説明

硬化性組成物、インク組成物、インクジェット記録方法、印刷物、平版印刷版の製造方法、及び、平版印刷版

【課題】活性放射線の照射に対して高感度かつ短時間での硬化が可能となり、吐出安定性に優れ、硬化して得られる画像が十分な柔軟性及び密着性を有する硬化性組成物、インク組成物及び該インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供すること、また、活性放射線の照射により高感度かつ短時間で硬化可能なインク組成物を用いて得られた平版印刷版、及び、平版印刷版の製造方法を提供すること。
【解決手段】(a)ゴム粒子、(b)重合性化合物、及び、(c)重合開始剤を含有することを特徴とする硬化性組成物、インク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録方法、印刷物、平版印刷版及び平版印刷版の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、インクジェット記録用として好適に用いられるインク組成物、インクジェット記録方法、更に、該インクを用いて得られる平版印刷版並びに平版印刷版の製造方法に関するものである。詳しくは、活性放射線の照射に対して、高感度で硬化し、硬化後にも硬化物が十分な柔軟性を有するインクジェット記録用に好適なインク組成物、インクジェット記録方法、及び、これを用いた印刷物、並びに、該インクを用いて得られる平版印刷版及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり、結果的に製造コストが高価になるなどの問題がある。また熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高く、かつ廃材が出るなどの問題がある。
一方、インクジェット方式は、安価な装置で、且つ、必要とされる画像部のみに硬化性組成物又はインク組成物を吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、硬化性組成物やインクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
紫外線などの放射線の照射により硬化可能な硬化性組成物、インク組成物、特にインクジェット記録用インク(放射線硬化型インクジェット記録用インク)は、高感度で硬化し、高画質の画像を形成しうるものが求められている。高感度化を達成することにより、活性放射線の照射により高い硬化性が付与されるため、消費電力の低減や活性放射線発生器への負荷軽減による高寿命化などの他、十分な硬化が達成されることにより、未硬化の低分子物質の揮発、形成された画像強度の低下などを抑制することができるなど、種々の利点をも有することになる。また、高感度化による画像強度の向上は、このインク組成物を平版印刷版の画像部形成に使用した場合、画像部に高耐刷性をもたらすことになる。
【0004】
紫外線光による硬化型インクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い被記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつある。特に、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ミヒラーケトン、アントラキノン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン等が光重合開始剤として一般的に用いられてきた(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これらの光重合開始剤を用いた場合、光重合性組成物の硬化の感応度が低いので画像形成における像露光に長時間を要した。このため細密な画像の場合には、操作にわずかな振動があると良好な画質の画像が再現されず、さらに露光の光源のエネルギー放射量を増大しなければならないためにそれに伴う多大な発熱の放射を考慮する必要があった。
【0005】
インクジェット記録方法にて通常直接記録することが困難な支持体に対しても、滲みがなく、高感度で、被記録媒体への密着性が高い画像が記録可能で、かつ皮膚刺激性や感作性の少ない安全性が高いインク組成物を提供すること等を目的として、特定のアクリレート化合物群からなる重合性化合物を含有する組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、感度向上を目的として用いられる多官能アクリレートは、硬化により得られる重合体が高度に架橋した3次元構造を有するため、インク硬化後の柔軟性及び耐衝撃性が低下し、記録媒体上においてひび割れや剥離等を生じやすくなり、形成された画像の耐久性に問題があった。
【0006】
また、従来、平版印刷版の作製にあたっては、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するいわゆるPS版を用い、この感光性の樹脂層を画像様に露光したて、露光部のアルカリ現像液に対する可溶性を向上又は低下させて画像形成し、非画像部を溶解除去する方法をとっていた。しかし、近年、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力するディジタル化技術が広く普及し、それに対応した新しい画像出力方式が求められるようになった。特に、現像液による処理を経ないで印刷版を作製しうる方法が検討され、インクジェット記録用インク組成物によって直接平版印刷版を作製する方法が検討されている(例えば、特許文献2参照)。これは、好ましくは親水性の支持体表面にインクジェット方式等によって硬化性組成物又はインクを画像様に吐出し、これに活性放射線に照射して硬化させ、所望の画像(好ましくは、疎水性画像)を有する印刷版を得るものである。平版印刷版の画像部を形成するためには、支持体上に吐出されたインク液滴が滲みを生じることなく速やかに硬化すること、硬化した画像部の強度や支持体との密着性に優れること、平版印刷版を印刷機に装着する際の支持体の撓みに対して画像部がよく追従してクラックなどの損傷を生じないことが望まれており、このような用途に適したインク組成物が望まれているのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開2003−192943号公報
【特許文献2】特開昭54−117203号公報
【非特許文献1】Bruce M. Monroe et al., Chemical Reviews, Vol. 93, p. 435-448 (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、活性放射線の照射に対して高感度での硬化が可能となり、吐出安定性に優れ、硬化して得られる画像が十分な柔軟性及び密着性を有する硬化性組成物、インク組成物及び該インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、活性放射線の照射により高感度で硬化可能なインク組成物を用いて得られた平版印刷版、及び、平版印刷版の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、以下の<1>、<4>及び<7>〜<10>により達成された。好ましい実施態様である<2>、<3>、<5>及び<6>と共に以下に示す。
<1> (a)ゴム粒子、(b)重合性化合物、及び、(c)重合開始剤を含有することを特徴とする硬化性組成物、
<2> ゴム粒子の含有量が硬化性組成物の全量に対し1〜60重量%である上記<1>に記載の硬化性組成物、
<3> ゴム粒子がその表面にエチレン性不飽和基及び/又はオキシ環状基を有する粒子である上記<1>又は<2>に記載の硬化性組成物、
<4> 上記<1>〜<3>いずれか1つに記載の硬化性組成物を含むインク組成物、
<5> (d)着色剤を含有する上記<4>に記載のインク組成物、
<6> インクジェット記録用である上記<4>又は<5>に記載のインク組成物、
<7> (a)被記録媒体上にインク組成物を吐出する工程、及び、(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程を含むインクジェット記録方法であって、前記インク組成物が上記<4>〜<6>いずれか1つに記載のインク組成物であるインクジェット記録方法、
<8> 上記<7>に記載のインクジェット記録方法によって記録された印刷物、
<9> (a)上記<4>〜<6>いずれか1つに記載のインク組成物を親水性支持体上に吐出する工程、及び、(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させることにより、前記インク組成物が硬化してなる疎水性画像を前記親水性支持体上に形成する工程を含む平版印刷版の製造方法、
<10> 上記<9>に記載の平版印刷版の製造方法によって製造された平版印刷版。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、活性放射線の照射に対して高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができ、硬化して得られる画像が十分な柔軟性を有する硬化性組成物、インク組成物及び該インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供できる。
また、本発明によれば、活性放射線の照射により高感度で硬化可能なインク組成物を用いて得られた平版印刷版、及び、平版印刷版の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の硬化性組成物は、(a)ゴム粒子、(b)重合性化合物、及び、(c)重合開始剤を含有することを特徴とする。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
(1)硬化性組成物
本発明の硬化性組成物は、放射線や熱により硬化可能であり、(a)ゴム粒子、(b)重合性化合物、及び、(c)重合開始剤を含有し、インク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)に好適に使用される。また、本発明の硬化性組成物及びインク組成物は、必要に応じて、(d)着色剤、(e)増感色素、(f)共増感剤、(g)その他の成分を含んでいてもよい。
本発明で言う「放射線」とは、その照射により硬化性組成物やインク組成物中において重合開始種を発生させうるエネルギーを付与することができる活性放射線であれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線(UV)、可視光線、電子線などを包含するものであるが、なかでも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。したがって、本発明の硬化性組成物及びインク組成物としては、放射線として、紫外線を照射することにより硬化可能な硬化性組成物及びインク組成物が好ましい。
【0013】
本発明の硬化性組成物は、様々な用途に使用可能であるが、インク組成物、クリアインク(無色インク組成物)、表面平滑性やガスバリア性、光沢性、耐スクラッチ性などを付与する塗布剤、平版印刷版、ホログラフィ、レジスト、カラーフィルター、光ディスクの製造、IC等の半導体製造工程、液晶表示装置、サーマルヘッド等の回路基板の製造にも好適に使用することができ、三次元造形などの造形材料としても有用であり、また、塗料、接着剤等の光硬化樹脂材料としても有用である。
本発明の硬化性組成物を無色のクリアインキとして使用する場合には、点字シールや点字表示物などに利用可能である。さらに、本発明の硬化性組成物は、画像形成にとらわれず、広く応用的な利用が可能であり、例えば表面平滑性付与などにも利用可能である。具体的には、インクジェットインクで画像を形成した被記録材表面の平滑性を向上させるために、本発明の硬化性組成物を塗布し、これを硬化させることで、その凹凸を埋め、表面を平滑化することが可能である。
本発明の硬化性組成物は、これらの用途の中でも、クリアインク又はインク組成物として使用することが好ましく、インク組成物として使用することが特に好ましい。また、インク組成物として使用する場合には、(d)着色剤を含有することが好ましい。
【0014】
(a)ゴム粒子
本発明に用いることができるゴム粒子は、ガラス転移温度(Tg)が25℃(室温)以下の、好ましくはTgが−100〜25℃の単独重合体又は好ましくは共重合体粒子であり、いわゆる架橋ゴム(加硫ゴム)及び熱可塑性エラストマーが含まれる。これらのゴム・エラストマー粒子(本発明で、単に「ゴム粒子」という。)は、室温において小さい応力で相当に大きい変形を起こし、その変形から急速に元の形に戻る性質を有するゴム弾性を示す粒子であり、引張強さ(ヤング率)は0.1〜100MPaであることが好ましく、典型的には5〜20MPaがより好ましく挙げられる。
本発明の硬化性組成物はゴム粒子を含有するため、ゴム粒子の応力緩和効果により、硬化性組成物が硬化して得られる画像や硬化物が十分な柔軟性を有し、加えて、基材密着性が良化し、更には、インクジェットプリンタによる印刷時の吐出安定性に優れる。
