説明

磁気記録媒体、磁気記録媒体製造装置および磁気記録媒体製造方法

【課題】高密度記録化を図りつつ、双方向記録再生が可能で、しかも、記録再生時におけるスペーシングロスの発生を回避し得る磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】複数のカラム5をそれぞれ有すると共に磁化容易軸が相反する方向(矢印A1,A2の方向)に傾いている第1磁性層3および第2磁性層4が非磁性支持体2の上にこの順で形成され、両磁性層3,4は、各カラム5における基端部側のそれぞれの一部で構成された初期成長部3a,4aと、各カラム5における先端部側のそれぞれの他の一部で構成された後期成長部3b,4bとを備え、初期成長部3a,4aは各カラム5が非磁性支持体2の厚み方向に成長することで形成され、後期成長部3b,4bは各カラム5が非磁性支持体2の長手方向に沿って傾斜しつつ側面視円弧状となるように成長することで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁化容易軸が相反する方向に傾いている第1の金属薄膜磁性層および第2の金属薄膜磁性層が非磁性支持体の上にこの順で形成された磁気記録媒体、並びに、その磁気記録媒体を製造する磁気記録媒体製造方法および磁気記録媒体製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録データのサイズアップに伴い、今日の情報媒体では、高密度記録化が重要な課題となっている。この場合、バックアップメディアとして市場に流通している磁気テープの多くは、いわゆる塗布型の磁気記録媒体であって、磁性粉を結合するためのバインダー(樹脂材料)が磁性層中に含まれている分だけ飽和磁化量が小さくなっている。また、バインダーを含んでいる分だけ、磁性層を薄厚とするのが困難であるため、その巻き径が大きくなっている。したがって、塗布型の磁気記録媒体では、一層の高密度記録化を図るのが困難であると共に、カートリッジケース内の限られた収容空間内に長尺の磁気記録媒体を収容するのが困難となっている。
【0003】
一方、バインダーを含ませることなく磁性層を形成した磁気記録媒体として、非磁性支持体上に真空中で磁性体を蒸着させて磁性層を形成した蒸着型の磁気記録媒体が知られている。この蒸着型の磁気記録媒体では、磁性層を構成するカラム(磁性体の結晶粒の集合体)が非磁性支持体に対して傾いて成長することに起因して、磁性層の磁化容易軸が磁気記録媒体における主面の長手方向の一方に所定の角度で傾斜している。したがって、蒸着型の磁気記録媒体では、テープ走行方向の相違によって磁化特性が相違すると共に出力信号の信号レベルに大きな差異が生じるため、双方向記録再生が困難となっている。このため、この課題を解決すべく、各種の構成の蒸着型磁気記録媒体が提案されている。
【0004】
例えば、特開平11−328645号公報には、非磁性支持体の一方の面に第1の磁性層および第2の磁性層がこの順で形成されたテープ状の磁気記録媒体が開示されている。この場合、両磁性層は、真空蒸着法等の薄膜形成手法によってコバルト(Co)を主成分とする金属材料で薄膜状に形成されている。また、この磁気記録媒体では、非磁性支持体に対して金属材料を斜めから蒸着させて(非磁性支持体に対してカラムを斜めに成長させて)両磁性層を形成する際に、第1の磁性層の磁化容易軸を磁気記録媒体における主面の長手方向の一方に所定の角度で傾斜させると共に、第2の磁性層の磁化容易軸を磁気記録媒体における主面の長手方向の他方に所定の角度で傾斜させることで、両磁性層における磁化容易軸が同一方向とはならないように両磁性層が形成されている。したがって、この磁気記録媒体では、両磁性層の磁化容易軸が相反する方向に傾いた状態となる結果、テープ走行方向の相違による磁化特性の相違や出力信号の信号レベルの差異が生じ難くなっている。これにより、この磁気記録媒体では、双方向記録再生が可能となっている。
【特許文献1】特開平11−328645号公報(第3−7頁、第1,4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の磁気記録媒体には、以下の問題点がある。すなわち、従来の磁気記録媒体では、非磁性支持体に対して金属材料を斜めから蒸着させることで両磁性層が形成されている。この場合、図8に示すように、この種の磁気記録媒体に使用される非磁性支持体2x(一例として、高分子フィルム)における磁性層の形成面(同図における上面)には、テープ走行時における摺動抵抗を軽減し得る程度の大きさの凹凸をテープ表面(磁性層または、その上の保護層の表面)に生じさせるために、極く小さな凹部Z1axおよび凸部Z1bxが形成されている。これにより、磁性層等の形成時において、非磁性支持体2xの凹部Z1axおよび凸部Z1bxと同程度の大きさの凹部および凸部からなる凹凸をテープ表面に形成しようとしている。なお、以下の説明において、従来の磁気記録媒体に関する構成要素については符号の末尾に「x」を付して説明する。また、非磁性支持体としては、磁性層が形成される面とは反対側の面(バックコート層の形成面)に、例えばフィラーを混入させた樹脂材料の層が形成されて、磁気記録媒体の製造時における非磁性支持体の走行性(バックコート層の形成が完了するまでの間の磁気記録媒体の走行性)を向上させるための凹凸が形成されているものがある。このような非磁性支持体を硬巻きしたときには、そのバックコート層の形成面に形成されている凹凸の凸部が磁性層の形成面に転写されて磁性層の形成面に凹凸が生じることがある。
【0006】
このように凹凸が生じた非磁性支持体2xに対して金属材料を斜めから蒸着した場合には、同図に示すように、非磁性支持体2xにおける凹部Z1axの一部(金属材料の蒸着時における凹部Z1axの下流側の斜面:凸部Z1bxの上流側の斜面)に金属材料が付着し難くなることに起因して、カラムの成長過程において(第1磁性層3xの形成過程において)凹部Z1axよりも深い凹部Z2ax、および凸部Z1bxよりも高い凸部Z2bxが第1磁性層3xに形成されることとなる。また、凹部Z2axおよび凸部Z2bxが生じた部位に金属材料が斜めから蒸着される結果、同図に破線で示すように、第1磁性層3xの表面には、凹部Z2axよりもさらに深い凹部Z3ax、および凸部Z2bxよりもさらに高い凸部Z3bxが形成される。このため、第1磁性層3xの表面に大きな凹凸が生じた状態となる。したがって、このような状態の第1磁性層3xの上に金属材料を斜めから蒸着して第2磁性層(図示せず)を形成したときには、第1磁性層3xの表面に形成された凹部Z3axよりも一層深い凹部、および第1磁性層3xの表面に形成された凸部Z3bxよりも一層高い凸部が第2磁性層に形成され、第2磁性層の表面に大きな凹凸が生じた状態となる。
【0007】
このため、従来の磁気記録媒体では、第2磁性層の表面に大きな凹凸が生じることに起因して、記録データの記録再生時において、記録再生用磁気ヘッドと第2磁性層の表面との間に大きなスペーシングロスが生じる。したがって、従来の磁気記録媒体には、両磁性層の磁化特性が悪化すると共に、磁気的信号の読み取り時における出力信号の信号レベルが大きく低下するという問題点がある。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、高密度記録化を図りつつ、双方向記録再生が可能で、しかも、記録再生時におけるスペーシングロスの発生を回避し得る磁気記録媒体、磁気記録媒体製造装置および磁気記録媒体製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明に係る磁気記録媒体は、複数のカラムをそれぞれ有すると共に磁化容易軸が相反する方向に傾いている第1の金属薄膜磁性層および第2の金属薄膜磁性層が非磁性支持体の上にこの順で形成され、前記両金属薄膜磁性層は、前記各カラムにおける基端部側のそれぞれの一部で構成された初期成長部と、前記各カラムにおける先端部側のそれぞれの他の一部で構成された後期成長部とを備え、前記初期成長部は前記各カラムが前記非磁性支持体の厚み方向に成長することで形成され、前記後期成長部は前記各カラムが前記非磁性支持体の長手方向に沿って傾斜しつつ側面視円弧状となるように成長することで形成されている。なお、本発明における「厚み方向」は、非磁性支持体の法線方向のみを意味するものではなく、非磁性支持体の法線方向に対して10°程度までの範囲内で傾斜している各方向がこれに含まれるものとする。
【0010】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、前記第2の金属薄膜磁性層の厚みに対する前記第1の金属薄膜磁性層の厚みの比が0.60以上2.10以下の範囲内となるように(前記第1の金属薄膜磁性層の厚みに対する前記第2の金属薄膜磁性層の厚みの比が(0.48以上1.67以下の範囲内となるように)形成されている。
【0011】
さらに、本発明に係る磁気記録媒体は、前記両金属薄膜磁性層は、前記後期成長部の厚みに対する前記初期成長部の厚みの比が0.08以上0.15以下の範囲内となるように(前記初期成長部の厚みに対する前記後期成長部の厚みの比が6.67以上12.50以下の範囲内となるように)形成されている。
【0012】
また、本発明に係る磁気記録媒体製造装置は、非磁性支持体を周面に添わせて走行させつつ冷却する回転冷却ドラムと、金属材料を収容するるつぼと、当該るつぼ内の前記金属材料に向けて電子ビームを照射して蒸発させる電子銃と、前記回転冷却ドラムの周面に沿って配設されて前記非磁性支持体に前記金属材料を蒸着させる蒸着領域を規定するマスクとを備え、前記蒸着領域内において前記非磁性支持体に前記金属材料を蒸着させる蒸着処理を2回に亘って実行することで、複数のカラムをそれぞれ有すると共に磁化容易軸が相反する方向に傾いている第1の金属薄膜磁性層および第2の金属薄膜磁性層を当該非磁性支持体の上にこの順で形成して磁気記録媒体を製造する磁気記録媒体製造装置であって、前記蒸着領域における蒸着開始点側に酸素ガスを供給する酸素ガス供給部を備え、前記蒸着処理時において、前記酸素ガス供給部から前記蒸着開始点側に前記酸素ガスを供給することで前記各カラムを前記非磁性支持体の厚み方向に成長させて当該各カラムにおける基端部側のそれぞれの一部で構成された初期成長部を形成すると共に、前記蒸着開始点から前記蒸着領域における蒸着終了点までの間において前記各カラムを当該非磁性支持体の長手方向に沿って傾斜させつつ側面視円弧状となるように成長させて当該各カラムにおける先端部側のそれぞれの他の一部で構成された後期成長部を形成する。
【0013】
