説明

硬化組成物およびこれを用いて製造した硬化物

【課題】
【解決手段】本発明は、エポキシ基を有するポリアリレートおよびシアネートエステル樹脂を含む硬化組成物およびこれを用いて製造した硬化物を提供する。本発明に係る硬化組成物を用いることによって耐熱性および靭性に優れた硬化物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化組成物およびこれを用いて製造した硬化物に関し、前記硬化組成物を用いて製造することによって前記硬化物の耐熱性、靭性および硬化度を増加させることができる。
【0002】
本出願は2007年12月28日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2007−0140368号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
日本公開特許2001−011295(特許文献1)には、エポキシ樹脂および液晶ポリエステルを含有する熱硬化性樹脂組成物が例示されている。
【0004】
また、日本公開特許1999−302529(特許文献2)には、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂などを含む硬化性樹脂組成物が例示されている。
【0005】
しかし、前記特許文献に記載された樹脂組成物は十分な耐熱性、靭性および硬化度を提供することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−011295号公報
【特許文献2】特開1999−302529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、硬化組成物の成分としてエポキシ基を有するポリアリレートおよびシアネートエステル樹脂を用いる場合、優れた耐熱性、靭性および硬化度を達成することができるということを明らかにした。そこで、本発明は、優れた耐熱性、靭性および硬化度を提供することができる硬化組成物およびこれを用いて製造した硬化物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、エポキシ基を有するポリアリレートおよびシアネートエステル樹脂を含む硬化組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記硬化組成物を硬化させる硬化方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記硬化組成物を用いて製造した硬化物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記硬化組成物を用いて製造した複合体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る硬化組成物は、エポキシ基を有するポリアリレートおよびシアネートエステル樹脂を含むことによって耐熱性および靭性に優れ、硬化度を調節することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0014】
本発明に係る硬化組成物は、エポキシ基を有するポリアリレートおよびシアネートエステル樹脂を含むことを特徴としており、前記硬化組成物から製造された硬化物に優れた耐熱性、靭性および硬化度を提供することができる。
【0015】
前記シアネートエステル樹脂のシアネートエステル基が硬化して形成されたシアヌレート構造とエポキシ基を有するポリアリレートのエポキシ基が反応してイソシアヌレート構造が形成される。熱硬化性樹脂の網状構造に熱可塑性樹脂がグラフト形態で導入され、熱可塑性樹脂の微細相分離が起こらないため、耐熱性、靭性および硬化度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る硬化組成物においては、前記エポキシ基を有するポリアリレートおよびシアネートエステル樹脂の濃度を調節することによって耐熱性および硬化度を調節することができる。
【0017】
本発明において、前記エポキシ基を有するポリアリレートはその構造に特に限定されるものではないが、下記化学式1で示される繰り返し単位を含む:
【0018】
【化1】

【0019】
前記化学式1において、
xおよびyはモル比であって、x+y=1、x≧0、y>0であり、yは0.1〜1であることが好ましい。yのモル比が0.1未満であれば硬化による効果を得ることが難しい。また、yのモル比を0.1〜1の間の値を選択して重合することによってシアネートエステル樹脂との硬化度を調節することができる。
【0020】
aおよびbは互いに同じであるか異なり、各々独立に1〜4の整数であり、cおよびdは互いに同じであるか異なり、各々独立に1〜3の整数であり、
1およびR2は互いに同じであるか異なり、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アリールアルケニル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリール、ニトリルおよびアルコキシからなる群から選択され、