また、本発明に用いることができるゴム粒子は、粒子内部に構造を有していても良い。粒子全体がほぼ組成の均一なゴム成分であってもよく、また、いわゆるコア・シェル構造を有していても良く、例えば、最外のシェル層がゴム成分からなる多層構造を有する粒子であってもよい。コア・シェル粒子等の多層構造を有する粒子である場合、粒子内部にガラス転移温度が25℃を超える樹脂や無機化合物が含まれていても良いが、粒子全体におけるゴム成分の割合が多い方が好ましく、粒子全体の80%以上がゴム成分から形成されていることがより好ましく、粒子全体の90%以上がゴム成分から形成されていることがさらに好ましい。
本発明に用いることができるゴム粒子の製造方法は、特に限定されずラテックス重合法等の公知の方法により製造して、固形分を分離乾燥して使用することができる。
他の製造方法は、塊状に重合された熱可塑性エラストマーを造粒して、エラストマー粒子とする方法である。
本発明の硬化性組成物中のゴム・エラストマー粒子は、1種を単独使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明に用いることができるゴム粒子は、ガラス転移温度(Tg)が25℃(室温)以下の単独重合体又は好ましくは共重合体粒子であって、室温における引張強さが5〜20MPaであることが好ましい。具体的にはイソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、エピクロロピドリンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ホスファゼンゴム等を架橋剤により架橋した架橋ゴムや、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン系、エチレン−酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニル系、天然ゴム系、フッ素ゴム系、trans−ポリイソプレン系及び塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等が例示できる。また、これらの架橋ゴムや熱可塑性エラストマーは、単独の単量体から得られた単独重合体でも良いが、複数の単量体から得られた共重合体であることが好ましい。共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などのいずれの共重合体であっても良く、また、これらの混合物から形成されていてもよい。またこれらの共重合体を水素添加した水添共重合体ゴム粒子(例えば、特開平2−84412号公報等)も使用できる。
前記共重合体を形成する単量体としては、前述のゴム弾性に寄与する共役ジエン単量体と共重合可能な他の共役ジエン単量体やエチレン性不飽和単量体が例示できる。
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン性不飽和脂肪族化合物、芳香族ビニル化合物、エチレン性不飽和カルボン酸、これら不飽和酸の塩、エチレン性不飽和エステル、エチレン性不飽和アミド、エチレン性不飽和ニトリル、重合性基を2つ以上有する架橋性化合物等が挙げられる。
【0016】
本発明に好ましく使用できる脂肪族共役ジエン系ゴム粒子としては、脂肪族共役ジエン単量体25〜70重量%、芳香族ビニル単量体5〜65重量%、エチレン性不飽和酸単量体10〜45重量%、及びこれらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体0〜30重量%よりなる単量体混合物を重合して得られる共重合体ラテックスから固形分を分離した粒子が含まれる。例えば、ブタジエンを主成分とし、スチレン、アクリル酸及びメタクリル酸を共重合したブタジエン系共重合体が挙げられる。
【0017】
本発明に好ましく使用できるエラストマー粒子としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体が含まれる。エチレン−酢酸ビニル共重合体はエチレンと酢酸ビニルを高温、高圧でラジカル重合して製造され、酢酸ビニル含量が約10〜33重量%の共重合体がゴム弾性に優れている。エチレン−酢酸ビニル系共重合体を加熱し、造粒して本発明に使用することができる。また、三井化学(株)から「ケミパール」の商品名で市販されているエチレン−酢酸ビニル共重合体の水性懸濁液(例えば、ケミパールA−300、ビカット軟化点40℃)からエラストマー粒子を分離して本発明の硬化性組成物に添加することができる。
【0018】
前記架橋ゴムの架橋形成方法としては、公知の硫黄系架橋剤や架橋助剤などを用いる方法の他に、過酸化物架橋、樹脂架橋、イオンクラスター形成架橋、水架橋(シラン架橋)、放射線架橋、マイクロ波架橋、超音波架橋による方法が挙げられる。
【0019】
ゴム粒子がその内部に含有していてもよい樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、及び、これら樹脂のポリマーアロイ等が例示できる。
ゴム粒子がその内部に含有していてもよい無機化合物としては、無機塩や無機酸化物等が挙げられ、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム等が例示できる。
【0020】
また、本発明に用いるゴム粒子には、劣化防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、粘着付与剤、発泡剤、有機改質剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0021】
本発明に用いるゴム粒子は、粒子表面に特定の官能基を有する粒子であってもよい。官能基としては、重合性基であることが好ましく、ラジカル重合性基及びカチオン重合性基がより好ましい。
ラジカル重合性基としては、例えば、エチレン性不飽和基が挙げられ、具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が好ましく挙げられる。
カチオン重合性基としては、例えば、オキシ環状基やビニルエーテル基が挙げられ、具体的には、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、及び、ビニルエーテル基等が好ましく挙げられ、エポキシ基及びオキセタニル基がより好ましい。
ゴム粒子の表面に重合性の官能基を導入する方法としては、公知の方法を応用することができ、例えば、複数の重合性基を有する単量体を重合させて一段階でゴム粒子表面に重合性基を導入する方法、ゴム粒子表面にある反応性基を利用してこの反応性基と結合可能な重合性基を有する反応試剤を反応させ重合性基を導入する方法等が例示できる。
【0022】
本発明に用いることができるゴム粒子に含まれるゴムは、ガラス転移温度が0℃以下であることが好ましく、−100〜0℃であることがより好ましく、−75〜−20℃であることがさらに好ましい。
本発明に用いることができるゴム粒子に含まれるゴム成分のヤング率は、0.1〜100MPaであることが好ましく、1〜20MPaであることがより好ましく、5〜20MPaであることがさらに好ましい。
【0023】
本発明に用いることができるゴム粒子の平均粒子径は、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがより好ましく、0.1〜1μmであることがさらに好ましい。
また、本発明の硬化性組成物中のゴム粒子は、重合性化合物や添加剤等により、膨潤していてもよく、硬化性組成物中で膨潤した後のゴム粒子の粒径も上記平均粒径の範囲であることが好ましい。
ゴム粒子の平均粒径が上記の範囲であると、硬化性組成物が硬化して得られる画像や硬化物が十分な柔軟性を有し、また、インクジェットプリンタによる印刷時の吐出安定性に優れるため好ましい。
本発明の硬化性組成物中又は硬化後の硬化性組成物中におけるゴム粒子の粒子径の測定方法としては、公知の方法を使用することができる。具体的には、レーザー回折法、動的光散乱法、静的光散乱法、動的画像法、静的画像法、画像解析法、電子顕微鏡法などが好ましく挙げられる。例えば、硬化性組成物中の粒子濃度が0.1〜1重量%になるように蒸留水などで希釈して、市販の平均粒子サイズ測定機(例えば、マイクロトラックUPA(日機装(株)製))で容易に測定することができる。さらに、レーザードップラー効果を利用した動的光散乱法は、小サイズまで粒径測定が可能であり好ましい。また、硬化後の硬化性組成物に対しては、例えば、硬化物の切片を電子顕微鏡等で観察する方法や画像解析する方法などが、容易に粒子サイズを測定できるため好ましい。
【0024】
本発明の硬化性組成物中におけるゴム粒子の含有量は、硬化性組成物の全重量に対して、1〜60重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましく、10〜30重量%であることがさらに好ましい。上記範囲であると、上述したようなゴム粒子の使用効果が十分に発揮できるため好ましい。
【0025】
(b)重合性化合物
本発明の硬化性組成物は、(b)重合性化合物を含有する。本発明に用いることのできる重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物、又は、カチオン重合性化合物が挙げられる。ラジカル重合性化合物としては、例えば特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特願平7−231444号等の各公報に記載されている光重合性組成物を用いた光硬化型材料が知られており、カチオン重合性化合物としては、例えば、カチオン重合系の光硬化性樹脂が知られており、最近では400nm以上の可視光以上の長波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂も、例えば特開平6−43633号、特開平8−324137号の各公報等に公開されている。
【0026】
<ラジカル重合性化合物>
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。また、単官能化合物よりも官能基を2つ以上持つ多官能化合物の方が好ましい。更に好ましくは多官能化合物を2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
【0027】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編「架橋剤ハンドブック」(1981年、大成社);加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編「UV・EB硬化技術の応用と市場」79頁(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著「ポリエステル樹脂ハンドブック」(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性乃至架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0028】
<カチオン重合性化合物>
本発明に用いることができるカチオン重合性化合物は、前述の光酸発生剤から発生する酸により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0029】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、脂肪族エポキシドなどが挙げられ、芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0030】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0031】
本発明に用いることのできる単官能及び多官能のエポキシ化合物を詳しく例示する。
単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0032】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0033】
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0034】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0035】
以下に、単官能ビニルエーテルと多官能ビニルエーテルを詳しく例示する。
単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0036】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0037】
本発明に使用できるオキセタン化合物は、少なくとも1つのオキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明の硬化性組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、硬化性組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後の硬化性組成物の被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0038】
分子内に1〜2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(1)〜(3)で示される化合物等が挙げられる。
【0039】
【化1】

