説明

神経障害を治療するための方法および組成物

哺乳類の神経障害性疾患における軸索変性を治療または予防する方法が開示される。該方法は、該哺乳類に、有効量の病気のおよび/または損傷したニューロンにおけるサーチュイン活性を増加させることによって作用する剤を投与することを特徴とし得る。また、該方法は、該哺乳類に、有効量の病気のおよび/または損傷したニューロンにおけるNAD活性を増加することによって作用する剤を投与することを特徴とし得る。また、神経障害を治療するためのスクリーニング剤および神経障害を治療または予防するための組換えベクターの方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府関心
本研究は、少なくとも部分的に、U.S.P.H.S. 5RO1 NS40745下で、連邦政府からの資金によって支持された。米国政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【0002】
関連出願データ
本出願は、35 U.S.C. § 119(e)下で、2004年6月4日に出願された米国仮出願60/577,233および2005年1月4日に出願された米国仮出願60/641,330に対して、利益を主張する。これらの出願は、それらの全文において、引用によって本明細書中に援用される。
【0003】
分野
本発明は、一般的には、ニューロンを含む病気および状態に関し、特に、神経障害および神経変性を含む他の病気および状態を治療または予防するための組成物に関する。また、神経障害を治療または予防するための剤を同定する方法も含まれる。
【背景技術】
【0004】
背景
軸索変性は、パーキンソン病およびアルツハイマー病ならびにニューロンへの外傷、毒性傷害または虚血性傷害のような種々の神経変性病において起こる。そのような病気および状態は、軸索機能不全を含む軸索変性症と関連する。軸索変性症の例は、軸索の末端部が細胞体から切断された時に起こるウォラー変性(Waller, Philos Trans R. soc. Lond. 140:423-429, 1850)である。切断された軸索は、直ぐに変性に陥る。従って、軸索変性症は、神経障害性疾患および状態の重要な特徴であり得、軸索欠損は患者の障害の重要な要素であり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
概要
従って、本発明の発明者らは、軸索変性が、病気のおよび/または損傷したニューロンにおいてNAD活性を増加させることによって減少または予防され得ることを発見するのに成功している。該増加されたNAD活性が、次いで損傷した神経細胞の軸索変性における減少を生成するサーチュイン(sirtuin)活性を増加するように作用し得ると考えられる。従って、軸索変性を予防するための1つのアプローチは、サーチュイン分子、つまり損傷した哺乳類軸索のSIRT1を活性化させることによってであり得る。SIRT1の活性化は、SIRT1分子に対する直接的作用を介してまたはSIRT1のヒストン/蛋白質デアセチラーゼ活性に対する基質として作用するニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (NAD)の供給を増加することによってであり得る。SIRT1の活性化は、軸索変性の重症度の減少または軸索変性の予防をもたらす。また、NAD活性の増加は、サーチュインを含まない他のメカニズムを介して作用し得ることが可能であると考えられる。従って、SIRT1活性を増加することを介してまたは1以上の他のメカニズムを介してまたは両方を介して作用し得るNAD活性を増加することで、損傷した哺乳類軸索の軸索変性を減少または予防することができる。
【0006】
従って、種々の具体例において、本発明は、哺乳類においておよび、特に、その必要のあるヒトにおいて、神経障害を治療または予防する方法に指向される。該方法は、病気のおよび/または損傷したニューロンにおいてサーチュイン活性および特にSIRT1活性を増加するように作用する有効量の剤を投与することを特徴とし得る。
【0007】
種々の具体例において、該剤は、NAD活性を増加することを介してSIRT1活性を増加し得る。NAD活性を増加することは、NADはSIRT1の基質として作用し得るため、サーチュイン活性を増加し得ると考えられる。そのような剤は、NADまたはNADH、NADの前駆体、NADサルベージ経路における中間体またはニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ (NMNAT)またはニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼをコードする核酸のようなNADを生成する物質を含み得る。該ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼはNMNAT1蛋白質であってもよい。
【0008】
種々の具体例において、該剤は、SIRT1活性を直接的に増加するように作用し得、そのようなものとして、該剤は、サーチュインポリペプチドまたはサーチュインポリペプチドをコードする核酸またはスチルベン、カルコン、フラボン、イソフラボン、フラボノンまたはカテキンのような物質であり得る。そのような化合物は、リスベラトロール、ピセタノール、デオキシラポンチン(rhapontin)、トランス-スチルベンおよびラポンチンよりなる群から選択されるスチルベン;ブテイン(butein)、イソリキリチゲン(isoliquiritigen)および3,4,2',4',6'-ペンタヒドロキシカルコンよりなる群から選択されるカルコン;フィセチン、5,7,3',4',5'-ペンタヒドロキシフラボン、ルテオリン、3,6,3',4'-テトラヒドロキシフラボン、ケルセチン、7,3',4',5'-テトラヒドロキシフラボン、ケンペロール、6-ヒドロキシアピゲニン、アピゲニン、3,6,2',4'-テトラヒドロキシフラボン、7,4'-ジヒドロキシフラボン、7,8,3',4'-テトラヒドロキシフラボン、3,6,2',3'-テトラヒドロキシフラボン、4'-ヒドロキシフラボン、5,4'-ジヒドロキシフラボン、5,7-ジヒドロキシフラボン、モリン、フラボンおよび5-ヒドロキシフラボンよりなる群から選択されるフラボン;ダイゼインおよびゲニステインよりなる群から選択されるイソフラボン;ナリンゲニン、3,5,7,3',4'-ペンタヒドロキシフラボノン、およびフラボノンよりなる群から選択されるフラボノンまたは(-)-エピカテキン、(-)-カテキン、(-)-ガロカテキン、(+)-カテキンおよび(+)-エピカテキンよりなる群から選択されるカテキンを含み得る。
【0009】
種々の具体例において、本発明は、哺乳類および特にヒトに、病気のおよび/または損傷したニューロンおよび/または例えば、神経膠、筋細胞、線維芽細胞等のような支持細胞において核NAD活性を増加させることによって作用する有効量の剤を投与することによって神経障害を治療する方法を含み得る。
【0010】
そのような剤は、NADまたはNADH、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ニコチン酸モノヌクレオチドまたはニコチンアミドリボシドまたはその誘導体;またはニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼのようなNADを生成する酵素またはニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼをコードする核酸のようなNADを生成する酵素をコードする核酸またはNADを生成する経路において酵素をコードする核酸の発現を増加させる剤またはNADまたはNAD活性を増加させる剤を生成する経路において酵素の活性および/または安定性を増加させる剤であり得る。該ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼは、NMNAT1蛋白質であり得る。
【0011】
種々の具体例において、本発明は、また、その必要のある哺乳類において視神経障害を治療または予防する方法を含み得る。該方法は、該哺乳類に、病気のおよび/または損傷したニューロンにおけるNAD活性を増加させることによって作用する有効量の剤を投与することを特徴とし得る。該哺乳類への投与は、眼球への投与、特に持続放出送達系を有する剤を投与することによってまたは剤を含む徐放ペレットを眼球に投与することによってを含み得る。
【0012】
該剤は、NADまたはNADH、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ニコチン酸モノヌクレオチドまたはニコチンアミドリボシド;またはニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼのようなNADを生成する酵素;またはニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼまたはNAD活性を増加する剤をコードする核酸のようなNADを生成する酵素をコードする核酸であり得る。該ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼは、NMNAT1蛋白質またはNMNAT3蛋白質であり得る。
【0013】
本発明の方法の種々の具体例において、軸索変性関連の該神経障害は、例えば、遺伝性または先天性またはパーキンソン病、アルツハイマー病、ヘルペス感染、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、脱髄疾患、虚血または脳梗塞、化学的損傷、熱傷、AIDS等と関連したもののような多くの神経障害のいずれかであり得る。加えて、上記で言及されていない神経変性病ならびに上記の病気のサブセットは、また、本発明の方法によって治療することができる。そのような病気のサブセットは、パーキンソン病または非パーキンソン病、アルツハイマー病または非アルツハイマー病その他を含み得る。
【0014】
種々の具体例において、本発明は、また、哺乳類における神経障害を治療するためのスクリーニング剤の方法に指向される。該方法は、インビトロまたはインビボで神経細胞に投与し、該神経細胞に軸索損傷を引き起こし、次いで、該損傷した神経細胞の軸索変性における減少を検出することを特徴とし得る。種々の具体例において、該方法は、細胞におけるおよび特に神経細胞における候補剤によって生成されたNAD活性の増加を検出することを特徴とし得る。NAD活性の増加は、核NAD活性の増加であり得る。
【0015】
また、方法は、ニューロンにおけるサーチュイン活性を増加するスクリーニング剤ならびにニューロンにおけるNAD生合成活性を増加するスクリーニング剤を提供する。該方法は、インビトロまたはインビボで、候補剤を哺乳類の神経細胞に投与し、該神経細胞に軸索損傷を引き起こし、次いで、損傷した神経細胞の軸索変性の減少を検出することを特徴とし得る。そのような方法は、いくつかの具体例において、一次スクリーニング方法であり得、ここに、二次アッセイは、さらに、サーチュイン活性とまたはNADおよび酵素またはNAD生合成またはサルベージ経路の要素と関連した活性を描写する。
【0016】
本発明のスクリーニング方法の種々の具体例において、軸索損傷は、該神経細胞を化学的に損傷する、該神経細胞を熱的に損傷する、該神経細胞を酸欠する、次いで該神経細胞を物理的に損傷することを含む多くの方法によって生成され得る。
【0017】
また、組換えベクターは種々の具体例において提供される。該ベクターは、哺乳類のNMNAT1蛋白質またはNMNAT3蛋白質をコードする配列に操作可能に連結されたプロモーターを含み得る。そのような具体例の種々の態様において、該組換えベクターは、レンチウイルスまたはアデノ関連ウイルスであり得る。
【0018】
また、種々の具体例において、SIRT1蛋白質をコードする配列に操作可能に連結されたプロモーターを含む組換えベクターが提供される。そのような具体例の種々の態様において、該組換えベクターは、レンチウイルスまたはアデノ関連ウイルスであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0019】
詳細な記載
本発明は、神経障害を治療するための方法および組成物を含む。該方法は、哺乳類に、病気のおよび/または損傷したニューロンにおいてNAD活性を増加させる有効量の物質を投与することを特徴とし得る。該増加されたNAD活性は、次いで該剤によって治療されない損傷した神経細胞において生じる軸索変性と比較して損傷した神経細胞の軸索変性の減少を生成するサーチュイン活性を増加するように作用し得ると考えられる。軸索変性のそのような減少は、ニューロンへの損傷の完全なまたは部分的改善を含み得る。また、NAD活性の増加がサーチュイン分子を含まない他のメカニズムを通して作用して、軸索変性の減少を生成するまたはその生成に寄与し得ることが可能であると考えられる。
【0020】
SIRTと呼ばれる7つの既知のサーチュイン分子は、哺乳類におけるヒストン/蛋白質脱アセチル化酵素のSir2ファミリーを構成し、全てのそのようなサーチュイン分子は本発明の範囲内に含まれる。いくつかのヒトサーチュイン、SIRT1-SIRT7は、それぞれNCBI LocusLink ID Nos. 23411、22933、23410、23409、23408、51548および51547(http://www.ncbi.nlm.hih.gov/LocusLink/参照)と関連してより完全に記載されるNAD-依存性ヒストン/蛋白質脱アセチル化酵素である。種々の具体例において、本発明の該方法および組成物は、いずれかの1以上の該サーチュインの活性を増加し得、特に、本発明の種々の方法は、SIRT1の活性を増加する。
【0021】