また、本発明に係る磁気記録媒体製造方法は、複数のカラムをそれぞれ有すると共に磁化容易軸が相反する方向に傾いている第1の金属薄膜磁性層および第2の金属薄膜磁性層を非磁性支持体の上にこの順で形成して磁気記録媒体を製造する際に、回転冷却ドラムの周面に沿って前記非磁性支持体を走行させると共に、当該回転冷却ドラムの周面に規定した蒸着領域内において蒸発させた金属材料を当該非磁性支持体に蒸着させる蒸着処理を2回に亘って実行することで前記両金属薄膜磁性層を順次形成する磁気記録媒体製造方法であって、前記蒸着処理時において、前記蒸着領域における蒸着開始点側に酸素ガスを供給することで前記各カラムを前記非磁性支持体の厚み方向に成長させて当該各カラムにおける基端部側のそれぞれの一部で構成された初期成長部を形成すると共に、前記蒸着開始点から蒸着終了点までの間において当該各カラムを当該非磁性支持体の長手方向に沿って傾斜させつつ側面視円弧状となるように成長させて当該各カラムにおける先端部側のそれぞれの他の一部で構成された後期成長部を形成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る磁気記録媒体によれば、各カラムが非磁性支持体の厚み方向に成長した部位(カラムにおける基端部側の部位)で形成された初期成長部と、各カラムが非磁性支持体の長手方向に沿って傾斜しつつ側面視円弧状となるように成長した部位(カラムにおける先端部側の部位)で形成された後期成長部とをそれぞれ有する第1の金属薄膜磁性層および第2の金属薄膜磁性層を備えたことにより、第1の金属薄膜磁性層に対する初期成長部の形成によって所望の平坦性を有する第1の金属薄膜磁性層を形成することができると共に、第1の金属薄膜磁性層が所望の平坦性を有することで、その上に形成する第2の金属薄膜磁性層についても平坦性が悪化する事態を回避することができる。また、第1の金属薄膜磁性層に対する初期成長部の形成によって吸収し得なかった極く小さな凹凸が第1の金属薄膜磁性層の表面に存在していたとしても、第2の金属薄膜磁性層に対する初期成長部の形成によって所望の平坦性を有する第2の金属薄膜磁性層を形成することができる。したがって、従来の製造方法に従って製造した磁気記録媒体とは異なり、摺動抵抗を軽減し得る程度の極く小さな凹凸(非磁性支持体の表面に予め形成された凹凸と同程度の大きさの凹凸)を存在させつつ、スペーシングロスの発生を回避し得る程度に磁気記録媒体全体としての平坦性を十分に向上させることができる結果、記録再生時におけるテープ走行性の悪化を回避しつつ、順方向走行時における出力信号の信号レベルおよび逆方向走行時における出力信号の信号レベルの双方を十分に高めることができる。
【0015】
また、本発明に係る磁気記録媒体によれば、第2の金属薄膜磁性層の厚みに対する第1の金属薄膜磁性層の厚みの比が0.60以上2.10以下の範囲内となるように形成したことにより、双方向記録再生時における順方向走行時および逆方向走行時の双方において、磁気ヘッドからの出力信号の信号レベルをほぼ同レベルとすることができる。したがって、順方向走行時および逆方向走行時における記録・再生条件を大きく異ならせることなく記録データの再生が可能となるため、記録・再生制御が容易となる分だけ、記録再生装置の製造コストを十分に低減することができる。
【0016】
さらに、本発明に係る磁気記録媒体によれば、後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.08以上0.15以下の範囲内となるように第1の金属薄膜磁性層および第2の金属薄膜磁性層を形成したことにより、保磁力が十分に高い磁気記録媒体を提供することができる。これにより、高密度記録化のためにデータ記録トラックの幅を狭くしたり、データ記録トラック上における1ビット長を短くしたりした場合(トラック幅方向、トラック長方向における隣接ビットの影響が顕著となる状態)であっても記録データの正常な読み出しが可能な程度に磁化状態を十分に維持することができる。
【0017】
また、本発明に係る磁気記録媒体製造装置および磁気記録媒体製造方法によれば、蒸着領域における蒸着開始点側に酸素ガスを供給することで各カラムを非磁性支持体の厚み方向に成長させて各カラムにおける基端部側のそれぞれの一部で構成された初期成長部を形成すると共に、蒸着開始点から蒸着終了点までの間において各カラムを非磁性支持体の長手方向に沿って傾斜させつつ側面視円弧状となるように成長させて各カラムにおける先端部側のそれぞれの他の一部で構成された後期成長部を形成して第1の金属薄膜磁性層および第2の金属薄膜磁性層を順次形成することにより、後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が所望の範囲内の磁気記録媒体、すなわち、所望の平坦性を有する磁気記録媒体を確実かつ容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る磁気記録媒体、磁気記録媒体製造装置および磁気記録媒体製造方法の最良の形態について説明する。
【0019】
最初に、本発明における磁気記録媒体の一例である磁気テープ1の構成について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示す磁気テープ1は、第1磁性層3、第2磁性層4および保護層6が非磁性支持体2の一方の面(同図における上面)にこの順で形成されると共に、バックコート層8が非磁性支持体2の他方の面(同図における下面)に形成されている。また、保護層6の表面には潤滑剤7が塗布されている。非磁性支持体2は、後述する両磁性層3,4の形成処理時や保護層6の形成処理時に加わる熱に耐え得る非磁性材料(一例として、高分子材料)でフィルム状に形成されている。具体的には、一例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド、ポリアミドイミドおよびポリイミド等の各種高分子材料で形成されている。この場合、この磁気テープ1では、一例として、厚み4.7μmのポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)フィルムで非磁性支持体2が構成されている。
【0021】
また、非磁性支持体2の表面(磁性層3,4の形成面)には、後述するように、両磁性層3,4および保護層6の表面に摺動抵抗軽減用の凹凸を生じさせるための極く小さな凹凸が形成されている。また、非磁性支持体2の裏面(磁性層3,4の形成面とは反対側の面:バックコート層8の形成面)には、磁気記録媒体の製造時において非磁性支持体2の走行性(バックコート層8の形成が完了するまでの間の走行性)を向上させるための凹凸が形成されている。したがって、このような非磁性支持体2を硬巻きしたときには、非磁性支持体2の裏面に形成されている凹凸における凸部が表面(磁性層の形成面)に転写されて表面に凹凸が生じることもある。
【0022】
第1磁性層3は、本発明における第1の金属薄膜磁性層に相当し、後述するように、非磁性支持体2の一方の面に真空中において強磁性金属材料9(図2参照)を斜め蒸着法によって蒸着させることで複数のカラム5が形成されて構成されている。この場合、強磁性金属材料9は、本発明における金属材料に相当し、良好な磁気的特性が得られると共に材料原価が比較的安価であり、しかも無害であることから、一例として、Co(コバルト)、または、Coを主成分として含有するCo含有合金が使用されている。なお、記録データの記録再生に適した磁気的特性を有する磁性層を形成するためには、強磁性金属材料9内に含まれるすべての金属元素を基準としたCoの割合(含有率)が、60原子%以上であるのが好ましく、さらには80原子%以上、特に90原子%以上であるのが好ましい。この場合、強磁性金属材料9としてCo含有合金を使用するときには、CoおよびNiを主成分とする合金、または、Co、NiおよびCrを主成分とする合金を使用するのが好ましく、これらの合金におけるCo以外の各元素の含有率については、磁性層に要求される磁気的特性や耐食性に応じて適宜選択することができる。
【0023】
また、第1磁性層3は、上記の各カラム5における基端部側(非磁性支持体2側)のそれぞれの一部で構成された初期成長部3aと、各カラム5における先端部側(保護層6側)のそれぞれの他の一部で構成された後期成長部3bとが非磁性支持体2側からこの順で連続的に形成されて構成されている。この場合、初期成長部3aは、後述するように第1磁性層3の平坦性を向上させる効果(第1磁性層3の平坦性が悪化するのを回避する効果)を有する下地層としても機能する部位であって、非磁性支持体2に対する強磁性金属材料9の蒸着工程(第1磁性層3の形成工程)における初期段階において、非磁性支持体2の厚み方向(略垂直方向)にカラム5を直線状に成長させた部位で構成されている。なお、上記の「厚み方向(略垂直方向)」には、非磁性支持体2の法線に対する傾斜角度が0°〜10°程度までの方向、すなわち、非磁性支持体2の表面に対する傾斜角度θ1が90°〜80°程度までの方向がこれに含まれる。この場合、出願人は、非磁性支持体2の表面に対する傾斜角度θ1が80°を下回ると、第1磁性層3の平坦性が悪化するのを確認している。
【0024】
この初期成長部3aは、後述するように、第1磁性層3の形成処理時において、非磁性支持体2に対して強磁性金属材料9を蒸着させる蒸着領域A(図2参照)における蒸着開始点Psの近傍に設けられた開始点側酸素供給部18から酸素ガスを供給することで、蒸発した強磁性金属材料9と酸素ガスとが蒸着開始点Psにおいて十分に混合された状態で非磁性支持体2の表面に付着するため、カラム5が非磁性支持体2の厚み方向(略垂直方向)に対して直線状に成長するようにして形成される。また、初期成長部3aは、酸素供給管20aから供給された酸素ガスと強磁性金属材料9とが混合されて付着することで、Co−Oを主体として形成される。この場合、初期成長部3aにおける酸素含有量は、50〜60原子%程度であるのが好ましい。
【0025】
また、初期成長部3aの厚みは、3nm以上50nm以下の範囲内であるのが好ましい。この場合、3nm以上50nm以下の範囲内の厚みであれば、カラム5の基端部側(初期成長部3aを構成する部位)を十分に細かく、かつ均一に成長させることができる。したがって、初期成長部3aに続いて成長するカラム5の先端部側(後期成長部3bを構成する部位)についても十分に細かくかつ均一に成長させることができる。さらに、初期成長部3aの厚みを3nm以上50nm以下の範囲内とすることで、この初期成長部3aに続いて形成される後期成長部3bにおいて、結晶磁気異方性の発現の元となるCo(六方晶)におけるc軸方向がカラム5内で揃い易くなる。これにより、後期成長部3bが十分に高い保磁力と十分に高い残留磁化を有することとなり、結果として、十分に高いC/Nを得ることが可能となる。また、初期成長部3aの厚みを3nm以上50nm以下の範囲内とすることで、非磁性支持体2の表面に凹凸が存在する場合であっても、第1磁性層3の平坦性を悪化させることなく、非磁性支持体2の凹凸と同程度の大きさの凹凸を第1磁性層3の表面に形成することができる。
