気絶縁性が低下するおそれがある。
【0026】
重合体(A)は、さらに、3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位にも、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位にも、該当しない繰り返し単位を含有していてもよい。そのような繰り返し単位を構成する単量体としては、官能基を有しない2環のノルボルネン系単量体や、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン単量体;シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエン、フェニルシクロオクタジエンなどの単環のジオレフィン単量体が挙げられる。重合体(A)の全繰り返し単位における、3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位にも、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位にも該当しない繰り返し単位の含有率は、49モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。
【0027】
本発明で用いる重合体(B)は、2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を主たる繰り返し単位として含有する比較的柔軟なノルボルネン系開環重合体またはその水素添加物であり、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位特定量含有するものである。重合体(B)を構成する3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位は、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有さない2環のノルボルネン系単量体と硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する2環のノルボルネン系単量体とのいずれを用いたものであってよく、これらを組み合わせて用いても良い。
【0028】
2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を構成するために用いられる2環のノルボルネン系単量体としては、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−ヘキシルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5−シクロヘキシルノルボルネン、5−シクロペンチルノルボルネンなどの無置換またはアルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−プロペニルノルボルネン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、5−シクロペンテニルノルボルネンなどのアルケニル基を有するノルボルネン類;5−フェニルノルボルネンなどの芳香環を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−エトキシカルボニルノルボルネン、ノルボルネニル−2−メチルプロピオネイト、ノルボルネニル−2−メチルオクタネイト、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチルノルボルネン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5−ヒドロキシ−i−プロピルノルボルネン、5,6−ジカルボキシノルボルネン、5−メトキシカルボニル−6−カルボキシノルボルネン、などの酸素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;5−シアノノルボルネン、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む極性基を有するノルボルネン類などが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0029】
重合体(B)の全繰り返し単位における、2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位の含有率は、51モル%以上であれば特に限定されないが、55〜100モル%であることが好ましく、65〜90モル%であることが特に好ましい。重合体(B)の全繰り返し単位における、2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位の含有率が低すぎると、得られる絶縁膜の電気絶縁性が低下するおそれがあり、また、配線埋め込み性が低下するおそれもある。
【0030】
また、本発明で用いる重合体(B)は、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位を特定量含有するものである。硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基は、重合体(A)と同様であり、硬化剤の種類に応じて選択すれば良い。なお、重合体(B)の官能基は、重合体(A)の官能基と同じものであっても、異なるものであっても良いが、同じ官能基であることが好ましい。
【0031】
重合体(B)を構成する硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位は、官能基を有するものであれば、前述の2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位に該当するものであってもよく、また、官能基を有する3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位やそれ以外の官能基を有する繰り返し単位であっても良い。なお、重合体(B)を構成する硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位を得るために用いられる単量体としては、重合体(A)において例示したような単量体を用いれば良い。
【0032】