【0040】
a1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
a2は、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられ、芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が、アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。また、Ra2は置換基を有していても良く、置換基としては、1〜6のアルキル基、フッ素原子が挙げられる。
【0041】
a3は、線状又は分枝状アルキレン基、線状又は分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基又はカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0042】
【化2】

【0043】
a3が上記多価基である場合、Ra4は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。
a5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32、又は、C(CH32を表す。
a6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又は、アリール基を表し、nは0〜2,000の整数である。Ra7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。下記式中、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基であり、mは0〜100の整数である。
【0044】
【化3】

【0045】
式(1)で表される化合物として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(OXT−212:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)が挙げられる。式(2)で表される化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(OXT−121:東亞合成(株)が挙げられる。また、式(3)で表される化合物としては、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221:東亞合成(株))が挙げられる。
【0046】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0047】
【化4】

【0048】
式(4)において、Ra1は、前記式(1)におけるのと同義である。また、他か連結基であるRa9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0049】
【化5】

【0050】
上記Aにおいて、Ra10はメチル基、エチル基又はプロピル基を表す。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
【0051】
また、本発明に好適に用いることのできるオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0052】
【化6】

【0053】
式(5)において、Ra8は前記式におけるのと同義である。Ra11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0054】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落番号0021ないし0084に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に用いることができる。
特開2004−91556号公報に記載されたオキセタン化合物も本発明に使用することができる。段落番号0022ないし0058に詳細に記載されている。
本発明で使用するオキセタン化合物のなかでも、硬化性組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
【0055】
本発明に用いることのできるカチオン重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、硬化性組成物硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、オキセタン化合物とエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、ビニルエーテル化合物とを併用することが好ましい。
硬化性組成物中のカチオン重合性化合物の含量は、組成物の全固形分に対し、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは30〜90重量%、更に好ましくは50〜85重量%の範囲である。
【0056】
<好ましい重合性化合物>
本発明に用いることのできる重合性化合物としては、(メタ)アクリル系モノマーあるいはプレポリマー、エポキシ系モノマーあるいはプレポリマー、オキセタン系モノマーあるいはプレポリマー、又は、ウレタン系モノマーあるいはプレポリマー等が好ましく用いられる。更に好ましくは、下記化合物である。
【0057】
2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、変性グリセリントリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ラクトン変性可撓性アクリレート、ブトキシエチルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート等。
【0058】
これらのアクリレート化合物は、従来UV硬化型インクに用いられてきた重合性化合物より、比較的粘度を下げることができ、安定したインク吐出性が得られ、重合感度、記録媒体との密着性も良好である。本発明においては、重合性化合物として上記アクリレート化合物を使用する場合、アクリレート化合物の含有量を、本発明の硬化性組成物の全重量に対して、好ましくは20〜95重量%、より好ましくは50〜95重量%、更に好ましくは70〜95重量%とすることが適当である。
【0059】
本発明においては、上述した重合性化合物として列挙されているモノマーは、低分子量であっても感作性が小さいものであり、なおかつ反応性が高く、粘度が低く、また、記録媒体への密着性に優れる。
更に感度、滲み、記録媒体との密着性をより改善するためには、上記モノアクリレートと、分子量400以上、好ましくは500以上の多官能アクリレートモノマー又は多官能アクリレートオリゴマーを併用することが、感度、密着性向上の点で好ましい。更に、単官能、二官能、三官能以上の多官能モノマーを併用することが特に好ましい。安全性を維持しつつ、更に、感度、滲み、記録媒体との密着性をより改善することができるので好ましい。オリゴマーとしてはエポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマーが特に好ましい。
【0060】
PETフィルムやPPフィルムといった柔軟な記録媒体への記録では、上記化合物群の中から選ばれるモノアクリレートと、多官能アクリレートモノマー又は多官能アクリレートオリゴマーとの併用が膜に可撓性を持たせて密着性を高めつつ、膜強度を高められるため好ましい。モノアクリレートとしてはステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミスチルアクリレート、イソステアリルアクリレートが感度も高く、低収縮性でカールの発生を防止出来るとともに、滲み防止、印刷物の臭気、照射装置のコストダウンの点で好ましい。
なお、メタクリレートは、皮膚低刺激性がアクリレートより良好である。
なお、上記化合物の中でもアルコキシアクリレートを70重量%未満の量で使用し、残部をアクリレートとする場合、良好な感度、滲み特性、臭気特性を有するため好ましい。
【0061】
(c)重合開始剤
本発明の硬化性組成物は、(c)重合開始剤を含有する。本発明で用いることができる重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤を使用することができる。前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の硬化性組成物に用いることのできるラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤は、外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合を開始するために使用される外部エネルギーは、熱及び活性放射線に大別され、それぞれ、熱重合開始剤及び光重合開始剤が使用される。活性放射線には、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。
【0062】
<ラジカル重合開始剤>
本発明で用いることができるラジカル重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(l)アルキルアミン化合物等が好ましく挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、上記(a)〜(l)の化合物を単独若しくは組み合わせて使用してもよい。本発明におけるラジカル重合開始剤は単独若しくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
【0063】
<カチオン重合開始剤>
本発明で用いることができるカチオン重合開始剤(光酸発生剤)としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が好ましく挙げられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適なカチオン重合開始剤の例を以下に挙げる。
【0064】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C654-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩を挙げることができる。第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができる。第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0065】
(d)着色剤
本発明の硬化性組成物は、(d)着色剤を含有することが好ましい。特に、本発明の硬化性組成物をインク組成物として使用する場合には、(d)着色剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることのできる着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、任意の公知の着色剤から選択して使用することができる。本発明の硬化性組成物、インク組成物又はインクジェット記録用インク組成物に好適に使用し得る着色剤は、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能しないことが好ましい。これは、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないためである。
【0066】
<顔料>
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、又は顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0067】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0068】
赤或いはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0069】
青或いはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0070】
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
【0071】
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
【0072】
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0073】
顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、Zeneca社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100重量部に対し、1〜50重量部添加することが好ましい。
【0074】
硬化性組成物及びインク組成物において、顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記カチオン重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインクであることが好ましく、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、(a)カチオン重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択することが分散適性や硬化性組成物、インク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0075】
顔料の平均粒径は、0.02〜0.4μmにするのが好ましく、0.02〜0.1μmとするのが更に好ましく、より好ましくは、0.02〜0.07μmの範囲である。
顔料粒子の平均粒径を上記好ましい範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、硬化性組成物及びインク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができる。
【0076】
<染料>
本発明に用いることのできる染料は、油溶性のものが好ましい。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解する色素の質量)が1g以下であるものを意味し、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下である。従って、所謂、水に不溶性の油溶性染料が好ましく用いられる。
【0077】
本発明に用いることのできる染料は、硬化性組成物又はインク組成物に必要量溶解させるために上記記載の染料母核に対して油溶化基を導入することも好ましい。
油溶化基としては、長鎖、分岐アルキル基、長鎖、分岐アルコキシ基、長鎖、分岐アルキルチオ基、長鎖、分岐アルキルスルホニル基、長鎖、分岐アシルオキシ基、長鎖、分岐アルコキシカルボニル基、長鎖、分岐アシル基、長鎖、分岐アシルアミノ基長鎖、分岐アルキルスルホニルアミノ基、長鎖、分岐アルキルアミノスルホニル基及びこれら長鎖、分岐置換基を含むアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニル基、アリールアミノスルホニル基、アリールスルホニルアミノ基等が挙げられる。
また、カルボン酸、スルホン酸を有する水溶性染料に対して、長鎖、分岐アルコール、アミン、フェノール、アニリン誘導体を用いて油溶化基であるアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基に変換することにより染料を得てもよい。
【0078】
前記油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い油溶性染料を用いることにより、硬化性組成物及びインク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、硬化性組成物及びインク組成物の保存安定性が良くなる。
また、退色、特にオゾンなどの酸化性物質に対する耐性や硬化特性を向上させるために、酸化電位が貴である(高い)ことが望ましい。このため、本発明で用いる油溶性染料として、酸化電位が1.0V(vsSCE)以上であるものが好ましく用いられる。酸化電位は高いほうが好ましく、酸化電位が1.1V(vsSCE)以上のものがより好ましく、1.15V(vsSCE)以上のものが特に好ましい。
【0079】
イエロー色の染料としては、特開2004−250483号公報の記載の一般式(Y−I)で表される構造の化合物が好ましい。
特に好ましい染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)で表される染料であり、具体例として特開2004−250483号公報の段落番号[0060]〜[0071]に記載の化合物が挙げられる。なお、該公報記載の一般式(Y−I)の油溶性染料はイエローのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色の硬化性組成物又はインクに用いてもよい。
【0080】
マゼンタ色の染料としては、特開2002−114930号公報に記載の一般式(3)、(4)で表される構造の化合物が好ましく、具体例としては、特開2002−114930号公報の段落番号[0054]〜[0073]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]〜[0122]に記載されている一般式(M−1)〜(M−2)で表されるアゾ染料であり、具体例として特開2002−121414号公報の段落番号[0123]〜[0132]に記載の化合物が挙げられる。なお、該公報記載の一般式(3)、(4)、(M−1)〜(M−2)の油溶性染料はマゼンタのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色の硬化性組成物又はインクに用いてもよい。
【0081】
シアン色の染料としては、特開2001−181547号公報に記載の式(I)〜(IV)で表される染料、特開2002−121414号公報の段落番号[0063]〜[0078]に記載されている一般式(IV−1)〜(IV−4)で表される染料が好ましいものとして挙げられ、具体例として特開2001−181547号公報の段落番号[0052]〜[0066]、特開2002−121414号公報の段落番号[0079]〜[0081]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]〜[0196]に記載されている一般式(C−I)、(C−II)で表されるフタロシアニン染料であり、更に一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が好ましい。この具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]〜[0201]に記載の化合物が挙げられる。なお、前記式(I)〜(IV)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)、(C−II)の油溶性染料はシアンのみでなく、ブラックインクやグリーンインクなどのいかなる色の硬化性組成物又はインクに用いてもよい。
【0082】
−酸化電位−
本発明における染料の酸化電位の値(Eox)は、当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP.Delahay著“New Instrumental Methods in Electrochemistry”(1954年,Interscience Publishers社刊)や、A.J.Bard他著“Electrochemical Methods”(1980年、John Wiley & Sons社刊)、藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
具体的に酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10-2〜1×10-6モル/リットル溶解して、サイクリックボルタンメトリーや直流ポーラログラフィー装置により、作用極として炭素(GC)を、対極として回転白金電極を用いて酸化側(貴側)に掃引したときの酸化波を直線で近似して、この直線と残余電流・電位直線との交点と、直線と飽和電流直線との交点(又はピーク電位値を通る縦軸に平行な直線との交点)とで作られる線分の中間電位値をSCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。また、用いる支持電解質や溶媒は、被験試料の酸化電位や溶解性により適当なものを選ぶことができる。用いることができる支持電解質や溶媒については藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)101〜118ページに記載がある。
【0083】
以下に、本発明で使用しうる染料の具体例を示すが、本発明に用いられる染料は、下記の具体例に限定されるものでない。
なお、下記例示化合物の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する。
【0084】
【化7】