3およびR4のうちの少なくとも1つはエポキシ基を有する基であり、残りは水素、2〜10個の炭素を有するアルキル、3〜12個の炭素を有するシクロアルキル、7〜20個の炭素を有するアルキルアリールからなる群から選択され、
1およびW2は、各々独立に、直接結合、酸素、硫黄、アルキレン、シクロアルキレン、フルオレン、スルホニル、スルフィニルおよびカルボニルからなる群から選択され、
Arはフェニレン、ナフチレンおよびビフェニレンからなる群から選択される。
【0021】
前記化学式1において、前記アルキレンは炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましく、前記シクロアルキレンは炭素数3〜20であることが好ましい。前記アリーレンは炭素数6〜20であることが好ましく、例えばフェニレン、ナフチレン、ビフェニレンなどを含むことができる。
【0022】
また、前記アルキルは炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましく、前記アルケニルは炭素数2〜12の直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましく、例えばアリルおよびビニルを含むことができる。前記アリールは炭素数6〜20であることが好ましく、前記アルキルアリールは炭素数7〜20であることが好ましい。
【0023】
また、前記エポキシ基を有する基はエポキシ基を有する炭素数2〜12のアルキル基を意味する。
【0024】
好ましくは、前記エポキシ基を有するポリアリレートは下記化学式2で示される繰り返し単位を含む:
【0025】
【化2】

【0026】
前記化学式2において、
前記R1、R2、a、b、W1、W2、Ar、x、yは前記化学式1で定義した通りである。
【0027】
前記エポキシ基を有するポリアリレートは、界面重合法、溶融重合法、溶液重合法などによって重合することができるが、反応速度および重合後の高分子の分離精製面で界面重合法が好ましい。
【0028】
したがって、本発明のエポキシ基を有するポリアリレートは、界面重合法により、2価フェノール、2価芳香族カルボン酸またはそのハライドおよびアリルビスフェノール誘導体を共重合して製造することができる。例えば、下記反応式1のように製造した後、エポキシ化剤を用いてアリル基をエポキシド基に転換して製造することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0029】
【化3】

【0030】
前記反応式1において、R1、R2およびR5は前記化学式1のR1およびR2の定義と同様であり、R3、R4、a、b、c、d、x、y、Ar、W1およびW2は前記化学式1で定義した通りである。
【0031】
前記エポキシ基を有するポリアリレートを製造するための2価芳香族カルボン酸またはそのハライドとしてはテレフタル酸、イソフタル酸、二安息香酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−メチレン−ビス(安息香酸)(4,4’−methylenebisbenzoic acid)、1,2−ビス(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)プロパン、4,4’−オキソ−ビス(安息香酸)、ビス(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)スルホン、および芳香族基にC1−C2のアルキルまたはハロゲン基が置換された芳香族ジカルボン酸誘導体のうちから選択された単独またはこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。特に、全体カルボン酸ハライドのうち、テレフタル酸ハライド10〜90モル%とイソフタル酸ハライド90〜10モル%の混合物が好ましい。
【0032】
前記エポキシ基を有するポリアリレートを製造するためのビスフェノール誘導体の種類にはビスフェノールA(4,4’−isopropylidenediphenol)、ビスフェノールS(4,4’−sufonyldiphenol)、ビスフェノールE(bis(4−hydroxyphenyl)methane)、ビスフェノールF(4,4’−ethylidenediphenol)、ビスフェノールC(bis(4−hydroxyphenyl−2,2−dichloroethylene))、ビスフェノールM((1,3−phenylenediisopropylidene)bisphenol)、ビスフェノールZ(4,4’−cylcohexylidenebisphenol)、ビスフェノールP((1,4−phenylenediisopropylidene)bisphenol)、ビスフェノールAP(4,4’−(1−phenylethylidene)bisphenol)、ビスフェノールAF(4,4’−(hexafluoroisopropylidene)diphenol)、テトラメチル(tetramethyl)ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールSなどがあり、二重結合を有するビスフェノールはThermochiica Acta、2000年、359、61〜67に報告されたように熱転位(thermal rearrangement)またはUSP4288583のように3−アリル基(3−allyl)を強塩基条件で変性させて製造することができる。