重合体(B)の全繰り返し単位における、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位の含有率は、1〜60モル%の範囲であれば特に限定されないが、10〜50モル%であることが好ましく、20〜40モル%であることが特に好ましい。硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位の含有率が低すぎると得られる絶縁膜のめっき密着性や耐熱性が低下するおそれがあり、高すぎると得られる絶縁膜の電気絶縁性が低下するおそれがある。
【0033】
重合体(B)は、さらに、2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位にも、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位にも該当しない繰り返し単位を含有していてもよい。そのような繰り返し単位を構成する単量体としては、官能基を有しない3環以上のノルボルネン系単量体や、重合体(A)において例示したような単環の環状オレフィン単量体や単環のジオレフィン単量体が挙げられる。重合体(B)の全繰り返し単位における、2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位にも、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位にも該当しない繰り返し単位の含有率は、49モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。
【0034】
重合体(A)および重合体(B)を得る方法は特に限定されず、公知のノルボルネン系単量体の開環重合重合法に従って、それぞれの単量体を開環重合すれば良い。また、重合体(A)および重合体(B)は、それぞれ、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物であっても良い。この水素添加の方法も特に限定されず、公知の水素添加方法に従えば良い。本発明の硬化性樹脂組成物の耐熱性を特に良好とする観点からは、重合体(A)および重合体(B)の少なくとも一方が水素添加物であることが好ましく、重合体(A)および重合体(B)の両方が水素添加物であることが特に好ましい。重合体(A)および重合体(B)を水素添加する場合の水素添加率は特に限定されないが、重合体中の主鎖の炭素−炭素二重結合のうち50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上を水素添加することが好ましい。
【0035】
重合体(A)および重合体(B)の分子量は、特に限定されないが、シクロヘキサンまたはトルエンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、それぞれ、通常1,000〜1,000,000、好ましくは3,000〜500,000、より好ましくは5,000〜200,000の範囲である。重合体(A)および重合体(B)の重量平均分子量(Mw)がこの範囲にあると、得られる硬化性樹脂組成物の配線埋め込み性が良好となり、またそれから得られる回路基板用絶縁膜の耐熱性、成形物表面の平滑性などが良好にバランスされる。
【0036】
重合体(A)および重合体(B)の重量平均分子量(Mw)を調整する方法は常法に従えば良く、例えば、開環重合をルテニウム系、チタン系、タングステン系などのメタセシス重合触媒を用いて行うに際して、ビニル化合物、ジエン化合物などの分子量調整剤を単量体全量に対して0.1〜10モル%程度添加する方法が挙げられる。分子量調整剤を多量に用いるとMwの低い重合体が得られる。かかる分子量調整剤の例としては、ビニル化合物では、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン化合物;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル化合物;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート、アクリルアミドなどのその他のビニル化合物;などが挙げられる。また、ジエン化合物では、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン化合物;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエン化合物;などが挙げられる。これらの分子量調整剤は1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0037】
重合体(A)および重合体(B)の分子量分布も、特に限定されないが、シクロヘキサンまたはトルエン、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で、通常5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0038】
本発明の硬化性樹脂組成物の重合体成分として用いられる重合体組成物は、重合体(A)と重合体(B)とからなるものである。重合体組成物における重合体(A)と重合体(B)との重量比(A/B)は、特に限定されないが、10/90〜90/10であることが好ましく、20〜80であることがより好ましく、40〜60であることがさらに好ましい。重合体(A)と重合体(B)との重量比(A/B)がこの範囲にあることにより、得られる硬化性樹脂組成物の流動性が良好となり、配線埋め込み性が良好となる上に、得られる絶縁膜の応力の緩和作用が良好となる。
【0039】
本発明で用いる重合体組成物は、ゴム質重合体やその他の熱可塑性樹脂などの重合体(A)および重合体(B)以外の重合体成分を含んでいても良い。特に重合体組成物にゴム質重合体を配合すると得られる硬化性樹脂組成物の柔軟性を改良することができる。ゴム質重合体は、常温(25℃)以下のガラス転移温度を持つ重合体であって、通常のゴム状重合体および熱可塑性エラストマーが含まれる。用いるゴム質重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、適宜選択すれば良いが、通常5〜200である。ゴム状重合体の具体例としては、エチレン−α−オレフィン系ゴム状重合体;エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体ゴム;エチレン−メチルメタクリレート、エテレン−ブチルアクリレートなどのエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸アルキルエステルの重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンまたはスチレン−イソプレンのランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル−スチレン共重合体などのジエン系ゴム;エポキシ化ポリブタジエンなどの変性ジエン系ゴム;ブチレン−イソプレン共重合体などが挙げられる。熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などの芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、低結晶性ポリブタジエン樹脂、エチレン−プロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂などを挙げることができる。これらの熱可塑性エラストマーのうち、好ましくは、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体などであり、具体的には、特開平2−133406号公報、特開平2−305814号公報、特開平3−72512号公報、特開平3−74409号公報などに記載されているものを挙げることができる。
【0040】
本発明で用いる重合体組成物に配合しうるその他の熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテートなどが挙げられる。
【0041】
ゴム状重合体やその他の熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、回路基板用絶縁膜としての特性を損なわせないためには、重合体組成物100重量部に対して、30重量部以下の配合量とすることが好ましい。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物は、後述するように、有機溶剤に溶解させてワニスとして用いられるものであることが好ましい。したがって、本発明で用いられる重合体組成物は、後述するような有機溶剤に常温で溶解するものであることが好ましい。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物は、以上述べたような重合体組成物に加え、硬化剤を含んでなるものである。硬化剤は、重合体(A)および重合体(B)の官能基と結合して、これらの重合体に架橋構造を形成させるものであれば特に限定されず、一般の電気絶縁膜形成用の硬化性樹脂組成物に配合される硬化剤を用いることができるが、加熱により重合体(A)および重合体(B)の官能基と反応して結合を形成することができる官能基を2個以上有する化合物を硬化剤として用いることが好ましい。例えば、重合体(A)および重合体(B)として、カルボキシル基、カルボン酸無水物基またはヒドロキシフェニル基を有する重合体を用いる場合に好適に用いられる硬化剤としては、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価アミン化合物、多価ヒドラジド化合物、アジリジン化合物、塩基性金属酸化物、有機金属ハロゲン化物などが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。また、これらの化合物と過酸化物とを併用して硬化剤として用いても良い。
【0044】
硬化剤として用いられ得る多価エポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物などのグリシジルエーテル型エポキシ化合物;脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、リン含有エポキシ化合物などの多価エポキシ化合物;などの分子内に2以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0045】
硬化剤として用いられ得る多価イソシアナート化合物としては、炭素数6〜24の、ジイソシアナート類およびトリイソシアナート類が好ましい。ジイソシアナート類の例としては、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナートなどが挙げられる。トリイソシアナート類の例としては、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、ビシクロヘプタントリイソシアナートなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0046】
硬化剤として用いられ得る多価アミン化合物としては、2個以上のアミノ基を有する炭素数4〜30の脂肪族多価アミン化合物、芳香族多価アミン化合物などが挙げられ、グアニジン化合物のように非共役の窒素−炭素二重結合を有するものは含まれない。脂肪族多価アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。芳香族多価アミン化合物としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3,5−ベンゼントリアミンなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0047】
硬化剤として用いられ得る多価ヒドラジド化合物の例としては、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジドなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0048】
硬化剤として用いられ得るアジリジン化合物としては、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス[1−(2−メチル)アジリジニル]ホスフィノキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)アジリジニル]トリホスファトリアジンなどが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0049】
重合体(A)および重合体(B)として、カルボキシル基、カルボン酸無水物基またはヒドロキシフェニル基を有する重合体を用いる場合においては、前述の硬化剤の中でも、官能基との反応性が高く、機械強度、耐熱性の観点から多価エポキシ化合物が好ましく用いられ、相溶性、可とう性の観点からグリシジルエーテル型エポキシ化合物が特に好ましく、低吸湿性、電気特性の観点から脂環式の多価エポキシ化合物が特に好ましく用いられる。
【0050】
硬化性樹脂組成物における硬化剤の使用量は、重合体組成物100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは5〜90重量部、より好ましくは10〜80重量部の範囲である。このような範囲の使用量で硬化剤を用いることにより、硬化性樹脂組成物から得られる絶縁膜の機械的強度および電気特性が良好となる。