【0085】
【化8】

【0086】
【化9】

【0087】
【化10】

【0088】
【化11】

【0089】
【化12】

【0090】
【化13】

【0091】
【化14】

【0092】
【化15】

【0093】
【化16】

【0094】
【化17】

【0095】
【化18】

【0096】
【化19】

【0097】
これらの着色剤は硬化性組成物中、固形分換算で1〜20重量%添加されることが好ましく、2〜10重量%がより好ましい。
【0098】
(e)増感色素
本発明の硬化性組成物及びインク組成物には、特にインクジェット記録用に用いる場合、特定の活性放射線を吸収して上記重合開始剤の分解を促進させるために増感色素を添加してもよい。増感色素は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感色素は、重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより重合開始剤は化学変化を起こして分解し、ラジカル、酸或いは塩基を生成する。
好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
【0099】
より好ましい増感色素の例としては、下記式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0100】
【化20】

【0101】
式(IX)中、A1は硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA2及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0102】
【化21】

【0103】
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又は−S−を表す。また、Wは式(IX)に示したものと同義である。
【0104】
【化22】

【0105】
式(XI)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0106】
【化23】

【0107】
式(XII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−、−NR62−又は−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
【0108】
【化24】

【0109】
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子又は−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0110】
式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す(E−1)〜(E−20)が挙げられる。
なお、下記具体例の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する。
【0111】
【化25】