【0033】
さらに、前記エポキシ基を有するポリアリレートの製造時には、重合体の分子量を調節するための分子量調節剤を用いることができる。好ましい分子量調節剤としては、1価のヒドロキシ化合物、例えば、フェノール、o−、m−、p−クレゾール、o−、m−、p−エチルフェノール、o−、m−、p−プロピルフェノール、o−、m−、p−tert−ブチルフェノール、o−、m−、p−アリルフェノールなどの1価のフェノール化合物;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、アリルアルコールなどの1価のアルコール;ベンゾイルクロライド、酢酸ハライド、プロピオン酸ハライド、オクタン酸ハライド、シクロヘキシルカルボン酸ハライド、トルイル酸ハライド、p−tert−ブチル安息香酸ハライド、p−メトキシフェニル酢酸ハライドなどの1価の(芳香族)カルボン酸ハライド;またはベンゼンスルホン酸クロライド、トルエンスルホン酸クロライド、メタンスルホン酸クロライドなどのスルホン酸クロライドを含む。
【0034】
また、前記エポキシ基を有するポリアリレートを製造する時に塩基を用いることができる。この時、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物を含み、アルカリは2価フェノールおよび1価フェノール化合物が有するフェノール性水酸基モル数の1.01〜2.5倍で用いることが好ましい。その使用量が1.01倍未満である場合には2価フェノール化合物を完全に溶かすことができず、その使用量が2.5倍を超過する場合には中和のために過量の酸が必要である。したがって、重合過程中に発生する芳香族ジカルボン酸ハライドの加水分解を考慮すれば、前記エポキシ基を有するポリアリレートを製造する方法において、塩基はフェノール性水酸基モル数の1.01〜2.5倍が好ましい。
【0035】
前記エポキシ化剤としてはm−クロロペルオキシ安息香酸、ペルオキシ安息香酸、ホルミルペルオキシ酸(formyl peroxyacid)、アセトペルオキシ酸(acetic peroxyacid)などのペルオキシ酸;過酸化水素(hydrogen peroxide)、t−ブチルペルオキシドなどのペルオキシドなどが一般的に用いられるが、これらに限定されない。反応の便利性および速度のためにペルオキシ酸が好ましく、使用量はアリル基(allyl)に対して0.1〜2.0当量を用いることが好ましい。0.1当量未満であれば、シアネートエステルと反応できるエポキシ基の濃度が低いために硬化物の物性が低くならず、2.0当量を超過すれば、硬化物の改善効果が微弱である。
【0036】
また、前記エポキシ基を有するポリアリレートを製造するための界面重合法の有機溶媒としては水と混合しないつつもポリアリレートを溶解できる溶媒を用いることができる。例えば、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン化溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族溶媒などの群から選択された1種または2種以上を用いることができる。
【0037】
前記界面重合の重合速度を向上させるために相移動触媒を用いることができ、これらは通常テトラアルキルアンモニウムイオン、テトラアルキルホスホニウムイオン、非イオン性界面活性剤などを用いることができる。
【0038】
前記エポキシ基を有するポリアリレートの重合時、重合温度はカルボン酸またはそのハライドの加水分解および高分子の加水分解が抑制されるという点で0〜40℃、好ましくは0〜30℃である。前記方法による重合終了後、酸で過量の塩基を中和し、攪拌を停止し、水層を捨て、蒸留水で洗浄することを繰り返して塩類を除去した後、エポキシ基を有するポリアリレートを得ることができる。
【0039】
前記エポキシ基を有するポリアリレートは、重量平均分子量が5,000〜100,000であることが好ましい。
【0040】
本発明において、前記シアネートエステル樹脂は下記化学式3で示される化合物またはそのオリゴマーを含む:
【0041】
【化4】

【0042】
前記化学式3において、nは2以上の整数であり、
3は、水素、ハロゲン、ニトリルおよびアルコキシからなる群から選択された1つまたは2つ以上の官能基を有するアルキル、アルキルアリール、アルキルジアリール、シクロアルキル、シクロアルキルジアリール、アリール、フルオレン、フルオレンジアリール、オキシジアリール、スルホニルジアリール、スルフィニルジアリール、およびカルボニルジアリールからなる群から選択される。
【0043】
前記W3は、アルキル、フェニル、アルキルジフェニル、シクロアルキルジフェニル、フルオレンジフェニル、オキシジフェニル、ビフェニル、スルホニルジフェニル、スルフィニルジフェニルおよびカルボニルジフェニルから選択されることが好ましい。
【0044】