【0051】
硬化性樹脂組成物の硬化を促進させるために、硬化性樹脂組成物には、硬化促進剤や硬化助剤を配合しても良い。硬化促進剤としては、一般の電気絶縁膜形成用の樹脂組成物に配合される硬化促進剤を用いれば良いが、硬化剤として多価エポキシ化合物を用いる場合には、第3級アミン系化合物や三弗化ホウ素錯化合物などが硬化促進剤として好適に用いられる。なかでも、第3級アミン系化合物を使用すると、得られる絶縁膜の絶縁抵抗性、耐熱性、耐薬品性が向上する。
【0052】
第3級アミン系化合物の具体例としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルホルムアミドなどの鎖状3級アミン化合物;ピラゾール類、ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、インダゾール類、キノリン類、イソキノリン類、イミダゾール類、トリアゾール類などの化合物が挙げられる。これらの中でも、イミダゾール類、特に置換基を有する置換イミダゾール化合物が好ましい。
【0053】
置換イミダゾール化合物の具体例としては、例えば、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのアルキル置換イミダゾール化合物;2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール,1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−[2’−(3”,5”−ジアミノトリアジニル)エチル]イミダゾールなどのアリール基やアラルキル基などの環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物などが挙げられる。これらの中でも、環構造含有の置換基を有するイミダゾールが、重合体組成物との相溶性の観点から好ましく、特に、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
【0054】
これらの硬化促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。硬化促進剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すれば良いが、重合体組成物100重量部に対して、通常0.001〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重量部である。
【0055】
硬化助剤としては、一般の電気絶縁膜形成用の樹脂組成物に配合される硬化助剤を用いれば良いが、その具体例としては、キノンジオキシム、ベンゾキノンジオキシム、p−ニトロソフェノールなどのオキシム・ニトロソ系硬化助剤;N,N−m−フェニレンビスマレイミドなどのマレイミド系硬化助剤;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル系硬化助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのメタクリレート系硬化助剤;ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどのビニル系硬化助剤などが挙げられる。これらの硬化助剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合割合は、用いる硬化剤100重量部に対して、通常1〜1000重量部、好ましくは10〜500重量部の範囲である。
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物には、難燃性を向上させる目的で、例えば、ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤などの一般の樹脂組成物に配合される難燃剤を配合しても良い。難燃剤を配合する場合の配合量は、重合体組成物100重量部に対して、50重量部以下であることが好ましく、20重量部以下であることがより好ましい。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、無機充填剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの任意成分が配合される。任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すれば良い。
【0058】
以上のような、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化させることにより流動性と応力の緩和作用に優れる硬化物を得ることができる。したがって、本発明の硬化性樹脂組成物は、回路基板の絶縁膜用として用いるのが特に好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して、回路基板の絶縁膜として用いることにより、配線埋め込み性と接続信頼性に優れる回路基板用絶縁膜を得ることができる。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物から回路基板用絶縁膜を得るにあたっては、硬化性樹脂組成物を有機溶剤と混合してワニスとして用いることが好ましい。ワニス調製用の有機溶剤は、後に加熱して揮発させる便宜から、沸点が好ましくは30〜250℃、より好ましくは50〜200℃のものである。かかる有機溶剤の例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アニソールなどを挙げることができる。
【0060】
ワニスの調製法に格別な制限はなく、例えば、硬化性樹脂組成物を構成する各成分と有機溶剤とを常法に従って混合すればよい。例えば、マグネチックスターラー、高速ホモジナイザー、ディスパージョン、遊星攪拌機、二軸攪拌機、ボールミル、三本ロールを使用した方法などで行うことができる。混合温度は、硬化剤による反応を起こさない範囲で、有機溶剤の沸点以下が好ましい。有機溶剤の使用量は、電気絶縁層の厚みや表面平坦度の要望に応じて適宜選択されるが、ワニスの固形分濃度が、通常5〜70重量%、好ましくは10〜65重量%、より好ましくは15〜60重量%になる範囲である。
【0061】