【0112】
【化26】

【0113】
(f)共増感剤
本発明の硬化性組成物及びインク組成物は、共増感剤を含有することも好ましい。本発明において共増感剤は、増感色素の活性放射線に対する感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
この様な共増感剤の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0114】
共増感剤の別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0115】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0116】
(g)その他の成分
本発明の硬化性組成物及びインク組成物には、必要に応じて、他の成分を添加することができる。その他の成分としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、界面活性剤、塩基性化合物等が挙げられる。
【0117】
〔紫外線吸収剤〕
本発明においては、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15重量%であることが好ましい。
【0118】
〔酸化防止剤〕
硬化性組成物及びインク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8重量%であることが好ましい。
【0119】
〔褪色防止剤〕
本発明の硬化性組成物及びインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8重量%であることが好ましい。
【0120】
〔導電性塩類〕
本発明の硬化性組成物及びインク組成物には、吐出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0121】
〔溶剤〕
本発明の硬化性組成物及びインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
本発明の硬化性組成物及びインク組成物に用いることができる溶剤としては、ゴム粒子中のゴムの溶解度パラメータの値(SP値)と用いる溶剤の溶解度パラメータの値との差が、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は硬化性組成物全体に対し0.1〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。
【0122】
〔高分子化合物〕
本発明の硬化性組成物及びインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0123】
〔界面活性剤〕
本発明の硬化性組成物及びインク組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0124】
〔塩基性化合物〕
塩基性化合物は、硬化性組成物及びインク組成物の保存安定性を向上させる観点から添加することが好ましい。本発明に用いることができる塩基性化合物としては、公知の塩基性化合物を用いることができ、例えば、無機塩等の塩基性無機化合物や、アミン類等の塩基性有機化合物を好ましく用いることができる。
【0125】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0126】
(2)硬化性組成物の性質
本発明の硬化性組成物は、上述のように、(a)ゴム粒子、(b)重合性化合物、及び、(c)重合開始剤を必須成分として含有し、任意に着色剤等を含有するものである。これらの成分は、硬化性組成物全体の重量に対して、(a)ゴム粒子が、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、(b)重合性化合物が、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%、(c)重合開始剤が、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜20重量%、さらに着色剤を含む場合は、着色剤が好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜20重量%の量であって各成分の合計の重量%が100重量%となるように含有することが適当である。前記各成分量は、本発明の硬化性組成物をインク組成物として用いる場合、前記の範囲であることが特に好ましい。
【0127】
また、本発明において、硬化性組成物又はこれを含むインク組成物を、インクジェット記録用として用いる場合には、吐出性を考慮し、吐出時の温度(例えば、40〜80℃、好ましくは25〜30℃)において、本発明の硬化性組成物及びインク組成物の粘度が、好ましくは7〜30mPa・sであり、より好ましくは7〜20mPa・sである。例えば、本発明の硬化性組成物及びインク組成物の室温(25〜30℃)での粘度は、好ましくは35〜500mPa・s、より好ましくは35〜200mPa・sである。本発明の硬化性組成物及びインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中への浸透を回避し、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となる。更に吐出液滴着弾時の滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0128】
本発明の硬化性組成物及びインク組成物の表面張力は、例えば好ましくは20〜30mN/m、より好ましくは23〜28mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点はで30mN/m以下が好ましい。
【0129】
(3)インクジェット記録方法及び装置
本発明の硬化性組成物及びこれを含有するインク組成物は、インクジェット記録用として使用されることが好ましい。
本発明に好適に採用され得るインクジェット記録方法について、以下説明する。
【0130】
(3−1)インクジェット記録方法
本発明は、上記インク組成物を、被記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性放射線を照射し、もってインクを硬化して画像を形成する方法を提供する。即ち、本発明は、
(a)被記録媒体上にインク組成物を吐出する工程、及び
(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程、
を含むインクジェット記録方法であって、
前記インク組成物が本発明のインク組成物であるインクジェット記録方法に関する。
硬化したインク組成物は、被記録媒体上に画像を形成する。
活性放射線のピーク波長は200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがより好ましい。また、活性放射線の出力は、2,000mJ/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは、10〜2,000mJ/cm2であり、さらに好ましくは、20〜1,000mJ/cm2であり、特に好ましくは、50〜800mJ/cm2である。
【0131】
さらに、本発明のインクジェット記録方法について、平版印刷版にインク組成物を吐出して画像を形成することを含む平版印刷版の製造方法を例に説明する。
本発明の平版印刷版は、親水性支持体と、該親水性支持体上に形成された疎水性画像とを有する。この平版印刷版の製造方法は、以下の工程;
(a)本発明のインク組成物を親水性支持体上に吐出する工程、及び、
(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させることにより、前記インク組成物が硬化してなる疎水性画像を前記親水性支持体上に形成する工程、
を含む。
【0132】
(3−1−1)平版印刷版に使用する親水性支持体
ここで、平版印刷版は、支持体と、該支持体上に形成された画像とを有する。
従来、平版印刷版としては、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するいわゆるPS版が広く用いられてきた。このPS版の製造方法としては、通常、リスフィルムを介してマスク露光(面露光)した後、非露光部を溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。しかし、近年、画像情報を、コンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力するディジタル化技術が広く普及し、それに対応した新しい画像出力方式が求められるようになった。特に、リスフィルムを使用することなく、レーザー光のような嗜好性の高い光をディジタル化された画像情報に従って走査し、直接印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が開発されている。
このような走査露光を可能にする平版印刷版を得るための方式として、インク組成物又はインクジェット記録用インク組成物によって直接平版印刷版を作製する方法が挙げられる。これは、支持体、好ましくは親水性の支持体上にインクジェット方式等によってインクを吐出し、これを活性放射線に露光することにより、インク組成物又はインクジェット記録用インクの部分が露光して所望の画像(好ましくは、疎水性画像)を有する印刷版を得るものである。このような方式に適したインク組成物又はインクジェット記録用インクが本件発明のインク組成物又はインクジェット記録用インクである。
本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インクが吐出される支持体(被記録媒体)としては、特に限定されず、寸度的に安定な板状の支持体であればよい。支持体は、親水性の支持体であることが好ましい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム及びアルミニウム板が挙げられる。なかでも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
【0133】
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10重量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知の素材のものを適宜利用することができる。
【0134】
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましい。
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すことが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び画像記録層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0135】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も用いてもかまわない。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流又は直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、更に、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0136】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸又はそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80重量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2であるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られるので好ましい。
【0137】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ、陽極酸化皮膜を有する基板をそのまま用いても良いが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などを一層改良するため、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、及び親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろんこれら拡大処理、封孔処理は、これらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。
【0138】
〔封孔処理〕
封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理など無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔、熱水による封孔処理でも可能である。
なかでも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理及び熱水による封孔処理が好ましい。以下にそれぞれ説明する。
【0139】
<無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理>
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。なかでも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
【0140】
水溶液中の無機フッ素化合物の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.05重量%以上であるのがより好ましく、また、耐汚れ性の点で、1重量%以下であるのが好ましく、0.5重量%以下であるのがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液は、更に、リン酸塩化合物を含有することが好ましい。リン酸塩化合物を含有すると、陽極酸化皮膜の表面の親水性が向上するため、機上現像性及び耐汚れ性を向上させることができるので好ましい。
【0141】
リン酸塩化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。なかでも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の組み合わせは、特に限定されないが、水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。
水溶液中のリン酸塩化合物の濃度は、機上現像性及び耐汚れ性の向上の点で、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.1重量%以上であるのがより好ましく、また、溶解性の点で、20重量%以下であるのが好ましく、5重量%以下であるのがより好ましい。
【0142】
水溶液中の各化合物の割合は、特に限定されないが、無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の重量比が、1/200〜10/1であるのが好ましく、1/30〜2/1であるのがより好ましい。
また、水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
また、水溶液は、pH1以上であるのが好ましく、pH2以上であるのがより好ましく、また、pH11以下であるのが好ましく、pH5以下であるのがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。これらは単独で1回又は複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、浸漬法が好ましい。浸漬法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0143】
<水蒸気による封孔処理>
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧又は常圧の水蒸気を連続的に又は非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、105℃以下であるのが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧−50mmAq)から(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.008×105〜1.043×105Pa)であるのが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0144】
<熱水による封孔処理>
水蒸気による封孔処理は、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸漬させる方法が挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)又は有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましい。