物質の活性によって、特定の物質の濃度または物質の機能的有効性のいずれかに対して引用がなされる。物質の濃度は、例えば、合成を増加する、分解を減少する、物質の生物学的利用能を増加するまたは物質の結合を減少するまたはさもなければ遊離物質の結合を減少することを含む数多くの要因によって増加することができる。機能的有効性の増加は、例えば、分子配座の変化、該物質が作用する条件下での変化、該物質への感受性の変化等から生じ得る。サーチュイン分子に関する活性の増加は、濃度を増加するまたは機能的有効性を高めるまたはNADの利用性を増加するまたはNADまたはそのいずれかの組合せに対する1以上の生合成経路を介する流動を増加することを意味するように意図される。
【0022】
神経障害は、例えば、神経膠、筋細胞、線維芽細胞等のようなニューロンおよび/または支持細胞を含むいずれかの病気または状態、および特に軸索損傷を含む病気または状態を含み得る。軸索損傷は、病気または状態による外傷によってまたは非機械的損傷によって引き起こされ得、そのような損傷の結果は、軸索の変性または機能不全および機能性ニューロン活性の喪失であり得る。そのような軸索損傷を生じるまたはそれと関連した病気および状態は、大多数の神経障害性疾患および状態に共通する。そのような神経障害は、末梢神経障害、中枢神経障害、およびその組合せを含み得る。さらに、末梢神経障害発現は、主に該複数の中枢神経に集中した病気によって引き起こされ、中枢神経系発現は、主に末梢または全身性疾患によって引き起こされ得る。
【0023】
末梢神経障害は、該末梢神経への損傷を含み、そのようなものは、神経の病気によってまたは全身疾患の結果として引き起こされ得る。いくつかのそのような病気は、糖尿病、尿毒症、AIDSまたはハンセン病のような感染症、栄養失調、アテローム性動脈硬化症のような血管障害または膠原病、および全身性エリテマトーデス、強皮症、サルコイドーシス、関節リウマチ、および結節性多発性動脈炎のような自己免疫疾患を含み得る。また、末梢神経変性は、外傷、つまり神経への機械的損傷ならびに神経への化学的または熱的損傷から生じ得る。末梢神経を損傷するそのような状態は、緑内障、手根管症候群、直接的外傷、貫通外傷、打撲傷、骨折または骨の脱臼のような圧縮またはエントラップメント損傷;松葉杖の長い期間の使用または1つの姿勢であまりに長い間いることから、あるいは腫瘍から生じ得る表在神経 (尺骨、橈骨、または腓骨)を含む圧力;神経内出血;虚血;冷気または放射線または特定の医薬品または除草剤または殺虫剤のような有毒物質への暴露を含む。特に、神経損傷は、例えば、ビンクリスチンのようなビンカアルカロイドのような細胞傷害性抗癌剤による化学的損傷から生じ得る。そのような末梢神経障害の典型的な症状は、腕、手、脚および/または足の衰弱、しびれ、知覚障害(灼けつく痛み、くすぐり感、刺すような痛みまたは刺痛のような知覚異常)および疼痛を含む。また、該神経障害は、ミトコンドリア機能障害と関連し得る。そのような神経障害は、減少したエネルギーレベル、つまり減少したレベルのNADおよびATPを呈し得る。
【0024】
また、末梢神経障害は、代謝起源の全身性疾患と関連した広範囲の末梢神経を含む代謝性および内分泌神経障害であり得る。これらの病気は、そのうちのいくつかは前述であるが、特に、糖尿病、低血糖症、尿毒症、甲状腺機能低下症、肝不全、赤血球増加症、アミロイドーシス、末端肥大、ポルフィリン症、脂質/糖脂質代謝の障害、栄養/ビタミン欠乏症、およびミトコンドリア異常を含む。これらの病気の共通した特徴は、代謝経路調節異常によるミエリンおよび軸索の構造または機能の改変による末梢神経の関与である。
【0025】
また、神経障害は、緑内障のような視神経障害;網膜色素変性症および外側網膜神経障害と関連したもののような網膜神経節変性; 視神経炎および/または多発性硬化症と関連したものを含む変性;例えば、腫瘍摘出の間の損傷を含み得る視神経への外傷; ケジェール病(Kjer's disease)およびレーベル遺伝性視神経症のような遺伝性視神経障害;巨細胞性動脈炎に二次的なもののような虚血性視神経障害; 前述のレーバー神経障害を含む神経変性病、ビタミンB12または葉酸の欠乏のような栄養失調、およびエタンブトールまたはシアン化物によってのような毒性のような代謝性視神経障害; 医薬品副作用によって引き起こされた神経障害およびビタミン欠乏症によって引き起こされた神経障害を含む。また、虚血性視神経障害は、非動脈性前部虚血性視神経症を含む。
【0026】
中枢神経系の神経障害または軸索変性症と関連した神経変性病は、種々の病気を含む。そのような病気は、例えば、アルツハイマー病、老年性認知症、ピック病、およびハンチントン舞踏病のような進行性認知症; 例えば、パーキンソン病、運動ニューロン疾患および筋萎縮性側索硬化症のような進行性失調症のような筋機能に影響を及ぼす中枢神経系の病気; 例えば、多発性硬化症のような脱髄疾患; 例えば、エンテロウイルス、アルボウイルス、および単純ヘルペスウイルスによって引き起こされるものといったウイルス性脳炎; およびプリオン病を含むものを含む。また、緑内障または頭および脊柱への外傷のような機械的損傷は、脳および脊髄における神経損傷および変性を引き起こし得る。加えて、虚血および脳梗塞ならびに栄養失調および化学療法剤によるといった化学毒性のような条件は、中枢神経系神経障害を引き起こし得る。
【0027】
本明細書中で使用されるように、用語「治療」は、ニューロン損傷の発生前または後のいずれかでの介入を含むように意図される。そのようなものとして、治療は、ニューロンへの最初の損傷が起こる前の投与によってニューロン損傷を防ぐことができ、ならびに、ニューロンへの最初の損傷が起こった後の投与によってニューロン損傷を改善することができる。そのようなニューロンへの最初の損傷は、神経障害と関連したいずれかの病気または状態を含み得、それから生じ得る。また、「治療」は、ニューロン損傷の進行の予防を含む。本明細書中で使用されるように、「治療」は、薬物および/または合成物質の投与、蛋白質、核酸、ウイルスベクター等のような生物学的物質の投与ならびに栄養補助食品、食物添加物または機能性食品のような物質の投与を含み得る。
【0028】
本発明の該方法および組成物は、哺乳類の治療に有用である。そのような哺乳類は、ヒトならびに非ヒト哺乳類を含む。非ヒト哺乳類は、例えば、イヌおよびネコのようなペット動物、ウシ、ウマ等を含む家畜のような農業動物、および動物園の動物のような外来の動物を含む。
【0029】
哺乳類におけるサーチュイン活性を増加し得る物質は、ポリフェノールを含み得、そのうちのいくつかは前述されている(例えば、その全文が本明細書中に引用によって援用されるHowitz et al., Nature 425:191-196, 2003および該文書に添付する補足情報参照)。そのような化合物は、リスベラトロール、ピセタノール、デオキシラポンチン、トランス-スチルベンおよびラポンチンのようなスチルベン; ブテイン(butein)、イソリキリチゲン(isoliquiritigen)および3,4,2',4',6'-ペンタヒドロキシカルコンおよびカルコンのようなカルコン;フィセチン、5,7,3',4',5'-ペンタヒドロキシフラボン、ルテオリン、3,6,3',4'-テトラヒドロキシフラボン、ケルセチン、7,3',4',5'-テトラヒドロキシフラボン、ケンペロール、6-ヒドロキシアピゲニン、アピゲニン、3,6,2',4'-テトラヒドロキシフラボン、7,4'-ジヒドロキシフラボン、7,8,3',4'-テトラヒドロキシフラボン、3,6,2',3'-テトラヒドロキシフラボン、4'-ヒドロキシフラボン、5,4'-ジヒドロキシフラボン、5,7-ジヒドロキシフラボン、モリン、フラボンおよび5-ヒドロキシフラボンのようなフラボン;ダイゼインおよびゲニステインのようなイソフラボン;ナリンゲニン、3,5,7,3',4'-ペンタヒドロキシフラボノン、およびフラボノンのようなフラボノンまたは(-)-エピカテキン、(-)-カテキン、(-)-ガロカテキン、(+)-カテキンおよび(+)-エピカテキンのようなカテキンを含み得る。
【0030】
サーチュインデアセチラーゼ活性を増加するさらなるポリフェノールまたは他の物質は、本明細書ならびに蛍光酵素アッセイのような商業的に入手可能なアッセイ (Biomol International L.P., Plymouth Meeting, Pennsylvania)に記載のアッセイシステムを使用して同定することができる。また、Sinclair et al.は、サーチュイン活性 (その全文において引用によって援用されるSinclair et al., WO2005/02672)を増加することができる物質を開示する。
【0031】
種々の具体例において、他の物質は、NAD-依存性ヒストン/蛋白質デアセチラーゼ活性を介して機能する特定のサーチュインの結果としてNAD活性を増加することによって、間接的にサーチュイン活性を増加し得る。NAD活性は、NADまたはNADHの投与によってならびにNADを合成することによって増加することができる。NADは、3つの主な経路:NADがトリプトファンから合成される新生経路、NADがニコチンアミドのような分解されたNAD産物を再利用することによって生成されるNAD サルベージ経路(Lin et al. Curent Opin. Cell Biol. 15:241-246, 2003; Magni et al., Cell Mol. Life Sci. 61:19-34, 2004)およびニコチンアミドリボシドがニコチンアミドリボシドキナーゼによってニコチンアミドモノヌクレオチドに変換されるニコチンアミドリボシドキナーゼ経路(Bieganowski et al., Cell 117:495-502, 2004)を介して合成することができる。従って、損傷したニューロンに、例えば、トリプトファンまたはニコチネートのような該新生経路中のNADの前駆体および/または例えば、ニコチンアミド、ニコチン酸、ニコチン酸モノヌクレオチド、またはデアミド-NADおよび/または例えば、ニコチンアミドリボシドまたはニコチンアミドモノヌクレオチドのようなニコチンアミドリボシドキナーゼ経路における物質のようなNADサルベージ経路中の物質を投与することで、NAD活性を潜在的に増加させることができるであろう。下記に示すように、NADに加えて、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ニコチン酸モノヌクレオチドまたはニコチンアミドリボシドは、NADと同様の程度まで、軸索変性に対して保護したが、しかしながら、ニコチン酸およびニコチンアミドは保護しなかった。次いで、増加したNAD活性は、損傷したニューロンにおけるサーチュインヒストン/蛋白質デアセチラーゼ活性を増加し、軸索変性を減少または予防することができる。加えて、他の物質は、酵素活性を増加することによってまたはNAD、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチンアミドリボシドまたはサーチュイン酵素のレベルを増加することによってまたはNAD、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチンアミドリボシドまたはサーチュイン酵素の変性を減少することによって作用し得る。
【0032】
種々の具体例において、NADは、NADを合成する酵素またはNADを合成する酵素を含む核酸を投与することによって、損傷したニューロンにおいて増加され得る。そのような酵素は、NADを合成するための新生経路における酵素、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素またはNADを合成するための新生経路における酵素をコードする核酸、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素、特に、NMNAT1のような例えば、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ (NMNAT)のようなNADサルベージ経路の酵素を含み得る。従って、1つの非限定的例において、NMNAT1またはNMNAT3のようなNMNATまたはNMNAT1またはNMNAT3のようなNMNATをコードする配列を含む核酸の投与は、損傷したニューロンにおける軸索変性を減少または予防し得る。
【0033】
ヒトNMNAT1 酵素 (E.C.2.7.7.18)は、ヒトNMNAT1遺伝子および/または蛋白質:NP_073624; NM_022787; AAL76934; AF459819;およびNP_073624; AF314163に対するGenBank受託番号によって表される。この遺伝子の変異体はNMNAT-2 (KIAA0479)であり、このヒトバージョンは、GenBank受託番号NP_055854およびNM_015039下で見つけることができる。
【0034】