【0026】
これに対して、初期成長部3aの厚みを3nm未満とした場合には、カラム5の基端部側を均一で細かく成長させるのが困難となる。したがって、初期成長部3aに続いて成長するカラム5の先端部側についても均一で細かく成長させるのが困難となるおそれがある。さらに、初期成長部3aの厚みを3nm未満とした場合には、後期成長部3bにおいて、結晶磁気異方性の発現の元となるCo(六方晶)におけるc軸方向がカラム5内において不揃いとなるおそれがある。したがって、後期成長部3bが有する保磁力と残留磁化とが低下する結果、高いC/Nを得るのが困難となるおそれがある。また、初期成長部3aの厚みを3nm未満とした場合には、非磁性支持体2の表面に凹凸が存在する場合において、その凹凸よりも大きな凹凸が第1磁性層3の表面に形成されるおそれがある。
【0027】
一方、初期成長部3aの厚みを50nmを超える厚みとした場合には、第1磁性層3の平面方向および厚み方向の両方向に向かってカラム5が大きく成長し過ぎて初期成長部3aと後期成長部3bとの境界部位が大きく凹凸するおそれがあり、結果として、後期成長部3bの表面、すなわち、第1磁性層3の表面に大きな凹凸が生じるおそれがある。また、初期成長部3aの厚みを50nmを超える厚みとした場合には、第1磁性層3の厚みが厚くなり過ぎることに起因して磁気テープ1の巻き径が太くなり過ぎるおそれがある。なお、この磁気テープ1では、一例として、第1磁性層3における初期成長部3aの厚みが7nmであるものとする。
【0028】
後期成長部3bは、非磁性支持体2に対する強磁性金属材料9の蒸着工程(第1磁性層3の形成工程)において初期成長部3aに対して連続的にカラム5を成長させることで形成される部位、すなわち、各カラム5の先端部側のそれぞれの一部で構成されている。具体的には、強磁性金属材料9の蒸着工程における初期段階で非磁性支持体2上に成長したカラム5(初期成長部3aを構成する部位)を非磁性支持体2の長手方向に沿って傾斜させつつ側面視円弧状となるように成長させた部位で構成されている。なお、従来の磁気記録媒体における第1磁性層3xは、この後期成長部3bのみで形成されているのと同様の構成となっている。
【0029】
この場合、この磁気テープ1では、後述するように、非磁性支持体2を回転冷却ドラム15(図2参照)の周面に沿わせて走行させつつ強磁性金属材料9を蒸着させることで第1磁性層3が形成されている。したがって、非磁性支持体2に対して強磁性金属材料9を蒸着させる蒸着領域Aの蒸着開始点Psよりも蒸着終了点Pe側において形成される部位(カラム5における後期成長部3bを構成する部位における基端部側)の傾斜角度θ2aが10°〜60°程度となると共に、蒸着領域Aの蒸着終了点Pe側において形成される部位(カラム5における後期成長部3bを構成する部位における先端部側)の傾斜角度θ2bが30°〜90°程度となり、カラム5における後期成長部3bを構成する部位が側面視円弧状となる。
【0030】
この後期成長部3bは、Coを主体として形成され、前述した初期成長部3aと比較して酸素含有量が少なくなっている。この場合、後期成長部3bにおける酸素含有量は、20〜50原子%程度であるのが好ましい。また、後期成長部3bの厚みは、10nm以上300nm以下の範囲内であるのが好ましい。この範囲内の厚みであれば、カラム5における初期成長部3aを構成する部位(基端部側)に続いて後期成長部3bを構成する部位(先端部側)についても十分に細かく、かつ均一に成長させることができると共に、後期成長部3bの表面(すなわち、第1磁性層3の表面)の平坦性を十分に向上させることができる。これにより、記録再生時における磁気ヘッドとの間のスペーシングロスを低減することができ、結果として、十分に高いC/Nを得ることが可能となる。
【0031】
これに対して、後期成長部3bの厚みを10nm未満とした場合には、後期成長部3bの保磁力および残留磁化を十分なレベルとするのが困難となるおそれがある。一方、後期成長部3bの厚みを300nmを超える厚みとした場合には、カラム5における後期成長部3bを構成する部位(先端部側)が第1磁性層3の平面方向および厚み方向の両方向に向かって大きく成長し過ぎる結果、後期成長部3bの平坦性が悪化して記録再生時に生じるスペーシングロスが増大するため、結果として、高いC/Nを得るのが困難となるおそれがある。なお、この磁気テープ1では、一例として、第1磁性層3における後期成長部3bの厚みが68nmであるものとする。
【0032】
このように、第1磁性層3内に初期成長部3aを形成した構成を採用する場合においては、初期成長部3aの形成による上記の各種効果を得られる十分な厚みと、後期成長部3bの形成による上記の各種効果を得られる十分な厚みとの組み合わせを考慮して、後期成長部3bの厚みを初期成長部3aの厚みよりも厚くするのが好ましい。具体的には、後期成長部3bの厚みに対する初期成長部3aの厚みの比が0.08以上0.15以下の範囲内(この例では、0.10)となるように初期成長部3aおよび後期成長部3bの厚みを規定して形成するのが好ましい。なお、後期成長部3bの厚みに対する初期成長部3aの厚みの比と磁気テープ1の記録再生特性との関係については、後に詳細に説明する。
【0033】
第2磁性層4は、本発明における第2の金属薄膜磁性層に相当し、図1に示すように、非磁性支持体2上に形成された第1磁性層3上に真空中において強磁性金属材料9(図2参照)を斜め蒸着法によって蒸着させることで複数のカラム5が形成されて構成されている。なお、第2磁性層4を形成するのに使用する強磁性金属材料9については、上記の第1磁性層3を形成するのに使用する強磁性金属材料9と同様であるため、その説明を省略する。
【0034】
また、第2磁性層4は、上記の各カラム5における基端部側(非磁性支持体2側)のそれぞれの一部で構成された初期成長部4aと、各カラム5における先端部側(保護層6側)のそれぞれの他の一部で構成された後期成長部4bとが非磁性支持体2側から第1磁性層3の上にこの順で連続的に形成されて構成されている。この場合、初期成長部4aは、前述した第1磁性層3における初期成長部3aと同様にして、後述するように第2磁性層4の平坦性を向上させる効果(第2磁性層4の平坦性が悪化するのを回避する効果)を有する下地層としても機能する部位であって、強磁性金属材料9の蒸着工程(第2磁性層4の形成工程)における初期段階において、非磁性支持体2の厚み方向(略垂直方向)にカラム5を直線状に成長させた部位で構成されている。
【0035】
なお、上記の「厚み方向(略垂直方向)」には、非磁性支持体2の法線に対する傾斜角度が0°〜10°程度までの方向、すなわち、非磁性支持体2の表面に対する傾斜角度θ1が90°〜80°程度までの方向がこれに含まれる。この場合、出願人は、非磁性支持体2の表面に対する傾斜角度θが80°を下回ると、第2磁性層4の平坦性が悪化するのを確認している。
【0036】
この初期成長部4aは、前述した第1磁性層3の初期成長部3aと同様にして、強磁性金属材料9を蒸着させる蒸着領域Aにおける蒸着開始点Ps(図2参照)の近傍に設けられた開始点側酸素供給部18から酸素ガスを供給することで、蒸発した強磁性金属材料9と酸素ガスとが蒸着開始点Psにおいて十分に混合された状態で第1磁性層3の表面に付着するため、カラム5が非磁性支持体2の厚み方向(略垂直方向)に対して直線状に成長するようにして形成される。また、初期成長部4aは、酸素供給管20aから供給された酸素ガスと強磁性金属材料9とが混合された状態で付着することで、Co−Oを主体として形成される。この場合、初期成長部4aにおける酸素含有量は、50〜60原子%程度であるのが好ましい。また、初期成長部4aの厚みは、前述した初期成長部3aの厚みと同様の理由により、3nm以上50nm以下の範囲内であるのが好ましい。なお、この磁気テープ1では、一例として、第2磁性層4における初期成長部4aの厚みが7nmであるものとする。
【0037】
後期成長部4bは、第1磁性層3における後期成長部3bと同様にして、強磁性金属材料9の蒸着工程(第2磁性層4の形成工程)において初期成長部4aに対して連続的にカラム5を成長させることで形成される部位、すなわち、各カラム5の先端部側のそれぞれの一部で構成されている。具体的には、強磁性金属材料9の蒸着工程における初期段階で第1磁性層3上に成長したカラム5(初期成長部4aを構成する部位)を非磁性支持体2の長手方向に沿って傾斜させつつ側面視円弧状となるように成長させた部位で構成されている。なお、この後期成長部4bについても、後期成長部3bと同様にして、カラム5の基端部側の傾斜角度θ2aが10°〜60°程度となり、カラム5の先端部側の傾斜角度θ2bが30°〜90°程度となると共に、カラム5における後期成長部4bを構成する部位が側面視円弧状となる。また、従来の磁気記録媒体における第2磁性層は、この後期成長部4bのみで形成されているのと同様の構成となっている。
【0038】
この後期成長部4bは、Coを主体として形成され、前述した初期成長部4aと比較して酸素含有量が少なくなっている。この場合、後期成長部4bにおける酸素含有量は、20〜50原子%程度であるのが好ましい。また、後期成長部4bの厚みは、前述した第1磁性層3における後期成長部3bの厚みと同様の理由により、10nm以上300nm以下の範囲内であるのが好ましい。なお、この磁気テープ1では、一例として、第2磁性層4における後期成長部4bの厚みが65nmであるものとする。
【0039】
このように、第2磁性層4内に初期成長部4aを形成した構成を採用する場合においては、初期成長部4aの形成による上記の各種効果を得られる十分な厚みと、後期成長部4bの形成による上記の各種効果を得られる十分な厚みとの組み合わせを考慮して、後期成長部4bの厚みを初期成長部4aの厚みよりも厚くするのが好ましい。具体的には、後期成長部4bの厚みに対する初期成長部4aの厚みの比が0.08以上0.15以下の範囲内(この例では、0.11)となるように初期成長部4aおよび後期成長部4bの厚みを規定して形成するのが好ましい。なお、後期成長部4bの厚みに対する初期成長部4aの厚みの比と磁気テープ1の記録再生特性との関係については、後に詳細に説明する。
【0040】