また、熱水に浸漬させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
本発明に用いられる親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウムなどの水溶液で浸漬処理し、又は電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが挙げられる。
本発明において、支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであることが好ましい。この範囲であると、画像記録層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られるので好ましい。
【0145】
(3−1−2)インク組成物を前記親水性支持体上に吐出する工程
本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インク組成物を上記親水性支持体の表面上に吐出する場合、インク組成物又はインクジェット記録用インク組成物を好ましくは40〜80℃、より好ましくは25〜30℃に加熱して、インク組成物の粘度を好ましくは7〜30mPa・s、より好ましくは7〜20mPa・sに下げた後に吐出することが好ましい。特に、25℃におけるインク粘度が35〜500mP・sのインク組成物を用いると大きな効果を得ることが出来るので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インク組成物又はインクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。従って、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、温度の制御幅は、設定温度の±5℃、好ましくは設定温度の±2℃、より好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0146】
(3−1−3)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させることにより、前記インク組成物が硬化してなる疎水性画像を前記親水性支持体上に形成する工程
親水性支持体の表面上に吐出された上記インク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明の上記インク組成物に含まれる重合開始系中の増感色素が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始系中の重合開始剤と接触することによって重合開始剤が分解し、もって重合性化合物がラジカル重合して硬化するためである。
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性放射線のピーク波長は、増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nm、好ましくは、300〜450nm、より好ましくは、350〜450nmであることが適当である。また、本発明では、重合開始系は、低出力の活性放射線であっても十分な感度を有するものである。従って、活性放射線の出力は、例えば、2,000mJ/cm2以下、好ましくは、10〜2,000mJ/cm2、より好ましくは、20〜1,000mJ/cm2、さらに好ましくは、50〜800mJ/cm2の照射エネルギーであることが適当である。また、活性放射線は、露光面照度が、例えば、10〜2,000mW/cm2、好ましくは、20〜1,000mW/cm2で照射されることが適当である。
【0147】
本発明の上記インク組成物は、このような活性放射線に、例えば、0.01〜120秒、好ましくは、0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(例えば、0.01〜0.5秒、好ましくは、0.01〜0.3秒、より好ましくは、0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。WO99/54415号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。
【0148】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体に対しても、着弾したインクのドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインクから順に重ねることにより、下部のインクまで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、臭気の低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明の上記インク組成物は、活性放射線の照射により硬化し、疎水性画像を前記親水性支持体表面上に形成する。
【0149】
(3−2)インクジェット記録装置
本発明に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、市販のインクジェット記録装置が使用できる。即ち、本発明においては、市販のインクジェット記録装置を用いて被記録媒体へ記録することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む。
インク供給系は、例えば、本発明の上記インク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1〜100pl、好ましくは、8〜30plのマルチサイズドットを例えば、320×320〜4,000×4,000dpi、好ましくは、400×400〜1,600×1,600dpi、より好ましくは、720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0150】
上述したように、放射線硬化型インクは、吐出されるインクを一定温度にすることが望ましいことから、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0151】
活性放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェットには、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性放射線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
また、LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、特に好ましくは50〜800mW/cm2である。
【実施例】
【0152】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、以下に記載の「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を表すものとする。
本発明で使用したCromophtal Yellow LA、Cinquasia Mazenta RT−355D、Irgalite Blue GLVO、Microlith Black C−K、Irgacure 184、及び、Darocur ITXはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(CSC)製の市販品である。
なお、以下の実施例は各色のUVインクジェット用インクに係るものである。
【0153】
[合成例1]
(ゴム粒子Aの作製)
ラウリルアクリレート(和光純薬(株)製)80重量部、エチレングリコールジアクリレート(和光純薬(株)製)20重量部、水200重量部、界面活性剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(和光純薬(株)製)5重量部を三ツ口フラスコに入れ、窒素を導入しながら、80℃に昇温する。その後約30分撹拌後、過硫酸カリウム(K228、KPS)を1重量部添加し、80℃で6時間乳化重合をおこない、反応終了後、反応液を室温まで冷却後、塩化カリウム(和光純薬(株)製)飽和水溶液を添加し、塩析をおこない、沈殿物を3回デカント水洗後、室温で真空乾燥することで、粒径約0.8μmのゴム粒子を得た。
【0154】
[合成例2]
(ゴム粒子Bの作製)
ヘキシルアクリレート(和光純薬(株)製)80重量部、エチレングリコールジアクリレート(和光純薬(株)製)20重量部、水200重量部、界面活性剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(和光純薬(株)製)5重量部を三ツ口フラスコに入れ、窒素を導入しながら、80℃に昇温する。その後約30分撹拌後、過硫酸カリウム(K228、KPS)を1重量部添加し、80℃で6時間乳化重合をおこない、反応終了後、反応液を室温まで冷却後、塩化カリウム(和光純薬(株)製)飽和水溶液を添加し、塩析をおこない、沈殿物を3回デカント水洗後、室温で真空乾燥することで、粒径約0.9μmのゴム粒子を得た。
【0155】
[合成例3]
(ゴム粒子Cの作製)
ラウリルアクリレート(和光純薬(株)製)85重量部、ジビニルベンゼン(東京化成工業(株)製)15重量部、水200重量部、界面活性剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(和光純薬(株)製)5重量部を三ツ口フラスコに入れ、窒素を導入しながら、80℃に昇温する。その後約30分撹拌後、過硫酸カリウム(K228、KPS)を1重量部添加し、80℃で6時間乳化重合をおこない、反応終了後、反応液を室温まで冷却後、塩化カリウム(和光純薬(株)製)飽和水溶液を添加し、塩析をおこない、沈殿物を3回デカント水洗後、室温で真空乾燥することで、粒径約1.0μmのゴム粒子を得た。
【0156】
[実施例1]
《インクの調製》
<イエローインク1>
・ゴム粒子A 15.0部
・Actilane 421(Akcros社製アクリレートモノマー) 44.4部
・Photomer 2017(EChem社製UV希釈剤) 20.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製分散剤) 0.4部
・Cromophtal Yellow LA(CSC社製顔料) 3.6部
・Genorad 16(Rahn社製安定剤) 0.05部
・Lucirin TPO(BASF社製光重合開始剤) 8.5部
・ベンゾフェノン(光重合開始剤) 4.0部
・Irgacure 184(CSC社製光重合開始剤) 4.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
・9,10−ジブトキシアントラセン 3.0部
【0157】
<マゼンタインク1>
・ゴム粒子A 15.0部
・Actilane 421(Akcros社製アクリレートモノマー) 36.4部
・Photomer 2017(EChem社製UV希釈剤) 20.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製分散剤) 0.4部
・Cinquasia Mazenta RT−355D(CSC社製顔料) 3.6部
・Genorad 16(Rahn社製安定剤) 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3
(ISP Europe社製ビニルエーテル) 8.0部
・Lucirin TPO(BASF社製光重合開始剤) 8.5部
・ベンゾフェノン(光重合開始剤) 4.0部
・Irgacure 184(CSC社製光重合開始剤) 4.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
・9,10−ジブトキシアントラセン 3.0部
【0158】
<シアンインク1>
・ゴム粒子A 15.0部
・Actilane 421(Akcros社製アクリレートモノマー) 36.4部
・Photomer 2017(EChem社製UV希釈剤) 20.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製分散剤) 0.4部
・Irgalite Blue GLVO(CSC社製顔料) 3.6部
・Genorad 16(Rahn社製安定剤) 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3
(ISP Europe社製ビニルエーテル) 8.0部
・Lucirin TPO(BASF社製光重合開始剤) 8.5部
・ベンゾフェノン(光重合開始剤) 4.0部
・Irgacure 184(CSC社製光重合開始剤) 4.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
・9,10−ジブトキシアントラセン 3.0部
【0159】
<ブラックインク1>
・ゴム粒子A 15.0部
・Actilane 421(Akcros社製アクリレートモノマー) 40.4部
・Photomer 2017(EChem社製UV希釈剤) 20.0部
・Solsperse 32000(Noveon社製分散剤) 0.4部
・Microlith Black C−K(CSC社製顔料) 2.6部
・Genorad 16(Rahn社製安定剤) 0.05部
・Rapi−Cure DVE−3 5.0部
(ISP Europe社製ビニルエーテル)
・Lucirin TPO(BASF社製光重合開始剤) 8.5部
・ベンゾフェノン(光重合開始剤) 4.0部
・Irgacure 184(CSC社製光重合開始剤) 4.0部
・Byk 307(BYK Chemie社製消泡剤) 0.05部
・9,10−ジブトキシアントラセン 3.0部
【0160】
以上の様にして調製した粗製の各色インク1を絶対ろ過精度2μmのフィルターにてろ過し、各色のインク1とした。
【0161】
《インクジェット画像記録》(多色画像の評価)
次に、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体への記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に70℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、8〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はUV光を露光面照度100mW/cm2、に集光し、被記録媒体上にインク着弾した0.1秒後に照射が始まるよう露光系、主走査速度及び射出周波数を調整した。また、露光時間を可変とし、露光エネルギーを照射した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0162】
上記調製した各色インクを用い、環境温度25℃にて、ブラック→シアン→マゼンタ→イエローの順に射出、Integration Technology社製メタルハライドランプVzero085により紫外線を1色毎に照射した。触診で粘着性が無くなる様、完全に硬化するエネルギーとして、1色あたりのトータル露光エネルギーが一律100mJ/cm2で露光した。被記録媒体としては、砂目立てしたアルミニウム支持体、印刷適性を持たせた表面処理済みの透明二軸延伸ポリプロピレンフィルム、軟質塩化ビニルシート、キャストコート紙、市販の再生紙に各カラー画像を記録したところ、いずれもドットの滲みの無い高解像度の画像が得られた。また、60分連続印字を行った後も良好な吐出性を示した。更に、上質紙においてもインクが裏周りすることなく、十分にインクが硬化した。また、フィルムに記録したインクには十分な可とう性があり、折り曲げてもインクにクラックが入ることは無く、セロテープ(登録商標)剥離による密着性テストにおいても問題無かった。
【0163】
[実施例2〜7、比較例1及び2:ラジカル重合による画像作製]
《インクの調製》
以下に記載の方法に従って、マゼンタインク2〜9を調製した。
【0164】
[実施例2]
<マゼンタインク2>
ゴム粒子Aの代わりにゴム粒子Bを用いた以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク2を調製した。
【0165】
[実施例3]
<マゼンタインク3>
ゴム粒子Aの代わりにゴム粒子Cを用いた以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク3を調製した。
【0166】
[実施例4]
<マゼンタインク4>
ゴム粒子Aの代わりにゴム粒子D:ケミパールA−300(三井化学(株)製)を用いた以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク4を調製した。
【0167】
[実施例5]
<マゼンタインク5>
9,10−ジブトキシアントラセン 3.0部の代わりにDarocur ITX(CSC社製)3.0部を用いた以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク5を調製した。
【0168】
[実施例6]
<マゼンタインク6>
Cinquasia Mazenta RT−355D 3.6重量部の代わりに下記油溶性染料M−1(酸化電位 +1.37V)3.6重量部を用いた以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク6を調製した。
【0169】
【化27】