本明細書中で使用されるように、用語「同一のパーセント」または「パーセント同一性」または「%の同一性」は、2つのアミノ酸配列の間または2つのヌクレオチド配列の間の配列同一性を指す。同一性は、各々、比較の目的のために並べられた各配列において位置を比較することによって決定することができる。比較された配列における同等の位置が同じ塩基またはアミノ酸によって占められる時、該分子は、該位置にて同一であり;該同等部位が同一または同様のアミノ酸残基 (例えば、立体および/または電子的性質において同様)によって占められる時、該分子は、当該位置で相同(同様)と呼ぶことができる。相同性、類似性、または同一性のパーセンテージとしての表現は、比較された配列によって共有された位置で同一または同様のアミノ酸の数の関数を指す。FASTA、BLAST、またはENTREZを含む種々の整列アルゴリズムおよび/またはプログラムを使用してもよい。FASTAおよびBLASTは、GCG配列分析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一分として入手可能であり、例えばデフォルト設定で使用することができる。ENTREZは、Biotechnology Information, National Library of Medicine, National Institutes of Health, Bethesda, MdのNational Centerを介して入手可能である。1つの具体例において、2つの配列のパーセント同一性は、1のギャップ重量を有するGCGプログラムによって決定することができ、例えば、該2つの配列の間の単一アミノ酸またはヌクレオチドミスマッチであるかのように、各アミノ酸ギャップは重さを測られる。整列のための他の技術は、Methods in Enzymology, vol. 266: Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis (1996), ed. Doolittle, Academic Press, Inc., a division of Harcourt Brace & Co., San Diego, California, USAに記載される。好ましくは、該配列においてギャップを許容する整列プログラムを利用して、配列を並べる。The Smith-Watermanは、配列整列においてギャップを許容する1つのタイプのアルゴリズムである。Meth. Mol. Biol. 70: 173-187 (1997)参照。また、Needleman and Wunsch整列法を用いるGAPプログラムを利用して、配列を整列することができる。別のサーチ戦略は、MASPARコンピューター上でランするMPSRCHソフトウェアを使用する。MPSRCHは、Smith-Watermanアルゴリズムを使用して、大規模並列処理コンピューター上で配列をスコアする。このアプローチは、離れて関連したマッチを取り出す能力を改善し、特に、小さなギャップおよびヌクレオチド配列エラーに対して寛容である。核酸コードされたアミノ酸配列を使用して、蛋白質およびDNAデータベースの両方をサーチすることができる。個々の配列を有するデータベースは、Methods in Enzymology, ed. Doolittle, supraに記載される。データベースは、Genbank, EMBL、およびDNA Database of Japan (DDBJ)を含む。
【0035】
ポリペプチドの「変異体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列を有するポリペプチドを指し、これは、1以上のアミノ酸残基において改変される。該変異体は、「保存的」変化を有し得、ここに、置換されたアミノ酸は、同様の構造的または化学的特性を有する(例えば、ロイシンのイソロイシンによる置換)。変異体は、「非保存的」変化(例えば、グリシンのトリプトファンによる置換)を有し得る。また、類似の軽微な変更は、アミノ酸欠失または挿入、あるいは両方を含み得る。生物学的または免疫学的活性を無効にせずに、どのアミノ酸残基が置換、挿入、または欠失され得るかを決定する際のガイダンスは、例えば、LASERGENEソフトウェア (DNASTAR)といった当該分野でよく知られたコンピュータープログラムを用いて見つけることができる。
【0036】
ポリヌクレオチド配列の文脈において使用される時、用語「変異体」は、と口絵の遺伝子のものに関連したポリヌクレオチド配列またはそのコード配列を網羅し得る。また、この定義は、例えば、「対立遺伝子」、「スプライス」、「種」、または「多型」変異体を含み得る。スプライス変異体は、参照分子に対して有意な同一性を有し得るが、一般的には、mRNA処理の間のエクソンの別々のスプライシングによるより大きいまたはより少ない数のポリヌクレオチドを有するであろう。対応するポリペプチドは、さらなる機能ドメインまたはドメインの不在を有し得る。種変異体は、1つの種からもう一方へと変動するポリヌクレオチド配列である。得られたポリペプチドは、一般的には、相互に対して有意なアミノ酸同一性を有するであろう。多型変異は、所与の種の個の間の特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列の変異である。また、多型変異体は、ポリヌクレオチド配列が1つの塩基によって変動する「単一ヌクレオチド多型」(SNPs)を含み得る。SNPsの存在は、例えば、特定の集団、病気の状態、または病気の状態に対する傾向の指標であり得る。
【0037】
本発明の方法および組成物による神経障害を治療または予防するのに使用することができる剤は、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ (NMNAT)またはNMNATをコードするポリヌクレオチドによって含まれ得る。特に、該剤は、having NMNAT活性および少なくとも50%の同一性 with ヒトNMNAT1と少なくとも50%の同一性またはヒトNMNAT3と少なくとも50%の同一性、ヒトNMNAT1と少なくとも60%の同一性またはヒトNMNAT3と少なくとも60%の同一性、ヒトNMNAT1と少なくとも同一性またはヒトNMNAT3と少なくとも70%の同一性、ヒトNMNAT1と少なくとも80%の同一性またはヒトNMNAT3と少なくとも80%の同一性、ヒトNMNAT1と少なくとも90%の同一性またはヒトNMNAT3と少なくとも90%の同一性、ヒトNMNAT1と少なくとも95%の同一性またはヒトNMNAT3と少なくとも95%の同一性を有する酵素であり得る。さらに、該剤は、ヒトNMNAT1、ヒトNMNAT3またはその保存的に置換された変異体によって含まれ得る。
【0038】
また、該剤は、ヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも50%の同一性を有するポリヌクレオチドまたはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも50%の同一性を有するポリヌクレオチド、ヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも60%の同一性を有するポリヌクレオチドまたはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも60%の同一性を有するポリヌクレオチドヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも70%の同一性を有するポリヌクレオチドまたはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも70%の同一性を有するポリヌクレオチド、ヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも80%の同一性を有するポリヌクレオチドまたはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも80%の同一性を有するポリヌクレオチド、ヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチドまたはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチド、ヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドまたはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドによって含まれ得る。また、該剤は、ヒトNMNAT1、ヒトNMNAT3またはその変異体をコードするポリヌクレオチドであり得る。
【0039】
また、該剤は、サーチュインポリペプチドまたはサーチュインポリペプチドをコードする核酸によって含まれ得る。特に、該剤は、SIRT活性およびヒトSIRT1と少なくとも50%の同一性、ヒトSIRT1と少なくとも60%の同一性、ヒトSIRT1と少なくとも70%の同一性、ヒトSIRT1と少なくとも80%の同一性、ヒトSIRT1と少なくとも90%の同一性、またはヒトSIRT1と少なくとも95%の同一性を有する酵素を含み得る。さらに、該剤は、ヒトSIRT1またはその保存的に置換された変異体によって含まれ得る。また、該剤は、ヒトSIRT1をコードする核酸と少なくとも50%の同一性を有するポリヌクレオチド、ヒトSIRT1をコードする核酸と少なくとも60%の同一性を有するポリヌクレオチド、ヒトSIRT1をコードする核酸と少なくとも70%の同一性を有するポリヌクレオチド、ヒトSIRT1をコードする核酸と少なくとも80%の同一性を有するポリヌクレオチド、ヒトSIRT1をコードする核酸と少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチドまたはヒトSIRT1をコードする核酸と少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドによって含まれ得る。さらに、該剤は、ヒトSIRT1またはその変異体をコードするポリヌクレオチドを含み得る。
【0040】
投与は、口腔、歯、子宮頸管内、筋肉内、吸入、頭蓋内、リンパ管内、筋肉内、眼内、腹腔内、胸膜内、くも膜下、気管内、子宮内、血管内、静脈内、膀胱内、鼻腔内、眼、経口、耳、胆嚢灌流、心臓灌流、歯周、直腸、脊髄、皮下、舌下、局所、膣内、経皮、尿管、または尿道を含むいずれかの適当な経路の投与によってであり得る。用量形態は、定量エアロゾルを含むエアロゾル、チュアブルバー、カプセル、被覆ペレットを含有するカプセル、遅延放出ペレットを含有するカプセル、持続放出ペレットを含有するカプセル、濃縮物、クリーム、増大したクリーム、坐剤クリーム、ディスク、ドレッシング、エリキシル、乳剤、浣腸、持続放出ファイバー、持続放出フィルム、ガス、ゲル、定量ゲル、顆粒、持続放出顆粒、沸騰顆粒、チュアブルガム、移植片、吸入剤、注射剤、注射用脂質複合体、注射用リポソーム、インサート、持続放出インサート、子宮内器具、ゼリー、液体、持続放出液体、ローション、増大したローション、シャンプーローション、油、軟膏、増大した軟膏、ペースト、トローチ、ペレット、粉末、持続放出粉末、定量粉末、リング、シャンプー、石けん溶液、潤滑油用溶液、溶液/ドロップ、原液、ゲル形成溶液/ドロップ、スポンジ、スプレー、定量スプレー、坐剤、懸濁液、懸濁液/ドロップ、持続放出懸濁液、スワブ、シロップ、錠剤、チュアブル錠、被覆粒子を含有する錠剤、遅延放出錠剤、分散性錠剤、発泡錠、持続放出錠剤、経口崩壊錠、タンポン、テープまたはトローチ/キャンディーであり得る。
【0041】
眼内投与は、硝子体内注射を含む注射による、点眼薬によるおよび経強膜送達による投与を含み得る。
【0042】
また、投与は、ヒトまたはペット動物のための機能食品におけるような哺乳類の食餌中の含有によってであり得る。
【0043】
また、サーチュイン活性を増加する組成物を含有する戸口絵の処方が経口投与されると考えられる。そのような処方は、好ましくは、固体用量形態で適当なキャリアに包まれ処方される。適当なキャリア、賦形剤、および希釈剤のいくつかの例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、メチル-およびプロピルヒドロキシ、安息香酸エステル類、タルク、マグネシウム、ステアリン酸塩、水、鉱油等を含む。該処方は、さらに、平滑剤、湿潤剤、乳剤および懸濁剤、保存剤、甘味剤またはフレーバー剤を含み得る。該組成物は、当該分野でよく知られる手順を使用することによる患者への投与後に、即効、徐放、または遅延放出の活性成分を提供するように処方されてよい。また、該処方は、例えば、表面活性剤のような、蛋白質分解を減らし、吸収を促進する物質を含有し得る。
【0044】
特異的な用量は、大体、患者の体重または体表面積または占有される体空間の容量に従って計算することができる。また、用量は、選択された投与の特定の経路によって決まるであろう。治療のための適切な用量を決定するのに必要な計算のさらなる精緻化は、当業者によってルーチン的になされる。そのような計算は、特定の化合物に対して他所で記載されているようなアッセイ調製における活性に鑑みて、当業者による過度の実験なしになすことができる (例えば、Howitz et al., Nature 425:191-196, 2003および該文書に付属する補足情報参照)。正確な服用量は、標準的な用量応答研究と併せて研究することができる。組成物の量は、治療される状態または複数の状態、投与される組成物の選択、個々の患者の年齢、体重、および応答、患者の症状の重症度、および投与の選択された経路を含む関連した状況を鑑みて、施術者によって決定されることが理解されるであろう。
【0045】
種々の具体例において、また、本発明は、候補剤をスクリーニングする方法を提供する。1つのそのようなアッセイ方法において、剤は、損傷した神経細胞の軸索変性を減少または予防する際の有効性につきテストされる。従って、候補剤は、損傷に付された神経細胞に投与され、損傷した神経細胞の軸索変性の減少が検出される。典型的には、該剤は、損傷を引き起こす前に添加されるが、しかしながら、いくつかの例において、損傷は、候補化合物の添加前に引き起こされ得る該方法は、インビトロまたはインビボで行われ得る。インビボテストは、損傷が誘発された種々の実験条件下で、多くの哺乳類の神経細胞を用いて行われ得る。使用可能な哺乳類の神経細胞型の例は、下記のように、神経細胞体の離断および除去またはビンクリスチンを含有する培地における成長のいずれかによって損傷された初代後根神経節細胞である。インビボテストは、例えば、末梢神経再生のマウスモデル(Pan et al., J. Neurosci. 23:11479-11488, 2003)または進行性運動ニューロン疾患のマウスモデル(Schmalbruch et al., J. Neuropathol. Exp. Neurol. 50:192-204, 1991; Ferri et al., Current Biol. 13:669-673, 2003)のような無傷の動物において実施し得る。