この磁気テープ1では、図1に示すように、第1磁性層3における各カラム5の後期成長部3bを構成している部位と、第2磁性層4における各カラム5の後期成長部4bを構成している部位とが非磁性支持体2の厚み方向(法線方向)に対して相反する方向に傾くように第1磁性層3および第2磁性層4が形成されている。したがって、この磁気テープ1では、第1磁性層3の磁化容易軸の方向(同図に矢印A1で示す方向)と、第2磁性層4の磁化容易軸の方向(同図に矢印A2で示す方向)とが相反する方向に傾いており、後述するように、磁気テープ1に対する双方向記録時における磁化特性の相違や出力信号の信号レベルの差異が生じ難くなっている。また、この磁気テープ1では、第2磁性層4の厚みに対するの第1磁性層3の厚みの比が0.60以上2.10以下の範囲内(この例では、1.04)となるように第1磁性層3および第2磁性層4が形成されている。これにより、磁気テープ1に対する双方向記録時における出力信号の信号レベルの差異が十分に小さくなっている。
【0041】
保護層6は、上記の両磁性層3,4の酸化を防止すると共に両磁性層3,4の摩耗を阻止するための薄膜であって、一例として、DLC(Diamond Like Carbon )で形成されている。潤滑剤7としては、一例として、フッ素を含む潤滑剤、炭化水素系のエステル、または、これらの混合物が使用される。バックコート層8は、結合剤樹脂(バインダ)と無機化合物および/またはカーボンブラックとを有機溶媒に混合分散させたバックコート層用塗料を塗布して硬化させることにより、厚みが0.1μm〜0.7μm程度となるように形成されている。この場合、結合剤樹脂としては、塩化ビニル系共重合体、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂およびポリエステル樹脂を単独または混合して用いることができる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、サーマルカーボンブラック等を用いることができ、無機化合物としては、炭酸カルシウム、アルミナ、α−酸化鉄等を用いることができる。さらに、有機溶剤としては、ケトン系や芳香族炭化水素系の溶剤(例えば、メチルエチルケトン、トルエンおよびシクロヘキサノンなど)を用いることができる。
【0042】
次に、上記の磁気テープ1を製造可能に構成された磁気テープ製造装置10の構成、および磁気テープ1の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0043】
図2に示す磁気テープ製造装置(以下、「製造装置」ともいう)10は、本発明に係る磁気記録媒体製造装置に相当し、繰り出しロール13、巻き取りロール14、回転冷却ドラム15、るつぼ16、電子銃17、開始点側酸素供給部18および終了点側酸素供給部19が真空槽11内に収容されて上記の両磁性層3,4を形成可能に構成されている。また、真空槽11には、内部空間Sの気体を排気して真空状態を維持するための真空ポンプ12が取り付けられている。
【0044】
繰り出しロール13は、第1磁性層3または第2磁性層4が形成される非磁性支持体2を巻回したロールを回転させることで非磁性支持体2を回転冷却ドラム15側に向けて繰り出す。巻き取りロール14は、第1磁性層3または第2磁性層4が形成された非磁性支持体2をロール状に巻き取る。回転冷却ドラム15は、繰り出しロール13から繰り出された非磁性支持体2をその周面に添わせて走行させつつ冷却する。なお、実際には、繰り出しロール13と回転冷却ドラム15との間や回転冷却ドラム15と巻き取りロール14との間にガイドローラ等が存在するが、本発明についての理解を容易とするために、これらについての図示および説明を省略する。
【0045】
るつぼ16は、一例として、MgO等で形成され、図示しない材料供給装置によって定期的に供給される強磁性金属材料9(この例では、Co)を収容する。このるつぼ16は、電子銃17から出力される電子ビーム17aの照射により蒸発した強磁性金属材料9を回転冷却ドラム15の周面に添って走行している非磁性支持体2の表面に斜めから蒸着させるように定置されている。電子銃17は、るつぼ16内の強磁性金属材料9を蒸発させるための電子ビーム17aを出力する。
【0046】
開始点側酸素供給部18は、酸素混合チャンバ18a、マスク18bおよび酸素供給管20aを備えて非磁性支持体2の走行方向における上流側に配設されている。酸素混合チャンバ18aは、回転冷却ドラム15の周面に沿って走行させられている非磁性支持体2の幅方向(図2の紙面の奥行き方向)における長さが非磁性支持体2の幅よりも僅かに長い箱体に形成されて、その開口面を回転冷却ドラム15の周面(すなわち、非磁性支持体2の表面)に向けて配設されている。また、酸素混合チャンバ18aの幅(非磁性支持体2の走行方向に沿った開口長)は、第1磁性層3や第2磁性層4に形成すべき初期成長部3a,4aの厚み、回転冷却ドラム15の直径、および非磁性支持体2の走行速度等の諸条件に応じて規定されている。
【0047】
また、酸素混合チャンバ18a内に配設されている酸素供給管20aは、蒸着領域Aの蒸着開始点Ps側に酸素ガスを供給する。酸素供給管20aは、非磁性支持体2の幅方向に沿って複数の酸素ガス供給口(一例として、円形孔やスリット)が形成されて構成されている。この場合、出願人は、蒸着開始点Psの近傍に酸素混合チャンバ18aを配設し、るつぼ16から蒸発した強磁性金属材料9と酸素供給管20aから供給される酸素ガスとを酸素混合チャンバ18a内において混合して強磁性金属材料9の蒸発成分を酸素ガス中に散乱させることにより、非磁性支持体2の上に成長するカラム5が非磁性支持体2に対してその厚み方向(法線方向:略垂直方向)に対して直線状に成長して上記の初期成長部3a,4aが形成されるのを見い出した。
【0048】
マスク18bは、るつぼ16から蒸発した強磁性金属材料9の非磁性支持体2に対する付着を阻止することで(非磁性支持体2を覆うことで)蒸着領域Aの蒸着開始点Psを規定する。また、マスク18bは、回転冷却ドラム15に対する配設位置を調整されることで、非磁性支持体2に対して強磁性金属材料9を付着させる角度(非磁性支持体2の法線方向とるつぼ16が存在する方向とのなす角度)の最大角度を規定する。
【0049】
終了点側酸素供給部19は、マスク19aおよび酸素供給管20bを備えて非磁性支持体2の走行方向における下流側に配設されている。マスク19aは、るつぼ16から蒸発した強磁性金属材料9の非磁性支持体2に対する付着を阻止することで(非磁性支持体2を覆うことで)蒸着領域Aの蒸着終了点Peを規定する。このマスク19aは、回転冷却ドラム15に対する配設位置を調整されることで、非磁性支持体2に対して強磁性金属材料9を付着させる角度(非磁性支持体2の法線方向とるつぼ16が存在する方向とのなす角度)の最小角度を規定する。
【0050】
酸素供給管20bは、マスク19aと回転冷却ドラム15との間に配設されて、上記の蒸着領域Aにおける蒸着終了点Pe側に配設されている。また、酸素供給管20bは、非磁性支持体2の幅方向に沿って複数の酸素ガス供給口(一例として、円形孔やスリット)が形成されて構成されている。この場合、終了点側酸素供給部19において供給する酸素ガスは、形成する第1磁性層3や第2磁性層4の飽和磁束密度、保磁力および電磁変換特性の向上を図る目的で導入されている。
【0051】
一方、磁気テープ1の製造に際しては、製造装置10を用いて、図3に示すように、非磁性支持体2の上に第1磁性層3を形成した後に、図4に示すように、形成した第1磁性層3の上に第2磁性層4を形成する。つまり、非磁性支持体2の上に強磁性金属材料9を蒸着させる蒸着処理を2回に亘って実行することで、第1磁性層3および第2磁性層4を非磁性支持体2の上にこの順で形成する。
【0052】
具体的には、まず、第1磁性層3を形成する非磁性支持体2を巻回した原反を繰り出しロール13にセットして回転冷却ドラム15の周面に沿わせると共に、先端部を巻き取りロール14に固定する。次いで、真空ポンプ12を作動させて真空槽11内を10−3Pa程度の圧力となるように真空引きした後に、繰り出しロール13、巻き取りロール14および回転冷却ドラム15を回転させて回転冷却ドラム15の周面に沿って非磁性支持体2を走行させる。続いて、るつぼ16内の強磁性金属材料9に向けて電子銃17から電子ビーム17aを照射することで強磁性金属材料9を蒸発させると共に、酸素供給管20a,20bからの酸素ガスの供給を開始する。この際に、電子銃17は、非磁性支持体2の幅方向に沿って電子ビーム17aを所定のピッチで走査(往復動)させる。これにより、るつぼ16内において強磁性金属材料9が加熱されて蒸発する。
【0053】
この際に、るつぼ16から蒸発した強磁性金属材料9のうちの蒸着開始点Ps付近に飛来した強磁性金属材料9の多くは、酸素供給管20aから供給された酸素ガスと酸素混合チャンバ18a内において混合される。この際に、酸素ガスと混合された強磁性金属材料9は、酸素ガスと衝突することで、その移動方向が様々に変化させられる結果、回転冷却ドラム15の周面を走行している非磁性支持体2の上に降り積もるようにして付着する。これにより、第1磁性層3を構成する各カラム5の基端部側が非磁性支持体2上に成長し、第1磁性層3における初期成長部3aの形成が進行する。
【0054】
この場合、従来の一般的な斜め蒸着法によって強磁性金属材料9を非磁性支持体2に付着させたときには、非磁性支持体2の表面に極く小さな凹凸が存在するときに、その凸部(図8における凸部Z1bx)における非磁性支持体2の走行方向の上流側に強磁性金属材料9が付着し難く、凸部における走行方向の下流側にのみ強磁性金属材料9が付着する。したがって、従来の斜め蒸着法では、前述したように、非磁性支持体2に極く小さな凹凸が存在する場合において、その凸部の大きさが誇張(巨大化)されて第1磁性層3の表面に現れることとなり、結果として、第1磁性層3の平坦性が悪化する傾向がある。
【0055】
これに対して、蒸着開始点Psの近傍において酸素ガスと混合した状態で非磁性支持体2に強磁性金属材料9を付着させるこの製造装置10では、るつぼ16から飛来した強磁性金属材料9が酸素混合チャンバ18a内において酸素ガスと混合されることでるつぼ16からの飛来方向とは無関係な向きで非磁性支持体2に付着することとなる。したがって、強磁性金属材料9が非磁性支持体2の厚み方向(法線方向:略垂直方向)に付着し、カラム5の基端部側が直線状に成長して非磁性支持体2上に初期成長部3aが形成される。したがって、非磁性支持体2の表面に極く小さな凹凸が存在したとしても、その凸部における非磁性支持体2の走行方向の上流側および下流側の双方に対して強磁性金属材料9が同様に付着する結果、初期成長部3aの形成過程において非磁性支持体2の凹凸よりも大きな凹凸が形成される事態が回避され、非磁性支持体2の凹凸と同程度の大きさの凹凸が第1磁性層3の表面に形成される。
【0056】