前記化学式3において、前記アルキルは炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましく、前記シクロアルキルは炭素数3〜20であることが好ましく、前記アリールは炭素数6〜20であることが好ましく、前記アルキルアリールは炭素数7〜20であることが好ましい。また、アルキルジアリールは炭素数13〜40であることが好ましく、−アリール−アルキル−アリール−の構造を有してもよく、例えば、ビスマレイミドジフェニルメタンなどであってもよい。シクロアルキルジアリールは炭素数15〜40であることが好ましく、−アリール−シクロアルキル−アリール−の構造を有してもよい。フルオレンジアリールは−アリール−フルオレン−アリール−の構造を有してもよく、オキシジアリールは−アリール−酸素−アリール−の構造を有してもよい。
【0045】
本発明において、前記シアネートエステル基を有する化合物は、例えば、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ジ(4−シアナトフェニル)エーテル、ジ(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ジ(4−シアナト−2−tert−ブチル−3−メチルフェニル)チオエーテル、4,4−ジシアナトビフェニル、1,3−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、1,4−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、4,4’−ビス(トリフルオロメチル)メチレンジフェニルシアネートなどを含み、また、これらから由来した予備重合体があるが、これらに限定されない。予備重合体の例としてはBA230S(登録商標)(2,2−bis(4−cyanatephenyl)propaneのオリゴマー、Lonza)などがある。
【0046】
本発明に係る硬化組成物において、前記シアネートエステル樹脂は、エポキシ基を有するポリアリレート100重量部に対し10〜400重量部で含まれることが好ましい。10重量部未満である場合には、エポキシ基とシアネート基の結合を誘導してガラス転移温度(Tg)を高めるのに適切ではなく、400重量部を超過する場合には、Tgを上げるのに利益がないために非効率的である。
【0047】
本発明に係る硬化組成物は、硬化剤または硬化触媒をさらに含むことができる。前記硬化触媒は特に限定されないが、前記硬化剤は遷移金属触媒またはフェノールまたは置換体を有するフェノールが好ましい。
【0048】
前記遷移金属触媒は、コバルト2価イオン、亜鉛2価イオン、マンガン2価イオン、マンガン3価イオンなどからなる群から選択された1種以上を含む有機物を含む。例えば、酢酸コバルト、アセチル酢酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト、ヘキサフルオロアセチル酢酸コバルト、シュウ酸コバルト、ナフタル酸コバルト、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛、4−シクロヘキシルブタン酸亜鉛、ナフタル酸亜鉛、アセチル酢酸マンガン(II)、アセチル酢酸マンガン(III)、ナフタル酸マンガンなどがあり、これらは各々単独または2種以上混合して用いることができる。
【0049】
また、前記フェノールまたは置換体を有するフェノールは、ベンゼン環に1個のヒドロキシ基または炭素数1〜10個のアルキル、アリール、置換されたアリール基またはハロゲンが置換されていることが好ましい。例えば、テトラメチルフェノール、2,4,6−トリブロモ−3−メトキシフェノール、2,6−ジブロモ−4−t−ブチルフェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−イソブチルフェノール、3−イソブチルフェノール、4−イソブチルフェノールなどであり、これらは各々単独で用いたり組み合わせて用いたりすることができる。
【0050】
前記硬化剤または硬化触媒は、硬化組成物100重量部に対して0.01〜10重量部で含まれることが好ましい。0.01重量部未満である場合には、反応速度を上げるのに適切ではなく、10重量部を超過する場合には、過度な反応速度の向上により硬化反応を制御するのに難しさがあるので好ましくない。
【0051】
本発明に係る硬化組成物は、目的とする物性などを付与するために、必要により、充填剤、可塑剤、離型剤、着色剤、カップリング剤、溶剤などをさらに含むことができる。
【0052】
離型剤としては合成ワックス、天然ワックス、エステル類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド類、パリピン類などがあり、着色剤としてはカーボンブラックなどがある。充填剤としては4フッ化エチレン重合体などの有機充填剤、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、シリカ、金属酸化物、ダイヤモンド、グラファイト、カーボンなどの無機充填剤がある。
【0053】