【0046】
ニューロン損傷を減少するまたは予防するメカニズムは、サーチュイン分子のNAD-依存性ヒストン/蛋白質デアセチラーゼ活性の増加から生じるため、該アッセイ方法は、直接的にサーチュイン活性を増加するまたはNAD活性を増加することを介してのいずれかである物質のための一次スクリーンとして使用され得る。従って、上記の方法を使用して、NAD生合成活性を増加する剤またはニューロンにおいてサーチュイン活性を増加する剤につきスクリーンすることができる。
【0047】
また、サーチュイン分子をコードする核酸のためのキャリアまたはNADの生合成のための酵素として仕える組換えベクターも本発明の範囲内である。そのような組換えベクターは、哺乳類のNMNAT1蛋白質またはSIRT1蛋白質のような哺乳類のサーチュイン蛋白質をコードする配列に操作可能に連結したプロモーターを含み得る。そのような組換えベクターは、例えばレンチウイルスまたはアデノ関連ウイルスのようないずれかの適当なベクターであり得る。また、例えば、ユビキチンプロモーター、CMVプロモーターまたはβ-アクチンプロモーターのようないずれかの適当なプロモーターが使用され得る。
【0048】
本発明は、続く実施例への言及によって、さらに理解され得る。
【実施例】
【0049】
実施例1
この実施例は、Wlds蛋白質を発現するベクターによって形質移入されたニューロンからの形質移入された軸索が、対照ニューロンと比較して遅れた変性を示すことを示す。
【0050】
wldsマウスにおいて、軸索損傷と応答したWallerian変性が遅れることが示されている(Gillingwater, et al., J Physiol, 534:627-639, 2001)。遺伝子分析は、wlds突然変異が85 kbタンデム三つ組を含むことを示しており、これは、キメラ核分子 (Wlds 蛋白質)の過剰発現を生じる。この蛋白質は、核内でNADを生成するNADサルベージ経路における酵素であるニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ1 (NMNAT1)の完全な配列に融合したユビキチン鎖アセンブリ因子であるUfd (ユビキチン融合分解蛋白質)2aのN-末端70 AAから構成される。該Wlds蛋白質はNMNAT活性を有するが、ユビキチンリガーゼ機能を欠き、これは、軸索の保護が、増加したNMNAT1活性またはUfd2a機能の「優性阻害」のいずれかから由来する。
【0051】
該Wlds蛋白質によって媒介された遅延軸索変性のメカニズムを同定するために、我々は、インビトロWallerian変性モデルを使用した。Primary DRG移植片ニューロンを、適切な蛋白質を発現するレンチウイルスによって感染させ、軸索を、神経細胞体 (切断)またはビンクリスチン (有毒)の成長のいずれかによって損傷させた。
【0052】
レンチウイルス発現構築体は、D. Baltimore (Lois, et al., Science 295:868-72, 2002)によって提供された。我々は、FUGWベクターを修飾して、関心のある遺伝子を発現する細胞において促進されたYFP 発現を可能にする一般的な発現シャトルFUIV (ユビキチンプロモーター-関心のある遺伝子-IRES-促進YFP (Venus))ベクターを生成した。各々がC-末端にてヘキサヒスチジンタグを有する以下の蛋白質は、予め「優性阻害」(Ufd2a(P1140))として野生型Ufd2a機能を阻害すると示されているFUIVベクター: Wlds キメラ突然変異蛋白質;点突然変異(P1140A)を含有するUfd2aへとクローン化された。以下の遺伝子を、FUGW ベクターへとクローン化した:1) EGFPのN-末端(Ufd2a(1-70)-EGFP)またはC-末端にて核移行シグナルを有するEGFP (Ufd2a(1-70)-nucEGFP)に融合されたUfd2a (Wlds蛋白質中に含有された部分)の第1の70AA。2) EGFPのC-末端(EGFP-NMNAT1)に融合されたWlds蛋白質のNMNAT1部分。
【0053】
Ufd2a/Ube4bに対するマウスcDNA (mKIAA0684)は、Kazusa DNA Research Instituteによって提供された。NMNAT1に対するマウスcDNA (受託番号: BC038133)をATCCから購入した。PCR-媒介突然変異を使用して、Ufd2a、NMNAT1およびWldsにおいて、点突然変異を生成した。
【0054】
我々は、ユビキチンプロモーターおよびGFP cDNAを、ヒトU6 プロモーターおよびPol I 末端シグナル、引き続いてSV40 プロモーター-ピューロマイシン-N-アセチル-トランスフェラーゼ遺伝子と置き換えることによって、FUGW骨格から生成されたFSP-siベクターにおいて、siRNA構築体を生成した。siRNAが、U6 プロモーターから転写されるように、siRNA構築体のクローン化を前述のとおり実施した(Castanotto, et al., RNA, 8:1454-60, 2002)。蛋白質発現のsiRNA下方制御に使用された配列は、SIRT1の1692〜1710、SIRT2の1032〜1050、SIRT3の538〜556、SIRT4の1231〜1249、SIRT5の37〜55、SIRT6の1390〜1408、およびSIRT7の450〜468であった。核レンチウイルス発現およびsiRNA構築体の完全性をDNA配列決定によって確認した。
【0055】
E12.5胚からのマウスDRG移植片を、1 nM神経成長因子の存在下で培養した。非-神経細胞を、培養培地に5-フルオロウラシルを添加することによって、培養液から除去した。神経突起の切断を、18-ゲージ針を用いて、10-20 DIVにて実施して、神経細胞体を除去した。β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (Sigma)またはSirtinol (Calbiochem)によるインキュベーションを、テキストまたは図面に示された条件を用いて実施した。
【0056】
レンチウイルス発現ベクターを、上記のとおり、HEK293T細胞を用いて生成した。レンチウイルス-由来の蛋白質発現の確認のために、HEK293T細胞をレンチウイルスによって感染し、細胞を、感染後3日目に溶解した。これらの可溶化液を、抗-Hisタグモノクローナル抗体 (Qiagen)を用いて免疫ブロットによって分析して、それぞれのヘキサヒスチジン-タグをつけた蛋白質の発現を検出した。DRG ニューロンのレンチウイルス感染を、軸索切断前の3ないし7日から24時間、〜106-107 pfu/ml ウイルスを該DRG移植片によってインキュベートすることによって実施した。該感染したニューロンを、倒立蛍光顕微鏡下で検査して、>95%のニューロンにおける検出可能なレンチウイルス媒介トランスジーン発現を確証した。
【0057】
軸索変性の定量分析を、前述のとおり実施した(Zhai, et al., Neuron 39:217-25, 2003)。簡潔には、培養液を、示された時間に、位相差顕微鏡法を用いて検査した。断片化された、非−屈折性の出現を有する軸索を、「変性した」と命名した。各時点にて、少なくとも200の単独で識別可能な軸索を、各培養液のいくつかの任意に取られたイメージから無分別にスコアした。各条件を、各実験において、3通りの移植片においてテストした。結果を、各条件につき2ないし4つの単独の実験から入手した。統計学的分析を、学生のTテストによって実施した。神経突起で覆われた領域の計算につき、2つの単独実験の4通りの試料からデジタルキャプチャーしたイメージを、分析3.1ソフトウェア (Soft Imaging System, Lakewood, CO)を用いて分析した。
【0058】
我々は、該Wlds蛋白質を発現するニューロンからの切断された軸索は、図1Aに示されるように、wlds (Buckmaster, et al., Eur J Neurosci 7:1596-602, 1995)マウスから由来するニューロンの該遅延した動力学特徴によって変性されることを発見した。
【0059】
次に、我々は、Wlds蛋白質を過剰発現するニューロンにおける切断後、軸索変性を、EGFPにリンクしたWlds蛋白質を構成するUfd2aまたはNMNAT1部分を発現するものと比較した。
【0060】
我々は、EGFP-NMNAT1の発現がWlds蛋白質それ自体に相当する軸索変性を遅らせるが、核または細胞質のいずれかに標的された(EGFPに融合された) Ufd2aのN-末端70 AAは軸索変性に影響を及ぼさないことを発見した。これらの効果の定量化を、神経細胞体の除去後、種々の時間にて、残りの神経突起のパーセンテージをカウントすることによって実施した。この分析は、Wlds蛋白質それ自体のようなEGFP-NMNAT1が、損傷後72時間で、無傷の神経突起において>10倍の増加を生じたことを示した。Wlds蛋白質媒介軸索保護におけるUPSの直接関与をさらに排除するために、我々は、優性阻害Ufd2a突然変異体またはUfd2a siRNA構築体のいずれかを用いて、Ufd2a阻害の効果を検査した。しかしながら、これらの方法のいずれも、軸索切断仁王等して、遅延した軸索変性を生じなかった。共に、これらの実験は、Wlds蛋白質のNMNAT1部分が、wldsマウスにおいて観察された遅延した軸索変性に責任のあることを示した。
【0061】
実施例2
この実施例は、完全長NMNAT1におけるおよびWlds蛋白質における突然変異が、蛋白質の軸索保護効果を無効にすることを示す。
【0062】
NMNAT1は、それぞれ、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)およびニコチン酸モノヌクレオチド (NaMN)のNADおよびニコチン酸アデニンモノヌクレオチド (NaAD)への変換を触媒する核NADサルベージ経路中の酵素である。NMNAT1過剰発現ニューロン中で観察される軸索保護は、NADを合成する能力(つまり、酵素活性)によって、または恐らく、この蛋白質の他の未知の機能によって媒介され得る。この質問を解決するために、我々はNMNAT1結晶構造を使用して、基質結合に関与すると予測されたいくつかの残基を同定した。これらの残基のうちの1つにおける突然変異(W170A)を、完全長NMNAT1およびWlds蛋白質へと操作した。インビトロ酵素活性は、これらの突然変異蛋白質の両方が、NADを合成する能力に非常に限定されたことを確認した(図2A)。これらの突然変異体およびそれらのそれぞれの野生型対応物の各々を、ニューロンへと導入して、それらの能力を評価して、軸索を分解から保護した。我々は、これらの酵素的に不活性な突然変異体を発現するニューロンが、全く軸索保護効果を有さず(図2A)、NAD/NaAD生成が、軸索分解を予防するNMNAT1の能力に関与することを示すことを発見した。
【0063】
実施例3
この実施例は、ビンクリスチンによって損傷されたニューロン中の増加したNMNAT活性が、遅延した軸索分解も示すことを示す。
【0064】
機械的切断に加えて、wldsマウスにおける軸索保護は、虚血および毒素のような他の損傷剤に対しても観察される (Coleman, et al., Trends Neurosci 25:532-37, 2002; Gillingwater, et al., J Cereb Blood Flow Metab 24:62-66, 2004)。我々は、増加したNMNAT活性が、ビンクリスチン、上手く特徴付けられた軸索毒性を有する癌化学療法試薬のような他のタイプの軸索損傷に応答して、軸索分解を遅延するかを決定しようとした。NMNAT1またはEGFP (対照)のいずれかを発現するニューロンを、9日までの間、0.5μM ビンクリスチン中で成長させた。我々は、NMNAT1を発現するニューロンの軸索は、それらの元来の長さおよび屈折性を維持するが、EGFPを発現するニューロンから生じる軸索は、徐々に縮み、9日目までにはほとんど変性したことを発見した (図2B)。これらの結果は、NMNAT活性がそれ自体によって、多くの損傷から軸索を保護し、wldsマウスにおいて観察された保護効果を媒介することができることを示す。
【0065】
実施例4
この実施例は、体外から投与されたNADが、軸索変性から損傷したニューロンを保護することができることを示す。
【0066】
先の実験は、神経細胞が、細胞外NADを結合し、細胞へと輸送することができる膜蛋白質を発現することを示している (Bruzzone, et al., Faseb J 15:10-12, 2001)。これは、我々を、体外から投与されたNADが軸索変性を予防し得るかを研究するように促した。我々は、軸索切断の前に、ニューロン培養液に、種々の濃度のNADを添加し、軸索分解の範囲を検査した。我々は、軸索切断の24時間前に加えられた0.1-1 mM NADは、有意に軸索変性を遅延したが、外的に適用されたNADは、軸索を保護するのに、レンチウイルス媒介NMNAT1発現よりも僅かに効果がないことを発見した(図3A)。これらの結果は、増加したNAD供給が軸索分解を防ぎ得るという考えに対する直接的支持を提供する。
【0067】
実施例5
この実施例は、軸索変性から損傷したニューロンを保護するために、神経細胞体の除去の前にNADが必要であることを示す。
【0068】