なお、本明細書における蒸着開始点Psとは、るつぼ16の位置と回転冷却ドラム15の位置との関係に基づいて規定される幾何学的な意味での蒸着開始点であり、実際には、酸素混合チャンバ18aの大きさ、酸素供給管20aから送り出される酸素ガスの量、および強磁性金属材料9の蒸発量などに応じて図2に示す蒸着開始点Psよりも上流側から非磁性支持体2に対する強磁性金属材料9の蒸着が始まることもある。
【0057】
一方、開始点側酸素供給部18の部位で初期成長部3aが形成された非磁性支持体2は、回転冷却ドラム15の周面に沿って走行してマスク18b,19aの間に移動する。この際に、るつぼ16から蒸発して飛来した強磁性金属材料9が上記の初期成長部3a(カラム5の基端部)の上に付着する結果、非磁性支持体2が蒸着終了点Peまで移動するまでの間においてカラム5が基端部側(初期成長部3aを構成する部位)に続いて連続して成長して初期成長部3aの上に後期成長部3bが形成される。この場合、非磁性支持体2がマスク18bから露出した直後からマスク19aによって覆われるまでの間において非磁性支持体2に対するるつぼ16の相対的な存在方向(強磁性金属材料9が飛来する方向)が逐次変化する結果、図3に示すように、カラム5の先端部側(後期成長部3bを構成する部位)が非磁性支持体2の走行方向に対して下流側に傾斜しつつ側面視円弧状に成長する。なお、同図では、非磁性支持体2が矢印R1の向きに走行している状態を表している。
【0058】
また、非磁性支持体2上に初期成長部3aを形成することで、非磁性支持体2の表面に凹凸が存在する場合であっても、初期成長部3aの形成過程において、強磁性金属材料9およびその酸化物で凹凸が覆われて凹凸の度合い(大きさ)が十分に小さくなる。したがって、この初期成長部3aの上に形成される後期成長部3bの形成時において非磁性支持体2の表面に存在する凹凸よりも大きな凹凸が形成される事態が回避され、結果として、非磁性支持体2の表面に存在する凹凸と同程度の大きさの凹凸が後期成長部3bの表面、すなわち、第1磁性層3の表面に形成される。これにより、所望の平坦性を有する第1磁性層3が非磁性支持体2の上に形成される。この後期成長部3bの厚みは、マスク19aの位置、非磁性支持体2の走行速度、強磁性金属材料9の蒸発量を適宜調整することで所望の厚みとすることができる。
【0059】
なお、上記の蒸着終了点Peは、前述した蒸着開始点Psと同様に幾何学的な意味での蒸着終了点であり、実際には、非磁性支持体2のテープ走行速度および強磁性金属材料9の蒸発量やマスク19aの裏側に強磁性金属材料9が回り込むことに起因して、図2に示す蒸着終了点Peよりも下流側まで非磁性支持体2に対する強磁性金属材料9の蒸着が続くこともある。
【0060】
この後、初期成長部3aおよび後期成長部3bの形成が完了した(第1磁性層3の形成が完了した)非磁性支持体2は、回転冷却ドラム15の周面から離脱して巻き取りロール14に巻き取られる。これにより、本発明における2回の蒸着処理のうちの1回目が完了する。
【0061】
続いて、第1磁性層3の形成が完了した非磁性支持体2が巻回された原反を繰り出しロール13にセットして回転冷却ドラム15の周面に沿わせると共に、先端部を巻き取りロール14に固定する。次いで、真空ポンプ12を作動させて真空槽11内を真空状態とした後に、繰り出しロール13、巻き取りロール14および回転冷却ドラム15を回転させて回転冷却ドラム15の周面に沿って非磁性支持体2を走行させる。この際には、前述した第1磁性層3の形成処理時とは逆方向に非磁性支持体2が走行させられる。続いて、るつぼ16内の強磁性金属材料9に向けて電子銃17から電子ビーム17aを照射することで強磁性金属材料9を蒸発させると共に、酸素供給管20a,20bからの酸素ガスの供給を開始する。
【0062】
この際には、前述した初期成長部3aおよび後期成長部3bの形成プロセスと同様にして、図4に示すように、第1磁性層3の上に初期成長部4aおよび後期成長部4bが形成される。なお、同図では、非磁性支持体2が矢印R2の向きに走行している状態を表している。この際に、前述した初期成長部3aと同様にして、第2磁性層4の形成処理における初期段階(酸素混合チャンバ18aの近傍)において第1磁性層3の上に初期成長部4aを形成することで、第1磁性層3の表面に凹凸が存在する場合であっても、初期成長部4aの形成過程において、強磁性金属材料9およびその酸化物で凹凸が覆われて凹凸の度合い(大きさ)が十分に小さくなる。したがって、この初期成長部4aの上に形成される後期成長部4bの形成時において第1磁性層3の凹凸よりも大きな凹凸が形成される事態が回避され、結果として、第1磁性層3の凹凸と同程度の大きさの凹凸が後期成長部4bの表面、すなわち、第2磁性層4の表面に形成される。これにより、所望の平坦性を有する第2磁性層4が第1磁性層3の上に形成される。この後、初期成長部4aおよび後期成長部4bの形成が完了した(第2磁性層4の形成が完了した)非磁性支持体2は、回転冷却ドラム15の周面から離脱して巻き取りロール14に巻き取られる。これにより、本発明における2回の蒸着処理のうちの2回目が完了する。
【0063】
この後、図5に示すように、保護層形成装置(図示せず)を用いて第2磁性層4の表面にDLCを付着させることで保護層6を形成する。次いで、非磁性支持体2の裏面側にバックコート層用塗料を塗布して乾燥させることによってバックコート層8を形成すると共に、保護層6の表面に潤滑剤7を塗布する。以上により、磁気テープ1の一連の製造工程が完了し、図1に示すように、磁気テープ1が完成する。なお、テープカートリッジに収容される最終製品物としての磁気テープは、潤滑剤7の塗布が完了した非磁性支持体2を所定のテープ幅に裁断することで製造されるが、本発明についての理解を容易とするために、これらの工程についての図示および説明を省略する。
【0064】
次いで、初期成長部3a,4aの有無、第2磁性層4の厚みに対する第1磁性層3の厚みの比、および後期成長部3b,4bの厚みに対する初期成長部3a,4aの厚みの比と、磁気テープの記録再生特性との関係について、実施例および比較例を参照して具体的に説明する。
【0065】
まず、上記の製造装置10を用いて、図6,7に示す実施例1〜17の磁気テープと比較例1〜3の磁気テープとをそれぞれ製造した。この場合、各磁気テープの製造方法については、基本的には上記の磁気テープ1と同様とした。なお、第1磁性層や第2磁性層を形成する際に酸素供給管20a,20bから供給する酸素ガスの量については、図7に示す量とする。この場合、同図では、比較例1における第1磁性層の形成時に蒸着終了点Pe側の酸素供給管20bから供給する酸素ガスの量を基準とし、この供給量に対する割合で第1磁性層の初期成長部を形成する際に酸素供給管20aから供給する酸素ガスの供給量、第1磁性層の後期成長部を形成する際に酸素供給管20bから供給する酸素ガスの供給量、第2磁性層の初期成長部を形成する際に酸素供給管20aから供給する酸素ガスの供給量、および第2磁性層の後期成長部を形成する際に酸素供給管20bから供給する酸素ガスの供給量をそれぞれ示している。
【0066】
[実施例1]
第1磁性層における初期成長部の厚みが4nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが29nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが6nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが51nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが33nmとなり、第2磁性層の厚みが57nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が0.58となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.14となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.12となった。
【0067】
[実施例2]
第1磁性層における初期成長部の厚みが4nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが28nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが5nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが47nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが32nmとなり、第2磁性層の厚みが52nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が0.62となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.14となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.11となった。
【0068】
[実施例3]
第1磁性層における初期成長部の厚みが4nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが31nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが5nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが42nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが35nmとなり、第2磁性層の厚みが47nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が0.74となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.13となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.12となった。
【0069】
[実施例4]
第1磁性層における初期成長部の厚みが5nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが50nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが4nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが50nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが55nmとなり、第2磁性層の厚みが54nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.02となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.10となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.08となった。