【0170】
[実施例7]
<マゼンタインク7>
Cinquasia Mazenta RT−355D 3.6重量部の代わりに下記油溶性染料M−2(酸化電位 +0.94V)3.6重量部を用いた以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク7を調製した。
【0171】
【化28】

【0172】
[比較例1]
<マゼンタインク8>
ゴム粒子Aを用いなかった以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク8を調製した。
【0173】
[比較例2]
<マゼンタインク9>
ゴム粒子Aの代わりに架橋ポリメチルメタクリレート粒子(粒子径1.0μm、綜研化学(株)製)を用いた以外は、前記マゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク9を調製した。
【0174】
以上の実施例2〜7、比較例1及び2において調製した粗製のマゼンタインク2〜9は、それぞれ絶対ろ過精度2μmのフィルターにてろ過し、マゼンタインク2〜9とした。
【0175】
また、前記実施例2〜7、比較例1及び2で作製したインク組成物において、インクの吐出温度でのインク粘度は、7〜20mPa・sの範囲内であった。
【0176】
《インクジェット画像記録》
以上のようにして調製した、実施例2〜7、比較例1及び2のマゼンタインク2〜9と、実施例1で調製したマゼンタインク1を用いて、実施例1に記載の方法と同様にして、マゼンタ画像を作製した。
【0177】
<インクジェット画像の評価>
各形成した画像について、下記に記載の方法に準じて、吐出安定性、硬化に必要な感度、硬化性、密着性、膜柔軟性の評価を行った。
【0178】
1.吐出安定性の評価
吐出安定性は、得られたインク組成物をインクジェットプリンタ及び印字条件にて60分連続印字した後、問題なく吐出できるものをA、一部サテライトを生じる場合をB、ノズル欠が生じる場合をCとして評価した。
インクジェットプリンタ及び印字条件:ヘッドとしてせん断モードピエゾヘッド(コニカミノルタ社製KM512SH:最小液滴量4pL、ノズル数512個、ノズル密度360ノズル/25.4mm)をノズルが千鳥状に配列されるように3個のヘッドを記録媒体移動方向に並べたノズル密度1080dpiヘッドユニットを、記録媒体の幅方向に渡って印字可能なように、15セット配設したワンパスヘッドユニット(記録幅542mm)を搭載した描画装置を利用した。減圧機能を有する10Lの容量を有するインクタンクにインクを導入し、−38kPaに減圧してインク中の溶存気体を脱気したインクを、静圧式圧力制御タンク(容量50mL)を介して内径2mmのテフロン(登録商標)製柔軟チューブにより上記ヘッドユニットに導入した。静圧式圧力タンクの高さをヘッドに対して制御する事によりヘッドの内圧は−5.0kPaに調整され、ヘッドのノズル部でのメニスカス形状を制御した。またヘッドの内蔵ヒータにヘッド内でのインク温度が55℃になるようにした。ヘッドの駆動電圧は26Vとし、駆動周波数23kHzのバイナリモードで吐出を行った。描画ピッチは記録媒体幅方向1,080dpi×記録媒体搬送方向2000dpi(ヘッドスキャン速度292mm/s)とし、すなわち記録媒体の連続搬送を行いつつワンパス印字を行った。またヘッドの記録媒体搬送方向下流にはUV光源(Integration Technology社製Vzero270 2台を記録媒体幅方向に配置)を配置し、記録媒体上に描画されたインクにUV光照射されるようになっている。また上記ヘッドのクリーニング手段として、ヘッドのノズル吸引および予備吐出を行う手段を有し、適宜、クリーニングを実施する。
【0179】
2.硬化感度の測定
紫外線照射後の画像面において、粘着感の無くなる最低露光エネルギー量(mJ/cm2)を硬化感度と定義した。数値が小さいものほど高感度であることを表す。
【0180】
3.密着性の評価(クロスハッチテスト)
被記録媒体との密着性の評価は、クロスハッチテスト(EN ISO2409)により評価した。
【0181】
4.膜柔軟性
膜柔軟性の評価は、シートとしてAvery 400 permanent SA Vinyl(Avery社製)に印刷した前記印刷物を10回折り曲げた後に硬化膜に生じた亀裂の程度によっても評価した。この折り曲げ試験は、亀裂がまったく生じない状態を5点とした5段階評価で行い、3点以上を実用上問題の無い状態と評価した。
【0182】
5.画像及び耐刷性の評価
(支持体の作製)
Si:0.06重量%、Fe:0.30重量%、Cu:0.025重量%、Mn:0.001重量%、Mg:0.001重量%、Zn:0.001重量%、Ti:0.03重量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理及びろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作製した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム板を得た。なお、得られたアルミニウムの平均結晶粒径の短径は50μm、長径は300μmであった。このアルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す表面処理に供しアルミニウム支持体を作成した。
【0183】
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(j)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後には、ニップローラーで液切りを行った。
【0184】
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(パミス)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。研磨剤の平均粒径は30μm、最大粒径は100μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は45mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0185】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度2.6重量%、アルミニウムイオン濃度6.5重量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を10g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0186】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1重量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5重量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0187】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007重量%含む。)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間が0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm3であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0188】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26重量%、アルミニウムイオン濃度6.5重量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.50g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0189】
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15重量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5重量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0190】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸5.0g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間が0.8msec、duty比1:1、台形の炬形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0191】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26重量%、アルミニウムイオン濃度6.5重量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.12g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0192】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25重量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5重量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0193】
(j)陽極酸化処理
陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電部長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一及び第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5重量%含む)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0194】
(平版印刷版の作製と評価)
上記で作製したアルミニウム支持体上に、得られたインク組成物を用いて印字し、実施例1と同様にして画像を形成し、硬化させた。
これを平版印刷版として、以下の方法で、画像の評価、及び耐刷性の評価を行った。
【0195】
5−a.画像の評価
本発明のインク組成物により作製した平版印刷版を、ハイデルKOR−D機に掛け、インク〔枚葉用VALUES−G紅(大日本インク(株)製)〕と湿し水〔Ecolity2(富士写真フイルム(株)製)〕とを供給して印刷を行った。100枚印刷後の印刷物を目視で以下の基準により評価した。
○:画像部の白ヌケ、及び、非画像部の汚れのない画像が得られた。
△:画像部に僅かな白ヌケ、及び/又は、非画像部に僅かな汚れが観察された。
×:画像部の白ヌケ、及び/又は、非画像部の汚れが観察され、実用上問題のあるレベルであった。
5−b.耐刷性の評価
そのまま印刷を継続し、刷了枚数を耐刷性の指標として相対比較した(基準として、マゼンタインク1を用いた場合の値を100とした。)。数値が大きいものほど高耐刷であり好ましい。
これらの評価結果を表1に示す。なお、密着性、膜柔軟性、画像及び耐刷性の評価については、500mJ/cm2で硬化した場合について評価を行った。
【0196】
【表1】