NAD-依存性軸索保護 (NDAP)のメカニズムの洞察を得るために、我々は、神経細胞体の除去の前にNADが必要であったか、あるいは高レベルのNADへの切断された軸索の直接的暴露が保護を提供するのに十分であったかを検査した(図3B)。神経培養を調製し、1 mM NADを、軸索切断の時間にてまたは損傷前の種々の時間(4ないし48時間)にて該細胞培養に添加した。
【0069】
我々は、軸索切断の時または損傷前の8時間までのNADの投与が、軸索に対して全く保護効果を有さなかったことを発見した。しかしながら、有意な軸索防御(axon sparing)は、ニューロンが、損傷前のより長い時間、NADによってインキュベートされた時に、NAD前処理の少なくとも24時間後に生じる最大効果と観察された。これらの結果は、NAD依存性軸索保護が、軸索そのもの内の迅速翻訳後修飾によって媒介されないことを示す。
【0070】
損傷に応答して、軸索分解を防ぐための無傷のニューロンのNADへの延長された暴露の必要性は、該保護プロセスが、デノボ転写および/または翻訳事象を要することを示唆する。興味深いことに、Wlds蛋白質およびNMNAT1の両方は、核内に位置する(データ示されず)。同様に、酵母においてNAD サルベージ経路を構成するほとんどの酵素も核内で区分される。我々は、感度のいいマイクロスケール酵素アッセイを用いて、野生型およびDRG ニューロンを発現するNMNAT1中のNADレベルを比較した(Szabo, et al., Proc Natl Acad Sci USA, 93:1753-58 ,1996)が、しかしながら、全体的な細胞NADレベルの変化は発見されなかった(データ示されず)。これは、酵母における観察と同様であり、ここに、この核経路の活性化は、NADの全体的なレベルを変化しなかった(Anderson, et al., J Biol Chem, 277:18881-90, 2002; Huh, et al., Nature, 425:686-91, 2003)。さらに、野生型およびwldsマウスの脳内の組織NADのレベルは、wldsマウスにおけるNMNAT活性のレベルの増加にも拘わらず、同様である(Mack, et al., Nat Neurosci, 4:1199-206, 2001)。これらのデータは、細胞質NAD-依存工程に反して、核におけるNAD-依存性酵素活性が、増加したNMNAT活性に応答して観察された軸索保護を媒介する可能性が高いことを示唆する。
【0071】
実施例6
この実施例は、Sir2の阻害がNAD-依存性軸索保護に関与することを示す。
【0072】
蛋白質デアセチラーゼおよびポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のSir2ファミリーは、主なNAD-依存性核酵素活性である。Sir2は、ヒストンおよび他の蛋白質のNAD依存性デアセチラーゼであり、その活性化は、酵母およびC. elegansにおいて増加した寿命を促進するのに中心となる (Bitterman, et al., Microbiol Mol Biol Rev, 67:376-99, 2003; Hekimi, et al., Science 299:1351-54, 2003)。PARPはDNA損傷によって活性化され、DNA修復に関与する (S.D. Skaper, Ann NY Acad Sci, 993:217-28 and 287-88, 2003)。これらの酵素、特にSir2蛋白質は、カロリー制限および老化の間の潜在的リンクを提供するため、近年大きな関心を呼んでいる。遺伝子活性を調節する際のこれらのNAD-依存性酵素の重要性は、軸索分解の自己破壊プロセスにおけるそれらの役割を研究するよう我々を促した。従って、我々は、Sir2 (Sirtinol)およびPARP (3-アミノベンズアミド(3AB))の阻害剤が、NAD-依存性軸索保護 (NDAP)に影響を及ぼし得るかをテストした (図4A)。ニューロンを、1 mM NADおよびSirtinol (100 μM)または3AB (20 mM)のいずれかの存在下で培養した。軸索の切断を、神経細胞体の除去によって実施し、軸索分解の程度を12ないし72時間後評価した。我々は、Sirtinolが効果的にNDAPを遮断したことを発見し、これは、Sir2蛋白質が、この工程のエフェクターである可能性が高いことを示す。対照的に、3ABはNDAPに対して効果を有さず、これはPARPが軸索保護において役割を担わなかったことを示す。さらにNDAPにおけるSir2蛋白質の役割を検査するために、我々は、リスベラトロール (10〜100μM)、Sir2活性を促進するポリフェノール化合物の効果をテストした(Howitz, et al., Nature, 425:191-96, 2003)。我々は、軸索切断前にリスベラトロールで処理されたニューロンが、NADを用いて得られるものに相応の軸索分解の現象を示し(図4A)、Sir2蛋白質が増加したNMNAT活性によって媒介される該軸索保護のエフェクターであるという考えにさらなる支持を提供することを発見した。
【0073】
実施例7
この実施例は、SIRT1がNAD-依存性軸索保護に関与することを示す。
【0074】
ヒトおよび齧歯類において、Sir2 保存ドメイン (サーチュイン (SIRT)1ないし7)を共有する7つの分子が同定されているが、これらの蛋白質のいくつかは、ヒストン/蛋白質デアセチラーゼ活性を有さないようである(Buck, et al., J Leukoc Biol, S0741-5400, 2004)。SIRT1は核内に位置し、クロマチン再構築およびp53のような転写因子の制御に関与する (J. Smith, Trends Cell Biol, 12:404-406, 2002)。他のSIRT蛋白質の細胞の位置はより鮮明でないが、いくつかは、細胞質およびミトコンドリア中で発見されている。どの(複数の)SIRT蛋白質が、NAD-依存性軸索保護に関与するかを決定するために、我々は、SIRTファミリーの各メンバーを特異的に標的するために、siRNA構築体を用いて、ノックダウン実験を実施した。ニューロンを、それらの意図された標的の発現を効果的に抑制した特異的SIRT siRNA構築体を発現するレンチウイルスによって感染した(図4B)。該感染したニューロンを、1 mM NAD中で培養し、軸索切断を、細胞体を除去することによって実施した。我々は、SIRT1 siRNA構築体が、NADの軸索保護効果を遮断するのに、Sirtinol阻害剤とほぼ同等に効果的であることを発見した。対照的に、他のSIRT蛋白質の阻害は、NDAPに対して有意な効果を有さなかった(図4B)。これらの結果は、SIRT1が、軸索自己破壊を効果的に予防する増加したNAD供給の主要なエフェクターであることを示す。SIRT1は、軸索安定性に直接関与する脱アセチル化蛋白質であり得るが、効果的な保護のための損傷前〜24時間のNADの必要性とともに、その主に核位置は、SIRT1が軸索保護に繋がる遺伝子プログラムを制御することを示唆する。
【0075】
軸索変性は、損傷後および化学療法に応答してだけでなく、加齢、糖尿病性神経障害、および神経変性病のような代謝性疾患と関連した活性な、自己破壊現象である。我々の結果は、wldsマウスにおける軸索保護の分子メカニズムが、NAD サルベージ経路の促進された活性およびヒストン/蛋白質 デアセチラーゼSIRT1の結果的な活性化から生じるNADの増加した供給によることを示す。
【0076】
実施例8−11
以下の物質および方法を、実施例8−11で使用した。
【0077】
発現プラスミドおよび突然変異の構築。NAD 生合成酵素のコード領域を、Herculase (Stratagene)を用いて、マウスNMNAT1に対するESTクローン BC038133およびマウスニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ3 (NMNAT3)に対するBC005737からPCR増幅した。ヒトNADシンテターゼ(QNS) ヘキサヒスチジン-タグcDNAを、Dr. N. Haraによって提供した(Shimane University, Shimane, Japan)。ヘキサヒスチジンタグを、各cDNAの3'末端にて添加した。NMNAT1細胞質突然変異体(cytNMNAT1)を、PCR-媒介部位定方向突然変異誘発によって生成した。NMNAT3 (nucNMNAT3)の核形態を、核局所化シグナルを、NMNAT3のC-末端に添加することによって生成した。各PCR増幅NAD合成酵素断片を、前述のように、FCIVレンチウイルスシャトルベクターへとクローン化した。全構築体の統合性を、Taq DyeDeoxy Terminator 周期配列決定キット (Applied Biosystems)およびApplied Biosystems 373 DNAシークエンサーを用いて配列決定した。
【0078】
NAD 生合成基質。NAD 生合成酵素のための全基質を、Sigma (Na、Nam、NMN、NaMN、ニコチン酸アデニンジヌクレオチド (NaAD)、およびNAD)から購入した。NmRをNMNから合成した。NMNのNmRへの変換を、逆相カラムLC-18T(Supelco)を用いて、HPLC (Waters)によって確認した。NmRを、260 ± 10秒溶離し、NMNを、50mM K2HPO4および50mM KH2PO4を含有する緩衝液(pH 7.0)の1 ml/分流速下で、150 ± 10秒溶離する。NmRの生物学的活性を、前述のように、Dr. Charles Brennerから提供された酵母株を用いることによって評価した(Dartmouth Medical School, New Hampshire, USA)。
【0079】
リアルタイム定量逆転写PCR分析。全外科的処置を、Washington Universityでの実験用動物のケアおよび使用のためのNational Institute of Healthガイドラインに従って実施した。神経損傷後の発現分析のために、C57BL/6マウスの坐骨神経を切断した、L4ないしL5。DRGを、示された時点にて収集し、プールして、RNAを抽出した。E14.5胚からのラットDRG移植片を、記載の方法に従って、14日間培養し、示された期間、10 nM ビンクリスチンを含有する培地および抽出されたRNAによって培養した。プールされた組織源またはDRG移植片培養液からの総RNAを調製した。第1鎖cDNA鋳型を、標準の方法を用いて、1 μgの各RNAから調製した。2つの独立したcDNA合成を、各RNA試料につき実施した。定量逆転写(RT)-PCRを、TaqMan 7700配列検出システム (Applied Biosystems)上で、SYBR-GREEN色素の蛍光における増加をリアルタイムでモニタリングすることによって実施した。
【0080】
細胞培養液、インビトロ軸索切断、および軸索変性の定量化。E12.5胚芽からのマウスDRG移植片を、10% FCSおよび1 nM神経成長因子を含有するDMEMにおいて培養した。非-神経細胞を、5-フルオロウラシルを培養培地に添加することによって培養液から除去した。神経突起の切断を、18-ゲージ針を用いて、14-21 DIVにて実施して、神経細胞体を除去した。レンチウイルス発現ベクターを生成した。レンチウイルス感染を、24時間、軸索切断前3-7日に実施した。神経突起変性の定量分析を実施した。
【0081】
蛋白質発現の決定および局所化。蛋白質発現の確認のために、HEK293T細胞を、NAD 生合成酵素の各々を発現するウイルスによって感染した。細胞を、感染後5日に溶解させて、免疫ブロット法で分析して、抗-6xHisタグモノクローナル抗体(R&D Systems)によってヘキサ−ヒスチジンタグによって、各蛋白質の発現を検出した。各蛋白質の細胞内局所化を、各NAD生合成酵素に対するウイルスシャトルベクターによって一過性にトランスフェクトしたHEK293T細胞を用いて分析した。細胞を、0.1% tween-20 (PBS-T)を含有するPBS中の4% パラホルムアルデヒドにおいて固定し、5% BSAを含有するPBS-Tによって1時間インキュベートし、次いで、1% BSAを含有するPBS-Tにおいておよび16時間、4℃にて、1:1000希釈された抗-6xHisタグ抗体(R&D Systems)によって覆った。細胞を、PBS-Tによって洗浄し、1時間、TBS-Tにおいて、Alexa Fluor 594-コンジュゲート二次抗体 (Molecular Probes)によってインキュベートし、蛍光顕微鏡検査法(Nikon)によって検査した。
【0082】
NMNAT蛋白質過剰発現、親和性生成および酵素アッセイ。HEK293T細胞を、リン酸カルシウム沈殿を用いることによって、各酵素に対する発現プラスミドによってトランスフェクトした。3日後、細胞をPBSで二度洗浄し、次いで、50 mM リン酸ナトリウム (pH8.0)、および300 mM NaCl (緩衝液A)を含有する緩衝液中で懸濁した。次いで、細胞をSONIFIRE 450 (BRANSON)によって均一化し、上澄みを10分間、10,000 gにて遠心分離によって収集した。His-選択 Nickel Affinity Gel (Sigma)を、緩衝液Aによって洗浄し、0.1 mlの50% ゲル懸濁液を、1 mlの上澄みに添加し、4℃にて10分間インキュベートし、次いで、ビーズ結合ヘキサ−ヒスチジンタグ蛋白質を緩衝液Aで、広範囲にわたって洗浄した。蛋白質を、50 mM リン酸ナトリウム (pH 8.0)、300 mM NaCl、および250 mMイミダゾールを含有する溶液の100μlを添加することによって溶離した。相対的NMNAT酵素活性を、前述のように、親和性精製した蛋白質を用いることによって測定し、偽の形質導入細胞から得られた値を引き、濃度測定によって決定された組換え蛋白質の量によって正常化した。
【0083】