【0070】
[実施例5](前述した磁気テープ1)
第1磁性層における初期成長部の厚みが7nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが68nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが7nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが65nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが75nmとなり、第2磁性層の厚みが72nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.04となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.10となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.11となった。
【0071】
[実施例6]
第1磁性層における初期成長部の厚みが5nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが38nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが5nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが35nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが43nmとなり、第2磁性層の厚みが40nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.08となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.13となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.14となった。
【0072】
[実施例7]
第1磁性層における初期成長部の厚みが5nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが48nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが3nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが43nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが53nmとなり、第2磁性層の厚みが46nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.15となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.10となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.07となった。
【0073】
[実施例8]
第1磁性層における初期成長部の厚みが3nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが44nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが4nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが29nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが47nmとなり、第2磁性層の厚みが33nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.42となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.07となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.14となった。
【0074】
[実施例9]
第1磁性層における初期成長部の厚みが4nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが31nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが3nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが21nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが35nmとなり、第2磁性層の厚みが24nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.46となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.13となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.14となった。
【0075】
[実施例10]
第1磁性層における初期成長部の厚みが5nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが47nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが4nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが29nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが52nmとなり、第2磁性層の厚みが33nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.58となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.11となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.14となった。
【0076】
[実施例11]
第1磁性層における初期成長部の厚みが6nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが52nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが5nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが31nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが58nmとなり、第2磁性層の厚みが36nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.61となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.12となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.16となった。
【0077】
[実施例12]
第1磁性層における初期成長部の厚みが4nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが48nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが4nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが28nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが52nmとなり、第2磁性層の厚みが32nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.63となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.08となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.14となった。
【0078】
[実施例13]
第1磁性層における初期成長部の厚みが7nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが45nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが4nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが27nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが52nmとなり、第2磁性層の厚みが31nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.68となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.16となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.15となった。
【0079】
[実施例14]
第1磁性層における初期成長部の厚みが7nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが47nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが4nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが28nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが54nmとなり、第2磁性層の厚みが32nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.69となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.15となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.14となった。