次に、調製したワニスを、通常、基材に含浸および/または塗布した後、または支持体に塗布した後、ワニスを構成する有機溶剤を乾燥により除去することにより、硬化性樹脂組成物の成形体を得る。通常、得られた成形体は、少なくとも表面に導体層を有する基板上(以下、「内層基板」ということがある。)に積層し、必要に応じて支持体を剥離し、次いで、当該成形体中の硬化性樹脂組成物を硬化して、内層基板上に絶縁膜を形成し、回路基板を得る。この絶縁膜は、回路基板の電気絶縁層として機能し、この上に更に導体層を形成して回路基板を多層化することができる。このとき内層基板上に形成された絶縁膜は所謂層間絶縁層となる。
【0062】
基材の具体例としては、不織布、織布、樹脂フィルムなどが挙げられる。また、その材料である有機高分子としては、ポリアクリレート、アラミド、含フッ素アラミド、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ナイロンなどが挙げられ、特にアラミド、含フッ素アラミド、液晶ポリマーが難燃性と電気特性の観点から好ましい。また、基材は、上述したワニスを含浸または塗布することができる成形体であり、絶縁膜形成の観点から、膜厚は、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下であり、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上である。
【0063】
不織布としては、アラミド不織布、含フッ素アラミド織布、液晶ポリマー不織布、ポリエチレンテレフタレート不織布、ポリカーボネート不織布、ナイロン不織布などが挙げられる。これらの不織布うち、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布が好ましい。織布としてはアラミド織布、液晶ポリマー織布、ポリエチレンテレフタラート織布、ポリカーボネート織布、ナイロン織布などが挙げられる。これらの織布うち、アラミド織布、含フッ素アラミド織布、液晶ポリマー織布が好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、含フッ素アラミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリイミドフィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられる。これら樹脂フィルムのうち、耐熱性や耐薬品性、線膨張係数などの観点からポリアミドフィルム、アラミドフィルム、含フッ素アラミドフィルム、液晶ポリマーフィルムが好ましい。
【0064】
支持体として用いられうる樹脂フィルムは、通常、熱可塑性樹脂フィルムであり、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、およびナイロンフィルム;などが挙げられる。これら樹脂フィルムのうち、耐熱性や耐薬品性、積層後の剥離性などの観点からポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。支持体として用いられうる金属箔としては、例えば、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、および銀箔;などが挙げられる。導電性が良好である点から、銅箔、特に電解銅箔や圧延銅箔が好適である。支持体の厚さは特に制限されないが、作業性等の観点から、通常1μm〜200μm、好ましくは2μm〜150μm、より好ましくは3〜100μmである。
【0065】
基材に硬化性樹脂組成物のワニスを含浸および/または塗布する方法や支持体に樹脂組成物のワニスを塗布する方法としては、浸漬、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコートなどの方法が挙げられる。
【0066】
有機溶剤除去のための乾燥の条件は、有機溶剤の種類により適宜選択される。加熱温度は、通常30〜200℃、好ましくは40〜180℃であり、加熱時間は、通常30秒〜1時間、好ましくは1分〜30分である。
【0067】
硬化性樹脂組成物からなる成形体を内層基板上に積層する方法に格別な制限はないが、例えば、当該成形体を、内層基板の導体層に接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータなどの加圧機を使用して加熱圧着(ラミネーション)して、内層基板表面の導体層と樹脂成形体層との界面に空隙が実質的に存在しないように結合させる方法が挙げられる。加熱圧着は、配線パターンの埋め込み性を向上させ、気泡の発生を抑えるために真空下で行うのが好ましい。加熱圧着操作の温度は、通常30〜250℃、好ましくは70〜200℃であり、加える圧力は、通常10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPaであり、時間は、通常30秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間である。また、雰囲気の気圧を、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paに減圧下で行う。
【0068】
本発明の硬化性樹脂組成物からなる成形体の硬化は、通常、その成形体の層を内層基板ごと加熱することにより行う。硬化条件は硬化剤の種類に応じて適宜選択されるが、温度は、通常30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃であり、時間は、通常0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。加熱の方法は特に制限されず、例えば電気オーブンを用いて行えばよい。硬化によって生成した絶縁膜は、内層基板の導体層の上に積層されて電気絶縁層を構成することとなる。
【0069】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる回路基板用絶縁膜は、絶縁膜として適度な弾性率を有することから、流動性と応力の緩和作用に優れ、したがって、配線埋め込み性と接続信頼性に優れるものであるといえる。回路基板用絶縁膜の絶縁膜の弾性率は、25℃での弾性率として、0.1〜2GPaの範囲であることが好ましく、0.5〜2GPaの範囲であることより好ましい。このような弾性率を有することにより、導体層を十分に支持することができ、かつ、配線埋め込み性と接続信頼性に優れる絶縁膜となる。
【0070】