本発明に係る硬化組成物は、熱、光、マイクロウェーブなどを単独または各々を同時にまたは順次使って硬化を行うことができる。例えば、熱硬化の場合、150℃以上で硬化を行うことができる。
【0054】
本発明は、前記硬化組成物を成形した後に硬化させた硬化物を提供する。前記硬化物は耐熱性および強靱性に優れるため、このような物性が必要な各種電気/電子材料、航空および宇宙材料、各種接着剤、鋳型材料、各種成形材料などといった様々な用途に用いられることができる。
【0055】
また、本発明に係る硬化組成物にガラス繊維またはカーボン繊維が混合された複合体を提供する。前記複合体は強靱性(toughness)を要求する用途に用いられることができる。
【0056】
本発明に係る硬化組成物は、当技術分野に知られている成形方法、例えば射出成形、圧縮成形などの方法を利用して成形しながらまたは成形した後、前述した硬化条件下で硬化することにより、前述した様々な用途に適した形態の硬化物として製造して提供することができる。
【0057】
以下では実施例を通じて本発明をより詳細に説明するが、以下の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲が限定されるものではない。
【0058】
<製造例1>:エポキシ基を有するポリアリレートの重合
蒸留水450g、苛性ソーダ19.0g、ビスフェノールA 45.2g、ジアリルビスフェノールA 7.0g、2−アリルフェノール(2−allylphenol)1.5g、およびベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5gを混合した混合物Aを、攪拌器が取り付けられた反応器に投入し、反応器の温度を25℃に維持した。これとは別途に、イソフタル酸クロライドとテレフタル酸クロライドを同一の量で混合した芳香族ジカルボン酸クロライド混合物B 45.0gをメチレンクロライド620gに溶かした。前記混合物Bを前記アルカリ水溶液である混合物Aが溶けている反応器に攪拌しながら添加した。1時間攪拌した後に塩酸を加え、蒸留水で洗浄した。水層の伝導度が20μs/cm以下になるまで洗浄を繰り返した後、この溶液をメタノールに注いで重合体を相分離した後、高分子を濾過した後、60℃の真空オーブンで12時間乾燥して溶媒を除去した(Mw 32k、Mn 16k、Tg 163℃)。
【0059】
前記乾燥された固体のうちの20gをMC 800gに溶かした後、mCPBA(70%純度)4.0gを投入し、室温で24時間反応してエポキシ化(epoxidation)した後、過量のエタノールに沈殿させた(Mw 32k、Mn 16k、Tg 173℃)。
【0060】
<製造例2>:エポキシ基を有するポリアリレートの重合
蒸留水420g、苛性ソーダ17.6g、ビスフェノールA 25.3g、ジアリルビスフェノールA 25.8g、2−アリルフェノール(2−allylphenol)3.9g、およびベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5gを混合した混合物Aを、攪拌器が取り付けられた反応器に投入し、反応器の温度を25℃に維持した。これとは別途に、イソフタル酸クロライドとテレフタル酸クロライドを同一の量で混合した芳香族ジカルボン酸クロライド混合物B 41.6gをメチレンクロライド600gに溶かした。前記混合物Bを前記アルカリ水溶液である混合物Aが溶けている反応器に攪拌しながら添加した。1時間攪拌した後に塩酸を加え、蒸留水で洗浄した。水層の伝導度が20μs/cm以下になるまで洗浄を繰り返した後、この溶液をメタノールに注いで重合体を相分離した後、高分子を濾過した後、60℃の真空オーブンで12時間乾燥して溶媒を除去した(Mw 18k、Mn 9k、Tg 104℃)。
【0061】
前記乾燥された固体のうちの20gをMC 800gに溶かした後、mCPBA(70%純度)9.0gを投入し、室温で24時間反応してエポキシ化(epoxidation)した後、過量のエタノールに沈殿させた(Mw 18k、Mn 9k、Tg 133℃)。
【0062】
<製造例3>:エポキシ基を有するポリアリレートの重合
蒸留水450g、苛性ソーダ18.86g、ビスフェノールA 35.7g、ジアリルビスフェノールA 10.4g、2−アリルフェノール(2−allylphenol)0.9g、およびベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.5gを混合した混合物Aを、攪拌器が取り付けられた反応器に投入し、反応器の温度を25℃に維持した。これとは別途に、イソフタル酸クロライドとテレフタル酸クロライドを同一の量で混合した芳香族ジカルボン酸クロライド混合物B 45.4gをメチレンクロライド620gに溶かした。前記混合物Bを前記アルカリ水溶液である混合物Aが溶けている反応器に攪拌しながら添加した。1時間攪拌した後に塩酸を加え、蒸留水で洗浄した。水層の伝導度が20μs/cm以下になるまで洗浄を繰り返した後、この溶液をメタノールに注いで重合体を相分離した後、高分子を濾過した後、60℃の真空オーブンで12時間乾燥して溶媒を除去した(Mw 58k、Mn 27k、Tg 178℃)。
【0063】