【0080】
[実施例15]
第1磁性層における初期成長部の厚みが6nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが53nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが4nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが27nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが59nmとなり、第2磁性層の厚みが31nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.90となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.11となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.15となった。
【0081】
[実施例16]
第1磁性層における初期成長部の厚みが5nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが49nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが3nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが23nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが54nmとなり、第2磁性層の厚みが26nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が2.08となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.10となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.13となった。
【0082】
[実施例17]
第1磁性層における初期成長部の厚みが6nmで、第1磁性層における後期成長部の厚みが49nmで、第2磁性層における初期成長部の厚みが3nmで、第2磁性層における後期成長部の厚みが23nmとなるように非磁性支持体2の上に第1磁性層および第2磁性層をこの順で形成した。この結果、第1磁性層の厚みが55nmとなり、第2磁性層の厚みが26nmとなり、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が2.12となった。また、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.12となり、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.13となった。
【0083】
[比較例1]
第1磁性層に初期成長部を形成することなく、厚み53nmの後期成長部のみで第1磁性層を形成すると共に、第2磁性層に初期成長部を形成することなく、厚み33nmの後期成長部のみで第2磁性層を形成した。この結果、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.61となった。
【0084】
[比較例2]
厚み5nmの初期成長部の上に厚み48nmの後期成長部を形成することで厚み53nmの第1磁性層を形成すると共に、第2磁性層に初期成長部を形成することなく、厚み32nmの後期成長部のみで第2磁性層を形成した。この結果、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.66で、第1磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.10となった。
【0085】
[比較例3]
第1磁性層に初期成長部を形成することなく、厚み50nmの後期成長部のみで第1磁性層を形成すると共に、厚み4nmの初期成長部の上に厚み31nmの後期成長部を形成することで厚み35nmの第2磁性層を形成した。この結果、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が1.43で、第2磁性層における後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.13となった。
【0086】
(保磁力Hcの測定)
上記の各実施例および各比較例の磁気テープについて、VSM(振動試料型磁力計)にて保磁力Hcを測定した。その測定結果を図6に示す。
【0087】
(出力の測定)
上記の各実施例および各比較例の磁気テープを順方向および逆方向に走行させ、その際に、0.16μmギャップ長インダクティブヘッドを搭載したドラムテスタを用いて0.4μmの記録波長で記録を行うと共に、AMRヘッドを用いて再生し、その際の出力信号の信号レベル(dB)を測定した。その測定結果を図6に示す。なお、この例では、第2磁性層(表面側の磁性層)の形成処理時、または単一の磁性層の形成処理時において非磁性支持体を走行させた方向に向かって記録再生ヘッドが相対的に走査する方向を順方向とし、第1磁性層(非磁性支持体2側の磁性層)の形成処理時において非磁性支持体を走行させた方向に向かって記録再生ヘッドが相対的に走査する方向を逆方向としている。この場合、順方向出力(dB)および逆方向出力(dB)については、比較例1の順方向出力(dB)を0dBとして表している。また、出力差(dB)については、順方向走行時において測定された出力(dB)と逆方向走行時において測定された出力(dB)との差分の絶対値を表している。
【0088】
図6に示すように、第1磁性層および第2磁性層の双方に初期成長部が形成されていない比較例1の磁気テープ、第2磁性層に初期成長部が形成されていない比較例2の磁気テープ、並びに、第1磁性層に初期成長部が形成されていない比較例3の磁気テープでは、その保磁力Hcが130kA/m台、または140kA/m台と非常に低くなっている。これは、第1磁性層および第2磁性層の一方または双方に初期成長部を形成していないことで、後期成長部の形成時に結晶磁気異方性の発現の元となるCo(六方晶)におけるc軸方向がカラム5内で不揃いとなったことに起因すると考えられる。また、第1磁性層および第2磁性層の一方または双方に初期成長部を形成していないことで、磁気テープの平坦性が悪化しているため、磁気ヘッドとの間に大きなスペーシングロスが生じる結果、順方向走行時における出力(dB)および逆方向走行時における出力(dB)の双方が比較的低い値となっている。
【0089】
これに対して、第1磁性層および第2磁性層の双方に初期成長部が形成されている実施例1〜17の各磁気テープでは、その保磁力Hcが最も低いものでも150kA/m台と非常に高くなっている。これは、第1磁性層および第2磁性層の双方に初期成長部を形成したことで、後期成長部の形成時に結晶磁気異方性の発現の元となるCo(六方晶)におけるc軸方向がカラム5内で一方向に揃っていることによる効果と考えられる。また、第1磁性層および第2磁性層の双方に初期成長部を形成したことで、磁気テープの表面が所望の平坦性を有する状態となっているため、磁気ヘッドとの間に大きなスペーシングロスが生じることなく、順方向走行時における出力(dB)および逆方向走行時における出力(dB)の双方が最低でも1.6dBと比較的高い値となっている。したがって、第1磁性層および第2磁性層の双方に初期成長部を形成することで、保磁力Hcが高く、しかも、出力(dB)が高い磁気テープを製造することができるのが理解できる。
【0090】
この場合、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が0.60を下回っている実施例1の磁気テープでは、順方向走行時における出力に対して逆方向走行時における出力が低くなり、結果として、その出力差が1.3dBとなっている。また、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が2.10を超えている実施例17の磁気テープでは、逆方向走行時における出力に対して順方向走行時における出力が低くなり、結果として、その出力差が1.3dBとなっている。これに対して、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が0.60以上2.10以下の範囲内となっている実施例2〜16の各磁気テープでは、順方向走行時における出力と逆方向走行時における出力とが同程度の値となり、結果として、その出力差が1.0dB以下となっている。したがって、第2磁性層の厚みに対する第1磁性層の厚みの比が0.60以上2.10以下の範囲内となるように第1磁性層の厚みおよび第2磁性層の厚みをそれぞれ規定することで、順方向走行時における出力と逆方向走行時における出力との差が小さい磁気テープ、すなわち、双方向記録時に適した磁気テープを製造することができるのが理解できる。
【0091】
また、第1磁性層および第2磁性層のいずれかにおいて後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.08を下回っている実施例7,8の磁気テープと、第1磁性層および第2磁性層のいずれかにおいて後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.15を超えている実施例11,13の磁気テープでは、その保磁力Hcが150kA/m台と僅かに低い値となっている。これに対して、第1磁性層および第2磁性層の双方において後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.08以上0.15以下の範囲内となっている実施例1〜3,5,6,9,10,14〜17の磁気テープでは、その保磁力Hcが160kA/m台と非常に高い値となっている。この場合、実施例4,12の磁気テープについても、その保磁力Hcがほぼ160kA/mとなっており、各比較例1〜3や実施例7,8,11,13の磁気テープよりも十分に高い値となっている。したがって、第1磁性層および第2磁性層の双方において後期成長部の厚みに対する初期成長部の厚みの比が0.08以上0.15以下の範囲内となるように両磁性層3,4を形成することにより、保磁力Hcが高い磁気テープを製造することができるのが理解できる。
【0092】