NAD 生合成基質の投与および視神経切断。Nam、NMN、NmR、またはNADを、100 mMまたは1 Mの濃度にて、PBS中に溶解した。5 μl溶液の各々を、0.5 μl ml/秒の速度にて、麻酔下で、左硝子体内成分へと注射した。左視神経を、硝子体内注射後24時間に切断し、視神経を示された時間に回収した。視神経組織を、100mM tris-HCl (pH 6.8)、1 % SDS、および1mM DTTを含有する100 μlの緩衝液中で均一化した。各試料に対する50μgの蛋白質を、抗-神経フィラメント抗体2H3 (Developmental Studies Hybridoma Center)およびペロキシダーゼコンジュゲート二次抗体(Jackson ImmunoResearch)を用いて、ウエスタンブロッティングによって分析した。変性速度を、トランスフェクトされた対対側神経の神経フィラメント免疫活性の速度から計算した。
【0084】
実施例8
この実施例は、哺乳類のNAD生合成酵素のNAD 生合成経路および発現分析を示す。
【0085】
NADを、原核生物および真核生物の両方において、3つの主な経路を介して合成する。新生経路において、NADをトリプトファンから合成する (図5)。サルベージ経路において、NADを、ニコチン酸およびニコチンアミドを含むビタミンから生成する。Preiss-Handler 独立経路と呼ばれるニコチンアミドリボシドからの第3の経路が、最近、発見されている。新生経路の最後の酵素反応は、QPRTによるキノリナート(quinolinate)のNaMNへの変換を含む(EC 2.4.2.19)。この時点で、該新生経路は、該サルベージ経路と収束する。NaPRT (EC 2.4.2.11)は、NaをNaMNに変換し、これは、次いで、NMNATによって、NaADに変換される(EC 2.7.7.1)。QNS1 (EC 6.3.5.1)は、NaADをNADに変換する。NmPRT (EC 2.4.2.12); visfatinとも報告される)は、NamをNMNに変換する。また、NMNは、NMNATによって、NADに変換される。酵母および細菌サルベージ経路において、NamをNaに変換するニコチンアミダーゼ(Nicotinamidase) (PNC, EC 3.5.1.19)は、哺乳類において同定されていない。Preiss-Handler独立経路において、Nrk (EC 2.7.1.22)は、NmRをNMNに変換し、サルベージ経路に収束する。QPRT、NmPRT、QNS1、Nrk1/2およびNMNAT1/2/3を含むこれらの哺乳類酵素のほとんどは、予め、クローン化され特徴付けられている。また、NaPRTの哺乳類ホモログは、細菌 NaPRTの哺乳類ホモログとして注解されたESTとして同定された。
【0086】
神経系における哺乳類のNAD生合成酵素の発現を調べるために、我々は、E14、P0、P7、P14およびP21の年齢にて、マウス脳、網膜、脊髄、およびDRGからのRNAを用いて、定量RT-PCRを実施した。全酵素は、全検査された組織における発現が非常に少ないNrk2(データ示されず)を除いて、発達を通しておよび成人期において、神経系において偏在的に発現する。ニューロン損傷に
応答したNAD合成酵素の誘導性を同定するために、我々は、損傷していないDRGに対する坐骨神経切断後1、3、7、および14日にて、DRGにおける各酵素のRNA 発現を比較した。図6Aに示されるように、酵素のほとんどを、損傷後、2ないし8倍上方制御した。それらのなかでも、Nrk2発現は、軸索切断後14日にて、例外的に高度に誘導される(20-倍以上)。また、我々は、培養されたラットDRGニューロンにおいて、神経毒によって引き起こされた軸索変性の間、NAD合成酵素の発現を分析した。DRG ニューロンを、0.1 μMおよび1 μM ロテノンによって処理して、軸索変性を引き起こし、ロテノンの添加後24時間にて、RNAを収集した。Nrk2の発現を、ロテノン処理後、6倍以上増加した(図6B)。これらの結果は、NAD合成経路中の全酵素活性は偏在的に存在しているが、Nrk2は、ニューロン損傷後、基質を合成するNADを供給するのに関与し得ることを示唆する。
【0087】
実施例9
この実施例は、核および細胞質Nmat 酵素の両方は、軸索を変性から保存することを示す。
【0088】
NMNAT1の核局所化が軸索保護を提供するのに重要であるかを決定するために、我々は、該インビトロWallerian変性アッセイにおいて、NMNAT 酵素の細胞内分布の効果を分析し、細胞質および核NMNATの過剰発現の間の軸索保護の程度を比較した。NMNAT1は、NMNAT1蛋白質の211-217アミノ酸において、推定核位置シグナルPGRKRKWを有する。我々は、この核位置シグナルがPGAAAAWとして改変されたcytNMNAT1として命名された突然変異体NMNAT1を生成し、細胞内分布を検査した。図7Bに示されるように、我々が予測したように、cytNMNAT1の大部分は、サイトゾル中に位置していた。
【0089】
次に、我々は、cytNMNAT1の酵素活性を確認し、NMNAT1およびその突然変異体cytNMNAT1を、親和性ゲルを用いることによって、蛋白質のいずれかを発現する細胞溶解物から精製した。親和性精製した蛋白質の酵素活性を上記の通り測定し、我々は、cytNMNAT1活性が、その突然変異によって改変されなかったことを発見した(図7C)。DRG ニューロンにおけるcytNMNAT1の過剰発現後、我々は、強い神経突起保護ならびに核野生NMNAT1を観察した(図7A, E)。我々は、さらに、核位置シグナルを欠くNMNAT1イソ酵素を用いることによって、この結果を確認した。2つのNMNATイソ酵素のなかでも、NMNAT3は、予め、核およびミトコンドリアの外に位置し、NMNAT1に相当する酵素活性を有すると報告される。我々は、ヒトトポイソメラーゼ Iの核位置シグナルKPKKIKTEDを、NMNAT3のC-末端に添加して、核NMNAT3を生成した。我々は、HEK293T細胞においてヘキサ−ヒスチジンタグNMNAT3またはnucNMNAT3を発現し、細胞内位置およびその酵素活性を分析した。NMNAT3を、以前報告されたように、明るい点状の染色、該細胞質ゾル中のいくつかの点状の染色と、該核に主に位置するnucNMNAT3を含む核の外に分配された(図7B)。NMNAT3およびnucNMNAT3の酵素活性を測定し、両方の蛋白質はNMNAT1と比較して相当の酵素活性を有する (図7C)。次いで、インビトロWallerian変性アッセイをこれらの2つのNMNAT3 酵素の過剰発現後に実施し、我々は、NMNAT3およびnucNMNAT3の両方ならびにNMNAT1の過剰発現が、神経突起変性において同程度の遅延を示すことを発見した (図7A, E)。各酵素のレンチウイルス媒介発現をウエスタンブロッティングによって確認した (図7D)。これらの実験は、核または細胞質ゾルのいずれかに標的されたNMNATが、神経突起を変性から保護することを確認した。
【0090】
実施例10
この実施例は、NAD 生合成酵素に対する基質の外からの適用が、軸索を変性から保護することを示す。
【0091】
我々は、培養媒体中の外から適用されたNADが、軸索の保護効果をインビトロで示すことを予め示している。ここに、我々は、NmPRTの発現が軸索保護を示し、これはNamがニューロンにおいてNAD合成のための基質として使用されることを示す。図5に示されるどの基質をニューロンにおけるNAD合成のために使用するかを決定するためにおよびNAD前駆体のいずれかがNADと同様または恐らくはそれ以上に軸索を保護することが可能であるかを同定するために、我々は、培養媒体にNa、Nam、NmR、NaMN、NMN、またはNaADを適用し、インビトロWallerian変性アッセイを実施した。神経突起切断前24時間の1 mM NMNの適用は、神経突起を変性から首尾良く保護した。定量分析によると、NMN処理は、外から適用されたNADによって達成されたものと同程度まで、神経突起を保護することが分かった(図8B)。これらの結果は、さらに、他のNAD生合成基質の増加した供給が、神経突起を変性から保護する能力を有する可能性を示唆した。次いで、我々は、Na、Nam、NaMN、NaAD、およびNmRを含む1 mMのNAD 生合成基質をDRG ニューロンに、24時間外から適用し、神経突起切断を行った。図8AおよびBにおいて示されるように、NaMNまたはNmR処理も、神経突起ならびにNADを保護した。NaADは僅かな保護を示したが、Naは神経突起を保護することができず、NaおよびNamは全く効果を有さなかった。定量分析は、1mM NaMN、NMN、NmR、またはNADの外からの適用が、切断後48時間にて、無傷の神経突起の相対的な増加を招いたことを示した (図8B)。NaMNの保護効果はNMNに同等であるため、QNSによってNaADからNADを合成する工程は、NaADの増加した供給の下で、神経突起を保存するのに十分活性である。それにもかかわらず、NaADの外的適用は、NADと比較して、48時間にて、無傷の神経突起のより少ない増加を示す(図8B)。これは、我々のアッセイ条件における細胞への不十分な組み込みまたはNaADの不安定性を示す。これらの実験は、神経突起を保護するためのNMN、NaMN、およびNmRの外からの適用を含むいくつかの異なる方法が存在することを示唆する。これらの処理の全ては、NADの増加した供給を生じるようであり、NAD適用またはNMNAT1過剰発現が神経突起を変性から保護することを示す先の実験と一貫している。
【0092】
実施例11
この実施例は、NAD 生合成基質の硝子体内投与が、網膜神経節細胞の軸索変性を遅延することを示す。
【0093】
視神経の切断は、Wallerian変性およびその後の緑内障のようなヒトの病気で観察される網膜神経節細胞 (RGC) 死滅を招くメカニズムを調査するのに使用可能なインビボモデルである。C57BL/Wldsマウス株において、軸索切断後のWallerian変性の間の視神経変性が劇的に遅れる。加えて、硝子体内注射は、RGC軸索を変性からインビボで保護する化合物のスクリーニングに使用され、従って、我々は、NAD、NMN、NmR、およびNamを含む化合物の眼内注射によって、インビボでの各NAD 生合成基質の軸索保護効果を評価することができる。インビトロWallerian変性アッセイから、培養媒体中の1mMのNAD、NMN、およびNmRは、軸索を変性から保護するのに十分である。我々は、まず、左硝子体内区分に、5 μlの100 mMまたは1 M NAD溶液を注射した。24時間のインキュベーション後、左の視神経を切断し、対照(右)および軸索切断した(左) 視神経を、切断後、3、4、および5日に収集した。該軸索切断された視神経からの神経フィラメント免疫反応性を測定し、該視神経の右側から得られた値に対して正常化した。我々は、切断後4日目の免疫反応性が、それぞれ1 Mおよび100 mM NADを注射されたラットにおいて、軸索切断されていない視神経の77±27%および78±22%であったが、対照動物は7±16 %のみを示したことを発見した(図9)。
【0094】
次いで、我々は、左の視神経トランス作用後4日目に、左硝子体内区分および収集された視神経に、5 μlの100 mM NMN、NmR、およびNamを注射した。NMNおよびNmR注射された視神経から得られた免疫反応性は、軸索切断されていない神経の60±25および72±19 %であった。Nam注射された動物は、対照動物と何の差も示さなかった。これらの結果は、NAD、NMN、およびNmRが軸索保護活性を有するが、Namは有さないことを示したインビトロ研究と一貫している。我々のインビボ研究は、該NAD 生合成経路に関与したこれらの小分子が、軸索を変性から保護するのに有用なツールであることを明らかにした。
【0095】
この明細書中に引用される全文献は、本明細書中に、引用によって援用される。本明細書中に引用される文献のいずれの論議も、単にそれらの著者によってなされた主張を要約することを意図しており、いずれかの文献またはその一部は、関連した先行技術を構成する。出願人らは、該引用された文献の正確性および適切性を調べる権利を保有する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、lds 融合蛋白質のNMNAT1活性が:A) Wlds蛋白質またはEGFPを発現するレンチウイルス-感染後根神経節(DRG) ニューロン外植片培養液のインビトロWallerian変性、ここに、チューブリンβIII-免疫反応性神経突起は、切断前および切断後12、24、48、および72時間示され(スケールバー=1mmおよび該「*」は、除去前の細胞体の位置を示し;およびB) 各構築体 (左下)による示された時点での神経突起の代表的なイメージおよび残りの神経突起の数の残りの神経突起の数 (切断前に対する残りの神経突起のパーセンテージ± S.D.)が示され、該「*」がEGFP-感染ニューロンによる有意な差(p<0.0001)を示し;また、トランスジーン発現 (下列;スケールバー=50μm)を確認する切断後のEGFPシグナルおよびレンチウイルス遺伝子移動およびUfd2a蛋白質(右下のパネル)のsiRNA下方制御によって蛋白質発現を確認する免疫ブロット解析を示す、EGFPのみを発現するレンチウイルス-感染DRG ニューロン、Wlds蛋白質、EGFP (Ufd2a(1-70)-EGFP)に融合されたWlds 蛋白質、C-末端核位置シグナルを有するUfd2a(1-70)-EGFP、EGFPに融合されたWlds蛋白質のNMNAT1部分、優性阻害 Ufd2a (Ufd2a(P1140A))、またはUfd2a siRNA構築体におけるインビトロWallerian変性を示す損傷した軸索の遅延変性を生成することを示す。