また、絶縁膜の平坦性を向上させる目的や、絶縁膜の厚みを増す目的で、本発明の硬化性樹脂組成物からなる成形体を2以上接して貼り合わせて積層してもよい。さらに、本発明の硬化性樹脂組成物からなる絶縁膜は、他の硬化性樹脂組成物からなる絶縁膜と組み合わせて、回路基板を形成するために用いても良い。例えば、基材に硬化性樹脂組成物を塗布する場合において、基材の一方の面には配線埋め込み性に優れる本発明の硬化性樹脂組成物を塗布し、その反対面には、本発明の硬化性樹脂組成物よりも弾性率の高い、剛直な硬化性樹脂組成物を塗布して、3層構造の絶縁膜を形成し、本発明の硬化性樹脂組成物の面は、内層基板などの配線の埋め込みをするための層として用い、剛直な硬化性樹脂組成物の面は、その面上に導体層を形成するための層として用いることができる。
【0071】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いて得られる回路基板用絶縁膜の用途は特に限定されないが、例えば、コンピューターや携帯電話などの電子機器における、CPUやメモリなどの半導体素子、その他の実装部品用基板として好適に使用できる。
【実施例】
【0072】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0073】
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
(1)重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn):トルエンまたはテトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(2)重合体の水素化率:水素化率は、水素化前における重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率をいい、H−NMRスペクトル測定により求めた。
(3)重合体のカルボン酸無水物基含有率:重合体中の総単量体単位数に対するカルボン酸無水物基のモル数の割合をいい、H−NMRスペクトル測定により求めた。
(4)フィルムを構成する各層の厚さ:硬化性樹脂組成物により形成された層を硬化する前のフィルムを切断して、その断面を研磨した後、その断面を光学顕微鏡で観察して測定した。
(5)絶縁膜の弾性率:支持体付きの硬化性樹脂組成物からなるフィルムを、硬化性樹脂組成物面と圧延銅箔とが接するように、厚さ75μmの圧延銅箔の片面に重ね合わせた。これを、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、200Paに減圧して、温度120℃、圧力1.0MPaで120秒間加熱圧着した。次に、その積層物から支持体を剥がし取った後、積層物を160℃で30分間加熱し、さらに170℃で60分間加熱して樹脂組成物により形成された層を硬化させた。そして、この積層物を50℃の1モル/リットルの過硫酸アンモニウム水溶液に浸漬させることにより、積層物から圧延銅箔を完全に除去し、硬化性樹脂組成物により形成された層が硬化されたフィルムを得た。硬化されたフィルムを切断し、幅5mm、長さ70mmの試料を作製した。引っ張り試験機AGS−5KNG(島津製作所製)のチャックに、試料の両端10mmを挟み、引き上げ速度50mm/分で弾性率を測定した。
(6)配線埋め込み性:ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させた基板に配線幅および配線間距離が20μm、導体厚みが18μmの銅配線を形成した内層基板の上に、支持体付きの硬化性樹脂組成物からなるフィルムを、硬化性樹脂組成物面と内層基板とが接するように、内層基板両面に重ね合わせた。これを、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータを用いて、200Paに減圧して、温度120℃、圧力1.0MPaで120秒間加熱圧着し、積層体を得た。この積層体を光学顕微鏡で観察し、下記の基準で判定した。
A:銅配線間に樹脂組成物が充填し、気泡がなく、良好に埋め込まれているもの
B:銅配線間に樹脂組成物が充填し、気泡が数箇所観察されるもの
C:銅配線間に樹脂組成物が充填している部分があり、気泡が多数観察され、支持体を剥すと、樹脂組成物が基板から剥がれるもの
【0074】
〔合成例1〕
3環以上のノルボルネン系単量体としてテトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(メタノテトラヒドロフルオレン、以下、「MTF」と略記する。)70モル部、官能基を有する単量体(2環のノルボルネン系単量体)としてビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物(以下、「NDCA」と略記する)30モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール590モル部およびルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(和光純薬社製)0.015モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で1時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧6MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である重合体(A−1)の溶液を得た。得られた重合体(A−1)の重量平均分子量は、50,000、数平均分子量は26,000、分子量分布は1.9であった。また、水素添加率は97%であり、カルボン酸無水物基含有率は30モル%であった。重合体(A−1)の溶液の固形分濃度は25%であった。
【0075】
〔合成例2〕
2環のノルボルネン系単量体として5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(以下、「EdNB」と略記する)70モル部、官能基を有し、かつ、2環のノルボルネン系単量体としてNDCA30モル部、1−ヘキセン0.7モル部、アニソール371モル部およびルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(和光純薬社製)0.045部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で2時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素化反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である重合体(B−1)の溶液を得た。得られた重合体(B−1)の重量平均分子量は、35,000、数平均分子量は17,000、分子量分布は2.1であった。また、水素添加率は50%であり、カルボン酸無水物基含有率は30モル%であった。重合体(B−1)の溶液の固形分濃度は25%であった。