この場合、上記のような厚みの比を満足する初期成長部を形成するには、開始点側酸素供給部18(酸素供給管20a)から供給する酸素ガスの量を調整すればよい。具体的には、図7に示すように、比較例1の製造に際して終了点側酸素供給部19から供給した酸素ガスの量を基準供給量としたときに、第1磁性層の形成時において、開始点側酸素供給部18から供給する酸素ガスの基準供給量に対する比が0.50を下回っている実施例8の磁気テープでは、第1磁性層における後期成長部に対する初期成長部の比が0.80を下回っている。また、第2磁性層の形成時において、開始点側酸素供給部18から供給する酸素ガスの基準供給量に対する比が0.50を下回っている実施例7の磁気テープでは、第2磁性層における後期成長部に対する初期成長部の比が0.80を下回っている。
【0093】
さらに、第1磁性層の形成時において、開始点側酸素供給部18から供給する酸素ガスの基準供給量に対する比が1.50を超えている実施例13の磁気テープでは、第1磁性層における後期成長部に対する初期成長部の比が0.15を超えている。同様にして、第2磁性層の形成時において、開始点側酸素供給部18から供給する酸素ガスの量が比較的多い実施例11の磁気テープでは、第2磁性層における後期成長部に対する初期成長部の比が0.15を超えている。したがって、各磁性層3,4の形成時において開始点側酸素供給部18から供給する酸素ガスの量を適宜調整することで、初期成長部に対する後期成長部の厚みの比を所望の範囲内として保磁力Hcが十分に高い磁気テープを製造することができるのが理解できる。
【0094】
このように、この磁気テープ1によれば、各カラム5が非磁性支持体2の厚み方向(法線方向)に成長した部位(カラム5における基端部側の部位)で形成された初期成長部3a,4aと、各カラム5が非磁性支持体2の長手方向に沿って傾斜しつつ側面視円弧状となるように成長した部位(カラム5における先端部側の部位)で形成された後期成長部3b,4bとをそれぞれ有する第1磁性層3および第2磁性層4を備えたことにより、初期成長部3aの形成によって所望の平坦性を有する第1磁性層3を形成することができると共に、第1磁性層3が所望の平坦性を有することで、その上に形成する第2磁性層4についても平坦性が悪化する事態を回避することができる。また、第1磁性層3に対する初期成長部3aの形成によって吸収し得なかった極く小さな凹凸が第1磁性層3の表面に存在していたとしても、初期成長部4aの形成によって所望の平坦性を有する第2磁性層4を形成することができる。したがって、従来の製造方法に従って製造した磁気記録媒体とは異なり、摺動抵抗を軽減し得る程度の極く小さな凹凸(非磁性支持体2の表面に予め形成された凹凸と同程度の大きさの凹凸)を存在させつつ、スペーシングロスの発生を回避し得る程度に磁気テープ1全体としての平坦性を十分に向上させることができる結果、記録再生時におけるテープ走行性の悪化を回避しつつ、順方向走行時における出力信号の信号レベルおよび逆方向走行時における出力信号の信号レベルの双方を十分に高めることができる。
【0095】
また、この磁気テープ1によれば、第2磁性層4の厚みに対する第1磁性層3の厚みの比が0.60以上2.10以下の範囲内となるように形成したことにより、双方向記録再生時における順方向走行時および逆方向走行時の双方において、磁気ヘッドからの出力信号の信号レベルをほぼ同レベルとすることができる。したがって、順方向走行時および逆方向走行時における記録・再生条件を大きく異ならせることなく記録データの再生が可能となるため、記録・再生制御が容易となる分だけ、記録再生装置の製造コストを十分に低減することができる。
【0096】
さらに、この磁気テープ1によれば、後期成長部3b,4bの厚みに対する初期成長部3a,4aの厚みの比が0.08以上0.15以下の範囲内となるように第1磁性層3および第2磁性層4を形成したことにより、保磁力が十分に高い磁気テープ1を提供することができる。これにより、高密度記録化のためにデータ記録トラックの幅を狭くしたり、データ記録トラック上における1ビット長を短くしたりした場合(トラック幅方向、トラック長方向における隣接ビットの影響が顕著となる状態)であっても記録データの正常な読み出しが可能な程度に磁化状態を十分に維持することができる。
【0097】
また、この磁気テープ製造装置10、および製造装置10による磁気テープ1の製造方法によれば、蒸着領域Aにおける蒸着開始点Psに酸素ガスを供給することで各カラム5を非磁性支持体2の厚み方向に成長させて各カラム5における基端部側のそれぞれの一部で構成された初期成長部3a,4aを形成すると共に、蒸着開始点Psから蒸着終了点Peまでの間において各カラム5を非磁性支持体2の長手方向に沿って傾斜させつつ側面視円弧状となるように成長させて各カラム5における先端部側のそれぞれの他の一部で構成された後期成長部3b,4bを形成して第1磁性層3および第2磁性層4を順次形成することにより、後期成長部3b,4bの厚みに対する初期成長部3a,4aの厚みの比が所望の範囲内の磁気テープ1、すなわち、所望の平坦性を有する磁気テープ1を確実かつ容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】磁気テープ1の断面図である。
【図2】製造装置10の構成を示す構成図である。
【図3】第1磁性層3が形成された状態の非磁性支持体2の断面図である。
【図4】図3における第1磁性層3の上に第2磁性層4が形成された状態の非磁性支持体2の断面図である。
【図5】図4における第2磁性層4の上に保護層6が形成された状態の非磁性支持体2の断面図である。
【図6】実施例1〜17および比較例1〜3の各磁気テープにおける保磁力Hc、および順方向出力と逆方向出力との出力差(絶対値)について説明するための説明図である。
【図7】実施例1〜17および比較例1〜3の各磁気テープを製造するための酸素供給量(製造条件)について説明するための説明図である。
【図8】従来の磁気記録媒体の製造に際して非磁性支持体2xの上に第1磁性層3xを形成している状態の断面図である。
【符号の説明】
【0099】
1 磁気テープ
2 非磁性支持体
3 第1磁性層
3a,4a 初期成長部
3b,4b 後期成長部
4 第2磁性層
5 カラム
9 強磁性金属材料
10 磁気テープ製造装置
11 真空槽
12 真空ポンプ
15 回転冷却ドラム
16 るつぼ
17 電子銃
17a 電子ビーム
18 開始点側酸素供給部
18a 酸素混合チャンバ
18b マスク
19 終了点側酸素供給部
19a マスク
20a,20b 酸素供給管
A 蒸着領域
A1,A2 磁化容易軸
Ps 蒸着開始点
Pe 蒸着終了点
R1,R2 矢印(テープ走行方向)
Z1ax,Z2ax,Z3ax 凹部
Z1bx,Z1bx,Z3bx 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカラムをそれぞれ有すると共に磁化容易軸が相反する方向に傾いている第1の金属薄膜磁性層および第2の金属薄膜磁性層が非磁性支持体の上にこの順で形成され、
前記両金属薄膜磁性層は、前記各カラムにおける基端部側のそれぞれの一部で構成された初期成長部と、前記各カラムにおける先端部側のそれぞれの他の一部で構成された後期成長部とを備え、
前記初期成長部は前記各カラムが前記非磁性支持体の厚み方向に成長することで形成され、
前記後期成長部は前記各カラムが前記非磁性支持体の長手方向に沿って傾斜しつつ側面視円弧状となるように成長することで形成されている磁気記録媒体。
【請求項2】
前記第2の金属薄膜磁性層の厚みに対する前記第1の金属薄膜磁性層の厚みの比が0.60以上2.10以下の範囲内となるように形成されている請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記両金属薄膜磁性層は、前記後期成長部の厚みに対する前記初期成長部の厚みの比が0.08以上0.15以下の範囲内となるように形成されている請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
非磁性支持体を周面に添わせて走行させつつ冷却する回転冷却ドラムと、金属材料を収容するるつぼと、当該るつぼ内の前記金属材料に向けて電子ビームを照射して蒸発させる電子銃と、前記回転冷却ドラムの周面に沿って配設されて前記非磁性支持体に前記金属材料を蒸着させる蒸着領域を規定するマスクとを備え、前記蒸着領域内において前記非磁性支持体に前記金属材料を蒸着させる蒸着処理を2回に亘って実行することで、複数のカラムをそれぞれ有すると共に磁化容易軸が相反する方向に傾いている第1の金属薄膜磁性層および第2の金属薄膜磁性層を当該非磁性支持体の上にこの順で形成して磁気記録媒体を製造する磁気記録媒体製造装置であって、
前記蒸着領域における蒸着開始点側に酸素ガスを供給する酸素ガス供給部を備え、前記蒸着処理時において、前記酸素ガス供給部から前記蒸着開始点側に前記酸素ガスを供給することで前記各カラムを前記非磁性支持体の厚み方向に成長させて当該各カラムにおける基端部側のそれぞれの一部で構成された初期成長部を形成すると共に、前記蒸着開始点から前記蒸着領域における蒸着終了点までの間において前記各カラムを当該非磁性支持体の長手方向に沿って傾斜させつつ側面視円弧状となるように成長させて当該各カラムにおける先端部側のそれぞれの他の一部で構成された後期成長部を形成する磁気記録媒体製造装置。
【請求項5】
複数のカラムをそれぞれ有すると共に磁化容易軸が相反する方向に傾いている第1の金属薄膜磁性層および第2の金属薄膜磁性層を非磁性支持体の上にこの順で形成して磁気記録媒体を製造する際に、回転冷却ドラムの周面に沿って前記非磁性支持体を走行させると共に、当該回転冷却ドラムの周面に規定した蒸着領域内において蒸発させた金属材料を当該非磁性支持体に蒸着させる蒸着処理を2回に亘って実行することで前記両金属薄膜磁性層を順次形成する磁気記録媒体製造方法であって、
前記蒸着処理時において、前記蒸着領域における蒸着開始点側に酸素ガスを供給することで前記各カラムを前記非磁性支持体の厚み方向に成長させて当該各カラムにおける基端部側のそれぞれの一部で構成された初期成長部を形成すると共に、前記蒸着開始点から蒸着終了点までの間において当該各カラムを当該非磁性支持体の長手方向に沿って傾斜させつつ側面視円弧状となるように成長させて当該各カラムにおける先端部側のそれぞれの他の一部で構成された後期成長部を形成する磁気記録媒体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−65917(P2008−65917A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243495(P2006−243495)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】