【図2】図2は、増加したNAD供給が:A)野生型および突然変異Wldsおよび溶解物が該示された蛋白質を発現するHEK293細胞から調製されるNMNAT1蛋白質の酵素活性が、基質として、ニコチンアミドモノヌクレオチドを用いるNAD生成につきアッセイされ、1時間で生成されたNADの量がNADHに変換され、蛍光強度によって定量化され、次いで、療法の突然変異体が本質的に全く酵素活性を有さないことを示す総蛋白質濃度まで正常化され;ならびにB) NMNAT1またはWlds蛋白質を発現するレンチウイルス感染DRG ニューロン、NAD合成活性NMNAT1(W170A)およびWlds(W258A)を欠くこれらの蛋白質の突然変異体、またはEGFPにおけるインビトロWallerian変性、ここに該棒グラフが各構築体につき示された時点での残りの神経突起の数の定量分析データ(切断前に対する残りの神経突起のパーセンテージ± S.D.)を示し、該「*」はEGFP-感染ニューロンによる有意な差(p<0.0001)を示し;C)該6XHisタグに対する抗体を用いる免疫ブロット解析によって検出されたレンチウイルス-感染細胞における蛋白質発現;およびD) 0.5 μM ビンクリスチンによって培養されたNMNAT1またはEGFP (対照)のいずれかを発現するDRG ニューロン外植片を示す損傷後、変性から軸索を保護することを示し、ここに神経突起の代表的なイメージ (位相差; 棒=1mm)が、ビンクリスチン添加後の示された時間にて示され、該示された時点での保護効果の定量化が、処置前の神経突起によって覆われたものに対する神経突起によって覆われた領域として表される。
【図3】図3は、軸索保護が:A)軸索切断の24時間前に添加された種々の濃度のNADの存在下で培養されたDRG移植片を用いるインビトロWallerian変性;およびB)切断の4、8、12、24、または48時間前に、1mM NADによってプレインキュベートされたDRG移植片を示す損傷前のNADによるニューロンの前処理を要することを示し、ここに、該棒グラフは、該示された時点の各々にて、各実験における残りの神経突起の数を示し(切断前に対する残りの神経特記のパーセンテージ± S.D.)、該「*」は、対照(p<0.0001)と比較して優位な軸索保護を示す。
【図4】図4は、NAD依存性軸索保護が:A) 1 mM NADのみ (対照)によってまたは100 μM Sirtinol (Sir2阻害剤)または20 mM 3-アミノベンズイミド (3AB, PARP阻害剤)のいずれかの存在下でプレインキュベートされたDRG移植片培養液を用いるインビトロWallerian 変性;B) リスベラトロール (10、50または100 μM)によってインキュベートされたDRG移植片培養液を用いるインビトロWallerian変性;およびC)左:該SIRTファミリー (SIRT1-7)の各メンバーにつき特異的なsiRNAを発現するレンチウイルスによって感染されたDRG移植片培養液を用いるインビトロWallerian変性、ここに、該棒グラフは、各条件に対して示された時点での残りの神経特記の数の定量分析(切断前に対する残りの神経特記のパーセンテージ± S.D.)を示し、該「*」は、対照(<0.0001)と有意に異なる点を示し;真ん中の表:感染されたNIH3T3細胞におけるqRT-PCRを用いる各SIRT siRNA(野生型mRNAレベルの%として表される)の有効性;および右:SIRT1に対する抗体を用いて、NAD依存性軸索保護を効果的に遮断したSIRT1 siRNAの存在下で、SIRT1の減少した発現を示す免疫ブロット法を示すSIRT1活性によって媒介されることを示す。
【図5】図5は、予測される哺乳類のNAD生合成が、酵素発現分析および酵母および下等真核生物からの研究に基づき示される哺乳類のNAD 生合成経路を示す。(使用される略語; QPRT,キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ; NaPRT, ニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ; NmPRT, ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ; Nrk, ニコチンアミドリボシドキナーゼ; NMNAT, ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ; QNS, NADシンターゼ)
【図6】図6は、(A)ラットDRGにおける神経切断後1、3、7、および14日後のNAD生合成酵素mRNAレベルを、qRT-PCRによって決定し、ここに、該発現レベルは、各試料において、グリセロアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ発現へと正常化され、軸索切断されていないDRGにおける該発現レベルに対して示され;(B)示された時間、1または0.1 μM ロテノンにおいてインキュベーション DRGによって導入された神経突起変性およびNAD合成酵素 mRNAレベルは、該テキストに記載のように、qRT-PCRによって決定されたを示す哺乳類におけるNAD 生合成酵素の発現分析を示す。
【図7】図7は、NMNAT 酵素の細胞内局在および(A)トランス作用後12時間および72時間に撮られた代表的な絵が示されるNMNAT1、cytNMNAT1、NMNAT3、またはnucNMNAT3を発現するレンチウイルス感染DRG ニューロン外植片培養液を用いるインビトロWallerian変性アッセイ;(B) 6xHisタグに対する抗体を有する免疫組織化学を用いて、各蛋白質および比較のために核マーカー色素(ビスベンズイミド)による細胞の染色を検出して、各蛋白質の核対細胞質の位置を決定する(スケールバー = 25 μm) HEK 293T細胞におけるNMNAT1、cytNMNAT1、NMNAT3、またはnucNMNAT3の細胞内局在;(C) 6xHisタグされた各蛋白質がNMNAT1、cytNMNAT1、NMNAT3、nucNMNAT3を発現するHEK293T細胞の溶解物から精製され、1時間後37℃にて生成されたNADの量がNADHへと変換され、定量化され、蛋白質濃度まで正常化される野生型および突然変異NMNAT1およびNMNAT3の酵素活性;(D)ウイルスの各々によって感染されたHEK293T細胞の免疫ブロット解析によって確認されたレンチウイルス遺伝子移動によるNMNAT1、cytNMNAT1、NMNAT3、およびnucNMNAT3の蛋白質発現および(E) 軸索切断後12、24、48、および72時間での残りの神経突起の数の定量分析データを示すNMNAT1、cytNMNAT1、NMNAT3、またはnucNMNAT3を発現するレンチウイルス感染DRGニューロン外植片培養液を用いるインビトロWallerian変性アッセイを示す軸索を保護する能力を示す。
【図8】図8は、NAD 生合成基質の外生適用および(A) トランス作用後12、24、48、および72時間にて撮られた代表的な絵によるNAD, NmRの外生適用が示された後のDRG ニューロン外植片を用いるインビトロWallerian変性アッセイ;(B) 軸索切断後12、24、48、および72時間での残りの神経突起の数の定量分析データを示すNa、Nam、NaMN、NMN、NaAD、NAD、およびNmRの外生適用が示された後のDRG ニューロン外植片培養液を用いるインビトロWallerian変性アッセイ;軸索切断後12、24、48、および72時間での残りの神経突起の数の定量分析データを示すインビトロWallerian変性アッセイにおいて、レンチウイルスを発現するNaPRTによって感染され、軸索切断前の24時間、1 mMのNaあるなしでインキュベートされたDRG ニューロン外植片を示す軸索を保護する能力を示す。
【図9】図9は、NAD、NMN、NmR、またはNamが左ラット眼球の硝子体内区分に注射され、左視神経が眼球摘出によって切断され、右および左視神経が切断後4日に収集され、ウエスタンブロッティングによって分析され、ここに軸索切断前のいずれの処置なしでマウスから切断された視神経を陰性対照に使用するNAD 生合成基質の硝子体内注射後の視神経切断を示し;該図において、切断されていないものに対する切断された視神経からの残りの神経フィラメント免疫反応性のパーセンテージ± S.Dの定量分析データを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その必要のある哺乳類において神経障害または軸索変性症を治療または予防する方法であって、該哺乳類に、病気のおよび/または損傷したニューロンおよび支持細胞におけるサーチュイン活性を増加させることによって作用する有効量の剤を投与することを特徴とする該方法。
【請求項2】
該剤がSIRT1活性を増加させることによって作用する請求項1記載の方法。
【請求項3】
該剤が、NAD、NADH、NADを合成するための新生経路の中間体、NADサルベージ経路の中間体、ニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の中間体またはその組合せである請求項1記載の方法。
【請求項4】
該剤が、NAD、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ニコチン酸モノヌクレオチドまたはニコチンアミドリボシドである請求項1記載の方法。
【請求項5】
該剤が、NADを合成するための新生経路の酵素、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素;NADを合成するための新生経路の酵素、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素をコードする核酸; NADを合成するための新生経路の酵素、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素の発現を増加させる剤;またはNADを合成するための新生経路の酵素、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素の触媒活性および/または安定性を増加させる剤を含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
該剤が、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ (NMNAT)またはNMNATをコードする核酸を含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
該剤が、NMNAT活性およびヒトNMNAT1と少なくとも50%の同一性またはヒトNMNAT3と少なくとも50%の同一性を有する酵素を含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
該剤が、ヒトNMNAT1と少なくとも70%の同一性またはヒトNMNAT3と少なくとも70%の同一性を有する請求項7記載の方法。
【請求項9】
該剤が、ヒトNMNAT1、ヒトNMNAT3およびその保存的に置換された変異体よりなる群から選択される請求項6記載の方法。
【請求項10】
該剤が、ヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも50%の同一性を有する核酸またはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも50%の同一性を有する核酸を含む請求項6記載の方法。
【請求項11】
該剤が、ヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも70%の同一性を有する核酸またはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも70%の同一性を有する核酸を含む請求項10記載の方法。
【請求項12】
該剤が、ヒトNMNAT1またはヒトNMNAT3をコードする核酸またはその核酸変異体を含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
該剤が、サーチュインポリペプチドまたはサーチュインポリペプチドをコードする核酸を含む請求項1記載の方法。
【請求項14】
該剤が、SIRT活性およびヒトSIRT1と少なくとも50%の同一性を有する酵素を含む請求項6記載の方法。
【請求項15】
該剤が、ヒトSIRT1と少なくとも70%の同一性を有する請求項14記載の方法。
【請求項16】
該剤が、ヒトSIRT1およびその保存的に置換された変異体よりなる群から選択される請求項15記載の方法。
【請求項17】
該剤が、ヒトSIRT1をコードする核酸と少なくとも50%の同一性を有する核酸を含む請求項6記載の方法。
【請求項18】
該剤が、ヒトSIRT1をコードする核酸と少なくとも70%の同一性を有する核酸を含む請求項17記載の方法。
【請求項19】
該剤が、ヒトSIRT1をコードする核酸またはその核酸変異体を含む請求項18記載の方法。
【請求項20】
該剤が、スチルベン、カルコン、フラボン、イソフラボン、フラボノンまたはカテキンである請求項1記載の方法。
【請求項21】
該剤が、リスベラトロール、ピセタノール、デオキシラポンチン、トランス-スチルベンおよびラポンチンよりなる群から選択されるスチルベン; ブテイン(butein)、イソリキリチゲン(isoliquiritigen)および3,4,2',4',6'-ペンタヒドロキシカルコンよりなる群から選択されるカルコン;フィセチン(fisetin)、5,7,3',4',5'-ペンタヒドロキシフラボン、ルテオリン、3,6,3',4'-テトラヒドロキシフラボン、ケルセチン、7,3',4',5'-テトラヒドロキシフラボン、ケンペロール、6-ヒドロキシアピゲニン、アピゲニン、3,6,2',4'-テトラヒドロキシフラボン、7,4'-ジヒドロキシフラボン、7,8,3',4'-テトラヒドロキシフラボン、3,6,2',3'-テトラヒドロキシフラボン、4'-ヒドロキシフラボン、5,4'-ジヒドロキシフラボン、5,7-ジヒドロキシフラボン、モリン、フラボンおよび5-ヒドロキシフラボンよりなる群から選択されるフラボン;ダイゼインおよびゲニステインよりなる群から選択されるイソフラボン;ナリンゲニン、3,5,7,3',4'-ペンタヒドロキシフラボノン、およびフラボノンよりなる群から選択されるフラボノンまたは(-)-エピカテキン、(-)-カテキン、(-)-ガロカテキン、(+)-カテキンおよび(+)-エピカテキンよりなる群から選択されるカテキンである請求項20記載の方法。