前記乾燥された固体のうちの20gをMC 800gに溶かした後、mCPBA(70%純度)7.0gを投入し、室温で24時間反応してエポキシ化(epoxidation)した後、過量のエタノールに沈殿させた(Mw 60k、Mn 28k、Tg 183℃)。
【0064】
<比較例1および実施例1〜3>硬化物の製造
製造例1のエポキシ基を有するポリアリレート100ptを15wt%の濃度でジクロロエタン(dichloroethane)に溶かした溶液にBA230S(登録商標)(2,2−bis(4−cyanatephenyl)propaneのオリゴマー、Lonza)を下記表1に記載された含量で各々室温で溶かして均一な溶液を製造した後、テフロンモールドに注いで5℃/分の速度で昇温し、300℃で5分間硬化した。得られた試料をDSCにおいて300℃まで10℃/分の速度で昇温してTgを分析し、その結果を下記表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
<比較例2および実施例4〜6>硬化物の製造
製造例2のエポキシ基を有するポリアリレート100ptを15wt%の濃度でジクロロエタンに溶かした溶液にBA230S(登録商標)(2,2−bis(4−cyanatephenyl)propaneのオリゴマー、Lonza)を下記表2に記載された含量で室温で溶かして均一な溶液を製造した後、テフロンモールドに注いで5℃/分の速度で昇温し、250℃で60分間硬化した。得られた試料をDSCにおいて300℃まで10℃/分の速度で昇温してTgを分析し、その結果を下記表2に示す。
【0067】
【表2】

【0068】
<実施例7〜9>硬化物の製造
製造例3のエポキシ基を有するポリアリレート100ptを15wt%の濃度でジクロロエタンに溶かした溶液にBA230S(登録商標)(2,2−bis(4−cyanatephenyl)propaneのオリゴマー、Lonza)を下記表3に記載された含量で室温で溶かして均一な溶液を製造した後、テフロンモールドに注いで5℃/分の速度で昇温し、250℃で60分間硬化した。得られた試料をDSCにおいて300℃まで10℃/分の速度で昇温してTgを分析し、その結果を下記表3に示す。
【0069】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基を有するポリアリレートおよびシアネートエステル樹脂を含む硬化組成物。
【請求項2】
前記エポキシ基を有するポリアリレートは、下記化学式1で示される繰り返し単位を含む、請求項1に記載の硬化組成物:
【化5】

前記化学式1において、
xおよびyはモル比であって、x+y=1、x≧0、y>0であり、
aおよびbは1〜4の整数であり、cおよびdは1〜3の整数であり、
1およびR2は互いに同じであるか異なり、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アリールアルケニル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリール、ニトリルおよびアルコキシからなる群から選択され、
3およびR4のうちの少なくとも1つはエポキシ基を有し、残りは水素原子、 ハロゲン原子2〜10個の炭素を有するアルキル、3〜12個の炭素を有するシクロアルキル、7〜20個の炭素を有するアルキルアリールからなる群から選択され、
1およびW2は、各々独立に、直接結合、酸素、硫黄、アルキレン、シクロアルキレン、フルオレン、スルホニル、スルフィニルおよびカルボニルからなる群から選択され、
Arはフェニレン、ナフチレンおよびビフェニレンからなる群から選択される。
【請求項3】
前記エポキシ基を有するポリアリレートは、下記化学式2で示される繰り返し単位を含む、請求項2に記載の硬化組成物:
【化6】

前記化学式2において、
xおよびyはモル比であって、x+y=1、x≧0、y>0であり、
aおよびbは1〜4の整数であり、cおよびdは1〜3の整数であり、
1およびR2は互いに同じであるか異なり、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アリールアルケニル、アリール、アルキルアリール、アルケニルアリール、ニトリルおよびアルコキシからなる群から選択され、
1およびW2は、各々独立に、直接結合、酸素、硫黄、アルキレン、シクロアルキレン、フルオレン、スルホニル、スルフィニルおよびカルボニルからなる群から選択され、
Arはフェニレン、ナフチレンおよびビフェニレンからなる群から選択される。
【請求項4】
前記化学式1中のyは0.1〜1である、請求項2に記載の硬化組成物。
【請求項5】
前記エポキシ基を有するポリアリレートは、重量平均分子量が5,000〜100,000である、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項6】
前記シアネートエステル樹脂は、下記化学式3で示される化合物またはそのオリゴマーを含む、請求項1に記載の硬化組成物:
【化7】

前記化学式3において、nは2以上整数であり、