【0197】
[実施例8]
《インクの調製》
<イエローインク2>
・ゴム粒子A 15.0重量部
・C.I.ピグメントイエロー13 5重量部
・DISPERBYK 168(BYK Chemie社製顔料分散剤) 4重量部
・光カチオン重合開始剤:トリフェニルスルフォニウム塩(UVI−6992、ダウケミカル社製) 6重量部
・増感色素:9,10−ジブトキシアントラセン 3重量部
・重合性化合物
モノマー:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製)
30重量部
モノマー:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製) 37重量部
【0198】
<マゼンタインク10>
・ゴム粒子A 15.0重量部
・C.I.ピグメントレッド57:1 5重量部
・DISPERBYK 168(BYK Chemie社製顔料分散剤) 4重量部
・光カチオン重合開始剤:トリフェニルスルフォニウム塩(UVI−6992、ダウケミカル社製) 6重量部
・増感色素:9,10−ジブトキシアントラセン 3重量部
・重合性化合物
モノマー:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製)
30重量部
モノマー:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製) 37重量部
【0199】
<シアンインク2>
・ゴム粒子A 15.0重量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 4重量部
・DISPERBYK 168(BYK Chemie社製顔料分散剤) 3重量部
・光カチオン重合開始剤:トリフェニルスルフォニウム塩(UVI−6992、ダウケミカル社製) 6重量部
・増感色素:9,10−ジブトキシアントラセン 3重量部
・重合性化合物
モノマー:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製)
30重量部
モノマー:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製) 39重量部
【0200】
<ブラックインク2>
・ゴム粒子A 15.0重量部
・C.I.ピグメントブラック7 4重量部
・DISPERBYK 168(BYK Chemie社製顔料分散剤) 3重量部
・光カチオン重合開始剤:トリフェニルスルフォニウム塩(UVI−6992、ダウケミカル社製) 6重量部
・増感色素:9,10−ジブトキシアントラセン 3重量部
・重合性化合物
モノマー:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A:ダイセルユーシービー社製)
30重量部
モノマー:3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン(OXT−221:東亞合成(株)製) 39重量部
【0201】
以上の様にして調製した粗製のイエローインク2、マゼンタインク10、シアンインク2、及び、ブラックインク2を絶対ろ過精度2μmのフィルターにてろ過し、各色のインクとした。
【0202】
《インクジェット画像記録》(多色画像の評価)
上記調製したイエローインク2、マゼンタインク10、シアンインク2、及び、ブラックインク2を用い、実施例1と同様に、環境温度25℃にて、ブラック→シアン→マゼンタ→イエローの順に射出、Integration Technology社製メタルハライドランプVzero085により紫外線を1色毎に照射した。触診で粘着性が無くなる様、完全に硬化するエネルギーとして、1色あたりのトータル露光エネルギーが一律100mJ/cm2で露光した。被記録媒体としては、砂目立てしたアルミニウム支持体、印刷適性を持たせた表面処理済みの透明二軸延伸ポリプロピレンフィルム、軟質塩化ビニルシート、キャストコート紙、市販の再生紙に各カラー画像を記録したところ、いずれもドットの滲みの無い高解像度の画像が得られた。また、60分連続印字を行った後も良好な吐出性を示した。更に、上質紙においてもインクが裏周りすることなく、十分にインクが硬化した。また、フィルムに記録したインクには十分な可とう性があり、折り曲げてもインクにクラックが入ることは無く、セロテープ(登録商標)剥離による密着性テストにおいても問題無かった。
【0203】
[実施例9〜14、比較例3及び4:カチオン重合による画像作製]
《インクの調製》
以下に記載の方法に従って、マゼンタインク11〜18を調製した。
【0204】
[実施例9]
<マゼンタインク11>
ゴム粒子Aの代わりにゴム粒子Bを用いた以外は、前記マゼンタインク10と同様にして、マゼンタインク11を調製した。
【0205】
[実施例10]
<マゼンタインク12>
ゴム粒子Aの代わりにゴム粒子Cを用いた以外は、前記マゼンタインク10と同様にして、マゼンタインク12を調製した。
【0206】
[実施例11]
<マゼンタインク13>
ゴム粒子Aの代わりにゴム粒子D:ケミパールA−300(三井化学(株)製)を用いた以外は、前記マゼンタインク10と同様にして、マゼンタインク13を調製した。
【0207】
[実施例12]
<マゼンタインク14>
9,10−ジブトキシアントラセン 3重量部の代わりにDarocur ITX(CSC社製)3重量部を用いた以外は、前記マゼンタインク10と同様にして、マゼンタインク14を調製した。
【0208】
[実施例13]
<マゼンタインク15>
C.I.ピグメントレッド57:1 5重量部の代わりに前記油溶性染料M−1(酸化電位+1.37V)5重量部を用いた以外は、前記マゼンタインク10と同様にして、マゼンタインク15を調製した。
【0209】
[実施例14]
<マゼンタインク16>
C.I.ピグメントレッド57:1 5重量部の代わりに前記油溶性染料M−2(酸化電位 +0.94V)5重量部を用いた以外は、前記マゼンタインク10と同様にして、マゼンタインク16を調製した。
【0210】
[比較例3]
<マゼンタインク17>
ゴム粒子Aを用いなかった以外は、前記マゼンタインク10と同様にして、マゼンタインク17を調製した。
【0211】
[比較例4]
<マゼンタインク18>
ゴム粒子Aの代わりに架橋ポリメチルメタクリレート粒子(粒子径1.0μm) (綜研化学(株)製)を用いた以外は、前記マゼンタインク10と同様にして、マゼンタインク18を調製した。
【0212】
以上の実施例9〜14、比較例3及び4において調製した粗製のマゼンタインク11〜18は、それぞれ絶対ろ過精度2μmのフィルターにてろ過し、マゼンタインク11〜18とした。
【0213】
また、前記実施例9〜14、比較例3及び4で作製したインク組成物において、インクの吐出温度でのインク粘度は、7〜20mPa・sの範囲内であった。
【0214】
《インクジェット画像記録》
以上のようにして調製した、実施例9〜14、比較例3及び4のマゼンタインク2〜9と、実施例8で調製したマゼンタインク10を用いて、実施例8に記載の方法と同様にして、マゼンタ画像を作製した。
【0215】
<インクジェット画像の評価>
各形成した画像について、下記に記載の方法に準じて、吐出安定性、硬化に必要な感度、硬化性、密着性、膜柔軟性、画像及び耐刷性の評価を行った。なお、密着性、膜柔軟性、画像及び耐刷性の評価については、500mJ/cm2で硬化した場合について評価を行った。
これらの評価結果を表2に示す。
【0216】
【表2】

【0217】
[実施例15、16、比較例5及び6]
(発光ダイオード(LED)による画像形成)
[実施例15]
実施例1で調製したマゼンタインク1を使用し、また、Integration Technology社製メタルハライドランプVzero085の代わりに、紫外発光ダイオード(UV−LED)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット画像記録を行った。
本実施例ではUV−LEDとして日亜化学製のNCCU033を用いた。当該LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、被記録媒体(以下、メディアとも言う。)表面で0.3W/cm2のパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、及び露光時間はメディアの搬送速度及びヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。本実施例では着弾後、約0.5秒後に露光される。
メディアとの距離及び搬送速度の設定に応じて、メディア上の露光エネルギーを0.01〜15J/cm2の間で調整することができる。
【0218】
[実施例16]
マゼンタインク1の代わりにマゼンタインク10を用いた以外は、実施例15と同様にしてインクジェット画像記録を行った。
【0219】
[比較例5]
マゼンタインク1の代わりにマゼンタインク8を用いた以外は、実施例15と同様にしてインクジェット画像記録を行った。
【0220】
[比較例6]
マゼンタインク1の代わりにマゼンタインク17を用いた以外は、実施例15と同様にしてインクジェット画像記録を行った。
【0221】
<インクジェット画像の評価>
各形成した画像について、前記に記載の方法に準じて、吐出安定性、硬化に必要な感度、硬化性、密着性、膜柔軟性、画像及び耐刷性の評価を行った。なお、密着性、膜柔軟性、画像及び耐刷性の評価については、1,000mJ/cm2で硬化した場合について評価を行った。
これらの評価結果を表3に示す。
【0222】
【表3】

【0223】
表1及び表2に示す紫外線ランプを用いた場合と、表3に示す紫外発光ダイオードを用いた場合とを比較すると、紫外発光ダイオードを用いた場合のほうが、放射線の照射に対して高感度であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ゴム粒子、
(b)重合性化合物、及び、
(c)重合開始剤を含有することを特徴とする
硬化性組成物。
【請求項2】
ゴム粒子の含有量が硬化性組成物の全量に対し1〜60重量%である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
ゴム粒子がその表面にエチレン性不飽和基及び/又はオキシ環状基を有する粒子である請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1つに記載の硬化性組成物を含むインク組成物。
【請求項5】
(d)着色剤を含有する請求項4に記載のインク組成物。
【請求項6】
インクジェット記録用である請求項4又は5に記載のインク組成物。
【請求項7】
(a)被記録媒体上にインク組成物を吐出する工程、及び、
(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射してインク組成物を硬化する工程を含むインクジェット記録方法であって、
前記インク組成物が請求項4〜6いずれか1つに記載のインク組成物である
インクジェット記録方法。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェット記録方法によって記録された印刷物。
【請求項9】
(a)請求項4〜6いずれか1つに記載のインク組成物を親水性支持体上に吐出する工程、及び、
(b)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させることにより、前記インク組成物が硬化してなる疎水性画像を前記親水性支持体上に形成する工程を含む
平版印刷版の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の平版印刷版の製造方法によって製造された平版印刷版。

【公開番号】特開2007−169365(P2007−169365A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366091(P2005−366091)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】