【請求項22】
該神経障害または軸索変性症が、遺伝性または先天性または神経変性病、運動ニューロン疾患、新生組織形成、内分泌障害、代謝性疾患、栄養失調、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、機械的損傷、化学または薬物誘発性損傷、熱傷、放射線傷害、神経圧迫、レチナールまたは視神経障害、ミトコンドリア機能障害、進行性認知症、脱髄疾患、虚血および/または脳梗塞、感染病;または炎症性疾患関連である請求項1記載の方法。
【請求項23】
該神経障害または軸索変性症が細胞傷害性抗癌剤によって誘発される請求項22記載の方法。
【請求項24】
該視神経障害が、緑内障、網膜神経節変性、視神経炎および/または変性、黄斑変性症、虚血性視神経障害、視神経への外傷、遺伝性視神経障害、代謝性視神経障害、毒剤によるまたは医薬品副作用またはビタミン欠乏症によって引き起こされた神経障害である請求項22記載の方法。
【請求項25】
該ミトコンドリア機能障害と関連した該神経障害が、酸化的損傷から、ミトコンドリアゲノムまたは核ゲノムのいずれかにおいてコードされたミトコンドリア蛋白質の突然変異から、毒素への暴露から、または老化の過程から生じる請求項22記載の方法。
【請求項26】
該哺乳類がヒトである請求項1記載の方法。
【請求項27】
その必要のある哺乳類において神経障害または軸索変性症を治療または予防する方法であって、該哺乳類に、病気のおよび/または損傷したニューロンおよび/または支持細胞におけるNAD活性を増加させることによって作用する有効量の剤を投与することを特徴とする該方法。
【請求項28】
該剤が、NAD、NADH、NADを合成するための新生経路の中間体、NADサルベージ経路の中間体、ニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の中間体またはその組合せである請求項27記載の方法。
【請求項29】
該剤が、NAD、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ニコチン酸モノヌクレオチドまたはニコチンアミドリボシドである請求項28記載の方法。
【請求項30】
該剤が、NADを合成するための新生経路の酵素、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素;NADを合成するための新生経路の酵素、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素をコードする核酸;NADを合成するための新生経路の酵素、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素の発現を増加させる剤;またはNADを合成するための新生経路の酵素、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素の触媒活性および/または安定性を増加させる剤を含む請求項27記載の方法。
【請求項31】
該剤が、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ (NMNAT)またはNMNATをコードする核酸を含む請求項30記載の方法。
【請求項32】
該剤が、NMNAT活性およびヒトNMNAT1と少なくとも50%の同一性またはヒトNMNAT3と少なくとも50%の同一性を有する酵素を含む請求項31記載の方法。
【請求項33】
該剤が、ヒトNMNAT1と少なくとも70%の同一性またはヒトNMNAT3と少なくとも70%の同一性を有する請求項32記載の方法。
【請求項34】
該剤が、ヒトNMNAT1、ヒトNMNAT3およびその保存的に置換された変異体よりなる群から選択される請求項31記載の方法。
【請求項35】
該剤が、ヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも50%の同一性を有する核酸またはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも50%の同一性を有する核酸を含む請求項31記載の方法。
【請求項36】
該剤が、ヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも70%の同一性を有する核酸またはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも70%の同一性を有する核酸を含む請求項35記載の方法。
【請求項37】
該剤が、ヒトNMNAT1またはヒトNMNAT3をコードする核酸またはその核酸変異体を含む請求項36記載の方法。
【請求項38】
該神経障害または軸索変性症が、遺伝性または先天性または神経変性病、運動ニューロン疾患、新生組織形成、内分泌障害、代謝性疾患、栄養失調、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、機械的損傷、化学または薬物誘発性損傷、熱傷、放射線傷害、神経圧迫、レチナールまたは視神経障害、ミトコンドリア機能障害、進行性認知症、脱髄疾患、虚血および/または脳梗塞、感染病;または炎症性疾患関連である請求項27記載の方法。
【請求項39】
該神経障害または軸索変性症が細胞傷害性抗癌剤によって誘発される請求項38記載の方法。
【請求項40】
該視神経障害が、緑内障、網膜神経節変性、視神経炎および/または変性、黄斑変性症、虚血性視神経障害、視神経への外傷、遺伝性視神経障害、代謝性視神経障害、毒剤によるまたは医薬品副作用またはビタミン欠乏症によって引き起こされた神経障害である請求項22記載の方法。
【請求項41】
該ミトコンドリア機能障害と関連した該神経障害が、酸化的損傷から、ミトコンドリアゲノムまたは核ゲノムのいずれかにおいてコードされたミトコンドリア蛋白質の突然変異から、毒素への暴露から、または老化の過程から生じる請求項38記載の方法。
【請求項42】
該哺乳類がヒトである請求項27記載の方法。
【請求項43】
哺乳類における神経障害を治療するための剤をスクリーニングする方法であって、哺乳類神経細胞にインビトロまたはインビボで候補剤を投与し;該神経細胞に軸索損傷を形成し;次いで、該損傷した神経細胞の軸索変性の減少を検出することを特徴とする該方法。
【請求項44】
該神経細胞に軸索損傷を形成することが、該神経細胞を化学的に損傷する、該神経細胞を熱的に損傷する、該神経細胞を酸欠状態にする、該神経細胞を物理的に損傷する、エネルギー代謝を阻害するまたはその組合せを含む請求項43記載の方法。
【請求項45】
哺乳類において神経障害を治療するための剤をスクリーニングする方法であって、細胞において、候補剤によって生成されたNAD活性の増加を検出することを特徴とする該方法。
【請求項46】
ニューロンにおいてサーチュイン活性を増加する剤をスクリーニングする方法であって、哺乳類の神経細胞にインビトロまたはインビボで候補剤を投与し;該神経細胞に軸索損傷を形成し;該損傷した神経細胞の軸索変性の減少を検出することを特徴とする該方法。
【請求項47】
ニューロンにおいてNAD活性を増加する剤をスクリーニングする方法であって、哺乳類の神経細胞にインビトロまたはインビボで候補剤を投与し;該神経細胞に軸索損傷を形成し;該損傷した神経細胞の軸索変性の減少を検出することを特徴とする該方法。
【請求項48】
ヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも50%の同一性を有するポリヌクレオチドまたはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも50%の同一性を有するポリヌクレオチドに操作可能に連結されたプロモーターを含む組換えベクター。
【請求項49】
ヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも70%の同一性を有するポリヌクレオチドまたはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも70%の同一性を有するポリヌクレオチドを含む請求項48記載の組換えベクター。
【請求項50】
ヒトNMNAT1またはヒトNMNAT3をコードするポリヌクレオチドまたはそのポリヌクレオチド変異体を含む請求項48記載の組換えベクター。
【請求項51】
レンチウイルスまたはアデノ関連ウイルスを含む請求項48記載の組換えベクター。
【請求項52】
ヒトSIRT1をコードする核酸と少なくとも50%の同一性を有するポリヌクレオチドに操作可能に連結されたプロモーターを含む組換えベクター。
【請求項53】
ヒトSIRT1をコードする核酸と少なくとも70%の同一性を有するポリヌクレオチドを含む請求項52記載の組換えベクター。
【請求項54】
ヒトSIRT1をコードするポリヌクレオチド酸またはそのポリヌクレオチド変異体を含む請求項54記載の組換えベクター。
【請求項55】
レンチウイルスまたはアデノ関連ウイルスを含む請求項52記載の組換えベクター。
【請求項56】
その必要のある哺乳類において視神経障害を治療または予防する方法であって、該哺乳類に、病気のおよび/または損傷したニューロンにおけるNAD活性を増加することによって作用する有効量の剤を投与することを特徴とする該方法。
【請求項57】
該哺乳類に投与することが眼球内投与を含む請求項56記載の方法。
【請求項58】
眼球内投与が持続放出送達系の眼球内投与を含む請求項57記載の方法。
【請求項59】
眼球内投与が、硝子体内注射、点眼薬による投与またはトランス強膜(trans-scleral)送達による投与を含む請求項57記載の方法。
【請求項60】
該剤が、NAD、NADH、NADを合成するための新生経路の中間体、NADサルベージ経路の中間体、ニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の中間体またはその組合せである請求項56記載の方法。
【請求項61】
該剤が、NAD、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ニコチン酸モノヌクレオチドまたはニコチンアミドリボシドである請求項60記載の方法。
【請求項62】
該剤が、NADを合成するための新生経路の酵素、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素;NADを合成するための新生経路の酵素、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素をコードする核酸;NADを合成するための新生経路の酵素、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素の発現を増加させる剤;またはNADを合成するための新生経路の酵素、NADサルベージ経路の酵素またはニコチンアミドリボシドキナーゼ経路の酵素の触媒活性および/または安定性を増加させる剤を含む請求項56記載の方法。
【請求項63】
該剤が、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ (NMNAT)またはNMNATをコードする核酸を含む請求項62記載の方法。
【請求項64】
該剤が、ヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも50%の同一性を有する核酸またはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも50%の同一性を有する核酸を含む請求項62記載の方法。
【請求項65】
該剤が、ヒトNMNAT1をコードする核酸と少なくとも70%の同一性を有する核酸またはヒトNMNAT3をコードする核酸と少なくとも70%の同一性を有する核酸を含む請求項64記載の方法。
【請求項66】
該剤が、ヒトNMNAT1またはヒトNMNAT3をコードする核酸またはその核酸変異体を含む請求項65記載の方法。
【請求項67】
該視神経障害が、緑内障、網膜神経節変性、視神経炎および/または変性、黄斑変性症、虚血性視神経障害、視神経への外傷、遺伝性視神経障害、代謝性視神経障害、毒剤によるまたは医薬品副作用またはビタミン欠乏症によって引き起こされた神経障害である請求項22記載の方法。
【請求項68】
該哺乳類がヒトである請求項56記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−501343(P2008−501343A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515603(P2007−515603)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/019524
【国際公開番号】WO2006/001982
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(597025806)ワシントン・ユニバーシティ (26)
【氏名又は名称原語表記】Washington University School of Medicine
【Fターム(参考)】