【0076】
〔合成例3〕
MTF35モル部、EdNB35モル部、NDCA30モル部、1−ヘキセン0.7モル部、アニソール590モル部およびルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(和光純薬社製)0.003部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で2時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素化反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である重合体(C−1)の溶液を得た。得られた重合体(C−1)の重量平均分子量は、36,000、数平均分子量は18,000、分子量分布は2.0であった。また、水素添加率は70%であり、カルボン酸無水物基含有率は30モル%であった。重合体(C−1)の溶液の固形分濃度は25%であった。
【0077】
〔実施例1〕
合成例1で得た重合体(A−1)の溶液200部(重合体の量として50部)、合成例2で得た重合体(B−1)の溶液200部(重合体の量として50部)、硬化剤として水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(商品名YX8000、ジャパンエポキシレジン社製)42部、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾール0.5部、老化防止剤として1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン1部、およびゴム質重合体として液状ポリブタジエン(商品名Ricon657、サートマージャパン社製)10部を遊星攪拌機を用いて混合して硬化性樹脂組成物のワニス(1)を得た。
【0078】
得られた硬化性樹脂組成物のワニス(1)を、縦300mm×横300mmの大きさで厚さが100μm、表面平均粗さRaが0.08μmのポリエチレンナフタレートフィルム(支持体)上に、YD型のドクターブレードを用いてポリイミドフィルムに塗工した。次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥させて、樹脂組成物の厚みが25μmの支持体付きのフィルム(1)を得た。得られた支持体付きのフィルム(1)について、弾性率、配線埋めこみ性を測定した。その結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
〔比較例1〜3〕
用いる重合体の種類および量、硬化剤の量ならびにゴム質重合体の種類を表1に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物のワニス(C1)、(C2)、(C3)を得た。得られたワニスを用いて、それぞれ、支持体付きのフィルム(1)を得て、弾性率を測定した。その結果を表1に示す。
【0081】
以上の実施例および比較例から分かるように、3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を主たる繰り返し単位として含有する重合体(A−1)および2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を主たる繰り返し単位として含有する重合体(B−1)からなる重合体組成物を用いてなる本発明の樹脂組成物は、比較的に低い弾性率を示すことから、応力の緩和作用に優れるといえ、また、配線埋め込み性に優れるといえる(実施例1)。一方、重合体(A−1)のみ(比較例1)を用いた場合や、3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を含むが2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を主たる繰り返し単位とする重合体(C−1)のみを用いた場合は、回路基板の絶縁膜の弾性率が比較的に高いことから、応力の緩和作用に劣るといえ、また、配線埋め込み性にも劣るものであった。また、重合体(B−1)のみを用いた場合は、配線埋め込み性は良好であるものの、絶縁膜の弾性率が低すぎて、導体層の支持を十分に行えないおそれのあるものであった(比較例2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体組成物および硬化剤を含んでなる硬化性樹脂組成物であって、
重合体組成物が、全繰り返し単位中に、3環以上のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を51モル%以上含有し、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位を1〜60モル%含有するノルボルネン系開環重合体またはその水素添加物である重合体(A)と、全繰り返し単位中に、2環のノルボルネン系単量体を開環重合してなる繰り返し単位を51モル%以上含有し、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基を有する繰り返し単位を1〜60モル%含有するノルボルネン系開環重合体またはその水素添加物である重合体(B)と、からなるものである硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
重合体組成物における重合体(A)と重合体(B)との重量比(A/B)が、10/90〜90/10の範囲である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
重合体(A)および重合体(B)の、硬化剤と反応して結合を形成しうる官能基が、カルボキシル基、カルボン酸無水物基およびヒドロキシフェニル基から選択されるものである請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
回路基板の絶縁膜用である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる回路基板用絶縁膜。

【公開番号】特開2010−241851(P2010−241851A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88535(P2009−88535)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】