3は、アルキル、アルキルアリール、アルキルジアリール、シクロアルキル、シクロアルキルジアリール、アリール、フルオレン、フルオレンジアリール、オキシジアリール、スルホニルジアリール、スルフィニルジアリール、およびカルボニルジアリールからなる群から選択される。
【請求項7】
前記W3は、アルキル、フェニル、アルキルジフェニル、シクロアルキルジフェニル、フルオレンジフェニル、オキシジフェニル、ビフェニル、スルホニルジフェニル、スルフィニルジフェニルおよびカルボニルジフェニルからなる群から選択される、請求項6に記載の硬化組成物。
【請求項8】
前記シアネートエステル樹脂は、前記エポキシ基を有するポリアリレート100重量部に対し10〜400重量部で含まれる、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項9】
前記シアネートエステル樹脂は、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ジ(4−シアナトフェニル)エーテル、ジ(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ジ(4−シアナト−2−tert−ブチル−3−メチルフェニル)チオエーテル、4,4−ジシアナトビフェニル、1,3−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、1,4−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、および4,4’−ビス(トリフルオロメチル)メチレンジフェニルシアネートからなる群から選択された1つ以上を含む、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項10】
硬化組成物は硬化触媒または硬化剤をさらに含む、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項11】
前記硬化剤は、イミダゾール、遷移金属触媒、フェノールおよび置換基を有するフェノールからなる群から選択された1つ以上を含む、請求項10に記載の硬化組成物。
【請求項12】
前記遷移金属触媒は、コバルト2価イオン、亜鉛2価イオン、マンガン2価イオンおよびマンガン3価イオンからなる群から選択された1種以上を含む有機物である、請求項11に記載の硬化組成物。
【請求項13】
前記遷移金属触媒は、酢酸コバルト、アセチル酢酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト、ヘキサフルオロアセチル酢酸コバルト、シュウ酸コバルト、ナフタル酸コバルト、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛、4−シクロヘキシルブタン酸亜鉛、ナフタル酸亜鉛、アセチル酢酸マンガン(II)、アセチル酢酸マンガン(III)およびナフタル酸マンガンからなる群から選択された1種以上を含む、請求項12に記載の硬化組成物。
【請求項14】
前記フェノールまたは置換基を有するフェノールは、ベンゼン環に1個のヒドロキシ基、アルキル、アリール、置換されたアリール基、ハロゲンまたは水素で置換されているフェノールである、請求項11に記載の硬化組成物。
【請求項15】
前記フェノールまたは置換基を有するフェノールは、テトラメチルフェノール、2,4,6−トリブロモ−3−メトキシフェノール、2,6−ジブロモ−4−t−ブチルフェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−イソブチルフェノール、3−イソブチルフェノールおよび4−イソブチルフェノールからなる群から選択された1種以上を含む、請求項14に記載の硬化組成物。
【請求項16】
前記硬化剤は、硬化組成物100重量部に対して0.01〜10重量部で含まれる、請求項10に記載の硬化組成物。
【請求項17】
硬化組成物は、充填剤、可塑剤、離型剤、着色剤、カップリング剤および溶剤からなる群から選択されたいずれか1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の硬化組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のうちのいずれか一項による硬化組成物を、熱、光およびマイクロウェーブからなる群から選択された少なくとも1つを同時にまたは順次使って硬化させるステップを含む硬化方法。
【請求項19】
請求項1〜17のうちのいずれか一項による硬化組成物を用いて製造した硬化物。
【請求項20】
請求項1〜17のうちのいずれか一項による硬化組成物にガラス繊維またはカーボン繊維を混合して製造した複合体。

【公表番号】特表2011−525198(P2011−525198A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540578(P2010−540578)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007667
【国際公開番号】WO2009/084861
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】